説明

レジストパターン厚肉化材料、並びに、半導体装置及びその製造方法

【課題】低分子化合物の昇華を抑制しつつ、レジストパターンを効率良く厚肉化して、既存の露光装置の光源における露光限界を超えた微細レジストパターンを製造することができるレジストパターン厚肉化材料、並びに、該レジストパターン厚肉化材料を用いて製造された半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂と、下記一般式(1)で表される環状化合物と、カルボキシル基を含む環状構造を有する化合物、及び、芳香族炭化水素構造を有する化合物のいずれかの化合物と、水と、を含むことを特徴とするレジストパターン厚肉化材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターン厚肉化材料、並びに、該レジストパターン厚肉化材料を用いて製造された半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(半導体集積回路)等の半導体装置においては、集積度の向上に伴い、微細パターンの形成が要求されており、現在、最小パターンサイズが、100nm以下のサイズにも達している。
【0003】
こうした半導体装置における微細パターンの形成は、100nm以下の微細パターンを形成可能な電子線を用いた露光技術により実現できるが、この電子線を用いた露光技術は、スループットが低く、低コストでの量産に適さないという問題がある。そこで、電子線を用いない露光技術において、露光装置における光源の短波長化を図ること(例えば、波長13.5nmの軟X線を光源とするEUV(極端紫外線)露光法)が検討されている。しかしながら、前記露光装置における光源の短波長化のためには、露光装置の更新が必要となり、莫大なコストを要するという問題がある。また、微細パターンの形成のためには、前記露光装置における光源の特性に応じた高解像度を有するレジスト材料の改良も必要となるが、レジスト材料の改良には限界があり、必要性能を満たすことが極めて困難となっている。よって、露光装置の更新やレジスト材料の改良を行うことなく、均一かつ微細なレジストパターンを高精度に形成可能な技術が必要とされている。
【0004】
既存の露光装置を用いながら、露光光源における露光限界(解像限界)を超える微細パターンの形成を可能とする微細なレジストパターンを形成する方法として、レジストパターンを厚肉化し、微細なレジスト抜けパターンを得ることを可能にするレジストパターン厚肉化材料(「レジスト膨潤剤」と称することがある)を用いる方法がある。例えば、深紫外線であるKrF(フッ化クリプトン)エキシマレーザー光(波長248nm)を使用して、KrFレジスト膜を露光して、KrFレジストパターンを形成した後、該KrFレジストパターンを覆うように塗膜を設け、該KrFレジストパターンの材料中に含まれる残留酸を利用して、前記塗膜と前記KrFレジストパターンとをその接触界面において相互作用させることにより、前記KrFレジストパターンを厚肉化(以下「膨潤」と称することがある)させて、該KrFレジストパターン間の距離を短くし、微細なレジスト抜けパターンを形成し、該レジスト抜けパターンと同形状の所望の微細パターン(例えば、配線パターンなど)を形成する技術(RELACS)がある(特許文献1参照)。
しかしながら、前記RELACSで用いられるレジストパターン厚肉化材料には、現在の微細加工技術に用いられているArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザ光(193nm)で露光形成されたArFレジストパターンに対して作用しないという問題がある。さらに、前記RELACSで用いられるレジストパターン厚肉化材料は、該レジストパターン厚肉化材料に含まれる架橋剤がレジストパターンの材料中から発生した残留酸の存在により生じる架橋反応によってレジストパターンの厚肉化を行っているため、厚肉化前のレジストパターンサイズによって厚肉化される量が変化してしまい、プロセス温度の変化に対して非常に敏感であるなど、実際の使用には難しいという問題がある。
【0005】
上記問題を解決する技術として、ベンジルアルコール、ベンジルアミン、及びこれらの誘導体等の水溶性芳香族化合物を必須成分として含む非架橋型レジストパターン厚肉化材料を用いて、微小なパターンを形成する技術がある(特許文献2、3参照)。前記レジストパターン厚肉化材料を用いることで、架橋反応が生じないため、反応の制御が容易となり、レジストパターンをそのサイズに依存することなく厚肉化することができ、さらに、ウエハのプロセス温度変化に対しても許容範囲(マージン)が広く、実際のプロセスに適応可能であった。
しかしながら、ウエハのプロセス温度条件が高い場合、前記非架橋型のレジストパターン厚肉化材料に含まれる水溶性芳香族化合物の沸点が前記プロセス温度よりも低いと、前記水溶性芳香族化合物の昇華が起きることが明らかとなった。該昇華した水溶性芳香族化合物が、加熱手段であるホットプレート内壁や排気管内で析出し、処理対象であるウエハ上に再付着することが懸念される。
塗布型の半導体形成材料においては、昇華物の再付着による欠陥の発生は、歩留りの低下と製品性能低下等の生産上の問題となっており(例えば、特許文献4及び5)、レジストパターン厚肉化材料中の成分の昇華によるウェハ上への再付着についても、同様にリスク回避が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−73927号公報
【特許文献2】特開2006−259692号公報
【特許文献3】特開2007-148272号公報
【特許文献4】特開2005−165096号公報
【特許文献5】特開2007−114245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れたレジストパターン厚肉化材料、並びに、該レジストパターン厚肉化材料を用いて製造された半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、後述する付記に記載した通りである。即ち、
開示のレジストパターン厚肉化材料は、樹脂と、一般式(1)で表される環状化合物と、一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物と、水と、を含む。
【化1】

前記一般式(1)中、Qは、水素原子、アルキル基、アセチル基、及びヒドロキシアルキル基の少なくともいずれかを表す。kは、6、7又は8の整数を表す。
【化2】

前記一般式(2)中、Rは、環状構造を表す。Aは、カルボキシル基を含む一価の有機基を表し、mは、1以上の整数を表す。Bは、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、カルボニル基、及びアルコキシカルボニル基の少なくともいずれかを表し、前記置換の数は1又は2の整数である。nは、0以上の整数を表す。
【化3】

【化4】

前記一般式(3)中、Sは、芳香族炭化水素構造を表し、Xは、前記一般式(4)を表し、Yは、水酸基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、及びアルキル基の少なくともいずれかを表し、前記置換の数は1又は2の整数である。pは1以上の整数を表し、qは0以上の整数を表す。
前記一般式(4)中、R1及びR2は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子及び任意の置換基の少なくともいずれかを表し、Zは、水酸基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、及びアルコキシ基のいずれかを表し、前記置換の数は1又は2の整数である。
開示の半導体装置の製造方法は、被加工面上にレジストパターンを形成後、該レジストパターンの表面を覆うように、開示のレジストパターン厚肉化材料を塗布することにより該レジストパターンを厚肉化させる工程を含む。
開示の半導体装置は、開示の半導体装置の製造方法により製造される。
【発明の効果】
【0009】
開示のレジストパターン厚肉化材料によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、低分子化合物の昇華を抑制しつつ、レジストパターンを効率良く厚肉化して、既存の露光装置の光源における露光限界を超えた微細レジストパターンを形成することができる。
開示の半導体装置の製造方法によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、既存の露光装置の光源における露光限界を超えた微細レジストパターンを形成可能であり、該微細レジストパターンを用いて形成した微細な配線パターンを有する高性能な半導体装置を効率的に量産することができる。
開示の半導体装置によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、微細な配線パターンを有することで、高性能化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、レジストパターンを開示のレジストパターン厚肉化材料を用いて厚肉化するメカニズムの説明図であり、レジストパターン厚肉化材料をレジストパターン表面に付与した状態を表す。
【図2】図2は、レジストパターンを開示のレジストパターン厚肉化材料を用いて厚肉化するメカニズムの説明図であり、レジストパターン厚肉化材料がレジストパターン表面に染み込んだ状態を表す。
【図3】図3は、レジストパターンを開示のレジストパターン厚肉化材料を用いて厚肉化するメカニズムの説明図であり、レジストパターン厚肉化材料によりレジストパターン表面が厚肉化された状態を表す。
【図4A】図4Aは、開示の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、シリコン基板上に層間絶縁膜を形成した状態を表す。
【図4B】図4Bは、開示の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、図4Aに表す層間絶縁膜上にチタン膜を形成した状態を表す。
【図4C】図4Cは、開示の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、チタン膜上にレジスト膜を形成し、チタン層にホールパターンを形成した状態を表す。
【図4D】図4Dは、開示の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、ホールパターンを層間絶縁膜にも形成した状態を表す。
【図4E】図4Eは、開示の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、ホールパターンを形成した層間絶縁膜上にCu膜を形成した状態を表す。
【図4F】図4Fは、開示の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、ホールパターン上以外の層間絶縁膜上に堆積されたCuを除去した状態を表す。
【図4G】図4Gは、開示の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、ホールパターン内に形成されたCuプラグ上及び層間絶縁膜上に層間絶縁膜を形成した状態を表す。
【図4H】図4Hは、開示の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、表層としての層間絶縁膜にホールパターンを形成し、Cuプラグを形成した状態を表す。
【図4I】図4Iは、開示の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、三層構造の配線を形成した状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(レジストパターン厚肉化材料)
本発明のレジストパターン厚肉化材料は、少なくとも、樹脂と、一般式(1)で表される環状化合物と、一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物と、水と、を含有してなり、さらに必要に応じて、その他の成分を含有してなる。
【化5】

前記一般式(1)中、Qは、水素原子、アルキル基、アセチル基、及びヒドロキシアルキル基の少なくともいずれかを表す。kは、6、7又は8の整数を表す。
【化6】

前記一般式(2)中、Rは、環状構造を表す。Aは、カルボキシル基を含む一価の有機基を表し、mは1以上の整数を表す。Bは、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、カルボニル基、及びアルコキシカルボニル基の少なくともいずれかを表し、前記置換の数は1又は2の整数である。nは、0以上の整数を表す。
【化7】

【化8】

前記一般式(3)中、Sは、芳香族炭化水素構造を表し、Xは、前記一般式(4)を表し、Yは、水酸基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、及びアルキル基の少なくともいずれかを表し、前記置換の数は1又は2の整数である。pは1以上の整数を表し、qは0以上の整数を表す。
前記一般式(4)中、R1及びR2は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子及び任意の置換基の少なくともいずれかを表し、Zは、水酸基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基及びアルコキシ基のいずれかを表し、前記置換の数は1又は2の整数である。
【0012】
前記レジストパターン厚肉化材料は、水溶性である。前記水溶性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、25℃の水100gに対し、前記レジストパターン厚肉化材料が0.1g以上溶解する水溶性が好ましい。
【0013】
本発明のレジストパターン厚肉化材料の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶液、コロイド液、エマルジョン液、などが挙げられる。
これらの中でも、塗布性の点で、水溶液が好ましい。
【0014】
<樹脂>
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性樹脂が挙げられる。
前記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、オキサゾリン基含有水溶性樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、アルキッド樹脂、スルホンアミド樹脂、セルロース、タンニン、が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、安定性の点で、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、セルロース、タンニンが好ましい。
前記樹脂の前記レジストパターン厚肉化材料における含有量としては、特に制限はなく、一般式(1)で表される環状化合物、一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物、界面活性剤等の種類、含有量などに応じて適宜決定することができるが、前記一般式(1)で表される環状化合物以外のレジストパターン厚肉化材料(前記一般式(1)で表される環状化合物を含まないレジストパターン厚肉化材料)100質量部に対し、0.2質量部〜10質量部が好ましく、0.8質量部〜8質量部がより好ましく、1質量部〜5質量部が特に好ましい。
前記樹脂の含有量が、前記一般式(1)で表される環状化合物以外のレジストパターン厚肉化材料(前記一般式(1)で表される環状化合物を含まないレジストパターン厚肉化材料)100質量部に対し、0.2質量部未満であると、又は、10質量部を超えると、塗布性に問題が生じることがある。一方、前記樹脂の含有量が、特に好ましい範囲内であると、塗布性の点で有利である。
【0015】
<一般式(1)で表される環状化合物>
前記環状化合物としては、下記一般式(1)で表される限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。下記一般式(1)で表される環状化合物は、環状構造の内部空孔に、他の小さい分子を取り込む(包接する)性質を有する環状オリゴ糖化合物である。
【化9】

前記一般式(1)中、Qは、水素原子、アルキル基、アセチル基、及びヒドロキシアルキル基の少なくともいずれかを表す。kは、6、7又は8の整数を表す。
前記一般式(1)で表される環状化合物の具体例としては、シクロデキストリン、などが挙げられる。
前記一般式(1)で表される環状化合物の前記レジストパターン厚肉化材料における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜決定することができるが、後述する一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物に対し、5mol%〜100mol%が好ましい。一般式(2)及び(3)のいずれかで表される化合物を包接して昇華を防ぐことが目的であるため、基本的には100mol%添加が望ましいが、一般式(2)及び(3)のいずれかで表される化合物によっては、その効果の度合いが異なるため、100mol%添加を必要としない場合もあり、添加量は適宜選択できる。
【0016】
<一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物>
前記化合物としては、下記一般式(2)及び下記一般式(3)のいずれかで表されるものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水溶性芳香族化合物が好ましい。前記水溶性芳香族化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、フェニル乳酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、4−ヒドロキシベンジルアルコールなどが挙げられる。
【化10】

【化11】

【0017】
前記一般式(2)中、Rとしては、環状構造を含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芳香族炭化水素化合物、複素環式化合物、及び脂環式化合物から選択される少なくとも1種を含む環状構造が好ましい。
前記芳香族炭化水素化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芳香族環が好ましい。該芳香族環としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ベンゼン環、ナフタレン環、などが挙げられる。
前記複素環式化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ピリジン、ピリミジンが好ましい。
前記脂環式化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、シクロヘキシル環、ノルボルニル、アダマンタンが好ましい。
前記一般式(2)中、Aとしては、カルボキシル基を含む一価の有機基である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、などが挙げられる。
これらの中でも、水溶性の点で、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、カルボニル基、及びアルコキシカルボニル基、から選択される2種以上を同時に含むものが好ましく、水酸基及びアミノ基を同時に含むものがより好ましい。
前記一般式(2)中、Bとしては、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、カルボニル基、及びアルコキシカルボニル基のいずれかであり、前記置換の数が1又は2の整数であるものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水溶性の点で、水酸基及びアミノ基のいずれかが好ましい。
前記一般式(2)中、mとしては、1以上の整数を表すものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、架橋反応の発生を抑制して反応を容易に制御することができる点で、1が好ましい。また、mが2以上の整数を表す場合、Aは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記一般式(2)中、nとしては、0以上の整数を表すものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水溶性の点で、0〜2の整数が好ましい。また、nが2以上の整数を表す場合、Bは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、マンデル酸、フェニルアラニン、フェニルグリシン、チロシン、フェニル乳酸、ヒドロキシフェニルピルビン酸、ヒドロキシフェニルプロピオン酸、ヒドロキシジメチルフェニルプロピオン酸、アミノテトラリンカルボン酸、アミノフェニルプロピオン酸、フェニルグルタリン酸、フェニレンジプロピオン酸、ベンジルセリン、ナフチルアラニン、メチルシクロヘキサンカルボン酸、アミノシクロヘキサンカルボン酸、アミノビシクロヘプタンカルボン酸、ヒドロキシアダマンタンカルボン酸、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水溶性が高く多量に溶解させることができる点で、一般式(2)中のAがカルボキシル基及び水酸基を同時に含むフェニル乳酸、一般式(2)中のAがカルボキシル基及びアミノ基を同時に含むフェニルアラニン、フェニルグリシン、などが好ましい。
【0018】
前記一般式(3)中、Sとしては、芳香族炭化水素構造である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記芳香族炭化水素構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芳香族環が好ましい。該芳香族環としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ベンゼン環、ナフタレン環、などが挙げられる。
前記一般式(3)中、Xとしては、下記一般式(4)で表されるものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
【化12】

前記一般式(4)中、R1及びR2は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子及び任意の置換基の少なくともいずれかを表し、Zは、水酸基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、及びアルコキシ基のいずれかを表し、前記置換の数は1又は2の整数である。
前記一般式(4)中、R1及びR2は、水素であるのが好ましい。該R1及びR2が水素であると、水溶性の面で有利であることが多い。
前記一般式(4)中、R1及びR2が前記置換基である場合、該置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケトン(アルキルカルボニル)基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、などが挙げられる。
前記一般式(3)中、Yとしては、水酸基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、及びアルキル基の少なくともいずれかで表され、前記置換の数が1又は2の整数であるものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水溶性の点で、水酸基が好ましい。
前記一般式(3)中、pは1以上の整数を表し、pが2以上の整数を表す場合、Xは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。qは、0以上の整数を表し、qが2以上の整数を表す場合、Yは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記一般式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、ベンジルアルコール構造を有する化合物、ベンジルアミン構造を有する化合物、などが好適に挙げられる。
前記ベンジルアルコール構造を有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ベンジルアルコール及びその誘導体が好ましく、具体的には、ベンジルアルコール、2−ヒドロキシベンジルアルコール(サリチルアルコール)、4−ヒドロキシベンジルアルコール、2−アミノベンジルアルコール、4−アミノベンジルアルコール、2,4−ジヒドロキシベンジルアルコール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1−フェニル−1,2−エタンジオール、4−メトキシメチルフェノール、などが挙げられる。
前記ベンジルアミン構造を有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ベンジルアミン及びその誘導体が好ましく、具体的には、ベンジルアミン、2−メトキシベンジルアミン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、水溶性が高く多量に溶解させることができる点で、2−ヒドロキシベンジルアルコール、4−アミノベンジルアルコールなどが好ましい。
【0020】
前記一般式(2)及び前記一般式(3)のいずれかで表される化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一般式(1)で表される環状化合物以外のレジストパターン厚肉化材料(前記一般式(1)で表される環状化合物を含まないレジストパターン厚肉化材料)100質量部に対し、0.01質量部〜50質量部が好ましく、0.1質量部〜10質量部がより好ましい。
前記一般式(2)及び前記一般式(3)のいずれかで表される化合物の含有量が、前記一般式(1)で表される環状化合物以外のレジストパターン厚肉化材料(前記一般式(1)で表される環状化合物を含まないレジストパターン厚肉化材料)100質量部に対し、0.01質量部未満であると、レジストパターン厚肉化効果において、所望の反応量が得られにくいことがあり、50質量部を超えると、塗布時に析出したり、パターン上で欠陥となったりすることがある。
【0021】
<水>
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、純水(脱イオン水)が好ましい。
前記水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜決定することができるが、塗布性の点で、前記一般式(1)で表される環状化合物以外のレジストパターン厚肉化材料(前記一般式(1)で表される環状化合物を含まないレジストパターン厚肉化材料)100質量部に対し、50質量部以上であることが好ましい。
【0022】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、界面活性剤、有機溶剤、公知の各種添加剤(例えば、アミン系、アミド系、アンモニウム塩素等に代表されるクエンチャー)、などが挙げられる。
前記その他の成分の前記レジストパターン厚肉化材料における含有量としては、前記樹脂、前記一般式(1)で表される環状化合物、前記一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物、等の種類や含有量などに応じて適宜決定することができる。
【0023】
−界面活性剤−
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ナトリウム塩、カリウム塩等の金属イオンを含有しない点で、非イオン性界面活性剤が好ましい。
前記非イオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコキシレート系界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、エチレンジアミン系界面活性剤、などが挙げられる。前記非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物化合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレン誘導体化合物、ソルビタン脂肪酸エステル化合物、グリセリン脂肪酸エステル化合物、第1級アルコールエトキシレート化合物、フェノールエトキシレート化合物、ノニルフェノールエトキシレート系化合物、オクチルフェノールエトキシレート系化合物、ラウリルアルコールエトキシレート系化合物、オレイルアルコールエトキシレート系化合物、脂肪酸エステル系化合物、アミド系化合物、天然アルコール系化合物、エチレンジアミン系化合物、第2級アルコールエトキシレート系化合物、などが挙げられる。
前記カチオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルカチオン系界面活性剤、アミド型4級カチオン系界面活性剤、エステル型4級カチオン系界面活性剤、などが挙げられる。
前記アニオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルアニオン系界面活性剤、などが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミンオキサイド系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤などが挙げられる。
前記界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、前記樹脂、前記一般式(1)で表される環状化合物、前記一般式(2)、(3)で表される化合物等の種類や含有量などに応じて適宜選択することができるが、例えば、前記一般式(1)で表される環状化合物以外のレジストパターン厚肉化材料(前記一般式(1)で表される環状化合物を含まないレジストパターン厚肉化材料)100質量部に対し、2質量部以下であることが好ましい。前記界面活性剤の含有量が、2質量部を超えると、塗布時に析出したり、パターン上で欠陥となる可能性が高くなる。
前記界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記一般式(1)で表される環状化合物以外のレジストパターン厚肉化材料(前記一般式(1)で表される環状化合物を含まないレジストパターン厚肉化材料)100質量部に対し、2質量部以下であることが好ましい。2質量部を超えると塗布時の析出や、レジストパターン上で欠陥となる可能性が高くなる。
本発明のレジストパターン厚肉化材料は界面活性剤を含まない場合でも、レジストパターンとの親和性が高く厚肉化効果が得られることから、これを必須成分としないため、添加量の下限は規定されないが、前述したような界面活性剤の効果が明らかに得られる添加量としては、前記一般式(1)で表される環状化合物以外のレジストパターン厚肉化材料(前記一般式(1)で表される環状化合物を含まないレジストパターン厚肉化材料)100質量部に対し、0.01質量部〜1質量部が特に好ましい。
【0024】
−有機溶剤−
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール系有機溶剤、鎖状エステル系有機溶剤、環状エステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、鎖状エーテル系有機溶剤、環状エーテル系有機溶剤、などが挙げられる。
前記有機溶剤は、水と混合して使用することができ、該水としては、純水(脱イオン水)などが好適に挙げられる。
前記アルコール系有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、などが挙げられる。
前記鎖状エステル系有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、などが挙げられる。
前記環状エステル系有機溶剤としては、、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン系有機溶剤、などが挙げられる。
前記ケトン系有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン、シクロヘキサノン、ヘプタノン等のケトン系有機溶剤、などが挙げられる。
前記鎖状エーテル系有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、などが挙げられる。
前記環状エーテル系有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、などが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、レジストパターンの厚肉化を精細に行うことができる点で、80℃〜200℃程度の沸点を有するものが好ましい。
前記有機溶剤を添加することにより、前記樹脂、前記一般式(1)で表される環状化合物、前記一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物、前記界面活性剤などの前記レジストパターン厚肉化材料に対する溶解性を向上させたり、前記レジストパターン厚肉化材料の防腐効果が得られる。
【0025】
<使用等>
本発明のレジストパターン厚肉化材料は、前記レジストパターン上に塗布して使用することができる。
なお、前記塗布の際、前記界面活性剤については、前記レジストパターン厚肉化材料に含有させずに、該レジストパターン厚肉化材料を塗布する前に別途に塗布してもよい。
【0026】
前記レジストパターン厚肉化材料を調製した際、前記一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物が、前記一般式(1)で表される環状化合物によって包接される。次いで、前記レジストパターン厚肉化材料を前記レジストパターン上に塗布し、該レジストパターンと相互作用(ミキシング)させると、該レジストパターンの表面に、前記レジストパターン厚肉化材料と前記レジストパターンとが相互作用してなる層(ミキシング層)が形成される。その結果、前記レジストパターンは、前記ミキシング層が形成された分だけ、厚肉化され、厚肉化されたレジストパターンが形成される。
このとき、前記レジストパターン厚肉化材料中に前記一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物が含まれているので、前記レジストパターンの材料の種類やサイズ等に関係なく良好なかつ均一な厚肉化効果が得られ、前記レジストパターンの材料やサイズに対して、厚肉化量の依存性が少ない。前記一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物が、前記一般式(1)で表される環状化合物によって包接されると、レジストパターン厚肉化材料を成膜後に、一般式(2)及び一般式(3)の沸点以上でベークした場合にも、これらの昇華を抑制することができる。一方で、前記一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物の厚肉化効果に関与する部分(例えば、水酸基等)は、前記一般式(1)で表される環状化合物から突出した状態になっていることによるものと考えられる。
さらに、前記一般式(2)及び前記一般式(3)のいずれかで表される化合物は、前記一般式(1)で表される環状化合物に包接されるため、レジストパターン厚肉化材料を塗布した後のベーク時に昇華しなくなる。
こうして厚肉化された前記レジストパターンにより形成された前記レジスト抜けパターンの径乃至幅は、厚肉化前の前記レジストパターンにより形成されていた前記レジスト抜けパターンの径乃至幅よりも小さくなる。その結果、前記レジストパターンのパターニング時に用いた露光装置の光源の露光限界(解像限界)を超えて(前記光源に用いられる光の波長でパターニング可能な開口乃至パターン間隔の大きさの限界値よりも小さく)、より微細な前記レジスト抜けパターンが形成される。即ち、前記レジストパターンのパターニング時にArFエキシマレーザ光を用いて得られたレジストパターンに対し、本発明の前記レジストパターン厚肉化材料を用いて厚肉化すると、厚肉化されたレジストパターンにより形成されたレジスト抜けパターンは、例えば、あたかも電子線を用いてパターニングしたかのような微細かつ高精細なものとなる上、高精細なパターンをリスク無く形成できるようになる。
なお、前記レジストパターンの厚肉化量は、前記レジストパターン厚肉化材料の粘度、塗布厚み、ベーク温度、ベーク時間等を適宜調節することにより、所望の範囲に制御することができる。
本願におけるレジストパターン厚肉化材料は、露光形成後のレジストパターン上に塗布するものであり、その塗布性については、樹脂、前記一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物、及び界面活性剤の組成によって決定されており、これに前記一般式(1)で表される環状化合物を添加しても、その基本的な性能には悪影響を与えず、十分なレジストパターン厚肉化効果を維持しながらも、前記一般式(1)で表される環状化合物の包接作用を利用することで、従来材料の問題となりうる前記一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物の昇華を抑制することができるものである。
【0027】
−レジストパターンの材料−
前記レジストパターン(本発明のレジストパターン厚肉化材料が塗布されるレジストパターン)の材料としては、特に制限はなく、公知のレジスト材料の中から目的に応じて適宜選択することができ、ネガ型、ポジ型のいずれであってもよく、例えば、g線、i線、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、Fエキシマレーザ、電子線等でパターニング可能なg線レジスト、i線レジスト、KrFレジスト、ArFレジスト、Fレジスト、電子線レジスト等が好適に挙げられる。これらは、化学増幅型であってもよいし、非化学増幅型であってもよい。これらの中でも、KrFレジスト、ArFレジスト、アクリル系樹脂を含んでなるレジスト、などが好ましく、より微細なパターニング、スループットの向上等の観点からは、解像限界の延伸が急務とされているArFレジスト、及びアクリル系樹脂を含んでなるレジストの少なくともいずれかがより好ましい。
前記レジストパターンの材料の具体例としては、ノボラック系レジスト、PHS系レジスト、アクリル系レジスト、シクロオレフィン−マレイン酸無水物系(COMA系)レジスト、シクロオレフィン系レジスト、ハイブリッド系(脂環族アクリル系−COMA系共重合体)レジストなどが挙げられる。これらは、フッ素修飾等されていてもよい。
前記レジストパターンの形成方法、大きさ、厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、特に厚みについては、加工対象である被加工面、エッチング条件等により適宜決定することができるが、一般に100nm〜500nm程度である。
【0028】
本発明のレジストパターン厚肉化材料を用いた前記レジストパターンの厚肉化について以下に図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、被加工面(基材)5上にレジストパターン3を形成した後、レジストパターン3の表面にレジストパターン厚肉化材料1を付与(塗布)し、ベーク(加温及び乾燥)をして塗膜を形成する。すると、レジストパターン3とレジストパターン厚肉化材料1との界面においてレジストパターン厚肉化材料1のレジストパターン3へのミキシング(含浸)が起こり、図2に示すように、内層レジストパターン10b(レジストパターン3)とレジストパターン厚肉化材料1との界面において前記ミキシング(含浸)した部分が反応して表層(ミキシング層)10aが形成される。このとき、レジストパターン厚肉化材料1中に前記一般式(2)及び(3)のいずれかで表される化合物が含まれているので、内層レジストパターン10b(レジストパターン3)の大きさに左右されず(依存せず)安定にかつ均一に内層レジストパターン10b(レジストパターン3)が厚肉化される。
【0029】
この後、図3に示すように、現像処理を行うことによって、付与(塗布)したレジストパターン厚肉化材料1の内、レジストパターン3と相互作用(ミキシング)していない部分乃至相互作用(ミキシング)が弱い部分(水溶性の高い部分)が溶解除去され、均一に厚肉化された厚肉化レジストパターン10が形成(現像)される。
なお、前記現像処理は、水現像であってもよいし、アルカリ現像液による現像であってもよいが、必要に応じて界面活性剤を水やアルカリ現像液に含有させたものを用いることも適宜可能であり、その詳細については後述する。
【0030】
厚肉化レジストパターン10は、内層レジストパターン10b(レジストパターン3)の表面に、レジストパターン厚肉化材料1が反応して形成された表層(ミキシング層)10aを有してなる。厚肉化レジストパターン10は、レジストパターン3に比べて表層(ミキシング層)10aの厚み分だけ厚肉化されているので、厚肉化レジストパターン10により形成されるレジスト抜けパターンの大きさ(隣接する厚肉化レジストパターン10間の距離、又は、厚肉化レジストパターン10により形成されたホールパターンの開口径)は、厚肉化前のレジストパターン3により形成されるレジスト抜けパターンの前記大きさよりも小さい。このため、レジストパターン3を形成する時の露光装置における光源の露光限界(解像限界)を超えて前記レジスト抜けパターンを微細に形成することができる。即ち、例えば、ArFエキシマレーザー光を用いて露光した場合にもかかわらず、例えば、あたかも電子線を用いて露光したかのような、微細な前記レジスト抜けパターンを形成することができる。厚肉化レジストパターン10により形成される前記レジスト抜けパターンは、レジストパターン3により形成される前記レジスト抜けパターンよりも微細かつ高精細である。
【0031】
厚肉化レジストパターン10における表層(ミキシング層)10aは、レジストパターン厚肉化材料1により形成される。レジストパターン厚肉化材料1は、前記一般式(2)及び(3)のいずれかで表される化合物を有するので、レジストパターン3(内層レジストパターン10b)がエッチング耐性に劣る材料であっても、得られる厚肉化レジストパターン10はエッチング耐性に優れる。
【0032】
本発明のレジストパターン厚肉化材料は、レジストパターンを厚肉化し、露光限界を超えて前記レジスト抜けパターンを微細化するのに好適に使用することができる。また、本発明のレジストパターン厚肉化材料は、本発明の半導体装置の製造方法などに特に好適に使用することができる。
【0033】
−レジストパターンの形成方法−
前記レジストパターンの形成方法においては、レジストパターンを形成後、該レジストパターンの表面を覆うように本発明の前記レジストパターン厚肉化材料を塗布することを含み、好ましくは、該塗布の前に、前記レジストパターンの全面に対して紫外線光及び電離放射線のいずれかを照射することを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の処理を含む。
【0034】
前記レジストパターンの材料としては、前記レジストパターン厚肉化材料において上述したものが好適に挙げられる。
前記レジストパターンは、公知の方法に従って形成することができる。
前記レジストパターンは、被加工面(基材)上に形成することができ、該被加工面(基材)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該レジストパターンが半導体装置に形成される場合には、該被加工面(基材)としては、半導体基材表面が挙げられ、具体的には、シリコンウエハ等の基板、各種酸化膜等が好適に挙げられる。
【0035】
前記レジストパターン厚肉化材料の塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の塗布方法の中から適宜選択することができ、例えば、スピンコート法などが好適に挙げられる。該スピンコート法の場合、その条件としては例えば、回転数が100rpm〜10,000rpm程度であり、800rpm〜5,000rpmが好ましく、時間が1秒間〜10分間程度であり、1秒間〜90秒間が好ましい。
【0036】
前記塗布の際の塗布厚みとしては、通常、10nm〜1,000nm程度であり、50nm〜300nm程度が好ましい。
【0037】
なお、前記塗布の際、前記界面活性剤については、前記レジストパターン厚肉化材料に含有させずに、該レジストパターン厚肉化材料を塗布する前に別途に塗布してもよい。
【0038】
前記レジストパターン厚肉化材料の塗布の前に、必要に応じて前記レジストパターンの全面に対して紫外線光及び電離放射線のいずれかを照射すること(以下、「前露光処理」と称することがある)もウエハ面内の前記レジストパターンの表面状態をそろえる観点から好ましい。この場合、その後に前記レジストパターン厚肉化材料を塗布すると、パターンの疎密差による厚肉化量の差を低減することができ、目的のサイズのレジストパターンを安定かつ効率的に得ることができる。すなわち、レジストパターンが疎な領域(レジストパターンの間隔が長い領域)とレジストパターンが密な領域(レジストパターンの間隔が短い領域)とを有する、パターン間隔が異なるレジストパターンや、種々のサイズが混在したレジストパターンを厚肉化した場合、その疎密差や大きさにより、厚肉化量が異なるという問題があった。これは、パターン毎に露光時の光強度分布が異なり、前記レジストパターンの現像では表面化しない程度のわずかな表面状態の差(かぶり露光量の差)が、前記レジストパターンと前記レジストパターン厚肉化材料とが相互作用して形成されるミキシング層の形成し易さに影響するためであり、前記レジストパターン厚肉化材料を塗布する前に前記レジストパターンの全面に対して、前記紫外線光又は前記電離放射線を照射すると、前記レジストパターンの表面状態を均一化することができ、前記パターンの疎密差や大きさなどに依存することなく、前記レジストパターンの厚肉化量を均一化することができる。
【0039】
前記紫外線光及び前記電離放射線としては、特に制限はなく、照射する前記レジストパターンの材料の感度波長に応じて適宜選択することができる。具体的には、、高圧水銀ランプ又は低圧水銀ランプから生じるブロードバンドの紫外線光のほか、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、Fエキシマレーザー光(波長157nm)、EUV光(波長5〜15nmの軟X線領域)、あるいは、電子線、X線などが挙げられる。なお、製造装置の構造上、これらの中から、前記レジストパターンの形成において露光時に使用する紫外線光又は電離放射線と同一のものを選択するのが好ましい。
前記紫外線光及び前記電離放射線の前記レジストパターンへの照射量(露光量)としては、特に制限はなく、使用する前記紫外線光又は前記電離放射線の種類に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記レジストパターンの形成に必要とされる照射量(露光量)に対して、0.1%〜20%が好ましい。
前記照射量が、0.1%未満であると、前記レジストパターンの表面状態の均一化効果が生じにくいことがあり、20%を超えると、必要充分以上に前記レジストパターンに光反応が生じてしまい、前記レジストパターンの上部の形状劣化やパターンの部分消失が生じやすくなることがある。
なお、一定の前記照射量で前記紫外線光又は前記電離放射線を照射する限り、その方法としては、特に制限はなく、強い光を使用した場合には短時間で、弱い光を使用した場合には長時間で、また、露光感度の高いレジスト材料を用いた場合には露光量(照射量)を少なく、露光感度の低いレジスト材料を用いた場合には露光量(照射量)を多くするなど適宜調節し、それぞれ行うことができる。
【0040】
また、前記レジストパターン厚肉化材料の塗布の際乃至その後で、塗布した前記レジストパターン厚肉化材料をプリベーク(加温及び乾燥)を行い、該レジストパターンと前記レジストパターン厚肉化材料との界面において該レジストパターン厚肉化材料の該レジストパターンへのミキシング(含浸)を効率よく生じさせることができる。
なお、前記プリベーク(加温及び乾燥)の条件、方法等としては、レジストパターンを軟化させない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、その回数としては、1回であってもよいし、2回以上であってもよい。2回以上の場合、各回におけるプリベークの温度は、一定であってもよいし、異なっていてもよく、前記一定である場合、40℃〜150℃程度が好ましく、60℃〜120℃がより好ましく、また、その時間としては、10秒間〜5分間程度が好ましく、40秒間〜100秒間がより好ましい。
【0041】
また、必要に応じて、前記プリベーク(加温及び乾燥)の後で、塗布した前記レジストパターン厚肉化材料の反応を促進する反応ベークを行うことも、前記レジストパターンとレジストパターン厚肉化材料との界面において前記ミキシング(含浸)した部分の反応を効率的に進行させることもできる等の点で好ましい。
なお、前記反応ベークの条件、方法等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記プリベーク(加温及び乾燥)よりも通常高い温度条件が採用される。前記反応ベークの条件としては、例えば、温度が60℃〜150℃程度であり、70℃〜130℃が好ましく、時間が10秒間〜5分間程度であり、40秒間〜100秒間が好ましい。
【0042】
更に、前記反応ベークの後で、塗布した前記レジストパターン厚肉化材料に対し、現像処理を行うのが好ましい。この場合、塗布したレジストパターン厚肉化材料の内、前記レジストパターンと相互作用(ミキシング)及び反応していない部分乃至相互作用(ミキシング)が弱い部分(水溶性の高い部分)を溶解除去し、厚肉化レジストパターンを現像する(得る)ことができる点で好ましい。
【0043】
前記現像処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水現像であってもよいし、アルカリ現像であってもよく、界面活性剤を含む水や、界面活性剤を含むアルカリ現像液を用いて行うことも好ましい。この場合、前記レジストパターン厚肉化材料と前記レジストパターンとの界面における厚肉化効果の面内均一性の向上を図り、残渣や欠陥の発生を低減することができる。
【0044】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ナトリウム塩、カリウム塩等の金属イオンを含有しない点で、非イオン性界面活性剤が好適に挙げられる。
前記非イオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、具体的には、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物化合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレン誘導体化合物、シリコーン化合物、ソルビタン脂肪酸エステル化合物、グリセリン脂肪酸エステル化合物、アルコールエトキシレート化合物、フェノールエトキシレート化合物などが好適に挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、イオン性界面活性剤であっても、非金属塩系のものであれば使用することは可能である。
【0045】
前記界面活性剤の水(現像原液)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001質量%〜1質量%が好ましく、0.05質量%〜0.5質量%が好ましい。
前記含有量が、0.001質量%未満であると、前記界面活性剤による効果が少なく、1質量%を超えると、現像液の溶解力が大きくなり過ぎるためスペースが広がってしまったり、パターンエッジが丸くなるなどの形状、及び前記レジスト抜けパターンの縮小量に与える影響も大きくなるほか、泡の発生による残渣や欠陥が発生しやすくなることがある。
【0046】
前記アルカリ現像液としては、特に制限はなく、半導体装置の製造に用いられる公知のものの中から適宜選択することができるが、四級水酸化アンモニウム水溶液、コリン水溶液などが好適に挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、低コストで汎用性が高い点で、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液が好ましい。
また、前記アルカリ現像液に、必要に応じて前記界面活性剤を添加してもよい。この場合、前記界面活性剤の前記アルカリ現像液における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記同様、0.001質量%〜1質量%が好ましく、0.05質量%〜0.5質量%がより好ましい。
【0047】
(半導体装置の製造方法)
本発明の半導体装置の製造方法は、レジストパターン形成工程を含み、パターニング工程、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程とを含む。
【0048】
前記レジストパターン形成工程は、被加工面上にレジストパターンを形成後、該レジストパターンの表面を覆うように、前記レジストパターン厚肉化材料を塗布することにより該レジストパターンを厚肉化する工程である。該レジストパターン形成工程により、厚肉化された厚肉化レジストパターンが前記被加工面上に形成される。
該レジストパターン形成工程における詳細は、前記レジストパターンの形成方法と同様である。
なお、前記被加工面としては、半導体装置における各種部材の表面層が挙げられるが、シリコンウエハ等の基板乃至その表面、各種酸化膜などが好適に挙げられる。前記レジストパターンは上述した通りである。前記塗布の方法は上述した通りである。また、該塗布の後では、上述のプリベーク、反応ベーク等を行うのが好ましい。
【0049】
前記パターニング工程は、前記レジストパターン形成工程により形成した前記厚肉化レジストパターンをマスク等として用いて(マスクパターン等として用いて)エッチングを行うことにより、前記被加工面をパターニングする工程である。
前記エッチングの方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ドライエッチングが好適に挙げられる。該エッチングの条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0050】
前記その他の工程としては、例えば、界面活性剤塗布工程、現像処理工程などが好適に挙げられる。
【0051】
前記界面活性剤塗布工程は、前記厚肉化レジストパターン形成工程の前に、前記レジストパターンの表面に前記界面活性剤を塗布する工程である。
【0052】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、上述したものが好適に挙げられ、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物化合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレン誘導体化合物、ソルビタン脂肪酸エステル化合物、グリセリン脂肪酸エステル化合物、第1級アルコールエトキシレート化合物、フェノールエトキシレート化合物、ノニルフェノールエトキシレート系化合物、オクチルフェノールエトキシレート系化合物、ラウリルアルコールエトキシレート系化合物、オレイルアルコールエトキシレート系化合物、脂肪酸エステル系化合物、アミド系化合物、天然アルコール系化合物、エチレンジアミン系化合物、第2級アルコールエトキシレート系化合物、アルキルカチオン系化合物、アミド型4級カチオン系化合物、エステル型4級カチオン系化合物、アミンオキサイド系化合物、ベタイン系化合物、などが挙げられる。
【0053】
前記現像処理工程は、前記レジストパターン形成工程の後であって前記パターニング工程の前に、塗布したレジストパターン厚肉化材料の現像処理を行う工程である。なお、前記現像処理は、上述した通りである。
本発明の半導体装置の製造方法によると、例えば、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、等を初めとする各種半導体装置を効率的に製造することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0055】
(実施例1)
−レジストパターン厚肉化材料の調製−
表1に示す組成を有するレジストパターン厚肉化材料A〜Qを調製した。
なお、表1において、「厚肉化材料」は、レジストパターン厚肉化材料を意味し、「A」〜「Q」は、前記レジストパターン厚肉化材料A〜Qに対応している。前記レジストパターン厚肉化材料A〜Qの内、前記レジストパターン厚肉化材料A、B、P、Qは比較例に相当し、前記レジストパターン厚肉化材料C〜Oは実施例(本発明)に相当する。表1中のカッコ内の数値の単位は、「質量(g)」を表す。
前記レジストパターン厚肉化材料C〜Oの「一般式(1)表される化合物」の欄における、シクロデキストリン化合物は、いずれも、一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物に対して、100mol%量をそれぞれ添加したものである。なお、各物質の分子量は、α−シクロデキストリン(972.84)、β−シクロデキストリン(1,134.98)、γ−シクロデキストリン(1,297.12)、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(1,400)、2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン(1、350)、メチル−β−シクロデキストリン(1,300)、モノアセチル-β-シクロデキストリン(1,400)として添加量を決定した。
また、「一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物」の欄における、「2HBA」は、2−ヒドロキシベンジルアルコールを表し、「4HBA」は、4−ヒドロキシベンジルアルコールを表し、「PLA」はフェニル乳酸を表す。
また、「樹脂」の欄における「PVA」は、ポリビニルアルコール樹脂(「PVA−205C」;クラレ製)を表す。「界面活性剤」の欄における、「PC−6」は、非イオン性界面活性剤(多核フェノール系界面活性剤、旭電化製)を表し、「TN−80」は、非イオン性界面活性剤(第1級アルコールエトキシレート系界面活性剤、旭電化製)を表す。
また、溶剤成分は純水(脱イオン水)を用い、それぞれの組成に対して100(g)とした。
また、α−シクロデキストリンは、東京化成工業製であり、β−シクロデキストリンは、東京化成工業製であり、γ−シクロデキストリンは、東京化成工業製であり、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは、和光純薬工業製であり、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリンは、和光純薬工業製であり、メチル−β−シクロデキストリンは、和光純薬工業製であり、モノアセチル-β-シクロデキストリンは、純正化学製である。
【0056】
【表1】

【0057】
−昇華性の確認−
以上により調製した本発明のレジストパターン厚肉化材料A〜Qを、1インチのウエハ上に、スピンコート法により、初めに850rpm/5sの条件で、次に3,500rpm/20sの条件で塗布して測定試料を調製した。次に、QCM装置(商品名:RQCM、Maxtek製)において、水晶振動子を測定用ホルダにセットし、前記厚肉化材料を塗布したウエハを110℃のホットプレート上に置くと同時に、ウエハを覆うようにホルダを被せ、60s間のベーキング中に測定を行った。
この時、ウエハに塗布された前記厚肉化材料から発生した昇華物は、ウエハを覆ったホルダ内の水晶振動子に付着し、これが重量変化として計測されることで、これを厚肉化材料からの昇華量とし、これを表2に示す。昇華量は、1インチウエハあたりに発生した量(μg)である。なお、表2において、「A」〜「Q」は、前記レジストパターン厚肉化材料A〜Qに対応する。
【0058】
【表2】

表2より、前記一般式(1)で表される環状化合物を含む本発明のレジストパターン厚肉化材料C〜Oは、従来材料(A、B)がベークされる際に発生する昇華物を防ぐ効果があることが判った。
【0059】
−レジストパターンの形成−
以上により調製した本発明のレジストパターン厚肉化材料A〜Qを、脂環族系ArFレジスト(「EPIC2380」;ローム&ハース製)より形成したホールパターン(表3における「パターン初期サイズ」で示される開口径を有する)上に、スピンコート法により、初めに850rpm/5sの条件で、次に3,500rpm/20sの条件で塗布し、110℃/60sの条件でベークを行った後、純水でレジストパターン厚肉化材料A〜Qを60秒間リンスし、相互作用(ミキシング)しなかった未反応部を除去し、レジストパターン厚肉化材料A〜Qにより厚肉化したレジストパターンを現像させることにより、厚肉化レジストパターンを形成した。
得られた厚肉化レジストパターンにより形成された前記レジスト抜けパターンのサイズの縮小量(表3における「パターン厚肉化量」)を表3に示す。なお、表2において、「A」〜「Q」は、前記レジストパターン厚肉化材料A〜Qに対応する。
【0060】
【表3】

表3より、前記一般式(1)で表される環状化合物を含む本発明のレジストパターン厚肉化材料C〜Oを用いた場合も、前記一般式(1)を含まない従来のレジストパターン厚肉化材料(A,B)と同様にパターンの厚肉化効果があることが判った。
また、前記一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物を含まないレジストパターン厚肉化材料(P,Q)は、十分なパターンの厚肉化効果が得られないことが判った。
【0061】
次に、レジストパターン厚肉化材料Cについて、一般式(1)で表される環状化合物として添加したα-シクロデキストリンの添加量を変えたレジストパターン厚肉化材料を調製した。前記レジストパターン厚肉化材料Cは、一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表される化合物のいずれかとして添加した2-ヒドロキシベンジルアルコールに対して100mol%のα-シクロデキストリンを添加したものであるが、さらに、50mol%のα-シクロデキストリン、25mol%のα-シクロデキストリンを添加したレジストパターン厚肉化材料を調製し、添加なし(0mol%のα-シクロデキストリン:レジストパターン厚肉化材料A)と共に、パターン厚肉化量及び昇華量を表4に示す。
【表4】

表4より、一般式(1)で表される環状化合物であるα-シクロデキストリンの添加量の増加に伴い、2-ヒドロキシベンジルアルコールの昇華量が減少し、レジストパターン厚肉化材料から2-ヒドロキシベンジルアルコールが昇華することを抑制し、また厚肉化量については若干の変化はあるもののレジストパターンを厚肉化させる効果は十分に維持したままであることが判った。
【0062】
レジストパターン厚肉化材料Gについて、一般式(1)で表される環状化合物として添加した2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの添加量を変えたレジストパターン厚肉化材料を調製した。前記レジストパターン厚肉化材料Gは、一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表される化合物のいずれかとして添加した2-ヒドロキシベンジルアルコールに対して100mol%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを添加したものであるが、さらに、50mol%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、25mol%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを添加したレジストパターン厚肉化材料を調製し、添加なし(0mol%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン:レジストパターン厚肉化材料B)と共に、パターン厚肉化量及び昇華量を表5に示す。
【0063】
【表5】

表5より、一般式(1)で表される環状化合物である2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの添加量の増加に伴い、2-ヒドロキシベンジルアルコールの昇華量が減少し、レジストパターン厚肉化材料から2-ヒドロキシベンジルアルコールが昇華することを抑制し、また厚肉化量については若干の変化はあるもののレジストパターンを厚肉化させる効果は十分に維持したままであることが判った。
【0064】
レジストパターン厚肉化材料Hについて、一般式(1)で表される環状化合物として添加したメチル-β-シクロデキストリンの添加量を変えたレジストパターン厚肉化材料を調製した。前記厚肉化材料Hは、一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表される化合物のいずれかとして添加した2-ヒドロキシベンジルアルコールに対して100mol%のメチル-β-シクロデキストリンを添加したものであるが、さらに、50mol%のメチル-β-シクロデキストリン、25mol%のメチル-β-シクロデキストリンを添加したレジストパターン厚肉化材料を調製し、添加なし(0mol%のメチル-β-シクロデキストリン:レジストパターン厚肉化材料B)と共に、パターン厚肉化量及び昇華量を表6に示す。
【0065】
【表6】

表6より、一般式(1)で表される環状化合物であるメチル-β-シクロデキストリンの添加に伴い、2-ヒドロキシベンジルアルコールの昇華量が減少し、レジストパターン厚肉化材料から2-ヒドロキシベンジルアルコールが昇華することを抑制し、また厚肉化量については若干の変化はあるもののレジストパターンを厚肉化させる効果は十分に維持したままであることが判った。
【0066】
(実施例2)
−半導体装置の作製−
図4Aに示すように、シリコン基板11上に層間絶縁膜12を形成し、図4Bに示すように、層間絶縁膜12上にスパッタリング法によりチタン膜13を形成した。次に、図4Cに示すように、本発明のダブルパターニング法によりレジストパターン14を形成し、これをマスクとして用い、反応性イオンエッチングによりチタン膜13をパターニングして開口部15aを形成した。引き続き、反応性イオンエッチングによりレジストパターン14を除去するととともに、図4Dに示すように、チタン膜13をマスクにして層間絶縁膜12に開口部15bを形成した。次に、チタン膜13をウェット処理により除去し、図4Eに示すように層間絶縁膜12上にTiN膜16をスパッタリング法により形成し、続いて、TiN膜16上にCu膜17を電解めっき法で成膜した。次いで、図4Fに示すように、CMPにて開口部15b(図4D)に相当する溝部のみにバリアメタルとCu膜(第一の金属膜)を残して平坦化し、第一層の配線17aを形成した。次いで、図4Gに示すように、第一層の配線17aの上に層間絶縁膜18を形成した後、図4A〜図4Fと同様にして、図4Hに示すように、第一層の配線17aを、後に形成する上層配線と接続するCuプラグ(第二の金属膜)19及びTiN膜16aを形成した。上述の各工程を繰り返すことにより、図4Iに示すように、シリコン基板11上に第一層の配線17a、第二層の配線20a、及び第三層の配線21aを含む多層配線構造を備えた半導体装置を製造した。なお、図4Iにおいては、各層の配線の下層に形成したバリアメタル層は、図示を省略した。この実施例2では、レジストパターン14が、本発明のレジストパターン厚肉化材料を用いて、製造したレジストパターンである。
【0067】
本発明のレジストパターン厚肉化材料は、ArFレジスト、液浸用レジスト等によるレジストパターンを厚肉化し、パターニングの露光時には光を使用しつつも、該光の露光限界を超えてレジスト抜けパターン乃至配線パターン等のパターンを微細化に形成するのに好適に用いることができ、各種のパターニング方法、半導体の製造方法等に好適に適用することができ、本発明のレジストパターン厚肉化材料は、本発明のレジストパターンの形成方法、本発明の半導体装置の製造方法に特に好適に用いることができる。
本発明の半導体装置の製造方法は、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、等を初めとする各種半導体装置の製造に好適に用いることができる。
【0068】
以上の実施例1〜2を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 樹脂と、下記一般式(1)で表される環状化合物と、下記一般式(2)及び下記一般式(3)のいずれかで表される化合物と、水と、を含むことを特徴とするレジストパターン厚肉化材料。
【化13】

前記一般式(1)中、Qは、水素原子、アルキル基、アセチル基、及びヒドロキシアルキル基の少なくともいずれかを表す。kは、6、7又は8の整数を表す。
【化14】

前記一般式(2)中、Rは、環状構造を表す。Aは、カルボキシル基を含む一価の有機基を表し、mは1以上の整数を表す。Bは、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、カルボニル基、及びアルコキシカルボニル基の少なくともいずれかを表し、前記置換の数は1又は2の整数である。nは、0以上の整数を表す。
【化15】

【化16】

前記一般式(3)中、Sは、芳香族炭化水素構造を表し、Xは、前記一般式(4)で表される化合物を表し、Yは、水酸基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、及びアルキル基の少なくともいずれかを表し、前記置換の数は1又は2の整数である。pは1以上の整数を表し、qは0以上の整数を表す。
前記一般式(4)中、R1及びR2は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子及び任意の置換基の少なくともいずれかを表し、Zは、水酸基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、及びアルコキシ基のいずれかを表し、前記置換の数は1又は2の整数である。
(付記2) 樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1種を含む付記1に記載のレジストパターン厚肉化材料。
(付記3) 一般式(1)で表される環状化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、モノアセチル−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、及び2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリンから選択される少なくとも1種を含む付記1から2のいずれかに記載のレジストパターン厚肉化材料。
(付記4) 一般式(1)で表される環状化合物が、メチル−β−シクロデキストリンを含む付記3に記載のレジストパターン厚肉化材料。
(付記5) 一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物が、ヒドロキシベンジルアルコール構造を含む付記1から4のいずれかに記載のレジストパターン厚肉化材料。
(付記6) 一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物が、2−ヒドロキシベンジルアルコール及び4−ヒドロキシベンジルアルコールのいずれかである付記5に記載のレジストパターン厚肉化材料。
(付記7) 一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物が、フェニル乳酸である付記1から4のいずれかに記載のレジストパターン厚肉化材料。
(付記8) 一般式(1)で表される環状化合物の含有量が、一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物に対し、5mol%〜100mol%である付記1から7のいずれかに記載のレジストパターン厚肉化材料。
(付記9) 界面活性剤を更に含み、該界面活性剤が、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン縮合物系、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル系、グリセリン脂肪酸エステル系、第1級アルコールエトキシレート系、フェノールエトキシレート系、ノニルフェノールエトキシレート系、オクチルフェノールエトキシレート系、ラウリルアルコールエトキシレート系、オレイルアルコールエトキシレート系、脂肪酸エステル系、アミド系、天然アルコール系、エチレンジアミン系、第2級アルコールエトキシレート系、アルキルカチオン系、アミドまたはエステル型4級カチオン系、アミンオキサイド系、及びベタイン系から選択される少なくとも1種の界面活性剤である付記1から8のいずれかに記載のレジストパターン厚肉化材料。
(付記10) 被加工面上にレジストパターンを形成後、該レジストパターンの表面を覆うように、付記1から9のいずれかに記載のレジストパターン厚肉化材料を塗布することにより該レジストパターンを厚肉化させる工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記11) 厚肉化したレジストパターンをマスクとして、エッチングにより前記被加工面上をパターニングする工程を更に含む付記10に記載の半導体装置の製造方法。
(付記12) 付記10から11のいずれかに記載の半導体装置の製造方法により製造されることを特徴とする半導体装置。
【符号の説明】
【0069】
1 レジストパターン厚肉化材料
3 レジストパターン
5 被加工面(基材)
10 レジストパターン
10a 表層
10b 内層レジストパターン
11 シリコン基板
12 層間絶縁膜
13 チタン膜
14 レジストパターン
15a 開口部
15b 開口部
16 TiN膜
16a TiN膜
17 Cu膜
17a 配線
18 層間絶縁膜
19 Cuプラグ
20a 配線
21a 配線



【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、下記一般式(1)で表される環状化合物と、下記一般式(2)及び下記一般式(3)のいずれかで表される化合物と、水と、を含むことを特徴とするレジストパターン厚肉化材料。
【化17】

前記一般式(1)中、Qは、水素原子、アルキル基、アセチル基、及びヒドロキシアルキル基の少なくともいずれかを表す。kは、6、7又は8の整数を表す。
【化18】

前記一般式(2)中、Rは、環状構造を表す。Aは、カルボキシル基を含む一価の有機基を表し、mは、1以上の整数を表す。Bは、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、カルボニル基、及びアルコキシカルボニル基の少なくともいずれかを表し、前記置換の数は1又は2の整数である。nは、0以上の整数を表す。
【化19】

【化20】

前記一般式(3)中、Sは、芳香族炭化水素構造を表し、Xは、前記一般式(4)で表される化合物を表し、Yは、水酸基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、及びアルキル基の少なくともいずれかを表し、前記置換の数は1又は2の整数である。pは1以上の整数を表し、qは0以上の整数を表す。
前記一般式(4)中、R1及びR2は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子及び任意の置換基の少なくともいずれかを表し、Zは、水酸基、アミノ基、アルキル基置換アミノ基、及びアルコキシ基のいずれかを表し、前記置換の数は1又は2の整数である。
【請求項2】
樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載のレジストパターン厚肉化材料。
【請求項3】
一般式(1)で表される環状化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、モノアセチル−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、及び2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリンから選択される少なくとも1種を含む請求項1から2のいずれかに記載のレジストパターン厚肉化材料。
【請求項4】
一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物が、ヒドロキシベンジルアルコール構造を含む請求項1から3のいずれかに記載のレジストパターン厚肉化材料。
【請求項5】
一般式(1)で表される環状化合物の含有量が、一般式(2)及び一般式(3)のいずれかで表される化合物に対し、5mol%〜100mol%である請求項1から4のいずれかに記載のレジストパターン厚肉化材料。
【請求項6】
界面活性剤を更に含み、該界面活性剤が、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン縮合物系、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル系、グリセリン脂肪酸エステル系、第1級アルコールエトキシレート系、フェノールエトキシレート系、ノニルフェノールエトキシレート系、オクチルフェノールエトキシレート系、ラウリルアルコールエトキシレート系、オレイルアルコールエトキシレート系、脂肪酸エステル系、アミド系、天然アルコール系、エチレンジアミン系、第2級アルコールエトキシレート系、アルキルカチオン系、アミドまたはエステル型4級カチオン系、アミンオキサイド系、及びベタイン系から選択される少なくとも1種の界面活性剤である請求項1から5のいずれかに記載のレジストパターン厚肉化材料。
【請求項7】
被加工面上にレジストパターンを形成後、該レジストパターンの表面を覆うように、請求項1から6のいずれかに記載のレジストパターン厚肉化材料を塗布することにより該レジストパターンを厚肉化させる工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
厚肉化したレジストパターンをマスクとして、エッチングにより前記被加工面上をパターニングする工程を更に含む請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7から8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法により製造されることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【公開番号】特開2011−99903(P2011−99903A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252800(P2009−252800)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】