説明

レセプタクル

【課題】耐水素脆化を確保しつつコストを低減させることが可能なレセプタクルを提供する。
【解決手段】水素ガス消費部に水素ガスを補給する際に補給ノズルが接続されるレセプタクル10において、内部に水素ガスの流路31、42、51が形成されたボディ11を有する。水素ガスが触れる流路31、42、51を構成するボディ11の内周部22が耐水素脆化材料により形成され、その他の部分であるボディ11の外周部21が高強度材料により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、燃料電池自動車などの水素ガス消費部に水素ガスを補給する際に補給ノズルが接続されるレセプタクルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応によって発電する燃料電池をエネルギ源とした燃料電池自動車等が注目されている。この種の燃料電池を搭載した燃料電池自動車は、燃料ガスである水素ガスの充填口を備えており、この充填口を構成するレセプタクルにガスステーションの充填ノズル(補給ノズル)を接続し、車両に搭載された高圧タンク内へ燃料ガスである水素ガスを送り込むようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−19716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水素ガスが充填される充填口を構成するレセプタクルは、水素脆化が発生しにくい金属材料を用いることが要求されているが、この水素脆化に強い耐水素脆化材料(例えば、SUS316L、SUH660、A6061等)は高価であるため、レセプタクル自体のコストアップを招く原因となっている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、耐水素脆化を確保しつつコストを低減可能なレセプタクルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、水素ガス消費部に水素ガスを補給する際に補給ノズルが接続されるレセプタクルであって、内部に水素ガスの流路が形成されたボディを有し、前記ボディにおける水素ガスが触れる前記流路を構成する部分が耐水素脆化材料により形成され、他の部分が高強度材料により形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、水素ガスが触れる流路を構成する部分が耐水素脆化材料により形成され、他の部分が高強度材料により形成されているので、水素ガスに対する耐脆化を確保しつつ高価な耐水素脆化材料の量を極力抑えてコストを低減させることができる。つまり、耐水素脆化に優れ、低コストのレセプタクルを実現できる。
【0008】
また、前記ボディは、筒状に形成されており、前記流路が形成された内周部と、この内周部の外周側に一体的に設けられた外周部とを有し、前記内周部が耐水素脆化材料により形成され、前記外周部が高強度材料により形成されていてもよい。
【0009】
また、前記内周部が前記外周部内に嵌合され、これら内周部と外周部とが互いに接合されて一体化されていてもよい。
【0010】
また、内周側が水素脆化に強い耐水素脆化材料とされ、外周側が高強度材料とされたコア・クラッド構造の丸棒に機械加工を施すことによって、前記ボディが形成されていてもよい。
【0011】
前記ボディの流路には、当該流路を開閉する弁機構が設けられ、当該弁機構も耐水素脆化材料により形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレセプタクルによれば、耐水素脆化を確保しつつコストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1を参照して、本発明の実施の形態に係るレセプタクルについて説明する。
【0014】
図1は、先端(図1のX方向側の端部)にガススタンド側の充填ノズル(補給ノズル)が接続される、本実施の形態に係るレセプタクル10を示している。このレセプタクル10は、筒状のボディ11と、このボディ11の内部の後方側に設けられた弁機構12を有している。ボディ11の後端側に形成されたフランジ11aを車体に固定することにより、レセプタクル10が、水素ガス消費部である例えば燃料電池車両に取り付けられている。
【0015】
ボディ11は、外周部21と先端部を除く内周側の内周部22とからなる2層構造に形成されている。外周部21は、高強度鋼などの強度の高い金属材料からなる高強度材料から形成されている。内周部22は、例えば、SUS316L、SUH660、A6061などの水素脆化に強い耐水素脆化に優れた金属材料からなる耐水素脆化材料から形成されている。
【0016】
内周部22は、外周部21に形成された内孔21aに、後方側から嵌合されており、互いに接合されて一体化されている。なお、これら外周部21と内周部22との接合方法としては、例えば焼きばめ、ろう付け、爆着、溶接、接着あるいは拡散接合などがある。
【0017】
ボディ11の先端から後方の弁機構12に至る部分は、流路31が形成されている。流路31の途中には、小径に形成されたノズルシール孔32が設けられている。このノズルシール孔32には、溝部33が形成されており、この溝部33には、Oリング34が配設されている。また、ボディ11の先端側の外周に、ボールロック溝35が形成されている。
【0018】
充填時には、充填ノズルのノズル部30が流路31の先端側に挿入されて、充填ノズル(図示略)がレセプタクル10に接合される。つまり、充填ノズルは、ノズル部30が流路31に挿入されることにより、ノズルシール孔32のOリング34にてシールされ、また、充填ノズルに設けられた図示略のボールロック機構のボールがボールロック溝35に入り込むことにより、充填ノズルとレセプタクル10の接続状態がロックされる。
【0019】
ボディ11の後方側の内周部22には、メネジ41を有する嵌合孔42が形成されている。嵌合孔42には、フランジ部43を有する接続部材44が取り付けられている。接続部材44には、オネジ45が形成されている。フランジ部43がボディ11に当接するまでオネジ45をメネジ41にねじ込むことにより、接続部材44がボディ11に接合されている。この接続部材44には、その後端側に、燃料電池車両に搭載された高圧タンクに繋がる配管(図示略)が接続される。
【0020】
接続部材44には、その中心に流路51が形成されており、この流路51は先端側が大径に形成された摺動孔51aとされている。なお、接続部材44には、その先端側における外周に、溝部52が形成されており、この溝部52には、Oリング53が設けられている。そして、このOリング53によって接続部材44とボディ11の内周部22の嵌合孔42との間がシールされている。
【0021】
接続部材44の先端側には、先端へ向かって次第に縮径する台形錐形状の弁部61と、この弁部61から後方へ延在する摺動棒62とを有する弁体63が設けられている。弁体63の摺動棒62は、接続部材44の摺動孔51aに摺動可能に挿入されている。弁体63の弁部61には、そのテーパ面61aに溝部61bが形成されており、この溝部61bには、Oリング64が設けられている。
【0022】
また、接続部材44と弁体63との間には、圧縮バネ71が設けられており、この圧縮バネ71によって弁体63が先端側へ向かって付勢されている。ボディ11の内周部22の流路31と嵌合孔42との間には、弁体63の弁部61のテーパ面61aに対向するテーパ面72が形成されている。このテーパ面72には、圧縮バネ71によって先端側へ付勢されたテーパ面61aが当接し、これらテーパ面61a,72の間がOリング64によってシールされる。
【0023】
弁機構12では、弁体63が圧縮バネ71の付勢力に抗して後方側へ移動すると、テーパ面61a,72同士が離間し、流路31、嵌合孔42及び流路51が連通する。弁機構12を構成する接続部材44、弁体63及び圧縮バネ71は、ボディ11の内周部22と同様の耐水素脆化に優れた金属材料からなる耐水素脆化材料により形成されている。
【0024】
そして、上記構造のレセプタクル10では、その先端部に充填ノズルを接続した状態で、弁体63が圧縮バネ71の付勢力に抗して後端側へ移動すると、テーパ面61a,71同士が離間して、流路31、嵌合孔42及び流路51が連通する。充填ノズルから水素ガスが供給され、ボディ11内の内周部22の流路31、嵌合孔42及び接続部材44の流路51を介して車両の配管に送り込まれ、高圧ガスタンクに充填される。
【0025】
以上の実施の形態のレセプタクル10によれば、水素ガスが触れる流路31、嵌合孔42及び流路51を構成するボディ11の内周部22及び弁機構12が耐水素脆化材料により形成され、他の部分であるボディ11の外周部21が高強度材料により形成されているので、水素ガスに対する耐脆化を確保しつつ高価な耐水素脆化材料の量を極力抑えてコストを低減させることができる。つまり、耐水素脆化に優れ、低コストのレセプタクル10を実現できる。
【0026】
なお、上記実施形態では、高強度材料により形成された外周部21に、耐水素脆化材料により形成された内周部22を嵌合し、これらの異種金属同士を接合することによりボディ11を形成したが、内周側が耐水素脆化材料からなり、外周側が高強度材料からなるコア・クラッド構造の丸棒の金属材料に機械加工を施すことによって、ボディ11を形成してもよい。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0028】
例えば以上の実施形態では、レセプタクル10を有する水素ガス消費部が、燃料電池車両であったが、水素ガスを消費する他の各種移動体(ロボット、船舶、航空機等)や、建物(住宅、ビル等)用の発電設備にも本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係るレセプタクルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 レセプタクル
11 ボディ
21 外周部
22 内周部
31 流路
42 嵌合孔(流路)
51 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガス消費部に水素ガスを補給する際に補給ノズルが接続されるレセプタクルであって、
内部に水素ガスの流路が形成されたボディを有し、
前記ボディにおける水素ガスが触れる前記流路を構成する部分が耐水素脆化材料により形成され、他の部分が高強度材料により形成されていることを特徴とする、レセプタクル。
【請求項2】
前記ボディは、筒状に形成されており、前記流路が形成された内周部と、この内周部の外周側に一体的に設けられた外周部とを有し、前記内周部が耐水素脆化材料により形成され、前記外周部が高強度材料により形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のレセプタクル。
【請求項3】
前記内周部が前記外周部内に嵌合され、これら内周部と外周部とが互いに接合されて一体化されていることを特徴とする、請求項2に記載のレセプタクル。
【請求項4】
内周側が耐水素脆化材料からなり、外周側が高強度材料からなるコア・クラッド構造の丸棒に機械加工を施すことによって、前記ボディが形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のレセプタクル。
【請求項5】
前記ボディの流路には、当該流路を開閉する弁機構が設けられ、当該弁機構も耐水素脆化材料により形成されていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載のレセプタクル。

【図1】
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【公開番号】特開2009−156324(P2009−156324A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334191(P2007−334191)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】