説明

レゾルバの異常検出装置

【課題】二乗和の値が上記正常範囲の内外にまたがって変動することがあっても、レゾルバの異常を正確に且つ安定して検出できるレゾルバの異常検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】レゾルバに異常が発生した場合に、正弦信号と余弦信号を読み込み、正弦信号及び余弦信号の読み込み値又はその二乗値からレゾルバの異常判定を禁止するかどうかを判定するようにし、レゾルバの異常判定を禁止しないと判定しているときには上記検査値が正常範囲を外れる度にカウント値を累積して増加させ、そのカウント値が所定値以上になったときにレゾルバが異常であるものと判断させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転角度θに応じてsinθを表す正弦信号とcosθを表す余弦信号を出力するレゾルバの異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のレゾルバの異常検出装置として例えば特許文献1に記載のものが提案されている。この特許文献1に記載のレゾルバの異常検出装置では、正弦信号および余弦信号に基づいて、sin2θ+cos2θの値を算出し、その値が所定の正常範囲から外れている場合に、レゾルバ内部に異常が発生したものと判定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−72758号公報(段落0020および図5を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レゾルバに異常が発生した場合には、sin2θ+cos2θの値(二乗和)が上記回転体の回転角度θに応じて上記正常範囲の内外にまたがって変動することがある。この場合には、sin2θ+cos2θの値が上記正常範囲から外れた状態が継続しないことから、レゾルバに異常が発生していてもそれを確実に検出することができないことがある。その上、レゾルバが正常であっても、例えばノイズの影響によってsin2θ+cos2θの値が一時的に上記正常範囲から外れることがあるため、正常な状態のレゾルバを異常と判断してしまう虞があった。
【0005】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、上記二乗和の値が上記正常範囲の内外にまたがって変動することがあっても、レゾルバの異常を正確に且つ安定して検出できるレゾルバの異常検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、回転体の回転角度θに応じてsinθを表す正弦信号およびcosθを表す余弦信号を出力するレゾルバに付設され、そのレゾルバの異常を検出するレゾルバの異常検出装置において、
上記正弦信号および上記余弦信号のうち少なくとも一方に基づいて検査値を算出する検査値算出手段と、
上記検査値が正常範囲内にあるか否かによりレゾルバの異常の有無を判定する異常検出手段と、
上記正弦信号および上記余弦信号のうち少なくとも一方が、故障判定領域の外に相当するときに上記異常検出手段の判定を禁止する手段と、
上記異常検出手段がレゾルバに異常があるものと判定しているときに経時に伴ってカウント値を計数するカウント手段と、
上記異常検出手段がレゾルバに異常がないものと判定しているときにカウント値をリセットするリセット手段と、
上記カウント値が異常確定しきい値以上である場合にレゾルバに異常が発生しているものと確定する異常確定手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、正弦信号および余弦信号のうち少なくとも一方の値が正常範囲の内外にまたがって変動することがあっても、また、例えばノイズの影響によって上記正弦信号および余弦信号のうち少なくとも一方の値が一時的に上記正常範囲から外れることがあっても、レゾルバの異常を正確に且つ安定して検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明のレゾルバの異常検出装置の実施対象である電動パワーステアリング制御装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るレゾルバの異常検出装置を機能的に示したブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るレゾルバの信号波形例である。
【図4】図2の異常検出手段の具体的構成例を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係るレゾルバの電気角とレゾルバ角の関係を示す図である。
【図6】特許文献1に記載の従来のレゾルバの異常検出装置に異常が生じた際におけるレゾルバ異常検出手段の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図7】この発明の実施の形態1に係るレゾルバの異常検出装置に異常が生じた際におけるレゾルバ異常検出手段の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図8】は図7のレゾルバ異常検出手段の別の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図9】この発明の実施の形態1に係るレゾルバ異常検出手段の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態2に係るレゾルバ異常検出手段の処理内容を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態3に係るレゾルバ異常検出手段の処理内容を示すフローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態4に係るレゾルバ異常検出手段の処理内容を示すフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態5に係るレゾルバ異常検出手段の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のレゾルバの異常検出装置の使用対象となりうる車両用電動パワーステアリング制御装置の構成図である。操舵アシストトルクを発生する永久磁石同期モータ(以下PMモータ)5は減速ギア4を介してステアリングシャフト2の一端に接続されており、ステアリングシャフト2の他端にはステアリングホイール1が接続されている。また、ステアリングシャフト2にはステアリングホイール1の操舵トルクを検出するトルクセンサ3が接続されている。
【0010】
コントローラ100はこの発明の対象であるレゾルバ異常検出装置に相当するものであり、トルクセンサ3のトルク検出値と、車速センサ6の車速検出値とに基づいて操舵アシストトルクを決定し、レゾルバ9により検出したロータ位置に応じてPMモータ5を駆動することによりステアリングホイール1の操舵をアシストする。
なお、バッテリ1は直接あるいはイグニッションキー8の操作を介してコントローラ100に電圧を供給している。
【0011】
図2は上記レゾルバの異常検出装置のソフトウエア構成を機能的に示したブロック図である。本実施例では、8極モータ(2m=8、m=4)と4極レゾルバ(2n=4、n=2)の組み合わせを例に説明を行う。なお、m、nはそれぞれ自然数を示す。
図2においてコントローラ100はマイクロコンピュータで構成され、q軸目標電流演算部100aと、d軸目標電流設定部100b(詳細構成は省略している)と、位置演算部100cと、dq変換部100dと、電流制御部100eと、dq逆変換部100fと、励磁信号発生部100gと、異常検出装置100hとからなっている。
【0012】
q軸目標電流演算部100aは、操舵トルクを検出するトルクセンサ3のトルク検出信号および車速を検出する車速センサ6の車速検出信号に基づき所定の演算を行って、PMモータ5を駆動するためのq軸目標電流値(Iq*)を決定し、決定したq軸目標電流値を電流制御部100eに供給する。ただし、前記異常検出装置100hより、モータ駆動停止信号が供給された場合には、前記q軸目標電流演算部100aはq軸目標電流を0として電流制御部100eに供給し、また、d軸目標電流設定部100bは、d軸目標電流を0として電流制御部100eに供給する。
【0013】
励磁信号発生部100gは、レゾルバ9の励磁信号を生成するための10kHzのパルス信号を発生する。前記パルス信号はLPF等により波形整形され、励磁信号b・sinωt(図3(a)参照)としてレゾルバ9に入力される。なお、bはレゾルバ励磁信号の振幅と見做される信号をサンプリングにて得た励磁信号振幅を指す。レゾルバ9からは、レゾルバの変圧比をkとすると、そのロータ角度θに応じて励磁信号がsinθで振幅変調された信号k・b・sinθ・sinωt(図3(b)参照)およびcosθで振幅変調された信号k・b・cosθ・sinωt(図3(c)参照)が出力される。
【0014】
位置演算部100cは、前記sinθで振幅変調された信号と前記cosθで振幅変調された信号の振幅とみなされる信号をサンプリングして得たk・b・sinθおよびk・b・cosθの情報(図3(d)、(e))に基づき、θ=a tan(sinθ/cosθ)の関係よりレゾルバ位置θを算出する。但し、aは振幅である。
また、レゾルバ4極(n=2)に対してモータ8極(m=4)であることから、モータ電気角θeをθe=(m/n)*θ=2*θの関係より演算により求め、前記θeをdq変換部100dとdq逆変換部100fとに供給する。
【0015】
dq変換部100dは、電流センサ102a、102bにより検出した相電流値(Iu、Iv)と前記電気角θeとに基づき三相―二相変換(dq変換)を行い、変換後のdq軸電流(Id、Iq)を電流制御部100eとに供給する。
電流制御部100eは、dq軸目標電流(Id*、Iq*)と検出したdq軸電流(Id、Iqとの偏差に基づきPI制御を行い、dq軸目標印加電圧(Vd*、Vq*)を生成する。また、dq逆変換部100fは、dq軸目標印加電圧(Vd*、Vq*)と前記電気角θeとに基づき二相―三相変換(dq逆変換)を行い三相目標印加電圧(Vu*、Vv*、Vw*)を駆動部101に供給する。
【0016】
異常検出手段100hは、図4に示すように、上記正弦信号および余弦信号のうち少なくとも一方に基づいて検査値を算出する検査値算出手段201と、上記検査値に基づいてレゾルバの異常の有無を判定する異常検出手段202と、上記正弦信号および余弦信号のうち少なくとも一方に基づいて上記異常検出手段の判定を禁止する禁止手段203と、上記異常検出手段202がレゾルバに異常があると判定しているときに経時に伴ってカウント値を計数するカウント手段204と、上記異常検出手段202がレゾルバに異常がないものと判定しているときに上記カウント値をリセットするリセット手段205と、上記カウント値に基づいてレゾルバに異常が発生しているものと確定する異常確定手段206とを有している。
【0017】
上記検査値算出手段201は、例えば前記sinθで振幅変調された信号と前記cosθで振幅変調された信号の振幅とみなされる信号をサンプリングして得た正弦信号k・b・sinθおよび余弦信号k・b・cosθの二乗和を検査値として算出する二乗和算出部からなり、前記励磁信号振幅bと予め記憶したレゾルバの変圧比kとからa=(k・b)として算出した正常とみなされる値aに基づいて、{a・cos((π/2)/(m/n))}(={k・b・cos(45deg)})として故障判定閾値を算出するか、あるいは上記したレゾルバ励磁信号モニタ回路を持たずにレゾルバ励磁信号振幅bとレゾルバ変圧比kとに基づいて予め算出した故障判定閾値を記憶しておいて、これらの故障判定閾値に基づき故障判定を行う。
【0018】
また、上記判定禁止手段203は、前記正弦信号k・b・sinθおよび余弦信号k・b・cosθの少なくとも一方の値あるいは2乗値の値に基づいて、又は、相対値に基づいて、異常及び正常の判定の少なくとも一方を禁止あるいは許可し、レゾルバの異常ないしは正常を正確に検出するものである。
【0019】
図5はレゾルバの前記正弦信号k・b・sinθおよび余弦信号k・b・cosθのリサージュ波形と故障判定領域を示しており、これを参照してレゾルバが例えばショート故障した時の上記カウント手段204による故障検出例を説明する。
今、レゾルバ正弦信号線がショート故障した場合、位置演算部100cに入力される正弦信号sinθ情報は0となるため、レゾルバ位置θ(電気角)の演算値は図5に示す座標上では0度か180度だけの故障の動作となり、リサージュ波形は図5中ではcosθ軸上をa点からその逆の−a点の間を往復する動作となる。
【0020】
故障の判定閾値を1/2a以下とした場合、故障と判定出来るレゾルバ位置θ(電気角)の正常時換算の値(範囲)は、45度から135度までの範囲と、225度から315度までの範囲となり、このままでは上記範囲外は正常と判定する。すなわち、レゾルバの回転中は故障で有っても正常と異常との間で判定が変動してしまう。
【0021】
本発明の実施例では余弦信号の値が故障判定領域の外に相当するk・b・cosθ>1/√2xa乃至は(k・b・cosθ)>1/2a時(正常時)に、故障の判定を禁止し、たとえレゾルバの故障判定の検査値と故障判定閾値の関係が(k・b・sinθ)+(k・b・cosθ)>1/2aを満足しても、該当する故障カウント手段204aのカウント値をリセットさせず、余弦信号の値が故障判定可能な領域の中に相当するk・b・cosθ<1/√2xa乃至は(k・b・cosθ)<1/2a時にだけ故障と正常の判定を許可し、(k・b・sinθ)+(k・b・cosθ)<1/2aを満足した場合にカウント手段204aのカウント値を漸増させ、(k・b・sinθ)+(k・b・cosθ)>1/2aを満足した場合には、カウント手段204aのカウント値をリセットさせるようにしている。
【0022】
前記実施例はレゾルバ正弦信号線がショート故障した場合であったが、レゾルバ余弦信号線がショート故障した場合、位置演算部100cに入力される余弦信号cosθ情報は0となるため、リサージュ波形は図4中のSINθ軸上をa点からその逆の−a点の間を往復する動作となる。
【0023】
この場合にも同様に前記レゾルバ正弦信号線がショート故障した場合とは独立した別の故障カウント手段204bにより、正弦信号の値が故障判定領域の外に相当するk・b・sinθ>1/√2xa乃至は(k・b・sinθ)>1/2a時(正常時)に故障の判定を禁止し、たとえレゾルバの故障判定の検査値と故障判定閾値の関係が(k・b・sinθ)+(k・b・cosθ)>1/2aを満足しても、該当する故障カウント手段204bのカウント値をリセットさせず、正弦信号の値が故障判定可能な領域の中に相当するk・b・sinθ<1/√2xa乃至は(k・b・sinθ)<1/2a時にだけ故障と正常の判定を許可し、(k・b・sinθ)+(k・b・cosθ)<1/2aを満足した場合にカウント手段204bのカウント値を漸増させ、(k・b・sinθ)+(k・b・cosθ)>1/2aを満足した場合には、カウント手段204bのカウント値をリセットさせるようにしている。
【0024】
次にレゾルバ正弦信号線と余弦信号線が相互にショートした故障時の故障検出例を説明する。この場合の正弦信号および余弦信号の信号波形は、両信号の正常時の信号の平均値となるので、1/2x(k・b・sinθ+k・b・cosθ)は三角関数の公式から、
1/2x√2xk・b・sin(θ+π/4)となり、位置演算部100cに入力される正弦信号sinθ、余弦信号cosθ情報は同一となるため、レゾルバ位置θ(電気角)の演算値は45度か225度だけの故障の動作となる。
【0025】
故障の判定値を1/2a以下とした場合、故障と判定出来るレゾルバ位置θ(電気角)の値(範囲)は90度から180度と270度から360度となり、このままでは、レゾルバが回転中は故障で有っても正常と異常の判定を変動する。しかし、本発明によれば、相互にショートした正弦信号と余弦信号のそれぞれの値が故障判定領域の外に相当する、k・b・cosθ>1/2xa乃至は(k・b・cosθ)>1/4a時に、又は、k・b・sinθ>1/2xa乃至は(k・b・sinθ)>1/4a時(正常時)に、故障の判定を禁止し、たとえ(k・b・sinθ)+ (k・b・cosθ)>1/2aを満足しても、カウント手段204cのカウント値をリセットさせず、相互にショートした正弦信号と余弦信号の値が故障判定可能な領域の中に相当する、k・b・cosθ<1/2xa乃至は(k・b・cosθ)<1/4a時にだけ故障と正常の判定を許可し、(k・b・sinθ)+(k・b・cos θ)<1/2aを満足した場合にカウント手段204cのカウント値を漸増させ、(k・b・sinθ)+(k・b・cosθ)>1/2aを満足した場合には前記で故障した場合とは独立した更に別の該当するカウント手段204cのカウント値をリセットさせるようにしている。
【0026】
レゾルバの異常検出手段100hを構成する異常確定部206は、前記カウント手段204のカウント値に基づき、所定の異常確定しきい値以上である場合に故障の確定と判断し、モータ駆動停止信号STをq軸目標電流演算部100aに出力する。
また、レゾルバの異常検出手段100hは、前記カウント手段204のカウント値が異常確定しきい値以下の状態を所定時間継続したとき正常と判断し、カウンタを零にリセットすることで一過性のノイズで誤カウントしたノイズのカウントをリセットすることが可能でレゾルバの異常ないしは正常を正確に検出することが可能になる。
【0027】
また、レゾルバに異常があるものと判定しているときに、経時に伴ってカウント値を漸増させるカウント手段204のカウントを、異常が少なくとも複数回以上継続している場合にだけカウントアップするようにすることで、短時間の一過性のノイズで誤カウントすることを防止することが可能であり、レゾルバの異常ないしは正常の判定を、より正確に安定して検出することが可能になる。
【0028】
次に上記レゾルバ異常検出手段100hの動作を各部の動作波形の関係により詳しく説明する。図6は上述した特許文献1に記載のレゾルバの異常検出装置に異常が生じた際におけるレゾルバ異常検出手段の動作の一例を示すタイムチャートである。図6の(a)は二乗和の値の変化の一例を示すタイムチャート、図6の(b)は図6の(a)のように二乗和の値が変化した際のカウント値の変化を示すタイムチャート、図6の(c)は図6の(b)に示すようにカウント値が変化した際のレゾルバ異常フラグf_errの変化を示すタイムチャートである。なお、特許文献1に記載のレゾルバの異常検出装置は、検査値算出手段としての二乗和算出部と、異常検出手段としての異常検出部と、カウント手段としてのカウント部と、異常確定手段としての異常確定部とを有している。
【0029】
二乗和算出部は、図6の(a)に示すように、正弦信号が表すsinθを二乗した値と余弦信号が表すcosθを二乗した値との和である二乗和の値を検査値として算出する。二乗和の値は正弦信号と余弦信号が正常な場合は、レゾルバの回転角度に関わらず基準値(1)の略一定の値となり、二乗和の値が所定の許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にある。時点Aで例えばレゾルバ正弦信号線がショート故障した場合、二乗和の値は正弦信号がゼロになり、余弦信号の二乗値になり、レゾルバの回転角に応じて基準値とゼロの間で変化する。レゾルバの回転角速度が速い場合には許容下限値以下の継続時間が短くなる。
【0030】
異常検出部は、上記二乗和の値に基づいてレゾルバの異常の有無を判定する。より詳細には、二乗和の値が所定の許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にあるか否かを判定し、二乗和の値が上記正常範囲を外れた場合にレゾルバに異常があるものと判定する。
【0031】
カウント部は、図6の(b)に示すように、異常検出部がレゾルバに異常があるものと判定しているときに経時に伴ってカウント値を漸増させる一方、異常検出部がレゾルバに異常がないものと判定しているときにカウント値をゼロにリセットさせる。レゾルバの回転角速度が速い場合には許容下限値以下の継続時間が短くなるので、異常が継続していてもカウント値が所定のレゾルバ異常判定しきい値以上にならずに、異常検出部がレゾルバに異常がないものと判定しているときにカウント値をゼロにリセットされてしまう。レゾルバの回転角速度が遅い場合には許容下限値以下の継続時間が長くなるので、異常が継続しカウント値が所定のレゾルバ異常判定しきい値以上になる。
【0032】
異常確定部は、図6の(c)に示すように、カウント値が所定のレゾルバ異常判定しきい値以上になったことを条件にレゾルバに異常が発生しているものと確定し、レゾルバ異常フラグf_errを1にする。
【0033】
一方、図7は上述した本発明の実施例に記載のレゾルバ正弦信号線がショート故障した場合におけるレゾルバ異常検出手段の動作の一例を示すタイムチャートであって、図7の(a)は二乗和の値の変化の一例を示すタイムチャート、図7の(b)は図7の(a)のように二乗和の値が変化した際のカウント値の変化を示すタイムチャート、図7の(c)は図7の(b)に示すようにカウント値が変化した際のレゾルバ異常フラグf_errの変化を示すタイムチャートである。
【0034】
二乗和算出部201は、図7の(a)に示すように、正弦信号が表すsinθを二乗した値と余弦信号が表すcosθを二乗した値との和である二乗和の値を検査値として算出する。二乗和の値は正弦信号と余弦信号が正常な場合はレゾルバの回転角度に関わらず基準値(1)の略一定の値となり二乗和の値が所定の許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にある。時点Aで例えばレゾルバ正弦信号線がショート故障した場合二乗和の値は正弦信号がゼロになり余弦信号の二乗値になりレゾルバの回転角に応じて基準値とゼロの間で変化する。レゾルバの回転角速度が速い場合には許容下限値以下の継続時間が短くなる。
【0035】
異常検出手段202および判定禁止手段203は、レゾルバ正弦信号線がショート故障した場合、正弦信号と余弦信号を読み込み、正弦信号及び余弦信号の読み込み値又はその二乗値からレゾルバの異常判定を禁止するかどうかを判定するようにしている。余弦信号の値が故障判定領域の外に相当するk・b・cosθ>1/√2xa乃至は(k・b・cosθ)>1/2a時(正常時)に故障の判定を禁止し、禁止しない場合は二乗和の値に基づいてレゾルバの異常の有無を判定する。より詳細には、二乗和の値が所定の許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にあるか否かを判定し、二乗和の値が上記正常範囲を外れた場合にレゾルバに異常があるものと判定する。
【0036】
カウント手段204は、図7の(b)に示すように、異常検出部202がレゾルバに異常があるものと判定しているとき(許容下限値以下のとき)に経時に伴ってカウント値を漸増させる(図中x)一方、異常検出手段202がレゾルバの異常判定を禁止すると判定しているときにカウント値を保持させる(図中y)。レゾルバの回転角速度が速い場合には許容下限値以下の継続時間が短くなるので異常が継続していてもカウント値が所定のレゾルバ異常判定しきい値以上にならずに、異常検出部がレゾルバの異常判定を禁止すると判定しているときにカウント値を保持し、その後のレゾルバに異常があるものと判定しているときでカウント値が所定のレゾルバ異常判定しきい値以上になるときにカウント値を異常の判定値以上に保持する。
【0037】
異常確定手段206は、図7の(c)に示すように、カウント値が所定のレゾルバ異常判定しきい値以上になったことを条件にレゾルバに異常が発生しているものと確定し、レゾルバ異常フラグf_errを1にする。
【0038】
図8は上述した本発明の実施例に記載のレゾルバの異常検出手段100hに異常が生じた後、短時間で正常に復帰した場合におけるレゾルバ異常検出手段100hの動作の別の一例を示すタイムチャートである。
時点Aで例えばレゾルバ正弦信号線がショート故障した場合の当初の動作は図7の場合と同一であるので説明は省略する。
時点Bで例えばゾルバ正弦信号線のショート故障が正常に復帰した場合、二乗和の値は基準値(1)の略一定の値となり二乗和の値が所定の許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内に復帰する。この場合、上記異常検出手段100hがレゾルバに異常がないものと判定し、リセット手段205によりカウント値をゼロにリセットする。
【0039】
以下、レゾルバ異常検出手段100hの更に具体的な処理動作を図9に示すフローチャートに基づいて説明する。
最初に初期設定として前記のレゾルバ正弦波信号線のショート判定用カウンタ204a、前記のレゾルバ余弦波信号線のショート判定用カウンタ204b、前記のレゾルバ正弦波信号線と余弦波信号線の相互ショート判定用カウンタ204cの全てのカウント値を0にするとともに、レゾルバ異常フラグf_errを0にセットする(ステップS101)。
【0040】
その上で、正弦信号と余弦信号を読み込み(ステップS102)、正弦信号及び余弦信号の読み込み値又はその二乗値から、レゾルバの異常判定を禁止するかどうかを判定する。(ステップS102a)
先ず、レゾルバ正弦信号線がショート故障した場合について説明すると、余弦信号の値が故障判定領域の外に相当するk・b・cosθ>1/√2xa乃至は(k・b・cosθ)>1/2a時(正常時)に故障の判定を禁止し、禁止しない場合は二乗和の値を算出する(ステップS103)。その上で、二乗和>許容上限値の条件および二乗和<許容下限値の条件のうち少なくとも一方の条件を満たすか否かを判断する(ステップS104)。なお、ステップS102aにおいてレゾルバの異常判定を禁止の判断の場合にはステップS102に戻る。
【0041】
なお、本実施の形態では、レゾルバ9が正常な状態における二乗和の値、すなわち1を基準値とした場合に、その基準値と許容上限値との差である上側許容差と、基準値と許容下限値との差である下側許容差とは互いに等しくなるように設定してある(図8参照)。
そしてステップS104において、上記両条件のうち少なくとも一方の条件を満たす場合、すなわち二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲を逸脱している場合には、カウンタ204aのカウント値に所定のカウントアップ値を加える(ステップS105)。
【0042】
その上で、ステップS106でカウント値≧異常確定しきい値の条件を満たすか否かを判断する。その結果、その条件を満たす場合には、カウンタ1のカウント値に異常確定しきい値を代入し(ステップS107)、レゾルバ異常フラグf_errを1にセットしてステップS102に戻る(ステップS108)。なお、ステップS106で条件を満たさない場合にはステップS102aに戻る。
【0043】
一方、ステップS104において、上記両条件をいずれも満たさない場合、すなわち二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にある場合には、ステップS112に進む。ステップS112では、該当する故障カウンタ1のカウント値にカウント値0を代入した上でステップS102aに戻る。つまり、二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲を逸脱している状態のときに、カウント値に対して所定の周期毎にカウントアップ値を加えてそのカウント値を漸増させる一方、二乗和が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にある状態のときに、リセット手段205によりカウント値を0にクリアーする。
【0044】
レゾルバ余弦信号線がショート故障した場合も図9のフローチャートを用いて説明する。この場合も初期設定、信号読み込み動作はレゾルバ正弦信号線がショートした場合と同様である。次に正弦信号の値が故障判定領域の外に相当するk・b・sinθ>1/√2xa乃至は(k・b・sinθ)>1/2a時(正常時)に故障の判定を禁止し、禁止しない場合は二乗和の値を算出する(ステップS103)。その上で、二乗和>許容上限値の条件および二乗和<許容下限値の条件のうち少なくとも一方の条件を満たすか否かを判断する(ステップS104)。なお、ステップS102aにおいてレゾルバの異常判定を禁止の判断の場合にはステップS102に戻る。
【0045】
そして、ステップS104において、上記両条件のうち少なくとも一方の条件を満たす場合、すなわち二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲を逸脱している場合には、カウンタ2のカウント値に所定のカウントアップ値を加える(ステップS105)。
その上で、ステップS106でカウント値≧異常確定しきい値の条件を満たすか否かを判断する。その結果、その条件を満たす場合には、カウンタ204bのカウント値に異常確定しきい値を代入し(ステップS107)、レゾルバ異常フラグf_errを1にセットしてステップS102に戻る(ステップS108)。なお、ステップS106で条件を満たさない場合にはステップS102に戻る。
【0046】
一方、ステップS104において、上記両条件をいずれも満たさない場合、すなわち二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にある場合には、ステップS112に進む。ステップS112では、該当する故障カウンタ204bのカウント値に0を代入した上でステップS102に戻る。つまり、二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲を逸脱している状態のときに、カウント値に対して所定の周期毎にカウントアップ値を加えてそのカウント値を漸増させる一方、二乗和が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にある状態のときに、カウント値を0にクリアーする。
【0047】
レゾルバ正弦信号線およびレゾルバ余弦信号線がショート故障した場合も同様で、ステップS102aのレゾルバの異常判定を禁止するかどうかの判定方法が異なるだけである。
すなわちそれぞれの信号読み込み後(ステップ102)、正弦信号と余弦信号のそれぞれの値が略一致し、故障判定領域の外に相当する、k・b・cosθ>1/2xa乃至は(k・b・cosθ)>1/4a時に、あるいはk・b・sinθ>1/2xa乃至は(k・b・sinθ)>1/4a時(正常時)に故障の判定を禁止し、禁止しない場合は二乗和の値を算出する(ステップS103)。その後のステップS104乃至S108、S112は上述した場合と全く同一であるので説明は省略する。
【0048】
以上のように上述した実施例では、レゾルバに異常が発生した場合に、正弦信号と余弦信号を読み込み、正弦信号及び余弦信号の読み込み値又はその二乗値からレゾルバの異常判定を禁止するかどうかを判定するようにし、レゾルバの異常判定を禁止すると判定しているときには上記検査値が正常範囲を外れる度にカウント値を累積して増加させ、そのカウント値が所定値以上になったときにレゾルバが異常であるものと判断させるようにしている。これにより、従来技術のように、上記検査値が回転体の回転角度θに応じて上記正常範囲の内外にまたがって変動することにより、その値が上記正常範囲を外れた状態が継続せず、レゾルバに異常が発生していてもそれを検出することができなくなる虞が解消されるものである。
【0049】
しかしながら、レゾルバが正常であっても、例えばノイズの影響によって上記検査値が一時的に上記正常範囲を外れることがあるため、この度にカウント値が累積して増加することによって当該カウント値が上記所定値を超えてしまい、正常な状態のレゾルバを異常と判断してしまう虞がある。
【0050】
これに対し、本実施の形態では、二乗和の値が上記正常範囲を外れていても、上記正弦信号および上記余弦信号のうち少なくとも一方に基づいて、正常な状態のレゾルバか異常な状態のレゾルバかを判定し、異常な状態のレゾルバと判定できる場合以外には上記検査値による異常かどうかの判定をしないようにして、カウント値を累積して増加させる一方で、異常な状態のレゾルバと判定できる場合には、上記検査値に応じて異常と正常の判定を間違いなく行い、レゾルバ9に異常が発生して二乗和の値が上記正常範囲の内外にまたがって変動した場合にもその異常を確実に検出できるようにしている。
【0051】
従って、例えばノイズの影響によって二乗和の値が一時的に上記正常範囲を外れ、カウント値が増加した場合には、二乗和の値が正常範囲内にあるときにカウント値がリセットされるから、正常な状態のレゾルバ9を異常と判断してしまうことを防止できる。したがって、本実施の形態によればレゾルバ9の異常を正確に検出することが可能になる。
【0052】
実施の形態2.
上記の実施の形態1においては、レゾルバ正弦信号線又はレゾルバ余弦信号線が単独でそれぞれがショート故障した場合の故障判定可能な領域の判定値1と、レゾルバ正弦信号線と余弦信号線が相互にショートした故障時の故障判定可能な領域の判定値2は、後者の方が狭い範囲となるので、これらを全て前記のレゾルバ正弦波信号線のショート判定用カウンタ手段204a又はレゾルバ余弦波信号線のショート判定用カウンタ手段204bと共用化して、同一の判定値に統一する場合は、後者の狭い故障判定可能な領域の判定値2となり、故障の判定可能な領域が狭められることとなる。
【0053】
実施の形態2はこの問題を解決するための態様であり、レゾルバ正弦信号とレゾルバ余弦信号の相対値から、それぞれがショート故障した場合と、レゾルバ正弦信号線と余弦信号線が相互にショートした故障時とを判別し、レゾルバ正弦信号とレゾルバ余弦信号の相対値の比率が1対3より大きい場合は、レゾルバ正弦信号線又はレゾルバ余弦信号線が単独でそれぞれがショート故障した場合の故障判定可能な領域の判定値1とし、それぞれの相対値の比率が1対3より小さい場合は、レゾルバ正弦信号線と余弦信号線が相互にショートした故障時の故障判定可能な領域の判定値2とするようにしたものである。
【0054】
図10は実施の形態2によるレゾルバ異常検出手段の処理内容を示すフローチャートである。
まず、初期設定として全ての故障カウンタのカウント値を0にするとともに、レゾルバ異常フラグf_errを0にセットする(ステップS101)ことは上記実施の形態1のものと同様である。
【0055】
その上で、正弦信号と余弦信号を読み込み(ステップS102)、次に上記正弦信号および上記余弦信号の値の相対値を演算し、上記正弦信号の振幅が上記余弦信号の振幅値よりも十分小さい|COS|>3|SIN|と判断されれば(ステップS601)、レゾルバ正弦信号線がショート故障した場合と判断しステップS602に進む。
また、上記正弦信号の振幅が、上記余弦信号の振幅値よりも十分小さくないと判断されれば(ステップS601)、上記正弦信号線および上記余弦信号線が相互にショートした場合と判断しステップS603に進む。
【0056】
同様に、上記正弦信号および上記余弦信号の値の相対値を演算し、上記正弦信号の振幅が上記余弦信号の振幅値よりも十分小さい|SIN|>3|COS|と判断されれば(ステップS601)、レゾルバ余弦信号線がショート故障した場合と判断しステップS602に進む。また、上記正弦信号の振幅が上記余弦信号の振幅値よりも十分小さくないと判断されれば(ステップS601)、上記正弦信号線および上記余弦信号線が相互にショートした場合と判断しステップS603に進む。
【0057】
次に、正弦信号及び余弦信号の読み込み値又はその二乗値から、上記正弦信号線もしくは上記余弦信号線が単独でショート故障している場合のレゾルバの異常判定を禁止するかどうかを判定する。(ステップS602)
今、レゾルバ正弦信号線がショート故障した場合、余弦信号の値が故障判定領域の外に相当するk・b・cosθ>1/√2xa乃至は(k・b・cosθ)>1/2a時(正常時)に故障の判定を禁止し、禁止しない場合は二乗和の値を算出する(ステップS103)。
その上で、二乗和>許容上限値の条件および二乗和<許容下限値の条件のうち少なくとも一方の条件を満たすか否かを判断する(ステップS104)。なお、ステップS602においてレゾルバの異常判定を禁止の判断の場合にはステップS102に戻る。
【0058】
レゾルバ余弦信号線がショート故障した場合にも同様に、正弦信号の値が故障判定領域の外に相当するk・b・sinθ>1/√2xa乃至は(k・b・sinθ)>1/2a時に故障(正常)の判定を禁止し、禁止しない場合は二乗和の値を算出する(ステップS103)。その上で、二乗和>許容上限値の条件および二乗和<許容下限値の条件のうち少なくとも一方の条件を満たすか否かを判断する(ステップS104)。なお、ステップS602においてレゾルバの異常判定を禁止の判断の場合にはステップS102に戻る。
【0059】
次に、レゾルバ正弦信号線と余弦信号線が相互にショートした故障の場合には、ステップS603において正弦信号と余弦信号のそれぞれの値が故障判定領域の外に相当する
k・b・cosθ>1/2xa 乃至は(k・b・cosθ)>1/4a時にあるいはk・b・sinθ>1/2xa乃至は(k・b・sinθ)>1/4a時(正常時)に故障の判定を禁止し、禁止しない場合は二乗和の値を算出する(ステップS103)。その上で、二乗和>許容上限値の条件および二乗和<許容下限値の条件のうち少なくとも一方の条件を満たすか否かを判断する(ステップS104)。なお、ステップS102aにおいてレゾルバの異常判定を禁止の判断の場合にはステップS102に戻る。
【0060】
なお、本実施の形態では、レゾルバ9が正常な状態における二乗和の値、すなわち1を基準値とした場合に、その基準値と許容上限値との差である上側許容差と、基準値と許容下限値との差である下側許容差とは互いに等しくなるように設定してあるのは先の実施例と同様である。そして、ステップS104において、上記両条件のうち少なくとも一方の条件を満たす場合、すなわち二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲を逸脱している場合には、該当する故障カウンタのカウント値に所定のカウントアップ値を加える(ステップS105)。
【0061】
その上で、ステップS106でカウント値≧異常確定しきい値の条件を満たすか否かを判断する。その結果、その条件を満たす場合には、該当する故障カウンタのカウント値に異常確定しきい値を代入し(ステップS107)、レゾルバ異常フラグf_errを1にセットしてステップS102に戻る(ステップS108)。なお、ステップS106で条件を満たさない場合にはステップS102に戻る。
【0062】
一方、ステップS104において、上記両条件をいずれも満たさない場合、すなわち二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にある場合には、ステップS112に進む。ステップS112では、該当する故障カウンタのカウント値に0を代入した上でステップS102に戻る。
つまり、二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲を逸脱している状態のときに、カウント値に対して所定の周期毎にカウントアップ値を加えてそのカウント値を漸増させる一方、二乗和が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にある状態のときに、カウント値を0にクリアーする。
【0063】
以上のように実施の形態2においては、上記正弦信号および上記余弦信号の値の相対値を演算し、相対値から故障の形態を判断し、適切に故障の形態に応じて上記異常検出手段の判定値を変えて禁止する手段を備えており、上記のレゾルバ正弦信号線又はレゾルバ余弦信号線が単独でそれぞれがショート故障した場合の故障判定可能な領域の判定値1と、レゾルバ正弦信号線と余弦信号線が相互にショートした故障時の故障判定可能な領域の判定値2を同一の判定値に統一する場合に、レゾルバ正弦信号とレゾルバ余弦信号の相対値からそれぞれがショート故障した場合とレゾルバ正弦信号線と余弦信号線が相互にショートした故障時を判別し、レゾルバ正弦信号とレゾルバ余弦信号の相対値の比率が1対3より大きい場合は、レゾルバ正弦信号線又はレゾルバ余弦信号線が単独でそれぞれがショート故障した場合の故障判定可能な領域の判定値1とし、それぞれの相対値の比率が1対3より小さい場合は、レゾルバ正弦信号線と余弦信号線が相互にショートした故障時の故障判定可能な領域の判定値2とすることで、故障の判定可能な領域が狭められる欠点を解決しながら、レゾルバの異常ないしは正常を正確に検出することが可能になる。
なお、上記実施例では故障の判定値を1/2a以下とした場合で説明したが、1/2a以下又は3/2a以上を故障、それ以外を正常と判定しても同様の効果が期待できることは言うまでもない。
【0064】
実施の形態3.
図11は本発明の実施の形態3によるレゾルバ異常検出手段の処理内容を示すフローチャートである。初期設定(ステップS101)、正弦信号と余弦信号の読み込み(ステップS102)、正弦信号及び余弦信号の読み込み値又はその二乗値からレゾルバの異常判定を禁止するかどうかの判定(ステップS102a)、更にはそれに続くステップS103乃至S112は図9と同一であるのでその説明は省略し、異なる部分のみ説明する。
【0065】
レゾルバ正弦信号線がショート故障した場合、余弦信号の値が故障判定領域の外に相当するk・b・cosθ>1/√2xa乃至は(k・b・cosθ)>1/2a時(正常時)に故障の判定を禁止し、禁止しない場合は二乗和の値を算出する(ステップS103)。
その上で、二乗和>第一の許容上限値の条件および二乗和<第一の許容下限値の条件のうち少なくとも一方の条件を満たすか否かを判断する(ステップS104)。
具体的には(k・b・sinθ)+(k・b・cosθ)<1/2aを満足した場合、又は(k・b・sinθ)+(k・b・cosθ)>3/2aを満足した場合にステップS105に進む。なお、ステップS102aにおいてレゾルバの異常判定を禁止の判断の場合にはステップS102に戻る。
【0066】
そして、ステップS104において、上記両条件のうち少なくとも一方の条件を満たす場合、すなわち二乗和の値が第一の許容上限値と第一の許容下限値の間の正常範囲を逸脱している場合には、該当する故障カウンタのカウント値に所定のカウントアップ値を加える(ステップS105)。一方、ステップS104において、上記両条件をいずれも満たさない場合、すなわち二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にある場合には、ステップS701に進む。
【0067】
その上で、上記の第一の許容上限値あるいは第一の許容下限値と異なった第二の許容上限値あるいは第二の許容下限値判定値を用いて、二乗和<第二の許容上限値の条件並びに二乗和>第二の許容下限値の条件を満たすか否かを判断する(ステップS701)。具体的には(k・b・sinθ)+(k・b・cosθ)>1/2a+K1を満足した場合、又は(k・b・sinθ)+(k・b・cosθ)<3/2a−K2を満足した場合に、故障でない(正常)と判断してステップS112に進む。ステップS112では、該当する故障カウンタのカウント値に0を代入した上でステップS102に進む。
なお、ステップS701において、上記の判定を満足せずにレゾルバの異常判定を禁止の判断の場合には何もしないでステップS102に進む。
【0068】
つまり、二乗和の値が第一の許容上限値と第一の許容下限値の間の正常範囲を逸脱している状態のときに、該当する故障カウンタのカウント値に対して所定の周期毎にカウントアップ値を加えてそのカウント値を漸増させる一方、前記の正常範囲の判定値とは異なり、二乗和が判定値にヒステリシスを持たせ、異常有りの判定値を異常なしの判定値とは異なった判定値、即ち、第二の許容上限値と第二の許容下限値の間のより確実に正常範囲内にある状態のときに、該当する故障カウンタのカウント値を0にクリアーする。
レゾルバ正弦信号線がショート故障した場合で説明したが、レゾルバ余弦信号線がショート故障した場合やレゾルバ正弦信号線と余弦信号線が相互にショート故障した場合も、同様の効果が期待できることは言うまでもない。
【0069】
従って、上述した本発明の実施の形態3によるレゾルバの異常検出装置では、レゾルバに異常が発生した場合に、上記検査値が回転体の回転角度θに応じて上記正常範囲の内外にまたがって変動することにより、その値が上記正常範囲を外れた状態が継続せず、レゾルバに異常が発生していてもそれをより正確に間違いなく検出する効果がある。その上、例えばノイズの影響によって二乗和の値が一時的に変動しても、間違がって判断してしまうことを防止できる。したがって、本実施の形態によればレゾルバ9の異常をより正確に検出することが可能になる。
【0070】
実施の形態4.
図12は本発明の実施の形態4になるレゾルバ異常検出手段の処理内容を示すフローチャートである。
レゾルバ異常検出手段100hは、まず、初期設定としてカウント値を0にするとともに、レゾルバ異常フラグf_errを0にタイマーを初期値の0にセットする(ステップS101)。
【0071】
その上で、タイマーを1カウントアップし(ステップS801)、正弦信号と余弦信号を読み込み(ステップS102)、正弦信号及び余弦信号の読み込み値又はその二乗値から、レゾルバの異常判定を禁止するかどうかを判定する。(ステップS102a)
レゾルバ正弦信号線がショート故障した場合、余弦信号の値が故障判定領域の外に相当するk・b・cosθ>1/√2xa乃至は(k・b・cosθ)>1/2a時(正常時)に故障の判定を禁止し、禁止しない場合は二乗和の値を算出する(ステップS103)。その上で、二乗和>許容上限値の条件および二乗和<許容下限値の条件のうち少なくとも一方の条件を満たすか否かを判断する(ステップS104)。なお、ステップS102aにおいてレゾルバの異常判定を禁止の判断の場合にはステップS801に戻る。
【0072】
レゾルバ余弦信号線がショート故障した場合にも同様に、正弦信号の値が故障判定領域の外に相当する k・b・sinθ>1/√2xa乃至は(k・b・sinθ)>1/2a時(正常時)に故障の判定を禁止し、禁止しない場合は二乗和の値を算出する(ステップS103)。その上で、二乗和>許容上限値の条件および二乗和<許容下限値の条件のうち少なくとも一方の条件を満たすか否かを判断する(ステップS104)。なお、ステップS102aにおいてレゾルバの異常判定を禁止の判断の場合にはステップS102に戻る。
【0073】
そして、ステップS104において、上記両条件のうち少なくとも一方の条件を満たす場合、すなわち二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲を逸脱している場合には、該当する故障カウンタのカウント値に所定のカウントアップ値を加える(ステップS105)。その上で、ステップS106でカウント値≧異常確定しきい値の条件を満たすか否かを判断する。その結果、その条件を満たす場合には、該当する故障カウンタのカウント値に異常確定しきい値を代入し(ステップS107)、レゾルバ異常フラグf_errを1にセットしてステップS102に戻る(ステップS108)。なお、ステップS106で条件を満たさない場合にはステップS102に戻る。
【0074】
一方、ステップS104において、上記両条件をいずれも満たさない場合、すなわち二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にある場合には、ステップS803に進み、タイマーが判定値に達したかどうか、即ち、故障カウンタが異常確定しきい値に到達しない間の時間の積算値が判定値以上になったかどうかを判定し、タイマーが判定値に達していなければ何もせずにステップS801に進む。タイマーが判定値に達していればステップS112に進む。ステップS112では、全ての故障カウンタのカウント値に0をステップS802でタイマーに0を代入した上でステップS801に戻る。
【0075】
つまり、二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲を逸脱している状態のときに、該当する故障カウンタのカウント値に対して所定の周期毎にカウントアップ値を加えてそのカウント値を漸増させると同時に、タイマーで前回正常範囲内にある状態と判断した以降の異常カウンタを漸増ないしは保持している時間をタイマーで計測する一方、二乗和が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にある状態のときに、該当する故障カウンタのカウント値と上記タイマーを0にクリアーする。
【0076】
更には、異常カウンタを漸増ないしは保持している時間を計測するタイマーが、異常カウンタが異常判定しきい値に到達するまでに十分長いと判断される判定値に達したならば、全てのカウンタのカウント値と上記タイマーを0にクリアーすることにより、レゾルバが正常であっても、例えばノイズの影響によって上記検査値が一時的に上記正常範囲を外れることで、その度に異常カウンタのカウント値が累積して増加することを所定の時間ごとにリセットし、異常の誤検出を防止する効果が有る。したがって、本実施の形態によればレゾルバ9の異常をより正確に検出することが可能になる。
【0077】
実施の形態5.
図13は本発明の実施の形態5になるレゾルバ異常検出手段の処理内容を示すフローチャートであり、以下、図13に従って順次説明する。
まず、初期設定としてカウント値を0にするとともに、レゾルバ異常フラグf_errを0に、ノイズカウンタを初期値の0にセットする(ステップS101)。
【0078】
その上で、正弦信号と余弦信号を読み込み(ステップS102)、正弦信号及び余弦信号の読み込み値又はその二乗値から、レゾルバの異常判定を禁止するかどうかを判定する。(ステップS102a)
レゾルバ正弦信号線がショート故障した場合、余弦信号の値が故障判定領域の外に相当するk・b・cosθ>1/√2xa乃至は(k・b・cosθ)>1/2a時(正常時)に故障の判定を禁止し、禁止しない場合は二乗和の値を算出する(ステップS103)。
その上で、二乗和>許容上限値の条件および二乗和<許容下限値の条件のうち少なくとも一方の条件を満たすか否かを判断する(ステップS104)。なお、ステップS102aにおいてレゾルバの異常判定を禁止の判断の場合にはステップS903でノイズカウンタを0にリセットしてステップS102に戻る。
【0079】
レゾルバ余弦信号線がショート故障した場合にも同様に、正弦信号の値が故障判定領域の外に相当するk・b・sinθ>1/√2xa乃至は(k・b・sinθ)>1/2a時(正常時)に故障の判定を禁止し、禁止しない場合は二乗和の値を算出する(ステップS103)。その上で、二乗和>許容上限値の条件および二乗和<許容下限値の条件のうち少なくとも一方の条件を満たすか否かを判断する(ステップS104)。なお、ステップS102aにおいてレゾルバの異常判定を禁止の判断の場合にはステップS903でノイズカウンタを0にリセットしてステップS102に戻る。
【0080】
そして、ステップS104において、上記両条件のうち少なくとも一方の条件を満たす場合、すなわち二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲を逸脱している場合には、ステップS901でノイズカウンタをカウントUPし、次にステップS902でノイズカウンタが規定値Nに達したかどうかを判断し、規定値Nに達していればカウント値に所定のカウントアップ値を加える(ステップS105)。
【0081】
その上で、ステップS106でカウント値≧異常確定しきい値の条件を満たすか否かを判断する。その結果、その条件を満たす場合には、カウント値に異常確定しきい値を代入し(ステップS107)、レゾルバ異常フラグf_errを1にセットしてステップS102に戻る(ステップS108)。なお、ステップS106で条件を満たさない場合にはステップS102に戻る。
【0082】
一方、ステップS104において、上記両条件をいずれも満たさない場合、すなわち二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲内にある場合には、ステップS112に進む。ステップS112では、カウント値に0を、ステップS903でノイズカウンタに0を代入した上でステップS102に戻る。
【0083】
つまり、二乗和の値が許容上限値と許容下限値の間の正常範囲を逸脱している異常状態のときに、カウント値に対してその異常状態が少なくとも複数回以上継続している場合にだけ所定の周期毎にカウントアップ値を加えてそのカウント値を漸増させる。
【0084】
従って、実施の形態5になるレゾルバ異常検出手段によれば、異常検出手段がレゾルバに異常があるものと判定しているときに経時に伴ってカウント値を漸増させるカウント手段のカウントを、異常が少なくとも複数回以上継続している場合にだけカウントアップする手段を備えることで、短時間の一過性のノイズで誤カウントすることを防止することが可能で、レゾルバの異常ないしは正常を正確に検出することが可能になる。
【0085】
なお、上記の実施の形態1乃至5において説明したカウント計数手段は、カウント値を漸増させるカウント手段で記載したが、カウンタを漸減させるカウント手段とそれに対応した異常確定しきい値であっても、同様の効果が期待できることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0086】
1 ステアリングホイール、 2 ステアリングシャフト、
3 トルクセンサ、 4 減速ギア、 5 永久磁石同期モータ、
6 車速センサ、 7 バッテリ、 8 イグニションキー、
9 レゾルバ、 100 コントローラ、
100a q軸目標電流演算部、 100b d軸目標電流設定部、
100c 位置演算部、 100d dq変換部、
100e 電流制御部、 100f dq逆変換部、
100g 励磁信号発生部、 100h 異常検出手段、
101 駆動部、 102a、b 電流センサ、
201 二乗和算出部、 202 異常検出部、
203 判定禁止手段、 204 カウント手段、
205 リセット手段、 206 異常確定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転角度θに応じてsinθを表す正弦信号およびcosθを表す余弦信号を出力するレゾルバに付設され、そのレゾルバの異常を検出するレゾルバの異常検出装置において、
上記正弦信号および上記余弦信号のうち少なくとも一方に基づいて検査値を算出する検査値算出手段と、
上記検査値が正常範囲内にあるか否かによりレゾルバの異常の有無を判定する異常検出手段と、
上記検査値が故障判定領域の外に相当するときに上記異常検出手段の判定を禁止する手段と、
上記異常検出手段がレゾルバに異常があるものと判定しているときに経時に伴ってカウント値を計数するカウント手段と、
上記異常検出手段がレゾルバに異常がないものと判定しているときにカウント値をリセットするリセット手段と、
上記カウント値が異常確定しきい値以上である場合にレゾルバに異常が発生しているものと確定する異常確定手段と、
を備えていることを特徴とするレゾルバの異常検出装置。
【請求項2】
上記正弦信号が所定の値で上記異常検出手段の判定を禁止する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレゾルバの異常検出装置。
【請求項3】
上記正弦信号の2乗値が所定の値で上記異常検出手段の判定を禁止する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレゾルバの異常検出装置。
【請求項4】
上記余弦信号が所定の値で上記異常検出手段の判定を禁止する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレゾルバの異常検出装置。
【請求項5】
上記余弦信号の2乗値が所定の値で上記異常検出手段の判定を禁止する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレゾルバの異常検出装置。
【請求項6】
上記正弦信号および上記余弦信号の値の相対値に応じて上記所定の値を変更する手段と、変更された上記所定の値で上記異常検出手段の判定を禁止する手段を備えたことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のレゾルバの異常検出装置。
【請求項7】
上記検査値算出手段は、上記正弦信号の表すsinθを二乗した値と上記余弦信号の表すcosθを二乗した値との和を検査値とすることを特徴とする前記請求項1から6のいずれかに記載のレゾルバの異常検出装置。
【請求項8】
上記異常検出手段は、少なくとも上記検査値が許容上限値以上か許容下限値以下のいずれかに外れている場合に、レゾルバに異常があるものと判定するようになっていることを特徴とする請求項1に記載のレゾルバの異常検出装置。
【請求項9】
上記検査値に基づいてレゾルバの異常の有無を判定する異常検出手段の異常有りの判定値を異常無しの判定値とは異なった判定値としたことを特徴とする請求項8に記載のレゾルバの異常検出装置。
【請求項10】
上記異常確定手段は、上記カウント値が異常確定しきい値に到達しない時間が所定の時間を超えた場合に、リセットする手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレゾルバの異常検出装置。
【請求項11】
異常検出手段がレゾルバに異常があるものと判定しているときに経時に伴ってカウント値を得るカウント手段を、異常が少なくとも複数回以上継続している場合にだけカウントするようにしたことを特徴とする請求項1に記載のレゾルバの異常検出装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−145488(P2012−145488A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4922(P2011−4922)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】