説明

レゾルバ用シールドケーブル

【課題】従来のシールドケーブルでは、レゾルバやエンコーダなど、アナログ信号を位置情報として出力する測定器などでは、複数の信号線を1本のケーブルにまとめてアナログ信号を出力信号として伝送させる時、信号線を流れる電流から発生する誘導ノイズと、静電容量による信号の減衰、非平衡が問題になるが、対策が十分では無かった。
【解決手段】本発明のレゾルバ用シールドケーブルは、波状形成した、比誘電率が低い材質の内部シースを各信号線それぞれに巻きつけたシールドケーブルであり、内部信号線を撚りさらに同様の内部シースを巻くことで鎖交磁束を打ち消しあい、かつ波状形成した誘電率が低い材質の内部シースにより空隙部を形成することで信号線間、シールドと信号線間の距離が保たれ静電容量を小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバからの各出力信号の平衡を保ち、減衰を防ぐことを目的としたレゾルバ用シールドケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からレゾルバ用シールドケーブルで用いられる多心シールドケーブルとしては、特許第3225775号に記載されているものがあった。図8に示すように、多心シールドケーブルは、軟銅製の導体に絶縁部材が被覆されて構成された信号線20が2本撚り合わされて対撚信号線21が構成され、この対撚信号線21が4本撚り合わされてコア集合体22が構成される。そして、コア集合体22の外周に低誘電率のポリエチレンテープ23aを重ね巻きすることにより内部シース層23が形成され、その内部シース層23の外周にアルミ箔貼付ポリエステルテープ24aがその幅の1/4程度重なるように巻装されて、遮蔽層24が形成され、さらにその外周に外部シース層25が押し出し成形により形成される。なお、内部シース層23と遮蔽層24との間にドレンワイヤ26が沿設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3225775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のシールドケーブルでは、レゾルバやエンコーダなど、アナログ信号を位置情報として出力する測定器などでは、複数の信号線を1本のケーブルにまとめてアナログ信号を出力信号として伝送させる時、信号線を流れる電流から発生する誘導ノイズと、静電容量による信号の減衰、非平衡が問題になるが、対策が十分では無かった。
【0005】
また、誘導ノイズの対処として信号線を撚る(ツイストペアなど)という手段があるが、これでは信号線間が近くなることで静電容量が増えてしまい、逆に静電容量を抑えるために撚らないと今度は誘導ノイズが発生し易くなるという問題があった。
【0006】
そこで、この発明は、上記のような問題点を解決すべくなされたものであり、比誘電率を下げるために、なるべく多くの空隙を確保するように波状形成した比誘電率が低い材質を使った内部シースを各信号線それぞれに巻きつけ、更に内部信号線を撚りさらに波状形成した、比誘電率が低い材質を使った内部シースを巻くことで、鎖交磁束を打ち消しあい、誘導ノイズを減らし、かつ信号線間、シールドと信号線間の距離が保て、空隙も広く取れるようにし、静電容量を小さくすることを可能にしたレゾルバ用シールドケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のレゾルバ用シールドケーブルは、波状形成した、比誘電率が1〜3の材料を使った内部シースをそれぞれ巻きつけた内部信号線を撚り、さらにその撚った信号線に、誘電率が1〜3の材料を使い、波状形成した内部シースを巻いたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載のレゾルバ用シールドケーブルは、請求項1記載のレゾルバ用シールドケーブルにおいて、前記内部シースを、テープ状とする共に、内部信号線に巻いた時に波状形成部の波の方向が長手方向と平行となるように、尚且つ断面を見たときに全周にわたって波が等間隔に配置されるようにし、長手方向に対し斜め方向に波状形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のレゾルバ用シールドケーブルは、波状形成した比誘電率が低い材質の内部シースを各信号線それぞれに巻きつけたシールドケーブルであり、内部信号線を撚りさらに波状形成した、比誘電率が低い材質の内部シースを巻くことで鎖交磁束を打ち消しあい、かつ波状形成した誘電率が低い材質の内部シースにより空隙部を形成することで信号線間、シールドと信号線間の距離が保たれ静電容量を小さくできる。それによって、アナログ信号出力の平衡を保つことと、減衰を防ぐことが可能となる。更に、誘電率が低い材質の内部シースを巻くことで、鎖交磁束を打ち消しあい、誘導ノイズを減らすことが可能となる。
【0010】
また、空隙3を設けるように誘電率が低い内部シース2で、信号線1及びその撚り線が巻き付けられていることで静電容量が小さくなっていると共に、信号線1とシールド4との間に十分な距離を設けられているので、静電容量を気にすることなく十分なシールド4を巻くことができ、それによって外部ノイズによる信号保護にも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態のレゾルバ用シールドケーブルを示す断面図である。
【図2】同上のレゾルバ用シールドケーブルの内部シースの斜視図である。
【図3】同上のレゾルバ用シールドケーブルの内部シースの部分断面図である。
【図4】同上のレゾルバ用シールドケーブルの内部シースの平面図である。
【図5】同上のレゾルバ用シールドケーブルの内部シースを信号線に巻きつける工程 途中状態を表す斜視図である。
【図6】同上のレゾルバ用シールドケーブルの内部シースを信号線に巻きつける工程 終了状態を表す斜視図である。
【図7】本発明の第二実施形態のレゾルバ用シールドケーブルを示す断面図である。
【図8】従来の多心シールドケーブルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るレゾルバ用シールドケーブルの実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
(第一実施形態)
まず、図1〜図6を参照して、本発明に係るレゾルバ用シールドケーブルの実施形態について説明する。レゾルバ用シールドケーブルは、各信号線1を、波状形成した比誘電率が低い材質の内部シース2をそれぞれ巻き付けた状態で撚り、さらにその撚った信号線1を、同様の内部シース2で巻き付けてまとめている。その後、その外側にシールド4、更にその外側に外部シース5が形成されている。このシールド4には、ドレン6が一体化されている。またレゾルバ用シールドケーブルは、信号線1及び、信号線1を撚ったものに、波状形成された内部シース2を巻き付けることで、空隙3が形成されている。空隙3は、レゾルバ用シールドケーブル全体の断面積に対して、10〜30%の割合で存在する。空隙3の割合が10%未満の場合は、比誘電率の低下効果が少ない。それに対して、空隙3の割合が30%を超える場合は、信号線1のバランスの保持が難しくなり、信号の平衡に悪影響を及ぼす可能性が出てくる。
【0014】
それぞれの内部シース2は、図2に示すように波状に形成されており、内部シース山部2aと、内部シース谷部2bを有する。また、この内部シース2は、図4に示すようにテープ状であり、信号線1あるいは撚り線を巻きつけた時に波状形成部の波(内部シース山部2a)方向が長手方向と平行となるように、かつ断面を見たときに全周にわたって波が等間隔に配置されるようにした。さらに、この波状形成部の波(内部シース山部2a)は、図4に示すように長手方向に対し斜めになっており、一定の角度を有する。波の断面形状は、図3に示すように、正弦波状である。この断面形状は、特に限定されず、その他、三角波状、方形波状、台形波状などであってもかまわず、最適なものを選択する。
【0015】
内部シース2の材料としては、比誘電率で1〜3の間に入る、比誘電率が低いものを好適に使用することができる。具体的には、ポリエチレン(比誘電率2.2〜2.4)、ポリプロピレン(比誘電率2.0〜2.6)、ポリカーボネート(比誘電率2.9〜3.0)、ポリテトラフルオロエチレン(比誘電率2.0〜2.1)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(比誘電率2.6)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(比誘電率2.1)、ポリエチレンテレフタレート(比誘電率2.9〜3.0)等である。この内部シース2は、内部に独立気泡を無数有する発泡体とすることで、空気の比誘電率が1.0であることから、発泡体の実質の比誘電率は1〜2の間まで下げることが可能になる。発泡体の気孔率は20〜60%程度が適当である。発泡体の気孔率が20%未満の場合は、比誘電率の低下効果が小さい。またそれに対して、発泡体の気孔率が60%を超える場合は、発泡体全体の実質比誘電率は低下するものの、発泡体を形成する基材の量が少なくなりすぎて、信号線に巻き付ける際に、気孔部分がつぶれてしまうことが想定され、比誘電率を下げることができなくなる。以上説明した中で、低コスト、低誘電性、低吸水率の観点から、発泡ポリエチレンが最も好ましい。
【0016】
次に、本発明のレゾルバ用シールドケーブルの内部シース2の信号線1への巻き方について説明する。図4に示す波状形成されたテープ状内部シース2を、図5及び図6に示すように、信号線1(図示せず)に断面部に隙間が開かないように巻き付ける。それによって、信号線1と内部シース山部2a(内径側)との間に空隙3が形成される。この内部シース2が巻かれた信号線1を5本を集めて、更に同様形状に内部シース2を巻き付けることで、更なる空隙3を形成することが可能である。また図6に示すように巻き付けることで、波の方向が長手方向と平行になり、波が全周にわたって等間隔に配置されるので空隙の偏りが無くなり、信号線のバランス、信号の平衡を保ちやすくなっている。
【0017】
以上、信号線1が5本ある5心のものを説明したが、信号線の数はこれに限定されるものではない。
【0018】
(第二実施形態)
次に、図7を参照して、本発明に係るレゾルバ用シールドケーブルの第二実施形態について説明する。なお、前記実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一或いは同等符号を付してその説明を省略或いは簡略化する。相違点は、信号線を2本として、信号線1のバランスをとるために、内部シース2を巻き付けた信号線1の代わりに、スペーサ7を設けたところである。スペーサ7は中実のものであってもよいし、レゾルバ用シールドケーブル全体の比誘電率を低下されるために、中空のチューブ状のものであってもよい。
【0019】
(実施例)
図4に示す内部シース2について、幅寸法を20mm、正弦波ピッチを30°(12波)、波方向(内部シース山部)と長手方向の角度を120°、内部シース2を重ねないようにして巻きピッチを20mmとした。φ7mmの信号線1(図示せず)に図5、図6に示すように巻き付けることで、外径がφ10mmになると共に、空隙3を確保した状態となる。内部シース2の材質は、発泡ポリエチレン(気孔率30%、実質比誘電率1.9)とした。内部シース2を巻き付けた信号線1を5本撚った状態で、更に同様の内部シース2を巻き付けた後、その外側に錫メッキ軟銅の編組線のシールド4、次いでポリエステル系熱可塑性エラストマー製の外部シース5で外表面を覆った状態とした。尚、ドレン6は、シールド4内側に組み込まれた状態となっている。尚、空隙3はレゾルバ用シールドケーブル全体の断面積に対して、20%の割合で存在する。以上のように製造したレゾルバ用シールドケーブルと、空隙3がないシールドケーブルをレゾルバに取り付けて性能差を確認したところ、空隙3を有する本発明のレゾルバ用シールドケーブルは、減衰が抑えられ、各出力信号の平衡が十分に保たれることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、レゾルバからの各出力信号の平衡を保ち、減衰を防ぐことを目的としたレゾルバ用シールドケーブルに関する。
【符号の説明】
【0021】
1 信号線
2 内部シース
2a 内部シース山部
2b 内部シース谷部
3 空隙
4 シールド
5 外部シース
6 ドレン
7 スペーサ
20 信号線
21 対撚信号線
22 コア集合体
23 内部シース層
23a ポリエチレンテープ
24 遮蔽層
25 外部シース層
26 ドレンワイヤ
29 重なり代

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波状形成した、比誘電率が1〜3の材料を使った内部シースをそれぞれ巻きつけた内部信号線を撚り、さらにその撚った信号線に、誘電率が1〜3の材料を使い、波状形成した内部シースを巻いたことを特徴とするレゾルバ用シールドケーブル。
【請求項2】
請求項1記載のレゾルバ用シールドケーブルにおいて、前記内部シースを、テープ状とする共に、内部信号線に巻いた時に波状形成部の波の方向が長手方向と平行となるように、尚且つ断面を見たときに全周にわたって波が等間隔に配置されるようにし、長手方向に対し斜め方向に波状形成したことを特徴とするレゾルバ用シールドケーブル

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−109128(P2012−109128A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257426(P2010−257426)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】