説明

レボフロキサシン錠剤

【課題】レボフロキサシン経口投与用錠剤において、容易に嚥下可能となる小型錠剤の開発
【解決手段】レボフロキサシン錠剤におけるレボフロキサシン以外の医薬用添加剤の使用量を減じると共に、錠剤用顆粒を熟成させるという手段をとることにより、実用的硬度を有する錠剤の打錠を可能とし、市販品と比べて錠剤径及び錠剤質量ともに減少させた新規な経口投与用のレボフロキサシン小型錠剤を開発したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含量のレボフロキサシンを含有した小型化レボフロキサシン経口投与用錠剤およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に医薬品の錠剤に用いられる原薬のほとんどは、錠剤化する際に、各々の原薬物性により、キャッピング或いは硬度不足等の問題が起こるため、それ自体のみで、あるいは60質量%を超えるような高含量で錠剤化することは困難であるとされている。このため、1回投与量が多い薬物(例えば、投与量が100mgを超えるような薬物)を1錠に錠剤化する場合、通常の製剤技術を応用した場合だけでは、1錠当たりの重量の増加により容積的にも大型の錠剤とならざるを得ず、高齢者等が服用する場合は、嚥下困難を感じることもしばしばである。
【0003】
レボフロキサシン((S)−9−フルオロ−3−メチル−10−(4−メチル−1−ピペラジニル)−7−オキソ−2,3−ジヒドロ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンソオキサジン−6−カルボン酸)は、高い抗菌力と安全性を有する化合物であり、広スペクトルの優れた合成抗菌薬として知られている(特許文献1)。経口投与用としては、錠剤及び細粒が市販されている。
レボフロキサシンはニューキノロン系に属する抗菌剤で、成人に対する1回あたりの標準的投与量が100mgとされていることから、現状ではレボフロキサシン100mgを含有し、添加剤として、乳糖、トウモロコシデンプン、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、酸化チタン、タルク、マクロゴール6000,メチルポリシロキサン、二酸化ケイ素及びカルナウバロウ等を含むコーティング錠剤として処方されている。該錠剤は、1錠あたり205mgの質量(レボフロキサシン100mgを含む)、及び直径8.1mm、厚み4.34mmの大きさを有している。この大きさは健常者にとっては支障を生ずる大きさでは無いが、高齢者等にとっては少し大きめで服用性が良い錠剤とはいえなかった。
【特許文献1】特公平3−27534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、レボフロキサシン錠剤においては、原薬の含有量はそのままとし、全体の質量および寸法を小型化し、高齢者、小児又は嚥下困難な服用者等が容易に服用できるレボフロキサシン経口投与用錠剤の提供が望まれている。そのような小型経口投与錠剤は患者の服用に対する心身負担を軽減し、服用コンプライアンスを向上させることができると期待される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、レボフロキサシン錠剤を製造するにあたり、レボフロキサシン、崩壊剤、結合剤及び賦形剤等の医薬用添加剤を含むレボフロキサシン錠剤において、単に崩壊剤および結合剤の使用量の調整だけでは、実用的な錠剤硬度及び薬剤放出性を得ることができないにもかかわらず、全く意外にも、流動層造粒及び乾燥後、一定時間常温保存(以下熟成とも言う)することにより、レボフロキサシンを高含量含みながら、実用的な錠剤硬度と実用的な溶出挙動を示す、小型化されたレボフロキサシン錠剤を製造できることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
即ち本発明は
(1)素錠の総量に対してレボフロキサシン55〜70%(質量)及び残部医薬用添加剤を含み、素錠一錠当たりの質量が150〜180mgで、硬度が6.0〜11kgであることを特徴とするレボフロキサシン錠剤、
(2)素錠の錠径が6.5〜7.8mmであり、該素錠の錠厚が4.5mm以下であることを特徴とする前記(1)に記載のレボフロキサシン錠剤、
(3)レボフロキサシン素錠にコーティングを行ったコーティング錠剤であり、該コーティング錠剤の総量に対してレボフロキサシンの含有量が50〜65%(質量)、該コーティング錠一錠当たりの質量が160〜190mgで、該錠剤径が6.5〜7.9mm、硬度が7.0〜12kgであることを特徴とするレボフロキサシン錠剤、
(4)レボフロキサシン素錠中にカルメロースを含み、カルメロースの含有量がレボフロキサシン素錠の総量に対して1〜20%(質量)である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のレボフロキサシン錠剤、
(5)レボフロキサシン素錠中にヒドロキシプロピルセルロースを含み、ヒドロキシプロピルセルロースの含有量が素錠の総量に対して1〜15%(質量)である前記(1)〜(4)のいずれかに記載のレボフロキサシン錠剤、
(6)コーティング剤が低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むものである上記(3)〜(5)に記載のレボフロキサシン錠剤、
(7)流動層造粒により得られた、レボフロキサシン60〜75質量%及び残部医薬用添加剤からなる乾燥顆粒にカルメロース及び滑沢剤を加えて均一に混合し、常温熟成した後に、打錠することを特徴とする、レボフロキサシン含量が素錠の総量に対して55〜70%(質量)、素錠一錠当たりの質量が150〜180mg、及び硬度が6.0〜11kgであるレボフロキサシン錠剤の製造法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のレボフロキサシン錠剤は、従来のレボフロキサシン錠剤と同じ量のレボフロキサシンを含み、錠剤質量を軽減し、かつ錠剤径を小さいものとしたにもかかわらず、実用的な錠剤硬度と従来のレボフロキサシン錠剤と同様な放出性を有するので、高齢者、小児又は嚥下困難な服用者等においても容易に服用でき、患者の服用に対する心身負担を軽減し、服用コンプライアンスを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を以下により詳しく説明する。
本発明のレボフロキサシン錠剤は、レボフロキサシン((S)−9−フルオロ−3−メチル−10−(4−メチル−1−ピペラジニル)−7−オキソ−2,3−ジヒドロ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンソオキサジン−6−カルボン酸)を、素錠(裸錠)の総量に対して、55%以上、好ましくは60%以上で、通常70%以下含有することを特徴とする。残部は医薬用添加剤である。またコーティング錠とした場合、レボフロキサシンを、コーティング錠の総量に対して50%以上、好ましくは55%以上で、通常65%以下含有することを特徴とする。
レボフロキサシンは通常、成人に対する1回あたりの標準的投与量が100mgとされていることから、本発明のレボフロキサシン錠剤についても、1錠あたりレボフロキサシンを100mg(質量)含有する錠剤として製造される。
【0009】
本発明のレボフロキサシン錠剤には、崩壊性付与のために崩壊剤が使用される。用いられる崩壊剤としては、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、カルメロースカルシウム(カルボキシメチルセルロースカルシウム)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びクロスカルメロースカルシウム等のセルロース誘導体の他、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、部分α化デンプン並びにポリビニルポリピロリドン等が挙げられる。本発明においては、上記のセルロース誘導体を使用することが好ましく、特にカルメロースを使用することが好ましい。該崩壊剤の使用量は、レボフロキサシン素錠の総量に対して、1〜20%、好ましくは5〜15%、更に好ましくは6〜10%程度が適当である。
【0010】
本発明のレボフロキサシン錠剤に用いられる結合剤としては、トラガント、ゼラチン、グルテンなどの天然高分子類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの水溶性セルロース誘導体;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、酢酸ビニル樹脂などの水溶性合成高分子等が挙げられる。本発明においては、水溶性セルロース誘導体が好ましく、特にヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。該結合剤の使用量は、レボフロキサシン素錠の総量に対して、1〜15%、好ましくは3〜7%、更に好ましくは4〜7%程度である。
【0011】
本発明の錠剤においては、上記の他に、所望により、例えば賦形剤、滑沢剤、凝集防止剤等、通常の医薬製剤技術分野で常用される種々の添加剤を配合してもよく、本発明の錠剤においてはこれらの添加剤を配合することが好ましい。
本発明の錠剤に用いられる賦形剤としては例えば、白糖、乳糖、マンニトール及びグルコース等の糖類、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン及び部分α化デンプン等のデンプン類、結晶セルロース、クエン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム等の他、賦形剤として使用できる各種制酸剤などが挙げられる。これら賦形剤は単独又は二種以上を混合して使用してもよく、二種以上の賦形剤を混合して使用することが好ましい。賦形剤の使用量は、レボフロキサシン素錠の総量に対して、約10〜35%、好ましくは15〜30%、更に好ましくは20〜30%である。
【0012】
本発明の錠剤に用いられる滑沢剤としては例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖、食塩など、通常使用されているものから適宜に選択使用すればよいが、本発明においてはステアリン酸マグネシウムの使用が適している。滑沢剤の使用量は、レボフロキサシン素錠の総量に対して、約0.1〜3%、好ましくは0.5〜2%である。
【0013】
このようにして得られる本発明のレボフロキサシン錠剤の素錠(裸錠)は、総質量の55%以上、好ましくは60%以上で、通常70%以下をレボフロキサシンが占めるので、残余の崩壊剤等の医薬用添加剤成分の総質量は素錠質量の45%より少なく、好ましくは40%より少なく、30%より多い範囲である。
【0014】
本発明のレボフロキサシン錠剤においては、錠剤の崩壊剤としてカルメロースを使用し、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを使用する組み合わせが好ましく、この場合、ヒドロキシプロピルセルロース1質量部に対して、カルメロース1〜2質量部、より好ましくは1〜1.5質量部使用するのが好ましい。これらの崩壊剤および結合剤を使用することにより、本発明の目的である小型化が最適化される。
【0015】
本発明により得られるレボフロキサシン錠剤の素錠は、通常医薬品に用いられる錠剤と同様にフィルムコーティングすることができる。該フィルムコーティング基剤としては、一般的なものを用いることができ、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース及びメチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系水溶性コーティング基剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース及び酢酸フタル酸セルロース等のセルロース系腸溶性コーティング基剤;メタアクリル酸コポリマー及びセラック等その他の腸溶性フィルムコーティング基剤などが挙げられる。
上記フィルムコーティング基剤としてはセルロース系水溶性コーティング基剤が好ましく、中でも、造膜性の点でHPMCがより好ましい。HPMCの中では20℃における2%水溶液の粘度が100cp以下のものが通常使用され、本発明においては低粘度のもの、例えば15cp以下、好ましくは10cp以下で、通常1cp以上、好ましくは2cp以上、より好ましくは3cp以上のHPMCが特に好適である。
これらのフィルムコーティング基剤には、必要に応じてポリエチレングリコール等の可塑剤を添加することができる。
【0016】
上記のフィルムコーティングに際して、必要に応じて、遮光性を持たせ、遮光性のフィルムコーティングとしてもよく、本発明においては遮光性のフィルムコーティングが好ましい。遮光性のフィルムコーティングとするには、例えば、三二酸化鉄及び/又は酸化チタン等の遮光剤を、前記フィルムコーティング基剤に適量配合して、常法によりコーティングすればよい。フィルムコーティング基剤としては、前記したものが何れも使用することができ、前記好ましいとしたフィルムコーティング基剤が好ましい。遮光剤の、コーティング成分総量に対する配合割合は特に限定されないが、20〜50%程度である。
上記コーティングをすることにより、レボフロキサシンの苦味をマスクし、さらに服用を容易にする効果も期待できる。コーティング量は苦味をマスクするために必要な量をコーティングすることが望ましく、本発明においては、素錠の総量に対して約3〜10%程度、好ましくは4〜8%程度である。
【0017】
以下に上記本発明のレボフロキサシン錠剤の製造方法を具体的に説明する。
本発明のレボフロキサシン錠剤は、原薬のレボフロキサシンの含量割合が高いため、医薬品の錠剤を製造する既知の方法をそのまま適用しても、実用的な薬剤の放出性及び/又は錠剤硬度を有する錠剤は得ることができない。しかるに本発明者らは、種々検討の課程で、偶然にも、打錠用に製造された顆粒、特に流動層造粒により製造された乾燥顆粒が室温において一定時間保存(以下熟成とも言う)後に打錠される時、錠剤の硬度が上がることを見出し本発明を完成した。
本発明のレボフロキサシン錠剤の製造に使用する錠剤用顆粒は常法により、レボフロキサシン及び顆粒製造用の医薬用添加剤(例えば、賦形剤及び結合剤等)を混合し、造粒機で造粒し、必要に応じて、錠剤用顆粒への調製を行うことにより、錠剤用顆粒を得ることが出来る。
【0018】
本発明においては、造粒方法として、撹拌造粒や流動層造粒等の製造方法が適している。上記のように流動層造粒により製造された乾燥顆粒の場合、熟成の効果が顕著であることから、流動層造粒により製造するのがより好ましい。
流動層造粒の場合、例えば、レボフロキサシン及び賦形剤(例えば乳糖及びトウモロコシデンプン)を均一に混合した後、流動層造粒機に投入し、結合剤水溶液をスプレーして造粒し、乾燥する。乾燥は該造粒機での乾燥でも、乾燥機等による棚乾燥何れでもよい。乾燥温度は20〜100℃程度で行うことができ、好ましくは30〜80℃程度であり、より好ましくは45〜65℃程度であり、場合によっては45〜55℃程度が更に好ましい。
【0019】
乾燥時間は乾燥温度等の条件により異なるので一概には言えないが、10分〜20時間程度であり、好ましい温度においては20分〜3時間程度であり、場合によっては、20〜40分程度である。場合によってはさらに30〜60分程度、乾燥時間を追加してもよい。乾燥の目安は造粒により得られた顆粒における水分含量が3〜4%になるように乾燥するのが好ましい。乾燥により得られた顆粒は、レボフロキサシン60〜75質量%及び残部医薬用添加剤からなる。
【0020】
得られた乾燥顆粒は必要に応じて篩により篩過し、整粒する。
該整粒された顆粒は、通常打錠用顆粒に調製するのが好ましい。打錠用顆粒は造粒された顆粒が崩壊剤を含む場合は、滑沢剤を加えて、均一に混合して打錠用顆粒としてよいが、本発明においては、崩壊剤を含まない整粒された顆粒に、上記の崩壊剤、好ましくはカルメロース及び滑沢剤を加えて均一に混合する方が好ましい。均一に混合する方法としては、上記の崩壊剤、好ましくはカルメロースを加えて、均一に混合し、その後上記の滑沢剤を加えて均一に混合し、打錠用顆粒とする方が好ましい。
上記で得られた打錠用顆粒をそのまま打錠しても、錠剤硬度が6kg以上の実用的な硬度を有する小型錠剤を得るのは難しい。しかしながら、全く意外にも、上記で得られた打錠用顆粒を、密閉容器中において一定時間、例えば3時間以上、好ましくは6時間以上、保存した(本発明では熟成とも言う)後、打錠するならば、充分な硬度を有する本発明のレボフロキサシン錠剤が得られるということは全く意外なことであった。この熟成は常温、例えば5〜40℃程度、好ましくは10〜35℃程度で、3時間以上、好ましくは6時間以上で、48時間以内程度、好ましくは24時間以内程度、更に好ましくは20時間以内程度保存することにより行うことができる。
このように熟成された錠用顆粒を打錠機を用いて打錠することにより、本発明のレボフロキサシン錠剤(素錠)が製造される。
打錠工程における打錠条件については、目的とする錠剤を得ることが出来ればどのような条件であっても、特に制限されるものではない。通常、素錠の打錠圧は100〜1000kgf程度が適当である。
【0021】
上記で得られた本発明の錠剤はそのまま用いることもできるが、レボフロキサシンの味をマスキングする目的及び/又はレボフロキサシンの保存安定性を向上させる目的等で、上記で得られた素錠を、コーティングして、コーティング錠とするのが好ましく、遮光性のコーティング錠とするのがより好ましい。
コーティングは、常法によって行うことができる。例えば上記で得られた素錠をフィルムコーティング装置に投入し、コーティング液をスプレーし、次いで乾燥することにより、本発明のコーティング錠を得ることができる。
コーティング液は、前記したコーティング基剤、好ましくは前記した好ましいコーティング基剤を含む水溶液が使用される。本発明においては遮光性のコーティング錠とするのがより好ましいので、該コーティング液中に、前記の遮光剤を分散又は懸濁させたものを使用するのが好ましい。
得られたコーティング錠の乾燥は、常法によって行えばよく、例えば40〜70℃程度、好ましくは40〜55℃程度で行うことができる。
得られたコーティング錠は、所望により、ポリシング(艶出し)を行ってもよい。ポリシングは常法により、カルナウバロウ等のポリシングワックスを投入し、フィルムコーティング錠にポリシングを行えばよい。
以上の工程により、コーティングされた本発明のレボフロキサシン錠を得ることができる。
【0022】
以上のようにして得られる本発明のレボフロキサシン錠剤は、実用的な硬度6〜11kgの硬度を有するレボフロキサシン錠であり、素錠の総量に対してレボフロキサシン55〜70%(質量)及び残部医薬用添加剤を含み、素錠一錠当たりの質量が150〜180mgで、従来のレボフロキサシン含量100mg/錠の錠剤とすることができ、従来のレボフロキサシン錠剤よりも小型化することができる。例えば素錠の厚さを4.0〜4.5mm程度、好ましくは4.1〜4.4mm程度、より好ましくは4.1〜4.3 mm程度とするとき、錠径を7.0〜7.8mm程度、好ましくは7.3〜7.6mm程度、より好ましくは7.3〜7.5mm程度にすることができる。
そして素錠に10mg/錠程度のコーティングを行うとき、錠剤の厚さ及び錠径とも、上記素錠に比して、0.1mm程度増加するものの、従来品に比して、小型化することができる。
レボフロキサシン素錠にコーティングを行なったコーティング錠剤は、該コーティング錠剤の総量に対してレボフロキサシンの含有量が50〜65%(質量)、該コーティング錠一錠当たりの質量が160〜190mgであり、該錠剤径が6.5〜7.9mm程度であり、硬度が7.0〜12kgと実用的な硬度を有するレボフロキサシン錠剤である。
本発明における好ましい錠剤組成の1例を下記表1に示す。下記組成の範囲で1錠当たりの総質量を、150〜180部となるように適宜調整するのが好ましい。
【0023】
[表1]
レボフロキサシン 100部
乳糖 20〜30部
トウモロコシデンプン 10〜20部
ヒドロキシプロピルセルロース 5〜20部
カルメロース 5〜20部
ステアリン酸マグネシウム 1〜5部
【0024】
また、好ましいコーティング剤組成を下記表2に示す。
【0025】
[表2]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 3〜10部
酸化チタン 2〜8部
タルク 0.2〜2部
マクロゴール6000 1〜5部
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例及び試験例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1
下記の処方及び製法にてレボフロキサシン含有錠剤を得た。なお、とくに記載しない限り、部及び%はそれぞれ質量部及び質量%を表す。
レボフロキサシン100部、乳糖27部及びトウモロコシデンプン15部を均混合し、流動層造粒機に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース9部を含む結合剤水溶液をスプレーし、造粒した。造粒が終了後、温度50℃にて30分間乾燥した。得られた造粒乾燥物を、18メッシュの篩にて篩過し、整粒した。Wコーン型混合機中に、得られた整粒物を入れ、カルメロース12.5部及びステアリン酸マグネシウム2部を順次混合し、錠剤用顆粒を得た。
得られた錠剤用顆粒を密閉容器中で12時間保存熟成後、ロータリー打錠機を用いて打錠し、錠径7.5mm、錠厚4.3mm、質量165.5mgである円形のレボフロキサシン錠剤の素錠を得た。
【0028】
実施例2
乳糖を28部、トウモロコシデンプンを16部、並びにヒドロキシプロピルセルロースを7部とした以外は実施例1と同様の方法にてレボフロキサシン含有錠剤を作製し、錠径7.5mm、錠厚4.3mm、質量165.5mgである円形のレボフロキサシン錠剤の素錠を得た。
【0029】
比較例
上記実施例2と同様にして、錠剤用顆粒を得た。該錠剤用顆粒を、熟成することなく、上記実施例2と同様にして打錠し、円形のレボフロキサシン錠剤の素錠を得た。
【0030】
実施例3
コーティング錠の製造
加温した精製水にマクロゴール6000 0.92部を投入して攪拌溶解し、得られた溶解液にヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 4.62部を投入し攪拌溶解した後、酸化チタン3.08部及びタルク1.38部を投入し攪拌溶解し、200メッシュの篩にて篩過して、フィルムコーティング液を作製した。
実施例1により得られた素錠をフィルムコーティング装置に投入し、上記のフィルムコーティング液をスプレーし、50℃にて乾燥した。得られたフィルムコーティング錠にカルナウバロウを適量投入してポリシングを行い、錠径7.6mm、錠厚4.4mm、質量175.5mgである、円形のレボフロキサシン錠剤のフィルムコーティング錠を得た。
【0031】
試験例
実施例1〜3により得られたレボフロキサシン錠、及び比較例のレボフロキサシン錠の質量、直径、厚み及び錠剤硬度を測定した。結果を表3に示す。
測定の結果、本発明のレボフロキサシン錠は、市販品(コーティング錠;質量205.3mg、錠径8.1mm、錠厚4.34mm)と比して厚みがほぼ同一でありながら、直径が0.5mm短く、質量が15%減少している。また、実施例により得られたレボフロキサシン錠における硬度は、錠剤として実用的な硬度を有するが、熟成を行わない比較例のものは硬度が著しく劣り、実用的な硬度を得ることが出来なかった。
また、実施例のものは何れも打錠時のキャッピング等の打錠障害はいずれのロットにも起こらなかった。更に、水での溶出性及びpH1.2での溶出性は本実施例のものは、共に、ほぼ市販品と同様であった。
【0032】
[表3]
実施例1 実施例2 比較例 実施例3
質量(mg) 165.5 165.5 165.5 175.5
錠径(mm) 7.5 7.5 7.5 7.6
錠厚(mm) 4.3 4.3 4.3 4.4
硬度(kg) 9.1 8.3 5.0以下 9.5
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のレボフロキサシン錠剤(コーティング錠)は、市販品(コーティング錠)と同等なレボフロキサシン含量を有しながら、市販品と比べて錠剤径が0.5mm小型化し、錠剤質量も、おおよそ15%減少しており、患者の服用に対する心身負担を軽減し、服用コンプライアンスを向上させる効果を有するもので、該小型レボフロキサシン錠剤の提供は今後の高齢社会に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素錠の総量に対してレボフロキサシン55〜70%(質量)及び残部医薬用添加剤を含み、素錠一錠当たりの質量が150〜180mgで、硬度が6.0〜11kgであることを特徴とするレボフロキサシン錠剤。
【請求項2】
素錠の錠径が6.5〜7.8mmであり、該素錠の錠厚が4.5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のレボフロキサシン錠剤。
【請求項3】
レボフロキサシン素錠にコーティングを行ったコーティング錠剤であり、該コーティング錠剤の総量に対してレボフロキサシンの含有量が50〜65%(質量)、該コーティング錠一錠当たりの質量が160〜190mgで、該錠剤径が6.5〜7.9mm、硬度が7.0〜12kgであることを特徴とするレボフロキサシン錠剤。
【請求項4】
レボフロキサシン素錠中にカルメロースを含み、カルメロースの含有量がレボフロキサシン素錠の総量に対して1〜20%(質量)である請求項1〜3のいずれかに記載のレボフロキサシン錠剤。
【請求項5】
レボフロキサシン素錠中にヒドロキシプロピルセルロースを含み、ヒドロキシプロピルセルロースの含有量が素錠の総量に対して1〜15%(質量)である請求項1〜4のいずれかに記載のレボフロキサシン錠剤。
【請求項6】
コーティング剤が低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むものである請求項3〜5に記載のレボフロキサシン錠剤。
【請求項7】
流動層造粒により得られた、レボフロキサシン60〜75質量%及び残部医薬用添加剤からなる乾燥顆粒にカルメロース及び滑沢剤を加えて均一に混合し、常温熟成した後に、打錠することを特徴とする、レボフロキサシン含量が素錠の総量に対して55〜70%(質量)、素錠一錠当たりの質量が150〜180mg、及び硬度が6.0〜11kgであるレボフロキサシン錠剤の製造法。

【公開番号】特開2009−35505(P2009−35505A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200611(P2007−200611)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000169880)高田製薬株式会社 (33)
【Fターム(参考)】