説明

レラキシン3−GPCR135複合体ならびにそれらの生産及び使用

GPCR135レセプター活性のモジュレーターに関するスクリーニングのためのアッセイ試薬として有用なGPCR135/レラキシン3複合体を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、GPCR135及びレラキシン3(relaxin3)のリガンド−及び−レセプター複合体に関する。本発明はそのような複合体の調製方法及びそれらの使用方法にも関する。本発明はさらにラットGPCR135レセプターのイソ型に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
GPCR135
G−タンパク質共役レセプター(GPCRs)は、ホルモン、神経伝達物質、ペプチド、脂質、イオン、光、臭気物質(odorants)、ヌクレオチド、脂肪酸誘導体及び他の化学的媒体を含む多様な細胞外シグナルの列の伝達を担う貫膜レセプタータンパク質である。例えば特許文献1を参照されたい。GPCRsは、それらが優れた薬剤標的として確立されているために、薬剤発見のために特に重要である:それらは市販されている薬剤の50%の標的である。GPCRsと関連していることが見出された疾患の数は増加している。GPCRsを標的とする薬剤は、心臓血管障害から胃−腸障害からCNS障害まで及び他の広範囲の障害の処置に用いられてきた(非特許文献1)。
【0003】
GPCR−媒介シグナル伝達の事象は、多くの場合にGPCRに特異的リガンドが結合すると開始される。各GPCRは細胞外N−末端ドメイン、7つの別個の貫膜セグメント及び細胞内C−末端ドメインから構成される。GPCRの細胞外N−末端ドメインへのリガンドの結合は、GPCRと関連する細胞内ヘテロトリマー(heterotrimeric)GTP−結合タンパク質(Gタンパク質)の活性化に導くコンフォーメーション変化を生ずる。これらの活性化されたGタンパク質は、今度は細胞生理学を調節する多様な細胞内応答を媒介する。従って、リガンドはGPCRの生理学的機能の解明の手段ならびにGPCRのシグナル伝達活性を調節する化合物に関するスクリーニングの方法を与える。
【0004】
現在、約200種のGPCRsが既知のGPCRsとして分類されているのみであり、それらは約70種の既知のリガンドにより活性化される。配列分析を介し、GPCRsがヒトゲノムの最大のスーパーファミリー(superfamilies)の1つに属することが見出された:GPCRsをコードする1000個を超える遺伝子において評価された(非特許文献2)。多数の推定GPCRsが、それらの自然のリガンドが未知であるために、オーファンレセプターとして記載されている。これらの未特性化オーファンGPCRsのいくつかは治療標的として有用であり得る。GPCRへの特異的リガンドの同定は、これらのオーファンGPCRsの可能な治療的利益を利用するための要点である(非特許文献3)。
【0005】
GPCR135は、ほとんど中枢神経系のみで発現されることが見出されたオーファンレセプターである。GPCR135はソマトスタチン−及びアンギオテンシン−様ペプチドレセプター(SALPR)とも呼ばれてきた(非特許文献4)。ヒトにおいて、GPCR135はソマトスタチン(SSTR5)及びアンギオテンシン(AT1)のレセプターとそれぞれ約35%及び31%のアミノ酸配列類似性を共有する。しかしながら、Cos−1細胞におけるGPCR135の一過性発現(transient expression)は、ソマトスタチン又はアンギオテンシンIIに関する結合部位を生じず、これらのリガンドがGPCR135に結合しないことを示した。GPCR135の推定アミノ酸配列は、そのリガンドがペプチド的(peptidergic)性質のものであることを
示唆している。GPCR135 mRNAは黒質及び下垂体のような別個の脳領域において低いレベルで発現され、以前は同定されていなかった神経ぺプチドがおそらくGPCR135リガンドであることを意味している(非特許文献4)。
レラキシン3
ヒトレラキシン3(H3)及びそのマウス同等物(M3)は、配列相同性に基づいて、レラキシン−関連ペプチドとしてCeleraゲノムデータベースから同定された(非特許文献5)。いずれの遺伝子も、古典的な2つの鎖(two−chain)、レラキシン/インスリン群の3つのシステイン−結合構造及びレラキシンレセプター結合に必須のB−鎖中のRXXXRXX(I/V)モチーフが導入された推定プロホルモン配列をコードする。インスリン/レラキシン群の他のメンバーと比較して、H3及びM3は系統樹上の別の枝の下にグループ分けされ、これらの特定のレラキシンの進化が、主に妊娠のホルモンとして機能するレラキシン1又はレラキシン2のような他のレラキシンから分岐したことを示している。従ってレラキシン3はレラキシン1又はレラキシン2の機能と別個の機能を有し得る。最近の研究は、レラキシン3が生殖、脳、腎臓、心臓血管及び他の機能において役割を有し得るロイシンの豊富な反復−含有オーファンGPCR(leucine−rich repeat−containing orphan GPCR)であるLGR7を活性化することを示した。レラキシン3 mRNAの発現の低いレベルのために、ヒト組織におけるその分布についてほとんど知られていないが、M3 mRNAはマウス脳において、特に雌のC57BLK6Jマウスの背面被蓋核の腹側正中部及び網様体核の背面部を取り巻く細胞中の橋/髄質(pons/medulla)において検出された。これは、哺乳類脳中の神経ペプチドとしてのレラキシン3の役割の可能性を示唆している(非特許文献5)。
【特許文献1】国際公開第02/00719号パンフレット
【非特許文献1】Wilson et al.著,British J.of Pharmacology 125:1998年,1387−1392
【非特許文献2】Civelli et al.著,Trends in Neurosciences 24:2001年,230−237
【非特許文献3】Howard et al.著,Trends in Pharmacological Sciences 22:2001年,132−140
【非特許文献4】Matsumoto et al.著,Gene 248:2000年,183−189
【非特許文献5】Bathgate et al.著,J.Biol.Chem.277:2002年,1148−1157
【非特許文献6】Hsu et al.著,Science 295,2002年,671−674
【非特許文献7】Sudo et al.著,J.Biol.Chem,278:2003年,7855−7862
【発明の開示】
【0006】
発明の概略
今回、レラキシン3がGPCR135に関する自然のリガンドであることが見出された。
【0007】
従って1つの一般的側面において、本発明は、レラキシン3又はレラキシン3の活性フラグメントを含有するリガンド成分に結合したGPCR135又はGPCR135の活性フラグメントを含有するレセプター成分を含んでなり、ここでレセプター及びリガンド成分の少なくとも1つが実質的に純粋な形態にあるレセプター−リガンド複合体(receptor−ligand complex)に関する。
【0008】
他の一般的側面において、本発明は:配列番号:15のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列又はその相補配列(complement)を有する単離されたポリヌクレオチド;そのようなアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチド;そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター(vector);ならびにそのようなベクターを含んでなる組換え宿主細胞(recombinat host cell)に関する。
【0009】
本発明の追加の一般的側面は:レラキシン3プロペプチドのA鎖とC鎖の間のペプチド結合及びC鎖とB鎖の間のペプチド結合から選ばれる少なくとも1つの位置においてプロテアーゼ切断部位(protease cleavage site)を形成するペプチド結合の挿入により改変されたレラキシン3プロペプチドをコードするDNA分子を構築し;改変されたレラキシン3プロペプチドを発現する第1のベクターを構築し;改変されたレラキシン3プロペプチドを、挿入されたプロテアーゼ切断部位において切断するためのプロテアーゼを発現する第2のベクターを構築し;第1のベクター及び第2のベクターの両方を宿主細胞中に導入し;そして宿主細胞を生育して改変されたレラキシン3プロペプチド及びプロテアーゼの両方を発現させ、それによりプロテアーゼが改変されたレラキシン3プロペプチドを、挿入されたペプチド結合において有効に切断することを含んでなる、組換え細胞からのレラキシン3の生産方法に関する。
【0010】
本発明のさらに別の一般的側面は、アッセイ又はスクリーニング法に関する。例えばGPCR135/レラキシン3複合体の生物学的活性を向上させるかもしくは低下させる化合物の同定の1つの一般的方法は:化合物及び緩衝溶液を含んでなる試験試料を、本発明のレセプター−リガンド複合体を含んでなるアッセイ試薬と接触させ;レセプター−リガンド複合体の生物学的活性を決定し;そしてその決定において得られた測定を、レセプター−リガンド複合体を緩衝溶液と接触させた対照測定と比較することを含んでなる。GPCR135又はその活性フラグメントに結合する化合物の同定の他の一般的アッセイ法は:GPCR135又はその活性フラグメントを試験化合物及び標識レラキシン3又はその活性フラグメントと接触させ;そしてGPCR135又はその活性フラグメントと結合した標識レラキシン3又はその活性フラグメントの量を決定し、そして次いでその量を、GPCR135又はその活性フラグメントを試験化合物の不在下で標識レラキシン3又はその活性フラグメントと接触させた対照測定と比較することを含んでなる。さらに別の一般的アッセイは:GPCR135又はその活性フラグメントを含んでなるアッセイ試薬と試験化合物を接触させ;GPCR135又はその活性フラグメントの生物学的活性を決定し;そしてこの結果を、GPCR135又はその活性フラグメントを試験化合物の不在下でレラキシン3又はその活性フラグメントと接触させた対照測定の結果と比較することを含んでなる、GPCR135に結合し、レラキシン3を模する化合物の同定方法に関する。
【0011】
本発明の他の側面、特徴及び利点は、発明の詳細な記述及びその好ましい態様ならびに添付の請求項を含む以下の開示から明らかになるであろう。
図面の簡単な記述
図1は、ヒト、マウス及びラットGPCR135の間のアミノ酸配列の比較を示す。示されるラットの配列はラットGPCR135sである。
【0012】
図2は、種々のラット組織におけるGPCR135リガンド活性を示す。種々のラット組織は、エタノール/HCl法を用いて抽出された。得られる組織抽出物を種々の希釈において、レセプターの供給源として単離されたヒトGPCR135発現細胞膜を用いるGTPγS結合アッセイにおけるリガンドとして用いた。
【0013】
図3は、GPCR135リガンドの分子量特性化を示す。粗ラット脳エタノール/HCl抽出物を、HPLC−ゲル濾過カラムを介して溶離させた。1分当たり1つの画分において画分を集めた。各画分をGTPγS結合アッセイにおいてGPCR135リガンド活性に関して検定した。平行実験において、既知の分子量を有するペプチド及びヌクレオチドを、標準として働く試料条件において溶離させた。
【0014】
図4は、ヒト、マウス、ラットレラキシン3(R3)及びブタ脳から精製されたGPCR135リガンドの間のアミノ酸配列比較を示す。
【0015】
図5は、ヒトレラキシン3がトランスフェクションされたCOS細胞からの細胞培養培地におけるGPCR135リガンド活性を示す。ヒトレラキシン3がトランスフェクションされた(COS7 HR3)又はヒトレラキシン3なしの(COS Ct)COS細胞からの細胞培養培地をイオン交換及びC−18カラムにより濃縮した。濃縮された細胞培養培地を種々の希釈度において希釈し、GTPγS結合アッセイを用いてGPCR135リガンド活性に関して調べた。
【0016】
図6は、GPCR135及びGqi5を共−発現するHEK293細胞において、レラキシン3がCa2+動態化を刺激することを示す。トランスフェクションされない(293標準)あるいは単独のGqi5でトランスフェクションされた(293/Gqi5)、単独のヒトGPCR135でトランスフェクションされた(GPCR135)、又はヒトGPCR135及びGqi5により共−トランスフェクションされた(GPCR135/Gqi5)HEK293細胞を、ヒトレラキシン3の刺激下におけるCa2+動態化アッセイのために用いた。FLIPRを用いてリガンド刺激細胞内Ca2+動態化を監視した。
【0017】
図7は、125I−レラキシン3がGPCR135に特異的に結合することを示す。競合物質としての1 □Mの非標識ヒトレラキシン3の存在下(「競合」)又は不在下(「全結合」)において、125I−標識ヒトレラキシン3を用いる結合アッセイのために、トランスフェクションされない(NC)あるいはそれぞれpcDNA3.1(ベクター標準)、ヒトGPCR135(hGPCR135)、マウスGPCR135(mGPCR135)、ラットGPCR135長鎖形態(long form)(rGPCR135L)及びラットGPCR135短鎖形態(short form)(rGPCR135s)でトランスフェクションされたCOS7細胞を用いた。
【0018】
図8は、cAMP蓄積アッセイから、GPCR135へのレラキシン3の結合が細胞内cAMP濃度を低下させることを示す。ヒトGPCR135を安定して発現するCHO−K1細胞(GPCR135)及びトランスフェクションされないCHO−K1細胞(標準)をcAMP蓄積アッセイのために用いた。示される種々の刺激物質を用いて細胞を処理した。細胞内に蓄積したcAMPをHClにより抽出し、125I−標識cAMP及びFlashプレートを用いてELISAキット(NEN)により、cAMPの濃度を測定した。
発明の詳細な記述及びその好ましい態様
下記で引用されるすべての公開文献は、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる。他にことわらなければ、本明細書で用いられるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が関連する技術分野における通常の熟練者に通常理解されると同じ意味を有
する。
【0019】
以下は、本明細書下記において時々用いられる略語である:
bp=塩基対
Ca2+=カルシウムイオン
cAMP=サイクリックアデノシン一リン酸
cDNA=相補的DNA
CNS=中枢神経系
kb=キロベース;1000塩基対
kDa=キロダルトン;1000ダルトン
GPCR=Gタンパク質共役レセプター
Gタンパク質=GTP−結合タンパク質
GTP=グアノシン5’−三リン酸
nt=ヌクレオチド
PAGE=ポリアクリルアミドゲル電気泳動
PCR=ポリメラーゼ連鎖反応
SDS=ドデシル硫酸ナトリウム
SiRNA=干渉性小分子RNA(small interfering RNA)
UTR=非翻訳領域
「含む」、「含んでなる」及び「含有する」という用語は、本明細書で、それらの開放された非−制限的な意味で用いられる。
【0020】
ポリペプチド又は核酸の「活性」、「生物学的活性」又は「機能的活性」は、標準的方法に従って生体内又は試験管内で決定されるポリペプチド又は核酸分子により発揮される活性を指す。そのような活性は、第2のタンパク質との会合又はそれへの酵素活性のような直接的活性あるいはタンパク質の第2のタンパク質との相互作用により媒介される細胞シグナリング活性のような間接的活性であることができる。
【0021】
レラキシン3の代表的な生物学的活性は、GPCR135に結合し、GPCR135により行なわれるシグナル伝達事象を開始させるその能力である。GPCR135の代表的な生物学的活性は、GPCR135がレラキシン3に結合すると、GTPへの高い親和性を有するG−タンパク質の活性化を介し、サイクリックAMP及びカルシウムのような細胞内シグナリング分子(二次メッセンジャー(second messenger)分子)の濃度を変える一連の事象を活性化することである。これらの細胞内シグナリング分子が、今度は細胞の生理学及び挙動を変える。
【0022】
「クローン」は、単細胞又は共通祖先から有糸分裂により誘導される細胞の集団である。「細胞系」は、多くの世代に及んで試験管内で安定して成長できる初代細胞(primary cell)のクローンである。
【0023】
「レラキシン3及びGPCR135複合体に関連する障害」は、レラキシン3及びGPCR135複合体の過剰活性又は不十分な活性に関連する障害又は疾患ならびにそのような障害又は疾患に伴う状態を意味する。「過剰活性」という用語は、リガンド及びレセプター複合体の発現の増加あるいは複合体の生物学的活性の向上を指す。「不十分な活性」という用語は、リガンド及びレセプター複合体の発現の減少又は複合体の生物学的活性の低下を指す。
【0024】
「遺伝子変異」又は「変異」は、1つの集団中の少なくとも1つの個体において特定の遺伝子座に存在し、且つ野生型と異なる特定の遺伝子変異を意味する。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「GPCR135」又は「レセプター成分」は:(1)SALPRとも呼ばれるヒトGPCR135(Matsumotn et al.著,Gene 248:2000年,183−189,GenBank タンパク質受け入れ番号:BAA93001)に約60%より高いアミノ酸配列同一性を有するか;(2)本明細書に記載されるヒトGPCR135タンパク質に対する抗体、例えばポリクローナルもしくはモノクローナル抗体に結合できるか;あるいは(3)ヒトGPCR135cDNA(GenBank ヌクレオチド受け入れ番号:D88437)に約60%より高いヌクレオチド配列同一性を有する配列を持つ核酸分子に、緊縮ハイブリッド形成条件下で特異的にハイブリッド形成するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを指す。「緊縮ハイブリッド形成条件」は、Sambrook et al.著,Molecular
Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,1989年に記載されているような、当該技術分野において既知の意味を有する。
【0026】
好ましい態様において、レセプター成分は、ヒトGPCR135に65、70、75、80、85、90又は95パーセントより高いアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドである。他の好ましい態様において、レセプター成分は、ヒトGPCR135cDNAに65、70、75、80、85、90又は95パーセントより高いヌクレオチド配列同一性を有する配列を持つ核酸分子に、緊縮ハイブリッド形成条件下で特異的にハイブリッド形成するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。
【0027】
代表的なGPCR135レセプター成分には、ヒト(配列番号:12,GenBank
受け入れ番号:BAA93001,Q9NSD7及びNP 057652)、ラット(配列番号:14及び配列番号:15,ヒトの配列に85.9%の配列同一性)、マウス(配列番号:13,ヒトの配列に86.4%の配列同一性)ならびにブタ及びサルを含む他の動物において同定されたオルソログ(orthologs)が含まれる。「GPCR135の活性フラグメント」は、哺乳類レラキシン3への結合及びG−タンパク質の活性化のようなGPCR135の生物学的活性を保持しているGPCR135タンパク質のフラグメントを意味する。ヒトGPCR135のタンパク質又はcDNA配列は特許出願、国際公開第00/23111号パンフレット、国際公開第00/24891号パンフレット、国際公開第01/48189号パンフレット、国際公開第01/62797号パンフレット、国際公開第01/74904号パンフレット及び国際公開第01/85791号パンフレットに開示されている。
【0028】
本明細書で用いられる場合、「宿主細胞」という用語は、ベクター上の、あるいは細胞染色体中に組み込まれたあるDNA分子を含有する細胞を指す。宿主細胞は、内在的にそのDNA分子を含有する本来の宿主細胞又は下記で定義される組換え宿主細胞であることができる。
【0029】
「単離された」核酸分子は、異なる核酸配列を有する核酸分子から実質的に分離された核酸分子である。本発明の単離された核酸分子の態様には、好ましくはヒト起源のcDNA、ゲノムDNA及びRNAが含まれる。
【0030】
「単離された」又は「精製された」タンパク質又はその生物学的に活性なフラグメントもしくは部分は、タンパク質が生産され且つ単離された細胞もしくは組織源からの細胞材料又は他の汚染タンパク質を実質的に含まないか、あるいはタンパク質が化学的に合成される場合には、化学的前駆体又は他の化学品を実質的に含まない。例えば細胞材料を実質的に含まないタンパク質には、約30%、20%、10%もしくは5%(乾燥重量により)未満の汚染タンパク質を有するタンパク質の調製物が含まれ得る。タンパク質又はその
生物学的に活性な部分が組換えにより生産される場合、それは好ましくは培地も実質的に含まず、すなわち培地はタンパク質調製物の体積の約20%、10%又は5%未満に相当する。タンパク質が化学合成により生産される場合、それは好ましくは化学的前駆体又は他の化学品を実質的に含まず、すなわちそれはタンパク質の合成に含まれる化学的前駆体又は他の化学品から分離される。従ってそのようなタンパク質の調製物は、約30%、20%、10%又は5%(乾燥重量により)未満の化学的前駆体又は本発明のポリペプチド以外の化合物を有する。
【0031】
単離された生物学的に活性なポリペプチドはいくつかの異なる物理的形態を有することができる。単離されたポリペプチドは全−長ナセントもしくはプロセシングされないポリペプチドとして、あるいは部分的にプロセシングされたポリペプチド又はプロセシングされたポリペプチドの組み合わせとして存在することができる。全−長ナセントポリペプチドは、全−長ナセントポリペプチドのフラグメントの形成を生ずる特異的なタンパク質分解的切断事象により、翻訳後に改変され得る。フラグメント又はフラグメントの物理的会合物(physical association)は、全−長ポリペプチドに関連する生物学的活性を有することができる;しかしながら、個々のフラグメントに関連する生物学的活性の程度は変わることができる。
【0032】
本明細書で用いられる「リンカー領域」又は「リンカードメイン」という用語あるいは類似のそのような記述的用語は、クローニングベクター又は融合タンパク質の構築において用いられる1個もしくはそれより多いポリヌクレオチド又はポリペプチド配列を指す。リンカー領域の機能には、ヌクレオチド配列中へのクローニング部位の導入、2つのタンパク質ドメインの間における変更可能成分(flexible component)又は空間−形成領域(space−creating region)の導入あるいは特異的な分子相互作用を助長するためのアフィニティータグ(affinity tag)の形成が含まれ得る。必要ならリンカー領域を、ポリペプチド又はヌクレオチド配列構築の間に融合タンパク質中に導入することができる。
【0033】
本明細書で用いられる「核酸」という用語は、1個もしくはそれより多いヌクレオチド、すなわちリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド又は両方を含んでなる分子を指す。該用語はリボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドのモノマー及びポリマーを含み、ポリマーの場合には、リボヌクレオチド及び/又はデオキシリボヌクレオチドが5’から3’への連結を介して一緒に結合している。リボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドポリマーは、1本鎖又は2本鎖であることができる。しかしながら連結は、例えば5’から3’への連結を含んでなる核酸を含む当該技術分野において既知の連結のいずれを含むこともできる。ヌクレオチドは天然に存在することができるか、あるいは天然に存在する塩基対と塩基−対関係を形成することができる合成により生産される類似体であることができる。塩基−対関係を形成することができる天然に存在しない塩基の例にはaza及びdeazaピリミジン類似体、aza及びdeazaプリン類似体ならびにピリミジン環の炭素及び窒素原子の1個もしくはそれより多くがヘテロ原子、例えば酸素、硫黄、セレン、リンなどにより置き換えられている他の複素環式塩基類似体が含まれる。さらに、「核酸配列」という用語は相補的配列を包含し、核酸配列及びその相補的配列の両方に実質的に相同であるいずれの核酸配列をも含む。
【0034】
「ポリヌクレオチド」は、ホスホジエステル結合により連結した少なくとも2個のヌクレオチドの線状ポリマーを指し、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを含んでなることができる。
【0035】
「多型性」は、1つの集団中の個体の間の特定の遺伝子座における1組の遺伝子変異を指す。
【0036】
「ポリペプチド」は、線状の鎖においてペプチド結合により互いに連結した2個もしくはそれより多いアミノ酸を含んでなるペプチド又はタンパク質を指す。本明細書で用いられる場合、該用語は、当該技術分野において通常例えばペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも呼ばれる単鎖ならびに当該技術分野において一般にタンパク質と呼ばれる長鎖の両方を指し、タンパク質には多くの型がある。ポリペプチドは多くの場合、通常20個の天然に存在するアミノ酸と呼ばれる20個のアミノ酸以外のアミノ酸を含有することができること、ならびに末端アミノ酸を含む多くのアミノ酸を、プロセシング及び他の翻訳後改変のような自然の方法により、また、当該技術分野において既知の化学的改変法により、与えられたポリペプチドにおいて改変できることが認識されるであろう。ポリペプチドにおいて自然に起こる通常の改変でさえ、本明細書に徹底的に挙げるには多すぎるが、それらは基本的テキストに、及びもっと詳細な専攻論文に、ならびに研究文献に十分に記載されており、従って当該技術分野における通常の熟練者の見識の範囲内である。本発明のポリペプチドに存在し得る既知の改変の中に、例となるいくつかを挙げると、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解的プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、タンパク質への転移−RNA媒介アミノ酸の付加、例えばアルギニル化ならびにユビキチン化がある。
【0037】
グリコシル化、脂質の結合、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ−カルボキシル化、ヒドロキシル化及びADP−リボシル化のようないくつかの通常の改変は、PROTEINS――STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES,2nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York,1993年を含む多くの基本的テキストに記載されている。POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York,1983年中のWold,F.著,Posttranslational Protein Modifications:Perspectives
and Prospects,pgs.1−12;Seifter et al.著,Meth.Enzymol.182,1990年,626−646;及びRattan et al.著,“Protein Synthesis:Posttranslational Modifications and Aging”,Ann.N.Y.Acad.Sci.663,1992年,48−62により示されているもののような、多くの詳細な総説もこの主題について利用できる。
【0038】
既知であり且つ上記に記載した通り、ポリペプチドは必ずしも全体的に線状ではないことが認識されるであろう。例えば自然のプロセシングを介するか又は人間の操作を介するものを含み、ポリペプチドを翻訳後に改変することができる。環状、分枝状及び分枝状−環状ポリペプチドを非−翻訳自然法により、及び同様に全く合成的な方法により合成することができる。改変は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖及びアミノもしくはカルボキシル末端を含むポリペプチド中のいずれに存在することもできる。例えば共有結合改変によるポリペプチド中のアミノ基又はカルボキシル基又は両方の遮断は、天然に存在するポリペプチド及び合成ポリペプチドにおいて普通であり、そのような改変は本発明のポリペプチド中に存在することができる。例えばE.コリ(E.coli)又は他の細胞において作られるポリペプチドのアミノ末端残基は、タンパク質分解的プロセシングの前、ほとんど一定してN−ホルミルメチオニンであろう。ペプチドの翻訳後改変の間に、NH−末端に
おけるメチオニン残基は欠失し得る。従って本発明は、タンパク質のメチオニン−含有及びメチオニンのないアミノ末端変異体の両方の使用を包含する。
【0039】
ポリペプチド中に存在する改変は、多くの場合、それがいかにして作られるかの関数であろう。例えばクローニングされた遺伝子の宿主中での発現により作られるポリペプチドの場合、改変の性質及び程度は大部分、宿主細胞の翻訳後改変能力及びポリペプチドアミノ酸配列中に存在する改変シグナルにより決定されるであろう。例えば既知の通り、グリコシル化は多くの場合、例えばE.コリのようなバクテリア宿主において起こらない。従ってグリコシル化が望まれる場合、グリコシル化宿主、一般に真核細胞中でポリペプチドを発現させなければならない。昆虫細胞は多くの場合に哺乳類細胞と同じ翻訳後グリコシル化を行い、この理由のために、昆虫細胞発現系は中でもグリコシル化の本来のパターンを有する哺乳類タンパク質を有効に発現するために開発された。他の改変に類似の考えがあてはまる。与えられるポリペプチドにおけるいくつかの部位に、同じか又は異なる程度で、同じ型の改変が存在し得ることは認識されるであろう。また、与えられるポリペプチドは多くの型の改変を含有することができる。本明細書で用いられる場合一般に、「ポリペプチド」という用語は、宿主細胞におけるポリヌクレオチドの発現により組換え的に合成されるポリペプチド中に存在するものを含むすべてのそのような改変を包含する。
【0040】
「プロホルモンコンバーターゼ(prohormone convertase)(PC)」は、Ca2+−依存性セリンプロテアーゼの群を指し、それらのすべてはバクテリアエンドプロテアーゼ、ズブチリシン(バクテリア)及び酵母ケキシンへの相同性を有する。フリン/塩基性アミノ酸対−切断酵素(PACE)としても既知のこの群には、例えばPC1/PC3、PC2、PC4、PACE4、PC5/PC6及びPC7/PC8/リンパ腫プロタンパク質コンバーターゼ及びSKI−1が含まれる。それらはそれらの触媒ドメイン内に50〜75%の程度のアミノ酸同一性を共有している(PCsについての総説に関し、Seidah et al.著,Brain Res,27;848(1−2):1999年,45−62を参照されたい)。
【0041】
「プロモーター」は、遺伝子の転写を開始するためのRNAポリメラーゼの結合に含まれるDNAの調節配列を意味する。プロモーターは多くの場合、遺伝子の転写開始部位の上流(「5’」)にある。「遺伝子」は、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の生産に含まれるDNAのセグメントであり、コード領域、コード領域の前の(「5’UTR」)及び後の(「3’UTR」)非コード領域ならびに個々のコードセグメント(「エキソン」)の間に介在する非−コード配列(「イントロン」)を含む。「コードする」は、3塩基「トリプレット」コードにおけるアミノ酸、開始及び停止シグナルの表現を指す。
【0042】
「組換え宿主細胞」は、外来性DNA配列により形質転換もしくはトランスフェクションされた細胞である。本明細書で用いられる場合、外来性DNAが細胞膜内に導入された場合、細胞はそのような外来性DNAにより「形質転換された」。外来性DNAは細胞のゲノムを構成する染色体DNA中に組み込まれても(共有結合しても)、又はそうでなくても良い。例えば原核生物及び酵母の場合、外来性DNAをプラスミドのようなエピソーム上に保持することができる。真核細胞に関し、安定に形質転換又はトランスフェクションされた細胞は、外来性DNAが染色体中に組み込まれ、染色体複製を介してそれが娘細胞により継承される細胞である。この安定性は、外来性DNAを含有する娘細胞の集団を含んでなる細胞系又はクローンを確立する真核細胞の能力により示される。組換え宿主細胞は原核又は真核であることができ、E.コリのようなバクテリア、酵母のような菌・カビ細胞、ヒト、ウシ、ブタ、サル及びネズミ起源の細胞系のような哺乳類細胞ならびにドロソフィラ(Drosophila)及びカイコ由来細胞系のような昆虫細胞を含む。「組換え宿主細胞」という用語が特定の被検細胞のみでなく、そのような細胞の子孫又は子孫の可能性のあるものも指すことは、さらに理解される。突然変異又は環境の影響のため
に、後の世代にある種の改変が起こり得るので、そのような子孫は実際には親細胞と同一でないかも知れないが、それでも本明細書で用いられる用語の範囲内に含まれる。
【0043】
「組換えポリペプチド」は組換えDNA法により生産される;すなわち所望のポリペプチドをコードする外来性DNA構築物により形質転換された細胞から生産されるポリペプチドを指す。「合成ポリペプチド」は、化学合成により生産されるものを指す。
【0044】
「レラキシン3」又は「リガンド成分」は:(1)ヒトレラキシン3(Bathgate et al.著,J.Biol.Chem.277:2002年,1148−1157,GenBankタンパク質受け入れ番号:NP 543140)に約60%より高いアミノ酸配列同一性を有するか;(2)本明細書に記載されるヒトレラキシン3タンパク質に対する抗体、例えばポリクローナルもしくはモノクローナル抗体に結合できるか;あるいは(3)ヒトレラキシン3cDNA(GenBankヌクレオチド受け入れ番号:NM 080864)に約60%より高いヌクレオチド配列同一性を有する配列を持つ核酸分子に、緊縮ハイブリッド形成条件下で特異的にハイブリッド形成するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを指す。
【0045】
好ましい態様において、リガンド成分は、ヒトレラキシン3に65、70、75、80、85、90又は95パーセントより高いアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドである。他の好ましい態様において、リガンド成分は、ヒトレラキシン3cDNAに65、70、75、80、85、90又は95パーセントより高いヌクレオチド配列同一性を有する配列を持つ核酸分子に、緊縮ハイブリッド形成条件下で特異的にハイブリッドするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。
【0046】
代表的なレラキシン3リガンドには、ヒト(GenBankタンパク質受け入れ番号:NP 543140)、ラット(Burazin et al.著,J.Neurochem.82:2002年,1553−1557,GenBankタンパク質受け入れ番号
NP 733767,ヒトの配列に76.4%配列同一性)、マウス(Bathgate et al.著,J.Biol.Chem.277:2002年,1148−1157,GenBankタンパク質受け入れ番号 XP 146603,ヒトの配列に78.7%配列同一性)ならびにブタ及びサルを含む他の動物において同定されたレラキシン3オルソログが含まれる。「レラキシン3」はレラキシン3の3つの形態:1)レラキシン3プレ−プロペプチド又は前駆体、シグナル配列及びレラキシン3プロペプチド配列を含む細胞内ポリペプチド;2)レラキシン3プロペプチド、プロテアーゼ切断部位により連結されたレラキシン3のA、C及びB鎖に関する配列を有する分泌ポリペプチド;ならびに3)成熟レラキシン3ペプチド、ジスルフィド架橋により連結したレラキシン3ポリペプチドA及びB鎖を含む分泌タンパク質のすべてを含む。「レラキシン3の活性フラグメント」は、GPCR135への結合のようなレラキシン3の生物学的活性を保持しているレラキシン3タンパク質のいずれのフラグメントをも含む。ヒトレラキシン3のタンパク質又はcDNA配列は、国際公開第01/68862号パンフレット、国際公開第01/81562号パンフレット及び国際公開第02/22802号パンフレットに開示されている。ラット又はマウスレラキシン3のタンパク質又はcDNA配列は、国際公開第01/81562号パンフレットに開示されている。
【0047】
「細胞の二次メッセンジャー応答」は、レラキシン3が結合した時のGPCR135の活性化により媒介される細胞の細胞応答を指す。それには例えばシグナル伝達事象ならびに二次メッセンジャー分子、例えばプロトン(pH)、カルシウム又はcAMPの細胞内濃度における変化が含まれる。
【0048】
「配列」は、ポリマー中でモノマーが存在する直線的順序、例えばポリペプチド中のア
ミノ酸の順序又はポリヌクレオチド中のヌクレオチドの順序を意味する。
【0049】
「配列同一性又は類似性」は、当該技術分野において既知の通り、配列の比較により決定される、2つもしくはそれより多いポリペプチド配列又は2つもしくはそれより多いポリヌクレオチド配列の間の関係である。当該技術分野において、「同一性」は、場合次第でポリペプチド又はポリヌクレオチド配列の間の、そのような配列の鎖の間の一致により決定される、配列関連性の程度も意味する。
【0050】
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸のパーセント同一性又は類似性の決定のために、配列を最適比較の目的で整列させる(例えば第2のアミノ酸もしくは核酸配列との最適な整列のために、第1のアミノ酸の配列もしくは核酸配列中に空所を導入することができる)。次いで対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列中のある位置が第2の配列中の対応する位置と同じかもしくは類似のアミノ酸残基もしくはヌクレオチドにより占められていたら、分子はその位置において同一であるかもしくは類似している。2つの配列の間のパーセント同一性又は類似性は、配列が共有する同一もしくは類似の位置の数の関数である(すなわち%同一性=同一の位置の数/位置の合計数(例えば重なり位置)x100)。1つの態様において、2つの配列は同じ長さである。
【0051】
同一性及び類似性の両方を容易に計算することができる。パーセント同一性の計算においては、正確な一致のみが数えられる。配列間の同一性又は類似性の決定に通常用いられる方法には、例えばCarillo et al.著,SIMA J.Applied Math.48,1988年,1073に開示されているものが含まれる。同一性の決定のための好ましい方法は、調べられる配列間の最大の一致を与えるように設計される。同一性及び類似性の決定のための方法は、コンピュータープログラムに集成されている。
【0052】
2つの配列の比較のために用いられる数学的アルゴリズムの好ましい例は、Karlin et al.著,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1993年,5873−5877におけるように修正されたKarlin et al.著,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1990年,2264−2268のアルゴリズムである。そのようなアリゴリズムは、Altschul et al.著,J Mol.Biol 215:1990年,403−410のNBLAST及びXBLASTプログラム中に導入されている。比較目的のための空所のある整列を得るために、Altschul et al.著,Nucleic Acids Res.25:1997年,3389−3402に記載されているGapped BLASTを用いることができる。あるいはまた、繰り返し研究を行なうためにPSI−Blastを用いることができ、それは分子間の遠い関連性を検出する。BLAST、Gapped BLAST及びPSI−Blastプログラムを用いる場合、それぞれのプログラムのデフォールトパラメーターを用いることができる(例えばXBLAST及びNBLAST)。例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。さらにFASTA法(Atschul et al.著,J.Molec.Biol.215,1990年,403)があり、それを用いることもできる。
【0053】
配列の比較のために有用な数学的アルゴリズムの他の好ましい例は、Myers et
al.著,CABIOS 4:1988年,11−17のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列整列ソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン 2.0)中に導入されている(Devereux et al.著,Nucleic Acids Research 12(1),1984年,387)。
【0054】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列への言及において本明細書で用いられる「実質的に類似の」という用語は、同一の配列ならびにその生物学的に活性な部分を保持しており且つその保存モチーフを有している改変配列を生ずるそれへの欠失、置換又は付加を含む。
【0055】
本明細書で用いられる「被検体」という用語は、処置、観察又は実験の目的である動物を指す。好ましくは、被検体は哺乳類、より好ましくはヒトである。
【0056】
レセプター又はリガンド成分への言及において本明細書で用いられる「実質的に純粋な形態」という用語は、リガンド−レセプター結合を妨げる汚染物質を本質的に含まない生物学的試薬として有用なポリペプチドを意味する。ポリペプチドの実質的に純粋な形態は、例えば単離、精製、ペプチド合成又は組換え発現により生じ得る。代表的な態様において、リガンド成分は単離又は組換え発現により生産されるレラキシン3であり、レセプター成分は全細胞の表面上で発現されるGPCR135である。他の態様において、レセプター及びリガンド成分の両方は実質的に純粋な形態にあり、得られる複合体をx−線結晶学のような用途において用いて共−結晶構造(co−crystal structure)を得ることができ、レラキシン3/GPCR135相互作用の調節(例えばアゴニズム又はアンタゴニズム)により媒介される障害の処置において有用な薬剤の設計を助けるためのコンフォーメーション研究又はコンピューターモデリングにおいてそれを用いることができる。
【0057】
本明細書で用いられる「タグ」という用語は、タグを含有するタンパク質の単離、精製又は検出を容易にするアミノ酸配列又はアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を指す。多様なそのようなタグが当該技術分野における熟練者に既知であり、本発明において用いるのに適している。適したタグには、例えばHAペプチド、ポリヒスチジンペプチド、ビオチン/アビジン及び多様な抗体エピトープ結合部位が含まれる。
【0058】
本明細書で用いられる「治療的に有効な量」という用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医学者が求めている組織系、動物又はヒトにおける生物学的もしくは医学的応答、例えば処置されている疾患又は障害の症状の軽減を引き出す活性化合物又は製薬学的薬剤の量を意味する。製薬学的組成物に関して治療的に有効な用量を決まった手順で決定するための方法は、当該技術分野において既知である。
【0059】
「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの1つの型は「プラスミド」であり、それは環状2本鎖DNAループを指し、その中に追加のDNAセグメントを挿入することができる。別の型のベクターは、追加のDNAセグメントを挿入することができるウイルスベクターである。ある種のベクターは、それらが導入された宿主細胞中で自律複製することができる(例えばバクテリア性複製起点を有するバクテリアベクター及びエピソーム性哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば非−エピソーム性哺乳類ベクター)は、宿主細胞中に導入されると宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それにより宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある種のベクター――発現ベクター――は、それらが操作可能的に連結された遺伝子の発現を方向付けることができる。一般に、組換えDNA法において有用なベクターは多くの場合にプラスミドの形態にある。しかしながら本発明は、同等の機能を果たす他の形態のベクター、例えばウイルスベクター(例えば複製能欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ−関連ウイルス)を含むものとする。
リガンド/レセプター複合体
本発明のリガンド−及び−レセプター複合体の好ましい態様において、リガンド成分は、ヒト、マウス、ラット又は他の動物に由来するレラキシン3である。好ましくは、リガンド成分は組換えにより発現したレラキシン3である。
【0060】
本発明のリガンド−及び−レセプター複合体の他の好ましい態様において、リガンド成分は検出可能な薬剤、例えば放射性同位体(radio−isotope)又は蛍光分子で標識される。標識法は、用いられる標識薬剤の型とともに変わり、当該技術分野における熟練者に既知である。例えばリガンド分子の原子の1つを、対応する放射性同位体で置き換えることにより、標識を行なうことができる。水素原子を:トリチウム、Hで置き換えることができるか;炭素原子を炭素−14、14Cで置き換えることができるか;あるいはスチロンチウム原子をストロンチウム−38、38Srで置き換えることができる。他の代表的な標識法において、リガンドの原子を放射性同位体で置き換えるのではなく、リガンド分子に同位体を加えることができる。そのような放射性同位体には、例えばヨウ素−125、125I;及び鉄−59、59Feが含まれる。さらに別の代表的な標識法において、生体内又は試験管内におけるペプチドの合成の間に、適した放射性−標識前駆体、例えばメチオニン−35(35S)又はホスフェート−33(33P、タンパク質リン酸化用)を用いることにより、標識を行なうことができる。好ましくは、本発明のリガンド成分はヨウ素−125、125Iで標識される。
【0061】
好ましくは、本発明のリガンド及びレセプター複合体は、ヒト、マウス又はラットあるいは他の動物に由来するGPCR135を含んでなる。より好ましくは、レセプター成分は配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14及び配列番号:15ならびにそれらのフラグメントから選ばれるアミノ酸配列を有するGPCR135である。
【0062】
1つの好ましい態様において、GPCR135はGPCR135宿主細胞、好ましくは組換えGPCR135宿主細胞の細胞表面上で発現される。他の好ましい態様において、GPCR135はGPCR135宿主細胞、好ましくは組換えGPCR135宿主細胞から単離された細胞膜に付随する。さらに別の好ましい態様において、複合体のレセプター成分は、レラキシン3に結合することができるGPCR135のフラグメントである。
【0063】
複合体のリガンド成分は全−長レラキシン3又はGPCR135にまだ結合できるその活性フラグメントであることができる。
【0064】
熟練者に既知のリガンド及びレセプター複合体の構築のためのいずれの適した方法をも、複合体の形成に用いることができる。一般に方法は、リガンドを含んでなる試料をレセプターを含んでなる試料と混合することを含んでなる。
【0065】
リガンドを含んでなる試料は、リガンドを含有する組織又は細胞抽出物あるいは精製されたリガンドであることができる。天然のリガンド源、すなわちヒトを含む温血動物のリガンドのための内在性宿主細胞もしくは組織からこの試料を調製することができる。好ましくは、リガンドを含んでなる試料は、増加した量のリガンドを発現する組換え宿主細胞から調製される。リガンドのための組換え宿主細胞は、機能性リガンドを発現できるDNA分子を細胞中に導入することにより構築することができる。レラキシン3のための発現ベクターならびに組換え宿主細胞の構築についての代表的な方法を本明細書に記載する(実施例4を参照されたい)。レラキシン3の組換えによる生産のための方法を、下記に記載する。
【0066】
ヒト又は他の温血動物の組織又は細胞からの生産において、ヒト又は他の温血動物の組織又は細胞を均質化し、酸又は他の適した抽出剤を用いてホモジネートを抽出し、そして例えばクロマトグラフィー法、例えば逆−相クロマトグラフィー、イオン−交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの組み合わせを介し、抽出物からポリペプチドを単離することを含んでなる方法により、リガンドポリペプチドを精製及び単離することができる。ラット脳抽出物の調製(実施例2を参照されたい)及びブタ脳から
のレラキシン3の精製(実施例3を参照されたい)について、代表的な方法を本明細書に示す。
【0067】
ペプチド合成のための既知の方法により、本発明におけるリガンドポリペプチドを生産することもできる。ペプチド合成のための方法は、固−相合成及び液−相合成法のいずれであることもできる。かくしてタンパク質を構成できる部分的ペプチド又はアミノ酸をその残留部分と縮合させ、生成物が保護基を有する場合には保護基を除去することにより、所望のペプチドを生産することができる。ペプチド合成の間の縮合及び脱保護のための方法は文献に、例えば:(1)M.Bodanzky and M.A.Ondetti著,Peptide Synthesis,Interscience Publishers,New York,1966年;(2)Schroeder and Luebke著,The Peptide,Academic Press,New York,1965年;(3)Nobuo,Izumiya et al.著,Fundamentals and Experiments in Peptide Synthesis,Maruzen,1975年;(4)Haruaki Yajima and Shumpei Sakakibara,Biochemical Experiment Series 1,Protein Chemistry IV,205,1977年;及び(5)Haruaki Yajima(編集),Development of Drugs−Continued,14,Peptide Synthesis,Hirokawa Shotenに記載されている。
【0068】
ペプチド合成反応の後、通常の精製法、例えば溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー及び再結晶の適した組み合わせにより、タンパク質生成物を精製及び単離することができる。単離されるタンパク質が遊離の形態にある場合、既知の方法によりそれを適した塩に転換することができる。逆に、単離される生成物が塩である場合、既知の方法によりそれを遊離のペプチドに転換することができる。
【0069】
アミド化に適したペプチド合成のための樹脂を用いることにより、ポリペプチドのアミドを得ることができる。代表的な樹脂にはクロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズ−ヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニル−アセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂及び4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂が含まれる。そのような樹脂を用い、α−アミノ基及び側鎖の官能基が適切に保護されたアミノ酸を、当該技術分野における熟練者に既知の種々の縮合法により、目的のペプチドの配列に従って樹脂上に縮合させる。反応系列の最後に、ペプチド又は保護されたペプチドを樹脂から分離し、保護基を除去して目的のポリペプチドを得る。
【0070】
GPCR135レセプターを含んでなる試料は、細胞表面上で発現されたレセプターを有する無損傷の宿主細胞、レセプターの宿主細胞から単離された細胞膜又はリガンドに結合できるレセプターの精製されたフラグメントを含んでなることができる。GPCR135レセプターのための内在性宿主細胞を用いることができるが、増加した量のGPCR135を細胞表面上で発現する組換え宿主細胞が好ましい。ヒトGPCR135のための組換え宿主細胞の構築の代表的な方法を実施例1に記載する。
【0071】
GPCRがその細胞外ドメインを用いてそのリガンドに結合することは既知である。当該技術分野における熟練者に既知の種々の方法、例えば配列分析、タンパク質−タンパク質相互作用分析、タンパク質構造分析又はこれらの方法の組み合わせにより、そのような結合ドメインを同定することができる。例えばメタボトロピックグルタメートレセプター
(metabotropic glutamate receptors)中のリガンド結合ドメインは、その細胞外ドメイン中のベヌスフライトラップモジュール(Venus
flytrap module)(VFTM)として同定された(O’Hara et
al.著,Neuron,11(1):1993年,41−52;David et al.著,J Biol Chem,274:1999年,33488−33495)。好ましい態様において、上記の方法を用いてGPCR135のレラキシン3結合ドメインを始めて同定することができ、そのような結合ドメインを組換えにより発現させ、精製し、本発明の複合体の形成において用いることができる。
ラットGPCR135
本発明の1つの一般的な側面は、GPCR135のイソ型、ラットGPCR135sに関する。本発明においてラットGPCR135の2つのイソ型:より長いイソ型ラットGPCR135l及びより短いイソ型ラットGPCR135sがクローニングされ、同定された。ラットGPCR135lは配列番号:14のアミノ酸配列を有し、国際公開第00/24891号パンフレットの配列番号:1と同じである。ラットGPCR135sは配列番号:15のアミノ酸配列を有し、より長い形態のN−末端における最初の7個のアミノ酸残基がない。組換えにより発現されるラットGPCR135s及びGPCR135lは、放射性リガンド結合又はGTPγS結合アッセイにおいて類似の活性を有し(実施例1)、両方のラットイソ型がGPCR135活性を有することを示している。
【0072】
この一般的側面に従う1つの態様において、本発明は、配列番号:15のアミノ酸配列から成るラットGPCR135sをコードする単離された核酸分子又はその相補配列(complement)を提供する。他の態様において、核酸分子は配列番号:15のアミノ酸配列をコードする。
【0073】
与えられるヌクレオチド配列の「相補配列」である核酸分子は、与えられるヌクレオチド配列に十分に相補的であり、高緊縮もしくは緊縮ハイブリッド形成条件下でそれが与えられるヌクレオチド配列にハイブリッド形成し、それにより安定な二重らせんを形成できるようなものである。代表的な高緊縮もしくは緊縮ハイブリッド形成条件は:50% ホルムアミド,5xSSC及び1% SDS 42℃におけるインキュベーション又は5xSSC及び1% SDS 65℃におけるインキュベーションならびに0.2xSSC及び0.1% SDS中における65℃での洗浄を含む。
【0074】
好ましい態様において本発明は、本質的に配列番号:11のヌクレオチド配列又はその相補配列から成る単離された核酸分子を提供する。より好ましい態様において、核酸分子は配列番号:11のヌクレオチド配列を有する。
【0075】
本発明は、配列番号:11に示されるラットcDNAの縮重変異体又はその相補配列である核酸分子を含む単離された核酸分子を提供する。特定のアミノ酸をコードするために1種より多い遺伝子コドンを用いることができ、従って配列番号:15に表されるラットGPCR135sのアミノ酸配列を類似のDNA分子の組のいずれによってもコードできることは既知である。その組の1つのメンバーのみが配列番号:11に示されるcDNA配列と同じであろう;しかしながら、下記で「縮重変異体」と呼ばれるすべての変異体が本発明の範囲内であることが意図されている。本明細書で、配列番号:15として示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする1種もしくはそれより多い代わりのコドンを有する核酸分子は、配列番号:11に示されるラットcDNAの縮重変異体と呼ばれる。
【0076】
これに関して特に好ましいのは、ラットGPCR135s核酸分子の自然のアレリック変異体である。アミノ酸配列における変化に導くDNA配列多型性は、動物の集団内に、すなわちラットの集団内に存在し得る。そのような遺伝子多型性は、自然のアレリック変
異の故に、集団内の個体の間で存在し得る。「アレレ」は、与えられる遺伝子座において二者択一的に存在する遺伝子の群の1つである。そのような自然のアレリック変異は、典型的には与えられる遺伝子のヌクレオチド配列において1〜5%の変異を生じ得る。複数の異なる個体において問題の遺伝子を配列決定することにより、又はハイブリッド形成プローブを用いて多様な個体において同じ遺伝子座を同定することにより、二者択一的アレレを同定することができる。
【0077】
さらにこれに関して特に好ましいのは、天然に存在するラットGPCR135sタンパク質と異なる性質を有するが、それでもその機能的活性を保持しているポリペプチドをコードする、天然に存在することが知られていないヌクレオチド変異をすっかり全部有する核酸分子である。天然に存在するペプチドの性質と異なる性質を有するペプチドをコードするように、DNA配列を手動で(manually)改変することができる。DNA配列の改変方法には、特定部位の突然変異誘発、キメラ的置換(chimeric substitution)及び遺伝子融合が含まれる。特定部位の突然変異誘発は1個もしくはそれより多いDNA残基を変えるために用いられ、サイレント突然変異、保存的突然変異又は非保存的突然変異を生じ得る。キメラ遺伝子は、類似のもしくは異なる遺伝子のドメインを交換し、ラットGPCR135s遺伝子中のドメインを置き換えることにより調製される。類似して、遺伝子及びタンパク質の同定及び単離を助長するためのアフィニティータグのように、ラットGPCR135にドメインを加える融合遺伝子を調製することができる。
【0078】
本発明のラットGPCR135s核酸分子の変異体は、高緊縮ハイブリッド形成条件下で配列番号:11にハイブリッド形成することができる。
【0079】
ラットGPCR135s転写産物、好ましくは高いレベルの転写産物を有する細胞又は組織は、ラットGPCR135s cDNA又はmRNAの単離に適している。ヌクレオチドハイブリッド形成又は配列番号:11に表されるラットGPCR135s転写産物に特異的にハイブリッド形成するプライマーを用いるRT−PCR分析により、細胞抽出物又は全細胞においてラットGPCR135s転写産物の存在に関してスクリーニングすることにより、適したcDNA源の選択を行なうことができる。ラットGPCR135s核酸のより短いイソ型の単離のために好ましい供給源は、ラット脳である。
【0080】
本発明の核酸分子の単離のために、当該技術分野において既知の多様な方法のいずれを用いることもできる。例えばcDNAもしくはゲノムDNAライブラリ又は上記で同定された適した細胞からの全mRNAを鋳型として、且つ適したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、本発明の核酸分子を標準的なPCR増幅法により増幅することができる。そのようにしてPCRから増幅される核酸を適したベクター中にクローニングし、DNA配列分析により特性化することができる。通常の熟練者は、配列番号:11の少なくとも12個の連続ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチドがプライマーとして特に有用であることを認識するであろう。標準的な合成法により、例えば自動DNA合成機を用い、プライマーを調製することができる。
【0081】
本発明の核酸分子を単離する他の方法は、当該技術分野における熟練者により認められている方法を用い、1種もしくはそれより多い天然のもしくは人工的に設計されたプローブを用いてゲノムもしくはcDNAライブラリ又は全mRNAを精査することである。例えば“Current Protocols in Molecular Biology”,Ausubel et al.(編集),Greene Publishing Association and John Wiley Interscience,New York,1989年,1992を参照されたい。通常の熟練者は、配列番号:11の少なくとも12個の連続ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチドが特に有用
なプローブであることを認識するであろう。好ましいプローブは、少なくとも30個の塩基を有するであろう。特に好ましいプローブは50個もしくはそれ未満の塩基を有するであろう。プローブの同定を助長するために、分析により検出可能な試薬を用いてそのようなプローブを標識することができ、それが好ましい。有用な試薬には、例えば放射性同位体、蛍光色素又は検出可能な生成物の生成を触媒することができる酵素が含まれる。プローブは、ラットGPCR135sをコードするゲノムDNA、cDNA又はRNAポリヌクレオチドの相補的コピーを通常の熟練者が単離することを可能にする。GPCR315sタンパク質をコードする核酸分子を他の動物供給源、例えば群、型及び/又はサブタイプの追加のメンバーから単離するため、あるいは本明細書に開示されるコード配列に対して5’及び/又は3’領域からの転写調節(regulatory)及び調節(control)要素ならびに他の安定性、プロセシング、翻訳及び組織特異性−決定領域を含む関連配列に関してそのような供給源をスクリーニングするために、類似の日常的方法を用いることができる。
【0082】
本発明の核酸分子の全部又は一部に対応する核酸分子を調製する他の方法は、例えば自動DNA合成機を用いる標準的な合成法による。
【0083】
ゲノムDNAライブラリの構築、cDNAライブラリの作製又は同定された供給源細胞からの全mRNAの単離は、当該技術分野において既知の標準的な方法により行なうことができる。例えばManiatis et al.著,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,1989年)においてこれらの方法を見出すことができる。ラットGPCR135s核酸分子の単離についての代表的な方法を実施例1に記載する。
【0084】
他の態様において本発明は、ラットGPCR135sを発現することができる核酸を含有するベクター、好ましくは発現ベクターを提供する。
【0085】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適した形態における本発明の核酸を含んでなる。かくして組換え発現ベクターは、発現されるべき核酸配列に操作可能的に連結された1個もしくはそれより多い調節配列を含み、調節配列は発現に用いられるべき宿主細胞に基づいて選ばれる。組換え発現ベクターへの言及において用いられる場合、「操作可能的に連結された」は、問題のヌクレオチド配列がヌクレオチド配列の発現を許すようなやり方で(例えば試験管内転写/翻訳系において、あるいはベクターが宿主細胞中に導入される場合には宿主細胞において)、調節配列に連結されていることを意味するものとする。発現ベクターの設計は、形質転換されるべき宿主細胞の選択、望まれるタンパク質の発現のレベルなどの因子に依存し得ることが当該技術分野における熟練者に認識されるであろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞中に導入し、それにより、本明細書に記載される核酸によりコードされる融合タンパク質又はペプチドを含むタンパク質又はペプチドを生産することができる。
【0086】
本発明の組換え発現ベクターを、原核細胞(例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli)(E.コリ))又は真核細胞(例えば昆虫細胞(バクロウイルス発現ベクターを用いて)、酵母細胞又は哺乳類細胞)における本発明のポリペプチドの発現のために設計することができる。適した宿主細胞は当該技術分野における熟練者に既知である。あるいはまた、組換え発現ベクターを、例えばT7プロモーター調節配列及びT7ポリメラーゼを用い、試験管内で転写及び翻訳することができる。
【0087】
原核生物におけるタンパク質の発現は、融合又は非−融合タンパク質の発現に向けられ
た構成的又は誘導プロモーターを含有するベクターを持つE.コリにおいて最も頻繁に行なわれる。融合ベクターは、そこにコードされているタンパク質に、通常は組換えタンパク質のアミノ末端に複数のアミノ酸を加える。そのような融合ベクターは、典型的には4つの目的のため:1)組換えタンパク質の発現を増加させるため;2)組換えタンパク質の溶解性を向上させるため;3)アフィニティー精製においてリガンドとして作用することにより、組換えタンパク質の精製を助けるため;ならびに4)マーカーとして働くことにより、組換えタンパク質の検出を容易にするために働く。融合発現ベクターにおいて多くの場合、融合タンパク質の精製に続いて融合部分から組換えタンパク質を分離できるように、融合部分と組換えタンパク質の連結部分にタンパク質分解的切断部位が導入される。そのような酵素及びそれらの同族認識配列はXa因子(Factor Xa)、トロンビン及びエンテロキナーゼを含む。典型的な融合発現ベクターにはpGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith et al.著,Gene 67:1988年,31−40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,MA)、pRIT5(Pharmacia,Piscataway,NJ)又はpQE(Qiagen)が含まれ、それらは標的組換えタンパク質にそれぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、タンパク質A又はポリ−Hisを融合させる。
【0088】
適した誘導非−融合E.コリ発現ベクターの例にはpTrc(Amann et al.著,Gene 69:1988年,301−305)及びpETIId(Studier et al.著,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,California,1990年,60−89)が含まれる。E.コリにおける組換えタンパク質発現を最大にする1つの戦略は、組換えタンパク質をタンパク質分解的に切断する能力が損なわれた宿主バクテリア中でタンパク質を発現させることである。他の戦略は、各アミノ酸に関する個々のコドンがE.コリにおいて優先的に用いられるものであるように、発現ベクター中に挿入されるべき核酸の核酸配列を改変することである。そのような本発明の核酸配列の改変は、標準的なDNA合成法により行なうことができる。
【0089】
他の態様において、発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母S.セリビサエ(S.cerivisae)における発現のためのベクターの例にはpYepSecl(Baldari et al.著,EMBO J 6:1987年,229−234)、pMFa(KurJan et al.著,Cell 30:1982年,933−943)、pJRY88(Schultz et al.著,Gene 54:1987年,113−123)、pYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,CA)及びpPicZ又はPichia(Invitrogen Corp,San Diego,CA)が含まれる。
【0090】
あるいはまた、発現ベクターはバクロウイルス発現ベクターである。培養昆虫細胞におけるタンパク質の発現のために利用可能なバクロウイルスベクターには、例えばpAcシリーズ(Smith et al.著,Mol.Cell Biol.3:1983年,2156−2165)及びpVLシリーズ(Lucklow et al.著,Virology 170;1989年,31−39)が含まれる。組換え発現に有用な商業的に入手可能な昆虫細胞発現ベクターにはpBlueBacII(Invitrogen)が含まれる。
【0091】
さらに別の態様において、発現ベクターは哺乳類発現ベクターである。哺乳類細胞中で用いられる場合、多くの場合に発現ベクターの調節機能はウイルス調節要素により与えられる。例えば通常用いられるプロモーターはポリオーマ、アデノウイルス 2、サイトメ
ガロウイルス及びシミアンウイルス 40から誘導される。哺乳類発現ベクターの例には、例えばpCDM8(Seed著,Nature 329:1987年,840)及びpMT2PC(Kaufinan et al.著,EMBO J 6:1987年,187−195)が含まれる。組換えプロテアーゼCOX−3発現に適してい得る商業的に入手可能な哺乳類発現ベクターには、例えばpMAMneo(Clontech)、pcDNA3(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO−pSV2−neo(ATCC 37593)、pBPV−1(8−2)(ATCC 37110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC 37224)、pRSVgpt(ATCC 37199)、pRSVneo(ATCC 37198)、pSV2−dhfr(ATCC 37146)、pUCTag(ATCC 37460)及び1ZD35(ATCC 37565)が含まれる。
【0092】
他の態様において、組換え哺乳類発現ベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を方向付けることができる(例えば核酸の発現のために組織−特異的調節要素を用いる)。組織−特異的調節要素は、当該技術分野において既知である。適した組織−特異的プロモーターの例にはアルブミンプロモーター(肝臓−特異的;Pinkert et
al.著,Genes Dev.1:1987年,268−277)、リンパ−特異的プロモーター(Calame et al.著,Adv.Immunol.43:1988年,235−275)、特にT細胞レセプター(Winoto et al.著,EMBO J 8:1989年,729−733)及び免疫グロブリン(BaneiJi et al.著,Cell 33:1983年,729−740;Queen et al.著,Cell 33:1983年,741−748)のプロモーター、ニューロン−特異的プロモーター(例えばニューロフィラメントプロモーター;Byme et al.著,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1989年,5473−5477)、膵臓−特異的プロモーター(Edlund et al.著,Science
230:1985年,912−916)及び乳腺−特異的プロモーター(例えば乳漿プロモーター;米国特許第4,873,316号明細書及び欧州特許出願公開第264,166号明細書)が含まれる。発育的に調節されるプロモーターには、例えばマリンホックス(marine hox)プロモーター(Kessel et al.著,Science 249:1990年,374−379)及びベータ−フェトプロテインプロモーター(Campes et al.著,Genes Dev.3:1989年,537−546)も含まれる。
【0093】
本発明はさらに、アンチセンス配向でベクター中にクローニングされた本発明のDNA分子を含んでなる組換えベクターを提供する。すなわち、本発明のポリペプチドをコードするmRNAにアンチセンスであるRNA分子の発現(DNA分子の転写により)を許すようなやり方で、DNA分子が調節配列に操作可能的に連結される。多様な細胞型におけるアンチセンスRNA分子の連続的発現を方向付ける、クローニングされた核酸にアンチセンス配向で操作可能的に連結される調節配列、例えばウイルスプロモーター及び/又はエンハンサーを選ぶことができるか、あるいはアンチセンスRNAの構成的、組織−特異的又は細胞型特異的発現を方向付ける調節配列を選ぶことができる。アンチセンス発現ベクターは、組換えプラスミド、ファージミド又は弱毒化ウイルスの形態にあることができ、それらにおいてアンチセンス核酸が高−効率調節領域の調節下で生産され、その活性はベクターが導入される細胞型により決定され得る。アンチセンス遺伝子を用いる遺伝子発現の調節の議論に関し、Weintraub et al.(Reviews−Trends in Genetics,Vol.1(1),1986年)を参照されたい。
【0094】
本発明は、哺乳類における干渉性小分子RNAs(siRNAs)の合成に向けられた組換えベクター系も提供する。多くの生物は、遺伝子に対応する2本鎖RNA(dsRN
A)が細胞に存在する場合、RNA干渉として既知のプロセスを介して遺伝子発現を消す機構を有する。特定の遺伝子の活性を低下させるためのdsRNAの使用の方法は、虫C.エレガンス(C.elegans)を用いて最初に開発され、RNA干渉又はRNAiと呼ばれてきた(Fire et al.著,Nature 391:1998年,806−811)。それ以来RNAiは多くの生物において有用であることが見出され、最近は培養中の哺乳類細胞に拡大された(Moss著,Curr Biol 11:2001年,R772−5による総説を参照されたい)。RNAiが21〜25個のヌクレオチドの小分子RNAsの生成を含むことが示された時、重要な進歩が成された(Hammond et al.著,Nature 404:2000年,293−6;Zamore et al.著,Cell 101:2000年,25−33)。これらの干渉性小分子RNAs又はsiRNAsは最初、プロセスを開始し、結局退化する(degraded)標的RNAに相補的であるもっと大きなdsRNAから誘導されることができる。siRNAsはそれ自身が、各末端に短い張り出しを有する2本鎖である;それらはガイドRNAsとして作用し、相補性の領域における標的の1個の切断を方向付ける(Elbashir et al.著,Genes Dev 15:2001年,188−200;Zamore et al.著,Cell 101:2000年,25−33)。
【0095】
配列番号:11に表されるラットGPCR135sに相補的な21〜25個のヌクレオチドを含んでなるsiRNAを、例えば国際公開第01/75164 A2号パンフレットに記載されている方法を用いて試験管内で生産することができるか、あるいは生体内で、適した発現系を用いて哺乳類細胞から生産することができる。哺乳類細胞におけるsiRNAsの合成を方向付ける代表的なベクター系はpSUPER(Brummelkamp et al.著,Science 296:2002年,550−3)である。pSUPER上において、遺伝子特異的標的化配列(同じ配列の逆相補配列(reverse
complement)から短いスペーサーにより隔てられた標的転写産物からの19−nt配列)及び停止シグナルとしての5個のチミジン(T5)の前に、H1−RNAプロモーターがクローニングされた。得られる転写産物は自身の上に折り返され、C.エレガンスLet−7の構造に類似の19−塩基対ステム−ループ構造を形成すると予測される。ループ(短いスペーサー)の寸法は、好ましくは9bpである。ポリアデノシン尾部がなく、十分に定義された転写開始及び列における5個のチミジン(T5)から成る停止シグナルを有する小分子RNA転写産物が生産された。注目すべきことに、停止部位における転写産物の切断は第2のウリジンの後であり、やはり2個の3’張り出しT又はUヌクレオチドを含有する合成siRNAsの末端に類似の転写産物を与える。pSUPERから発現されるsiRNAは、合成siRNAと同じ位有効に遺伝子発現を打ち倒すことができる。
【0096】
本発明のベクターに、バクテリア−酵母又はバクテリア−動物細胞又はバクテリア−菌・カビ細胞又はバクテリア−無脊椎動物細胞のような宿主細胞間のDNAのシャトリング(shuttling)を許す特別に設計されるベクターも含まれる。多数のクローニングベクターが当該技術分野における熟練者に既知であり、適したクローニングベクターの選択は、熟練者の見識の範囲内である。原核及び真核細胞の両方のための他の適した発現系に関し、例えばManiatis et al.著,同上の16及び17章を参照されたい。
【0097】
本発明は、本発明の組換えベクターが導入された組換え宿主細胞も提供する。
【0098】
トランスフェクションに適してい得、且つ商業的に入手可能な哺乳類の種から誘導される細胞系には、例えばCV−1(ATCC CCL 70)、COS−1(ATCC CRL 1650)、COS−7(ATCC CRL 1651)、CHO−K1(ATCC CCL 61)、3T3(ATCC CCL 92)、NIH/3T3(ATCC
CRL 1658)、HeLa(ATCC CCL 2)、C127I(ATCC CRL 1616)、BS−C−1(ATCC CCL 26)、MRC−5(ATCC CCL 171)、ドロソフィラ(Drosophila)又はネズミL−細胞及びHEK−293(ATCC CRL1573)及びサル腎臓細胞が含まれる。
【0099】
通常の形質転換又はトランスフェクション法を介し、ベクターDNAを原核もしくは真核細胞中に導入することができる。本明細書で用いられる場合、「形質転換」又は「トランスフェクション」という用語は、細胞が異種DNAを吸収するプロセスを指し、細胞はその異種DNAをそれらの染色体中に組み込んでも組み込まなくても良い。トランスフェクションは、例えばリン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共−沈降、DEAE−デキストラン−媒介トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション又は原形質融合を含む種々の方法により行なうことができる。宿主細胞の形質転換又はトランスフェクションのために適した方法は、Maniatis et al.著,(同上)及び他の実験室マニュアル中に見出され得る。
【0100】
哺乳類細胞の安定したトランスフェクションに関し、用いられる発現ベクター及びトランスフェクション法に依存して、細胞の小さい割合しか異種DNAをそれらのゲノム中に組み込めないことが知られている。これらの組み込み産物(integrants)の同定及び選択のために、一般に選択可能なマーカー(例えば抗生物質に対する耐性に関する)をコードする遺伝子を問題の遺伝子とともに宿主細胞中に導入する。好ましい選択可能なマーカーには、G418、ハイグロマイシン及びメトトレキセートのような薬剤に対する耐性を与えるものが含まれる。導入された核酸で安定してトランスフェクションされた細胞を薬剤選択により同定することができる(例えば選択可能なマーカー遺伝子が導入された細胞は生き残るが、他の細胞は死亡する)。
【0101】
他の態様において、問題の内在性遺伝子に異種であるDNA調節要素を細胞、安定な細胞系又はクローニングされた微生物のゲノム中に挿入し、挿入された調節要素が内在性遺伝子と操作可能的に連結して内在性遺伝子を調節するか(controls)、調節するか(modulates)又は活性化するようにすることにより、細胞、細胞系又は微生物内の内在性核酸の発現特性を改変することができる。
【0102】
例えば米国特許第5,272,071号明細書及び国際公開第91/06667号パンフレットに記載されている通り、標的化相同的組換えのような方法を用い、異種調節要素が内在性遺伝子と操作可能的に連結し、且つその発現を活性化するように、それを安定な細胞系又はクローニングされた微生物中に挿入することができる。
【0103】
本発明の他の態様は、本質的に配列番号:15のアミノ酸配列から成る実質的に精製されたポリペプチドを提供する。
【0104】
本発明の単離されたポリペプチドは、異種ポリペプチドに操作可能的に連結された配列番号:15のポリペプチドを含んでなるキメラ又は融合タンパク質も含み、ここで異種ポリペプチドは自然にはラットGPCR135sイソ型と関連していない。例えばラットGPCR135のより長いイソ型のN−末端における最初の7個のアミノ酸配列は、異種ポリペプチドとなることから排除され、それは、それがラットGPCR135のより長いイソ型と自然に関連しているからである。融合タンパク質への言及において用いられる場合、「操作可能的に連結した」という用語は、ポリペプチド及び異種ポリペプチドが互いに枠−内で融合していることを示すものとする。異種ポリペプチドはポリペプチドのN−末端又はC−末端に融合することができる。
【0105】
有用な融合タンパク質の1つの例は、本発明のポリペプチドがC−末端において、HA
及びポリHisから作られるタグに融合しているHAHis融合タンパク質である。そのような融合タンパク質は、本発明の組換えポリペプチドの検出及び精製を助長する。
【0106】
本発明は、本発明のポリペプチドの発現又は単離の方法にも関する。1つの態様において、標準的なタンパク質精製法を用いる適した精製案により、自然にポリペプチドを発現する細胞もしくは組織源から、ポリペプチドを単離することができる。他の態様において、本発明のポリペプチドは組換えDNA法により生産される。あるいはまた、試験管内翻訳及び/又は転写系において、本発明のポリペプチドを合成することができる。さらにまた、標準的なペプチド合成法を用い、本発明のポリペプチドを化学的に合成することができる。
【0107】
本発明のDNA分子を上記の発現ベクター中にクローニングし、そのようなベクターを本明細書に記載される原核もしくは真核宿主細胞中に導入し、組換えタンパク質の生産に適した条件下で宿主細胞を生育することにより、本発明のポリペプチドを組換えにより発現させることができる。発現ベクター−含有細胞をクローン的に増殖させ、個々に分析して、それらが本発明のポリペプチドを生産するかどうかを決定する。ラットのより短いイソ型GPCR135を発現する宿主細胞クローンの同定は、抗−ラットGPCR135抗体との免疫学的反応性ならびに細胞内Ca2+濃度におけるレラキシン3活性化変化のような宿主細胞−関連GPCR135活性の存在を含むいくつかの手段により行なうことができる。適した生育条件及び回収法の選択は、当該技術分野における熟練の範囲内である。ポリペプチドを組換えにより発現するための方法は、例えばManiatis et al.著,同上に記載されており、且つ当該技術分野において既知である。
【0108】
試験管内翻訳及び/又は転写系を用いて本発明のポリペプチドを生産することもできる。そのような方法は当該技術分野における熟練者に既知である。例えば合成ラットGPCR135s mRNA又はラットGPCR135のより短いイソ型を生産する細胞から単離されたmRNAを、コムギ胚芽抽出物及び網状赤血球抽出物を含む種々の無細胞系において有効に翻訳することができる。あるいはまた、ラットGPCR135s cDNAのコード配列をT7プロモーターの調節下でクローニングすることができる。次いでこの構築物を鋳型として用い、試験管内転写及び翻訳系において、例えばPromega(Madison,WI)から商業的に入手可能なもののようなTNT T7カップリング網状赤血球ライセートシステム(TNT T7 coupled Reticulocyte
Lysate System)を用いて、ラットGPCR135のより短いイソ型タンパク質を生産することができる。
【0109】
上記のような方法を用い、化学合成により本発明のポリペプチドを生産することもできる。
【0110】
当該技術分野における熟練者に既知の方法により、ラットGPCR135sタンパク質を精製することができる。例えばそれを、塩分別、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイト吸着クロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィー、レシチンクロマトグラフィー、HPLC及びFPLCならびに抗体/リガンドアフィニティークロマトグラフィーの種々の組み合わせ又は個々の適用により、細胞ライセート及び天然もしくは組換え宿主細胞からの抽出物から精製することができる。
組換え細胞からのレラキシン3の生産
レラキシン3は、ジスルフィド架橋により連結したポリペプチドの2つの鎖(A−鎖及びB−鎖)を含んでなる分泌タンパク質なので、レラキシン3のプレ−プロペプチドからの成熟レラキシン3の生産にはプロテアーゼが含まれる。最初に、シグナル配列ペプチダーゼがプロペプチドからシグナル配列を切断し、レラキシン3プロペプチドを与える。プ
ロペプチドは続いて、プロ−ホルモンコンバーターゼによりレラキシン3のA、B及びC鎖に切断される。A−鎖及びB−鎖は最終的な成熟レラキシン3を形成し、C−鎖は成熟レラキシン3の一部ではない。プロ−ホルモンコンバーターゼは、ホルモンが分泌されるある種の限られた細胞型、例えばいくつかのニューロン細胞又は内分泌細胞において選択的に発現されるのみなので、レラキシン3がCOS7のような他の細胞型から組換えにより発現される場合、レラキシン3プロペプチドは多くの場合、有効にプロセシングされない(実施例4)。
【0111】
本発明は:1)レラキシン3プロペプチドのA鎖とC鎖及び/又はC鎖とB鎖の間のペプチド結合において挿入されたプロテアーゼ切断部位を有する改変されたレラキシン3プロペプチドをコードすることができるDNA分子を構築し;2)改変されたレラキシン3プロペプチドを発現することができるベクターを構築し;3)改変されたレラキシン3プロペプチドを、挿入されたプロテアーゼ切断部位において切断することができるプロテアーゼを発現することができる他のベクターを構築し;4)両方のベクターを宿主細胞中に導入し;そして5)改変されたレラキシン3プロペプチド及びプロテアーゼの両方の発現に適した条件下で宿主細胞を生育し、改変されたレラキシン3プロペプチド上のA鎖とC鎖又はC鎖とB鎖の間のペプチド結合をプロテアーゼが有効に切断する段階を含んでなる、組換え細胞からのレラキシン3の生産方法を提供する。
【0112】
配列分析は、プロ−ホルモンコンバーターゼの1つのメンバーであるフリンが本来のレラキシン3プロペプチド上のC鎖とB鎖の間のペプチド結合を切断し、他の同定されていないプロテアーゼが本来のプロペプチド上のA鎖とC鎖の間のペプチド結合を切断することを示唆した。本発明の好ましい態様において、arg−gly−arg−arg(RGRR)のアミノ酸配列を有するフリン切断部位がA鎖とC鎖のペプチド結合において挿入される。この突然変異レラキシン3のための発現ベクター及びフリンのための他の発現ベクターが宿主細胞中に共−トランフェクションされる。適した生育条件下で、レラキシン3プロペプチドはほとんど完全に成熟ペプチドA、B及びCにプロセシングされた。A鎖とC鎖のペプチド結合におけるフリン切断部位の挿入は、成熟レラキシン3を構成するA鎖及びB鎖においてアミノ酸変化を導入しないことに注意されたい。プロ−ペプチド切断の効率は、A鎖とC鎖の間のフリン切断部位の挿入なしのレラキシン3の組換え発現(プロ−ペプチドの20%未満が成熟形態に切断された)と比較して有意に向上した(プロ−ペプチドの90%より多くが成熟形態に切断された)(実施例4を参照されたい)。
【0113】
フリンの代わりに、他のプロテアーゼを本発明の方法において用いることもできる。好ましくは、プロ−ペプチド上のA鎖とC鎖及びC鎖とB鎖の間に同じプロテアーゼ切断部位を挿入することができる。用いることができるプロテアーゼの例には、例えばプロ−ホルモンコンバーターゼ、例えばフリン、PC1及びPC2(Hosaka et al.著,J.Biol.Chem.266:1991年,12127−12130;Benjannet et al.著,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:1991年,3564−3568;Thomas et al.著,Prco.Natl.Acad.Sci.USA,88:1991年,5297−5301)が含まれる。
【0114】
本発明は、レラキシン3プロペプチド上のA鎖とC鎖及び/又はC鎖とB鎖の間のペプチド結合において挿入されたプロテアーゼ切断部位を有する改変されたレラキシン3プロペプチドを発現することができる発現ベクターにも関する。本発明は、上記の改変されたレラキシン3のための発現ベクター及び改変されたレラキシン3プロペプチド上に導入されたプロテアーゼ切断部位を認識するプロテアーゼのための発現ベクターの両方を含んでなる宿主細胞にも関する。
【0115】
1つの好ましい態様において、HA、ポリHis又はFLAGのようなタグを、改変さ
れたレラキシン3プロペプチドに加え、タンパク質単離又は精製を容易にすることができる。DNA分子を改変し、そのようなDNA分子によりコードされるアミノ酸配列においてある望ましい変化を引き起こす方法は、当該技術分野における熟練者に既知である。実施例4は、そのような方法の1つ、融合PCR法を例示する。
【0116】
同定されたGPCR135とレラキシン3の間の相互作用は、GPCR135遺伝子及び/又はレラキシン3遺伝子が導入されたか、又は崩壊したトランスジェニック動物、例えばノック−アウトマウスの開発を可能にする。同定されたレセプターとリガンドの間の相互作用は、レラキシン3及びGPCR135複合体に関連する障害の処置における化合物の有効性の可能性に関して化合物を同定するためのスクリーニング法又はアッセイにおいて、GPCR135又はGPCR135/レラキシン3複合体を使用することも可能にする。
レラキシン3/GPCR135複合体の活性のモジュレーターの同定方法
かくして本発明の他の一般的な側面は、レラキシン3/GPCR135複合体の生物学的活性を向上させるかもしくは低下させるモジュレーターの同定方法に関する。そのようなモジュレーターは、レラキシン3/GPCR135複合体に関連する疾患又は障害、例えばCNS障害(不安、精神分裂病、うつ病、気分、睡眠/覚醒)、代謝障害、摂食/飲用障害(feeding/drinking disorders)、水及び栄養ホメオスタシスならびに内分泌障害に苦しむ患者の処置における治療薬として有用である(Goto et al.著,J.Comp.Neurol.438:2001年,86−122を参照されたい)。
【0117】
「阻害剤」は、レラキシン3/GPCR135複合体発現又は活性を減少させるか、妨げるか、不活性化するか、脱感作するか、又は下方−調節する化合物を指す。「活性化物質」は、レラキシン3/GPCR135複合体発現又は活性を増加させるか、活性化するか、助長するか、感作するか、又は上方−調節する化合物である。「モジュレーター」は、「阻害剤」及び「活性化物質」の両方を含む。
【0118】
化合物同定法は、通常の実験室フォーマットを用いて、あるいは高処理量に適応させたアッセイにおいて、行なうことができる。「高処理量」という用語は、同時の複数の試料の容易なスクリーニングを許すアッセイ設計を指し、ロボット操作に関する能力を含み得る。高処理量アッセイの他の望ましい特徴は、所望の分析を行なうための試薬使用を減少させるように、あるいは操作の数を最小にするように最適化されるアッセイ設計である。アッセイフォーマットの例には96−ウェルもしくは384−ウェルプレート、浮揚滴(levitating droplets)及び液体−取り扱い実験のために用いられる「ラボオンチップ」ミクロチャンネルチップ(“lab on a chip”microchannel chips)が含まれる。当該技術分野における者により既知の通り、プラスチック型及び液体−取り扱い装置の小型化が進むので、又は進歩したアッセイ装置が設計されるので、本発明のアッセイを用いて、より多数の試料をより有効にスクリーニングすることができるであろう。
【0119】
スクリーニングのための候補化合物を多数の化学的種類から、好ましくは有機化合物の種類から選ぶことができる。候補化合物は巨大分子であることができるが、好ましくは、候補化合物は小分子有機化合物、すなわち50より大きく且つ2500未満の分子量を有するものである。候補化合物は、ポリペプチドとの構造的相互作用に必要な1個もしくはそれより多い官能性化学基を有する。好ましい候補化合物は、少なくとも1個のアミン、カルボニル、ヒドロキシル又はカルボキシル基、好ましくは少なくとも2個のそのような官能基、そしてより好ましくは少なくとも3個のそのような官能基を有する。候補化合物は、1個もしくはそれより多い上記で例示した官能基で置換された環状炭素又は複素環式構造部分及び/又は芳香族もしくはポリ芳香族構造部分を含んでなることができる。候補
化合物は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロール、イソプレノイド、プリン、ピリミジン、上記のものの誘導体もしくは構造的類似体又はそれらの組み合わせなどのような生体分子であることもできる。化合物が核酸の場合、化合物は好ましくはDNA又はRNA分子であるが、非−自然結合を有する改変核酸あるいはサブユニットも包含される。
【0120】
合成又は天然化合物のライブラリを含む多様な供給源から候補化合物を得ることができる。例えば多様な有機化合物及び生体分子の無作為な及び方向付けられる(directed)合成のために、無作為化オリゴヌクレオチドの発現、合成有機組み合わせライブラリ、無作為ペプチドのファージディスプレーライブラリなどを含む多数の手段を利用できる。当該技術分野において既知の組み合わせライブラリ法中の多数の方法のいずれかを用いて候補化合物を得ることもでき、それには:生物学的ライブラリ;空間的にアドレス可能な(addressable)平行固−相又は溶液−相ライブラリ:デコンボリューションを必要とする合成ライブラリ法;「ワン−ビーズワン−コンパウンド(one−bead one−compound)」ライブラリ法;及びアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリ法が含まれる(例えばLam著,Anticancer
Drug Des.12:1997年,145を参照されたい)。あるいはまた、バクテリア、菌・カビ、植物及び動物抽出物の形態における天然化合物のライブラリを利用できるか、又は決まりきった操作で生産することができる。さらに、天然の及び合成により生産されるライブラリ及び化合物を、通常の化学的、物理的及び生化学的手段を介して決まりきった操作で改変することができる。
【0121】
さらに、既知の薬理学的薬剤をアシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような方向付けられる又は無作為な化学的改変に供し、薬剤の構造的類似体を作ることができる。候補化合物は無作為に選ばれることができるか、あるいはGPCRに結合する及び/又はGPCR活性の機能を調節する既存の化合物に基づくことができる。従って候補薬剤の供給源は、GPCR135に類似の構造を有するGPCRsに関する既知の活性化物質又は阻害剤に基づく分子のライブラリであり、ここで化合物の構造は分子の1つもしくはそれより多い位置で変化し、より多いかもしくはより少ない化学的部分又は異なる化学的部分を含有する。類似の活性化物質/阻害剤のライブラリの形成において分子に成される構造的変化は方向付けられるか、無作為であるか、又は方向付けられる及び無作為な置換及び/又は付加の両方の組み合わせであることができる。
【0122】
多様な他の試薬も混合物中に含まれ得る。これらには塩、緩衝剤、天然のタンパク質(例えばアルブミン)及び最適タンパク質−タンパク質及び/又はタンパク質−核酸結合を助長するために用いられ得る洗剤のような試薬が含まれる。そのような試薬は、反応成分の非−特異的又は背景相互作用を減少させることもできる。アッセイの効率を向上させる他の試薬、例えばヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤などを用いることもできる。
【0123】
分子ライブラリの合成のための方法の例は当該技術分野において、例えば:Zuckermann et al.著,J.Med.Chem.37:1994年,2678において見出すことができる。化合物のライブラリは溶液中で(例えばHoughten著,Biotechniques 13:1992年,412−421)又はビーズ上(Lam著,Nature 354:1991年,82−84)、チップ上(Fodor著,Nature 364:1993年,555−556)、バクテリア上(米国特許第5,223,409号明細書)、胞子上(米国特許第5,571,698号明細書)、プラスミド上(Cull et al.著,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1992年,1865−1869)もしくはファージ上(例えばScott and
Smith著,Science 249:1990年,386−390を参照されたい)で与えられることができる。
【0124】
かくして、1つの一般的側面において、本発明は:
(a)緩衝剤及び候補もしくは試験化合物を含んでなる溶液を、レラキシン3及びGPCR135複合体をを含んでなるアッセイ試薬と接触させ;
(b)レラキシン3及びGPCR135複合体の生物学的活性を測定し;そして
(c)段階(b)の結果を、レラキシン3及びGPCR135複合体を緩衝剤のみと接触させた対照(control)の結果と比較する
段階を含んでなる、レラキシン3/GPCR135複合体の生物学的活性を向上させるかもしくは低下させる化合物の同定方法に関する。
【0125】
上記の通り、レラキシン3及びGPCR135複合体は、レラキシン3又はレラキシン3の活性フラグメントならびにGPCR135又はGPCR135の活性フラグメントを含んでなる。好ましい態様において、該方法におけるレラキシン3及びGPCR135複合体は、細胞表面上でGPCR135を発現する細胞に付随している。
【0126】
「細胞」という用語は、検出法の感度に関して適宜に少なくとも1個の細胞又は複数の細胞を指す。本発明に適した細胞はバクテリア細胞であることができるが、好ましくは真核細胞、例えば酵母、昆虫又は哺乳類細胞である。細胞は内在性GPCR135に関する天然の宿主細胞であることができ、好ましくは細胞表面上で増加した量の哺乳類GPCR135を発現するGPCR135に関する組換え宿主細胞である。
【0127】
純粋なタンパク質の形態で、又はレラキシン3を含有する細胞もしくは組織抽出物の形態で、レラキシン3をGPCR135宿主細胞に加えることにより、レラキシン3及びGPCR135複合体を形成することができる。レラキシン3は全−長成熟ポリペプチドあるいはまだGPCR135に結合することができるフラグメントであることができる。
【0128】
好ましい態様において、細胞の二次メッセンジャー応答により、レラキシン3及びGPCR135複合体の生物学的活性を測定することができる。例えば活性化されたGPCR135により開始されるシグナル伝達事象により、レラキシン3及びGPCR135複合体の生物学的活性を測定することができる。このシグナル伝達事象は、細胞形態、移動又は化学走性のような細胞生理学における1つもしくはそれより多い変化を当該技術分野における熟練者に既知の1つもしくはそれより多い適した方法を用いて測定することにより、間接的に測定することができる。シグナル伝達経路に含まれるタンパク質のリン酸化、例えばGTP−結合タンパク質(Gタンパク質)のリン酸化を測定することにより、それを直接測定することもできる。例えばγ−ホスフェート上で放射性標識されたATP又はGTP分子の使用によりタンパク質リン酸化を測定する方法は、当該技術分野における熟練者に既知である。
【0129】
当該技術分野における熟練者に既知の複数の適した方法のいずれかを用い、二次メッセンジャー分子の細胞内濃度によりレラキシン3及びGPCR135複合体の生物学的活性を測定することもできる。例えばアクリジンオレンジのようなpH感受性色素を用い、pH変化を測定することができる。蛍光測定画像形成プレートリーダー(fluorometric imaging plate reader)(FLIPR)又は同焦点顕微鏡(confocal microscope)を用い、フルオ−3(fluo−3)(五カリウム塩、細胞−不透過性形態;Molecular Probes)又はフルオ−3(AM)(フルオ−3のアセトキシメチルエステル形態、Teflabs)(例えばLiu et al.著,J Pharmacol Exp Ther.299:2001年,121−30を参照されたい)のようなCa2+に感受性の蛍光指示薬の光学的画像形成を介して、カルシウム濃度を測定することができる(実施例6を参照されたい)。商業的に入手可能なELISAキットを用いて(FLASHPLATEサイクリックAMPアッセイシステム(125I),カタログ番号:SMP001A,NEN;Shimom
ura et al.著,J Biol Chem.277:2002年,35826−32も参照されたい)(実施例8を参照されたい)あるいはベータ−ガラクトシダーゼのようなリポーター遺伝子の発現がcAMP応答性要素(cre)の調節下にあるリポーター系を介して(Montminy et al.著,Trends Neurosci,13(5):1990年,184−8)(実施例1を参照されたい)、cAMP濃度を検出することができる。
【0130】
機能性GPCR135を含有する第1の細胞及び機能性GPCR135が欠けている以外は第1の細胞に同じ第2の細胞の2つの細胞への試験化合物の効果を比較することにより、試験化合物をさらに特性化することができる。この方法は、これらのアッセイの背景ノイズの確定においても有用である。当該技術分野における通常の熟練者は、この調節機構が機能性GPCR135の調節に応答する細胞変化の容易な選択も可能にすることを認識するであろう。従って好ましい態様において、スクリーニング法は:(a)細胞表面上で発現されるGPCR135を有する第1の細胞をレラキシン3又はレラキシン3の活性フラグメント及び試験化合物と接触させ;(b)試験化合物への第1の細胞における二次メッセンジャー応答を決定し、それを、第1の細胞をレラキシン3又はその活性フラグメントのみと接触させて試験化合物と接触させない標準のそれと比較し;(c)第2の細胞をレラキシン3又はレラキシン3の活性フラグメント及び試験化合物と接触させ;ここで第2の細胞は、それが細胞表面上でGPCR135を発現しないことを除いて他の点では第1の細胞と同じであり;(d)試験化合物への第2の細胞の二次メッセンジャー応答を決定し、二次メッセンジャー応答を、第2の細胞をレラキシン3のみと接触させて試験化合物と接触させない対照のそれと比較し;そして(e)(b)の比較結果を(d)の比較結果と比較する段階を含んでなる。
【0131】
1つがその細胞表面上でGPCR135を発現し、他が発現しないことを除いて、他の点では同じである2つの細胞を得るための複数の方法がある。1つの態様において、第1の細胞はその細胞表面上でGPCR135を構成的に発現するGPCR135に関する組換え宿主細胞であり、第2の細胞は、GPCR135組換え細胞が構築される親細胞である。他の態様において、細胞表面上におけるGPCR135の発現が誘導プロモーターの調節下にあるように、GPCR135に関する組換え宿主細胞を構築する。第1の細胞は、その細胞表面上におけるGPCR135の発現を許す誘導条件下で生育される組換え細胞であり、第2の細胞は、GPCR135の発現を許さない非−誘導条件下で生育される組換え細胞である。さらに別の態様において、第1の細胞は、その細胞表面上でGPCR135を発現するGPCR135に関する本来の宿主細胞であり、第2の細胞は、突然変異誘発によりGPCR135遺伝子が不活性化された、本来の細胞から誘導される突然変異細胞である。GPCR135に関する組換え宿主細胞の構築のため、又はGPCR135遺伝子の不活性化のために、標準的な分子生物学法を用いることができる。
【0132】
他の好ましい態様において、本発明は:(a)GPCR135を含んでなる単離された膜調製物をレラキシン3又はレラキシン3の活性フラグメント、試験化合物及び□−ホスフェート上で標識されたGTP分子と接触させ;そして(b)膜調製物に結合した標識の量ほ決定し;そして(c)(b)における標識の量を、膜調製物をレラキシン3又はその活性フラグメント及び標識されたGTPのみと接触させ、試験化合物と接触させない対照の量と比較する段階を含んでなる、レラキシン3/GPCR135複合体の活性を向上させるかもしくは低下させる化合物の同定方法を提供する。
【0133】
膜調製物は、その細胞表面上でGPCR135を発現する本来の宿主細胞から、又は好ましくはその細胞表面上で増加した量のGPCR135を発現する組換え宿主細胞から単離することができる。GPCR135宿主細胞を含んでなる組織からそれを単離することもできる。膜調製の方法を下記の実施例に示す。
【0134】
γ−ホスフェート上でGTP分子を標識するために、蛍光分子又は放射性同位体、例えば35S、32Pなどのような多様な標識を用いることができる。標識分子としての[35S]GTPγSの使用の代表的な方法を実施例5に記載する。
【0135】
さらに別の態様において、本発明は:(a)GPCR135を試験化合物及び標識レラキシン3又はその活性フラグメントと接触させ;(b)GPCR135に結合した標識レラキシン3又はそのフラグメントの量を測定し;そして(c)(b)の測定量を、GPCR135を標識レラキシン3又はそのフラグメントのみと接触させ、試験化合物と接触させない対照のそれと比較する段階を含んでなる、GPCR135に結合する化合物の同定方法を提供する。
【0136】
1つの好ましい態様において、細胞表面上でGPCR315を発現するGPCR135宿主細胞(組換え又は本来の)を結合アッセイに用いることができる。他の好ましい態様において、GPCR135を含んでなる単離された膜調製物を結合アッセイに用いることができる。さらに別の好ましい態様において、レラキシン3に結合することができる、実質的に精製されたGPCR135の細胞外フラグメントを、結合アッセイに用いることができる。
【0137】
GPCR135に結合する標識されたレラキシン3又はそのフラグメントの量は、最初に結合しない標識されたレラキシン3又はそのフラグメントをGPCR135から分離し、次いでGPCR135に伴う標識の量を測定することにより測定することができる。
【0138】
結合しない標識されたレラキシン3又はそのフラグメントからのGPCR135タンパク質の分離は、多様な方法で行なうことができる。簡便には、GPCR135を固体基質上に固定化し、それから結合しないレラキシン3を容易に分離することができる。固体基質は多様な材料から、且つ多様な形で、例えばミクロタイタープレート、ミクロビーズ、ディップスティック(dipstick)、樹脂粒子などにおいて作られることができる。基質は、好ましくはシグナル−対−ノイズ比を最大にするように、主に背景結合を最小にするように、ならびに分離を容易にし、コストを軽減するように選ばれる。
【0139】
分離は、例えば溜め(reservoir)からビーズ又はディップスティックを取り出すことにより、ミクロタイタープレートウェルのような溜めを空にするかもしくは希釈することにより、あるいはビーズ、粒子、クロマトグラフィーカラム又はフィルターを洗浄溶液又は溶媒で濯ぐことにより行なうことができる。分離段階は、好ましくは多数回の濯ぎ又は洗浄を含む。例えば固体基質がミクロタイタープレートである場合、ウェルを洗浄溶液で数回洗浄することができ、洗浄溶液は、例えば特異的結合に関与しないインキュベーション混合物の成分、例えば塩、緩衝剤、洗剤、非−特異的タンパク質などを含む。個体基質が磁気ビーズである場合、ビーズを洗浄溶液で1回もしくはそれより多数回洗浄し、磁石を用いて単離することができる。
【0140】
GPCR135を複数の方法を用いて固体基質上に固定化することができる。1つの態様において、GPCR135タンパク質がマトリックスに結合するのを可能にするドメインを加える融合タンパク質を準備することができる。例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質又はグルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質をグルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical,St.Louis,MO)又はグルタチオン誘導体化ミクロタイタープレート上に吸着させることができ、それを次いで試験化合物及び標識されたレラキシン3と一緒にし、混合物を複合体形成に誘導する条件下で(例えば塩及びpHに関して生理学的条件下で)インキュベーションする。インキュベーションに続き、ビーズ又はミクロタイタープレートウェルを洗浄して非結
合成分を除去し、例えば上記の通りに複合体形成を直接又は間接的に測定する。あるいはまた、複合体をマトリックスから解離させることができ、標準的な方法を用いて、標識されたレラキシン3のGPCR135への結合のレベルを決定することができる。
【0141】
マトリックス上におけるタンパク質の固定化のための他の方法も、本発明のスクリーニングアッセイにおいて用いることができる。例えばビオチン及びストレプタビジンの共役を用いてGPCR315を固定化することができる。当該技術分野において既知の方法(例えばPierce Chemicals,Rockford,ILから入手可能なビオチニル化キット)を用い、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)からビオチニル化ポリペプチドを調製し、ストレプタビジンがコーティングされた96ウェルプレート(Pierce Chemicals)のウェルにおいて固定化することができる。
【0142】
あるいはまた、GPCR135と反応性であるが、レラキシン3又は試験化合物へのGPCR135の結合を妨げない抗体をプレートの壁に結合させ、次いで抗体共役によりGPCR135をウェル内に捕獲することができる。
【0143】
レラキシン3又はそのフラグメントの標識のために、直接の検出を与えるもの(例えば放射性、ルミネセンス、光学もしくは電子密度など)あるいは間接的な検出を与えるもの(例えばFLAGエピトープのようなエピトープタグ、ホースラディッシュペルオキシダーゼのような酵素タグなど)のような多様な標識を用いることができる。
【0144】
候補化合物の存在下及び不在下におけるレラキシン3へのGPCR135の相互作用は、反応物を含有するのに適したいずれの容器において行なうこともできる。そのような容器の例にはミクロタイタープレート、試験管及び微量遠心管が含まれる。
【0145】
代表的な結合アッセイを下記の実施例7において記載する。
【0146】
他の一般的な側面において、本発明は:
(a)GPCR135又はその活性フラグメントを含んでなるアッセイ試薬と試験化合物を接触させ;
(b)GPCR135又はその活性フラグメントの生物学的活性を測定し;そして
(c)段階(b)の結果を、GPCR135又はその活性フラグメントを試験化合物の不在下でレラキシン3又はその活性フラグメントと接触させた対照の結果と比較する
ことを含んでなる、GPCR135に結合し、レラキシン3を模する化合物の同定方法に関する。
【0147】
この方法への1つの好ましい態様において、GPCR135又はその活性フラグメントは組換え細胞から、好ましくは細胞表面上で発現される。他の好ましい態様において、GPCR135又はその活性フラグメントは、単離された細胞膜調製物内にある。
【0148】
生物学的活性は、レセプター及びリガンド複合体又はGPCR135とレラキシン3の相互作用に関連する生物学的活性、例えばシグナル伝達事象又は活性化GPCR135により開始される二次メッセンジャー分子の細胞内濃度における変化のいずれであることもできる。これらの生物学的活性は、上記の方法を用いて測定することができる。レラキシン3を「模する」("mimics")試験化合物は、レラキシン3のものと類似のGPCR135の生物学的活性における変化を引き出す。
【実施例1】
【0149】
哺乳類GPCR135のクローニング及び組換え発現
この実施例は、ヒト、マウス及びラットからのGPCR135のクローニング及び組換え発現を記載する。類似の方法を用い、他の動物からのGPCR135をクローニングし、組換えにより発現させることもできる。
【0150】
GPCR135は、既知のGPCRs、ソマトスタチンレセプターへのその配列相同性に基づいて、ヒトゲノムDNA(Genbank 受け入れ番号:NT 023085)からオーファンGPCRとして同定された。配列分析は、ヒト、マウス又はラットにおけるGPCR135の全コード領域がイントロンを含有しないことを明らかにした。従って、これらの動物におけるGPCR135に関するコード配列を、鋳型としてゲノムDNAを用い、且つGPCR135読取り枠の推定翻訳開始及び停止部位に相補的なプライマーを用いるPCR増幅により得ることができる。ヒト又はマウスと異なり、ラットはGPCR135に関する2つの翻訳開始部位を有し、それらは21 nt離れている。2つの開始部位はラットGPCR135の2つのイソ型、長いイソ型GPCR135l及び短いイソ型GPCR135sを生ぜしめ、それらをクローニングし、特性化した。
【0151】
ヒトGPCR135をヒトゲノムDNAから、前進プライマー、配列番号:1,5’ACA GCT CGA GGC CAC CAT GCA GAT GGC CGA TGC AGC CAC G 3’及び逆プライマー、配列番号:2,5’ACA TCA
TCT AGA TCA GTA GGC AGA GCT GCT GGG CAG
CAG 3’を用いてPCR増幅させた。マウスGPCR135コード領域をマウスゲノムDNAから、前進プライマー、配列番号:3,5’ACG ATA CTC GAG
GCC ACC ATG CAG GTG GCT TCT GCA ACC CCC
GCG 3’及び逆プライマー、配列番号:4,5’ACT AGA TCT AGA
TCA GTA GGC AGA GCT ACT AGG GAG CAG GT 3’を用いてPCR増幅させた。ラットGPCR135長鎖形態をラットゲノムDNAから、前進プライマー、配列番号:5,5’ACG ATA CTC GAG GCC ACC ATG CCC AAA GCG CAC CTG AGC ATG CAA GT 3’及び逆プライマー、配列番号:6,5’ACG ATA TCT AGA TCA GTA GGC AGA GCT GCT AGG GAG AAG GT 3’を用いてPCR増幅させた。ラットGPCR135短鎖形態をラットゲノムDNAから、前進プライマー、配列番号:7,5’ACG ATA CTC GAG GCC ACC ATG CAA GTG GCT TCT GCA ACC ACC GCA 3’及び逆プライマー、配列番号:6,5’ACG ATA TCT AGA TCA GTA GGC AGA GCT GCT AGG GAG AAG GT 3’を用いてPCR増幅させた。
【0152】
これらのPCR産物を哺乳類発現ベクターpCIneo(Promega)中に、Xho1及びXba1部位の間で別々にクローニングし、配列決定して配列の同一性を確認した。配列決定の結果は、ヒトGPCR135、マウスGPCR135、ラットGPCR135l及びラットGPCR135sのそれぞれに関するコード配列がそれぞれ配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10及び配列番号11に表される通りであることを示した。cDNA配列に基づき、ヒトGPCR135、マウスGPCR135、ラットGPCR135L及びラットGPCR135Sのそれぞれに関する推定アミノ酸配列は、それぞれ配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14及び配列番号:15に表される通りである。
【0153】
配列分析は、哺乳類GPCR135が既知のG−タンパク質共役レセプター、例えばソマトスタチンレセプター及びアンギオテンシンレセプターへの有意な配列相同性を共有することを示した。ヒト、ラット及びマウスGPCR135の間のアミノ酸配列比較は、GPCR135が異なる動物種において非常に保存された遺伝子であることを示した(図1
)。ラットGPCR135lは、以前に国際公開第00/24891号パンフレットにおいて記載された。しかしながら、配列比較は、ラットGPCR135sの最初のアミノ酸がヒト及びマウスGPCR135の最初のアミノ酸と整列することを示し、ラットGPCR135sがラットにおいて発現されるようであることを示唆した。組換えにより発現されるラットGPCR135s及びGPCR135lは、放射性リガンド結合又はGTPγS結合アッセイにおいて類似の活性を有することが示された(図2)。
【0154】
ヒトGPCR135 mRNAの組織発現パターンの研究のために、種々のヒト組織からのcDNAs(Clontech)につき、ヒトGPCR135遺伝子にアニーリングするプライマーを用いて定量的PCR増幅アッセイを行なった。得られるPCR産物を1%アガロースゲル上で移動させ、エチジウムブロミド(ethdium brimide)で染色した。標準として、ヒトアクチンプライマーを用いて同じ組織からのヒトアクチンcDNAをPCR増幅させた。アガロースゲル分析の結果は、ヒトGPCR135 mRNAが脳で最も強く発現され、胎盤、膵臓及び精巣においていくらかの弱い発現があることを示した。結腸、心臓、腎臓、肝臓、肺、脾臓、骨格筋及び胸腺を含む、調べられた他の組織においては、発現が見出されないか、もしくは非常に弱い発現が見出された。RT−PCR、RNase−保護及びその場ハイブリッド形成のような他のmRNA発現分析から、ヒトGPCR135 mRNAの発現について矛盾しない結果が得られた。
【0155】
組換えGPCR135宿主細胞を得るために、LipofectAmine(Invitrogen,カタログ番号:18324−020)を用い、上記のGPCR135発現ベクターをCOS−7(ATCC番号 CRL−1651)、CHO−K1(ATCC番号 CCL−61)細胞中にトランスフェクションした。トランスフェクションから2日後、放射性−リガンド結合アッセイ又はGTPγS結合アッセイのために細胞を用いた(実施例5を参照されたい)。別の実験において、LipofectAmineを用い、GPCR135発現ベクターを293(ATCC番号 CRL−1573)細胞中にGqi5と共−トランスフェクション又はそれのみでトランスフェクションした。トランスフェクションから2日後、FLIPRを用いるリガンド刺激に応答するCa2+動態化アッセイのために細胞を用いた(実施例6を参照されたい)。さらに、CRE−β galリポーター遺伝子を保有するSK−N−MC細胞(ATCC番号 HTB−10)中にもGPCR135発現ベクターをトランスフェクションした。G418の選択を用い(400mg/L)、最少必須培地プラス10%胎児ウシ血清中で細胞を培養することにより、安定な細胞系を確立し、細胞内cAMP濃度に関するリポーターアッセイにおいて用いた。GPCR135発現ベクターの不在下で、COS−7、CHO−K1、HEK293及びSK−N−MC細胞のいずれも、GTPγS結合アッセイから検出可能なレベルでGPCR135を発現しない。
【実施例2】
【0156】
ラット脳からのGPCR135リガンド活性の最初の同定及び特性化
この実施例は、ラット脳からのGPCR135リガンド活性の同定及び特性化を記載する。類似の方法を用い、ヒト、マウス、イヌ及びブタからのような他の動物脳組織においてリガンド活性を調べることもできる。
【0157】
凍結されたラット脳(5g)を−30℃において40mlのエタノール/HCl(3:1におけるエタノール対0.8M HCl比)中で均質化した。ホモジネートを4℃において2時間抽出し、次いで4℃において20,000gで30分間遠心した。上澄み液を2mlのSP−Sephadex C−25カラム(Amersham)上に負荷し、1M酢酸で洗浄し、2Mピリジン及び1M酢酸で溶離させた。溶離した画分を6mlのC−18 BondElutカラム上に負荷し、0.1%TFAで洗浄し、60%アセトニトリル及び0.1%TFAで溶離させた。溶離したペプチドを凍結乾燥し、水中で再構築し
、実施例5に記載する通りにGTPγS結合アッセイを用いてGPCR135リガンド活性に関して調べた。
【0158】
ラットGPCR135リガンドの分子サイズをHPLCゲル濾過により特性化した。ラット脳抽出物からの再構築された画分を、1M酢酸中でHPLCゲル濾過カラム(BioSep−SEC−S 2000,Phenomenex)を介して移動させた。HPLC分離の間に1.0mlの画分を集め、凍結乾燥し、GTPγS結合アッセイを用いてGPCR135リガンド活性に関して調べた。平行実験において、種々の分子量を有するタンパク質又はペプチドを同じに移動させ、分子量標準として供した。
【0159】
結果は、ラット脳抽出物がGPCR135を含有する単離された膜へのGTPγS結合を有力に刺激するが、GPCR135を含有しない負の標準に結合しないことを示した。ラット脳抽出物のHPLCゲル濾過分析は、GPCR135リガンド活性が4000〜5000の分子量(MW)当たりで溶離することを示した(図3)。脂質、ヌクレオチド又は小分子のような他の型のGPCRリガンドは4000を超える分子量(MW)をめったに有していないので、分子量研究は、GPCR135リガンドがペプチドであることを示唆した。
【実施例3】
【0160】
ブタ脳からのGPCR135リガンドの精製
GPCR135リガンドをさらに特性化するために、それを脳抽出物から精製することができる。この実施例は、ブタ脳からのGPCR135リガンドの精製を記載する。類似の方法を用いて他の動物からリガンドを精製することができる。
【0161】
凍結されたブタ脳(5kg)を、ラット脳抽出に関して上記に記載した通りに冷エタノール/HCl中で、規模を大きくして均質化した。ブタ脳抽出物の上澄み液をリソースSカチオンイオン交換カラム(resource S cation ion exchange column)上に負荷し、0から2MへのNaCl勾配を有する20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)及び20%アセトニトリルを用いて溶離させた。GPCR135発現細胞膜におけるGTPγS結合を刺激する画分をプールし、pH2.5においてリソースSカチオンイオン交換カラム上に負荷し、0から2MへのNaCl勾配を有する20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH2.5)及び20%アセトニトリルを用いて溶離させた。活性な画分をプールし、RP−HPLC半−調製的カラム上に負荷し、0.1%TFA/アセトニトリル勾配を用いて溶離させた。活性な画分をプールし、凍結乾燥し、0.1%TFA中に再溶解し、次いで分析的RP−HPLCカラム上に負荷した。カラムに結合したペプチドを、再び0.1%TFA/アセトニトリル勾配を用いて溶離させた。この段階に、活性な画分は純粋であると思われた。画分中のペプチドは5500の分子量(MW)を有することが質量分析により示され、Edman分解法を用いてペプチドのN−末端を配列決定した。精製された画分は、配列番号:16,DVLAGLSSNXXKWGXSKSEI及び配列番号:17,RASPYGVKLXGREFIRAVIFに表されるN−末端配列を有する2つのペプチドから成ることが見出された。
【0162】
誘導される配列を問題として(as queries)用いるデータベース探索は、両方の配列が、インスリン−様ペプチド7(受け入れ番号 NM 173184,マウス)(図4)とも呼ばれ、ジスルフィド結合により連結した2個のペプチドを含有するインスリン群のメンバーであるレラキシン3の配列と一致することを明らかにした。この結果は、精製され且つ配列決定されたペプチドがブタレラキシン3であることを示し、レラキシン3がGPCR135に関するリガンドであることを支持した。
【実施例4】
【0163】
ヒト組換えレラキシン3の発現及び精製
ヒトレラキシン3の完全なコード配列を、ヒト脳cDNAライブラリ(Clontech)から、前進プライマー、配列番号:18,5’ACG ATC GTC GAC GCC ACC ATG GCC AGG TAC ATG CTG CTG CTG CTC 3’及び逆プライマー、配列番号:19,5’ACG ATA AAG CTT CTA GCA AAG GCT ACT GAT TTC ACT TTT GC 3’を用いてPCR増幅した。PCR産物を哺乳類発現ベクターpCMV−sport1(Invitrogen)中に、Sal1及びBamH1部位の間でクローニングした。クローニングされたcDNAを配列決定して同一性を確認した。
【0164】
発現ベクターをCOS−7細胞中に、LipofectAmine(Invitrogen)を用いてトランスフェクションした。トランスフェクションから3日後、トランスフェクションされた細胞の上澄み液を集め、pHを3.0に調節し、Sephadex C−25カチオン交換カラム上に負荷した。カラムを1M酢酸で洗浄し、2Mピリジン及び1M酢酸で溶離させた。溶離したタンパク質をC−18 BondElutカラム上に負荷し、0.1%TFAで洗浄し、60%アセトニトリル及び0.1%TFAで溶離させた。溶離したタンパク質を凍結乾燥し、50mM Tris−HCl,pH7.5中で再構築し、GTPγS結合アッセイにおいて調べた。結果は、ヒトレラキシン3がトランスフェクションされた細胞培養からの培地が、GPCR135発現細胞膜におけるGTPγS結合を有力に刺激するが、標準培地は活性を有していないことを示し(図5)、レラキシン3が実際にGPCR135のリガンドであることを示した。
【0165】
レラキシン3ペプチドの精製を容易にするために、レラキシン3ペプチド及びレラキシン3のN−末端にFLAGタグを含んでなる分泌融合タンパク質をコードする発現ベクターを構築した。そのような発現ベクターは、FLAG配列が続くアルファペプチドシグナル配列でレラキシン3のシグナル配列を置き換えることにより構築される。
【0166】
ヒトレラキシン3のプロ−ペプチドコード領域を、前進プライマー、配列番号:20,5’ACG ATA GAA TTC GAT GAC GAC GAT AAG CGG GCA GCG CCT TAC GGG GTC AGG C 3’及び逆プライマー、配列番号:21,5’ACT ATA GGA TCC CTA GCA AAG
GCT ACT GAT TTC ACT TTT GCT AC 3’を用い、鋳型としてヒトレラキシン3 cDNAを用いてPCR増幅した。PCR産物を、改変されたpCMV−sport1ベクター中にクローニングし、改変されたpCMV−sport1ベクターにおいては、Pst1及びEcoR1部位の間の配列を、FLAGタグが続くアルファペプチドシグナル配列をコードする配列、配列番号:22,5’CTG CAG
GCC GCC ATG CTG ACC GCA GCG TTG CTG AGC
TGT GCC CTG CTG CTG GCA CTG CCT GCC ACG
CGA GGA GAC TAC AAG GAC GAC GAT GAC AAG
GAA TTC 3’で置き換えることによりポリ−クローニング部位が改変された。次いでヒトレラキシン3プロ−ペプチドコード領域をFLAGタグの下流に、EcoR1及びBamH1部位の間でクローニングした。得られるクローンを配列決定し、同一性を確認した。
【0167】
FLAG−レラキシン3融合ペプチド発現プラスミドをCOS−7細胞中にトランスフェクションした。トランスフェクションから2日後、組換え融合ペプチドを、抗−FLAGアフィニティーゲル(Sigma)を用い、細胞培養培地からアフィニティー精製した。簡単に記載すると、培地を抗−FLAGアフィニティーカラム上に負荷した。カラムをリン酸塩緩衝食塩水(PBS)溶液で洗浄し、0.1M グリシン−HCl,pH2.8で溶離させた。溶離したタンパク質を、1M Tris−HCl,pH7.5を用いて中
和した。エンテロキナーゼ(Novagen)により融合ペプチドからN−末端FLAGタグを切断し、野生型レラキシン3ペプチドを、C−18カラム及び0.1%TFA/アセトニトリル勾配を用いる逆相HPLCによりさらに精製し、GTPγS結合アッセイにおいて調べた。結果は、精製されたペプチドがGPCR135発現細胞膜においてGTPγS結合を有力に刺激することを示した。しかしながら、SDS−PAGE及び逆−相HPLCは、精製されたペプチドが不均一であることを示し、Cペプチドプロセシングが完全でなかったことを示唆した。
【0168】
プロ−レラキシン3の成熟レラキシン3へのプロ−ホルモンコンバーターゼによるプロセシング効率を向上させるために、アミノ酸配列RGRRから成るフリン切断部位をプロ−レラキシン3中に、C−鎖とA−鎖の連結部分において作った。この突然変異は、2−段階重複PCR反応(overlapping PCR reaction)により作られた。前進プライマー(P1)、配列番号:23,ACG ATA CTG CAG GCC GCC ATG CTG ACC GCA GCG TTG CTG A 3’及び逆プライマー(P2)、配列番号:24,5’CAG CCA GGA CAT CTC GTC GGC CCC GAA GAA CCC CAG GGG TTC CTT G 3’を用い、鋳型としてFLAG−レラキシン3 cDNAを用いて、5’末端をPCR増幅した。前進プライマー(P3)、配列番号:25,5’GGT TCT TCG GGG CCG ACG AGA TGT CCT GGC TGG CCT TTC CAG CAG C 3’及び逆プライマー(P4)、配列番号:26,5’ACT ATA GGA TCC CTA GCA AAG GCT ACT GAT TTC ACT TTT GCT AC 3’を用い、鋳型としてFLAG−レラキシン3 cDNAを用いて3’末端をPCR増幅した。5’末端及び3’末端PCR産物を精製し、上記の前進プライマー(P1)及び逆プライマー(P4)を用いる第2段階PCRのための鋳型として混合した。最終的なPCR産物をpCMV−sport1中に、Pst1及びBamH1部位の間においてクローニングし、挿入された領域を配列決定して同一性を確認した。
【0169】
新しいレラキシン3発現ベクターをヒトプロ−ホルモンコンバーターゼフリン発現ベクターと一緒に、トランスフェクション試薬としてLipofectAmineを用いてCOS−7細胞中に共−トランスフェクションした。ヒトフリン発現ベクターは、ヒトcDNAライブラリからのヒトフリンcDNAを、前進プライマー、配列番号:27,5’GAC TAG AAG CTT GCC ACC ATG GAG CTG AGG CCC TGG TTG CTA TG 3’及び逆プライマー、配列番号:28,5’GAC GAT AGC GGC CGC AGT GGG CTC ATC AGA GGG CGC TCT G 3’を有する2つのプライマーを用いてPCR増幅することにより構築された。PCR産物をpcDNA3.1/zeo(Invitrogen)中に、Hind III及びNot1部位の間においてクローニングした。フリン発現ベクターの挿入された領域を配列決定し、その同一性を確認した。次いで抗−FLAGアフィニティーカラムを用いて分泌レラキシン3を精製し、エンテロキナーゼで切断し、上記の通りに逆相HPLCに供した。トランスフェクションされた細胞培養培地から精製されたレラキシン3は、この場合もGPCR135発現細胞膜においてGTPγS結合を有力に刺激した。SDS−PAGEは、精製されたタンパク質の1つのバンドを示した。HPLC分析は、レラキシン3プロ−ホルモンが成熟ペプチドに完全にプロセシングされ、保持時間において均一であることを示した。
【実施例5】
【0170】
GTPγS結合アッセイ
GPCR135リガンド(又は試験化合物)の活性を、リガンド/GPCRレセプター複合体もしくは相互作用の活性を測定する複数の方法により検定することができる。その
ようなアッセイの1つの例はGTPγS結合アッセイである。
【0171】
GPCR135発現ベクターを、Lipofectamine(Invitrogen)を用いてCHO−K1細胞中にトランスフェクションした。トランスフェクションから2日後、トランスフェクションされた細胞を収穫し、GTPγS結合緩衝液:50mM Tris−HCl,pH7.4,10mM MgCl,1mM EDTA pH8.0及び100mM NaCl中で均質化した。1mM PMSF,10μg/mlのペプスタイン A、10μg/mlのロイペプチンの濃度でプロテアーゼ阻害剤を緩衝液に加えた。20,000gにおける30分間の遠心により細胞膜を単離した。単離された細胞膜及び種々の濃度のリガンドを96−ウェルプレートに加え、室温で20分間インキュベーションした。次いでGTPγS結合緩衝液中で希釈された35S−GTPγS(NEN)を各ウェルに、200□lの最終的容積中の200pMの最終的濃度で加えた。次いで室温で1時間反応を進行させ、96−ウェルGFCフィルタープレート(Packard)を介して濾過し、冷洗浄緩衝液:50mM Tris−HCl,pH7.4,10mM MgClで洗浄した。各ウェルにMicroscint−40(Packard)を加え、トップカウンター(top counter)(TopCount NTX,Packard)上でプレートをカウントした。
【0172】
図5は、ヒトGPCR135発現細胞膜及びレラキシン3組換え細胞からの培地を用いるGTPγS結合アッセイの結果を示す。GPCR135発現細胞膜への35S−GTPγSの導入の増加は、レラキシン3組換え細胞からの培地におけるGPCR135リガンド結合活性を示した。
【実施例6】
【0173】
カルシウム動態化アッセイ
この実施例は、リガンド/GPCRレセプター複合体の活性に関するアッセイのために用いることができる他の方法を記載する。
【0174】
LipofectAmineを用い、GPCR135レセプターを発現するプラスミド及び、GPCR135の活性化を細胞内Ca2+の増加又はCa2+動態化の向上に置き換える突然変異G−タンパク質であるGqi5を発現するプラスミドを用い、ヒト胚腎臓(HEK)293細胞を共−トランスフェクションした(Conklin et al.著,Nature 363:1993年,274−276)。トランスフェクションから2日後、PBSプラス10mM EDTA,pH8.0を用いて細胞を引き離した(detached)。引き離された細胞をDMEM−F12培地(フェノールレッドなし,Invitrogen)で洗浄し、黒いポリ−Dリシンがコーティングされた96−ウェルプレート中に、ウェル当たり50,000個の細胞の細胞密度で播種した。カルシウム色素、FLuo−3(AM)(TEFLABS,Austin,TX)を細胞中に負荷し、FLIPR(Molecular Device)を用いてリガンド刺激カルシウム動態化を監視した。
【0175】
トランスフェクションされない(293標準)あるいはGqi5のみ(293/Gqi5)もしくはヒトGPCR135のみ(GPCR135)でトランスフェクションされた、又はヒトGPCR135とGqi5により共−トランスフェクションされた(GPCR135/Gqi5)HEK293細胞を、リガンドとしてのレラキシン3の刺激下におけるCa2+動態化アッセイのために用いた。FLIPRを用いてリガンド−刺激細胞内動態化を監視した。図6に示される通り、レラキシン3は、GPCR135及びGqi5を共−発現するHEK293細胞においてCa2+動態化を刺激し、レラキシン3がGPCR135に結合し、且つそれを活性化することを示した。
【実施例7】
【0176】
放射性リガンド結合アッセイ
この実施例は、リガンド/GPCRレセプター複合体の活性に関するアッセイのために用いることができるさらに別の方法を記載する。
【0177】
LipofectAmineを用い、6−ウェル組織培養プレート中のCOS−7細胞をGPCR135発現プラスミドによりトランスフェクションした。トランスフェクションから2日後、細胞を結合緩衝液:DMEMプラス50mM Hepes,pH7.2及び1% BSAで洗浄した。各ウェルに125I−標識ヒトレラキシン3を1mlの結合緩衝液中で、競合物質としての1μMの標識されないレラキシンの存在下又は不在下で加えた。結合アッセイを室温で1時間行い、氷−冷PBSにより非結合リガンドを洗い流した。結合した125I−レラキシン3をガンマカウンターにおいてカウントした。図7に示される通り、125I−レラキシン3はヒト、マウス又はラットからのGPCR135に特異的に結合する。
【実施例8】
【0178】
細胞内cAMP蓄積アッセイ
この実施例は、リガンド/GPCRレセプター複合体の活性に関するアッセイのために用いることができるさらに別の方法を記載する。
【0179】
CHO−K1(ATCC番号 CCL−61)細胞中にGPCR135発現プラスミドをトランスフェクションし、トランスフェクションされた細胞をG418(400mg/L)の選択下で培養することにより、ヒトGPCR135を安定して発現するCHO−K1細胞を確立した。レセプター発現細胞を96−ウェルプレート中に、ウェル当たり30,000個の細胞の細胞密度で播種した。24時間後、細胞培養培地をDMEM−F12プラス2mM IBMX(Sigma)で置き換えた。各ウェルにcAMP刺激のための異なる試験化合物を加えた。反応物を室温で20分間インキュベーションした。20マイクロ−リットルの0.5N HClを各ウェルに加えて反応を停止させ、蓄積したcAMPを抽出した。cAMP ELISAキット(NEN)を用いてcAMP濃度を測定した。
【0180】
図8に示される通り、アデニルシクラーゼの触媒活性を刺激することが知られている薬剤であるフォルスカリンは、GPCR135の存在下又は不在下でcAMPの細胞内濃度を上昇させる。レラキシン3はGPCR135を活性化させ、それが今度はシクラーゼ活性を阻害し、cAMPの細胞内蓄積の減少を生ずる。従ってレラキシン3は、GPCR135を発現する細胞においてフォルスカリン−刺激cAMP蓄積を妨げるが、GPCR135が不在の標準細胞においては妨げない。
【0181】
上記で実施例及び好ましい態様に言及して本発明の種々の側面を例示してきたが、本発明の範囲は前の記述によってではなく、特許法の原則の下に正しく解釈される前記の請求項により定義されることが認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】ヒト、マウス及びラットGPCR135の間のアミノ酸配列の比較。
【図2】種々のラット組織におけるGPCR135リガンド活性を示すグラフ図。
【図3】GPCR135リガンドの分子量特性化を示すグラフ図。
【図4】ヒト、マウス、ラットレラキシン3(R3)及びブタ脳から精製されたGPCR135リガンドの間のアミノ酸配列比較。
【図5】ヒトレラキシン3がトランスフェクションされたCOS細胞からの細胞培養培地におけるGPCR135リガンド活性を示すグラフ図。
【図6】GPCR135及びGqi5を共−発現するHEK293細胞において、レラキシン3がCa2+動態化を刺激することを示すグラフ図。
【図7】125I−レラキシン3がGPCR135に特異的に結合することを示すグラフ図。
【図8】cAMP蓄積アッセイから、GPCR135へのレラキシン3の結合が細胞内cAMP濃度を低下させることを示すグラフ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レラキシン3又はレラキシン3の活性フラグメントを含有するリガンド成分に結合したGPCR135又はGPCR135の活性フラグメントを含有するレセプター成分を含んでなり、ここでレセプター及びリガンド成分の少なくとも1つが実質的に純粋な形態にあるレセプター−リガンド複合体。
【請求項2】
レセプター成分がヒト、マウス又はラットに由来し、リガンド成分がヒト、マウス又はラットに由来する請求項1のレセプター−リガンド複合体。
【請求項3】
該リガンド成分が125I放射性同位体標識を保有する請求項1のレセプター−リガンド複合体。
【請求項4】
GPCR135が配列番号:12、配列番号:13及び配列番号:15から選ばれるアミノ酸配列を有する請求項1のレセプター−リガンド複合体。
【請求項5】
該GPCR135成分が組換えGPCR135宿主細胞の細胞表面上における発現の産物である請求項1のレセプター−リガンド複合体。
【請求項6】
該レセプター成分が単離された細胞膜又は脂質小胞に付随するGPCR135又はGPCR135の活性フラグメントを含有する請求項1のレセプター−リガンド複合体。
【請求項7】
該レセプター成分及び該リガンド成分の両方が実質的に純粋な形態にある請求項1のレセプター−リガンド複合体。
【請求項8】
該リガンド成分が組換え発現の産物として実質的に純粋な形態にある請求項1のレセプター−リガンド複合体。
【請求項9】
該レセプター及びリガンド成分の少なくとも1つが単離、ペプチド合成又は組換え発現の産物として実質的に純粋な形態にある請求項1のレセプター−リガンド複合体。
【請求項10】
該リガンド成分がペプチド合成の産物として実質的に純粋な形態にある請求項1のレセプター−リガンド複合体。
【請求項11】
配列番号:15のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列又はその相補配列(complement)を有する単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号:15のアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチド。
【請求項13】
配列番号:15のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項14】
配列番号:15のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなるベクターを含んでなる組換え宿主細胞。
【請求項15】
(a)レラキシン3プロペプチドのA鎖とC鎖の間のペプチド結合及びC鎖とB鎖の間のペプチド結合から選ばれる少なくとも1つの位置においてプロテアーゼ切断部位を形成するペプチド結合の挿入により改変されたレラキシン3プロペプチドをコードするDNA分子を構築し;
(b)改変されたレラキシン3プロペプチドを発現する第1のベクターを構築し;
(c)改変されたレラキシン3プロペプチドを、挿入されたプロテアーゼ切断部位において切断するためのプロテアーゼを発現する第2のベクターを構築し;
(d)第1のベクター及び第2のベクターの両方を宿主細胞中に導入し;そして
(e)宿主細胞を生育させて改変されたレラキシン3プロペプチド及びプロテアーゼの両方を発現させ、それにより改変されたレラキシン3プロペプチド上の該位置においてプロテアーゼが有効にペプチド結合を切断する
ことを含んでなる組換え細胞からのレラキシン3の生産方法。
【請求項16】
該改変されたレラキシン3プロペプチドが該少なくとも1つの位置に挿入されたプロ−ホルモンコンバーターゼを有する請求項15の方法。
【請求項17】
該改変されたレラキシン3プロペプチドが、レラキシン3プロペプチドのA鎖とC鎖の間のペプチド結合において挿入されたフリンを有する請求項15の方法。
【請求項18】
(a)化合物及び緩衝溶液を含んでなる試験試料を、請求項1で定義されたレセプター−リガンド複合体を含んでなるアッセイ試薬と接触させ;
(b)レセプター−リガンド複合体の生物学的活性を決定し;そして
(c)段階(b)で決定された結果を、レセプター−リガンド複合体を緩衝溶液と接触させた対照測定(control measurement)と比較する
段階を含んでなる、GPCR135/レラキシン3複合体の生物学的活性を向上させるかもしくは低下させる化合物の同定方法。
【請求項19】
レセプター−リガンド複合体のGPCR135成分が組換えGPCR135宿主細胞の細胞表面上における発現の産物である請求項18の方法。
【請求項20】
該レセプター−リガンド複合体の生物学的活性の決定が二次メッセンジャー応答の測定を含んでなる請求項19の方法。
【請求項21】
該二次メッセンジャー応答を細胞内pH、細胞内カルシウムイオン濃度又は細胞内cAMP濃度により測定する請求項20の方法。
【請求項22】
アッセイ試薬が、GPCR135又はその活性フラグメントを含有する単離された膜調製物を含んでなる請求項19の方法。
【請求項23】
該レセプター−リガンド複合体の生物学的活性の決定が単離された膜調製物のタンパク質リン酸化の量の測定を含んでなる請求項22の方法。
【請求項24】
単離された膜調製物のタンパク質リン酸化の量をγ−ホスフェート標識GTP分子を用いて測定する請求項23の方法。
【請求項25】
γ−ホスフェート標識GTP分子が35S−GTPγS、33P−GTPγP及び32P−GTPγPから選ばれる請求項24の方法。
【請求項26】
(a)GPCR135又はその活性フラグメントを試験化合物及び標識レラキシン3又はその活性フラグメントと接触させ;
(b)GPCR135又はその活性フラグメントと結合する標識レラキシン3又はその活性フラグメントの量を決定し;そして
(c)段階(b)で決定された量を、GPCR135又はその活性フラグメントを試験化合物の不在下で標識レラキシン3又はその活性フラグメントと接触させた対照測定と比較する
段階を含んでなる、GPCR135又はその活性フラグメントに結合する化合物の同定方法。
【請求項27】
標識レラキシン3又はその活性フラグメントが125Iで標識される請求項26の方法。
【請求項28】
(a)GPCR135又はその活性フラグメントを含んでなるアッセイ試薬と試験化合物を接触させ;
(b)GPCR135又はその活性フラグメントの生物学的活性を決定し;そして
(c)段階(b)で決定された結果を、試験化合物の不在下でGPCR135又はその活性フラグメントをレラキシン3又はその活性フラグメントと接触させた対照測定の結果と比較する
ことを含んでなる、GPCR135に結合し且つレラキシン3を模する化合物の同定方法。
【請求項29】
GPCR135又はその活性フラグメントが組換え細胞の表面から発現される請求項28の方法。
【請求項30】
GPCR135又はその活性フラグメントが単離された細胞膜調製物中にある請求項28の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−524371(P2007−524371A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508832(P2006−508832)
【出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/005666
【国際公開番号】WO2004/082598
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【出願人】(505328432)
【Fターム(参考)】