説明

レンジ式多段変速機

【課題】副変速機の切換えを伴う変速時に、操作レバーの操作に対応して副変速機を素早く切換える。
【解決手段】副変速機が主変速機への入力又は主変速機からの出力の回転速度を少なくとも高速又は低速に変速して伝達し、主変速機のギヤシフト軸51〜53に主シフトフォークが取付けられる。ギヤシフト軸に対して立体交差するセレクトシフト軸66にセレクトシフトレバー67が嵌合され、切換手段が副変速機の変速ギヤを切換えるための副シフトフォーク86eを駆動装置により駆動して副変速機を高速側又は低速側に切換える。切換手段のセレクトセンサ94がセレクトシフトレバーの軸方向への変位を検出し、セレクトセンサの検出出力に基づいてコントローラ97がレンジロッドを駆動する駆動装置89を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動で変速する手動変速機であって、主変速機の主軸の回転速度を副変速機により高速又は低速の2段階に変速できるレンジ式の多段変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のレンジ式の多段変速機として、メイン・ギヤ・ボックスに配置される複数のギヤ・シフト・シャフトに複数のギヤ・シフト・フォークが保持され、ギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーの操作に応動してギヤ・シフト・シャフトとともに複数のギヤ・シフト・フォークを選択的にシフトするように長さ方向に所定の間隔で突出された少なくとも2つのセレクト・レバーを有するセレクト・アンド・シフト・シャフトがメイン・ギヤ・ボックスに配置され、セレクト・アンド・シフト・シャフトに低速側及び高速側レンジ切換えカムが配置され、更にオーギジリアリ・ギヤ・ボックス(補助ギヤボックス)にギヤ・シフト・フォークが配置されたトランスミッションに使用される変速機構が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この変速機構では、オーギジリアリ・ギヤ・ボックスのギヤ・シフト・フォークが流体圧型アクチュエータによりシフト動作され、方向切換えバルブ・ユニットがメイン・ギヤ・ボックスのセレクト・アンド・シフト・シャフトの動きに応じて低速側及び高速側レンジ切換えカムで切換動作される。また方向切換えバルブ・ユニットの入口が供給配管により流体圧源に接続され、流体圧型アクチュエータの低速側シリンダ室に方向切換えバルブ・ユニットの低速側出口が低速側配管により接続され、流体圧型アクチュエータの高速側シリンダ室に方向切換えバルブ・ユニットの高速側出口が高速側配管により接続される。また高速側レンジから低速側レンジにレンジ・シフトされるギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーのスピード・ゲート・ポジションに相当する軸方向のセレクト・ポジションで、メイン・ギヤ・ボックスのセレクト・アンド・シフト・シャフトに流体圧型レバー・ロックが配置される。また流体圧型レバー・ロックがレバー・ロック配管により流体圧源に接続され、レバー・ロック配管に流体圧回路ロック・バルブが配置される。更に低速側レンジと高速側レンジとの間にレンジ・シフトされるギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーのスピード・ゲート・ポジションに相当する軸方向のセレクト・ポジションにおいて、デイテント・デバイスがメイン・ギヤ・ボックスのセレクト・アンド・シフト・シャフトに配置される。
【0003】
このように構成されたトランスミッションに使用される変速機構では、トランスミッションを第4速から第5速に操作する場合、低速側レンジから高速側レンジにレンジ・シフトされて行なわれる。具体的には、ギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーによってセレクト・アンド・シフト・シャフトをシフトすると、方向切換えバルブ・ユニットが、低速側及び高速側レンジ切換えカムによって、流体圧源を高速側出口に連絡しかつ低速側出口を流体圧源から遮断して排気口に連絡するように切換えられる。これによりエア・シリンダの高速側シリンダ室に圧縮空気が供給され、エア・シリンダの低速側シリンダ室内の圧縮空気が大気中に排出されるので、オーギジリアリ・ギヤ・ボックスのギヤ・シフト・フォークは高速側レンジにシフトされる。このときオーギジリアリ・ギヤ・ボックスがレンジ・シフト過渡期において、デイテント・デバイスによって抑止力が加えられ、その抑止力が急激な立上がりを示す比較的強い力で、ギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーによって感じられるので、オーギジリアリ・ギヤ・ボックスが低速側レンジから高速側レンジに確実にレンジ・シフトされたことを確認できる。そして、メイン・ギヤ・ボックスはギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーによって、第5速に変速操作される。
【0004】
一方、トランスミッションを第5速から第4速に操作する場合、高速側レンジから低速側レンジにレンジ・シフトされて行われる。具体的には、ギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーによってセレクト・アンド・シフト・シャフトをシフトすると、方向切換えバルブ・ユニットが、低速側及び高速側レンジ切換えカムによって、流体圧源を低速側出口に連絡しかつ高速側出口を流体圧源から遮断して排気口に連絡するように切換えられる。これによりエア・シリンダの低速側シリンダ室に圧縮空気が供給され、エア・シリンダの高速側シリンダ室内の圧縮空気が大気中に排出されるので、オーギジリアリ・ギヤ・ボックスのギヤ・シフト・フォークは低速側レンジにシフトされる。このときオーギジリアリ・ギヤ・ボックスがレンジ・シフト過渡期において、デイテント・デバイスによって抑止力が加えられ、その抑止力が急激な立上がりを示す比較的強い力で、ギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーによって感じられるので、オーギジリアリ・ギヤ・ボックスが高速側レンジから低速側レンジに確実にレンジ・シフトされたことを確認できる。そして、メイン・ギヤ・ボックスはギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーによって、第4速に変速操作される。
【特許文献1】特開昭59−180143号公報(請求項2、明細書第9頁左下欄第4行〜第10頁左上欄第20行、明細書第10頁右上欄第12行〜同頁左下欄第12行、第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の特許文献1に示された変速機機構では、ギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーを第4速から第5速に変速すべく或いは第5速から第4速に変速すべくニュートラル位置に切換えた瞬間、低速側及び高速側レンジ切換えカムがギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーの位置を機械的に検出するため、レンジの切換え方向とは逆向きに圧縮空気がエア・シリンダに供給され、その後、低速側及び高速側レンジ切換えカムが切換わったときに、レンジの切換え方向に圧縮空気がエア・シリンダに供給されるため、レンジの切換えをギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーの操作に対応して素早く切換えることができない不具合があった。即ち、従来の特許文献1に示された変速機機構では、レンジの切換えを含むギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーの操作時に、エア・シリンダに背圧が作用するため、ギヤ・セレクト・アンド・シフト・レバーの切換スピードを阻害する問題点があった。本発明の目的は、副変速機の切換えを伴う変速時に、操作レバーの操作に対応して副変速機を素早く切換えることができる、レンジ式多段変速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、図1〜図3及び図12に示すように、主変速機11と、この主変速機11への入力又は主変速機11からの出力の回転速度を少なくとも高速又は低速の2段階に変速して伝達する副変速機13と、主変速機11の変速ギヤ41〜46の周囲に円周方向に間隔をあけて主変速機11の主軸17に平行に設けられ主シフトフォーク61〜63がそれぞれ取付けられた複数のギヤシフト軸51〜53と、ギヤシフト軸51〜53に対して立体交差するセレクトシフト軸66に嵌合されたセレクトシフトレバー67と、副変速機13の変速ギヤ84を切換えるための副シフトフォーク86eを駆動装置89により駆動して副変速機13を高速側又は低速側に切換える切換手段88とを備えたレンジ式多段変速機の改良である。その特徴ある構成は、切換手段88が、セレクトシフトレバー67の軸方向への変位を検出するセレクトセンサ94と、セレクトセンサ94の検出出力に基づいて駆動装置89を制御するコントローラ97とを備えたところにある。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、図1〜図3に示すように、セレクトシフトレバー67の外周面にセレクト凸部67d又はセレクト凹部が形成され、セレクトセンサ94がセレクトシフトレバー67の軸方向に並んで設けられセレクトシフトレバー67の軸方向への移動によりセレクト凸部67d又はセレクト凹部に係合又は離脱する第1及び第2セレクト検出部94a,94bを有することを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、図1〜図3に示すように、副シフトフォーク86eが取付けられたレンジロッド87がその軸方向に駆動装置89により駆動され、レンジロッド87の外周面にレンジ凹部87a又はレンジ凸部が形成され、レンジセンサ93がレンジロッド87の軸方向に並んで設けられレンジロッド87の軸方向への移動によりレンジ凹部87a又はレンジ凸部に係合又は離脱する第1及び第2レンジ検出部93a,93bを有することを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に係る発明であって、図1〜図3に示すように、副変速機13が切換わる直前の変速段位置にセレクトシフトレバー67が位置する状態から、副変速機13の切換わった後の変速段位置方向にセレクトシフトレバー67が移動したことをセレクトセンサ94が検出した場合に、コントローラ98がセレクトシフトレバー67の変位に基づき駆動装置89を駆動するように構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4いずれか1項に係る発明であって、図1〜図3に示すように、セレクトセンサ94の第1又は第2セレクト検出部94a,94bのいずれか一方がオンしかつ他方がオフしている状態から、第1及び第2セレクト検出部94a,94bの双方がオンとなったとき或いは第1及び第2セレクト検出部94a,94bの双方がオフとなったときに、コントローラ97が副変速機13の切換え時変位として認識するように構成されたことを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5いずれか1項に係る発明であって、図1及び図2に示すように、駆動装置89が流体圧シリンダであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、副変速機の低速側から高速側への切換えを伴う変速操作を行う場合、主変速機をニュートラル位置に切換えて、セレクトセンサがセレクトシフトレバーの軸方向への変位を電気的に検出すると、コントローラは駆動装置により副シフトフォークを駆動して副変速機を低速側から高速側に切換える。一方、副変速機の高速側から低速側への切換えを伴う変速操作を行う場合、主変速機をニュートラル位置に切換えて、セレクトセンサがセレクトシフトレバーの軸方向への変位を電気的に検出すると、コントローラは駆動装置により副シフトフォークを駆動して副変速機を高速側から低速側に切換える。この結果、主変速機をニュートラル位置に切換えた瞬間、副変速機を高速側から低速側に逆向きに切換えることがないので、副変速機の切換えを伴う変速時に、操作レバーの操作に対応して副変速機を素早く切換えることができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、副変速機の低速側から高速側への切換えを伴う変速操作を行う場合、主変速機をニュートラル位置に切換えて、セレクトセンサが第1及び第2セレクト検出部のセレクト凸部又はセレクト凹部への係合の変化によりセレクトシフトレバーの軸方向への変位を電気的に検出すると、コントローラは駆動装置により副シフトフォークを駆動して副変速機を低速側から高速側に切換える。一方、副変速機の高速側から低速側への切換えを伴う変速操作を行う場合、主変速機をニュートラル位置に切換えて、セレクトセンサが第1及び第2セレクト検出部のセレクト凸部又はセレクト凹部への係合の変化によりセレクトシフト軸の軸方向への変位を電気的に検出すると、コントローラは駆動装置により副シフトフォークを駆動して副変速機を高速側から低速側に切換える。この結果、上記と同様に、主変速機をニュートラル位置に切換えた瞬間、副変速機を高速側から低速側に逆向きに切換えることがないので、副変速機の切換えを伴う変速時に、操作レバーの操作に対応して副変速機を素早く切換えることができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、副変速機の低速側から高速側への切換えを伴う変速操作を行う場合、主変速機をニュートラル位置に切換えて、セレクトセンサが第1及び第2セレクト検出部のセレクト凸部又はセレクト凹部への係合の変化によりセレクトシフトレバーの軸方向への変位を電気的に検出すると、コントローラは駆動装置により副シフトフォークを駆動して副変速機を低速側から高速側に切換え、レンジセンサがこの切換えの完了を第1及び第2レンジ検出部のレンジ凹部又はレンジ凸部への係合の変化により電気的に検出すると、コントローラは駆動装置を停止させる。一方、副変速機の高速側から低速側への切換えを伴う変速操作を行う場合、主変速機をニュートラル位置に切換えて、セレクトセンサが第1及び第2セレクト検出部のセレクト凸部又はセレクト凹部への係合の変化によりセレクトシフト軸の軸方向への変位を電気的に検出すると、コントローラは駆動装置により副シフトフォークを駆動して副変速機を高速側から低速側に切換え、レンジセンサがこの切換えの完了を第1及び第2レンジ検出部のレンジ凹部又はレンジ凸部への係合の変化により電気的に検出すると、コントローラは駆動装置を停止させる。主変速機をニュートラル位置に切換えた瞬間、副変速機を高速側から低速側に逆向きに切換えることがないので、副変速機の切換えを伴う変速時に、操作レバーの操作に対応して副変速機を更に素早く切換えることができる。
【0014】
請求項4に係る発明では、副変速機が切換わる直前の変速段位置にセレクトシフトレバーが位置する状態から、副変速機の切換わった後の変速段位置方向にセレクトシフトレバーが移動したことをセレクトセンサが検出した場合に、コントローラがセレクトシフトレバーの変位に基づき駆動装置を駆動するので、副変速機の切換えを伴う変速時に、操作レバーの操作に対応して副変速機を確実にかつ素早く切換えることができる。
【0015】
請求項5に係る発明では、セレクトセンサの第1又は第2セレクト検出部のいずれか一方がオンしかつ他方がオフしている状態から、第1及び第2セレクト検出部の双方がオンとなったとき或いは第1及び第2セレクト検出部の双方がオフとなったときに、コントローラが副変速機の切換え時変位として認識するので、副変速機を高速側から低速側に逆向きに切換えることを確実に防止できる。この結果、副変速機の切換えを伴う変速時に、操作レバーの操作に対応して副変速機を更に確実にかつ素早く切換えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図12に示すように、トラックに搭載されたレンジ式変速機10は、主変速機11のクラッチ12とは反対側の面に設けられた副変速機13により、主変速機11の変速段数の2倍の段数で変速可能に構成された多段変速装置である。主変速機11は前進5速段と後進1速段とに変速可能に構成され、副変速機13は高速又は低速の2速段に変速可能に構成される。これによりレンジ式変速機10は前進9速段と後進1速段とに変速できるようになっている。クラッチケース12aには入力軸14が第1軸受21を介して回転可能に挿入され、主変速ケース16には主軸17が第2及び第3軸受22,23を介して回転可能に挿入され、更に副変速ケース18には出力軸19が第4及び第5軸受24,25を介して回転可能に挿入される。入力軸14の前端は図示しないがクラッチを介してクランク軸に接続される。主軸17の前端は入力軸14の後端に遊挿されて第2軸受22により保持され、出力軸19の前端は主軸17の後端に遊嵌されて第4軸受24により保持される。これにより主軸17は入力軸14に対して、出力軸19は主軸17に対してそれぞれ相対回転可能に構成される。また主変速ケース16には上記主軸17に平行にカウンタ軸33が第6及び第7軸受26,27を介して回転可能に挿入される。
【0017】
一方、主変速機11の第1〜第5変速ギヤ41〜45及びバック用変速ギヤ46の上方には、第1〜第3ギヤシフト軸51〜53が第1〜第5変速ギヤ41〜45及びバック用変速ギヤ46の周囲に円周方向に間隔をあけかつ主軸17に平行にそれぞれ設けられる(図1、図3、図7及び図12)。これらのギヤシフト軸51〜53は右側から第1ギヤシフト軸51、第2ギヤシフト軸52及び第3ギヤシフト軸53の順に配設され(図1、図3及び図7)、第1〜第3ギヤシフト軸51〜53には第1〜第3主シフトフォーク61〜63がそれぞれ嵌着される(図1及び図12)。また第1〜第3ギヤシフト軸51〜53の上方には、これらのギヤシフト軸51〜53に対して直角に立体交差するセレクトシフト軸66が設けられ、このセレクトシフト軸66にはセレクトシフトレバー67が取付けられる(図1、図3及び図7)。セレクトシフトレバー67はセレクトシフト軸66に対して回動不能であって軸方向に相対移動可能に図示しないセレーション又はスプラインにより嵌合される。またセレクトシフトレバー67は、セレクトシフト軸66の所定の位置に嵌入された筒状の筒部67aと、この筒部67aから軸方向に間隔をあけて垂下された第1及び第2レバー部67b,67cとを有する。これらのレバー部67b,67cの先端部は第1ギヤシフト軸51と第3ギヤシフト軸53との間に進入するように構成される。更にセレクトシフト軸66の端部にはパワーシフト手段(図示せず)が接続され、このパワーシフト手段はパワーシフト用電磁弁(図示せず)で圧縮エアの給排を切換えてパワーシフト用ピストン(図示せず)を駆動することにより、セレクトシフト軸66及びセレクトシフトレバー67の回動を支援するようになっている。なお、セレクトシフト軸はギヤシフト軸に対して立体交差すれば、直角でない角度で立体交差してもよい。
【0018】
一方、第1〜第3ギヤシフト軸51〜53には第1〜第5係合片71〜75及びバック用係合片76がそれぞれ取付けられ、これらの係合片71〜76は全て第1ギヤシフト軸51から第3ギヤシフト軸53の間に配設される(図1,図3、図7及び図12)。即ち、第1〜第5係合片71〜75及びバック用係合片76は、ギヤシフト軸51〜53の軸方向に間隔をあけて2列であって、セレクトシフト軸66の軸方向に間隔をあけて3列に配設される。バック用係合片76及び第1係合片71は第1ギヤシフト軸51に取付けられ、第2及び第3係合片72,73は第2ギヤシフト軸52に取付けられ、第4及び第5係合片74,75は第3ギヤシフト軸53に取付けられる。具体的には、バック用係合片76及び第1係合片71は、第1ギヤシフト軸51に嵌着された第1ボス部81に設けられ、第1ギヤシフト軸51の軸方向に間隔をあけかつセレクトシフト軸66に向ってそれぞれ突出するように構成される。また第2及び第3係合片72,73は、第2ギヤシフト軸52に嵌着された第2ボス部82に設けられ、第2ギヤシフト軸52の軸方向に間隔をあけかつバック用係合片76及び第1係合片71から比較的広い間隔をあけて隣接しセレクトシフト軸66に向ってそれぞれ突出するように構成される。また第4及び第5係合片74,75は第3ギヤシフト軸53に嵌着された第3ボス部83に設けられ、第3ギヤシフト軸53の軸方向に間隔をあけかつ第2及び第3係合片72,73から比較的狭い間隔をあけてそれぞれ隣接しセレクトシフト軸66に向ってそれぞれ突出するように構成される。
【0019】
即ち、バック用係合片76と第2係合片72と第4係合片74がセレクトシフト軸66の軸方向に並んで設けられ、第1係合片71と第3係合片73と第5係合片75がセレクトシフト軸66の軸方向に並んで設けられる(図1、図3、図7、図10及び図11)。またバック用係合片76及び第1係合片71の間隔と、第2及び第3係合片72,73の間隔と、第4及び第5係合片74,75の間隔は、セレクトシフトレバー67の第1及び第2レバー部67b,67cの先端部をそれぞれ遊挿できる間隔であり、セレクトシフトレバー67がセレクトシフト軸66の軸方向に移動して第1及び第2レバー部67b,67cの先端部が第1〜第5係合片71〜75及びバック用係合片76に選択的に係合するように構成される。
【0020】
一方、副変速機13は遊星歯車機構84と副シンクロ機構86とを備える(図12)。遊星歯車機構84は、主軸17の後端部に嵌着された太陽歯車84aと、出力軸19に回転可能に嵌入された大径の略椀状の内部ケース84bと、内部ケース84bの大径部の内面に挿着された大径の内歯歯車84cと、出力軸19の前端部に設けられた略円板状の保持部84dと、この保持部84dに円周方向に間隔をあけて突設された複数のピン84eにそれぞれ回転可能に嵌入された複数の遊星歯車84fとを有する。また副シンクロ機構86は、内部ケース84bの小径部に嵌着され外周面に外スプラインが形成されたクラッチハブ86aと、出力軸19に固着され外周面に上記ハブ86aの外スプラインと同一の外スプラインが形成された高速側クラッチギヤ86bと、副変速ケース18に固着され上記ハブ86aの外スプラインと同一の外スプラインが形成された低速側クラッチギヤ86cと、上記ハブ86aの外スプラインに噛合する内スプラインが形成され上記ハブ86aに主軸17の軸方向に移動可能にかつ上記ハブ86aに対して相対回転不能に遊嵌されたスリーブ86dと、このスリーブ86dを出力軸19の軸方向に移動させて上記スリーブ86dの内スプラインを低速側クラッチギヤ86c又は高速側クラッチギヤ86bの外スプラインに噛合可能な副シフトフォーク86eとを有する。
【0021】
上記遊星歯車機構84の周囲には出力軸19に平行に単一のレンジロッド87が設けられ、このレンジロッド87に上記副シフトフォーク86eが取付けられる。また副変速機13は切換手段88により高速側又は低速側に切換えられる(図1、図3及び図7)。この切換手段88は、レンジロッド87を副シフトフォーク86eとともに軸方向に駆動するエアシリンダ89と、このエアシリンダ89への圧縮エアの給排を切換える低速側及び高速側切換弁91,92とを有する。エアシリンダ89にはレンジロッド87に接続されたピストン89aが摺動可能に収容され、このピストン89aによりエアシリンダ89内が高圧室89bと低圧室89cに区画される。低速側及び高速側切換弁91,92は3ポート2位置切換えの電磁弁である。低速側切換弁91は、オンするとエアタンク90とエアシリンダ89の低圧室89bとを連通し、オフすると低圧室89bを大気に連通するように構成され、高速側切換弁92は、オンするとエアタンク90とエアシリンダ89の高圧室89cとを連通し、オフすると高圧室89cを大気に連通するように構成される。なお、この実施の形態では、レンジロッドを軸方向に駆動する駆動装置としてエアシリンダを挙げたが、油圧シリンダ又はその他の流体圧シリンダであってもよい。
【0022】
一方、セレクトシフトレバー67の筒部67aの上面の右側部分には略扇形のセレクト凸部67dが突設される。またセレクトシフトレバー67の筒部67aの上方には、この筒部67aの上面から所定の間隔をあけた上方であってセレクトシフトレバー67の長手方向に所定の間隔をあけて並んで主変速ケース16に固定された第1及び第2セレクト検出部94a,94bからなるセレクトセンサ94が設けられる。第1及び第2セレクト検出部94a,94bは、第1及び第2セレクト用ケース94c,94dと、これらのセレクト用ケース94c,94dから筒部67aの上面に向って突設された第1及び第2セレクト用プランジャ94e,94fとを有する。セレクトシフトレバー67がセレクトシフト軸66の軸方向に各シフトフォークに対して相対移動することにより、セレクト用プランジャ94e,94fがセレクト凸部67dに対向したり或いは対向しないように構成される。セレクト用プランジャ94e,94fがセレクト凸部67dに対向しないとき、セレクト用プランジャ94e,94fはセレクト用ケース94c,94dから突出してセレクト検出部94a,94bはオフとなり、セレクト用プランジャ94e,94fがセレクト凸部67dに対向するとき、セレクト用プランジャ94e,94fはセレクト凸部67dで押されることによりセレクト用ケース94c,94d内に引込んでセレクト用検出部94a,94bはオンとなるように構成される。なお、この実施の形態では、セレクトシフトレバーにセレクト凸部を形成したが、セレクトセンサの動作に支障がなければセレクト凹部を形成してもよい。
【0023】
セレクト凸部67dの軸方向の位置及び長さと、第1及び第2セレクト検出部94a,94bの軸方向の位置と、第1及び第2セレクト検出部94a,94bの間隔は、次の低速レンジ位置とレンジ切換位置と高速レンジ位置がそれぞれ存在するように設定される。低速レンジ位置とは、セレクトシフトレバー67がセレクトシフト軸66の軸方向に各シフトフォークに対して相対移動して、第2レバー部67cが第1係合片71及びバック用係合片76間に位置する状態(図10(a)及び図10(b))から第1レバー67bが第4係合片74及び第5係合片75間に位置する状態(図11(c)及び図11(d))まで、或いは第1レバー67bが第4係合片74及び第5係合片75間に位置する状態(図11(c)及び図11(d))から第2レバー部67cが第1係合片71及びバック用係合片76間に位置する状態(図10(a)及び図10(b))まで、第1セレクト検出部94aがオフしかつ第2セレクト検出部94bがオンするように保たれる位置(図2(a)及び図7(c))をいう。またレンジ切換位置とは、セレクトシフトレバー67がセレクトシフト軸66の軸方向に各シフトフォークに対して相対移動して、第1レバー部67bが第4係合片74及び第5係合片75間に位置する状態(図11(c)及び図11(d))から第2レバー67cが第2係合片72及び第3係合片73間に位置する状態(図11(e)及び図11(f))までの間に、或いは第2レバー67cが第2係合片72及び第3係合片73間に位置する状態(図11(e)及び図11(f))から第1レバー部67bが第4係合片74及び第5係合片75間に位置する状態(図11(c)及び図11(d))までの間に、第1セレクト検出部94aがオンしかつ第2セレクト検出部94bがオンする位置(図2(b)及び図7(b))をいう。更に高速レンジ位置とは、セレクトシフトレバー67がセレクトシフト軸66の軸方向に各シフトフォークに対して相対移動して、第2レバー部67cが第2係合片72及び第3係合片73間に位置する状態(図11(e)及び図11(f))から第2レバー67cが第4係合片74及び第5係合片75間に位置する状態(図11(g)及び図11(h))まで、或いは第2レバー67cが第4係合片74及び第5係合片75間に位置する状態(図11(g)及び図11(h))から第2レバー部67cが第2係合片72及び第3係合片73間に位置する状態(図11(e)及び図11(f))まで、第1セレクト検出部94aがオンしかつ第2セレクト検出部94bがオフするように保たれる位置(図2(c)及び図7(a))をいう。
【0024】
一方、図1、図2及び図6に詳しく示すように、レンジロッド87とセレクトシフト軸66は立体交差するように構成され、レンジロッド87の長手方向中央の外周面にはレンジ凹部87aが形成される。またレンジロッド87の上方には、このレンジロッド87の上面から所定の間隔をあけた上方であってレンジロッド87の長手方向に並んで副変速ケース18に固定された第1及び第2レンジ検出部93a,93bからなるレンジセンサ93が設けられる。第1及び第2レンジ検出部93a,93bは、第1及び第2レンジ用ケース93c,93dと、これらのレンジ用ケース93c,93dからレンジロッド87の側面に向って突設された第1及び第2レンジ用プランジャ93e,93fとを有する。レンジロッド87が軸方向に移動することにより、レンジ用プランジャ93e,93fがレンジ凹部87aに対向したり或いは対向しないように構成される。レンジ用プランジャ93e,93fがレンジ凹部87aに対向しないとき、レンジ用プランジャ93e,93fはレンジロッド87外周面で押されることによりレンジ用ケース93c,93d内に引込んでレンジ検出部93a,93bはオンとなり、レンジ用プランジャ93e,93fがレンジ凹部87aに対向するとき、レンジ用プランジャ93e,93fはレンジ用ケース93c,93dからレンジ凹部87aに突出してレンジ用検出部93a,93bはオフとなるように構成される。なお、この実施の形態では、レンジロッドにレンジ凹部を形成したが、レンジ凸部を形成してもよい。
【0025】
トラックの運転席には、運転者が変速機10を前進9速段位置又は後進位置に切換えるために操作する操作レバー(図示せず)が設けられ、この操作レバーには、このレバーがニュートラル位置に位置したときにオンするニュートラルスイッチ96が設けられる。ニュートラルスイッチ96、第1セレクト検出部94a、第2セレクト検出部94b、第1レンジ検出部93a及び第2レンジ検出部93bの各検出出力はコントローラ97に制御入力に接続され、コントローラ97の制御出力は低速側切換弁91、高速側切換弁92及びパワーシフト用電磁弁に接続される。コントローラ98は、副変速機13が切換わる直前の変速段位置にセレクトシフトレバー67が位置する状態から、副変速機13の切換わった後の変速段位置方向にセレクトシフトレバー67が移動したことをセレクトセンサ94が検出した場合に、セレクトセンサ94の検出したセレクトシフトレバー67の変位に基づき駆動装置89を駆動するように構成される。即ち、コントローラ98は、セレクトセンサ94の第1又は第2セレクト検出部94a,94bのいずれか一方がオンしかつ他方がオフしている状態から、第1及び第2セレクト検出部94a,94bの双方がオンとなったときに、副変速機13の切換え時変位として認識するように構成される。なお、コントローラは、セレクトセンサの第1又は第2セレクト検出部のいずれか一方がオンしかつ他方がオフしている状態から、第1及び第2セレクト検出部の双方がオフとなったときに、副変速機の切換え時変位として認識するように構成してもよい。
【0026】
運転者が操作レバーを低速側の第1速段位置から第5速段位置の間で又は後進位置に操作している場合、図2(a)、図6(c)及び図12に示すように、副シンクロ機構86のスリーブ86dがクラッチハブ86aと低速側クラッチギヤ86cとを接続した状態に保たれ、内部ケース84b及び内歯歯車84cが副変速ケース18に固定されているので、主軸17の回転速度が所定の減速比(Z1/(Z1+Z2)、Z1:太陽歯車84aの歯数、Z2:内歯歯車84cの歯数)で減速されて出力軸19に伝達されるように構成される。また運転者が操作レバーを第6速段位置から第9速段位置の間で操作している場合、図2(c)及び図6(a)に示すように、副シンクロ機構86のスリーブ86dがクラッチハブ86aと高速側クラッチギヤ86bとを接続した状態に保たれ、内部ケース84b及び出力軸19が互いに固定されて同一の回転速度で回転するので、主軸17の回転速度が同一に保たれたまま出力軸19に伝達されるように構成される。
【0027】
図12に戻って、主変速機11は主軸17に回転可能に嵌入された第1〜第4変速ギヤ41〜44及びバック用変速ギヤ46と、主軸11の後端に固着された第5変速ギヤ45と、カウンタ軸33に固着された第1〜第5カウンタギヤ101〜105及びバック用カウンタギヤ106と、第1変速ギヤ41及びバック用変速ギヤ46間に設けられた第1シンクロ機構111と、第2変速ギヤ42及び第3変速ギヤ43間に設けられた第2シンクロ機構112と、第4変速ギヤ44及び第5変速ギヤ45間に設けられた第3シンクロ機構113とを有する。第1〜第4変速ギヤ41〜44は第8〜第11軸受28〜31を介して、バック用変速ギヤ46は第12軸受32を介してそれぞれ主軸17に回転可能に嵌入される。第1〜第5変速ギヤ41〜45は第1〜第5カウンタギヤ101〜105にそれぞれ噛合し、バック用変速ギヤ46とバック用カウンタギヤ106とはアイドル軸に固着されたアイドルギヤ(図示せず)を介して噛合するように構成される。また第1〜第3シンクロ機構111〜113は略同一に構成されるので、第1シンクロ機構111を代表して説明し、第2及び第3シンクロ機構112,113の説明は省略する。第1シンクロ機構111は、主軸17の後部に嵌着され外周面に外スプラインが形成された第1クラッチハブ111aと、第1変速ギヤ41に固着され外周面に上記ハブ111aの外スプラインと同一の外スプラインが形成された第1クラッチギヤ111bと、バック用変速ギヤ46に固着され上記ハブ111aの外スプラインと同一の外スプラインが形成されたバック用クラッチギヤ111cと、上記ハブ111aの外スプラインに噛合する内スプラインが形成され上記ハブ111aに主軸17の軸方向に移動可能にかつ上記ハブ111aに対して相対回転不能に遊嵌された第1スリーブ111dと、この第1スリーブ111dを主軸17の軸方向に移動させて上記第スリーブ111dの内スプラインを第1クラッチギヤ111b又はバック用クラッチギヤ111cの外スプラインに噛合可能な第1主シフトフォーク61とを有する。第1クラッチハブ111aと第1クラッチギヤ111bとの間や、第1クラッチハブ111aとバック用クラッチギヤ111cとの間には、第1スリーブ111dと第1クラッチギヤ111b又はバック用クラッチギヤ111cとの噛合をスムーズに行うための、公知のシンクロナイザリング(図示せず)がそれぞれ設けられる。
【0028】
このように構成されたレンジ式変速機10の動作を説明する。トラックが第1速段〜第5速段のいずれかで走行しているとき、ニュートラルスイッチ96がオフし、第1セレクト検出部94aがオフし、第2セレクト検出部94bがオンし、第1レンジ検出部93aがオフし、更に第2レンジ検出部93bがオンしている(図2(a)及び図3(a))。また副変速機13は、図2(a)及び図12に示すように、副シンクロ機構86のスリーブ86dがクラッチハブ86aと低速側クラッチギヤ86cとを接続した状態に保たれ、内部ケース84b及び内歯歯車84cが副変速ケース18に固定されているので、主軸17の回転速度が所定の減速比で減速されて出力軸19に伝達されている。
【0029】
この状態から高速側の第6速段〜第9速段、例えば第6速段にシフトアップするために操作レバーをニュートラル位置に操作すると、ニュートラルスイッチがオンする。そしてセレクトシフトレバーがレンジ切換位置を通過する。即ち、セレクトシフトレバー67がセレクトシフト軸66の軸方向に各シフトフォークに対して相対移動して、第1レバー部67bが第4係合片74及び第5係合片75間に位置する状態(図11(c)及び図11(d))から第2レバー67cが第2係合片72及び第3係合片73間に位置する状態(図11(e)及び図11(f))までの間に、第1セレクト検出部94aがオンしかつ第2セレクト検出部94bがオンする位置(図3(b))を通過する。このレンジ切換位置を通過すると、コントローラ97は高速側切換弁92をオンし、パワーシフト用電磁弁をオフにする。これによりエアシリンダ89の高圧室89bにエアタンク90内の圧縮エアが流入して、レンジロッド87が図2(a)の実線矢印の方向に移動して図2(b)の位置に至り、第1及び第2レンジ検出部93a,93bがそれぞれオフし、更にレンジロッド87が図2(b)の実線矢印の方向に移動して図2(c)の位置に至り、第1及び第2レンジ検出部93a,93bがそれぞれオンする。この状態で副シンクロ機構86のスリーブ86dがクラッチハブ86aと高速側クラッチギヤ86bとを接続し、内部ケース84b及び出力軸19が互いに固定されて同一の回転速度で回転するので、主軸17の回転速度が減速されずに同一の回転速度に保たれたまま出力軸19に伝達される。
【0030】
その後、セレクトシフトレバー67の第2レバー部67cが第2係合片72及び第3係合片73間に達すると、セレクトセンサ94の第2セレクト検出部94bがオフする。これによりコントローラ97は高速側切換弁92をオフするとともに、パワーシフト用電磁弁をオンする。この結果、エアシリンダ89の高圧室89b内の圧縮エアが大気中に排出され、運転者の第6速段への操作がパワーシフト手段により支援されるので、運転者は操作レバーを小さな力で容易に操作できる。なお、この実施の形態では、第2セレクト検出部94bがオフしたときに(図3(c))コントローラ97が副変速機13の切換え完了を判断して、高速側切換弁92をオフしているが、第1及び第2レンジ検出部93a,93bの双方がオンしたときに(図2(c))コントローラ97が副変速機13の切換え完了を判断して、高速側切換弁91をオフしてもよい。また、図13に示すように、レンジ凹部87a(図2、図6)の代わりに、第1レンジ検出部93aに対して第1レンジ凹部187bを形成し、第2レンジ検出部93bに対して2つの第2レンジ凹部187c及び第3レンジ凹部187dを形成してもよい。いずれの場合も、第1レンジ検出部93aは副変速機13が高速側に切換わっているか又は低速側に切換わっているかを検出し、第2レンジ検出部93bは副変速機13が切換え中であるか又は切換え完了しているかを検出する。更に、図13において、第3レンジ凹部187cがエアシリンダ89の高圧室89bに進入するけれども、エアシリンダ89内の圧縮エアは二重シールにより漏洩しないようになっている。
【0031】
一方、トラックが第6速段〜第9速段のいずれかで走行しているとき、ニュートラルスイッチがオフし、第1セレクト検出部94aがオンし、第2セレクト検出部94bがオンし、第1レンジ検出部93aがオンし、更に第2レンジ検出部93bがオフしている(図6(a)及び図7(a))。また副変速機13は、図6(a)に示すように、副シンクロ機構86のスリーブ86dがクラッチハブ86aと高速側クラッチギヤ86bとを接続した状態に保たれ、内部ケース84b及び出力軸19が互いに固定されて同一の回転速度で回転しているので、主軸17の回転速度が減速されずに同一の回転速度に保たれたまま出力軸19に伝達されている。
【0032】
この状態から低速側の第1速段〜第5速段、例えば第5速段にシフトダウンするために操作レバーをニュートラル位置に操作すると、ニュートラルスイッチ96がオンする。そしてセレクトシフトレバー67がレンジ切換位置を通過する。即ち、セレクトシフトレバー67がセレクトシフト軸66の軸方向に各シフトフォークに対して相対移動して、第2レバー67cが第2係合片72及び第3係合片73間に位置する状態(図11(e)及び図11(f))から第1レバー部67bが第4係合片74及び第5係合片75間に位置する状態(図11(c)及び図11(d))までの間に、第1セレクト検出部94aがオンしかつ第2セレクト検出部94bがオンする位置(図7(b))を通過する。このレンジ切換位置を通過すると、コントローラ97は低速側切換弁91をオンし、パワーシフト用電磁弁をオフにする。これによりエアシリンダ89の低圧室89cにエアタンク90内の圧縮エアが流入して、レンジロッド87が図6(a)の実線矢印の方向に移動して図6(b)の位置に至り、第1及び第2レンジ検出部93a,93bがそれぞれオフし、更にレンジロッド87が図6(b)の実線矢印の方向に移動して図6(c)の位置に至り、第1及び第2レンジ検出部93a,93bがそれぞれオンする。これにより副シンクロ機構86のスリーブ86dがクラッチハブ86aと低速側クラッチギヤ86cとを接続し、内部ケース84b及び内歯歯車84cが副変速ケース18に固定されるので、主軸17の回転速度が所定の減速比で減速されて出力軸19に伝達される。
【0033】
その後、セレクトシフトレバー67の第1レバー部67bが第4係合片74及び第5係合片75間に達すると、セレクトセンサ94の第1セレクト検出部94aがオフする。これによりコントローラ97は低速側切換弁91をオフするとともに、パワーシフト用電磁弁をオンする。この結果、エアシリンダ89の低圧室89c内の圧縮エアが大気中に排出され、運転者の第5速段への操作がパワーシフト手段により支援されるので、運転者は操作レバーを小さな力で容易に操作できる。このように副変速機13の切換えを伴う変速時に、操作レバーの操作に対応して副変速機13が素早く切換えられるので、レンジ式変速機10を速やかに変速できる。
【0034】
なお、上記実施の形態では、本発明のレンジ式変速機を搭載した車両としてトラックを挙げたが、バス又はその他の車両でもよい。また、上記実施の形態では、セレクトシフトレバーにレバー部を2つ設けたが、セレクトシフトレバーにレバー部を1つ設けてもよい。この場合、前進9段後進1段とすると、係合片を10個(2列×5個)設ける必要がある。また、上記実施の形態では、流体圧シリンダとしてエアシリンダを挙げたが、油圧シリンダを用いてもよい。また、上記実施の形態では、副変速機を主変速機のクラッチ取付面とは反対側の面に設けたが、副変速機をクラッチと主変速機との間に設けてもよい。この場合、副変速機はエンジンのクランク軸の回転速度を高速又は低速の2段階に変速して主軸に伝達するように構成される。また、上記実施の形態では、副変速機を遊星歯車機構と副シンクロ機構とにより構成したが、カウンタ軸を後方に延びて設け、このカウンタ軸の後部と出力軸にそれぞれ歯車を取付けて所定の減速比を得る歯車機構と副シンクロ機構とにより構成してもよい。更に、上記実施の形態では、変速機を前進9速段及び後進1速段に変速可能に構成したが、変速機を前進13速段及び後進1速段に変速可能に構成したり、変速機を前進8速段及び後進2速段に構成したり、或いは変速機を前進12速段及び後進2速段に構成してもよく、更にギヤシフト軸を5本設けて変速機を前進16速段及び後進2速段に構成したり、或いはギヤシフト軸を6本以上設けて変速機の段数を更に増やしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明実施形態のレンジ式多段変速機を示す要部斜視図である。
【図2】その変速機のレンジロッドが低速側から高速側に切換わるときのレンジセンサの動きを示す図1のA−A線断面図である。
【図3】その変速機のセレクトシフト軸を低速側から高速側に切換えるときのセレクトセンサの動きを示す図1のB−B線断面図である。
【図4】その変速機が低速側から高速側に切換わるときの前半の動作を示すフローチャートである。
【図5】その変速機が低速側から高速側に切換わるときの後半の動作を示すフローチャートである。
【図6】その変速機のレンジロッドが高速側から低速側に切換わるときのレンジセンサの動きを示す図2に対応する断面図である。
【図7】その変速機のセレクトシフト軸を高速側から低速側に切換えるときのセレクトセンサの動きを示す図3に対応する断面図である。
【図8】その変速機が高速側から低速側に切換わるときの前半の動作を示すフローチャートである。
【図9】その変速機が高速側から低速側に切換わるときの後半の動作を示すフローチャートである。
【図10】(a)は第1セレクトシフトレバーがバック用係合片及び第1係合片の間の第1凹部に位置した状態を示す模式図であり、(b)は第1ギヤシフト軸をその軸方向に移動させて、変速ギヤを第1速段にシフトした状態を示す模式図である。
【図11】第1又は第2セレクトシフトレバーを第2〜第5係合片に係合させて、変速ギヤを第2速段〜第9速段まで順にシフトする手順を示す模式図である。
【図12】主変速機及び副変速機の縦断面構成図である。
【図13】本発明の別の実施形態の変速機のレンジロッドが低速側から高速側に切換わるときのレンジセンサの動きを示す図3に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 レンジ式変速機
11 主変速機
13 副変速機
17 主軸
41〜46 変速ギヤ
51〜53 ギヤシフト軸
61〜63 主シフトフォーク
66 セレクトシフト軸
67 セレクトシフトレバー
67d セレクト凸部
84 遊星歯車機構(変速ギヤ)
86e 副シフトフォーク
87,187 レンジロッド
87a,187a,187b,187c レンジ凹部
88 切換手段
89 エアシリンダ(駆動装置)
93 レンジセンサ
93a 第1レンジ検出部
93b 第2レンジ検出部
94 セレクトセンサ
94a 第1セレクト検出部
94b 第2セレクト検出部
97 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主変速機(11)と、前記主変速機(11)への入力又は前記主変速機(11)からの出力の回転速度を少なくとも高速又は低速の2段階に変速して伝達する副変速機(13)と、前記主変速機(11)の変速ギヤ(41〜46)の周囲に円周方向に間隔をあけて前記主変速機(11)の主軸(17)に平行に設けられ主シフトフォーク(61〜63)がそれぞれ取付けられた複数のギヤシフト軸(51〜53)と、前記ギヤシフト軸(51〜53)に対して立体交差するセレクトシフト軸(66)に嵌合されたセレクトシフトレバー(67)と、前記副変速機(13)の変速ギヤ(84)を切換えるための副シフトフォーク(86e)を駆動装置(89)により駆動して前記副変速機(13)を高速側又は低速側に切換える切換手段(88)とを備えたレンジ式多段変速機において、
前記切換手段(88)が、
前記セレクトシフトレバー(67)の軸方向への変位を検出するセレクトセンサ(94)と、
前記セレクトセンサ(94)の検出出力に基づいて前記駆動装置(89)を制御するコントローラ(97)と
を備えたことを特徴とするレンジ式多段変速機。
【請求項2】
セレクトシフトレバー(67)の外周面にセレクト凸部(67d)又はセレクト凹部が形成され、
セレクトセンサ(94)が前記セレクトシフトレバー(67)の軸方向に並んで設けられ前記セレクトシフトレバー(67)の軸方向への移動により前記セレクト凸部(67d)又はセレクト凹部に係合又は離脱する第1及び第2セレクト検出部(94a,94b)を有する請求項1記載のレンジ式多段変速機。
【請求項3】
副シフトフォーク(86e)が取付けられたレンジロッド(87)がその軸方向に駆動装置(89)により駆動され、
前記レンジロッド(87)の外周面にレンジ凹部(87a)又はレンジ凸部が形成され、
レンジセンサ(93)が前記レンジロッド(87)の軸方向に並んで設けられ前記レンジロッド(87)の軸方向への移動により前記レンジ凹部(87a)又はレンジ凸部に係合又は離脱する第1及び第2レンジ検出部(93a,93b)を有する請求項1又は2記載のレンジ式多段変速機。
【請求項4】
副変速機(13)が切換わる直前の変速段位置にセレクトシフトレバー(67)が位置する状態から、前記副変速機(13)の切換わった後の変速段位置方向に前記セレクトシフトレバー(67)が移動したことをセレクトセンサ(94)が検出した場合に、コントローラ(98)が前記セレクトシフトレバー(67)の変位に基づき駆動装置(89)を駆動するように構成された請求項1ないし3いずれか1項に記載のレンジ式多段変速機。
【請求項5】
セレクトセンサ(94)の第1又は第2セレクト検出部(94a,94b)のいずれか一方がオンしかつ他方がオフしている状態から、前記第1及び第2セレクト検出部(94a,94b)の双方がオンとなったとき或いは前記第1及び第2セレクト検出部(94a,94b)の双方がオフとなったときに、コントローラ(97)が副変速機(13)の切換え時変位として認識するように構成された請求項1ないし4いずれか1項に記載のレンジ式多段変速機。
【請求項6】
駆動装置(89)が流体圧シリンダである請求項1ないし5いずれか1項に記載のレンジ式多段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−19297(P2010−19297A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178676(P2008−178676)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】