説明

レンズシステム

【課題】 マクロ移動レンズ郡が前玉フォーカスレンズ群とズームレンズ群の像側に配置されている構成において、被写体がMODより至近に位置している場合に正常にAFできなかった。
【解決手段】 ズームレンズ群と、前記ズームレンズ群の位置を検出するズーム位置検出手段と、前記ズームレンズ群を制御するズーム制御手段と、第1のフォーカスレンズ群と、前記第1のフォーカス位置を検出する第1フォーカス位置検出手段と、前記第1のフォーカスレンズ群を制御する第1フォーカス制御手段と、第2のフォーカスレンズ群と、前記第2のフォーカス位置を検出する第2フォーカス位置検出手段と、前記第2のフォーカスレンズ群を制御する第2フォーカス制御手段と、焦点検出手段と、デフォーカス量算出手段を有するレンズ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出手段を有するオートフォーカスレンズシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラやビデオカメラ等の撮像装置におけるオートフォーカス(AF)技術として、様々な提案が成されている。例えば、結像光学系内の光路中に分岐手段を有し、分岐光束により合焦状態を検出しAF制御を行う位相差AFが提案されている。また、結像光学系内の光束とは別の外光による光束を用いる外測AFも提案されている。さらには、撮像素子から出力される映像信号を用いて焦点評価値を算出し、所謂山登り方式による映像AFが提案されている。
【0003】
また、マクロ撮影可能なズームレンズを備えたカメラやビデオカメラのAF技術において、非マクロ撮影時のAFに加え、マクロ撮影時も自動焦点調節可能なカメラは既に提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、被写体の目標合焦位置がマクロ域である場合に、ズームを微小量ワイド側にシフトしながらAFを実行するシステムが提案されている。また、特許文献2では、外測センサによるAFと映像信号によるAFを用い、外測センサの視差が発生しない通常領域では外測センサによるAFを行い、外測センサの視差が発生する領域であるマクロ領域では、映像AFを用いるというシステムが提案されている。
【0005】
また、放送用ズームレンズにおいては、特許文献3が知られている。特許文献3では、位相差AFによる撮像システムにおいて、撮影効果を狙ったマクロ機構の特殊な使用方法として、一定量のボケ量を発生させるようなシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−197253号公報
【特許文献2】特開平10−293245号公報
【特許文献3】特開2007−271918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2で提案されている方式では、最終的な合焦点を探索するAF方式となり、合焦までに時間を要してしまう可能性がある。また、最終的な合焦点に至る前にマクロ領域の駆動限界に達した場合、その時点ではじめて合焦不可能であるという判定が得られることとなる。そのため、あらかじめマクロ領域で合焦可能であるという指針を得ることが困難である。
【0008】
また、位相差AFにおいて、位相差センサへの分岐手段の位置よりも像側にマクロレンズ群が配置された構成の場合、マクロ撮影を行う場合には、マクロレンズ群の移動により撮像側と合焦検出側との焦点面の関係が崩れてしまう場合がある。これに対し、特許文献3ではマクロレンズ郡を基準位置から移動させた場合には、オートフォーカスを停止するという開示が成されているのみであった。そのため、マクロ移動レンズ郡が分岐手段の像側に配置されている構成において、マクロ領域における具体的な解決手段が開示されていなかった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上述の問題を解決し、通常領域からマクロ領域まで適切にオートフォーカス制御を行うことにより、より使い勝手の良いオートフォーカスレンズ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のレンズ装置は、ズーム機構と、前記ズーム位置を検出するズーム位置検出手段と、前記ズーム機構を制御するズーム制御手段と、第1のフォーカス機構と、前記第1のフォーカス位置を検出する第1フォーカス位置検出手段と、前記第1のフォーカス機構を制御する第1フォーカス制御手段と、第2のフォーカス機構と、前記第2のフォーカス位置を検出する第2フォーカス位置検出手段と、前記第2のフォーカス機構を制御する第2フォーカス制御手段と、焦点検出手段と、デフォーカス量算出手段とを有するレンズ装置であって、前記デフォーカス量算出手段は、前記焦点検出手段が出力する評価値と、前記ズーム位置と、前記第1のフォーカス位置と、前記第2のフォーカス位置とにもとづいて、第1のフォーカス機構の目標位置1と、第2のフォーカス機構の目標位置2とを算出し、前記目標位置1にしたがって前記第1のフォーカス機構を駆動し、前記目標位置2にしたがって前記第2のフォーカス機構を駆動することを特徴とする。
【0011】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付の図面を参照して説明される好ましい実施例等によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オートフォーカス動作を適切に設定することにより、非マクロ領域からマクロ領域において、より使い勝手の良いオートフォーカスの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1におけるシステム構成図。
【図2】実施例1におけるAFセンサ構成図。
【図3】実施例1における撮影映像の例を示す図。
【図4】実施例1における撮影状況の例を示す図。
【図5】実施例1における処理のフローチャート。
【図6】実施例1におけるフォーカス、マクロ、ピント面、位相差の推移1。
【図7】実施例1におけるフォーカス、マクロ、ピント面、位相差の推移2。
【図8】実施例2における処理のフローチャート。
【図9】実施例2におけるフォーカス、マクロ、ピント面、位相差の推移1。
【図10】実施例2におけるフォーカス、マクロ、ピント面、位相差の推移2。
【図11】実施例3における処理のフローチャート1。
【図12】実施例3における処理のフローチャート2。
【図13】実施例3における処理のフローチャート3。
【図14】実施例3における処理のフローチャート4。
【図15】実施例4におけるシステム構成図。
【図16】実施例4における処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1には、本発明の実施例1であるレンズシステムの構成を示している。該レンズシステムは、レンズ装置100で構成されている。
【0016】
レンズ装置100において、111はフォーカスレンズ群である。フォーカスレンズ群111の像面側には、ズームレンズ群121が設けられている。ズームレンズ群121の像面側には、ハーフミラー141が設けられている。さらに、ハーフミラー104の像面側には、マクロレンズ群131が設けられている。この光学系は、フォーカスレンズ群111が該光学系のうち最も被写体側に配置された、所謂前玉フォーカスタイプの光学系である。
【0017】
フォーカスレンズ群111には、フォーカスモータ112が接続されている。フォーカスドライバ113によってフォーカスモータ112が駆動され、フォーカスレンズ群111を光軸方向に移動させる。114はフォーカスレンズ群111の位置を検出するためのフォーカス位置検出部である。
【0018】
ズームレンズ群121には、ズームモータ122が接続されている。ズームドライバ123によってズームモータ122が駆動され、ズームレンズ群121を光軸方向に移動させる。124はズームレンズ群121の位置を検出するためのズーム位置検出部である。
【0019】
マクロレンズ群131には、マクロモータ132が接続されている。マクロドライバ133によってマクロモータ132が駆動され、マクロレンズ群131を光軸方向に移動させる。134はマクロレンズ群131の位置を検出するためのマクロ位置検出部である。
【0020】
レンズ装置100に入射した光束は、フォーカスレンズ群111およびズームレンズ群121を通り、ハーフミラー141を透過した光束とハーフミラー141で反射された光束とに分割される。ハーフミラー141を透過した光束は、レンズ装置100に装着される不図示のカメラのCCDに入射する。ハーフミラー141で反射された光束は、不図示のカメラのCCDと共役な位置に設けられた焦点検出部142に入射する。
【0021】
焦点検出部142は、不図示の複数対の二次結像レンズと、不図示の位相差センサとしてのAFセンサとを含む。AFセンサ上には複数のエリアセンサが設けられている。各エリアセンサ上には、ハーフミラー141を透過して各対の二次結像レンズによって2つに分割された光束により一対の被写体像(以下、2像という)が形成される。各エリアセンサは、該2像を光電変換して2つの像信号を出力する。上記2つの像信号からは、レンズ装置100(光学系)のフォーカス状態に応じた位相差を得ることができる。
【0022】
レンズ装置100が合焦状態にある場合は該2像間(被写体像間)の間隔に相当する位相差は特定値を示し、所謂前ピンの場合は、位相差は該特定値よりも小さくなる。また、所謂後ピンの場合は、位相差は該特定値よりも大きくなる。このように、焦点検出部142は、レンズ装置100に入射した光により形成された被写体像間の位相差を検出する機能を有する。
【0023】
150はCPUである。CPU150内には、デフォーカス量演算部151、レンズ制御部152、テーブル153、位置記憶部154が構成されている。焦点検出部142から出力される2つの像信号は、デフォーカス量演算部151に入力される。
【0024】
レンズ制御部152は、フォーカス位置検出部114を通じて、フォーカスレンズ群111の位置を検出する。また、レンズ制御部152は、ズーム位置検出部124を通じて、ズームレンズ群121の位置を検出する。さらに、レンズ制御部152は、マクロ位置検出部134を通じて、マクロレンズ群131の位置を検出する。
【0025】
デフォーカス量演算部151は、焦点検出部142から出力される2つの像信号に対する相関演算を行い、該像信号間の位相差を算出する。また、デフォーカス量演算部151は、レンズ制御部152を通じてフォーカスレンズ群111と121とマクロレンズ群131の各位置を取得し、テーブル153を参照し、フォーカスレンズ群111とマクロレンズ群131のデフォーカス量を算出する。
【0026】
テーブル153は、フォーカスレンズ群111の位置、ズームレンズ群121の位置、上記位相差に対応するフォーカスレンズ群111およびマクロレンズ群131の目標位置が格納されたテーブルある。デフォーカス量演算部151は、現在のフォーカスレンズ群111の位置、ズームレンズ群121の位置、位相差から、合焦時の位相差とズームレンズ群121に対応するフォーカスレンズ群111の目標位置及びマクロレンズ群131の目標位置を算出する。テーブル153、フォーカスレンズ群111およびマクロレンズ群131の目標位置算出に関しては後述する。
【0027】
このようにして、焦点検出部142に設けられた複数対のラインセンサに対応する複数のデフォーカス量が算出される。算出された複数のデフォーカス量は、レンズ制御部152に入力される。
【0028】
そして、レンズ制御部152は、デフォーカス量演算部151によって算出されたデフォーカス量にしたがって、フォーカスレンズ群111とマクロレンズ群131を目標位置へ駆動する。この時、レンズ制御部152は、該算出されたフォーカスレンズ群111が光軸方向に移動するように、フォーカスドライバ113を介してフォーカスモータ112を駆動し、フォーカスレンズ群111を移動させる。同様に、該算出されたマクロレンズ群131が光軸方向に移動するように、マクロドライバ133を介してマクロモータ132を駆動し、マクロレンズ群131を移動させる。このようにして、オートフォーカスが行われる。
【0029】
ここで、図2に撮影画面内での焦点検出エリアの一例を示す。図2の501から526は各焦点検出エリアである。デフォーカス量演算部151は、レンズ装置100を通して不図示のカメラにより撮影可能な範囲である撮影範囲(撮影画面)内に予め設定された複数の焦点検出エリアの位置(座標)と、該焦点検出エリアの形状(大きさ)を記憶保持している。図2には、撮影範囲のうち上部、中部及び下部のそれぞれにおいて6つずつ横方向に並んだ18の焦点検出エリアが配置された例を示す。上部左側から順に焦点検出エリア501〜506、中央部左側から順に焦点検出エリア511〜516、下部左側から順に焦点検出エリア521〜526とする。設定内容を変更することで、焦点検出エリアの位置、大きさ等の変更が可能である。本実施例では、図1のスイッチ201を用いて、焦点検出エリアを選択することとする。
【0030】
図3および図4には、図2で示した測距エリアが設定された状態で被写体撮影している撮影映像および撮影の様子を示している。図4は、MODよりも無限側に位置している被写体Aと、MODよりも至近側に位置している被写体Bを撮影している様子を示している。今、被写体Aに合焦している状態であり、被写体Bにはピントが合わずボケているものとする。
【0031】
第1の実施例では、図3および図4に示した撮影構図において、被写体Aおよび被写体Bに合焦させる例を説明する。
【0032】
図5のフローチャートには、レンズ装置100におけるオートフォーカス処理の流れを示す。CPU150は、これらの処理を、不図示のメモリに格納されたコンピュータプログラムに従って制御する。
【0033】
レンズ装置100に電源が入ると、レンズCPU150の処理は、ステップS101から処理を実行する。ステップS101において、位置記憶部154は、レンズ制御部152を通して、マクロ位置検出部134が検出するマクロレンズ群131の位置をマクロレンズ群131の基準位置Mrefとして記憶する。
【0034】
次に、CPU150はステップS102に進み、焦点検出部142内の位相差センサを起動する。次に、S103に進み、スイッチ201が指定している焦点検出エリアを選択する。次に、S104に進み、デフォーカス量演算部151は、焦点検出部142から像データを取得し、選択されている焦点検出エリアの位相差を算出する。次に、S105に進み、レンズ制御部152は、フォーカス位置検出部114およびズーム位置検出部124、マクロ位置検出部134からそれぞれフォーカス位置、ズーム位置、マクロ位置を取得する。
【0035】
次に、CPU150はステップS106に進む。デフォーカス量演算部151は、テーブル153を参照し、ステップS105で取得したフォーカス位置、ズーム位置およびステップS104で算出された位相差から、フォーカスレンズ群111およびマクロレンズ群131の目標位置を算出する。テーブル153には、フォーカスレンズ群111の位置とズームレンズ群121の位置と位相差に対応するフォーカスレンズ群111の目標位置およびマクロレンズ群131の目標位置があらかじめ格納されている。ただし、マクロレンズ群131の目標位置は、ある基準位置Mbaseに対応した目標位置が格納されている。ここでは、マクロレンズ群131の基準位置Mrefと絶対基準位置Mbaseが等しいことを前提として説明する。なお、ステップS105で取得したフォーカス位置やズーム位置およびステップS104で算出された位相差に等しいデータがテーブル153に無い場合は、近傍のデータを読出し、線形補間等を用いて各目標位置を算出しても良い。
【0036】
次に、CPU150はステップS110に進む。レンズ制御部152は、S106にてデフォーカス量演算部151によって算出された目標位置がMOD−無限側領域か、マクロ領域であるかを判定する。ここでは、フォーカスレンズ群111の目標位置がMODよりも無限側である場合、マクロレンズ群131の目標位置に関わらず、目標位置がMODから無限の間と判定する。また、マクロレンズ群131の目標位置が基準位置Mref以外の値である場合は、フォーカスレンズ群111の目標位置に関わらず、目標位置はマクロ域であると判定する。なお、ステップS110における目標位置の判定方法についてはこれに限らない。例えば、ステップS104で算出した像ずれ量とフォーカスレンズ群111の位置とズームレンズ群121の位置にもとづきレンズ装置100から被写体までの距離を求め、MODよりも至近側か無限側かを判定しても良い。
【0037】
ステップS110にて、目標位置がMODから無限の間であると判定された場合、CPU150はステップS120に進む。ステップS105で検出したマクロレンズ群131の位置が基準位置Mrefと等しい場合は真となり、ステップS122へ進む。ステップS120の判定が偽、つまりステップS105で検出したマクロレンズ群131の位置が基準位置Mrefと異なる場合は、ステップS121に進む。
【0038】
ステップS121において、レンズ制御部152は、マクロドライバ133を通じて、マクロレンズ群131を基準位置Mrefへ駆動し、ステップS122へと進む。ステップS122では、ステップS105にてデフォーカス量演算部151によって算出されたフォーカス目標位置にしたがい、レンズ制御部152がフォーカスドライバ113を通じて、フォーカスレンズ群111を駆動する。このようなフローにより、ステップS120で偽と判定された場合は、ステップS121実行後、ただちにステップS122が実行されるため、フォーカスレンズ111とマクロレンズ131をほぼ同時に駆動することとなる。
【0039】
ステップS110にて、目標位置がマクロ域であると判定された場合、CPU150はステップS130に進む。ここでは、ステップS105で検出したフォーカスレンズ群111の位置を判定する。フォーカスレンズ群111の位置がMOD、つまり至近端である場合は真と判定し、ステップS132へ進む。一方、ステップS130の判定が偽である場合は、ステップS131へ進む。ステップS131において、レンズ制御部152は、フォーカスドライバ113を通じてフォーカスレンズ群111をMODつまり至近端へ駆動し、S132へと進む。ステップS132では、ステップS105にてデフォーカス量演算部151によって算出されたマクロ目標位置にしたがい、レンズ制御部152がマクロドライバ113を通じて、マクロレンズ群131を駆動する。このようなフローにより、ステップS130で偽と判定された場合は、ステップS131実行後、ただちにステップS132が実行されるため、フォーカスレンズ111とマクロレンズ131をほぼ同時に駆動することとなる。
【0040】
CPU150は、ステップS122又はステップS132を実行した後、再びステップS102へジャンプし、同様の処理を繰り返し実行する。
【0041】
図3において被写体Aに合焦している状態から、スイッチ201により被写体Bに該当する焦点検出エリアを選択した場合、MOD−無限側領域からマクロ領域へのフォーカス送りを実行することとなる。図6は、この時のフォーカスレンズ群111、マクロレンズ群131、ピント面、焦点検出部142から出力される位相差の流れ、および目標位置の軌跡を示したものである。図6の横軸は時刻であり、縦軸は被写体距離である。縦軸には、それぞれ無限側から被写体Aの位置、MOD、被写体Bの位置が示してある。MODを境界として、至近側はグレーアウトされており、マクロ領域であることを示している。図6下部に焦点検出部142から出力される2像の波形の例を示している。前述したように、該2像の波形の像ズレ量が位相差であり、フォーカスレンズ群111を動作している間に位相差が変化していることを示している。ここでは、2像が一致している状態で合焦とする。
【0042】
いま、初期状態として、スイッチ201は、図2の焦点検出エリア512が選択されている。この時、被写体Aに合焦しており、フォーカスレンズ群111の初期位置は被写体Aにあり、マクロレンズ群131の初期位置は基準位置Mrefにある。また、ピント面および、目標位置は被写体Aにある。
【0043】
ここで、時刻t1において、フォーカス送りをするため、スイッチ201を用いて、図2の焦点検出エリア514を選択する。CPU150は、図5のステップS101からS106までを実行し、S110の判定では、被写体がマクロ領域にいると判定する。この時、図6に示したように、時刻t1において、目標位置が被写体Bとなる。次に、図5フローチャートのステップS130からステップS131において、フォーカスレンズ群111をMODに駆動し、マクロレンズ群131を目標位置へ駆動する。図1に示したように、分岐手段141は、フォーカスレンズ群111とズームレンズ群121の後段に配置されているため、焦点検出部142に入射される光束は、フォーカスレンズ群111とズームレンズ群121の位置によって決定する。そのため、フォーカスレンズ群111を駆動している区間である時刻t1からt2の間に位相差は減少する。ここで、時刻t1からt2の間、位相差は変動するため、デフォーカス量算出部151によって周期的に更新される目標位置は変化する。
【0044】
時刻t2において、フォーカスレンズは、至近側の端つまりMODまでの駆動を完了する。目標位置である被写体Bの位置まで偏差があるため、図6下部に示すように一定の量を持つ。この時、デフォーカス量算出手段151によって算出されるマクロレンズ群131の目標位置が最終的な目標位置となる。時刻t3において、マクロレンズ群131は、被写体Bに合焦する位置へ駆動される。時刻t2からt3の間は、フォーカスレンズ群111はMODに固定されているため、マクロレンズ群131を駆動しても位相差は変化しない。
【0045】
このように、フォーカスレンズ群111およびマクロレンズ群131を同時に駆動することによって、素早く合焦させることが可能となる。
【0046】
また、図3において被写体Bに合焦している状態から、スイッチ201により被写体Aに該当する焦点検出エリアを選択した場合、マクロ領域からMOD−無限側領域へのフォーカス送りを実行することとなる。図7は、この時のフォーカスレンズ群111、マクロレンズ群131、ピント面、焦点検出部142から出力される位相差の流れ、および目標位置の軌跡を示したものである。図7の横軸は時刻であり、縦軸は被写体距離であり、図6と同様である。また、縦軸には、それぞれ無限側から被写体Aの位置、MOD、被写体Bの位置が示してある。MODを境界として、至近側はグレーアウトされており、マクロ領域であることを示している。図7下部には、図6同様に、焦点検出部142から出力される2像の波形の例を示している。
【0047】
図6と同様に、2像が一致している状態で合焦とする。
【0048】
いま、初期状態として、スイッチ201は、図2の焦点検出エリア514が選択されている。この時、被写体Bに合焦しており、フォーカスレンズ群111の初期位置はMODにあり、マクロレンズ群131の初期位置は被写体Bにある。また、ピント面および、目標位置は被写体Bにある。
【0049】
時刻t1において、フォーカス送りをするため、スイッチ201を用いて、図2の焦点検出エリア512を選択する。CPU150は、図5のステップS101からS106までを実行し、S110の判定において、被写体がMOD−無限側領域にいると判定する。この時、図7に示したように、時刻t1において、目標位置が被写体Aとなる。次に、ステップS120からS122において、マクロレンズ群131を基準位置Mrefに駆動し、フォーカスレンズ群111を目標位置へ駆動する。
【0050】
前述したように、焦点検出部141で得られる位相差からは、マクロレンズ群131の位置に関係なく、フォーカスレンズ群111の目標位置算出が可能である。そのため、時刻t1において、ピント面がマクロ領域にあったとしても、フォーカスレンズ群111の目標位置とマクロレンズ群131の目標位置の算出が可能であり、同時に駆動することが可能となる。時刻t2において、マクロレンズは基準位置Mrefへの駆動が完了する。時刻t2から時刻t3において、デフォーカス量算出部151は、焦点検出部142から得られる位相差がなくなるまで、つまり2像が一致するまで、フォーカスレンズ群111を駆動する。そして、時刻t3において、被写体Aへの合焦が完了する。
【0051】
このように、本実施例では、被写体の検出を行った時点の位相差とフォーカスレンズ群111、ズームレンズ群121、マクロレンズ群131の位置に基づいて、フォーカスレンズ群111の目標位置とマクロレンズ群131の目標位置を算出する。これにより、無限側からMODおよびマクロ域にかけて、目標位置を素早く確定し、合焦動作させることが可能となる。
【実施例2】
【0052】
撮影の効果を狙い、ぼけた画像から合焦に至るまでのぼけ量をコントロールしたい場合がある。特に、MOD−無限側領域からマクロ領域へのピント面移行時や、逆にマクロ領域からMOD−無限側領域へのピント面移行時には、駆動対象のレンズ群がフォーカスレンズ群とマクロレンズ群の間で切り替えられるため、切り替え時のスムーズな連結が必要となる。そこで、フォーカス送りの速度を制御することや、フォーカスレンズ群とマクロレンズ群の制御対象の切替方法を適切に行うことによって、効果的な撮影効果を得ることが可能となる。
【0053】
本実施例では、このような撮影状況に適するオートフォーカスの方法について説明する。
【0054】
実施例2の撮影システムの構成、AFセンサの構成及び焦点検出エリアの構成は実施例1の図1、図2と同様なので説明を省略する。第1実施例と同様に、図3および図4の撮影シーンを例に、図8から10を用いて説明する。
【0055】
図8のフローチャートには、レンズ装置100におけるオートフォーカス処理の流れを示す。CPU150は、これらの処理を、不図示のメモリに格納されたコンピュータプログラムに従って制御する。
【0056】
ステップS101からS106では実施例1と同様に、位置記憶部154はマクロレンズ群131の基準位置を記憶する。また、焦点検出部142の位相差センサを起動し、スイッチ201による焦点検出エリアの選択を行い、デフォーカス量演算手段151が対象エリアの位相差を算出する。さらに、レンズ制御部152は、フォーカスレンズ群111、ズームレンズ群121、マクロレンズ群131の位置検出を行う。デフォーカス量演算部151は、テーブル153を参照し、フォーカスレンズ群111とマクロレンズ群131の目標位置を算出する。
【0057】
ステップS110では、実施例1と同様に目標位置がMOD−無限側領域であるか、マクロ領域であるかを判定する。目標位置がMOD−無限側領域である場合はステップS120へ進み、目標位置がマクロ領域である場合はステップS130に進む。
【0058】
ステップS120では、実施例1と同様にマクロレンズ群131が基準位置Mrefと等しいかどうかを判定する。この判定が真である場合は、ステップS222に進み、偽であればステップS221へ進む。ステップS221において、レンズ制御部152はマクロレンズ群131を基準位置Mrefへ移動する。また、ステップS222おいて、レンズ制御部152はフォーカスレンズ群111をステップS106で算出された目標位置へ駆動する。ステップS120、ステップS221および、S222では、マクロレンズ群131の位置が基準位置Mrefへ復帰していない場合、まずマクロレンズ群131が基準位置Mrefへ復帰するまでマクロレンズ群131を駆動する。そして、マクロレンズ群131が基準位置Mrefへの復帰が完了した後に、フォーカスレンズ群111を目標位置へ駆動することとなる。
【0059】
ステップS130では、実施例1と同様にフォーカスレンズ群111の位置がMODと等しいかどうかを判定する。この判定が真である場合は、ステップS232に進み、偽であればステップS231に進む。ステップS231において、レンズ制御152はフォーカスレンズ群111をMODへ駆動する。また、ステップS232において、レンズ制御部152はマクロレンズ群131をステップS106で算出された目標位置へ駆動する。ステップS130、ステップS231および、S232では、フォーカスレンズ群111がMODへ駆動していない場合、まずフォーカスレンズ群111がMODへ駆動するまでフォーカスレンズ群111を駆動する。そして、フォーカスレンズ群111がMODへの駆動が完了した後に、マクロレンズ群131を目標位置へ駆動することとなる。
【0060】
図3において被写体Aに合焦している状態から、スイッチ201によって被写体Bに該当する焦点検出エリアを選択しフォーカス送りを行った場合、MOD−無限側領域からマクロ領域へのフォーカス送りを実行することとなる。図9は、この時のフォーカスレンズ群111、マクロレンズ群131、ピント面、焦点検出部142から出力される位相差の流れ、および目標位置の軌跡を示したものである。図9の表記は図6や図7と同様である。
【0061】
いま、初期状態として、スイッチ201は、図2の焦点検出エリア512が選択されている。この時、被写体Aに合焦しており、フォーカスレンズ群111の初期位置は被写体Aにあり、マクロレンズ群131の初期位置は基準位置Mrefにある。また、ピント面および、目標位置は被写体Aにある。
【0062】
ここで、時刻t1において、フォーカス送りをするため、スイッチ201を用いて、図2の焦点検出エリア514を選択する。CPU150は、図8のステップS101からS106までを実行し、S110の判定では、被写体がマクロ領域にいると判定する。この時、図9に示したように、時刻t1において、目標位置が被写体Bとなる。次に、図8フローチャートのステップS130、S231、S232において、フォーカスレンズ群111をMODに駆動し、再びS102から処理を繰り返す。ステップS130において、フォーカスレンズ群111がMODに到達していない間は、繰り返しS231が実行される。つまり、時刻t1からt2では、マクロレンズ群131は固定のまま、フォーカスレンズ群111を至近側の端つまりMODに到達するまで駆動する。また、時刻t1からt2の区間では、デフォーカス量演算部151は、フォーカスレンズ群111およびマクロレンズ群131の目標位置を定期的に更新する。そして、時刻t2においてフォーカスレンズ群111がMODに到達すると、ステップS130の判定後にステップS232へと進む。
【0063】
時刻t2から時刻t3の間は、マクロレンズ群131のみが目標位置に向かって駆動される。また、フォーカスレンズ群111がMODに位置している状態で、目標位置である被写体Bの位置まで偏差があるため、図9下部に示すように、位相差は一定の量を持つ。時刻t2からt3の間は、マクロレンズ群131を駆動しても位相差は変化しない。よって、時刻t2において、デフォーカス量算出手段151によって算出されるマクロレンズ群131の目標位置が最終的な目標位置となる。そして、時刻t3において、マクロレンズ群131は合焦位置へ到達する。
【0064】
このようにして、フォーカスレンズ群111からマクロレンズ群131への駆動切り替え時、MODを境界に切り替えることによって、図9のようなピント面の軌跡を得ることが可能となる。また、撮影される画像のピント面の移動をスムーズに切り替えることが可能となる。
【0065】
図3において被写体Aに合焦している状態から、スイッチ201によって被写体Aに該当する焦点検出エリアを選択しフォーカス送りを行った場合、マクロ領域からMOD−無限側領域へのフォーカス送りを実行することとなる。図10は、この時のフォーカスレンズ群111、マクロレンズ群131、ピント面、焦点検出部142から出力される位相差の流れ、および目標位置の軌跡を示したものである。図10の表記は図6や図7、図9等と同様である。
【0066】
いま、初期状態として、スイッチ201は、図2の焦点検出エリア514が選択されている。この時、被写体Bに合焦しており、フォーカスレンズ群111の初期位置は被写体Bにあり、フォーカスレンズ群111の初期位置はMODにある。また、マクロレンズ群131の初期位置は被写体Bに合焦する位置にある。また、ピント面および、目標位置は被写体Bにある。
【0067】
ここで、時刻t1において、フォーカス送りをするため、スイッチ201を用いて、図2の焦点検出エリア512を選択する。CPU150は、図8のステップS101からS106までを実行し、S110の判定では、被写体がMOD−無限側領域にいると判定する。この時、図10に示したように、時刻t1において、目標位置が被写体Aとなる。次に、ステップS120およびS221において、マクロレンズ群131を基準位置Mrefに駆動し、再びS102から処理を繰り返す。ステップS120において、マクロレンズ群131が基準位置Mrefに到達していない間は、繰り返しS221が実行される。つまり、時刻t1からt2では、フォーカスレンズ群111はMODに固定のまま、マクロレンズ群131を基準位置Mrefに到達するまで駆動する。また、時刻t1以降、デフォーカス量演算部151は、フォーカスレンズ群111およびマクロレンズ群131の目標位置を定期的に更新する。そして、時刻t2においてマクロレンズ群131が基準位置Mrefに到達すると、ステップS120の判定後にステップS222へと進む。
【0068】
時刻t2から時刻t3の間は、フォーカスレンズ群111のみが目標位置に向かって駆動される。前述したように、焦点検出部141で得られる位相差からは、マクロレンズ群131の位置に関係なく、フォーカスレンズ群111の目標位置算出が可能である。時刻t2から時刻t3において、デフォーカス量算出部151は、焦点検出部142から得られる位相差がなくなるまで、つまり2像が一致するまで、フォーカスレンズ群111を駆動する。そして、時刻t3において、被写体Aへの合焦が完了する。
【0069】
このようにして、マクロレンズ群131からフォーカスレンズ群111への駆動切り替え時、MODを境界に切り替えることによって、図10のようなピント面の軌跡を得ることが可能となる。また、撮影される画像のピント面の移動をスムーズに切り替えることが可能となる。
【0070】
また、本実施例では、S130においてフォーカスレンズ群111の位置の判定基準をMODとしたが、MODに対し、ある値に任意のオフセットや任意のゲインをかけた値としても良い。これにより、フォーカスレンズ群111からマクロレンズ群131の駆動切替時に、撮影される画像のピント面の移動において、引っかかるような違和感を低減させることが上記と同様に可能である。さらに、フォーカスレンズ群111からマクロレンズ群131へのレンズ駆動切り替えをスムーズに行うために、以下のようにしても良い。まず、フォーカスレンズ群111がMODに達するよりも一定値分手前から、マクロレンズ群131とフォーカスレンズ群111を同時に駆動する。次に、フォーカスレンズ群111がMODに達した後、引き続きマクロレンズ群131を駆動させる。このようにフォーカスレンズ群111からマクロレンズ群131への駆動切り替えをオーバーラップさせることによって、撮影される画像のピント面の移動をスムーズに切り替えることができる。
【0071】
また、被写体に対して素早く合焦させるためにはフォーカスレンズ群111およびマクロレンズ群111を速い速度で駆動する必要がある。ただし、ゆっくりと合焦させたい場合や、効果的な撮影効果を得たい場合は、ある一定の移動速度あるいは、ぼけ量の推移が一定となるような移動速度で、フォーカスレンズ群111およびマクロレンズ群131を駆動させても良い。また、この移動速度は、あらかじめプログラムに組み込んでも良いし、不図示のスイッチや不図示のボリュームを設けてユーザーが指定できるようにしても良い。
【実施例3】
【0072】
撮影の状況によっては、移動している被写体に対してリアルタイムに合焦させたい場合がある。このような状況では、目的の被写体に対し、常に合焦あるいは合焦近傍で推移させる必要があるため、現在のピント位置から目標のピント位置までのフォーカス送りに必要なデフォーカス量は比較的小さいといえる。また、ある被写体から別の被写体に対して合焦対象を切り替えることで、現在のピント位置から目標のピント位置まで大幅なデフォーカスが必要となる場合もある。このように、現在のピント位置近傍を目標位置にする場合と、現在のピント位置から大幅に離れている場合とで、求められる合焦動作が異なることが考えられ、様々な撮影状況に対応できるオートフォーカスシステムが必要となる。
【0073】
本実施例では、このような撮影状況に適するオートフォーカスについて説明する。現在のピント位置と目標のピント位置との差分であるデフォーカス量にもとづいて、フォーカスレンズ群およびマクロレンズ群の制御方式を選択する。この選択によって、高速に合焦させたい場合と被写体追従させたい場合やボケ量の推移をコントロールしたい場合等の撮影状況に対応することが可能となる。
【0074】
本実施例の撮影システムの構成、AFセンサの構成及び焦点検出エリアの構成は実施例1の図1、図2と同様であるため、説明を省略する。図11から図14を用いて説明する。
【0075】
図11のフローチャートには、レンズ装置100におけるオートフォーカス処理の流れを示す。CPU150は、これらの処理を、不図示のメモリに格納されたコンピュータプログラムに従って制御する。
【0076】
ステップS101からS105で行われる処理は、実施例1および実施例2と同様であるため説明を省略する。
【0077】
次に、CPU150はステップS310に進む。ステップS310では、閾値VAL−Dを設定する。図12にVAL−D設定のフローチャートを示す。ステップS311では、ステップS105において、レンズ制御部152がフォーカス位置検出部114およびマクロ位置検出部134を通じて取得したフォーカスレンズ群111の位置およびマクロレンズ群131の位置に基づいて、現在のピント位置を判定する。ここでは、マクロレンズ群131が基準位置Mrefである場合は、現在のピント位置はMOD−無限側領域にあると判定し、ステップS312に進む。一方、マクロレンズ群131が基準位置Mref以外にあり、フォーカスレンズ群がMODである場合、現在のピント位置はマクロ域にあると判定し、ステップS313に進む。
【0078】
ステップS312では、デフォーカス量の閾値VAL−DにVAL−Fを設定する。VAL−Fは、ステップS105で検出されたフォーカスレンズ群111の位置とMODとの差分値であり、現在のピント面位置がMOD−無限側領域にある場合のデフォーカス量閾値となる。ステップS313では、閾値VAL−DにVAL−Mを設定する。VAL−Mは、ステップS105で検出されたマクロレンズ群131の位置と基準位置Mrefとの差分値であり、現在のピント面位置がマクロ領域にある場合のデフォーカス量閾値となる。ここで、VAL−FおよびVAL−Mは、上記以外の構成方法として、あらかじめプログラム内に定数として組み込んでも良いし、不図示のメモリから読み込んでも良い。また、不図示のスイッチやボリュームによって、ユーザーが指定きるような構成にしても良い。ステップS312またはステップS313が実行されたところで、ステップS310は処理を完了し、ステップS106に進む。
【0079】
ステップS106では、実施例1および実施例2と同様に、デフォーカス量演算部151によって、フォーカスレンズ群111およびマクロレンズ群131の目標位置がデフォーカス量として算出される。
【0080】
次に、ステップS320では、ステップS106にて算出されたデフォーカス量と閾値VAL−Dとの比較が行われる。デフォーカス量よりもVAL−Dの方が大きい場合は、ステップS321へ進み、VAL−Dがデフォーカス量以下である場合は、ステップS322へ進む。
【0081】
ステップS321では、処理Aが実行される。処理Aのフローチャートを図13に示す。処理Aは実施例1のステップS110、S120、S121、S122、S130、S131、S132で行われる処理と同様である。ステップS322では、処理Bが実行される。処理Bのフローチャートを図14に示す。処理Bは実施例2のステップS110、S120、S221,S222,S130、S231,S232で行われる処理と同様である。
【0082】
デフォーカス量が閾値VAL−Dよりも大きい場合、つまり大ぼけからの引込みを行う場合、被写体に素早く合焦させる必要がある。大ぼけからの引込みを行う状況として、MOD−無限側領域からマクロ領域へのフォーカス送り時や、マクロ領域からMOD−無限側領域へのフォーカス送り時が挙げられる。このように、デフォーカス量がMODをまたぐような大きな値である場合は、処理Aつまりフォーカスレンズ群111とマクロレンズ群131を同時に駆動させることにより、目標位置に素早く合焦させることができる。一方、デフォーカス量が閾値よりも小さい場合は、被写体への追従性を向上させるために、フォーカスレンズ群111またはマクロレンズ群131の片方を固定しておき、もう一方を追従のために動作させる。これにより、大ボケ時の引込性能と被写体への追従性を向上させることが可能となる。なお、処理Bの場合は、実施例2と同様に、フォーカスレンズ群111やマクロレンズ群131の駆動速度を任意の速度値として指定可能としても良い。
【0083】
ステップS321またはステップS322が実行されると、CPU150は再びS102から処理を繰り返し実行する。
【0084】
このように、本実施例では、デフォーカス量を閾値VAL−Dと比較し、制御方式を切り替えることによって、大ボケからの引込時および被写体へのフォーカス追従時等、様々な合焦動作を行うことが可能である。
【実施例4】
【0085】
本実施例の撮影システムの構成を図15に示す。焦点検出エリアの構成は実施例1の図2と同様であるため、説明を省略する。本実施例では、図15の構成図および図16のフローチャートを用いて説明する。
【0086】
本発明のレンズ装置をカメラに装着して使用する場合、カメラのフランジバックに合わせて、レンズ装置側のフランジバックを調整する必要がある。フランジバックの調整によって、ズームレンズ群121の移動によらずピント位置を固定させることが可能である一方で、装着するカメラ毎にマクロレンズ群131の基準位置が変動する場合がある。したがって、焦点検出部142で得られる位相差と、フォーカスレンズ群111、ズームレンズ群121に対応するマクロレンズ群131の変位量が一意に決定しない可能性がある。
【0087】
本実施例では、このような撮影状況に適するオートフォーカスについて説明する。まず、マクロレンズ群131の基準位置が変更されたかどうかを判定する。次に、テーブル153に保持しているマクロレンズ群131のテーブルから得られるデータに対して基準位置の変位量に基づいて補正する。この補正によって、マクロ領域におけるオートフォーカスの精度を向上させることが可能となる。
【0088】
図15の401はボリュームである。ボリューム401は、マクロ基準位置を指定するための手段である。ボリューム401はレンズ制御部152に接続される。レンズ制御部152は、ボリューム401の変動量を監視し、変動量にしたがってマクロドライバ133およびマクロモータ132を通してマクロレンズ群131を駆動する。これにより、フランジバックの調整を行う。
【0089】
図16のフローチャートには、レンズ装置100におけるオートフォーカス処理の流れを示す。CPU150は、これらの処理を、不図示のメモリに格納されたコンピュータプログラムに従って制御する。
【0090】
ステップS101では、実施例1と同様に、マクロレンズ群131の位置を基準位置Mrefとして記憶する。
【0091】
次に、ステップS401において、レンズ制御部152はボリューム401の位置VOL−Pを記憶する。
【0092】
次に、ステップS410では、ボリューム401の現在位置と記憶しているVOL−Pと比較し、ボリューム401の位置が変更されたかどうかを判定する。ボリューム401の位置が変更されている場合、マクロレンズ群131のステップS411に進む。
【0093】
ステップS411において、レンズ制御部152はマクロレンズ群131をマクロ基準位置Mrefへ駆動する。マクロ基準位置変更中ではない場合、オートフォーカス動作していることとなるため、合焦のためにマクロレンズ群131が基準位置から変位している場合がある。そのため、マクロ基準位置変更中となった場合は、一度基準位置へ復帰させる。
【0094】
次に、ステップS412に進み、レンズ制御部152はボリューム401の位置とVOL−Pとの差分量を算出する。そして、差分量に応じたマクロレンズ群131の目標位置を算出する。次に、ステップS413に進み、マクロレンズ群131を目標位置へ駆動する。
【0095】
ステップS414において、レンズ制御部152は、マクロ位置検出部154を通じてマクロレンズ群131の位置を新たな基準位置Mrefとして記憶する。また、ステップS412で変更されたボリューム402の位置VOL−Pを記憶する。次にCPU150はステップS410に進み、前述同様の処理を実行する。
【0096】
ステップS410において、ボリューム401の位置が変更されていない場合は、マクロレンズ群131の基準位置は変更中ではないと判断し、ステップS102へと処理を進める。
【0097】
ステップS102からステップS105で行われる処理は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。また、ステップS310で行われる処理は、実施例3と同様に、VAL−Dを設定する。次に、CPU150はステップS402へ処理を進める。
【0098】
ステップS402において、デフォーカス量演算部151は、フォーカスレンズ群111およびマクロレンズ群131の目標位置を演算する。デフォーカス量演算部151は、ステップS401またはステップS414で記憶したマクロレンズ群131の記憶位置Mrefをレンズ制御部152から取得する。そして、実施例1に示したように、デフォーカス量演算部151は、テーブル153を参照し、現在のフォーカス位置、ズーム位置、位相差から、フォーカスレンズ群111の目標位置およびマクロレンズ群131の目標位置を算出する。
【0099】
実施例1と同様に、被写体がMOD−無限側にいると判定された場合は、フォーカスレンズ群111の目標位置はMOD-無限側の間となり、マクロレンズ群131の目標位置は基準位置Mrefとなる。一方、被写体がマクロ域にいると判定された場合は、フォーカスレンズ群111の目標位置はMODとなり、マクロレンズ群131の目標位置はマクロ域の所定の位置となる。ただし、実施例1にも示したように、テーブル153に保持されているテーブルは、マクロレンズ群131の基準位置Mbaseにおける目標位置テーブルである。本実施例では、ステップS410からステップS414において、マクロレンズ群131の基準位置Mrefが変更された場合、Mbaseとは異なる位置となる。そのため、テーブル153を参照して得られたマクロレンズ群131の目標位置に、MbaseとMrefとの差分量Moffsetを補正値として加算し、マクロレンズ群131の補正後目標位置を得る。
【0100】
ここで、本実施例の構成は、フォーカス111の後段にズームレンズ群121が配置されているため、その後段のマクロレンズ群131に入射する光束は平行光となる。そのため、マクロレンズ群131の移動量に対する焦点距離の変動量の敏感度は、マクロレンズ群131の駆動範囲全域で1:1となり、マクロレンズ群131の目標位置の補正量としては、オフセット量で補正可能となる。なお、マクロレンズ群131の敏感度が1:n(n≠1)である場合は、マクロレンズ群131の敏感度テーブルをあらかじめテーブル153等に記憶する。そして、マクロレンズ群131の敏感度テーブル、MbaseおよびMrefにもとづいてマクロレンズ群131の目標位置補正量を算出しても良い。
【0101】
フローチャートの説明に戻る。ステップS320では、実施例3と同様に、デフォーカス量演算部151によって算出されたデフォーカス量とVAL−Dとを比較し、ステップS321あるいはステップS322へと進む。ステップS321およびステップS322で行われる処理は実施例3と同様に、処理Aあるいは処理Bが実行される。
【0102】
以上の処理を終えると、CPU150は再びステップS410に戻り、繰り返し実行する。
【0103】
このように、本実施例では、フランジバック調整によって、マクロレンズ群131の基準位置Mrefが変動した場合、テーブル153で保持しているマクロレンズ群131の目標位置に対する補正量を求める。この補正量が適用された新たな目標位置に対して、マクロレンズ131を駆動させることで、オートフォーカスの合焦精度を向上させることが可能となる。
【0104】
本実施例では、図16のフローチャートのステップS410において、ボリューム401の位置の変更有無によって、マクロレンズ群131の基準位置が変更中であるかどうかを判定した。この他に、不図示のスイッチを用意し、スイッチの状態によって判定しても良い。フランジバック調整は、ユーザーによって意図的に行われるものであり、通常運用中にマクロ基準位置が誤操作によって変更されてしまうことを防ぐためにも、スイッチによる上述の判定は有効である。
【0105】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0106】
例えば、実施例1から4に記載した処理を組み合わせて実施しても良い。さらには、複数の撮影シーンに対応するために、切替手段を設けて各処理を切り替えても良い。
【0107】
また、本発明では、結像光学系内に分岐手段を設け、分岐光束を用いた焦点検出部を構成する例を示したが、ハーフミラー141を構成せず、焦点検出部142をレンズ装置100の外部に構成し、外光による光束を用いて焦点を検出するようにしても良い。
【0108】
さらに、本発明では、デフォーカス量演算部151とレンズ制御部152とテーブル153と位置記憶部154をひとつのCPU150内に構成したが、別々のCPUや演算装置に分散させても良いし、レンズ装置100外部に構成しても良い。
【符号の説明】
【0109】
100 レンズ装置
111 フォーカスレンズ群
112 フォーカスモータ
113 フォーカスドライバ
114 フォーカス位置検出部
121 ズームレンズ群
122 ズームモータ
123 ズームドライバ
124 ズーム位置検出部
131 マクロレンズ群
132 マクロモータ
133 マクロドライバ
134 マクロ位置検出部
141 ハーフミラー
142 焦点検出部
150 CPU
151 デフォーカス量演算部
152 レンズ制御部
153 テーブル
154 位置記憶部
201 スイッチ
401 ボリューム
403 テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズーム機構と、前記ズーム位置を検出するズーム位置検出手段と、前記ズーム機構を制御するズーム制御手段と、第1のフォーカス機構と、前記第1のフォーカス位置を検出する第1フォーカス位置検出手段と、前記第1のフォーカス機構を制御する第1フォーカス制御手段と、第2のフォーカス機構と、前記第2のフォーカス位置を検出する第2フォーカス位置検出手段と、前記第2のフォーカス機構を制御する第2フォーカス制御手段と、焦点検出手段と、デフォーカス量算出手段とを有するレンズ装置であって、
前記デフォーカス量算出手段は、前記焦点検出手段が出力する評価値と、前記ズーム位置と、前記第1のフォーカス位置と、前記第2のフォーカス位置とにもとづいて、第1のフォーカス機構の目標位置1と、第2のフォーカス機構の目標位置2とを算出し、前記目標位置1にしたがって前記第1のフォーカス機構を駆動し、前記目標位置2にしたがって前記第2のフォーカス機構を駆動することを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記第2のフォーカス位置を記憶するための第2フォーカス位置記憶手段と、前記第2のフォーカス機構が第2フォーカス位置記憶手段によって記憶された位置にあり、前記目標位置2が前記第2フォーカス位置記憶手段によって記憶された位置とは異なる場合、合焦状態とするために、前記第1のフォーカス機構を所定の位置へ駆動した後に、前記目標位置2にしたがって前記第2のフォーカス機構を駆動する第1の合焦制御手段を有することを特徴とする請求項1記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記第2のフォーカス位置を記憶するための第2フォーカス位置記憶手段と、前記第2のフォーカス機構が第2フォーカス位置記憶手段によって記憶された位置にあり、前記目標位置2が前記第2フォーカス位置記憶手段によって記憶された位置とは異なる場合、合焦状態とするために、前記第1のフォーカス機構を所定の位置へ駆動するとともに、前記目標位置2にしたがって前記第2のフォーカス機構を駆動する第2の合焦制御手段を有することを特徴とする請求項1記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記第2のフォーカス位置を記憶するための第2フォーカス位置記憶手段と、前記第2のフォーカス機構が第2フォーカス位置記憶手段によって記憶された位置とは異なる位置にあり、前記目標位置1が所定の位置である場合、合焦状態とするために、前記第2のフォーカス機構を第2フォーカス位置記憶手段によって記憶された位置へ駆動した後に、前記目標位置1にしたがって前記第1のフォーカス機構を駆動する第3の合焦制御手段を有することを特徴とする請求項1記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記第2のフォーカス位置を記憶するための第2フォーカス位置記憶手段と、前記第2のフォーカス機構が第2フォーカス位置記憶手段によって記憶された位置とは異なる位置にあり、前記目標位置1が所定の位置である場合、合焦状態とするために、前記第2のフォーカス機構を第2フォーカス位置記憶手段によって記憶された位置へ駆動するとともに、前記目標位置1にしたがって前記第1のフォーカス機構を駆動する第4の合焦制御手段を有することを特徴とする請求項1記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記第2のフォーカス位置を記憶するための第2フォーカス位置記憶手段と、前記第2のフォーカス機構が第2フォーカス位置記憶手段によって記憶された位置とは異なる位置にあり、前記目標位置2が前記第2フォーカス位置記憶手段によって記憶された位置とは異なる場合、合焦状態とするために、前記第1のフォーカス機構を所定の位置へ駆動するとともに、前記目標位置2にしたがって前記第2のフォーカス機構を駆動する第5の合焦制御手段を有することを特徴とする請求項1記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記第1から第4の自動合焦制御手段を切り替える切替手段を持つことを特徴とする請求項2から5記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記切替手段は、前記デフォーカス量が所定の値に基づいて切り替わることを特徴とする請求項7記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記切替手段は、前記デフォーカス量が所定の値よりも小さい場合は、第1又は第3の自動合焦制御手段に切り替わり、前記デフォーカス量が所定の値よりも大きい場合は、第2又は第4の自動合焦制御手段に切り替わることを特徴とする請求項8記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記第1のフォーカス機構の像側に前記ズーム機構を配置し、前記ズーム機構の像側に前記第2のフォーカス機構を配置したことを特徴とする請求項1記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記焦点検出手段は、前記ズーム機構と前記第2のフォーカス機構との間の光路中に配置された分岐手段からの分岐光束を用いて焦点を検出することを特徴とする請求項10記載のレンズ装置。
【請求項12】
前記焦点検出手段は、前記第1のフォーカスレンズ群を通る光束とは別の光束を用いて焦点を検出することを特徴とする請求項10記載のレンズ装置。
【請求項13】
第2フォーカス位置記憶手段によって記憶された位置は、調整されたフランジバック位置であることを特徴とする請求項2から6記載のレンズ装置。
【請求項14】
前記第1のフォーカス機構は、前玉フォーカス機構であり、前記第2のフォーカス機構は、リレー群のマクロ機構であることを特徴する請求項11から12記載のレンズ装置。
【請求項15】
前記所定の位置は、第1のフォーカス機構の至近側の端の位置であることを特徴とする請求項2、3、6記載のレンズ装置。
【請求項16】
前記所定の位置は、第1のフォーカス機構の至近側の端以外の位置であることを特徴とする請求項4から5記載のレンズ装置。
【請求項17】
前記目標位置1は、前記焦点検出手段が出力する評価値と、前記ズーム位置とにもとづいて算出されることを特徴とする請求項1のレンズ装置。
【請求項18】
前記目標位置2は、前記焦点検出手段が出力する評価値と、前記ズーム位置と、前記第1のフォーカス位置とにもとづいて算出されることを特徴とする請求項1のレンズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−123339(P2011−123339A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281445(P2009−281445)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】