説明

レンズ用金型及びウェーハレベルレンズ

【課題】成形されたレンズの中心位置やレンズピッチを高精度に測定することができるレンズ用金型及びウェーハレベルレンズを提供する。
【解決手段】本技術の一形態に係るレンズ用金型は、第1の成形面と、複数の第2の成形面と、複数のエッジ部とを具備する。上記第1の成形面は、第1の軸方向に平行な平面で形成される。上記複数の第2の成形面は、上記第1の軸方向に直交する第2の軸方向に平行な主軸をそれぞれ有する球面又は非球面で形成される。上記複数の第2の成形面は、上記第1の成形面に上記第1の軸方向に沿って第1のピッチで配置される。上記複数のエッジ部は、上記第1の成形面に前記複数の第2の成形面の各々に対応して設けられ、上記第1の軸方向に沿って上記第1のピッチで形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えば光学レンズ等の成形に用いられるレンズ用金型及びこれによって成形されるウェーハレベルレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製の光学レンズは通常、レンズ用の金型を用いて成形され、近年ではレンズの微小化あるいはレンズ面の形状の複雑化に伴い、レンズ面の高い形状精度が要求されている。例えば下記特許文献1には、レンズの両面を成形する一組の金型において、レンズの光軸に対応する金型の中心軸のまわりに突起部をそれぞれ有するレンズ用金型が記載されている。当該特許文献1においては、レンズ用金型によって成形されたレンズの両面に上記突起部に対応する溝がそれぞれ形成されるため、両溝の相対的な位置関係に基づいてレンズ形状の評価が可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−169930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、光学レンズの微小化あるいは形状の複雑化に伴い、レンズ領域と非レンズ領域との間の境界部を光学的に検出することが困難になりつつある。このため成形されたレンズの中心位置やレンズピッチを高い精度で測定することが非常に難しくなっている。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、成形されたレンズの中心位置やレンズピッチを高精度に測定することができるレンズ用金型及びウェーハレベルレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の一形態に係るレンズ用金型は、第1の成形面と、複数の第2の成形面と、複数のエッジ部とを具備する。
上記第1の成形面は、第1の軸方向に平行な平面で形成される。
上記複数の第2の成形面は、上記第1の軸方向に直交する第2の軸方向に平行な主軸をそれぞれ有する球面又は非球面で形成される。上記複数の第2の成形面は、上記第1の成形面に上記第1の軸方向に沿って第1のピッチで配置される。
上記複数のエッジ部は、上記第1の成形面に前記複数の第2の成形面の各々に対応して設けられ、上記第1の軸方向に沿って上記第1のピッチで形成される。
【0007】
上記レンズ用金型は、第1の成形面によって成形される平面部と、第2の成形面によって成形される複数のレンズ部とを有するレンズ素子を作製する。上記金型には、第2の成形面と同一のピッチで形成された複数のエッジ部が設けられているため、作製されるレンズ素子の平坦部には、上記エッジ部に対応する複数のエッジ形状が転写される。そこで、上記複数のエッジ部が第1の成形面に第2の成形面の各々に対応して形成されているため、当該エッジ部の外形観察や配列ピッチに基づいてレンズ部の中心位置や配列ピッチを測定することが可能となる。
【0008】
上記複数のエッジ部は、例えば、上記第1の成形面とのなす角が15°以上90°以下のエッジ面を有する。これにより、エッジ部を光学的に精度よく検出することができる。
【0009】
エッジ面の形成位置は特に限定されず、複数の第2の成形面の各々に対応して形成されていればよい。例えば、上記エッジ面は、上記主軸を中心とする円周上の少なくとも一部に形成される。この場合、エッジ面は、上記円周に沿って環状又は円弧状に形成されてもよいし、上記円周に外接する矩形状に形成されてもよい。これにより、成形されるレンズ部の中心位置の測定が可能となる。
【0010】
本技術の一形態に係るウェーハレベルレンズは、平面部と、複数のレンズ部と、複数のエッジ部とを具備する。
上記平面部は、透光性の樹脂材料で形成され、第1の軸方向に平行である。
上記複数のレンズ部は、上記第1の軸方向に直交する第2の軸方向に平行な光軸をそれぞれ有する球面又は非球面形状で形成される。上記複数のレンズ部は、上記平面部に上記第1の軸方向に沿って第1のピッチで配置される。
上記複数のエッジ部は、上記平面部に上記複数のレンズ部の各々に対応して設けられ、上記第1の軸方向に沿って上記第1のピッチで形成される。
【0011】
これにより成形されたレンズの中心位置やレンズピッチを高精度に測定することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本技術によれば、成形されたレンズの中心位置やレンズピッチを高精度に測定することができるレンズ素子あるいはウェーハレベルレンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本技術の第1の実施形態に係る金型原盤の構造を示す図であり、(A)はZ軸方向から見た平面図、(B)は(A)の[A]−[A]方向における断面図である。
【図2】本技術の第1の実施形態に係る金型原盤の要部の構造を示す図であり、(A)はZ軸方向から見た平面図、(B)は(A)の[B]−[B]方向における断面図である。
【図3】本技術の第1の実施形態に係るコピー型の作製工程を示す要部の概略断面図である。
【図4】上記コピー型の構造を示す図であり、(A)はZ軸方向から見た平面図、(B)は(A)の[C]−[C]方向における断面図である。
【図5】本技術の第1の実施形態に係るウェーハレベルレンズの構造を示す図であり、(A)はZ軸方向から見た平面図、(B)は(A)の[D]−[D]方向における断面図である。
【図6】2枚のウェーハレベルレンズを貼り合わせた複合レンズの作製工程を示す概略断面図であり、(A)は位置合わせ工程を示し、(B)は貼り合わせ工程を示す。
【図7】本技術の第2の実施形態に係る金型原盤の要部構造を示す図であり、(A)はZ軸方向から見た平面図、(B)は(A)の[E]−[E]方向における断面図である。
【図8】本技術の第3の実施形態に係る金型原盤の要部構造を示す図であり、(A)はZ軸方向から見た平面図、(B)は(A)の[F]−[F]方向における断面図である。
【図9】本技術の第4の実施形態に係る金型原盤の要部構造を示す図であり、(A)はZ軸方向から見た平面図、(B)は(A)の[G]−[G]方向における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、本技術に係るレンズ用金型を、複数のレンズ素子が同一平面内に所定ピッチで形成されたウェーハレベルレンズの製造用金型に適用した例を説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
(ウェーハレベルレンズの成形工程の概略)
本実施形態に係るウェーハレベルレンズの成形方法は、金型の原盤を作製する工程と、原盤からコピー型を作製する工程と、コピー型からウェーハレベルレンズを成形する工程とを有する。
【0016】
(原盤の作製工程)
図1は、原盤M1の構成を示す図であり、図1(A)はZ軸方向からの平面図、図1(B)は図1(A)の[A]−[A]方向における断面図である。また、図2は原盤M1の要部の構成を示す図であり、図2(A)はZ軸方向からの平面図、図2(B)は図2Aの[B]−[B]方向における断面図である。なお、図中において、X軸方向(第1の軸方向)およびY軸方向(第3の軸方向)は相互に直交する平面方向(例えば水平方向)を示し、Z軸方向(第2の軸方向)はX軸とY軸とにそれぞれ直交する方向を示す。
【0017】
原盤M1は、本体部M11と、平面部M12と、凸面部M13と、エッジ部M14とを有する。
【0018】
本体部M11は、典型的には板状の金属材料で構成されるが、これに限られない。本体部M11の一方側の表面は、平面部M12、凸面部M13及びエッジ部M14を有する構造面とされ、本体部M11の他方側の表面は平坦な面とされる。本体部M11の平面形状は特に限定されず、円形あるいは矩形状に形成される。
【0019】
平面部M12は、XY平面に平行な平坦な面で形成される。凸面部M13は、平面部M12上に複数形成され、Z軸と平行な主軸Lmを有する非球面形状で形成されている。凸面部M13は、平面部M12においてX軸方向、Y軸方向にそれぞれ所定のピッチPx(第1のピッチ)、ピッチPy(第2のピッチ)で等間隔に配置されている。主軸Lmもまた、X軸方向、Y軸方向にそれぞれピッチPx、ピッチPyで等間隔に配置されている。
【0020】
凸面部M13は、ウェーハレベルレンズのレンズ面に対応する形状を有しており、目的とするレンズ形状に応じて適宜形成される。従って本実施形態では、原盤M1から作製されるコピー金型には、凸面部M13に対応する形状の凹面部が形成され、当該コピー金型によって成形されるウェーハレベルレンズには、上記凹面部に対応する形状の凸面部が形成されることになる。
【0021】
凸面部M13は、非球面形状に限られず、作製されるウェーハレベルレンズの光学特性に応じた適宜の形状に形成され、例えば球面などの他の曲面形状で形成されてもよい。また凸面部M13は、凸面に限られず凹面で形成されてもよい。この場合、コピー金型を介して成形されるウェーハレベルレンズのレンズ面もまた、凹面形状となる。
【0022】
複数のエッジ部M14は、複数の凸面部M13の各々に対応して平面部M12にそれぞれ設けられており、X軸方向にピッチPxで、Y軸方向にピッチPyでそれぞれ等間隔に配置されている。エッジ部M14はそれぞれ同一の形状を有しており、図2(A),(B)に示すように凸面部M13の周囲を囲む円環状の丸溝で形成されている。これらエッジ部M14は、各々の凸面部M13の主軸Lmを中心とする仮想円V1の周囲に沿ってそれぞれ形成されている。エッジ部M14は、仮想円V1に沿って連続的に形成された円環状に限られず、仮想円V1の一部の領域に沿って形成された円弧状に形成されてもよい。
【0023】
各々のエッジ部M14は、平面部M12とのなす角Emが15°以上90°以下のエッジ面M140を有する。エッジ面M140は、エッジ部M14の外周側に形成されているが、内周側に形成されていてもよい。エッジ部M14は丸溝に限られず、角溝やV溝等であってもよい。
【0024】
以上のように構成される原盤M1は、本体部M11の表面を機械加工することで作製される。機械加工としては、典型的には、旋盤やボール盤等の切削加工装置が適用される。本実施形態では同一の切削工具を用いて、平面部M12、凸面部M13及びエッジ部M14がそれぞれ形成される。凸面部M13及びエッジ部M14は、平面部M12に規則性をもって配置されているため、座標値に基づく数値制御によってこれら複数の凸面部M13及びエッジ部M14を高精度に形成することができる。またエッジ部M14の溝形状やエッジ面の傾斜角(Em)等は、使用する切削工具の種類によって適宜設定でき、更に同一の工具を用いて加工することで、凸面部M13及びエッジ部M14の形状の均一性を確保することができる。
【0025】
また本実施形態においては、原盤M1にエッジ部M14が形成されているため、当該エッジ部M14の外形を観察することで凸面部M13の主軸Lm、すなわち凸面部M13の中心位置の測定が可能となる。特にエッジ面M140が上記角度範囲に形成されることでエッジ部M14の形状が明確となり、光学的な外観観察がより一層容易となる。したがって凸面部M13の微細化あるいは形状の複雑化に伴って、凸面部M13と平面部M12との境界を容易に認識できない場合であっても、エッジ部M14を介しての凸面部M13の中心位置の測定が可能となる。また、凸面部M13の配列ピッチの適正な評価も可能となる。
【0026】
(コピー型の作製工程)
図3(A)〜(C)は、コピー型C1の製造工程の一例を示す要部断面図である。本実施形態では、主に紫外線硬化樹脂を用いたコピー型C1の製造方法を説明する。
【0027】
まず図3(A)に示すように、原盤M1の凸面部M13を覆うように紫外線硬化型の樹脂Rを原盤M1の表面に塗布する。図示の例では、各凸面部M13に樹脂Rを所定量滴下する例を示しているが、これに限られず、原盤M1の表面全領域に樹脂Rを塗布してもよい。次に、図3(A)に示すように原盤M1の表面に基板C10が対向配置される。基板C10は例えば円盤形状の透明板であり、例えばガラス等の紫外線透過性の高い材料で形成される。
【0028】
続いて図3(B)に示すように、樹脂Rの上から基板C10を原盤M1に向けて押圧し、樹脂Rを挟んで基板C10を原盤M1へ密着させる。この状態で、基板10側から基板10を介して紫外線を樹脂Rに照射し、樹脂Rを硬化させる。硬化樹脂層R1の形成後、図3(C)に示すように基板10を硬化樹脂層R1とともに原盤M1から剥離する。これにより、基板10と硬化樹脂層R1とを有するコピー型C1が作製される。
【0029】
原盤M1に対する硬化樹脂層R1の剥離性を高めるために、原盤M1の表面に離型剤が塗布されてもよい。また、基板10には樹脂Rとの密着性を高めるための表面処理が施されてもよい。さらに、樹脂Rは硬化作業性と硬化時の収縮が少ないことから紫外線硬化型樹脂が好適であるが、紫外線硬化型の樹脂に限られず、電子線その他のエネルギー線硬化型の樹脂や、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が用いられてもよい。あるいは、コピー型は原盤M1の表面に形成された金属めっき層で構成されてもよい。
【0030】
以上のように、作製されるコピー型C1の硬化樹脂層R1の表面には、原盤M1の表面の凹凸形状に対応する形状が転写される。このとき原盤M1の平面部M12、凸面部M13及びエッジ部M14は、硬化樹脂層R1の表面を成形する成形面としてそれぞれ機能する。本実施形態では、平面部M12に対応する平面部C12と、凸面部M13に対応する凹面部C13と、エッジ部M14に対応するエッジ部C14とが、硬化樹脂層R1の表面にそれぞれ形成される。
【0031】
図4は、コピー型C1の構成を示す図であり、図4(A)はZ軸方向から見た平面図、図4(B)は図4(A)の[C]−[C]方向における断面図である。各々の凹面部C13は、Z軸方向に平行な主軸Lcを有しており、主軸Lcもまた、X軸方向にピッチPxで、Y軸方向にピッチPyで等間隔に配置されている。
【0032】
コピー型C1のエッジ部C14は、凹面部C13の周囲に、凹面部C13と同心的に環状に形成される。エッジ部C14は、凹面部C13の各々に対応してそれぞれ形成されており、X軸方向及びY軸方向にそれぞれピッチPx及びPyで配列される。エッジ部C14は、断面の外形が円弧形状の隆起部で形成され、その外周側には、平面部C12とのなす角Ecが15°以上90°以下のエッジ面C140を有する。エッジ面C140は、原盤M1のエッジ面M140によって形成される。
【0033】
本実施形態においては、コピー型C1にエッジ部C14が形成されているため、当該エッジ部C14の外形を観察することで凹面部C13の主軸Lc、すなわち凹面部C13の中心位置の測定が可能となる。特にエッジ面C140が上記角度範囲に形成されることでエッジ部C14の形状が明確となり、光学的な外観観察がより一層容易となる。したがって凹面部C13の微細化あるいは形状の複雑化に伴って、凹面部C13と平面部C12との境界を容易に認識できない場合であっても、エッジ部C14を介しての凹面部C13の中心位置の測定が可能となる。また、凹面部C13の配列ピッチの適正な評価も可能となる。
【0034】
本実施形態のコピー型C1は、ウェーハレベルレンズの成形用金型として用いられる。ウェーハレベルレンズは、例えば、光透過性を有する紫外線硬化樹脂や熱可塑性樹脂等で構成され、コピー型C1の平面部C12、凹面部C13及びエッジ部C14が形成された構造面を上記樹脂からなる層に転写することで成形される。ウェーハレベルレンズの成形方法は特に限定されず、上述のコピー型C1の成形方法と同様な方法で成形することができる。このようにして成形されたウェーハレベルレンズは、コピー型C1の構造面に対応する表面形状を有し、本実施形態では、原盤M1と同様な表面形状を有する。
【0035】
(ウェーハレベルレンズ)
図5(A),(B)は、コピー型C1によって成形されるウェーハレベルレンズ1を示しており、図5(A)はZ軸方向から見た平面図、図5(B)は図5(A)の[D]−[D]方向における断面図である。ウェーハレベルレンズ1は、基板10上に本体部11と、平面部12と、レンズ部13と、エッジ部14とを有する。平面部12、レンズ部13及びエッジ部14は、それぞれコピー型C1の平面部C12、凹面部C13およびエッジ部C14に対応する。
【0036】
各々のレンズ部13は、Z軸方向に平行な光軸(主軸)Lを有する凸面形状に形成される。各レンズ部13もまた、X軸方向にピッチPx、Y軸方向にピッチPyで等間隔に配置されている。
【0037】
基板10は、例えば円盤形状を有し、典型的にはガラス基板、樹脂等が採用される。本体部11は、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等が用いられる。本体部11の表面には、コピー型C1の表面の凹凸形状に対応する形状が転写される。このときコピー型C1の平面部C12、凹面部C13及びエッジ部C14は、本体部11の表面を成形する成形面としてそれぞれ機能する。本実施形態では、平面部C12に対応する平面部12と、凹面部C13に対応するレンズ部13と、エッジ部C14に対応するエッジ部14とが、本体部11の表面にそれぞれ形成される。
【0038】
基板10及び本体部11の形状、材料は上記の例に限られず、成形工程、目的とする光学用途等に応じて適宜選択することができる。必要に応じて、基板10の設置は省略されてもよい。基板10と本体部11の各々の屈折率差を小さくすることにより、界面における透過ロスを抑制することができる。
【0039】
エッジ部14は、レンズ部13と同心的にレンズ部13の周囲に形成された環状の丸溝であり、その外周側にエッジ面140を有する。エッジ面140は、コピー型C1のエッジ面C140に対応して形成されるため、平面部12とのなす角Eは、15°以上90°以下である。
【0040】
本実施形態においては、ウェーハレベルレンズ1にエッジ部14が形成されているため、当該エッジ部14の外形を観察することでレンズ部13の主軸L、すなわちレンズ部13の中心位置の測定が可能となる。特にエッジ面140が上記角度範囲に形成されることでエッジ部14の形状が明確となり、光学的な外観観察がより一層容易となる。したがってレンズ部13の微細化あるいは形状の複雑化に伴って、レンズ部13と平面部12との境界を容易に認識できない場合であっても、エッジ部14を介してのレンズ部13の中心位置の測定が可能となる。また、レンズ部13の配列ピッチの適正な評価も可能となる。
【0041】
以上のように構成されるウェーハレベルレンズ1は、典型的には、個々のレンズ単位で個片化、すなわちダイシングされる。この際、上述のようにエッジ部14を介して個々のレンズ部13の中心位置を測定することができるので高精度に個片化することができる。また、ウェーハレベルレンズ1は、それ単独でレンズシートとして使用されてもよい。
【0042】
また、以上のように構成されるウェーハレベルレンズ1は、同種又は異種のウェーハレベルレンズと組み合わせることで、光軸方向に複数のレンズ面を有する複合レンズを構成することができる。その一例を図6(A),(B)に示す。
【0043】
図6(A),(B)は、上記複合レンズの作製工程を説明する概略側面図である。ここでは、上記構成のウェーハレベルレンズ1(第1のウェーハレベルレンズ)と、当該ウェーハレベルレンズ1と同様な工程を経て製造される他のウェーハレベルレンズ2(第2のウェーハレベルレンズ)との組み合わせ例について説明する。
【0044】
第2のウェーハレベルレンズ2は、基板20と本体部21との積層構造を有し、本体部21の表面には平面部22、レンズ部23及びエッジ部24がそれぞれ形成されている。レンズ部23は、第1のウェーハレベルレンズ1のレンズ部13と同様に、X軸方向及びY軸方向にそれぞれピッチPx及びPyで配列されている。第2のウェーハレベルレンズ2は、第1のウェーハレベルレンズ1と同様に、原盤及びコピー型から作製されてもよい。この場合も、個々のレンズ部23に対応するように複数のエッジ部24が形成されるように上記原盤及びコピー型にも対応するエッジ形状が付与される。
【0045】
上記複合レンズの作製工程は、レンズ部13とレンズ部23とを相互に位置合わせする工程(図6(A))と、第1のウェーハレベルレンズ1と第2のウェーハレベルレンズ2とを相互に貼り合わせる工程(図6(B))とを有する。
【0046】
例えばレンズ部の裾野部分の傾斜角が15°未満と非常に緩やかな場合にレンズ部の外形形状を明瞭に観察することが困難となる。本実施形態によれば、ウェーハレベルレンズ1,2のレンズ部13,23各々の周囲にエッジ部14,24が形成されているので、エッジ部14,24を基準としたレンズ部13,23の光軸L1,L2の相対的な位置合わせが可能となる。これにより、レンズ形状に関わりなく、各レンズ部13,23の光軸L1,L2を整列させた状態で、ウェーハレベルレンズ1,2を高精度に貼り合わせることができる。
【0047】
ウェーハレベルレンズ1,2の貼り合わせには、典型的には、例えば紫外線硬化樹脂等の接着材料が用いられるが、これに限られず、基板10,20相互間の接合に陽極接合や拡散接合等の接合手法が採用されてもよい。第2のウェーハレベルレンズ2のレンズ部23は、第1のウェーハレベルレンズ1のレンズ部13と同様に凸形状を有するが、その曲率は図示するように異なっていてもよいし、あるいは同一でもよい。また本実施形態では、図6(A)に示すように、第1のウェーハレベルレンズ1の基板10と、第2のウェーハレベルレンズ2の基板20とが相互に対向するように貼り合わされる。これに限られず、例えば、第1のウェーハレベルレンズ1の基板10と第2のウェーハレベルレンズ2の本体部21とが相互に対向するように貼り合わされてもよい。
【0048】
上述のように作製された複合レンズは、レンズ素子単位で個片化される。これにより同一の光軸上に異なるレンズ面を有する複合レンズ素子を作製することができる。例えば、CMOSやCCD等の固体撮像素子と組み合わせることで、上記複合レンズ素子を搭載したイメージセンサを構成することができる。この場合、固体撮像素子を集積したウェーハに上記ウェーハレベルレンズを各々貼り合わせ、一括的にダイシングすることにより上記イメージセンサを効率よく生産することができる。
【0049】
<第2の実施形態>
図7は、本技術の第2の実施形態に係る原盤M2の要部を示し、図7(A)は、Z軸方向から見た平面図、図7(B)は図7(A)の[E]−[E]方向における断面図である。本実施形態では、第1の実施形態の構成および作用と同様な部分についてはその説明を省略または簡略化し、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0050】
本実施形態の原盤M2は、本体部M21と、X軸及びYに平行な平面で形成された平面部M22と、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ所定ピッチで配列され、Z軸と平行な主軸Lm2をそれぞれ有する複数の凸面部M23と、各凸面部M23に対応するように平面部M22に形成された複数のエッジ部M24とを有する。
【0051】
エッジ部M24は、第1の実施形態と同様に凸面部M23の周囲に形成され、平面部M22とのなす角Em2が15°以上90°以下であるエッジ面M240を有する。エッジ部M24は、図7(A)に示すように主軸Lm2を中心とする仮想円V2に外接する矩形状の凹所で形成され、エッジ部M24と平面部M22との境界部にエッジ面240が形成される。
【0052】
このような構造を有する原盤M2から、上述の第1の実施形態と同様に、コピー型が作製され、更に当該コピー型から原盤M2と同一の表面形状を有するウェーハレベルレンズが作製される。これにより、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
<第3の実施形態>
図8は、本技術の第3の実施形態に係る原盤M3の要部を示し、図8(A)は、Z軸方向から見た平面図、図8(B)は図8(A)の[F]−[F]方向における断面図である。本実施形態では、第1の実施形態の構成および作用と同様な部分についてはその説明を省略または簡略化し、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0054】
本実施形態の原盤M3は、本体部M31と、X軸及びY軸に平行な平面で形成された平面部M32と、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ所定ピッチで配列され、Z軸と平行な主軸Lm3をそれぞれ有する複数の凹面部M33と、各凹面部M33に対応するように平面部M32に形成された複数のエッジ部M34とを有する。エッジ部M34は、凹面部M33の周囲に形成され、平面部M32とのなす角Em3が15°以上90°以下であるエッジ面M340を有する。
【0055】
このような構造を有する原盤M3から、上述の第1の実施形態と同様に、コピー型が作製され、更に当該コピー型から原盤M3と同一の表面形状を有するウェーハレベルレンズが作製される。これにより、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0056】
<第4の実施形態>
図9は、本技術の第9の実施形態に係る原盤M4の要部を示し、図9(A)は、Z軸方向から見た平面図、図9(B)は図9(A)の[G]−[G]方向における断面図である。本実施形態では、第1の実施形態の構成および作用と同様な部分についてはその説明を省略または簡略化し、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0057】
本実施形態の原盤M4は、本体部M41と、X軸及びY軸に平行な平面で形成された平面部M42と、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ所定ピッチで配列され、Z軸と平行な主軸Lm4をそれぞれ有する複数の凸面部M43と、各凸面部M43に対応するように平面部M42に形成された複数のエッジ部M44とを有する。
【0058】
本実施形態のエッジ部M44は、凸面部M43に隣接して形成され、凸面部M43よりも小径の凹部で構成される。エッジ部M44の周囲には、平面部M22とのなす角Em4が15°以上90°以下であるエッジ面M440が形成される。このように全ての凸面部M43に対して、各々のエッジ部M44が同一の位置に形成される。これにより、隣接するエッジ部M44の配列ピッチを測定することで、凸面部M43の配列ピッチを相対的に測定することが可能となる。
【0059】
このような構造を有する原盤M4から、上述の第1の実施形態と同様に、コピー型が作製され、更に当該コピー型から原盤M4と同一の表面形状を有するウェーハレベルレンズが作製される。これにより、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
以上、本技術の実施形態について説明したが、本技術はこれに限定されることはなく、本技術の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0061】
例えば以上の実施形態では、原盤からコピー型を作製し、更に当該コピー型からウェーハレベルレンズを作製する例を説明したが、これに限られず、原盤から直接ウェーハレベルレンズを作製してもよい。すなわち、上記原盤及び上記コピー型はいずれも、レンズ用金型として用いることが可能である。
【0062】
また以上の実施形態では、主として、ウェーハレベルレンズの製造用金型として、原盤及びそのコピー型を説明したが、これに限られず、例えばフライアイレンズシートやレンチキュラーレンズシート等のように、レンズ素子が一次元方向あるいは二次元方向に等ピッチで配列された各種レンズシートの製造用金型にも、本技術は適用可能である。
【0063】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)第1の軸方向に平行な平面で形成された第1の成形面と、
前記第1の軸方向に直交する第2の軸方向に平行な主軸をそれぞれ有する球面又は非球面形状で形成され、前記第1の成形面に前記第1の軸方向に沿って第1のピッチで配置された複数の第2の成形面と、
前記第1の成形面に前記複数の第2の成形面の各々に対応して設けられ、前記第1の軸方向に沿って前記第1のピッチで形成された複数のエッジ部と
を具備するレンズ用金型。
(2)上記1に記載のレンズ用金型であって、
前記複数のエッジ部は、前記第1の成形面とのなす角が15°以上90°以下のエッジ面をそれぞれ有する
レンズ用金型。
(3)上記2に記載のレンズ用金型であって、
前記エッジ面は、前記主軸を中心とする円周上の少なくとも一部の領域に形成される
レンズ用金型。
(4)上記3に記載のレンズ用金型であって、
前記エッジ面は、前記円周に沿って環状又は円弧状に形成される
レンズ用金型。
(5)上記2に記載のレンズ用金型であって、
前記エッジ面は、前記円周に外接する矩形状に形成される
レンズ用金型。
(6)上記1〜5の何れか1つに記載のレンズ用金型であって、
前記第2の成形面は、凸面である
レンズ用金型。
(7)上記1〜5の何れか1つに記載のレンズ用金型であって、
前記第2の成形面は、凹面である
レンズ用金型。
(8)上記1〜7の何れか1つに記載のレンズ用金型であって、
前記複数の第2の成形面及び前記複数のエッジ部は、さらに、前記第1の成形面に前記第1及び第2の軸方向と直交する第3の軸方向に第2のピッチでそれぞれ配置される
レンズ用金型。
(9)透光性の樹脂材料で形成され第1の軸方向に平行な平面部と、
前記第1の軸方向に直交する第2の軸方向に平行な光軸をそれぞれ有する球面又は非球面形状で形成され、前記平面部に前記第1の軸方向に沿って第1のピッチで配置された複数のレンズ部と、
前記平面部に前記複数のレンズ部の各々に対応して設けられ、前記第1の軸方向に沿って前記第1のピッチで形成された複数のエッジ部と
を具備するウェーハレベルレンズ。
【符号の説明】
【0064】
1,2…ウェーハレベルレンズ
12,22…平面部
13,23…レンズ部
13,24…エッジ部
M1〜M4…原盤
M12…平面部
M13…凸面部
M14…エッジ部
M140…エッジ面
C1…コピー型
C12…平面部
C13…凹面部
C14…エッジ部
C140…エッジ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸方向に平行な平面で形成された第1の成形面と、
前記第1の軸方向に直交する第2の軸方向に平行な主軸をそれぞれ有する球面又は非球面形状で形成され、前記第1の成形面に前記第1の軸方向に沿って第1のピッチで配置された複数の第2の成形面と、
前記第1の成形面に前記複数の第2の成形面の各々に対応して設けられ、前記第1の軸方向に沿って前記第1のピッチで形成された複数のエッジ部と
を具備するレンズ用金型。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ用金型であって、
前記複数のエッジ部は、前記第1の成形面とのなす角が15°以上90°以下のエッジ面をそれぞれ有する
レンズ用金型。
【請求項3】
請求項2に記載のレンズ用金型であって、
前記エッジ面は、前記主軸を中心とする円周上の少なくとも一部の領域に形成される
レンズ用金型。
【請求項4】
請求項3に記載のレンズ用金型であって、
前記エッジ面は、前記円周に沿って環状又は円弧状に形成される
レンズ用金型。
【請求項5】
請求項2に記載のレンズ用金型であって、
前記エッジ面は、前記円周に外接する矩形状に形成される
レンズ用金型。
【請求項6】
請求項1に記載のレンズ用金型であって、
前記第2の成形面は、凸面である
レンズ用金型。
【請求項7】
請求項1に記載のレンズ用金型であって、
前記第2の成形面は、凹面である
レンズ用金型。
【請求項8】
請求項1に記載のレンズ用金型であって、
前記複数の第2の成形面及び前記複数のエッジ部は、さらに、前記第1の成形面に前記第1及び第2の軸方向と直交する第3の軸方向に第2のピッチでそれぞれ配置される
レンズ用金型。
【請求項9】
透光性の樹脂材料で形成され第1の軸方向に平行な平面部と、
前記第1の軸方向に直交する第2の軸方向に平行な光軸をそれぞれ有する球面又は非球面形状で形成され、前記平面部に前記第1の軸方向に沿って第1のピッチで配置された複数のレンズ部と、
前記平面部に前記複数のレンズ部の各々に対応して設けられ、前記第1の軸方向に沿って前記第1のピッチで形成された複数のエッジ部と
を具備するウェーハレベルレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−240352(P2012−240352A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114427(P2011−114427)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】