説明

レンズ装置および撮像装置

【課題】構造を複雑化することなく、赤外光を選択的に用いて撮像した画像の撮像精度の向上を図ること。
【解決手段】入射した光の強度に応じた電気信号を出力する撮像素子に外光を入射させるレンズ装置を用いて画像を撮像し、特定の波長域の光を吸収する光学フィルタを、撮像に際して外光が撮像素子に入射する光路上の第1の位置と光路上から退避する第2の位置との間で作動させるフィルタ支持機構を備える撮像装置において、赤外線カットフィルタが遮光位置に位置するか否かを判断し(ステップS309)、赤外線カットフィルタが退避位置に位置する場合にフォトセンサにおける発光素子を消灯させるようにした(ステップS310)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レンズ装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCDなどの撮像用の光電変換素子に入射する光の中から赤外光をカットする赤外線カットフィルタを備えるレンズ装置があった。このようなレンズ装置には、たとえば、夜間など可視光画像の撮影が困難である状況下において赤外光を用いた撮影を可能とするために、赤外光をカットする光軸上の位置と当該光軸上の位置から退避する位置との間で、赤外線カットフィルタを出し入れ自在とする光学フィルタ出し入れ機構を備えるものがあった。
【0003】
光学フィルタ出し入れ機構を備えるレンズ装置には、赤外光を発光する発光素子および発光素子から発光された赤外光を受光する受光素子を備え、受光素子における受光量の変化に応じて出力が変化するフォトインタラプタを用いて赤外線カットフィルタの位置を検出するようにしたものがあった。
【0004】
また、たとえば、レンズ鏡筒本体に対して光軸に沿って移動可能なレンズホルダーに保持されたレンズを備えるレンズ位置制御装置において、レンズの位置を検出する位置検出センサに対して供給する電源を、レンズの位置に応じて断続するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0005】
また、たとえば、光軸に沿って移動自在に支持されたレンズと当該レンズの位置を検出する位置検出手段を備えたテレビカメラ用レンズ装置において、レンズの停止が検出された場合には位置検出手段への電力供給を停止させるようにした技術があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
【0006】
また、たとえば、絞りの変化量をフォトセンサによって電気信号に変換する絞りエンコーダを備えたカメラの制御装置において、レリーズ動作中にのみフォトセンサの発光部に対する電力供給を許容するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献3を参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開平6−14238号公報
【特許文献2】特開平10−68862号公報
【特許文献3】実開昭61−124025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1〜3を含む従来の技術では、赤外線カットフィルタが光軸上の位置から退避する位置に位置づけられている場合に、赤外線カットフィルタの位置を検出するフォトインタラプタから発光された赤外光が、検出片あるいは発光素子の周辺に位置する部材によって反射されて撮像用の光電変換素子に入射し、赤外光を用いた画像の撮像精度が低下するという問題があった。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、構造を複雑化することなく、特定波長の光を選択的に用いて撮像した画像の撮像精度の向上を図ることができるレンズ装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明にかかるレンズ装置は、入射した光の強度に応じた電気信号を出力する撮像用の光電変換素子に外光を入射させるレンズ装置であって、特定の波長域の光を吸収する光学フィルタと、前記光学フィルタを、撮像に際して前記外光が前記光電変換素子に入射する光路上の第1の位置と前記光路上から退避する第2の位置との間で作動させるフィルタ支持機構と、前記光電変換素子に対して前記光学フィルタ側に設けられた発光素子および当該発光素子が発光した光を受光する受光素子を備え、前記光学フィルタの位置に応じて出力が変化する光センサと、前記光センサからの出力に応じて、前記光学フィルタが前記第2の位置に位置づけられている場合に前記発光素子を消灯させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、第1の位置と第2の位置とに選択的に位置づけられる光学フィルタの位置を光を用いて検出する場合でも、機械的な機構を設けることなく、発光素子が発光した光が光電変換素子に入射することを防止することができる。これによってレンズ装置は、構造を複雑化することなく、特定波長の光を選択的に用いて撮像した画像の撮像精度の向上を図ることができる。そして、これによってレンズ装置の利用者は、構成の簡易化によって小型化されたレンズ装置を用いて、目的に応じた波長域の光を用いて良好な画像を撮像することができる。
【0012】
また、この発明にかかるレンズ装置における前記光学フィルタは、赤外光を吸収し、前記光センサにおける前記発光素子は、赤外光を発光することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、赤外光を吸収する光学フィルタの位置を波長の長い赤外光を用いて検出する場合でも、機械的な機構を設けることなく、発光素子が発光した赤外光が光電変換素子に入射することを防止することができる。これによってレンズ装置は、構成の簡易化および、光学フィルタの位置を検出するために消費する電力の消費量の抑制を図りつつ、赤外光を除去した画像と、赤外光を用いた画像と、を撮像することができる。そして、これによってレンズ装置の利用者は、構成の簡易化によって小型化されたレンズ装置を用いて、赤外光を除去した鮮明な画像と、可視光下では視認困難な画像と、を撮像することができる。
【0014】
また、この発明にかかる撮像装置は、撮像装置に入射した光の強度に応じた電気信号を出力する撮像用の光電変換素子と、前記撮像用の光電変換素子に外光を入射させるレンズ装置と、を備え、前記レンズ装置は、特定の波長域の光を吸収する光学フィルタと、前記光学フィルタを、撮像に際して前記外光が前記光電変換素子に入射する光路上の第1の位置と前記光路上から退避する第2の位置との間で作動させるフィルタ支持機構と、前記光電変換素子に対して前記光学フィルタ側に設けられた発光素子および当該発光素子が発光した光を受光する受光素子を備え、前記光学フィルタの位置に応じて出力が変化する光センサと、前記光センサからの出力に応じて、前記光学フィルタが前記第2の位置に位置づけられている場合に前記発光素子を消灯させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、簡易な構造によって、精度よく、特定の波長域の光を撮像用の光電変換素子に入射させることができる。これによって撮像装置は、構造を複雑化することなく、特定波長の光を選択的に用いて撮像した画像の撮像精度の向上を図ることができる。そして、これによって撮像装置の利用者は、構成の簡易化によって小型化された撮像装置を用いて、特定の波長域の光を用いた画像を精度よく撮像することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるレンズ装置および撮像装置によれば、構造を複雑化することなく、特定波長の光を選択的に用いて撮像した画像の撮像精度の向上を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるレンズ装置および撮像装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は、実施の形態の撮像装置の概略構成を示す説明図である。はじめに、図1を用いて、実施の形態の撮像装置の概略構成について説明する。図1に示したように、撮像装置100は、第1〜第4レンズ群101〜104を備えている。第1〜第4レンズ群101〜104は、光軸に沿って第1レンズ群101、第2レンズ群102、第3レンズ群103、第4レンズ群104の順に配列されている。
【0019】
第1レンズ群101は、被写体側に配置される。実施の形態における第1レンズ群101は、たとえば、対物レンズと称される固定レンズによって実現される。第2レンズ群102は、光軸方向において第1レンズ群101を間にして、被写体とは反対側に配置されている。実施の形態における第2レンズ群102は、たとえば、バリエータレンズによって実現される。第2レンズ群102をバリエータレンズによって実現する場合、第2レンズ群102を光軸方向に移動可能としてもよい。この場合、第2レンズ群102は、主にズーム調整に際して光軸方向に移動する。
【0020】
第3レンズ群103は、光軸方向において、第2レンズ群102を間にして、第1レンズ群101とは反対側に配置されている。実施の形態における第3レンズ群103は、たとえば、固定レンズによって実現される。第4レンズ群104は、光軸方向において、第3レンズ群103を間にして、第2レンズ群102とは反対側に配置されている。第4レンズ群104は、たとえば、フォーカスレンズによって実現される。第4レンズ群104をフォーカスレンズによって実現する場合、第4レンズ群104を光軸方向に移動可能としてもよい。この場合、第4レンズ群104は、主にフォーカス調整に際して光軸方向に移動する。
【0021】
光軸方向において第2レンズ群102と第3レンズ群103との間には、絞り105が設けられている。絞り105は、第2レンズ群102側から絞り105を通過して第3レンズ群103へ入射する光量(開口数)を調整する。光軸方向において、第4レンズ群104を間にして、第3レンズ群103とは反対側には、撮像素子106が配置されている。撮像素子106は、入射光量に応じた電気信号を出力する。撮像素子106は、たとえば、CCD(Charge Coupled Device)などによって実現される。撮像素子106は、光の入射面が第4レンズ群104の焦点位置となる位置に設けられている。
【0022】
光軸方向において、第4レンズ群104と撮像素子106との間には、赤外線カットフィルタ107が配置されている。赤外線カットフィルタ107は、第4レンズ群104を通過して赤外線カットフィルタ107に入射した光の中から赤外光を吸収し、赤外光以外の光を撮像素子106側へ通過させる。赤外線カットフィルタ107は、光軸上で赤外光を遮光する遮光位置と、当該遮光位置とは異なり光軸上から退避した退避位置と、の間で移動自在に設けられている。
【0023】
赤外線カットフィルタ107は、アクチュエータ108を備える光学フィルタ出し入れ機構109によって、遮光位置または退避位置に選択的に位置づけられる。実施の形態においては、光学フィルタ出し入れ機構109によってフィルタ支持機構が実現されている。アクチュエータ108は、たとえば、ステッピングモータなどによって実現される。図示を省略するが、光学フィルタ出し入れ機構109は、アクチュエータ108が発生させる駆動力の方向に応じて、赤外線カットフィルタ107を遮光位置から退避位置へ、または、退避位置から遮光位置へ移動させる。
【0024】
アクチュエータ108は、制御手段としての制御部110から出力された制御信号に応じて、赤外線カットフィルタ107を遮光位置から退避位置へ移動させる方向、または、赤外線カットフィルタ107を退避位置から遮光位置へ移動させる方向への駆動力を適宜選択的に発生させる。
【0025】
図示を省略するが、制御部110は、レンズ装置が備える各部を制御するCPU、CPUが実行する各種のプログラムや当該プログラムの実行に際して用いるデータなどを記録するメモリ、アクチュエータ108などを駆動する各種のドライバなど備えている。
【0026】
図1中符号111は、光センサとしてのフォトセンサである。フォトセンサ111は、赤外光を発光する発光素子と、発光素子が発光した光を受光可能な位置に設けられた受光素子とを備えている(図2中符号201、202を参照。)。発光素子は、たとえば、発光ダイオードなどによって実現される。発光素子は、制御部110から出力された発光素子制御信号にしたがって、発光素子に対して電力供給がなされている場合に発光する。
【0027】
フォトセンサ111において、発光素子と受光素子との間には、発光素子への電力供給中に、発光素子が発光した光が受光素子に入射する光路が形成される。フォトセンサ111は、発光素子と受光素子との間に形成された光路が遮断されたか否かに応じて、出力が変化する。図1中図示を省略するが、上述した赤外線カットフィルタ107には、赤外光を遮光する材料を用いて形成された検出片(図2を参照。)が設けられている。検出片は、赤外線カットフィルタ107が遮光位置と退避位置との間を移動する際に、フォトセンサ111の光路を遮断する位置に設けられている。
【0028】
フォトセンサ111からの出力は、赤外線カットフィルタ107の移動にともなって移動する検出片によって光路が遮断された場合に変化する。フォトセンサ111からの出力は、制御部110に入力される。制御部110は、フォトセンサ111からの出力に応じて、電力供給あるいは電力供給停止を指示する発光素子制御信号を出力する。実施の形態においては、図1に示した各部101〜111のうち、撮像素子106を除く各部101〜105,107〜111によってレンズ装置が実現されている。
【0029】
図2は、フォトセンサ111の概略構成を示す説明図である。つぎに、図2を用いて、フォトセンサ111の概略構成について説明する。図2中符号200は、上述した検出片である。図2に示したように、フォトセンサ111は、上述した発光素子201と受光素子202とを備えている。フォトセンサ111において、受光素子202は、発光素子201が発光した光の光路上に位置するように発光素子201に対して対向配置されている。
【0030】
実施の形態のフォトセンサ111における発光素子201は、赤外線発光ダイオード203を用いて赤外光を発光する。赤外線発光ダイオード203のマイナス端子は、抵抗Rとバッファ204を介して、上述した制御部110の出力端子221に接続されている。フォトセンサ111の受光素子202におけるトランジスタ205のコレクト端子は、制御部110の入力端子222に接続されている。
【0031】
フォトセンサ111においては、制御部111から発光素子制御信号が出力されると、赤外線発光ダイオード203が発光する。赤外線発光ダイオード203が発光している間は、赤外線発光ダイオード203とトランジスタ205との間に、光路206が形成される。光路206が検出片200によって遮断されていない場合、赤外線発光ダイオード203が発光した赤外光は、受光素子202に照射される。この場合、トランジスタ205がon状態となり、入力端子222を介して、Lowレベルの信号が制御部110に入力される。
【0032】
光路206が検出片200によって遮断されている場合、赤外線発光ダイオード203が発光した赤外光は、検出片200によって遮断されて受光素子202には照射されない。この場合、トランジスタ205がoff状態となり、入力端子222を介して、Highレベルの信号が制御部110に入力される。
【0033】
制御部110は、アクチュエータ108による赤外線カットフィルタ107の駆動方向、入力端子222を介してフォトセンサ111から制御部110に入力される信号、および、当該信号が入力されてからのアクチュエータ108の駆動量に応じて、赤外線カットフィルタ107が退避位置に位置づけられたか遮光位置に位置づけられたかを判断する。
【0034】
(撮像装置の処理手順)
図3は、撮像装置100の処理手順を示すフローチャートである。つぎに、図3を用いて、撮像装置の処理手順について説明する。図2に示したように、レンズ装置は、まず、電源on操作があるまで待って(ステップS301:No)、あった場合(ステップS301:Yes)には、発光素子201への電力供給を開始する(ステップS302)とともに、初期動作をおこなう(ステップS303)。
【0035】
ステップS303の初期動作においては、前回の電源off操作があった時点での赤外線カットフィルタ107の位置に拘わらず、赤外線カットフィルタ107を退避位置から遮光位置へ移動させる方向にアクチュエータ108を駆動し、入力端子222を介してフォトセンサ111から制御部110に入力される信号にしたがって、赤外線カットフィルタ107を遮光位置に位置づける。
【0036】
また、ステップS303の初期動作においては、赤外線カットフィルタ107が遮光位置に位置づけられた状態から、赤外線カットフィルタ107を遮光位置から退避位置へ移動する方向へアクチュエータ108を駆動し、さらに、入力端子222を介してフォトセンサ111から制御部110に入力される信号にしたがって、赤外線カットフィルタ107を退避位置に位置づける。
【0037】
また、ステップS303の初期動作においては、たとえば、アクチュエータ108としてステッピングモータを用いた場合であれば、赤外線カットフィルタ107を遮光位置および退避位置へ位置づけた際のステッピングモータのパルス数などに基づいて、赤外線カットフィルタ107の遮光位置および退避位置を検出し、検出された遮光位置および退避位置に関する情報を上述したメモリに記憶する。
【0038】
また、ステップS303の初期動作においては、たとえば、アクチュエータ108としてDCモータを用いた場合であれば、DCモータが備えるロータリエンコーダからの出力に基づいて、赤外線カットフィルタ107の遮光位置および退避位置を検出し、検出された遮光位置および退避位置に関する情報を上述したメモリに記憶する。
【0039】
その後、発光素子201における赤外線発光ダイオード203を発光させた状態で、所定の入力操作を受け付けることによる赤外線カットフィルタ107の移動指示があるまで待つ(ステップS304:No)。赤外線カットフィルタ107の移動指示があった場合(ステップS304:Yes)には、発光素子201への電力供給中であるか否かを判断する(ステップS305)。
【0040】
ステップS305において、発光素子201への電力供給中である場合(ステップS305:Yes)には、ステップS307へ移行する。発光素子201への電力供給中ではない場合(ステップS305:No)には、発光素子201への電力供給を開始し(ステップS306)、発光素子201における赤外線発光ダイオード203を発光させて、ステップS307へ移行する。
【0041】
ステップS307においては、ステップS304における赤外線カットフィルタ107の移動指示が、退避位置への移動指示であるか否かを判断し(ステップS307)、退避位置への移動指示である場合(ステップS307:Yes)には、赤外線カットフィルタ107が退避位置へ移動する方向にアクチュエータ108を駆動する(ステップS308)とともに、入力端子222を介してフォトセンサ111から制御部110に入力される信号にしたがって、赤外線カットフィルタ107が検出位置を通過するまで待つ(ステップS309:No)。
【0042】
ステップS309において、赤外線カットフィルタ107が検出位置を通過した場合(ステップS309:Yes)には、発光素子201への電力供給を停止し(ステップS310)、赤外線カットフィルタ107が検出位置を通過してからのアクチュエータ108の駆動量にしたがって、赤外線カットフィルタ107が退避位置に到達するまで待つ(ステップS311:No)。
【0043】
ステップS311において、赤外線カットフィルタ107が退避位置に到達した場合(ステップS311:Yes)には、アクチュエータ108を停止して(ステップS312)、電源off操作があったか否かを判断する(ステップS313)。電源off操作がない場合(ステップS313:No)にはステップS304へ戻り、電源off操作があった場合(ステップS313:Yes)には一連の処理を終了する。
【0044】
ステップS307において、ステップS304における赤外線カットフィルタ107の移動指示が、退避位置への移動指示ではない場合(ステップS307:No)には、遮光位置への移動指示であると判断して、赤外線カットフィルタ107が遮光位置へ移動する方向にアクチュエータ108を駆動する(ステップS314)とともに、入力端子222を介してフォトセンサ111から制御部110に入力される信号にしたがって、赤外線カットフィルタ107が検出位置を通過するまで待つ(ステップS315:No)。
【0045】
ステップS315において、赤外線カットフィルタ107が検出位置を通過した場合(ステップS315:Yes)には、赤外線カットフィルタ107が検出位置を通過してからのアクチュエータ108の駆動量にしたがって、赤外線カットフィルタ107が遮光位置に到達するまで待つ(ステップS316:No)。赤外線カットフィルタ107が遮光位置に到達した場合(ステップS316:Yes)には、ステップS312へ移行する。
【0046】
上述した図3に示した処理手順においては、赤外線カットフィルタ107が検出位置を通過した場合に発光素子201への電力供給を停止するようにしたが、これに限るものではない。たとえば、赤外線カットフィルタ107が退避位置に到達し、アクチュエータ108を停止するタイミングで発光素子201への電力供給を停止するようにしてもよい。
【0047】
第1レンズ群101や第2レンズ群102などによって形成される焦点位置を撮像素子106の入射面上とする(以下、「ピントを合わせる」という。)ための第1レンズ群101や第2レンズ群102などの位置は、赤外線カットフィルタ107が遮光位置にあるか退避位置にあるかに応じて異なる。具体的には、たとえば、赤外線カットフィルタ107が遮光位置にある状態でピントを合わせた状態から、赤外線カットフィルタ107を退避位置に移動させるようにアクチュエータ108を駆動すると、焦点位置にずれが生じて、撮像素子106に結像される画像のピントがぼけた状態となる。
【0048】
このため、アクチュエータ108の駆動中は、アクチュエータ108を駆動することによって、赤外線カットフィルタ107が遮光位置から移動して、発光素子201が発光した赤外光が撮像素子106に入射した場合にも、撮像素子106に入射した赤外光が撮像される画像に与える悪影響は小さい。このようなことから、撮像装置100においては、アクチュエータ108の駆動中に発光素子201への電力供給を必ずしも停止する必要はなく、赤外線カットフィルタ107が退避位置に到達し、アクチュエータ108を停止するタイミングで発光素子201への電力供給を停止するように制御することが可能となる。
【0049】
また、アクチュエータ108を駆動することによって、赤外線カットフィルタ107の枠が光軸を横切った場合、撮像素子106に結像される画像に赤外線カットフィルタ107の枠が含まれてしまう。すなわち、アクチュエータ108の駆動中には撮像を目的とする画像ではない画像が撮像素子106に結像されるため、アクチュエータ108を駆動することによって、赤外線カットフィルタ107が遮光位置から移動して、発光素子201が発光した赤外光が撮像素子106に入射した場合にも、撮像素子106に入射した赤外光が撮像される画像に与える悪影響は小さい。
【0050】
このようなことからも、撮像装置100においては、アクチュエータ108の駆動中に発光素子201への電力供給を必ずしも停止する必要はなく、赤外線カットフィルタ107が退避位置に到達し、アクチュエータ108を停止するタイミングで発光素子201への電力供給を停止するように制御することが可能となる。
【0051】
いずれのタイミングで発光素子201への電力供給を停止する場合にも、赤外線カットフィルタ107が退避位置に位置づけられている場合に発光素子201への電力供給を停止することで、発光素子201が発光した赤外光が撮像素子106に入射することを防止することができる。
【0052】
また、上述した図3に示した処理手順のステップS307において、ステップS304における赤外線カットフィルタ107の移動指示が退避位置への移動指示ではないと判断した場合には、発光素子201への電力供給を継続するように説明したが、これに限るものではない。赤外線カットフィルタ107が検出位置を通過したタイミングで発光素子201への電力供給を停止するようにしてもよい。この場合、以降、ステップS304において赤外線カットフィルタ107の移動指示があった場合には、移動指示があった時点における赤外線カットフィルタ107の位置に拘わらず、発光素子201への電力供給を開始する。
【0053】
上述したように、撮像装置100において、赤外光を発光するフォトセンサ111を用いて赤外線カットフィルタ107の位置を検出するレンズ装置を用いた場合、赤外線カットフィルタ107が退避位置に位置づけられている間に発光素子201を発光させると、発光素子201が発光した赤外光、あるいは、当該赤外光が検出片200や発光素子201の周辺に位置する部材によって反射されることによる反射赤外光が撮像素子106に入射してしまうことが想定される。
【0054】
この場合、外部の画像を赤外光を用いて撮像するために赤外線カットフィルタ107を退避位置に位置づけたにも拘わらず、レンズ装置の外部から入射した光(以下、「外光」という。)以外の赤外光が撮像素子に入射することとなり、赤外光を用いた画像の撮像精度が低下することが懸念される。具体的に、たとえば、外光以外の赤外光が撮像素子106に入射する状況として、以下に示すような状況がある。
【0055】
図4〜図7は、フォトセンサ111と撮像素子106との関係を示す説明図((その1)〜(その4))である。図4は赤外線カットフィルタ107が遮光位置に位置づけられている状態を示し、図5〜図7は赤外線カットフィルタ107が退避位置に位置づけられている状態を示している。
【0056】
図4に示したように、赤外線カットフィルタ107が遮光位置に位置づけられている状態では、フォトセンサ111の発光素子201における赤外線発光ダイオード203から発光された赤外光は、赤外線カットフィルタ107に吸収されて、撮像素子106へは入射しない。一方、図5に示したように、赤外線カットフィルタ107が退避位置に位置づけられている状態では、フォトセンサ111の発光素子201における赤外線発光ダイオード203から発光された赤外光のうち、受光素子202以外の部分に拡散した赤外光が撮像素子106へ入射する場合がある。
【0057】
図5に示した不具合は、たとえば、図6に示したように、赤外線カットフィルタ107が退避位置に位置づけられている状態において、上述した検出片200が光路206を遮断するように構成することで、受光素子202以外の部分に拡散した赤外光が撮像素子106へ直接入射することは回避できる。しかし、図6に示した状態では、検出片200に照射された光が検出片200によって反射され、反射された赤外光のうちさらに別の部材に反射された赤外光が撮像素子106へ入射する場合がある。
【0058】
また、図7に示したように、赤赤外線カットフィルタ107が退避位置に位置づけられている状態では、フォトセンサ111の発光素子201における赤外線発光ダイオード203から発光された赤外光のうち、受光素子202におけるトランジスタ205以外の部分に照射された光が受光素子202によって反射される場合がある。この場合、反射された赤外光のうち、さらに別の部材に反射された赤外光が撮像素子106へ入射する場合がある。
【0059】
これに対して、上述した実施の形態のレンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置100によれば、遮光位置と退避位置とに選択的に位置づけられる赤外線カットフィルタ107の位置を、赤外光を用いるフォトセンサ111によって検出する場合でも、機械的な機構を設けることなく、発光素子201における赤外線発光ダイオード203が発光した赤外光が撮像素子106に入射することを防止することができる。
【0060】
これによってレンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置100は、構造を複雑化することなく、赤外光を選択的に用いて撮像した画像の撮像精度の向上を図ることができる。そして、これによってレンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置100の利用者は、構成の簡易化によって小型化されたレンズ装置を用いて、赤外光を用いた画像(暗視画像)を精度よく撮像することができる。
【0061】
また、実施の形態のレンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置100によれば、赤外光を吸収する光学フィルタの位置を波長の長い赤外光を用いて検出する場合でも、機械的な機構を設けることなく、発光素子201が発光した赤外光が光電変換素子に入射することを防止することができる。
【0062】
これによってレンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置100は、構成の簡易化および、光学フィルタの位置を検出するために消費する電力の消費量の抑制を図りつつ、赤外光を除去した画像と、赤外光を用いた画像と、を撮像することができる。そして、これによってレンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置100の利用者は、構成の簡易化によって小型化されたレンズ装置を用いて、赤外光を除去した鮮明な画像と、可視光下では視認困難な画像と、を撮像することができる。
【0063】
また、実施の形態のレンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置100によれば、赤外線カットフィルタ107が退避位置に位置づけられている場合には、フォトセンサ111の発光素子201における赤外線発光ダイオード203への電力供給を停止することで、レンズ装置における消費電力の低減を図ることができる。
【0064】
これによってレンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置100は、充電や電池交換などをともなうことなく連続して使用できる時間を長くすることができ、充電や電池交換などによる利用者の作業負担の軽減を図ることができる。そして、これによってレンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置100の利用者は、充電や電池交換などの煩雑な作業を頻繁におこなうことなく、レンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置100を長時間連続して使用することができる。
【0065】
上述した実施の形態においては、特定波長の光として赤外光を発光する赤外線発光ダイオード203を備えるフォトセンサ111を用いたが、フォトセンサ111は、赤外光を発光するものに限らない。たとえば、紫外光であってもよいし、Nμm〜Mμm(N,Mは任意の正の数値)のように特定の波長範囲の光であってもよいし、全波長範囲の光であってもよい。
【0066】
上述した実施の形態においては、図3に示した処理手順を撮像装置100が備える制御部110によっておこなう場合について説明したが、これに限るものではない。たとえば、制御部110とは別に、レンズ装置が備える各部を制御する制御部をレンズ装置に設け、レンズ装置が備える制御部によって上述した図3に示した処理手順をおこなうようにしてもよい。
【0067】
以上説明したように、レンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置100によれば、構造を複雑化することなく、赤外光を選択的に用いて撮像した画像の撮像精度の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明にかかるレンズ装置および撮像装置は、特定波長を用いた画像を選択的に撮像する際に用いる光学フィルタを備えるレンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置に有用であり、特に、赤外線を用いた画像を選択的に撮像するために赤外線カットフィルタの出し入れ機構を備えるレンズ装置および当該レンズ装置を用いた撮像装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施の形態の撮像装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】フォトセンサの概略構成を示す説明図である。
【図3】撮像装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】フォトセンサと撮像素子との関係を示す説明図(その1)である。
【図5】フォトセンサと撮像素子との関係を示す説明図(その2)である。
【図6】フォトセンサと撮像素子との関係を示す説明図(その3)である。
【図7】フォトセンサと撮像素子との関係を示す説明図(その4)である。
【符号の説明】
【0070】
100 撮像装置
106 撮像素子
107 赤外線カットフィルタ
111 フォトセンサ
110 制御部
201 発光素子
202 受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光の強度に応じた電気信号を出力する撮像用の光電変換素子に外光を入射させるレンズ装置であって、
特定の波長域の光を吸収する光学フィルタと、
前記光学フィルタを、撮像に際して前記外光が前記光電変換素子に入射する光路上の第1の位置と前記光路上から退避する第2の位置との間で作動させるフィルタ支持機構と、
前記光電変換素子に対して前記光学フィルタ側に設けられた発光素子および当該発光素子が発光した光を受光する受光素子を備え、前記光学フィルタの位置に応じて出力が変化する光センサと、
前記光センサからの出力に応じて、前記光学フィルタが前記第2の位置に位置づけられている場合に前記発光素子を消灯させる制御手段と、
を備えることを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記光学フィルタは、赤外光を吸収し、
前記光センサにおける前記発光素子は、赤外光を発光することを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
入射した光の強度に応じた電気信号を出力する撮像用の光電変換素子と、
前記撮像用の光電変換素子に外光を入射させるレンズ装置と、
を備え、
前記レンズ装置は、
特定の波長域の光を吸収する光学フィルタと、
前記光学フィルタを、撮像に際して前記外光が前記光電変換素子に入射する光路上の第1の位置と前記光路上から退避する第2の位置との間で作動させるフィルタ支持機構と、
前記光電変換素子に対して前記光学フィルタ側に設けられた発光素子および当該発光素子が発光した光を受光する受光素子を備え、前記光学フィルタの位置に応じて出力が変化する光センサと、
前記光センサからの出力に応じて、前記光学フィルタが前記第2の位置に位置づけられている場合に前記発光素子を消灯させる制御手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−131562(P2008−131562A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317040(P2006−317040)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】