説明

レーザによるカラーマーキング方法

【課題】色彩模様を安価に細やかに表現できるレーザによるカラーマーキング方法を提供する。
【解決手段】金属6の表面にレーザ5dを照射し、該表面の全域或いはその一部を変色させた後、該変色部分内に更にレーザ5dを照射して所定の色に変色させる金属のカラーマーキング方法である。本方法では、レーザ光を金属表面上に2回以上の複数回照射することにより、彩度が高く色階調の多い複雑な紋様を金属表面に描くことが可能になる。本方法において、レーザ照射を高出力で行ったのち、2回目以降のレーザ照射を同出力又は低出力で行うことにより、より彩度の高い紋様を得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の表面にレーザを用いて色彩模様を形成させ、あるいは芸術的な紋様を製作する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属表面、又は透明又は半透明のガラス、又はプラスチック、又はセラミックス等へ文字、模様などの加工で色を付ける加工方法は、従来から例えば刻印を施されたものにインク等の液体を入れ込む、塗装、印刷、エッチング、ブラスト、などの方法がある。
しかし、これらの方法は、手作業によるものが殆どで、その量産性や品質の均一性などの点で難がある。
【0003】
また、金属表面等に火炎、レーザ等の熱源を加えれば該金属表面が変色することは公知である。
例えば、特許文献1に記載されているように、金属表面にレーザを照射し更に該照射表面を反応性ガス中で熱処理する方法がある。しかし、この方法では、金属表面にレーザを照射した効果が反応性ガス中での熱処理で一部分減じることがある。
また、特許文献2に記載されているように、窒素を含む空気中でレーザを純チタンの金属表面上に照射して発色・模様形成させる方法がある。しかし、この方法は、単に純チタンの金属表面上にレーザを照射するだけなので微妙な色彩が表現できないという欠点がある。
また、基盤表面上にチタンを蒸着し同チタン被膜を酸化処理してその一部を酸化チタン被膜にした上、レーザ照射して該表面を模様化する方法がある。
【0004】
また、素地の上に下地層と上部層の二層を施し、その上部層のみをレーザによって昇華させ下地層を表面に出すことによりレーザを照射した部分のみ別な色(下地層の色)を表現する方法がある。
しかし、この方法では、手間、コストがかかる欠点がある。
【0005】
更に、ガラス等の内部にレーザ光を収斂させて焦点で気泡を発生させて紋様を発生させる方法があるが、色彩を出すことが難しいし、ガラス内にバリウム・ストロンチューム、銅等の発色元素を入れてガラス内部に発色させる方法があるがコスト高になるという問題がある。また、ガラス等の裏面に効果的に色彩を出す方法が無いという問題がある。また、加工処理したものを内部から発光させる方法がないという問題もある。
【0006】
一方、金属の発色については、陽極酸化による酸化膜の形成がすでに知られているが、このような原理を用いて或る文字、模様等を表現するには、表現部以外の部分を樹脂膜等でマスキングを施した上で、これを電解質溶液中に漬けて電流を流す必要があり、特に実用性の点で問題がある。
【特許文献1】特開平6−212451号公報
【特許文献2】特開平4−41662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決しようとするもので、色彩模様を安価に細やかに表現できるレーザによるカラーマーキング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、レーザ光、熱処理炉、ガス成分、レーザ処理方法を組み合わせることにより、効果的に安価に良い色彩紋様が得られるようにしたものである。
【0009】
従来技術の課題を解決するため、この発明ではレーザ加工機から全表面或いはその一部を変色させた金属表面にレーザ光を照射し、照射した部分に酸化皮膜を形成し、この酸化皮膜と素地金属との屈折率の差に起因した光の干渉作用を利用して所望の色を発色させるレーザによるカラーマーキング方法において、レーザ加工機から与えるレーザ光の発振出力、照射時間、繰返し回数、ビームスポットサイズ、焦点距離、パルス周波数等を所定の値に選ぶことにより、所定の色を発色させることを特徴としている。レーザ光の波長は、炭酸ガスレーザ・YAGレーザ・エキシマレーザ・YVO4レーザ又はこれらのレーザを変調させたものを用いる。更に、連続又はパルスレーザを照射する時間的・空間的間隔、照射強度またはその両方を変化させることにより一度に何色も所望の色を発色させることを特徴としている。このようなカラーマーキングは、色別文字・図柄、模様、芸術的表現を行うことが出来る。
【0010】
また、水素、アンモニア、一酸化炭素、メタン等の炭化水素又はこれらの組合せのガスの雰囲気で、全表面或いはその一部を変色させた金属表面に、レーザ光を照射することにより変色させた金属表面の色を還元させることを特徴としている。
【0011】
すなわち、本発明は、金属表面にレーザを照射し、該金属表面の全域或いはその一部を変色させ、該変色部分内に更にレーザを照射して変色させるために、レーザを金属表面上に2回以上の複数回照射することを特徴とする金属のカラーマーキング方法である。
【0012】
また、金属を室温よりも高温に保持した熱処理炉中に挿入して保持し、該金属表面を変色させた後に、
該金属表面にレーザを照射し、該金属表面の全域或いはその一部を変色させ、該変色部分内に更にレーザを照射して変色させるために、レーザを金属表面上に2回以上の複数回照射することを特徴とする金属のカラーマーキング方法である。
【0013】
また、金属を室温よりも高温に保持した熱処理炉中に挿入して保持し、該金属表面を変色させた後に、
水素、アンモニア、一酸化炭素、メタン等の炭化水素、又はこれらの組合せのガスの雰囲気でレーザ照射し、前記変色を還元させて変色程度を減少させ、当該変色程度を減少させた部分に更にレーザを照射して変色させるために、レーザを金属表面上に2回以上の複数回照射することを特徴とする金属のカラーマーキング方法である。
【0014】
また、これら金属のカラーマーキング方法において、前記レーザを複数回照射する際に当該レーザ照射の繰返し回数により所望の色を発色させるものである。
【0015】
また、これら金属のカラーマーキング方法において、前記レーザを複数回照射する際に、当該レーザの発振出力、照射時間、繰返し回数、ビームスポットサイズ、焦点距離、当該レーザがパルスレーザの場合のパルス周波数、波長、複数回のレーザ照射の時間的・空間的間隔の各値を選ぶことにより所望の色を発色させることを特徴とする。
【0016】
また、これら金属のカラーマーキング方法において、複数回のレーザを照射する際に、前のレーザ照射の出力に対して、以降のレーザ照射の出力を同出力または低出力とするものである。
但し、レーザの1回の照射は、パルスレーザの連続的照射時においてパルスが繰返し照射された際の各パルス毎の照射のことではなく、連続レーザ、パルスレーザにかかわらず照射開始から停止までの連続的な1回の照射を示すものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レーザを複数回照射することにより、自動で効率的に複雑な紋様を低コストで金属表面上に描くことが出来る。これにより、カラーマーキングによる多様で且つ精細な色彩により製品の付加価値を高めることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施の形態としては、図1に示すように、鉄、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、クローム、チタニウム、アルミニウム、銅及びそれらの合金などの金属6の表面にレーザ5dを照射し、該表面の全域或いはその一部を変色させた後、該変色部分内に更にレーザ5dを照射して所定の色に変色させることを特徴とする金属のカラーマーキング方法である。本方法では、レーザ光を金属表面上に2回以上の複数回照射することにより、彩度が高く色階調の多い複雑な紋様を金属表面に描くことが可能になる。金属の形態としては、板、箔、ブロック、等が利用可能である。また、金属の表面形態としては、通常のグラインダー、サンドブラスト、グリッドブラスト仕上げ、砥粒又は電解研磨、陽極酸化による鏡面仕上げにおいて施工可能である。本発明の方法において、レーザ照射を高出力で行ったのち、2回目以降のレーザ照射を高出力・同出力又は低出力で行うことにより、より彩度の高い紋様を得ることが出来る。また、該2回目以降のレーザ照射の焦点距離を少し変えることにより、見る方向により色が変わる虹色の彩色が可能になる。
【0019】
また、本発明の他の実施の形態としては、鉄、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、クローム、チタニウム、アルミニウム、銅及びそれらの合金などの金属を室温よりも200℃以上、望むらくは300℃から900℃の高温に保持した熱処理炉中に挿入して保持し、該金属表面をモノクロおよびカラーで変色させた後、更に複数回レーザ照射し所定のモノクロおよびカラーに変色させることを特徴とする、金属表面上へのカラーマーキング方法である。本方法を用いることによりレーザによる金属表面上へのカラーマーキングのバックグランドへの均一な色づけを可能にすることが出来る。金属の表面形態としては、通常のグラインダー、サンドブラスト、グリッドブラスト仕上げ、砥粒、陽極酸化、又は電解研磨による鏡面仕上げにおいて施工可能である。
【0020】
また、本発明のさらに他の実施の形態としては、鉄、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、クローム、チタニウム、アルミニウム、銅及びそれらの合金などの金属を室温よりも高い温度200℃以上、望むらくは200℃から900℃の炉中に挿入・保持し、該金属を一様にモノクロおよびカラーで変色させた後、水素、アンモニア、一酸化炭素、メタン等の炭化水素、又はこれらの組合せのガスの雰囲気でレーザ照射し、該変色を還元させて変色程度を減少させる。金属の形態としては、板、箔、ブロック等が利用可能である。この実施の形態の特徴の一つは、熱処理炉の利用とレーザによる色の還元作用を利用することである。金属の表面形態としては、通常のグラインダー、サンドブラスト、グリッドブラスト仕上げ、砥粒、陽極酸化、又は電解研磨による鏡面仕上げにおいて施工可能である。
【0021】
そして、この実施の形態においては、更に、該変色部分内に更に焦点距離を変えてレーザを照射して所定の色に変色させることを特徴とする金属のカラーマーキング方法である。炉中で該金属表面をモノクロおよびカラーで変色させた後、更に焦点距離を変えて一回又は複数回レーザ照射し所定のモノクロおよびカラーに変色させることを特徴とする、金属表面上へのカラーマーキング方法である。この方法を用いることにより、色階調の多い複雑な紋様を金属表面に描くことを可能にし、レーザによる金属表面上へのカラーマーキングのバックグランドへの均一な色づけを可能にすることが出来る。
【0022】
なお、上述の各実施の形態においては、鉄、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、クローム、チタニウム、アルミニウム、銅及びそれらの合金などの金属6の表面にパルスレーザ5dを照射する時間的・空間的間隔、その照射強度またはそれらの組み合わせ変化させることにより、該金属表面に連続的な色相の変化をもたらすことが可能である。
【0023】
本発明の一例として、例えば、炉中に研磨#400のSUS304ステンレス鋼を800℃で2分から5分間熱処理すると表面は青色になり、更に特定の部分にレーザを照射することにより照射した部分だけ炉中処理部分と異なる色を発色させることが出来る。
【0024】
また、炉中で一様に濃く変色させた後、大気中、水素雰囲気中、窒素雰囲気中でのレーザ照射で色を抜くことができる。
【0025】
また、表面機械研磨した場合、表面グラインダー研磨した場合、表面電解研磨した場合、サンドブラスト、ショットブラストした場合では、色彩の光沢等で異なる色調が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る金属等へのカラーマーキング方法を示す概要図である。
【図2】本発明に係る金属等の表面にカラーマーキングする方法を示す概要図である。
【符号の説明】
【0027】
1 入力編集装置(パソコン)
2 レーザのコントローラ
3 光ファイバー
4 ケーブル
5 レーザ発振器
5a レーザ媒質
5b Qスイッチ
5c ミラー
5d レーザ光
5e ガルバノスキャナ
5f fθレンズ
6 ワーク
8 作業テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面にレーザを照射し、該金属表面の全域或いはその一部を変色させ、該変色部分内に更にレーザを照射して変色させるために、レーザを金属表面上に2回以上の複数回照射することを特徴とする金属のカラーマーキング方法。
但し、レーザの1回の照射は、パルスレーザの連続的照射時においてパルスが繰返し照射された際の各パルス毎の照射のことではなく、連続レーザ、パルスレーザにかかわらず照射開始から停止までの連続的な1回の照射を示すものである。
【請求項2】
金属を室温よりも高温に保持した熱処理炉中に挿入して保持し、該金属表面を変色させた後に、
該金属表面にレーザを照射し、該金属表面の全域或いはその一部を変色させ、該変色部分内に更にレーザを照射して変色させるために、レーザを金属表面上に2回以上の複数回照射することを特徴とする金属のカラーマーキング方法。
但し、レーザの1回の照射は、パルスレーザの連続的照射時においてパルスが繰返し照射された際の各パルス毎の照射のことではなく、連続レーザ、パルスレーザにかかわらず照射開始から停止までの連続的な1回の照射を示すものである。
【請求項3】
金属を室温よりも高温に保持した熱処理炉中に挿入して保持し、該金属表面を変色させた後に、
水素、アンモニア、一酸化炭素、メタン等の炭化水素、又はこれらの組合せのガスの雰囲気でレーザ照射し、前記変色を還元させて変色程度を減少させ、当該変色程度を減少させた部分に更にレーザを照射して変色させるために、レーザを金属表面上に2回以上の複数回照射することを特徴とする金属のカラーマーキング方法。
但し、レーザの1回の照射は、パルスレーザの連続的照射時においてパルスが繰返し照射された際の各パルス毎の照射のことではなく、連続レーザ、パルスレーザにかかわらず照射開始から停止までの連続的な1回の照射を示すものである。
【請求項4】
前記レーザを複数回照射する際に当該レーザ照射の繰返し回数により所望の色を発色させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属のカラーマーキング方法。
【請求項5】
前記レーザを複数回照射する際に、当該レーザの発振出力、照射時間、繰返し回数、ビームスポットサイズ、焦点距離、当該レーザがパルスレーザの場合のパルス周波数、波長、複数回のレーザ照射の時間的・空間的間隔の各値を選ぶことにより所望の色を発色させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属のカラーマーキング方法。
【請求項6】
複数回のレーザを照射する際に、前のレーザ照射の出力に対して、以降のレーザ照射の出力を同出力または低出力とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属のカラーマーキング方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−62623(P2009−62623A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310797(P2008−310797)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【分割の表示】特願2004−18345(P2004−18345)の分割
【原出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【出願人】(503038292)有限会社岩倉溶接工業所 (3)
【出願人】(301043812)
【Fターム(参考)】