説明

レーザアトムプローブ

アトムプローブは、分析されることになる試料を保持できる試料マウントを含む。検出器は試料マウントから離間して配置される。アパーチャを有する局所電極は検出器と試料マウントとの間に設置される。レーザは、アパーチャの平面に対して非ゼロ角度で試料マウントに向けてレーザビームを放出するように配向され、アパーチャ平面は、試料マウントと検出器との間でアパーチャを通って定められたイオン進行経路に対して直角方向に配向される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、アトムプローブ顕微鏡としても知られるアトムプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
アトムプローブ(アトムプローブ顕微鏡とも呼ばれる)は、原子レベルで試料を分析することを可能にするデバイスである。従来のアトムプローブの基本的な形態は以下の形をとることができる。試料マウントは、検出器、すなわち一般的にはマイクロチャンネルプレート及び遅延線アノードから間隔を置いて配置される。試料は試料マウント内に置かれ、試料表面上の原子がイオン化して試料表面から「蒸発」し、検出器に移動するように試料ホルダの電荷(電圧)が検出器の電荷に対して適応される。一般的に試料電圧はパルス化され、パルスが該パルスのタイミングで蒸発事象を誘起することにより、蒸発時間の少なくとも大まかな特定が可能になる。試料の原子は、該原子の検出器からの距離に従ってイオン化する傾向にあり(すなわち検出器に近い原子が最初にイオン化する傾向にある)、従って、試料は、最初にその先端又は頂点(検出器に最も近い区域)から原子を失い、蒸発が進むに伴って先端は徐々に侵食される。試料から検出器までのイオン化原子の飛行時間の計測は、イオンの質量/電荷比(従って蒸発した原子の識別情報)の特定を可能にする。イオンが検出器に衝突する位置の計測は、試料上に存在していたイオン化原子の相対位置の特定を可能にする。このようにして、時間が経過すると試料内の成分原子の識別情報及び位置の3次元マップを構築することができる。
【0003】
試料内に潜在的に含まれる原子数、及びこれらの原子を収集するのに必要な時間上の理由から、試料は大きな対象物のサンプルから形成されることが多い。かかる試料は多くの場合、「微小先端」と呼ばれることが多い細長いコアを対象物から除去することによって形成され、このコアは、試料の深さの少なくとも一部分にわたってサンプリングされた対象物の構造を表す。次いで、かかる微小先端試料は、通常は試料ホルダ内で検出器に向けて延びる該試料ホルダの軸と位置合わせされ、収集された原子がサンプリングされた対象物の深さ方向の構造を表すようにする。また微小先端のロッド状構造は、有利にはその頂点(検出器に最も近い微小先端の区域)の付近に荷電試料の電界を集中させ、これによって頂点からの蒸発が促進されるようになる。微小先端はまた、試料から機械的及び/又は化学的に物質を取り出し、試料に沿って一連の微小先端が形成されるようにすることによって形成される。例えば、試料上に一連の隆起部及び谷部を残すためにシリコンウェハ又は他の試料の上に離間した平行線に沿ってダイシングソーが延びることができる。次いで、ダイシングソー及び試料を互いに対し90度回転させることができ、ダイシングソーを試料に沿った離間した平行線に沿って延びることができる。この結果、ウェハ上に形成された一連の支柱が得られ、場合によっては、収束イオンビームミリング及び/又は化学エッチングを用いるような追加成形後に微小先端として機能することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イオン化(蒸発)エネルギーは、電界によってのみ送出される必要はない。またこれまでのアトムプローブでは、試料に対してレーザパルスを誘導し、試料を加熱してイオン蒸発を誘起しており、他のアトムプローブでは、試料と検出器との間で荷電対極(中央アパーチャを有する電極)を用いて、蒸発を誘起するのを助けている。しかしながら、これらの動作モードに関わらず、アトムプローブは複雑さ、データ精度上の問題、及びセットアップ時間及び作動時間(試料準備に必要な時間を含む)が長いといった欠点があり、これらの分野のいずれかの1つ又はそれ以上の改善が有用なものとなる。
【0005】
更に、単位パルス毎に検出されるイオン数である蒸発速度(Er)は、アトムプローブのデータ収集プロセスを制御/監視するのに用いられる主要なメトリックである。蒸発速度を正確に監視できないことによって、収集データが僅かであるか、又は全く収集されないか(例えばErが低過ぎる時)、或いは過剰なイオン化事象が検出されるか(例えばErが高過ぎる時)のいずれかの結果となる。過剰なデータが収集(単位時間当たり)された場合には、ノイズ又は不正確さによってデータに誤りが多くなる可能性があり、及び/又は試料に印加される局所電界の増大によって試料が破損する可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1ではレーザアトムプローブが参照番号100で概略的に描かれている。レーザアトムプローブ100は、試料104が上に取り付けられた試料マウント102、試料104上の所要の微小先端104aから蒸発したイオンを受けるための対向する検出器106、及び試料マウント102と検出器106との間に置かれた電極108(又はより一般的には局所電極)を含む(これらの構成要素の全ては図示していないチャンバ内に置かれる)。本発明では、試料104は、大きな対象物から取られる単一の微小先端ではなく、共通の基板によって接合された一連の微小先端であるのが好ましく、例えば、前述のダイシング及び/又はエッチングプロセスによってウェハ上に形成された一連の微小先端であって、ウェハの残りの部分が接続基板としての役割を果たす。従って、試料マウント102は、局所電極108のアパーチャ110の内側又はこれに近接して離間して配置される試料104上の所要の微小先端104aの位置決めを可能にするように移動可能であり、微小先端104a上の頂点又は他の関心のある区域は(一実施形態では)、アパーチャ平面112(アパーチャ110の入口を定める平面)からおよそアパーチャ半径の距離にあるアパーチャ110内の中心に位置する。
【0007】
次いで、レーザビーム114は、アパーチャ平面112に対して(及び/又は試料104の表面平面に対して)なんらかの非ゼロ角度で微小先端104a上に配向される。一実施形態では、5〜15度の角度が用いられ、更により具体的な実施例としておよそ8度の角度が用いられる。従来のレーザアトムプローブ構成では、0度の角度でビームを配向しており(すなわちアパーチャ平面112及び試料104の表面に対して平行であり、本技術の従来の用途では実際には1つだけの先端であった)、また局所電極は用いられなかった。ここでは局所電極108が用いられる。幾つかの実施形態では、局所電極は、イオン化エネルギーの幾らかを供給するためにパルス化されないが、他の実施形態では局所電極108はパルス化することができる。
【0008】
微小先端104aは、イオン化エネルギー閾値の有意な部分に達するなんらかのブースト電圧にまで荷電され、局所電極108は基準電位(すなわち接地電位、又は試料104と検出器106との間の他のなんらかの固定電位)にあるように荷電されず、イオン化エネルギーの残りは、イオン離脱におけるタイミング事象を提供するようにパルス化されたレーザビーム114によって供給される。更に、幾つかの実施形態ではブースト電圧もパルス化される。局所電極108は基準電位のままにされてイオン化パルスを供給せず、その存在は不必要であるように思われるが、局所電極108が備えられ、微小先端104aが、アパーチャ110の区域の内側でアパーチャ平面112からおよそアパーチャ110の半径の0.75〜3.0倍の距離だけ離れて(すなわちアパーチャ110の境界から試料104まで突出した円筒体の内側)置かれる場合には、局所電極108は単一の微小先端104aの付近に優先的にある程度の有用な電界集中をもたらす(これによってレーザビーム114のパルス化に必要なエネルギーが低減される)ことが分かっている。これに加えて、前述の距離及びビーム角度を用いると、微小先端104aは、以前の0度方向が用いられる場合(これは側部の照射のみしかもたらさない)よりも均一にレーザビーム114によって照射され、アパーチャ110に対する微小先端の位置決めを確認することができるように局所電極108のアパーチャ110(直径僅か5〜50マイクロメートル程度とすることができる)を通してより容易に結像される。
【0009】
レーザビーム114は、アトムプローブ100の真空チャンバ内に置かれるレーザから放出することができ、或いは、レーザは真空チャンバの外側に置いてもよく、前述の構成のようにビームを配向する必要に応じて、ミラー、コリメータ、レンズ、及び/又は他の光学体がビーム114を再配向し合焦させる。
【0010】
一実施形態では、レーザアトムプローブ100は、Imago Scientific Instruments Corporation(米国ウィスコンシン州マディソン)によって製造された局所電極アトムプローブを用い、レーザは76MHzの公称繰り返し率で8nJのパルスを生成するダイオード励起Ti:サファイア発振器(Mira Optima 900−Fキャビティを備えたVerdi−V5励起レーザ、両方とも米国カリフォルニア州サンタクララのCoherent,Inc.製)を有する。キャビティダンパ(Coherent,Inc.のPulse Switchキャビティダンパ)を用いて、パルスエネルギーを60nJに高め、繰り返し率を100KHz〜1MHzの範囲に減少させる。これらの構成要素は単に例示的なものであり、同じ又は異なる出力を可能にする他の適切な装置が、Coherent,Inc.又はSpectra−Physics,Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー)等の他のレーザ装置供給業者から入手可能である。前述のCoherent,Inc.のPulse Switchキャビティダンパは、第2及び第3の高調波発生器を含み、これらは本明細書の後で説明する様式で有利に利用することができる。
【0011】
一実施形態では、レーザビーム114は、直径1mmよりも小さく合焦され(微小先端104aで受光されるとき)、より好ましくは0.5mmよりも小さく合焦される。アトムプローブ100の一実施形態では、前述のレーザは、微小先端104aにおいておよそ0.02mmのスポットサイズ(ビーム直径)を達成するように合焦される。前述のようにレーザは、第2及び第3高調波発生器と共に用いられ、これによって紫外線から近赤外線までの範囲でビーム114の平均波長の調整が可能になり、異なる物質から成る試料104でより良好にイオン化を誘起するように波長を調節することが可能になる。
【0012】
しかしながら、場合によっては、単一波長は、試料104内の物質の差異に起因して、効率的なイオン化をもたらさず、試料104中に存在するあらゆる成分と効率的に結合できない。従って、別の代替の実施形態では、典型的なアトムプローブ100は、複数の波長を含むビーム114を用いる。このことは、場合によってはこれらのビーム116を二色性ミラー又は他の素子の使用と組み合わせた後で、複数のレーザを用いてこれらのビーム116を試料104上に配向することによって行うことができるが、複数の個別のレーザを使用することにより、スペース及び経費が追加され、更に、特に異なるレーザ間でパルスタイミングを同期させる必要性に関して複雑さが追加されることになる。従って、1つの構成は、ビーム114の経路内に非線形結晶又は他の高調波発生光学体を介在させることによって単一のレーザを用いて同一ビーム114内で高調波波長を発生させるものである。本発明を例示する典型的なアトムプローブでは、レーザからのビームは、添付図面では図示していない非線形結晶(リトアニア国ビリニュスのEKSMA Photonics ComponentsのBBO結晶等)内に合焦される。かかる結晶は、第2高調波の生成を可能にし、更により高次の高調波を可能にすることができる(場合によってはビームに沿って配置される追加の結晶を使用することによって)。
【0013】
各波長が局所電極アパーチャ110に入射し、試料104上に衝突する際に、各波長が全て同じビーム直径に合焦されるように、アクロマートレンズ/コリメータ及び/又は他の光学素子を用いて各波長のビーム直径を合焦及び調節することができる。また、レーザビーム114が、微小先端試料104の軸に対して少なくとも実質的に平行な方向に向けられた偏光平面を有する場合、試料104への良好なレーザパワー伝送を達成することが企図される。
【0014】
要約すると、レーザビーム114を使用することにより、従来のアトムプローブに優る有意な動作上の利点が得られる。1つの主な利点は、非導電試料104は有意に高いブースト電圧及び過電圧を必要とする(更に、これらの高電圧電界は試料104上にかなりの応力を引き起こし、その結果、機械的に破損する可能性がある)ので、従来のアトムプローブは一般に少なくとも実質的に導電性の試料104の分析に限定される点である。レーザビーム114は有意に低い電圧での作動を可能にするので、レーザアトムプローブ100は、有機試料104等の非導電性が顕著な試料104の分析でさえも可能にする。関連する利点として、ビーム114を発生させるのに用いられるレーザ(又は複数のレーザ)の波長は、非均一組成を有するものを含む異なる種類の試料104(例えば導電性及び非導電領域の両方、無機及び有機領域の両方等を含む試料104)のより効率的なイオン化に適応させることができる。
【0015】
更に、適切なレーザは、ピコ秒又はフェムト秒程度の幅を有するパルスを発生させることができる。試料のイオン化はレーザパルスの極幅狭の窓で発生するので、イオン離脱時間を非常に高精度で指定することができ、これによって従来のアトムプローブにおけるよりも非常に高い質量分解能(500質量電荷単位分の1よりも良好)が可能になる。更に、パルスは、1kHz〜1MHzの周波数で発生させることができ、これによって極めて迅速なデータ収集が可能になる。
【0016】
しかしながら、図1の構成は、幾つかの有意な課題、特に所要の微小先端104a上にビーム114を正確に合焦させることに関する問題を生じる。特にビーム114は、環境振動、アトムプローブ構成要素の熱膨張及び収縮、並びにその他に起因して、経時的にドリフトする可能性があるので、所要の微小先端104aの頂点(それ自体が10又は100分の1ミリメートル程度の直径を有することができる)上にビーム114を合焦することが困難になる可能性がある。ビーム114を所要の微小先端104a上に合焦させる有用な方法は以下の通りである。
【0017】
まず、所要の微小先端104aをその分析位置(前述のように、局所電極108のアパーチャ110内でアパーチャ平面112からアパーチャ110の半径のおよそ0.75〜3.0倍だけ離して位置合わせされる)に置く時に、所要の微小先端104aの頂点が配置される場所のおおよその区域に向けてビーム114を配向することによってビーム114を大まかに位置合わせする。このことは、試料マウント102(並びに試料104及びその上のあらゆる微小先端104a)を移動してアパーチャから離し、(任意選択的に)光センサ(図示していない)のアレイを局所電極108に代わりに近接して置くことによって行われる。光センサアレイと局所電極108に近接する試料104との交換が試料マウント102の適切な再配置によって容易に行われるように、要望に応じて光センサのアレイは試料マウント102から延びることができる。光センサアレイは、ビーム114が衝突するポイントの位置を特定するのに用いられ、これによってビーム114の経路を幾何学的に算出することができる。次いで、所要の微小先端104aがその分析位置にある時に、ビーム114の経路が所要の微小先端104aの頂点の目標とする位置と交差するようにビーム114の経路を変更する。必要に応じて、1つ又はそれ以上の長距離顕微鏡及びビデオカメラを用いてビーム経路及び衝突ポイントを視覚化する(好ましくはイオン移動軸116、すなわちアトムプローブ微量分析中に微小先端104aから放出されるイオンが進むことになる飛行円錐路の軸でもあるアパーチャ110の軸に対して直交して配置される少なくとも2つの顕微鏡を用いる)ことにより、このプロセスを支援することができる。
【0018】
大まかなビームの位置合わせの完了後、様々な手法で局所電極アパーチャ110との試料104の位置合わせを行うことができる。試料の位置合わせの1つの方法は、最初に2つの直交する光学顕微鏡を用いて大まかな試料の位置合わせを行い、その後、必要に応じて電界イオン顕微鏡を用いて精密な試料の位置合わせを続けるものである。大まかな試料の位置合わせプロセスは以下の通りである。
1.レーザがオフである、又はそのビーム114が遮蔽されていることを確認する。
2.所要の微小先端104aが局所電極アパーチャ110とおおよそ位置合わせされるまで試料マウント102を移動する。
3.試料104の2軸平行移動(イオン移動軸116に対して直角な平面に沿った)を用いて、所要の微小先端104aがイオン移動軸116にほぼ沿って置かれるように試料マウント102を移動する。アパーチャ平面112の一般的位置においてイオン移動軸116に対して直交して置かれた光学顕微鏡を用いて、平行移動の両方の軸に沿った位置合わせを検証することができる。
4.続いて、所要の微小先端104a上の関心のある頂点又は他の区域がアパーチャ平面112に対して望ましい位置に置かれるまで、イオン移動軸116に対して平行に試料マウント102を移動させることができる(例えば、試料104の頂点がアパーチャ110の半径の0.75〜3.0倍(一実施形態では0.75〜1.25倍の間)だけアパーチャ平面112から離れて置かれるようにする)。
必要であれば、精密な試料の位置合わせは、電界イオン顕微鏡法(FIM)を用いて果たすことができる。
1.アトムプローブ100の真空チャンバ内に結像ガス(例えばネオン)を導入する。通常、およそ5×10-6mbarの結像ガス気圧で十分である。
2.検出器106のゲインをFIMに対して適切なレベルに調節する。
3.続いて、検出器106上に所要の微小先端104aの頂点のイメージを得ることができるまで試料マウント102(従って試料104及び所要の微小先端104a)に電圧を供給する。
4.検出器106上に障害のないイメージが得られるまでアパーチャ平面112の2軸に沿って所要の微小先端104aを平行移動する。所要の微小先端104aが位置ずれしている場合には、局所電極108はイメージの一部を塞ぐことになる。
【0019】
次いで、好ましくは、試料の位置合わせの後、更にデータ収集の最中に周期的に、所要の微小先端104a上でのビーム114の精密な位置合わせを実施し、ビーム114が所要の微小先端104aの関心のある頂点又は他の区域と依然として確実に位置合わせされているようにする。
【0020】
ここで精密なビームの位置合わせのための例示的な制御システムが図2に図示され、全体的に参照符号300で示している。データ収集制御システム302は、未処理データ304をアトムプローブ100から受け取り、データ304に従って試料マウント102に(更に試料104に)印加された(DC)試料電圧306を調節する。このデータ収集制御ループを精密なビーム位置合わせプロセス全体にわたって繰り返し、試料電圧306を継続的に調節して電解イオン化(Er=定数)の制御速度を得るようにする。またデータ収集制御システム302はレーザを作動させる起動パルス308を供給し、結果として生じるレーザビームパルスの離脱時間を符号化する。データ収集制御システム302の制御ループに対して同期又は非同期で進む第2の制御ループは、ビーム位置合わせ制御システム310によって実行される。ビーム位置合わせ制御システム310は、データ収集制御システム302から未処理及び/又は調整済みのアトムプローブデータ312を受け取り、同様にイメージ収集ハードウェア316(真空チャンバ内の試料104を監視するビデオカメラ又は他の光学イメージングデバイス)からイメージデータ314を受け取り、次いで、ビーム位置合わせハードウェア322に移動コマンド318を提供する(該ビーム位置合わせハードウェア322から配置フィードバック320を受け取る)。図示していないビーム位置合わせハードウェア322は、レーザビーム114の方向を調節するための1つ又はそれ以上のアクチュエータによって実現することができ、レーザビーム114の経路に沿ってレーザ及び/又はミラー、レンズ或いは他の光学体の位置を調節するアクチュエータの形態をとることができる。
【0021】
ビーム位置合わせ制御システム310の内部では、アトムプローブデータ312及びイメージデータ314を調整して1つ又はそれ以上の制御パラメータを発生させ、該パラメータは、レーザビーム114と所要の微小先端104aとの間の相互作用を示し、レーザビーム114の位置合わせを精密に(及び自動的に)調節するためにビーム位置合わせ制御システム310によって用いられる。
【0022】
(1)蒸発速度(検出器106によって検出されるあらゆるイオンの収集速度):レーザビーム114が所要の微小先端104aの頂点に近づくと、所要の微小先端104aのこの区域では電界強度が最も強いことから試料の蒸発速度が上昇するはずであり、従って、レーザビーム114は、所要の微小先端104aの他の場所よりも頂点においてより容易にイオン化を誘起することができるはずである。従って、ビーム位置合わせ制御システム310が最大蒸発速度で所要の微小先端104上の区域を探す場合、この区域が試料頂点に相当することになる可能性が高い。
【0023】
(2)試料104に印加される電圧:同様の方法で、レーザビーム114が所要の微小先端104aの頂点に近づくと、より低い試料電圧で蒸発を誘起することができるはずである。従って、ビーム位置合わせ制御システム310が、試料104上で最低電圧で蒸発を維持することができる所要の微小先端104aの区域を探す場合、この区域が試料頂点に相当することになる可能性が高い。
【0024】
(3)検出イオンの質量分解能:イオンの到達時間は、検出器106により求めることができ、イオンの離脱時間が既知である場合、イオンの質量/荷電比は既知の値と十分に相関付けられ、イオンの同定が可能になるはずである。しかしながら、離脱時間が不確定になるにつれて相関性が低下する。レーザアトムプローブ100では、レーザビーム114の熱を放散させるのにより長い時間を要する場合(すなわちレーザパルスの有効幅がより広くなると)、離脱時間の変動が増大し始める。熱放散に対する感度は試料の頂点で最大になるはずであるので、ビーム位置合わせ制御システム310がレーザビーム114の位置合わせを調節し、質量分解能の不確定さが最も低くなる状態で所要の微小先端104aの区域を見つける場合には、この区域が試料頂点に相当することになる可能性が高い。
【0025】
(4)信号対雑音比:質量分解能(上記の項目(3))と同様に、アトムプローブデータの信号対雑音比はビーム位置合わせの品質によって制限され、すなわち、レーザビーム114が所要の微小先端104aから逸脱するにつれて良好にタイミングが取れた蒸発は減少し、予定外の蒸発が増加することになる。従って、信号及びノイズフロアは、ビーム114が所要の微小先端104aの頂点から逸脱するにつれて互いに接近し、ビームが頂点に接近するにつれて発散することになる。従って、ビーム位置合わせ制御システム310が、レーザビーム114の位置合わせを調節し、最高の信号対雑音比で所要の微小先端104a上の区域を見つける場合には、この区域が試料頂点に相当することになる可能性が高い。
【0026】
(5)試料からの反射光:イメージ収集ハードウェア316(すなわち真空チャンバ内の試料104を監視するビデオカメラ又は他の光学式イメージングデバイス)は、所要の微小先端104aを監視することができる。所要の微小先端104aの頂点は、レーザビーム114によって照射されたときに反射及び/又は蛍光発光する傾向が強くなる。従って、ビーム位置合わせ制御システム310は、レーザビーム114の位置合わせを調節し、ピーク強度(又は他の反射/放出特性)で所要の微小先端104a上の区域を見つけることができ、これによって、所要の微小先端104aの頂点を照射する可能性が高くなる。
【0027】
(6)試料からの回折光:回折光は、ビーム114を最初に位置合わせするためではなく、ビームの位置合わせを維持するためにより有用に監視される。ここでは、所要の微小先端104aによって生成される遠視野(Fraunhofer)回折パターンは、イメージ収集ハードウェア316によって監視することができ、ビーム位置合わせ制御システム310は、レーザビーム114の位置合わせを調節し、一定の回折パターンを維持することができ、これによってビーム114が所要の微小先端104aの頂点に合焦されたときに、該所要の微細先端104aの頂点との位置合わせが確実に維持されるのを助ける。
【0028】
レーザビーム114と所要の微小先端104aとの間の相互作用を示す他の利用可能な制御パラメータ(計測出力パラメータ、或いは単にパラメータとも呼ばれる)が存在し、これらを用いて、ビーム位置合わせ制御システム310に対して位置合わせ補正(例えば、試料電流、温度、インピーダンス、キャパシタンス)を行うように指示することができる。ビーム位置合わせ制御システム310がビーム位置合わせ制御システム310にこれらの変数のうちの1つよりも多くを用いさせて、各選択された変数に適切な重みを付与し、ビーム位置合わせ制御システム310が所要の微小先端104aの頂点をより迅速に位置特定できるようにすることも可能である。
【0029】
次いで、レーザビーム114の1つの精密位置合わせプロセスは、図3に図示する様態で進む。最初に段階402において、ユーザは大まかな位置合わせが実施されたことをビーム位置合わせ制御システム310に確認し、これによってビーム114が所要の微小先端104a(又はその近接区域)とほぼ一致する経路に沿って配向されることを適正に保証する。
【0030】
図3の段階404では、次にユーザは、ビーム114が掃引されることになる掃引経路(所要の微小先端104aの付近を進むビーム経路)を指定する(又はビーム位置合わせ制御システム310がこれを定義するか或いは再使用する)。ビーム位置合わせ制御システム310は、前述の制御パラメータ(図3の段階406を参照)のうちの1つ又はそれ以上を同時に監視し、予め定義された位置合わせ基準、すなわち所要の微小先端104aの頂点の特性である規格に適合するようにすることになる。例えば、ビーム位置合わせ制御システム310は、掃引位置のパラメータが所要の微小先端104aの頂点へのビーム衝突が期待される範囲内の値を有するか否か;掃引に沿ったある位置が前の位置よりも所要の微小先端104aの頂点に近い可能性が高いことをパラメータが示すか否か;及び/又はパラメータが所要の微小先端104aの頂点を「最適に」示すか否か(例えば、掃引に沿った位置が、最も高い蒸発速度は所要の微小先端104aの頂点を示すと考えられる最も高い蒸発速度を有するか否か)を確認することができる。本質的に目的は、掃引に沿った制御パラメータを最適化する位置を同定することであり、これによって所要の微小先端104aの頂点により近いと考えられる、掃引経路に沿ったポイント又はセグメントを位置特定する。
【0031】
掃引区域は広範なサイズ及び形状を取ることができ、最初の掃引区域は、局所電極アパーチャ110の直径程度のサイズを有するのが好ましい。一例として、掃引区域は、そのほとんど(従って、所要の微小先端104aのある程度の部分)が掃引されるように、螺旋状、波状、又はジグザグパターンで掃引することが可能な円形又は方形区域とすることができる。或いは、下記に説明するが、掃引区域が幅狭レーンとして定義することができれば、掃引は、掃引区域に沿って直線で掃引するように単に一次元で行うことができる。
【0032】
掃引区域の最初の掃引を行う間に、ビーム位置合わせ制御システム310は、位置合わせ基準を満たす(すなわち、所要の微小先端104aの頂点に対するより有望な位置候補であるようにみえる)制御パラメータを有する掃引のポイント又は他のサブセットを同定することになる。最初の掃引の完了後、次いで、ビーム位置合わせ制御システム310は、2つの経路のうちの一方をとり、最初の掃引区域を再定義することになる(図3の段階408)。
【0033】
(1)ビーム位置合わせ制御システム310が、位置合わせ基準に最も良く適合した制御パラメータを有する掃引のサブセットを同定した、すなわち掃引区域に沿って掃引された全ての位置と比較して最適であった制御パラメータを有する単一の位置(「ホーム位置」)を特定した場合、或いは、あるポイントの集合が位置合わせ基準と最も密接に適合した(例えばサンプリングされた位置の10%が最も有望な制御パラメータを有する)場合には、ビーム位置合わせ制御システム310は、少なくともこのサブセットを含むサイズに縮小された新しい掃引区域を自動的に定義する。一例として、単一の最適ホーム位置が同定された場合には、最初の掃引区域サイズの50%であり、好ましくはホーム位置周辺を中心とする新しい掃引区域を定義することができる。
【0034】
(2)ビーム位置合わせ制御システム310が、位置合わせ基準に適合した制御パラメータを有する掃引のサブセットを同定しなかった場合、例えば、掃引区域に沿った全てのサンプリング位置が互いから10%を超えて逸脱しない制御パラメータを有する場合には、このような結果は、所要の微小先端104aの頂点が掃引区域内に存在しないと思われるので、掃引区域は縮小ではなく拡大することができる(例えば、掃引の境界を外方に50%拡大することができる)。別の手法が利用可能であり、例えば、ビーム位置合わせ制御システム310は、同じサイズを有するが、イオン移動軸116に対して直角の平面内で第1の掃引区域からある方向でオフセットされた別の最初の掃引区域を簡単に定義することができる。この掃引区域が、位置合わせ基準に適合した制御パラメータを有する少なくとも1つの位置をもたらさない場合には、ビーム位置合わせ制御システム310は、なんらかの有望な位置が見つかるまで最初の掃引区域の付近で掃引区域の定義を継続することができる。
【0035】
段階408において掃引区域が再定義されると、プロセスは段階410に続き、ビーム114によって横断される経路がより近接した又はより離れた間隔を有する意味において、より精密な(より小さな掃引区域の場合)、又はより大まかな(より大きな掃引区域の場合)掃引経路を用いてビーム114によって新しい掃引区域を掃引することができる。掃引経路は、好ましくは以前の掃引におけるものと同じ形態をとることができ、すなわち、この掃引経路は、新しい掃引区域のほとんどをカバーするように縮尺を単に縮小又は拡大した同じ波状、ジグザグ、螺旋状等の経路を用いるのが好ましい。新しい掃引の間、ビーム位置合わせ制御システム310は、やはり位置合わせ基準に対する制御パラメータを監視し、所要の微小先端104aの頂点の存在を最適に示す位置を求める。新しい掃引が完了すると、掃引区域は再び再定義(縮小又は拡大)されて掃引され、制御パラメータが位置合わせ基準に対して監視される。プロセスは、この様態で連続的に繰り返され、掃引区域は、位置合わせ基準が予め定義された精度レベルに適合されるまでホーム(最適)位置の付近で反復的に縮小される。この適合が生じた場合、例えば、同定されたホーム位置の制御パラメータが後続の掃引間で有意に変化しない場合には、掃引を中止することができ、同定されたホーム位置は所要の微小先端104aの頂点に相当するとみなすことができる。
【0036】
前述の精密ビーム位置合わせプロセスの種々の変形形態が実施可能である。一例として、ビーム位置合わせ制御システム310は、制御パラメータが位置合わせ基準に収束している場合には、掃引経路に沿ってサンプリングレートを高くすることができ、発散している場合には、サンプリングレートを低くすることができる。また、発散が認められると直ちに掃引区域及び/又は掃引経路を再定義することが可能であるので、収束区域の付近で掃引区域が直ちに再定義される。これに加えて、掃引区域及び掃引経路は様々な形態をとることができ、掃引毎に同じ形態をとる必要はなく、例えば1つの掃引はX軸に沿って直線の形態をとることができ、次の掃引は前の掃引のホーム位置の付近で定義されたY軸に沿って直線の形態をとることができる。プロセスは半自動的に行うことも可能であり、例えば、ユーザに制御パラメータのプロットを表示することができ、従って、ユーザは、次の掃引用の新しいホーム位置を手動で定義する機会があることになる。
【0037】
精密位置合わせが完了すると、レーザアトムプローブ100はデータ収集を開始することができ、すなわち、試料104及び検出器106は各々、試料104のイオン化につながるレベルまで荷電させることができ、レーザビーム114をパルス化して所要の微小先端104aへ送り、イオン化が生じる十分なエネルギーを付加することができる。レーザビーム114は時間と共にドリフトすることができるので、前述のビーム精密位置合わせプロセスは、データ収集中、場合によっては一定の数のデータ収集サイクル発生後、及び/又は微小先端104aの所要の区域にビーム114の集中がないことをあるパラメータ(蒸発速度、質量分解能等)が示していることが明らかになった後で、周期的に繰り返すことができる。データ収集から得られたデータを用いて、制御パラメータの多くを生成させることができるので、かかる精密位置合わせ中にデータ収集を中止する必要はない。言い換えると、アトムプローブ100からのデータ収集は標準的な方法で進めることができ、収集データを位置合わせ基準に対して監視して、ビーム114が所要の微小先端104aの頂点に依然として誘導されているか否かを確認し、位置合わせ基準が適合されない場合には掃引区域を定義し、掃引を行って所要の微小先端104aの頂点の位置を再特定することができる。
【0038】
上記及び下記に説明する精密位置合わせ技術におけるデータ収集とは、あるタイプの検出器を使用することなどによる出力パラメータを監視し、レーザビームがどのように正確に合焦されるかを測定することを意味する。パラメータは、限定ではないが、反射光、検出イオンの質量分解能、試料電流、温度、その他を含む。
【0039】
(レーザビームの合焦)
レーザビームが試料に位置合わせされると、先端でのビームの合焦を最適化することによって動作を改善(頂点への結合を強化し、シャンクの照射を低減し、従って熱尾引き、試料破損の可能性等を低減)することが可能である。これを行うための1つの方法は、1つ又はそれ以上の出力パラメータ(例えばEr)を監視しながらレーザビーム焦点(Z)を変化させることである。焦点は、レーザ源と試料との間に介在するレンズ(例えばアクロマート)の物理的な位置を移動することによって制御することができる(図1A)。焦点が最適化されると、ビーム位置合わせプロセスは、データ収集と共に繰り返し、又は継続することができる。
【0040】
これらの段階は、必要に応じて反復方式で繰り返し、試料の頂点上のレーザビーム焦点(又は他の「スイートスポット」)をより正確に配置することができる。分析中に他の理由によって試料が侵食され、又は試料の位置が変化すると、このプロセスを繰り返すことができる。
【0041】
(断層写真法)
図4を参照すると、上記ルーチンの変形形態は、3つの制御入力(ビーム位置(X)、ビーム位置(Y)、又はビーム焦点(Z))を変化させながら1つ又はそれ以上の出力パラメータを監視する段階を含む。まずボックス501において、試料は、物理的に電極に位置合わせされる。ボックス503において焦点(Z=定数)を設定することができる。ボックス505で、出力パラメータ(例えばEr)を計測しながらビーム位置(Xの次にY)がラスター方式で増分される。次いで、ボックス509で、出力パラメータ(例えばEr)を計測しながら焦点(Z=Z+1)が変更され、同様にビーム位置(Xの次にY)を増分(又はラスター化)する。
【0042】
これは、コンピュータ支援断層写真法で用いられるプロセス、すなわち、あるパラメータ(例えばEr)の値を示すスライス単位のデータアレイを構築する段階に類似している。ビーム分布は、3次元で試料に対して効果的にマッピングされる。ビーム分布がマッピングされると、ボックス507及び511でデータが調査され、該データを用いて最適ビーム位置(X,Y)及びビーム焦点設定(Z)を特定する。計測されたパラメータ(Er等)の半値全幅(FWHM)を算出することによって、最適X−Yスポット位置を焦点(Z)の関数として特定することができる。
【0043】
このようにX、Y、及びZ座標空間を仮定すると、レーザビームの各利用可能な離散X、Y、及びZ設定で検出器によって出力パラメータが計測される。次いで、出力パラメータの3Dマップを得ることができる。この3Dマップを用いて、レーザビームの最適位置合わせ及び焦点を求めることができる。
【0044】
(ライブラスター法)
別の変形形態は、実際のアトムプローブデータを収集しながら、陰極管(CRT)テレビジョンスキャンに類似した小さなX−Yラスターを実行する段階を含む。レーザビームと試料があるレベルで位置合わせされると、ビームは、データ収集中に小さなX−Y領域(公称25×25ミクロン)内でラスター化することができ、この結果、振動及びドリフトに影響されない自動X−Y位置合わせとなる。試料を「失う」レーザパルスはデータを生成せず、すなわちこれらはイオン化事象を引き起こさず、従って、Erは「静的」(非ラスター化)パルス化の間に期待されるものの一部となる。このラスター化は、出力パラメータ情報の「フレーム」を形成することになる。新しいフレームは、前のフレームが取り込まれると発生する。このようにして、経時的な出力パラメータ(Er等)を示す複数フレームの「動画」を生成することができる。
【0045】
レーザパルスレートは、検出されたイオンで最初のレーザパルスを逆畳み込みする能力によって制限される「静的」モードよりも高くすることができる。レーザパルスを当該特定のパルスに対応して検出されたイオンと適合可能であることが必要である。レーザは、飛行時間(TOF)クロックを開始し、検出イオンがこれを停止する。従って「停止」を「開始」と適合可能であることが必要であり、さもなければTOF計測が不正確になる。
【0046】
各X−Yラスター「フレーム」は、バッファすることができ、表示されたパラメータ(例えばEr)の移動平均を表示することができる。3D分布をプロットし、選択されたパラメータのピークを検出することができる。ソフトウェアはピークを自動ロックすることができ、電極の再位置合わせに対して動的にドリフト又は試料を補正することができる。
【0047】
(試料移動)
別の変形形態は、ビーム及び電極を位置付けて、試料を最適位置に移動させる段階を含む。試料は通常、電極に対する個々の微小先端(又は微小先端配列から選ばれた1つ)の正確な位置付けを可能にする3軸マイクロポジショナ上に取り付けられる。
【0048】
(偏光調節)
別の変形形態は、レーザビームの偏光の向きを変える段階を含む。先端軸に対してレーザの偏光を配向することにより、パワー伝送を最大にすることができる。これは、ビームが先端に合焦された後に行うことができ、又はビームを合焦する同じ方式で行うことができる。パラメータ(例えばEr)は、ビーム偏光の関数として監視することができる。所与の試料に対し最適な偏光度を選択することができる。
【0049】
(非点収差レーザパルス)
本発明の別の態様では、光学体が小さなスポットに合焦するように設計された場合には、これらの光学体は一般的に実施可能な最大範囲まで非点収差がある。この結果、公称円対称な合焦スポットを生じる。一実施形態では、無非点収差光学体を用いて意図的に非点収差が導入される。簡略化のために、単一軸の非点収差を考える。これは、1つの軸に沿って光学体の焦点距離を変化させる作用を有することになる。この方法で、先端軸方向にあるレーザの最小スポットが試料平面において得られるようにレーザスポットを合焦することができる。次いで、レーザプローブは、試料の長手軸に対して直角の方向に焦点ぼけされることになる。この結果、レーザの位置合わせは横方向の位置ずれに対して敏感ではなくなる。強度は、完全に合焦されたレーザスポットよりも小さくなり、従って追加のビームエネルギーが必要になる。
【0050】
(機械構成)
一実施形態では、3軸(X,Y,Z)dcサーボモータ制御ステージを利用してアクロマートレンズ(図1A)の位置を制御する。これによって、中程度の分解能のビーム位置X−Y制御及び中程度から精密なビーム焦点制御がもたらされる。2軸(ピッチ及びヨー)ピエゾ電気制御ジンバルを用いて、ミラーを配置し、精密なビーム位置X−Y制御が得られる。
【0051】
上記の図面で示され説明されたレーザアトムプローブ100の幾つかの実施形態は、該レーザアトムプローブ100の実施可能な特徴及びこれらの特徴を組み合わすことができる様々な手法を単に例示するためのものである。レーザアトムプローブ100の修正形態もまた、本発明の範囲内にあるとみなされる。以下は、こうした修正形態の例示的なリストである。
【0052】
最初に、アトムプローブ100が試料の蒸発を誘起するのに様々な動作モードが可能であり、試料マウント102、局所電極108、及びレーザビーム114のうちのいずれかの1つ又はそれ以上が所要の微細先端104aに定常又はパルス化方式でエネルギーを供給する点に留意されたい。イオン離脱時間をより正確に指定する(従ってより良好な質量分解能をもたらす)ためには、レーザビーム114で達成可能な幅狭パルス幅が有用であるので、レーザビーム114はパルス化されるのが好ましいが、他の成分(イオン化に必要な過電圧を供給するため)をパルス化送信すると、レーザビーム114の定常作動が実施可能である。非荷電局所電極で単に試料104をあるブースト電圧まで荷電し、次いでレーザビーム114だけをパルス化送信することによってイオン化パルスを供給することは好ましいが、局所電極108及び/又は試料マウント102のいずれか又は両方にも印加される過電圧(イオン化)パルスを有するパルス化レーザビーム114を使用することは、幾つかの種類の試料104では有用となる可能性があり、この理由は、試料104をパルス間の時間に低いブースト電圧(従って低電界及び低機械応力)に保持することができ、これによって壊れやすい試料104の残存が改善され、同時にパルス間の擬似イオン化事象(実質的に損失データを生じる)が低減されるためである。
【0053】
次に、レーザ及び電子ビーム116とは別に、異なる電磁スペクトル範囲でのエネルギーを保持する他のビームを用いることができる。同様に、ブースト(非パルス化)エネルギーを与えるために、マイクロ波等の他の形態のエネルギーを用いてもよい。
【0054】
本発明は上述の好ましい形態に限定されるものではなく、添付して記載される請求項によってのみ限定されるものとする。従って、本発明は、これらの請求項の範囲内に文言上又は均等的に含まれる全ての異なる形態を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に従って形成されたアトムプローブの概略図である。
【図1A】アクロマートレンズの位置を制御するのに用いられるサーボモータ制御ステージの概略図である。
【図2】本発明による精密なビーム位置合わせを説明する図である。
【図3】本発明によるレーザビームの試料上への位置合わせを説明するフロー線図である。
【図4】断層写真法技術を用いたレーザビームの精密位置合わせを説明するフロー線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析されることになる試料を取り付けることができる試料マウントと、
前記試料マウントから離間して配置された検出器と、
前記試料マウントと前記検出器との間に置かれ、アパーチャが形成された局所電極と、
前記アパーチャの平面に対して非ゼロ角度で前記試料マウントに向けてレーザビームを放出するように配向されたレーザと、
を備え、前記アパーチャ平面が、前記試料マウントと前記検出器との間で前記アパーチャを通って定められるイオン進行経路に対し直角方向に配向される、
ことを特徴とするアトムプローブ。
【請求項2】
前記レーザが、前記アパーチャ平面に対して5〜15度の角度で前記試料マウントに向けてレーザビームを放出するように配向される、請求項1に記載のアトムプローブ。
【請求項3】
試料マウント、検出器、及びこれらの間に置かれた局所電極を有するアトムプローブを用いてアトムプローブ分析を実施する方法であって、前記局所電極内には局所電極アパーチャが形成され、該アパーチャの入口を横断してアパーチャ平面が定められ、前記方法が、
a.少なくとも1つの微小先端が上に形成され、前記アパーチャ内で前記アパーチャの半径に関連する距離だけ前記アパーチャ平面から離れて置かれた試料を前記試料マウント上に提供する段階と、
b.前記所要の微小先端上に前記アパーチャ平面に対して1〜20度の角度でレーザビームを配向する段階と、
c.前記局所電極を基準電圧に固定して保持する間に、
(1)前記試料を所要のブースト電圧に荷電して、
(2)前記レーザをパルス化して前記所要の微小先端からイオン化を誘起する、
段階と、
を含む方法。
【請求項4】
前記試料が追加の微小先端を含み、前記第1の微小先端のアトムプローブ微量分析が完了した後、前記試料を更に移動させて、前記微小先端の別のものを前記アパーチャによって誘起される電界内に置くようにする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザビームが前記アパーチャ平面に対して5〜15度の角度で配向される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記距離が前記アパーチャ半径の0.75倍から3.0倍の間にある、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザビームが複数波長の励起エネルギーを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記ブースト電圧がパルス化される請求項3に記載の方法。
【請求項9】
アトムプローブのレーザビームを試料マウント上に取り付けられた試料上に合焦させる方法であって、前記アトムプローブが検出器を有し、前記レーザビームが前記試料上に焦点(Z)を有し、前記方法が、
(a)前記レーザビームによる前記試料の照射が前記焦点(Z)において行われるときに、前記検出器の少なくとも1つの出力パラメータを監視する段階と、
(b)前記レーザビームの焦点(Z)を変更し、変更された焦点で前記段階(a)を繰り返す段階と、
(c)ある範囲の焦点に対して段階(a)〜(b)を繰り返す段階と、
(d)前記段階(a)において前記検出器によって取り込まれた前記出力パラメータの情報に基づいて最適焦点を決定する段階と、
を含む方法。
【請求項10】
前記出力パラメータがパルス当たりの検出されたイオンの数(Er)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アトムプローブのレーザビームを試料マウント上に取り付けられた試料上に合焦する方法であって、前記アトムプローブは検出器を有し、前記レーザビームが前記試料上に焦点(Z)を有し、X軸及びY軸に沿って水平及び垂直方向に照準することが可能であり、前記方法が、
(a)前記レーザビームによる前記試料の照射がX、Y、及びZ座標空間にわたって行われるときに、前記検出器の少なくとも1つの出力パラメータを監視する段階と、
(b)前記段階(a)において前記検出器によって取り込まれた前記出力パラメータの情報に基づいて最適焦点を決定する段階と、
を含む方法。
【請求項12】
前記出力パラメータがパルス当たりの検出されたイオンの数(Er)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アトムプローブのレーザビームを試料マウント上に装着された試料上に合焦する方法であって、前記アトムプローブは検出器を有し、前記レーザビームが前記試料上に焦点(Z)を有し、X軸及びY軸に沿って水平及び垂直方向に照準することが可能であり、前記方法が、
(a)前記検出器を用いて各X及びY座標における出力パラメータを収集して出力パラメータ情報のフレームを形成しながら、X−Y領域において前記レーザビームをラスター化する段階と、
(b)前記段階(a)を繰り返して複数のフレームを発生する段階と、
(c)前記フレームを用いて、前記出力パラメータの時間動画を生成し、前記出力パラメータにおいて特徴部を同定する段階と、
を含む方法。
【請求項14】
前記レーザビームが前記特徴部を追跡するように照準される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アトムプローブのレーザビームを試料マウント上に取り付けられた試料上に合焦する方法であって、前記アトムプローブは検出器を有し、前記試料マウントは前記レーザビームに対してX、Y、及びZ軸に沿って可動であり、前記方法が、
(a)前記レーザビームによる前記試料の照射がX、Y、及びZ座標空間にわたって行われるときに、前記検出器の少なくとも1つの出力パラメータを監視する段階と、
(b)前記段階(a)において前記検出器によって取り込まれた前記出力パラメータの情報に基づいて最適焦点を決定する段階と、
(c)前記試料が前記最適焦点にあるように前記試料マウントを移動させる段階と、
を含む方法。
【請求項16】
前記出力パラメータがパルス当たりの検出されたイオンの数(Er)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アトムプローブのレーザビームを試料マウント上に取り付けられた試料上に調節する方法であって、前記アトムプローブは検出器を有し、前記レーザビームが偏光を有し、前記方法が、
(a)前記レーザビームによる前記試料の照射が行われるときに、前記検出器の少なくとも1つの出力パラメータを監視する段階と、
(b)ある範囲の偏光にわたって前記レーザビームの偏光を変える段階と、
(c)前記段階(a)〜(b)において前記検出器によって取り込まれた前記出力パラメータ情報に基づいて最適偏光を決定する段階と、
を含む方法。
【請求項18】
前記出力パラメータがパルス当たりの検出されたイオンの数(Er)である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
試料マウント、検出器、及びこれらの間に置かれた局所電極を有するアトムプローブを用いてアトムプローブ分析を実施する方法であって、前記局所電極内には局所電極アパーチャが形成され、該アパーチャの入口を横断してアパーチャ平面が定められ、前記方法が、
a.少なくとも1つの微小先端が上に形成され、前記アパーチャ内で前記アパーチャの半径に関連する距離だけ前記アパーチャ平面から離れて置かれた試料を前記試料マウント上に提供する段階と、
b.前記所要の微小先端上に前記アパーチャ平面に対して1〜20度の角度で意図的に非点収差が導入されたレーザビームを配向する段階と、
c.前記局所電極を基準電圧に固定して保持する間に、
(1)前記試料を所要のブースト電圧に荷電して、
(2)前記レーザをパルス化して前記所要の微小先端からイオン化を誘起する、
段階と、
を含む方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−524634(P2008−524634A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548543(P2007−548543)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/046842
【国際公開番号】WO2006/101558
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(506323094)イマゴ サイエンティフィック インストルメンツ コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】