説明

レーザダイオードモニタ装置及びレーザダイオードモニタ方法

【課題】励起用のレーザダイオードの出力のモニタを簡易な構成でしかも低コストで行い得るレーザダイオードモニタ装置を提供する。
【解決手段】コンバイナ出力ファイバ14の結合ファイバコーティング143を一部除去して結合ファイバクラッド142を露出させた切り欠き形成部144を形成し、この切り欠き形成部144に対し、コンバイナ出力ファイバ14の結合ファイバクラッド142と同一の屈折率、または低い屈折率を有する材料で形成されるモニタ用ダブルクラッドファイバ22のクラッド222を接触させて、コンバイナ出力ファイバ14の結合ファイバクラッド142を伝播するレーザダイオード12−1〜12−nの出力励起光の一部をモニタ用ダブルクラッドファイバ22に漏れて伝播させるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オールファイバで構成されるファイバレーザ装置において、励起用レーザダイオードの出力をモニタする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファイバレーザ装置を用いるものとして例えばリモートセンシング装置がある。このリモートセンシング装置にあっては、測定対象に対してレーザ光を照射し、測定対象からのレーザ反射光を受信し、その反射光を分析することによって測定対象の特徴情報を抽出している。
【0003】
また、オールファイバで構成されるファイバを使用したファイバレーザ装置は、ファイバカップルタイプの複数のレーザダイオードと、ファイバブラッググレーティングと、コンバイナと、コンバイナの出力側に接続される希土類ドープファイバとがそれぞれ融着接続される(例えば、特許文献1及び特許文献2)。ここで、コンバイナは、ファイバブラッググレーティングから発生するレーザ光と、複数のレーザダイオードそれぞれの励起光を入射し、希土類ドープファイバに出射する。なお、複数のレーザダイオードそれぞれの励起光は、希土類ドープファイバに入射されることで、レーザ媒質となる希土類ドープファイバを励起するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−3116号公報
【特許文献2】特開平3−250674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記ファイバレーザ装置では、何らかの原因でレーザダイオードの出力が低下した場合や寿命で出力が低下した場合、すべての部品が融着でつながっているため、レーザダイオードの出力をモニタすることが困難である。このため、従来は出力が低下した場合、レーザダイオードのファイバの一部を切断し、各レーザダイオード出力を確認する必要がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、励起用のレーザダイオードの出力のモニタを簡易な構成でしかも低コストで行い得るレーザダイオードモニタ装置及びレーザダイオードモニタ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明に係るレーザダイオードモニタ装置は、レーザ光を入射するとともに、複数のレーザダイオードそれぞれの出力光を入射するコンバイナと、このコンバイナの出力側に接続され、当該コンバイナの出力光のうちレーザ光を伝播するコア部と、このコア部の外周を覆い複数のレーザダイオードそれぞれの出力光を伝播するクラッド部と、このクラッド部の外周を覆うコーティング部とを有する伝播用光ファイバとを備えるファイバレーザ装置に用いられ、伝播用光ファイバのコーティング部の少なくとも一部に切り欠き形成され、クラッド部を外部に露出する切り欠き形成部と、一端部が切り欠き形成部に接触され、伝播用光ファイバのクラッド部を伝播中の複数のレーザダイオードそれぞれの出力光の漏れ光を伝播する付加用ファイバと、この付加用ファイバの他端部に接続され、付加用ファイバを伝播する漏れ光を受光する光検知部とを備えるようにしたものである。
【0008】
また、付加用ファイバは、伝播用光ファイバのクラッド部と同一の屈折率、または伝播用光ファイバのクラッド部に比して低い屈折率を有する材料で形成される。
【0009】
この構成によれば、伝播用光ファイバのコーティング部を一部切り欠き、この切り欠き形成部に対し、伝播用光ファイバのクラッド部と同一の屈折率、または伝播用光ファイバのクラッド部に比して低い屈折率を有する材料で形成される付加用ファイバの一端部を接触させることで、伝播用光ファイバのクラッド部を伝播するレーザダイオードの出力光の一部が付加用ファイバに漏れて伝播することになる。
【0010】
従って、付加用ファイバの他端部に光検知部を設置することで、レーザダイオードの出力光の状態をモニタすることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
上記発明によれば、励起用のレーザダイオードの出力のモニタを簡易な構成でしかも低コストで行い得るレーザダイオードモニタ装置及びレーザダイオードモニタ方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るレーザダイオードモニタ装置が使用されるファイバレーザ装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1に示したコンバイナ及びコンバイナ出力ファイバの構造を示す斜視図。
【図3】レーザダイオードモニタ装置の構成を示す図。
【図4】以前に使用されていたモニタ装置の構成を示す図。
【図5】本発明に係るレーザダイオードモニタ装置が使用されるファイバレーザ装置の他の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係るレーザダイオードモニタ装置が使用されるファイバレーザ装置の構成を示すものである。なお、ここでは説明を簡単にするために、ファイバレーザ装置として、オールファイバ型ファイバレーザアンプを用いる場合を考える。
【0014】
このファイバレーザ装置は、レーザ発振器11と、複数のファイバカップルタイプのレーザダイオード12−1〜12−nと、コンバイナ13と、伝播用光ファイバとしてのコンバイナ出力ファイバ14と、希土類ドープファイバ15とがそれぞれ融着接続される。
【0015】
レーザ発振器11からのシグナル光(ファイバレーザ出力光)とレーザダイオード12−1〜12−nからの励起光がコンバイナ13及びコンバイナ出力ファイバ14を介して希土類ドープファイバ15に入射され、これによりレーザ光が増幅されて、出力される。
【0016】
また、コンバイナ出力ファイバ14には、モニタ用ファイバ結合部21を介して付加用ファイバとしてのモニタ用ダブルクラッドファイバ22が接触される。このモニタ用ダブルクラッドファイバ22の他端部には光検知器23が接続される。
【0017】
コンバイナ13及びコンバイナ出力ファイバ14の構造を図2に示す。コンバイナ13はシグナル光(ファイバレーザ光)用のファイバ131と励起光のファイバ132−1〜132−nとを1本のコンバイナ出力ファイバ14に結合している。コンバイナ出力ファイバ14は、ダブルクラッド構造でレーザ光を伝播する結合ファイバコア141と、この結合ファイバコア141の外周を覆いレーザダイオード12−1〜12−nそれぞれの励起光を伝播する結合ファイバクラッド142と、この結合ファイバクラッド142の外周を覆う結合ファイバコーティング143と有する。なお、ファイバコーティング143は樹脂で構成されるものである。
【0018】
図3は、レーザダイオードモニタ装置の構成を示す。レーザダイオードモニタ装置は、モニタ用ファイバ結合部21と、モニタ用ダブルクラッドファイバ22と、光検知器23とに大別される。
【0019】
モニタ用ファイバ結合部21において、コンバイナ出力ファイバ14の一部に結合ファイバコーティング143が除去され、結合ファイバクラッド142が露出される切り欠き形成部144が設けられる。また、モニタ用ダブルクラッドファイバ22は、クラッド221と、このクラッド221の外周を覆うコーティング222とを有する。さらに、モニタ用ダブルクラッドファイバ22の切り欠き形成部144に接触する部分は、コーティング222が除去され結合ファイバクラッド142に接触される接触部223が形成される。
【0020】
また、モニタ用ダブルクラッドファイバ22のクラッド221は、コンバイナ出力ファイバ14の結合ファイバクラッド142と同一の屈折率、またはコンバイナ出力ファイバ14の結合ファイバクラッド142に比して低い屈折率を有する材料で形成される。
【0021】
すると、コンバイナ出力ファイバ14の結合ファイバクラッド142を伝播するレーザダイオード12−1〜12−nの励起光の一部がモニタ用ダブルクラッドファイバ22のクラッド221に漏れて伝播され、光検知器23に送られる。この光検知器23は、受光結果に基づいて、どのレーザダイオード12−1〜12−nの出力が低下したか、またはどのレーザダイオード12−1〜12−nが寿命で出力が低下したかを検出するものである。
【0022】
次に、上記構成における動作を説明する。
以前では、上記特許文献2に記載されるように、モニタ用の部品として2入力×2出力の光分岐器31を使用していた。このモニタ装置を図4に示す。図4において、上記図1と同一部分には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0023】
この光分岐器31では、発光装置の光と、外部から逆行する光をモニタできる。しかし、マルチモードの場合、コンバイナ出力ファイバ14に種々のコア径(105μm、200μm、400μm等)が使用されることになる。これらのコア径と同等の光分岐器31を製作するのは容易ではなく、高度な技術を要する。
【0024】
そこで、本実施形態では、レーザダイオード12−1〜12−nの出力をモニタする場合、まずコンバイナ出力ファイバ14の結合ファイバコーティング143を一部除去して、結合ファイバクラッド142を露出させた切り欠き形成部144を形成し、さらに使用するモニタ用ダブルクラッドファイバ22の先端部分のコーティング222を除去して、クラッド221を切り欠き形成部144に接触させるだけでよい。
【0025】
しかる後に、モニタ用ダブルクラッドファイバ22の他端部に光検知器23を接続するだけで、コンバイナ出力ファイバ14の結合ファイバクラッド142を伝播するレーザダイオード12−1〜12−nの励起光の一部がモニタ用ダブルクラッドファイバ22のクラッド221に漏れて伝播され、光検知器23に送られる。この光検知器23の受光結果を利用して、どのレーザダイオード12−1〜12−nの出力が低下したか、またはどのレーザダイオード12−1〜12−nが寿命で出力が低下したかをモニタすることが可能になる。
【0026】
なお、モニタ用ダブルクラッドファイバ22には、コア、クラッドで構成されるファイバを使用する必要がなく、コンバイナ出力ファイバ14のクラッドと屈折率が同等あるいは低い材料であれば使用できる。
【0027】
以上のように上記実施形態では、コンバイナ出力ファイバ14の結合ファイバコーティング143を一部除去して結合ファイバクラッド142を露出させた切り欠き形成部144を形成し、この切り欠き形成部144に対し、コンバイナ出力ファイバ14の結合ファイバクラッド142と同一の屈折率、または低い屈折率を有する材料で形成されるモニタ用ダブルクラッドファイバ22のクラッド222を接触させて、コンバイナ出力ファイバ14の結合ファイバクラッド142を伝播するレーザダイオード12−1〜12−nの出力励起光の一部をモニタ用ダブルクラッドファイバ22に漏れて伝播させるようにしている。
【0028】
従って、モニタ用ダブルクラッドファイバ22の他端部に光検知器23を設置することで、レーザダイオード12−1〜12−nの出力光の状態をモニタすることが可能となる。
【0029】
なお、上記実施形態では、オールファイバ型ファイバレーザアンプに適用する例について説明したが、図5に示すように、オールファイバで構成されるファイバを使用したファイバレーザ発振器に用いるものであってもよい。この場合、レーザ光は2つのグレーティング41,42間で共振し、出力されるものである。
【0030】
なお、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0031】
11…レーザ発振器、12−1〜12−n…レーザダイオード、13…コンバイナ、14…コンバイナ出力ファイバ、21…モニタ用ファイバ結合部、22…モニタ用ダブルクラッドファイバ、23…光検知器、141…結合ファイバコア、142…結合ファイバクラッド、143…結合ファイバコーティング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を入射するとともに、複数のレーザダイオードそれぞれの出力光を入射するコンバイナと、
このコンバイナの出力側に接続され、当該コンバイナの出力光のうちレーザ光を伝播するコア部と、このコア部の外周を覆い前記複数のレーザダイオードそれぞれの出力光を伝播するクラッド部と、このクラッド部の外周を覆うコーティング部とを有する伝播用光ファイバとを備えるファイバレーザ装置に用いられ、
前記伝播用光ファイバの前記コーティング部の少なくとも一部に切り欠き形成され、前記クラッド部を外部に露出する切り欠き形成部と、
一端部が前記切り欠き形成部に接触され、前記伝播用光ファイバのクラッド部を伝播中の前記複数のレーザダイオードそれぞれの出力光の漏れ光を伝播する付加用ファイバと、
この付加用ファイバの他端部に接続され、前記付加用ファイバを伝播する漏れ光を受光する光検知部とを具備したことを特徴とするレーザダイオードモニタ装置。
【請求項2】
前記付加用ファイバは、前記伝播用光ファイバのクラッド部と同一の屈折率、または前記伝播用光ファイバのクラッド部に比して低い屈折率を有する材料で形成されることを特徴とする請求項1記載のレーザダイオードモニタ装置。
【請求項3】
前記付加用ファイバは、前記複数のレーザダイオードそれぞれの出力光を伝播するクラッド部と、このクラッド部の外周を覆うコーティング部とを有するとき、前記伝播用光ファイバの切り欠き形成部に接触する部分のコーティング部を除去してクラッド部を前記伝播用光ファイバのクラッド部に接触させる構造をとることを特徴とする請求項2記載のレーザダイオードモニタ装置。
【請求項4】
レーザ光を入射するとともに、複数のレーザダイオードそれぞれの出力光を入射するコンバイナと、
このコンバイナの出力側に接続され、当該コンバイナの出力光のうちレーザ光を伝播するコア部と、このコア部の外周を覆い前記複数のレーザダイオードそれぞれの出力光を伝播するクラッド部と、このクラッド部の外周を覆うコーティング部とを有する伝播用光ファイバとを備えるファイバレーザ装置に用いられるレーザダイオードモニタ方法において、
前記伝播用光ファイバの前記コーティング部の少なくとも一部に、前記クラッド部を外部に露出する切り欠き形成部を切り欠き形成し、
前記切り欠き形成部に付加用ファイバの一端部を接触させ、前記伝播用光ファイバのクラッド部を伝播中の前記複数のレーザダイオードそれぞれの出力光の漏れ光を前記付加用ファイバに伝播させ、
この付加用ファイバの他端部に光検知部を接続し、前記付加用ファイバを伝播する漏れ光を前記光検知部受光させるようにしたことを特徴とするレーザダイオードモニタ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−192670(P2011−192670A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54917(P2010−54917)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】