説明

レーザーエッチング品の製造方法およびレーザーエッチング品

【課題】樹脂成形品の表面に樹脂組成物の樹脂色と異なる塗料を塗って塗膜を形成し、その塗膜の一部にレーザー光を照射して塗膜を除去してレーザーエッチング品を形成する工法では塗膜を除去した部分と除去しない部分の境界で凹部が生じてしまうが、レーザー光照射によっても、この凹部を生じさせないようにして、塗膜を除去した部分の鮮明な表示を維持でき、周囲が剥がれないレーザーエッチング品の製造方法を提供する。
【解決手段】レーザー光3照射によりレーザー光3が照射された領域が発泡する樹脂成形品1の上に加飾層2が積層された加飾成形品6に対し、表面に加飾層2が積層された側から加飾成形品6の一部にレーザー光3を照射して、レーザー光3が照射された領域の加飾層2を除去し、さらにレーザー光3の照射を継続してその領域の樹脂成形品1の表面を発泡させることにより発泡層4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電製品、音響機器、自動車のインジケータなどの表示パネルやキーボタンなどの成形品の表面にレーザー光を使用して鮮明な文字、記号などを付与するレーザーエッチング品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形品101の表面に樹脂組成物の樹脂色と異なる塗料を塗って塗膜102を形成し、その塗膜102の一部にレーザー光を照射して塗膜102を除去してレーザーエッチング品103を形成し、その照射領域(塗膜除去した部分)から見える下地の色・模様・文字等を見せる技術がある(図6参照)。レーザーエッチング品103は例えば車載用のオーディオパネル、キーボタン等に使用されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−216116
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記工法では塗膜102を除去した部分と除去しない部分の境界では段差が出る、すなわち除去した塗膜厚み分の凹部が生じてしまう。その結果、形成されたキーボタンを長期間使用すると、この凹部に指の垢などの汚れがたまり下地の樹脂成形品101の発色が損なわれて表示が見にくくなる。また、この境界段差をきっかけとしてこの凹部の周囲の塗膜が剥がれてしまう問題があった。
【0005】
本発明はレーザー光照射によっても、この凹部を生じさせないようにして上記問題の解決をはかることにより、塗膜を除去した部分の鮮明な表示を維持でき、周囲が剥がれないレーザーエッチング品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するため、以下のような特徴を備える。
【0007】
本発明のレーザーエッチング品の製造方法は、レーザー光照射によりレーザー光が照射された領域が発泡する樹脂成形品の上に加飾層が積層された加飾成形品に対し、表面に加飾層が積層された側から加飾成形品の一部にレーザー光を照射して、レーザー光が照射された領域の加飾層を除去し、さらにレーザー光の照射を継続してその領域の樹脂成形品表面を発泡させることにより発泡層を形成することを特徴とする。
【0008】
また、上記の発明において、樹脂成形品に積層する加飾層を転写フィルムの転写で形成してもよい。
【0009】
また、上記の発明において、発泡層の表面を加飾層の表面とほぼ同一面としてもよい。
【0010】
また、上記の発明において、発泡層の表面を加飾層の表面から盛り上げてもよい。
【0011】
本発明のレーザーエッチング品は、上記いずれかに記載のレーザーエッチング品の製造方法で形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレーザーエッチング品の製造方法によると、レーザー光が照射されて加飾層が除去された後、あるいはレーザー光が照射されて加飾層が除去されると同時に樹脂成形品の表面が発泡する。この発泡により加飾層が除去された部分に出来る凹部を埋めることができる。レーザー光が照射された領域で凹部が生じないので、この領域に汚れがたまらず鮮明な表示を維持できる。また、加飾層を除去した部分と除去しない部分の境界部をきっかけに加飾層が剥がれてしまう事もない。
【0013】
また、上記の発明によると、加飾層を転写フィルムの転写層で形成することもできる。したがって、簡便に加飾層を形成することができる。
【0014】
また、上記の発明によると、発泡層の表面を加飾層の表面とほぼ同一面とすることもできる。したがって、表面が滑らかなレーザーエッチング品を得ることができる。
【0015】
また、上記の発明によると、発泡層の表面を加飾層の表面から盛り上げることもできる。したがって、発泡層を目の不自由な人のための点字として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0017】
図1は、本発明のレーザーエッチング品の製造方法を示す断面図である。図2は、樹脂成形品の表面に加飾層を設けるための転写フィルムの断面図である。図3は、転写法により樹脂成形品の表面に加飾層を設ける方法を示す断面図である。図4は、成形同時転写法により樹脂成形品の表面に加飾層を設ける方法を示す断面図である。図5は、本発明のレーザーエッチング品の製造方法により形成されたレーザーエッチング品の一例の断面図である。図6は、従来のレーザーエッチング品の製造方法により製造されたレーザーエッチング品の断面図である。
【0018】
樹脂成形品1は、レーザー光照射で発泡を起こす樹脂組成物である。樹脂成形品1としては、樹脂単体の他に、レーザー光により樹脂組成物の発泡を引き起こす、または助成する添加物を含んでも良い。これらの樹脂としては例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の公知の熱可塑性樹脂およびこれらを変性した樹脂が使用できる。これらの樹脂は単独あるいは2種以上を混合して使用することも可能である。また、樹脂組成物の発泡を引き起こす、または助成する添加物としては、1.添加物自体が変化を起こして樹脂発泡をさせるものや、2.添加物が樹脂を溶融・熱分解させ発泡を誘起するもの等が使用可能である。1の添加物としては、発泡剤、ガラスバルーン、シラスバルーン、酸化鉄、コバルト酸化物等の遷移金属化合物等があり、2の添加物としては、カーボンブラック、遷移金属化合物等がある。これらの発泡を引き起こす、または助成する添加物の含有量は、特に範囲はないが、樹脂成形品の強度面から樹脂組成物100部に対し0.1〜20部の範囲で添加することが好ましい。本発明においては、特にカーボンブラックを0.01〜1.0重量%配合するのが安価でもあり、優れた効果が得られる。カーボンブラックの配合量が0.01重量%未満では充分なマーキングを行うことができず、逆に1.0重量%を越えるとレーザー照射によって樹脂成形品表面が発泡せずに削れて窪みを生じてしまうためコントラストの良いマーキングが難しくなる。
【0019】
また、レーザー照射によるマーキングを大きく損なわない範囲で、必要に応じて公知の添加剤等を加えることができる。例えば、無機充填剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、可塑剤、離型剤、界面活性剤、結晶化促進剤、結晶核剤等を配合することも可能である。上記顔料としては無機系顔料、有機系顔料、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料等が上げられる、有機系顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン計顔料、アントラキノン系顔料、ペリノン計顔料。キナクリドン系顔料等がある。
【0020】
無機充填剤の場合無機充填剤の形状には特に制約はなく、繊維状、粉粒状、板状等のいずれでもよいが、好ましくは粉粒状及び板状の無機充填剤であり、また、その色は白色系あるいは淡色のものが好ましく、例えば、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。これらの無機充填剤をさらに配合するにあたっては、添加量は1〜50重量%が好ましい。
【0021】
いずれにせよ、樹脂成形品1がレーザーのエネルギーを透過せずに吸収するために有色であることが好ましい。
【0022】
この樹脂成形品1の上に加飾層2を積層形成することにより加飾成形品6を形成する。
【0023】
樹脂成形品1の表面に形成される加飾層2としては、塗料を直接樹脂成形品1の表面に形成してもよい。塗料としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。加飾層は、グラビア印刷法、スプレーコーティングなどにより形成するとよい。これら加飾層2と樹脂成形品1とは直接密着するように選択する。密着しない場合はアンカー層などの相互の密着を助ける層を設けても良い。この場合は、後述のレーザー光を照射した部分はアンカー層も除去することになる。
【0024】
加飾層2を形成するために転写シート11を用いてもよい。転写シート11について説明する。転写シート11は、基体シート12の上に絵柄層14を備える転写層16が少なくとも形成されたものである(図2参照)。後述する転写法または成形同時転写法によって、転写フィルム11を樹脂成形品1に融着させ、転写フィルム11の基体シート12を剥離して、転写フィルム11の転写層16を加飾層2として樹脂成形品1の表面に転写した加飾成形品6を形成する。
【0025】
基体シート12としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂、アセテート樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などのプラスチックシートを使用することができる。基体シート12の厚さとしては、10〜100μmのものを使用するとよい。基体シート12はそれ自体で剥離性を有するものを用いるとよい。また、より剥離性を安定させるために、離型層(図示せず)を形成してもよい。離型層は転写工程後に基体シート12とともに除去される層である。離型層の材質としては、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂などの硬化性樹脂を用いるとよい。離型層の形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0026】
また、基体シート12あるいは離型層との剥離をより確実にするために、必要に応じて剥離層13を形成してもよい。剥離層13は、転写後または成形同時転写後に基体シート12を剥離した際に、基体シート12または離型層から剥離して被転写物の最外面となる層である。剥離層13の材質としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などのほか、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを用いるとよい。剥離層13に硬度が必要な場合には、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを選定して用いるとよい。剥離層13の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0027】
絵柄層14の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。絵柄層14の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。絵柄層14の厚さとしては、1〜30μmが好ましい。絵柄層14は着色インキに限らず、金属蒸着層等を形成して金属光沢のある意匠表現をする場合もある。金属蒸着層の材質としては、アルミ、クロム、銅、スズなどを用いる。金属蒸着層の形成は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いればよい。
【0028】
また、接着層15を必要に応じて形成してもよい。接着層15は、転写法または成形同時転写法により転写材を樹脂成形品1に接着させるための層である。樹脂成形品1の材質がポリアクリル系樹脂の場合は、接着層15の材質としてポリアクリル系樹脂を用いるとよい。また、樹脂成形品1の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを、接着層15の材質として使用すればよい。接着層15の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコーティングや、グラビア印刷、スクリーン印刷法などを用いるとよい。接着層15の乾燥膜厚は、1〜5μmとするのが一般的である。
【0029】
転写法によって、上記転写シート11から、樹脂成形品1上へ加飾層2として転写層16を転写する転写工程は次のようにして行う。まず、樹脂成形品1の表面に、転写シート11の接着層15側を密着させる。次に、シリコンラバーなどの耐熱ゴム状弾性体21を備えたロール転写機、アップダウン転写機などの転写機を用い、温度80〜260℃程度、圧力500〜2000Pa程度の条件に設定した耐熱ゴム状弾性体21を介して転写シート11の基体シート12側から熱と圧力とを加える。こうすることにより、接着層15が樹脂成形品1表面に接着する。最後に、冷却後に基体シート12を剥がすと、転写層16が樹脂成形品1の表面に加飾層2として転写され、転写工程が完了する(図3参照)。
【0030】
成形同時転写法によって、上記転写シート11から、樹脂成形品1上へ加飾層2として転写層16を転写する転写工程は次のようにして行う。まず、可動型と固定型とからなる成形用金型31内に転写シート11を送り込む。その際、枚葉の転写シート11を1枚ずつ送り込んでもよいし、長尺の転写シート11の必要部分を間欠的に送り込んでもよい。長尺の転写シート11を使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、転写シート11と成形用金型31との見当が一致するようにするとよい。また、転写シート11を間欠的に送り込む際に、転写シート11の位置をセンサーで検出した後に転写シート11を可動型と固定型とで固定するようにしてもよい。成形用金型31を閉じた後、ゲートから成形樹脂32を金型内に射出充填させ、樹脂成形品1を形成するのと同時にその面に転写シート11を接着させる(図4(a)参照)。樹脂成形品1を冷却した後、成形用金型31を開いて樹脂成形品1を取り出す。最後に、基体シート12を剥がすと、転写層16が樹脂成形品1の表面に加飾層2として転写された加飾成形品6が形成され、転写工程が完了する(図4(b)参照)。
【0031】
樹脂成形品1の表面に加飾層2が積層された加飾成形品6の一部にレーザー光3を照射して、レーザーエッチングを行うためのレーザー装置としては、例えば炭酸ガスレーザー装置、ルビーレーザー装置、半導体レーザー装置、アルゴンレーザー装置、エキシマレーザー装置、YAG レーザー装置、VYOレーザー装置等を挙げることができる。中でも、波長1064nmのNd:YAGレーザー、824nmのAlGaAsレーザー等の半導体レーザー等が一般的で使用しやすい。
【0032】
樹脂成形品1の表面に加飾層2が積層された加飾成形品6に対し、表面に加飾層2が積層された側から加飾成形品6の一部にレーザー光3を照射する(図1(a)参照)。レーザー光3を照射して任意の文字や図形を形成する方法として、例えばレーザー光3を固定して加飾成形品6を前後左右に移動する方法や、加飾成形品6を固定してレーザー光3を前後左右に移動する方法を使用できる。レーザー光3を照射すると、レーザー光3が照射された領域の加飾層2がレーザー光3のエネルギーによって焼失されることによって除去され、加飾層が除去された直後、あるいはレーザー光が照射されて加飾層が除去されると同時に樹脂成形品1の照射部が軟化溶解する(図1(b)参照)。この段階では照射領域で加飾層2の厚み分の凹部が生じた状態となる。さらにレーザー光の照射を継続すると、樹脂成形品1の照射部の最表面部は焼失されるものの、樹脂成形品1の照射部の内部では溶解樹脂中に含まれる樹脂中に含まれる低分子量樹脂成分、分解生成物・添加剤などの揮発成分が高温に熱せられ気化・または発泡することによって、樹脂成形品1の照射部が盛り上がり、発泡層4となる。レーザー光3の照射時間、照射強度などを調節することにより、加飾層2と発泡層4との天面位置をほぼ同じくさせて両者の間に段差を生じさせないようにすることができる(図1(c)参照)。この発泡層4の表面に汚れがたまることがないので発泡層4の発色が損なわれず表示を鮮明に維持できる。また、加飾層2と発泡層4の間に段差がないので、両者の境界部をきっかけに加飾層2が剥がれてしまう事もない。この状態でレーザー光3の照射を中止すると、発泡層4は内部に多数の泡を含んだ状態で冷却固化され、レーザーエッチング品5が形成される。この発泡層4は元の樹脂成形品1の色と異なる場合があり、多くは光を乱反射し乳白色となって見える。なお、実際のところはレーザー光3の照射から発泡層4の形成までの工程はほぼ同時に起こっている。
【0033】
また、レーザー光3の照射を調節することによって、発泡層4の表面が加飾層2の表面から盛り上げることもできる(図5参照)。この場合、発泡層4を目の不自由な人のための点字として用いることができる。点字を指の触覚で読み取りやすくするため、発泡層4の加飾層2表面からの隆起高さを約0.5〜0.6mm程度とするのが好ましい。なお、レーザー光3の照射をかけすぎると、発泡層4が焼失してしまい、レーザーエッチング品5に凹部ができてしまう。
【実施例1】
【0034】
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを基体シート12とし、次いで、剥離層13、絵柄層14、接着層15を順次グラビア印刷法により形成して、転写シート11を得た。剥離層13、絵柄層14は、それぞれアクリル系樹脂からなるインキを用いて形成した。また、接着層15は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂からなるインキを用いて形成した。
【0035】
次いで、このようにして得た転写シート11を、成形用金型の間に配置し、型締めした後、成形樹脂32を射出して一体化し、型開き後、転写シート11の基体シート12を剥離して樹脂成形品1の上に加飾層2として転写層16が転写された加飾成形品6を得た。
【0036】
次いで、波長1064nmのNd:YAGレーザー装置を用いて、この加飾成形品6の一部にレーザー光3を照射して、レーザー光3が照射された領域の加飾層2を除去し、さらにレーザー光3の照射を継続してその領域の樹脂成形品1表面を発泡させることにより発泡層4を形成することにより、発泡層4の表面が加飾層2の表面とほぼ同一面であるレーザーエッチング品5を得た。
【0037】
このようにして得たレーザーエッチング品5は、レーザー光3が照射された領域である発泡層4の表面に汚れがたまらず鮮明な表示を維持できた。また、加飾層2と発泡層4との境界部をきっかけに加飾層2が剥がれてしまう事もなかった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のレーザーエッチング品の製造方法を示す断面図である。
【図2】樹脂成形品の表面に加飾層を設けるための転写フィルムの断面図である。
【図3】転写法により樹脂成形品の表面に加飾層を設ける方法を示す断面図である。
【図4】成形同時転写法により樹脂成形品の表面に加飾層を設ける方法を示す断面図である。
【図5】本発明のレーザーエッチング品の製造方法により形成されたレーザーエッチング品の一例の断面図である。
【図6】従来のレーザーエッチング品の製造方法により製造されたレーザーエッチング品の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 樹脂成形品
2 加飾層
3 レーザー光
4 発泡層
5 レーザーエッチング品
6 加飾成形品
11 転写シート
12 基体シート
13 剥離層
14 絵柄層
15 接着層
16 転写層
21 耐熱ゴム状弾性体
31 成形用金型
32 成形樹脂
101 樹脂成形品
102 塗膜
103 レーザーエッチング品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光照射によりレーザー光が照射された領域が発泡する樹脂成形品の上に加飾層が積層された加飾成形品に対し、表面に加飾層が積層された側から加飾成形品の一部にレーザー光を照射して、レーザー光が照射された領域の加飾層を除去し、さらにレーザー光の照射を継続してその領域の樹脂成形品表面を発泡させることにより発泡層を形成することを特徴とするレーザーエッチング品の製造方法。
【請求項2】
樹脂成形品に積層された加飾層が転写フィルムの転写層を転写して形成されたものである請求項1に記載のレーザーエッチング品の製造方法。
【請求項3】
発泡層の表面を加飾層の表面とほぼ同一面とする請求項1〜2のいずれかに記載のレーザーエッチング品の製造方法。
【請求項4】
発泡層の表面を加飾層の表面から盛り上げる請求項1〜2のいずれかに記載のレーザーエッチング品の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のレーザーエッチング品の製造方法で形成されたレーザーエッチング品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−5973(P2010−5973A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169791(P2008−169791)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】