説明

レーザースキャナのキャリブレーション装置及びキャリブレーション方法

【課題】特殊な機器を使用することなくレーザースキャナのキャリブレーションを行う技術を提供する。
【解決手段】左右両側辺が平行かつ垂直な垂直平面Sを有するターゲットを、垂直平面Sの前方の計測原点Oからレーザースキャナ1により水平走査し、M個の測点に対する点群データを得る。有効測点抽出部13は、この点群データの中から、垂直平面Sの左右両側の端部の端測点A,Bを特定し、端測点A,B間のm個の有効測点Pの相対座標を抽出する。座標決定手段14は、光軸の軌跡が垂直平面Sを切る線(走査線E)を基準に測地座標系を設定し、端点Eから端測点Aまでの距離d、端点Eから端測点Bまでの距離d、及び端測点A,B以外の各有効測点Pから走査線Eまでの距離dの自乗和が最小となるように、相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザースキャナのキャリブレーション技術に関し、特に、レーザースキャナによる測量を行う前段階として、計測原点及び測量の基準となる図根点の直交座標値を決定しその後の測量値の較正の基準値を確定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やモバイル端末を利用した歩行者に対するナビゲーションが注目されている。これに伴って、地下街や駅構内などの屋内の地図データが必要とされている。このような屋内の地図データの整備方法として、従来から、トータルステーション(電子式測角測距儀)や電子平板などを利用した測量技術が広く用いられている。しかしながら、屋内の地図に必要なデータは広域かつ詳細であるため、このような従来の測量を行ったのでは大変なコストと時間を要することになる。
【0003】
そこで、地図データを整備する手法として、レーザースキャナを用いた測定方法が研究・開発されている。
【0004】
レーザースキャナとは、光波測距儀の一種であり、レーザーヘッダ内部の回転ミラーにより照射方向を回転させながら近赤外線のパルス・レーザービームを照射して、計測対象点で反射した反射光を検出し、レーザー光のパルス伝搬時間を位相比較法(非特許文献1参照)等により検出することで計測対象点までの距離を計測し、同時にパルス・レーザービームを照射した方向を計測することで、計測対象点の座標を取得する計測機器をいう。照射されたパルス・レーザービームは、計測対象点にある対象物に当たると反射される。この反射光は、レーザースキャナの受光部で検出される。パルスの投光と受光との間の時間差は、変調周波数の位相差などにより検出される。この時間差は、レーザースキャナと対象物との間の距離に比例するため、この時間差から計測対象点までの距離を求めることができる。また、パルス・レーザービームは、レーザースキャナ内部の回転ミラーにより逐次方向が変えられ、周囲のエリアを所定の角度分解能で扇形に走査する。角分解能は機種によって区々であるが、現在、高角度分解能のものでは0.01〜0.5°の角度分解能の機種も開発されている。1回の扇形走査で、レーザービームの軌跡が描く二次元平面内でのレーザー距離画像を表す点群データが得られる。
【0005】
レーザースキャナを用いた地図データの手法では、レーザースキャナを移動させながら計測を行い、レーザースキャナから得られる時系列の点群データを重ね合わせることによって1つの地図データを作成する。このとき、レーザースキャナから得られた時系列の点群データを基に、計測装置の位置と方向を推定する。これを自己位置推定という。
【0006】
屋外の測定では、自己位置推定にGPSが広く使用されている(非特許文献2,3参照)。しかし、屋内での測定においてはGPSが利用できないため、自己位置推定には慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を利用する方法(非特許文献4参照)、スキャンマッチングによる方法(非特許文献5−7参照)などが用いられる。スキャンマッチングによる方法では、レーザースキャナにより時系列に取得された点群データを重ね合わせていくことで実行される。実際には、レーザースキャナを搭載した台車を計測したい場所を移動させながら連続的に測定を行い、時系列の点群データを取得する。これらの取得された時系列点群データを重ね合わせていくことによって、1つの地図点群データを作成する。この重ね合わせの方法に関しては、各種の方法が考案されている(非特許文献5−7参照)。例えば、非特許文献7の方法では、ある時刻で得られた点群データを1つ前の時刻の点群データに平行移動及び回転を用いた変換(ヘルマート変換)で重ね合わせていくことで実行される。
【0007】
レーザースキャナで取得される点群データは、レーザースキャナを中心とした座標である。そのため、各計測ごとに計測開始位置やレーザースキャナの姿勢が異なると、各計測ごとに異なる座標系の点群データが得られる。そのため、複数回の計測で得られた点群データを合成して地図データを作成しようとした場合、それぞれ計測ごとの絶対的な位置座標の情報がなければ正しく合成することができない。また、一般に、レーザースキャナには、温度や場所などによる測定値のずれや、大気の影響などによる誤差が発生する。そのため、レーザースキャナによる測定では、レーザースキャナを水平に設置した後、キャリブレーション(較正)を行わなければならない。
【0008】
レーザースキャナのキャリブレーションでは、実際の計測対象の寸法と計測値とを比較し、計測値に対して補正をかける。通常、キャリブレーションにおいては、計測を開始する位置において走査を行い、座標値が既知のいくつかの計測対象点を利用して、測定を開始する際のレーザーヘッダ(計測原点)及びレーザーヘッダの正面方向における計測対象点(注視点)の測地座標を確定する。そして、レーザースキャナから得られる点群データと計測原点及び注視点の位置座標との関係から、位置姿勢の較正が行われる。
【0009】
レーザースキャナのキャリブレーション方法としては、非特許文献8,9に記載のものが公知である。
【0010】
非特許文献8に記載の方法は、垂直に立てたガラス面にターゲットとしてCoBit(Compact Battery-less Information Terminal)を貼り付け、このCoBitによりレーザースキャナのキャリブレーションを行う方法が記載されている。
【0011】
この手法では、レーザービームがガラス面を透過するという点に着目し、基準点となるターゲットをガラス面に貼る。基準点を正確に捉えるために、レーザービームのスポット径の中心とガラス面に貼ったターゲットの中心が一致する必要がある。レーザービームは不可視であり、距離とともにスポット径が大きくなるため肉眼ではレーザービームのスポットを確認することはできない。
【0012】
そこで、レーザービームのスポットをとらえるのにCoBitを利用する。CoBitは、太陽電池に直結したイヤホンで音を聞くことができる装置である。CoBitをターゲットとして使用することで、レーザービームのスポットの中心ほどレーザー光が強く、発生する音も大きくなる。この性質を利用してスポットの中心を捉える。次に、レーザースポットの中心にあたるように設置された複数の基準点を計測し、レーザースキャナ座標系における各基準点の座標(X,Y,Z)を求める。ここで、レーザーの軌跡は直線であるため、Zlの値はすべて0とする。次に、各基準点の位置座標の真値(絶対値)を求めるため、各基準点についてトータルステーションによる位置座標の計測を行い、測地座標系における各基準点の座標(X,Y,Z)を求める。これらの結果から、レーザースキャナ座標系から測地座標系への変換式を求める。具体的には、3次元の回転、原点の平行移動、及び縮尺を補正するヘルマート変換の変換パラメータを求める。ヘルマート変換は次式によって表される。
【0013】
【数1】

ここで、Rは三次元回転行列、sは縮尺、(T,T,Tは平行移動量である。
【0014】
また、非特許文献9には、計測対象の地物上に4点以上の基準点を設定し、それらの基準点に反射シートを設置しておき、これらの反射シートによりレーザースキャナのキャリブレーションを行う方法が記載されている。この方法においても、各基準点の位置座標をトータルステーションで計測して決定するとともに、レーザースキャナで計測する、そして、レーザースキャナ座標系における各基準点の座標とトータルステーションで計測した測地座標系における各基準点の座標とに基づいて、レーザースキャナ座標系から測地座標系に変換するアフィン変換パラメータを求めることによって較正を行う。
【非特許文献1】大嶋太市,「測量学<基礎編>」,初版,共立出版株式会社,1997年4月10日,pp.152−158.
【非特許文献2】趙卉菁,柴崎亮介,「車両搭載型レーザレンジセンサによる3次元都市空間モデルの自動構築」,第8回画像センシングシンポジウム,2002年,pp.121-126.
【非特許文献3】H. Zhao and R. Shibasaki, "A Vehicle-borne Urban 3D Acquisition System using Single-row Laser Range Scanners", IEEE Trans. SMC Part B: Cybernetics, 2003, Vol.33, No.4, pp..
【非特許文献4】長井正彦他,「IMUを用いたレーザースキャナとCCDセンサの統合による3次元モデルの構築」,日本写真測量学会平成16年度年次学術講演会論文集,日本写真測量学会,2004年,pp.5-8.
【非特許文献5】P.J.Besl and N.D.Mckay, "A Method for Registration of 3-D Shapes", IEEE Transaction on Pattern Analysis and Maching Intelligence, 1992, Vol.14, No.2, pp.239-256.
【非特許文献6】中本琢実,山下淳,金子透,「レーザーレンジファインダ搭載移動ロボットによる動的環境の3次元地図作成」,映像メディア学会技術報告,2006年,Vol.30, No.36, pp.263-271.
【非特許文献7】平岡透,若松浩二,尾崎直人,「屋内地図作成のための時系列レーザースキャナデータのロバストな重ね合わせ」,写真測量とリモートセンシング,2007年,Vol.46, No.2, pp.37-41.
【非特許文献8】長井正彦,マナンダ・ディネッシュ,柴崎亮介,「“Cobit”によるレーザースキャナのキャリブレーション手法に関する研究」,日本写真測量学会平成16年度次学術講演会発表論文集,2004年,pp.1-4.
【非特許文献9】氏家康二,「レーザースキャナを用いたオブジェクトマッチングによる地すべり変位追跡」,高知工科大学2004(平成16)年度修士論文,[online],2005年1月,高知工科大学付属図書館,[平成19年10月1日検索],インターネット<http://www.kochi-tech.ac.jp/library/ron/2004/g9/M/1075013.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述のようなCoBit又は反射板を使用して較正を行う場合、計測を行う度にCoBit又は反射板やトータルステーションなどのキャリブレーション専用の特殊な機器を用意する必要があるため不便である。
【0016】
そこで、本発明の目的は、キャリブレーション専用の特殊な機器を使用することなくレーザースキャナのキャリブレーションを行う技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
レーザースキャナのキャリブレーション装置に係る本発明の第1の構成は、左右両側辺が平行かつ垂直な垂直平面を有するターゲットを、前記垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより水平走査して得られる、M個(Mは整数)の測点に対する前記計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データを記憶する点群データ記憶手段と、
前記点群データの中から、前記垂直平面の左右両側の端部の測点(以下「端測点」という。)A,Bを特定し、前記端測点A,Bを含む前記端測点A,B間のm個の測点(以下「有効測点」という。)P(i=n,…,n+m−1)の相対座標を抽出する有効測点抽出手段と、
前記レーザースキャナの光軸の軌跡が前記垂直平面を切る線である走査線Eを基準に測地座標系を設定し、前記走査線Eの一方の端点Eから前記端測点Aまでの距離d、前記走査線Eの他方の端点Eから前記端測点Bまでの距離d、及び前記端測点A,B以外の前記各有効測点P(i=n+1,…,n+m−2)から前記走査線Eまでの距離dの和又は自乗和が最小となるように、前記相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定する座標決定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、レーザースキャナのキャリブレーションに使用するターゲットとして、左右両側辺が平行かつ垂直な垂直平面を有する物体があればよい。従って、例えば垂直に立てられた角柱形の建物の柱などをターゲットとして利用することができる。従って、従来のようにキャリブレーション専用の特殊な機器を用いることなくレーザースキャナのキャリブレーションを行うことが可能となる。
【0019】
また、相対座標を測地座標へ関係づける関係パラメータを決定する際に、最小化する凸評価関数Jとして、距離d、距離d、及び距離d(i=n+1,…,n+m−2)の和
【0020】
【数2】

又は自乗和
【0021】
【数3】

を用いることで、走査時における測定方位角の離散化による量子化誤差の影響を最小限に抑えることができる。
【0022】
ここで、「垂直平面」は、左右両側辺が平行かつ垂直な平面であればよく、上下辺の形状は問わない。但し、垂直平面の両辺は凸角(convex angle)となっているものとする。「計測原点」とは、レーザースキャナのレーザー光の光軸の回動中心の点をいう。「測点」とは、レーザースキャナにより座標測定を行なう空間点をいう。測点の数Mは特に限定はされず、レーザースキャナの角度解像度と走査角とにより決まる値である。ここで、「角度解像度」とは、隣接する測点間の方位角の差をいう。「走査角」とは、レーザースキャナが1回の走査において走査を開始する光軸の方位角と走査を終了する光軸の方位角との差角をいう。「計測原点Oを基準とする相対座標」とは、計測原点を原点としてレーザースキャナに固定された座標をいう。相対座標は、直交座標、極座標、円柱座標などの座標表現を用いることができるが、レーザースキャナが直接測定する値は、測点の方位角φと測定原点から測点までの距離lなので、通常は相対座標は極座標表現(l,φ)が用いられる。「測地座標系」とは、レーザースキャナの光軸の軌跡が垂直平面を切る線(走査線E)を基準に設定された座標系をいう。ターゲットは、計測空間の所定の位置に固定されているため、測地座標系は計測空間に固定された座標系である。測地座標系の座標表現は特に限定されないが、地図作成の際の利便性を考慮して、通常は直交座標表現が用いられる。「端測点」とは、測定対象である平面の端部の測点をいう。ここで、レーザースキャナの走査においては各測点間の方位角は離散的であるため、一般には、端測点は測定対象である平面の端部とは正確には一致しない。「相対座標を測地座標へ関係づける関係パラメータ」とは、相対座標を測地座標に対応づけるパラメータをいう。対応付けのパラメータの取り方は任意であるが、例えば、測地座標系における計測原点Oの位置座標(x,y)と、注視点G(走査角度範囲の中心方向の光軸上の測点)の位置座標(x,y)を用いることができる。
【0023】
レーザースキャナのキャリブレーション装置に係る本発明の第2の構成は、前記第1の構成において、前記座標決定手段が、
前記端測点A,Bが前記走査線E上に位置し、かつ端点Eから端測点Aまでの距離と端点Eから端測点Bまでの距離とが等しくなるように、前記測地座標系における前記端測点A,Bの位置座標の初期値を算出する第1の初期化手段と、
前記端測点A,Bの位置座標の初期値及び前記有効測点の相対座標に基づき、前記端測点A,B以外の前記有効測点P(i=n+1,…,n+m−2)及び前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標の初期値を算出する第2の初期化手段と、
前記距離d、前記距離d、及び前記距離d(i=n+1,…,n+m−2)の和又は自乗和を評価関数として、前記計測原点O及び前記端測点A,Bを含む前記各有効測点P(i=n,…,n+m−1)の位置座標の初期値から開始して、前記評価関数の値が最小となるように、前記計測原点O及び前記各有効測点Pの回転及び平行移動を行うヘルマート変換の各変換パラメータを、反復法により算出する変換パラメータ算出手段と、
算出された前記各変換パラメータにより前記計測原点Oの位置座標の初期値をヘルマート変換し、前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標を算出する原点座標確定手段と、
所定の角度範囲を回転走査する前記レーザースキャナの走査開始方向と走査終了方向の2つの方向間の走査角の二等分角方向の光軸上の測点である注視点Gの相対座標を前記点群データから抽出し、該注視点Gの相対座標と前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標とに基づいて、前記注視点Gの前記測地座標系における位置座標を算出する注視点座標確定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、まず第1の初期化手段が端測点A,Bの位置座標の初期値を設定する。尚、本明細書においては、「位置座標」というときは、特に断らない限りは測地座標系における位置座標をいうものとする。端測点A,Bの相対座標は点群データにより既知であるので、端測点A,Bの間の距離rABも既知である。従って、端測点A,Bは、走査線Eの中点から距離rAB/2だけ離れた走査線E上に配置される。次に、第2の初期化手段は、有効測点P(i=n+1,…,n+m−2)及び計測原点Oの位置座標の初期値を算出する。端測点A,Bに対する有効測点P及び計測原点Oの相対座標も点群データにより既知であるので、端測点A,Bの位置座標の初期値が定まれば有効測点P及び計測原点Oの位置座標の初期値も一意的に定まる。次に、変換パラメータ算出手段は、計測原点O及び各有効測点P(i=n,…,n+m−1)を、ヘルマート変換により最適な位置に移動する。この移動の際のヘルマート変換パラメータは、前述の式(2)又は式(3)で表される距離の和又は自乗和を評価関数Jとして用いて、反復法により求められる。式(2)又は式(3)は凸関数なので、反復法における収束性は保証される。次に、原点座標確定手段は、関係パラメータの一つとして、計測原点Oの測地座標系における位置座標を算出する。最後に、注視点座標確定手段は、もう一つの関係パラメータとして、注視点Gの測地座標系における位置座標を算出する。以上のようにして、関係パラメータとして計測原点O及び注視点Gの測地座標系における位置座標が求めれば、他の測点の相対座標も絶対座標系に変換できる。また、レーザースキャナをターゲットの前から他所へ移動しながら繰り返し走査を行って点群データを取得した場合、前に走査して得た点群データに重ね合わせながら測地座標系における位置座標を定めていくことができる。
【0025】
ここで、「反復法」のアルゴリズムとしては、最急降下法、ヤコビ法、ガウス・ザイデル法、SOR(Successive Over Relaxation)法等の各種公知の方法を使用することができる。
【0026】
レーザースキャナのキャリブレーション装置に係る本発明の第3の構成は、前記第1の構成において、前記点群データ記憶手段は、左右両側辺が平行かつ垂直な垂直平面を複数有し、各垂直平面は互いに平行であるターゲットを、前記各垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより水平走査して得られる、M個(Mは2より大きい整数)の測点に対する前記計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データを記憶するものであり、
前記有効測点抽出手段は、前記各垂直平面に対して、両端の端測点A,B(jは前記各垂直平面を区別する添字)を特定し、前記各有効測点Pj,iの相対座標を抽出するものであり、
前記座標決定手段は、前記レーザースキャナの光軸が前記各垂直平面を切る線である走査線Ep,1p,2を基準に測地座標系を設定し、前記各垂直平面における、前記走査線Ej,1j,2の一方の端点Ej,1から前記端測点Aまでの距離dj,A、前記走査線Ej,1j,2の他方の端点Ej,2から前記端測点Bまでの距離dj,B、及び前記両端測点A,B以外の前記各有効測点Pj,i(i=n+1,…,n+m−2)から前記走査線Ej,1j,2までの距離dj,iの和又は自乗和を、すべての前記垂直平面について足し合わせた量が最小となるように、前記相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定するものであることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、ターゲットの垂直平面が同一平面上に複数あるような場合でも、前記第1の構成の場合と同様にしてレーザースキャナのキャリブレーションを行うことができる。
【0028】
レーザースキャナのキャリブレーション装置に係る本発明の第4の構成は、左側辺が垂直な直線で且つ右側辺が傾斜した直線又は曲線である左垂直平面と、右側辺が垂直な直線で且つ左側辺が前記左垂直平面の右側辺と平行な傾斜直線又は傾斜曲線である右垂直平面と、を備え、前記左垂直平面と前記右垂直平面は平行で且つ同一平面上にあり、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺とは一定の水平幅だけ離隔しているターゲットを、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより走査して得られた、M個(Mは2より大きい整数)の測点の計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データを記憶する点群データ記憶手段と、
前記点群データの中から、前記左垂直平面の左側の端部の測点(以下「端測点」という。)A及び右側の端測点C、並びに前記右垂直平面の右側の端測点B及び左側の端測点Cを特定し、前記端測点A,C間の水平幅r及び前記端測点B,C間の水平幅rを算出する幅算出手段と、
高さzにおける前記左垂直平面の水平幅をf(z)、前記右垂直平面の水平幅をf(z)、f(z),f(z)の逆関数をそれぞれf−1(x),f−1(x)としたとき、前記レーザースキャナの計測原点Oの高さHを、高さf−1(r’)又は高さf−1(r’)の何れか若しくは高さf−1(r)と高さf−1(r)の平均値として算出する高さ算出手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、レーザースキャナのキャリブレーションに使用するターゲットとして、上述のような左垂直平面及び右垂直平面を有する物体があればよい。このようなものとしては、例えば、2枚の合同な直角三角形の板(木板や厚紙、金属板など)を、斜辺を平行に同一平面上に並べ合わせた状態で一定の間隔だけ離して固定しこれを床面に垂直に立てたような形状のターゲットを使用することができる。このようなターゲットは、特殊な材料を用いることなく容易に作ることができるため、従来のようにキャリブレーション専用の特殊な機器を用いることなくレーザースキャナの計測原点Oの高さHのキャリブレーションを行うことが可能となる。
【0030】
レーザースキャナのキャリブレーション装置に係る本発明の第5の構成は、前記第4の構成において、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺との間の水平幅をr、前記左垂直平面の左側辺と前記右垂直平面の右側辺との間の水平幅をr+rとしたとき、前記計測原点で計測された水平幅r,rを、それぞれ式(4a),(4b)により補正して補正水平幅r’,r’を算出する水平幅補正手段を備え、
前記高さ算出手段は、前記レーザースキャナの計測原点Oの高さHを、高さf−1(r’)又は高さf−1(r’)の何れか若しくは高さf−1(r’)と高さf−1(r’)の平均値として算出することを特徴とする。
【0031】
【数4】

【0032】
この構成によれば、端測点A,C間の水平幅r及び端測点B,C間の水平幅rを式(4a),(4b)により、r+r=rとなるように補正することで、走査時における測定方位角の離散化による量子化誤差の影響を低減させることができ、より精度の高い計測原点Oの高さHのキャリブレーションを行うことが可能となる。
【0033】
レーザースキャナのキャリブレーション装置に係る本発明の第6の構成は、前記第4又は5の構成において、前記点群データ記憶手段は、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方にあり高さが同一で且つ水平面上の位置が異なるN箇所の前記計測原点から測定されたN組の前記点群データを記憶するものであり、
前記幅算出手段は、N組の前記点群データについて、それぞれ前記端測点A,C間の水平幅及び前記端測点B,C間の水平幅を算出するとともに、前記各点群データについての前記端測点A,C間の水平幅の平均値を前記水平幅r、前記各点群データについての前記端測点B,C間の水平幅の平均値を前記水平幅rとして算出するものであることを特徴とする。
【0034】
この構成により、レーザースキャナを水平移動させて複数の計測原点Oからの走査で出られた点群データに基づき計測原点Oの高さHのキャリブレーションを行うことで、より精度の高い計測原点Oの高さHのキャリブレーションを行うことが可能となる。
【0035】
レーザースキャナのキャリブレーション装置に係る本発明の第7の構成は、水平幅が高さzの単調関数f(z)に従って変化する左垂直平面と、水平幅が高さzの単調関数f(z)に従って変化する右垂直平面と、を備え、前記左垂直平面と前記右垂直平面は平行で且つそれぞれ互いに一定の距離dだけ離隔した平面上にあり、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺とは一定の水平幅だけ離隔しているターゲットを、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより走査して得られた、M個(Mは2より大きい整数)の測点の計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データを記憶する点群データ記憶手段と、
前記点群データの中から、前記左垂直平面の左側の端部の測点(以下「端測点」という。)A及び右側の端測点C、並びに前記右垂直平面の右側の端測点B及び左側の端測点Cを特定し、前記端測点A,C間の水平幅r及び前記端測点B,C間の水平幅rを算出する幅算出手段と、
前記関数f(z),f(z)の逆関数をそれぞれf−1(x),f−1(x)としたとき、前記左垂直平面における走査線の高さhをf−1(r)、前記右垂直平面における走査線の高さhをf−1(r)として算出する高さ算出手段と、
前記高さh、前記高さh、及び前記距離dに基づき、レーサースキャナの光軸の仰角θを式(5)により算出する仰角算出手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0036】
【数5】

【0037】
この構成によれば、レーザースキャナのキャリブレーションに使用するターゲットとして、上述のような左垂直平面及び右垂直平面を有する物体があればよい。このようなものとしては、例えば、2枚の合同な直角三角形の板(木板や厚紙、金属板など)を、斜辺を平行に、前後にずらして並べ合わせた状態で一定の間隔だけ離して固定しこれを床面に垂直に立てたような形状のターゲットを使用することができる。このようなターゲットは、特殊な材料を用いることなく容易に作ることができるため、従来のようにキャリブレーション専用の特殊な機器を用いることなくレーザースキャナの光軸の仰角のキャリブレーションを行うことが可能となる。
【0038】
レーザースキャナのキャリブレーション装置に係る本発明の第8の構成は、左側辺及び右側辺が垂直且つ平行な左垂直平面と、左側辺及び右側辺が垂直且つ平行な右垂直平面と、を備え、前記左垂直平面と前記右垂直平面は平行で且つそれぞれ互いに一定の距離dだけ離隔した平面上にあり、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺とは一定の水平幅だけ離隔しているターゲットを、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより走査して得られた、M個(Mは2より大きい整数)の測点の計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データを記憶する点群データ記憶手段と、
前記点群データの中から、前記左垂直平面の左側の端部の測点(以下「端測点」という。)A及び右側の端測点C、並びに前記右垂直平面の右側の端測点B及び左側の端測点Cを特定し、前記端測点A,Cを含む前記端測点A,C間のm個の測点(以下「左有効測点」という。)P(i=n,…,n+m−1)の相対座標、及び前記端測点B,Cを含む前記端測点B,C間のm個の測点(以下「右有効測点」という。)P(i=n,…,n+m−1)の相対座標を抽出する有効測点抽出手段と、
前記各左有効測点及び前記各右有効測点の相対座標に基づき、互いに平行な2つの走査線L及びLの傾き及び切片を、前記走査線Lから前記各左有効測点P(i=n,…,n+m−1)までの距離の和に、前記走査線Lから前記各右有効測点P(i=n,…,n+m−1)までの距離の和を加えた値が最小となるように、最小自乗法により算出する走査線算出手段と、
前記走査線Lから前記走査線Lまでの距離d’を算出する走査線間距離算出手段と、
前記距離d’及び前記距離dに基づき、レーサースキャナの光軸の仰角θを式(6)により算出する仰角算出手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0039】
【数6】

【0040】
この構成によれば、レーザースキャナのキャリブレーションに使用するターゲットとして、上述のような左垂直平面及び右垂直平面を有する物体があればよい。このようなものとしては、例えば、長方形の板(木板や厚紙、金属板など)を、一側辺を平行に並べ合わせた状態で一定の間隔だけ離して固定しこれを床面に垂直に立てたような形状のターゲットを使用することができる。このようなターゲットは、特殊な材料を用いることなく容易に作ることができるため、従来のようにキャリブレーション専用の特殊な機器を用いることなくレーザースキャナの光軸の仰角のキャリブレーションを行うことが可能となる。
【0041】
レーザースキャナのキャリブレーション装置に係る本発明の第9の構成は、前記第8の構成において、前記点群データ記憶手段は、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方にあり高さが同一で且つ水平面上の位置が異なるN箇所の前記計測原点から測定されたN組の前記点群データを記憶するものであり、
前記有効測点抽出手段は、前記各点群データに対してそれぞれ前記左有効測点の相対座標及び前記右有効測点の相対座標を抽出し、
前記走査線算出手段は、前記各点群データに対してそれぞれ前記走査線L及び前記走査線Lの傾き及び切片を算出し、
前記走査線間距離算出手段は、前記各点群データに対してそれぞれ前記走査線Lから前記走査線Lまでの距離d’を算出し、
前記仰角算出手段は、前記各点群データに対してそれぞれレーサースキャナの光軸の前記仰角θを算出するものであり、
前記仰角算出手段が算出する前記仰角θの平均値を、レーサースキャナの光軸の仰角として出力する平均化手段を備えたことを特徴とする。
【0042】
この構成により、複数の計測原点から測定した仰角θの平均値を、レーサースキャナの光軸の仰角とすることで、レーザースキャナの走査の際の量子化誤差などの影響が提言され、より正確な仰角θのキャリブレーションを行うことができる。
【0043】
レーザースキャナのキャリブレーション装置に係る本発明の第10の構成は、長方形の凸出した垂直平面ABCDを有するターゲットを、前記垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより三次元的に走査して得られる、M×N個(M,Nは整数)の測点に対する前記計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データを記憶する点群データ記憶手段と、
前記点群データの中から、前記垂直平面ABCDの4隅の頂点A,B,C,Dに最も近い測点(以下「隅測点」という。)P,P,P,Pを特定し、前記隅測点P,P,P,Pを含む、前記隅測点P,P,P,Pを頂点とする四角形で囲まれた領域内のm×n個の測点(以下「有効測点」という。)Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)の相対座標を抽出する有効測点抽出手段と、
前記垂直平面ABCDの4隅の頂点A,B,C,Dを基準に測地座標系を設定し、前記頂点Aと前記隅測点Pとの間の距離d、前記頂点Bと前記隅測点Pとの間の距離d、前記頂点Cと前記隅測点Pとの間の距離d、前記頂点Dと前記隅測点Pとの間の距離d、及び前記隅測点P,P,P,P以外の前記各有効測点Pi,jから前記垂直平面ABCDまでの距離di,jの和又は自乗和が最小となるように、前記相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定する座標決定手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0044】
この構成によれば、3次元レーザースキャナのキャリブレーションに使用するターゲットとして、長方形の凸出した垂直平面ABCDを有する物体があればよい。従って、従来のようにキャリブレーション専用の特殊な機器を用いることなく三次元レーザースキャナのキャリブレーションを行うことが可能となる。
【0045】
レーザースキャナのキャリブレーション装置に係る本発明の第11の構成は、前記第10の構成において、前記座標決定手段は、前記測地座標系における前記隅測点P,P,P,Pの位置座標の初期値を設定する第1の初期化手段と、
前記隅測点P,P,P,Pの位置座標の初期値及び前記各有効測点の相対座標に基づき、前記隅測点P,P,P,P以外の前記各有効測点Pi,j及び前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標の初期値を算出する第2の初期化手段と、
前記距離d,d,d,d、及び前記各距離di,jの和又は自乗和を評価関数として、前記計測原点O及び前記隅測点P,P,P,Pを含む前記各有効測点Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)の位置座標の初期値から開始して、前記評価関数の値が最小となるように、前記計測原点O及び前記各有効測点Pi,jの回転及び平行移動を行う幾何変換の各変換パラメータを、反復法により算出する変換パラメータ算出手段と、
算出された前記各変換パラメータにより前記計測原点Oの位置座標の初期値をヘルマート変換し、前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標を算出する原点座標確定手段と、
所定の方位角範囲及び仰角範囲を回転走査する前記レーザースキャナの走査範囲の中心方向の光軸上の測点である注視点Gの相対座標を前記点群データから抽出し、該注視点Gの相対座標と前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標とに基づいて、前記注視点Gの前記測地座標系における位置座標を算出する注視点座標確定手段と、
を備えていることを特徴とする。
【0046】
レーザースキャナのキャリブレーション方法に係る本発明の第1の構成は、コンピュータによりレーザースキャナのキャリブレーションを行うキャリブレーション方法であって、
左右両側辺が平行かつ垂直な垂直平面を有するターゲットを、前記垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより水平走査し、M個(Mは整数)の測点に対する前記計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存する走査ステップと、
前記記憶装置に保存された前記点群データの中から、前記垂直平面の左右両側の端部の測点(以下「端測点」という。)A,Bを特定し、前記端測点A,Bを含む前記端測点A,B間のm個の測点(以下「有効測点」という。)P(i=n,…,n+m−1)の相対座標を抽出する有効測点抽出ステップと、
前記レーザースキャナの光軸の軌跡が前記垂直平面を切る線である走査線Eを基準に測地座標系を設定し、前記走査線Eの一方の端点Eから前記端測点Aまでの距離d、前記走査線Eの他方の端点Eから前記端測点Bまでの距離d、及び前記端測点A,B以外の前記各有効測点P(i=n+1,…,n+m−2)から前記走査線Eまでの距離dの和又は自乗和が最小となるように、前記相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定する座標決定ステップとを実行することを特徴とする。
【0047】
レーザースキャナのキャリブレーション方法に係る本発明の第2の構成は、前記第1の構成において、前記座標決定ステップにおいては、
前記端測点A,Bが前記走査線E上に位置し、かつ端点Eから前記端測点Aまでの距離と端点Eから前記端測点Bまでの距離とが等しくなるように、前記測地座標系における前記端測点A,Bの位置座標の初期値を算出する第1の初期化ステップと、
前記端測点A,Bの位置座標の初期値及び前記有効測点の相対座標に基づき、前記端測点A,B以外の前記有効測点P(i=n+1,…,n+m−2)及び前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標の初期値を算出する第2の初期化ステップと、
前記距離d、前記距離d、及び前記距離d(i=n+1,…,n+m−2)の和又は自乗和を評価関数として、前記計測原点O及び前記端測点A,Bを含む前記各有効測点P(i=n,…,n+m−1)の位置座標の初期値から開始して、前記評価関数の値が最小となるように、前記計測原点O及び前記各有効測点Pの回転及び平行移動を行うヘルマート変換の各変換パラメータを、反復法により算出する変換パラメータ算出ステップと、
算出された前記各変換パラメータにより前記計測原点Oの位置座標の初期値をヘルマート変換し、前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標を算出する原点座標確定ステップと、
所定の角度範囲を回転走査する前記レーザースキャナの走査開始方向と走査終了方向の2つの方向間の走査角の二等分角方向の光軸上の測点である注視点Gの相対座標を前記点群データから抽出し、該注視点Gの相対座標と前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標とに基づいて、前記注視点Gの前記測地座標系における位置座標を算出する注視点座標確定ステップと、を実行することを特徴とする。
【0048】
レーザースキャナのキャリブレーション方法に係る本発明の第3の構成は、前記第1の構成において、前記走査ステップにおいては、左右両側辺が平行かつ垂直な垂直平面を複数有し、各垂直平面は互いに平行であるターゲットを、前記各垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより水平走査して得られる、M個(Mは2より大きい整数)の測点に対する前記計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存し、
前記有効測点抽出ステップにおいては、前記各垂直平面に対して、両端の端測点A,B(jは前記各垂直平面を区別する添字)を特定し、前記各有効測点Pj,iの相対座標を抽出し、
前記座標決定ステップにおいては、前記レーザースキャナの光軸が前記各垂直平面を切る線である走査線Ep,1p,2を基準に測地座標系を設定し、前記各垂直平面における、前記走査線Ej,1j,2の一方の端点Ej,1から前記端測点Aまでの距離dj,A、前記走査線Ej,1j,2の他方の端点Ej,2から前記端測点Bまでの距離dj,B、及び前記両端測点A,B以外の前記各有効測点Pj,i(i=n+1,…,n+m−2)から前記走査線Ej,1j,2までの距離dj,iの和又は自乗和を、すべての前記垂直平面について足し合わせた量が最小となるように、前記相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定することを特徴とする。
【0049】
レーザースキャナのキャリブレーション方法に係る本発明の第4の構成は、コンピュータによりレーザースキャナのキャリブレーションを行うキャリブレーション方法であって、
左側辺が垂直な直線で且つ右側辺が傾斜した直線又は曲線である左垂直平面と、右側辺が垂直な直線で且つ左側辺が前記左垂直平面の右側辺と平行な傾斜直線又は傾斜曲線である右垂直平面と、を備え、前記左垂直平面と前記右垂直平面は平行で且つ同一平面上にあり、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺とは一定の水平幅だけ離隔しているターゲットを、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより走査して、M個(Mは2より大きい整数)の測点の計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存する走査ステップと、
前記記憶装置に保存された前記点群データの中から、前記左垂直平面の左側の端部の測点(以下「端測点」という。)A及び右側の端測点C、並びに前記右垂直平面の右側の端測点B及び左側の端測点Cを特定し、前記端測点A,C間の水平幅r及び前記端測点B,C間の水平幅rを算出する幅算出ステップと、
高さzにおける前記左垂直平面の水平幅をf(z)、前記右垂直平面の水平幅をf(z)、f(z),f(z)の逆関数をそれぞれf−1(x),f−1(x)としたとき、前記レーザースキャナの計測原点Oの高さHを、高さf−1(r’)又は高さf−1(r’)の何れか若しくは高さf−1(r)と高さf−1(r)の平均値として算出する高さ算出ステップと、
を実行することを特徴とする。
【0050】
レーザースキャナのキャリブレーション方法に係る本発明の第5の構成は、前記第4の構成において、前記幅算出ステップを実行した後に、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺との間の水平幅をr、前記左垂直平面の左側辺と前記右垂直平面の右側辺との間の水平幅をr+rとしたとき、前記計測原点で計測された水平幅r,rを、それぞれ式(4a),(4b)により補正して補正水平幅r’,r’を算出する水平幅補正ステップを実行し、
前記高さ算出ステップにおいては、前記レーザースキャナの計測原点Oの高さHを、高さf−1(r’)又は高さf−1(r’)の何れか若しくは高さf−1(r’)と高さf−1(r’)の平均値として算出することを特徴とする。
【0051】
レーザースキャナのキャリブレーション方法に係る本発明の第6の構成は、前記第4又は5の構成において、前記走査ステップにおいては、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方にあり高さが同一で且つ水平面上の位置が異なるN箇所の前記計測原点から、レーザースキャナにより水平走査を行い、N組の前記点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存し、
前記幅算出ステップにおいては、前記記憶装置に保存されたN組の前記点群データについて、それぞれ前記端測点A,C間の水平幅及び前記端測点B,C間の水平幅を算出するとともに、前記各点群データについての前記端測点A,C間の水平幅の平均値を前記水平幅r、前記各点群データについての前記端測点B,C間の水平幅の平均値を前記水平幅rとして算出することを特徴とする。
【0052】
レーザースキャナのキャリブレーション方法に係る本発明の第7の構成は、コンピュータによりレーザースキャナのキャリブレーションを行うキャリブレーション方法であって、
水平幅が高さzの単調関数f(z)に従って変化する左垂直平面と、水平幅が高さzの単調関数f(z)に従って変化する右垂直平面と、を備え、前記左垂直平面と前記右垂直平面は平行で且つそれぞれ互いに一定の距離dだけ離隔した平面上にあり、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺とは一定の水平幅だけ離隔しているターゲットを、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより走査し、M個(Mは整数)の測点の計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存する走査ステップと、
前記記憶装置に保存された前記点群データの中から、前記左垂直平面の左側の端部の測点(以下「端測点」という。)A及び右側の端測点C、並びに前記右垂直平面の右側の端測点B及び左側の端測点Cを特定し、前記端測点A,C間の水平幅r及び前記端測点B,C間の水平幅rを算出する幅算出ステップと、
前記関数f(z),f(z)の逆関数をそれぞれf−1(x),f−1(x)としたとき、前記左垂直平面における走査線の高さhをf−1(r)、前記右垂直平面における走査線の高さhをf−1(r)として算出する高さ算出ステップと、
前記高さh、前記高さh、及び前記距離dに基づき、レーサースキャナの光軸の仰角θを式(5)により算出する仰角算出ステップと、
を実行することを特徴とする。
【0053】
レーザースキャナのキャリブレーション方法に係る本発明の第8の構成は、コンピュータによりレーザースキャナのキャリブレーションを行うキャリブレーション方法であって、
左側辺及び右側辺が垂直且つ平行な左垂直平面と、左側辺及び右側辺が垂直且つ平行な右垂直平面と、を備え、前記左垂直平面と前記右垂直平面は平行で且つそれぞれ互いに一定の距離dだけ離隔した平面上にあり、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺とは一定の水平幅だけ離隔しているターゲットを、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより走査し、M個(Mは整数)の測点の計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存する走査ステップと、
前記記憶装置に保存された前記点群データの中から、前記左垂直平面の左側の端部の測点(以下「端測点」という。)A及び右側の端測点C、並びに前記右垂直平面の右側の端測点B及び左側の端測点Cを特定し、前記端測点A,Cを含む前記端測点A,C間のm個の測点(以下「左有効測点」という。)P(i=n,…,n+m−1)の相対座標、及び前記端測点B,Cを含む前記端測点B,C間のm個の測点(以下「右有効測点」という。)P(i=n,…,n+m−1)の相対座標を抽出する有効測点抽出ステップと、
前記各左有効測点及び前記各右有効測点の相対座標に基づき、互いに平行な2つの走査線L及びLの傾き及び切片を、前記走査線Lから前記各左有効測点P(i=n,…,n+m−1)までの距離の和に、前記走査線Lから前記各右有効測点P(i=n,…,n+m−1)までの距離の和を加えた値が最小となるように、最小自乗法により算出する走査線算出ステップと、
前記走査線Lから前記走査線Lまでの距離d’を算出する走査線間距離算出ステップと、
前記距離d’及び前記距離dに基づき、レーサースキャナの光軸の仰角θを式(6)により算出する仰角算出ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0054】
レーザースキャナのキャリブレーション方法に係る本発明の第9の構成は、前記第8の構成において、前記走査ステップにおいては、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方にあり高さが同一で且つ水平面上の位置が異なるN箇所の前記計測原点からレーザースキャナにより水平走査し、N組の前記点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存し、
前記有効測点抽出ステップにおいては、前記各点群データに対してそれぞれ前記左有効測点の相対座標及び前記右有効測点の相対座標を抽出し、
前記走査線算出ステップにおいては、前記各点群データに対してそれぞれ前記走査線L及び前記走査線Lの傾き及び切片を算出し、
前記走査線間距離算出ステップにおいては、前記各点群データに対してそれぞれ前記走査線Lから前記走査線Lまでの距離d’を算出し、
前記仰角算出ステップにおいては、前記各点群データに対してそれぞれレーサースキャナの光軸の前記仰角θを算出し、
その後、前記仰角算出ステップにおいて算出される前記仰角θの平均値を算出し、レーサースキャナの光軸の仰角として出力する平均化ステップを実行することを特徴とする。
【0055】
レーザースキャナのキャリブレーション方法に係る本発明の第10の構成は、コンピュータによりレーザースキャナのキャリブレーションを行うキャリブレーション方法であって、
長方形の凸出した垂直平面ABCDを有するターゲットを、前記垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより三次元的に走査し、M×N個(M,Nは整数)の測点に対する前記計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存する走査ステップと、
前記記憶装置に保存された前記点群データの中から、前記垂直平面ABCDの4隅の頂点A,B,C,Dに最も近い測点(以下「隅測点」という。)P,P,P,Pを特定し、前記隅測点P,P,P,Pを含む、前記隅測点P,P,P,Pを頂点とする四角形で囲まれた領域内のm×n個の測点(以下「有効測点」という。)Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)の相対座標を抽出する有効測点抽出ステップと、
前記垂直平面ABCDの4隅の頂点A,B,C,Dを基準に測地座標系を設定し、前記頂点Aと前記隅測点Pとの間の距離d、前記頂点Bと前記隅測点Pとの間の距離d、前記頂点Cと前記隅測点Pとの間の距離d、前記頂点Dと前記隅測点Pとの間の距離d、及び前記隅測点P,P,P,P以外の前記各有効測点Pi,jから前記垂直平面ABCDまでの距離di,jの和又は自乗和が最小となるように、前記相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定する座標決定ステップと、
を実行することを特徴とする。
【0056】
レーザースキャナのキャリブレーション方法に係る本発明の第11の構成は、前記第10の構成において、前記座標決定ステップにおいては、前記測地座標系における前記隅測点P,P,P,Pの位置座標の初期値を設定する第1の初期化ステップと、
前記隅測点P,P,P,Pの位置座標の初期値及び前記各有効測点の相対座標に基づき、前記隅測点P,P,P,P以外の前記各有効測点Pi,j及び前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標の初期値を算出する第2の初期化ステップと、
前記距離d,d,d,d、及び前記各距離di,jの和又は自乗和を評価関数として、前記計測原点O及び前記隅測点P,P,P,Pを含む前記各有効測点Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)の位置座標の初期値から開始して、前記評価関数の値が最小となるように、前記計測原点O及び前記各有効測点Pi,jの回転及び平行移動を行う幾何変換の各変換パラメータを、反復法により算出する変換パラメータ算出ステップと、
算出された前記各変換パラメータにより前記計測原点Oの位置座標の初期値をヘルマート変換し、前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標を算出する原点座標確定ステップと、
所定の方位角範囲及び仰角範囲を回転走査する前記レーザースキャナの走査範囲の中心方向の光軸上の測点である注視点Gの相対座標を前記点群データから抽出し、該注視点Gの相対座標と前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標とに基づいて、前記注視点Gの前記測地座標系における位置座標を算出する注視点座標確定ステップと、
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0057】
以上のように、本発明によれば、レーザースキャナのキャリブレーションに使用するターゲットとして、建物の柱や特定の形状の垂直板などを使用し、このターゲットを1回乃至数回走査するだけでよいため、キャリブレーション専用の特殊な機器を使用することなくレーザースキャナのキャリブレーションを行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0059】
図1は、台車に接地された本発明の実施例1に係るレーザースキャナ1の外観図である。レーザースキャナ1は、台車2の前方に水平に取り付けられている。台車2は手押し式4輪台車であり、この台車を手で押してレーザースキャナ1を移動させながら周辺の地物の走査を行うことができる。また、台車2の上面には、コンピュータ3が設置されている。レーザースキャナ1が走査して得た点群データは、接続ケーブルを介してコンピュータ3に転送され、コンピュータ3の内部の記憶装置に保存される。コンピュータ3には、レーザースキャナ1のキャリブレーション用のプログラムがインストールされており、このプログラムを実行させることによって、コンピュータ3は本発明の実施例1に係るレーザースキャナのキャリブレーション装置として機能する。
【0060】
図2は、本発明の実施例1に係るレーザースキャナのキャリブレーション装置10の機能的な構成を示すブロック図である。図2において、レーザースキャナ1及びコンピュータ3は図1と同様である。コンピュータ3は、通信インタフェース9、キャリブレーション装置10、及びキャリブレーションパラメータ記憶部11を備えている。実際には、キャリブレーション装置10は、キャリブレーション・プログラムとして提供され、そのキャリブレーション・プログラムをコンピュータ3で実行させることにより機能的に実現されている。また、キャリブレーションパラメータ記憶部11は、コンピュータ3内部の記憶装置(磁気ディスク装置等)により構成されている。
【0061】
キャリブレーション装置10は、点群データ記憶部12、有効測点抽出部13、及び座標決定部14を備えている。点群データ記憶部12は、レーザースキャナ1からコンピュータ3に取り込まれた点群データを記憶する。点群データ記憶部12は、磁気ディスクやRAM(ランダム・アクセス・メモリ)などの記憶装置により構成される。有効測点抽出部13は、点群データ記憶部12に保存された点群データの中から、キャリブレーション計算に必要な有効測点を抽出する。座標決定部14は、レーザースキャナの光軸の軌跡が前記垂直平面を切る線である走査線Eを基準に測地座標系を設定し、レーザースキャナの計測原点Oを基準とする相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定する。
【0062】
また、上記座標決定部14は、第1初期化部16、第2初期化部17、変換パラメータ算出部18、原点座標確定部19、及び注視点座標確定部20を備えている。これら各部の機能については、以下の動作説明と併せて説明する。
【0063】
次に、図2のキャリブレーション装置10によるレーザースキャナのキャリブレーション方法について説明する。
【0064】
図3は、本発明の実施例1に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法で使用するターゲットの外観斜視図である。ターゲットTは、左右両側辺が平行かつ垂直な垂直平面Sを有している。垂直平面Sの水平幅はrである。垂直平面Sの左右両側辺は直角となっている。尚、使用可能なターゲットの両側辺の折れ曲がり角度は、必ずしも直角である必要はなく、凸角(convex angle)であればよい。
【0065】
このようなターゲットTとしては、例えば、建物内の柱などを用いることができる。もちろん、キャリブレーション用に、図3のような形状の箱を用意してそれを使用してもよい。ターゲットTは簡単な形状であるため、例えば、段ボールや板を用いて容易に作成することができる。
【0066】
このターゲットTに対して、レーザースキャナ1により水平に走査を行う。このとき、レーザースキャナ1が照射するレーザービームの光軸の軌跡面(扇形状に広がる水平平面)Slocusが垂直平面Sを切る線分を「走査線」といい、Eと記す。また、レーザースキャナの光軸の回動中心点を「計測原点」といいOと記す。レーザースキャナ1が1回の走査において走査を開始する光軸の方位角と走査を終了する光軸の方位角との差角を「走査角」といい、θと記す。レーザースキャナ1の走査角度範囲の中心方向の光軸上の測点を「注視点」といい、Gと記す。ターゲットT,垂直平面S,走査線E,計測原点O,光軸の軌跡面Slocus,走査角θ,及び注視点Gの関係は、図3に示した通りである。
【0067】
キャリブレーションにおいては、ターゲットTに固定した測地座標系における計測原点O及び注視点Gの位置座標を確定する。ここで測地座標系は、原点Oを走査線Eの左側の端点Eとし、走査線方向をx軸、走査線方向に垂直で光軸の軌跡面Slocus内の方向をy軸、垂直上方をz軸として設定する。
【0068】
図4は、本発明の実施例1に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法のフローチャートである。
【0069】
まず、ステップS1で、レーザースキャナ1が搭載された台車3を、ターゲットTの垂直平面S前方の水平な床面に設置し、水準器等を用いて走査の際の光軸の軌跡面Slocusが水平となるように調節する。レーザースキャナ1の計測原点の高さも、あらかじめ矩尺等により計測しておく。レーザースキャナ1の内部構造は設計図により既知であるため、この高さは正確に測定することができる。また、ターゲットTの垂直平面Sの水平幅rも、あらかじめ矩尺などにより計測し、コンピュータ3に入力しておく。
【0070】
そして、レーザースキャナ1により、垂直平面Sを含む範囲を走査する。レーザースキャナ1は、スキャンヘッドを一定の方位角範囲で回動させながら走査を行う。従って、レーザービームの光軸は水平面内で回動し、一定の回転角ごとに測点までの距離情報がサンプリングされる。サンプリングにより得られる点群データは、コンピュータ3に転送され、点群データ記憶部12に保存される。
【0071】
図5に、ターゲットTの走査により得られる各測点P(i=1,2,…,M)と計測原点Oとの位置関係を示す。1回の走査におけるサンプリング数をMとする。レーザースキャナ1のサンプリング間隔(方位角間隔)を「角分解能」といい、θと記す。レーザースキャナ1は、方位角θから走査を開始する。i番目(i=1,2,…,M)のサンプリング方向における方位角θ
【0072】
【数7】

である。また、各サンプリング方向の光軸が計測対象物に当たりレーザービームが反射される点を「測点」といい、Pと記す。また、計測原点Oから測点Pまでの距離(光軸の長さ)をlと記す。
【0073】
また、光軸が走査線Eと交差するサンプリング方向における測点を「有効測点」という。図5において、n番目から(n+m−1)番目の測点P(j=n,n+1,…,n+m−1)が有効測点である。すべての有効測点のうち右端及び左端のものを「端測点」といい、それぞれA,Bと記す。A=P,B=Pn+m−1である。また、計測原点Qmから各A,B端への距離をl=l,l=ln+m−1と記す。
【0074】
レーザースキャナ1は、1回の走査により点群データ{(l,θ)|i=1,2,…,M}を取得する。この点群データ{(l,θ)|i=1,2,…,M}が点群データ記憶部12に保存される。
【0075】
次に、ステップS2で、有効測点抽出部13は、上記点群データ{(l,θ)|i=1,2,…,M}の中から、垂直平面Sの左右両側の端部の端測点A,Bを特定し、端測点A,B間のm個の有効測点P(j=n,…,n+m−1)の相対座標{(l,θ)|j=n,n+1,…,n+m−1}を抽出する。
【0076】
図5から分かるように、計測原点Oから各測点Pまでの距離lは、垂直平面Sの左右両側の凸角部において不連続となるので、距離データ{l}の差分を閾値判定するなどしてこの不連続点を抽出することによって、端測点A,Bは容易に抽出することができる。
【0077】
尚、端測点A,Bの抽出については、点群データをコンピュータ3のディスプレイに表示させ、作業者がポインティングデバイス等の入力装置によって端測点A,Bを直接指定するように構成してもよい。
【0078】
次に、ステップS3で、第1初期化部16は、測地座標系における端測点A,Bの位置座標の初期値を決定する。
【0079】
ここで、測地座標系における走査線Eの端点E,Eの位置座標は、(0,0)及び(r、0)である(尚、z座標は光軸の軌跡面Slocus上ではすべて等しいので、以下省略する)。一方、実際にレーザースキャナ1から出力される点群データは、計測距離及び計測角が離散化されることによって生じる量子化誤差により、図6のように、走査線Eから若干外れたものとなる。また、端測点A,Bは、必ずしも走査線の端点E,Eと正確に一致するとは限られない。そこで、端測点A,Bの位置座標の初期値は、図7に示したように、端測点A,Bが走査線E上に位置し、かつ端点Eから端測点Aまでの距離と端点Eから端測点Bまでの距離とが等しくなるように設定する。
【0080】
いま、端測点A,Bのレーザースキャナ座標系における座標値を
【0081】
【数8】

とする。光軸OAと光軸OBとがなす角θ’はθAB=|θ−θ|である。また、測地座標系における端測点A,Bの位置座標の初期値をそれぞれ、
【0082】
【数9】

とする。ここで、A’,B’は測地座標系の初期位置に配置された端測点A,Bを表している。端点Eから端測点A’までの距離をd、端点Eから端測点B’までの距離dと記す。いま、d=dなので、x’=r−x’の関係が成り立つ。また、端測点A’,B’は走査線E上なので、y=y=0である。端測点Aと端測点Bとの間の距離をrABとする。
【0083】
【数10】

【0084】
余弦定理により、(x’,y’),(x’,y’)は次式により算出することができる。
【0085】
【数11】

【0086】
次に、ステップS4で、第2初期化部17は、端測点A,Bの位置座標の初期値(x’,y’),(x’,y’)に基づき、計測原点Oの測地座標系における位置座標の初期値(x’,y’)を算出する。以下、計測原点Oの位置座標の初期値(x’,y’)により特定される位置の点をO’と記す。計測原点O’は、端測点A’を中心とする半径lの円と、端測点B’を中心とする半径lの円との2つの交点のうちの一つである。従って、次のような連立方程式が成り立つ。
【0087】
【数12】

【0088】
いま、測地座標系は図3のように設定したのでy’<0である。従って、計測原点Oの位置座標の初期値(x’,y’)は、式(12a),(12b)により次のように求められる。
【0089】
【数13】

【0090】
更に、第2初期化部17は、端測点A,B以外の有効測点P(j=n+1,…,n+m−2)の測地座標系における位置座標の初期値(x’,y’)を算出する。端測点B=Pの方位角は、次式で表される。
【0091】
【数14】

計測原点Oから有効測点Pに向かう光軸Oの方位角θは式(7)と同様に表される。従って、次式が成り立つ(図8参照)。
【0092】
【数15】

【0093】
従って、有効測点P(j=n+1,…,n+m−2)の測地座標系における位置座標の初期値(x’,y’)は、次式により算出される。
【0094】
【数16】

【0095】
次に、ステップS5で、変換パラメータ算出部18は、距離d、距離d、及び距離d(j=n+1,…,n+m−2)の自乗和を評価関数fとして、計測原点O及び各有効測点P(j=n,…,n+m−1)の位置座標の初期値から開始して、評価関数fの値が最小となるように、計測原点O及び各有効測点Pの回転及び平行移動を行うヘルマート変換の各変換パラメータを、反復法により算出する。ここで、距離dは走査線Eの端点Eから端測点Aまでの距離、距離dは走査線Eの端点Eから端測点Bまでの距離、距離dは走査線Eから有効測点Pまでの距離である(図9参照)。
【0096】
この計算は、次のようにして行うことができる。今、初期値として測地座標が設定された測点A’,B’,P’(j=n+1,n+2,…,n+m−2)を、原点O=(0,0)を中心に回転移動した後に平行移動する変換(ヘルマート変換)を行うとする。回転移動の回転量をΔθ,平行移動の移動量を(Δx,Δy)とする。測点A’,B’,P’をヘルマート変換により移動した点をそれぞれA”,B”,P”と記す。移動後の測点A”,B”,P”の座標は、それぞれ次のように表される。
【0097】
【数17】

【0098】
従って、距離d、距離d、及び距離d(j=n+1,…,n+m−2)は、次式のように表される。
【0099】
【数18】

【0100】
従って、最小化すべき評価関数f(Δx,Δy,Δθ)は次式で表される。
【0101】
【数19】

【0102】
ここで、
【0103】
【数20】

とおくと、上記評価関数fは次式のように書き直すことができる。
【0104】
【数21】

【0105】
この評価関数fの最小化を反復解法により行う。ここでは、最急降下法を使用する。すなわち、評価関数fを、それぞれΔx,Δy,a,bで偏微分した結果を0とすることにより、各パラメータの漸化式が次式のように求められる。ここで、ηは反復回数である。
【0106】
【数22】

【0107】
尚、本実施例では、計算を簡単化するために、評価関数fは距離d、距離d、及び距離d(j=n+1,…,n+m−2)の自乗和としたが、評価関数fとしてはこれらの距離の和を用いてもよい。
【0108】
次に、ステップS6で、原点座標確定部19は、算出された各変換パラメータΔx,Δy,a,bにより計測原点Oの位置座標の初期値(x’,y’)をヘルマート変換し、計測原点Oの測地座標系における最終的な位置座標(x,y)を算出する。算出された位置座標(x,y)は、キャリブレーションパラメータ記憶部11に保存される。ここで、位置座標(x,y)は次式のようにして計算することができる。
【0109】
【数23】

【0110】
最後に、ステップS7で、注視点座標確定部20は、レーザースキャナの走査角度範囲の中心方向の光軸上の測点である注視点Gの相対座標(l,θ)を点群データから抽出し、該注視点Gの相対座標(l,θ)と計測原点Oの測地座標系における最終的な位置座標(x,y)とに基づいて、注視点Gの測地座標系における位置座標(x,y)を算出する。算出された位置座標(x,y)は、キャリブレーションパラメータ記憶部11に保存される。ここで、位置座標(x,y)は次式のようにして計算することができる。
【0111】
【数24】

【0112】
以上のような処理により、キャリブレーションデータとして、測地座標系における計測原点Oの位置座標(x,y)及び注視点Gの位置座標(x,y)が確定される。この確定された位置座標を基準にして、他の測定データの測地座標系における位置座標も逐次確定していくことができる。
【実施例2】
【0113】
図10は、本発明の実施例2に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法で使用するターゲットの外観斜視図である。尚、本実施例で使用するレーザースキャナ及びそのキャリブレーション装置の構成は図1,図2と同様である。
【0114】
図10のターゲットTは、左右両側辺が平行かつ垂直な垂直平面S,Sを有している。各垂直平面S,Sは互いに平行である。尚、本実施例では、説明を簡単化するため、垂直平面の数は2つとしたが、垂直平面の数は3つ以上あってもよい。
【0115】
このターゲットTに対して、レーザースキャナ1により水平に走査を行う。垂直平面S,S上の走査線を、それぞれE1,11,2,E2,12,2と記す。測地座標系の原点Oを走査線E1,11,2の左側の端点E1,1とし、走査線E1,11,2方向をx軸、走査線E1,11,2方向に垂直で光軸の軌跡面Slocus内の方向をy軸、垂直上方をz軸とする。垂直平面S,Sの幅をr,rとする。また、y軸から垂直平面S(k=1,2)の左端までの距離をxk,0、x軸から垂直平面Sまでの距離をDとする。
【0116】
本実施例のレーザースキャナのキャリブレーション方法の処理の流れは、基本的には実施例1と同様であるので、図4のフローチャートに沿って説明する。
【0117】
ステップS1におけるレーザースキャナ1の設置、レーザースキャナ1による走査及び点群データのコンピュータ3への取り込みは、実施例1と同様である。この場合、ターゲットTの走査により得られる各測点P(i=1,2,…,M)と計測原点Oとの位置関係は図11のようになる。
【0118】
次に、ステップS2で、有効測点抽出部13は、垂直平面S,Sの左右両側の端部の端測点(A,B),(A,B)を特定し、端測点(A,B)間のm個の有効測点P(j=n,…,n+m−1)の相対座標{(l,θ)|j=n,n+1,…,n+m−1}、及び端測点(A,B)間のm個の有効測点P(j=n,…,n+m−1)の相対座標{(l,θ)|j=n,n+1,…,n+m−1}を抽出する。抽出の方法は、実施例1の場合と同様である。
【0119】
次に、ステップS3で、第1初期化部16は、測地座標系における端測点(A,B),(A,B)の位置座標の初期値を決定する。垂直平面S,Sにおける各端測点のレーザースキャナ座標系における座標値、測地座標系における位置座標、及び走査線の長さを、実施例1と同様に次式のようにおく。
【0120】
【数25】

【0121】
尚、[rA1B2は、最も左側の端測点Aから最も右側の端測点Bまでのx軸上の距離である。
【0122】
r=x2,0+rとすれば、測地座標系における位置座標の初期値(x’k,A,y’k,A),(x’k,B,y’k,B)(k=1,2)は、実施例1と同様の計算により、次式のように算出することができる。
【0123】
【数26】

【0124】
ここで、端点E1,1から端測点A’1までの距離をd1,A、端点E2,2から端測点B’2までの距離d2,Bとすると、d1,A=d2,Bとなるように各端測点の位置座標を決定した。
【0125】
次に、ステップS4で、第2初期化部17は、計測原点Oの測地座標系における位置座標の初期値(x’,y’)を算出する。この計算は、実施例1の式(13a)(13b)と同様に、次式により行うことができる。
【0126】
【数27】

【0127】
また、第2初期化部17は、端測点(A,B),(A,B)以外の有効測点P(j=n+1,…,n+m−2,n+1,…,n+m−2)の測地座標系における位置座標の初期値(x’,y’)を算出する。この計算は、実施例1の式(16a)(16b)と同様、次式により行うことができる。
【0128】
【数28】

【0129】
次に、ステップS5で、変換パラメータ算出部18は、距離d1,A,d1,B,d2,A,d2,B及び距離d(j=n+1,…,n+m−2,n+1,…,n+m−2)の自乗和を評価関数fとして、計測原点O及び各有効測点P(j=n,…,n+m−1,n,…,n+m−1)の位置座標の初期値から開始して、評価関数fの値が最小となるように、計測原点O及び各有効測点Pの回転及び平行移動を行うヘルマート変換の各変換パラメータを、反復法により算出する。ここで、距離dk,A(k=1,2)は走査線Ek,1k,2の端点Ek,1から端測点Aまでの距離、距離dk,Bは走査線Ek,1k,2の端点Ek,2から端測点Bまでの距離、距離dk,j(j=nk,…,nk+mk−1)は走査線Ek,1k,2から有効測点Pまでの距離である(図11参照)。この場合の距離dk,A,dk,B,dk,j及び評価関数fは以下のようになる。
【0130】
【数29】

反復法の計算も、評価関数の形が若干異なるが、実施例1と同様にして行うことができる。
【0131】
次に、ステップS6で、原点座標確定部19は、算出された各変換パラメータΔx,Δy,a,bにより計測原点Oの位置座標の初期値(x’,y’)をヘルマート変換し、計測原点Oの測地座標系における最終的な位置座標(x,y)を算出する。算出された位置座標(x,y)は、キャリブレーションパラメータ記憶部11に保存される。
【0132】
最後に、ステップS7で、注視点座標確定部20は、レーザースキャナの走査角度範囲の中心方向の光軸上の測点である注視点Gの相対座標(l,θ)を点群データから抽出し、該注視点Gの相対座標(l,θ)と計測原点Oの測地座標系における最終的な位置座標(x,y)とに基づいて、注視点Gの測地座標系における位置座標(x,y)を算出する。算出された位置座標(x,y)は、キャリブレーションパラメータ記憶部11に保存される。
【実施例3】
【0133】
図12は、本発明の実施例3に係るレーザースキャナのキャリブレーション装置の機能的な構成を示すブロック図である。尚、本実施例で使用するレーザースキャナは図1と同様である。また、図12において、図2と同様の構成部分については、同符号を付して説明は省略する。
【0134】
本実施例のキャリブレーション装置10は、点群データ記憶部12、幅算出部25、水平幅補正部26、及び高さ算出部27を備えている。このキャリブレーション装置10は、レーザースキャナ1の計測原点Oの正確な高さHが未知の場合に、その高さHのキャリブレーションを行う。
【0135】
次に、図12のキャリブレーション装置10によるレーザースキャナのキャリブレーション方法について説明する。
【0136】
図13は、本発明の実施例3に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法で使用するターゲットの外観斜視図である。ターゲットTは、左側辺が垂直な直線で且つ右側辺が傾斜した直線である左垂直平面Sと、右側辺が垂直な直線で且つ左側辺が左垂直平面Sの右側辺と平行な傾斜直線である右垂直平面Sとを備えている。左垂直平面Sと右垂直平面Sは平行で且つ同一平面上にある。左垂直平面Sの右側辺と右垂直平面Sの左側辺とは一定の水平幅rだけ離隔している。
【0137】
右垂直平面Sは底辺r、高さhの直角三角形であり、左垂直平面Sは右垂直平面Sと合同で180°回転させた直角三角形である。従って、高さzにおける右垂直平面Sの水平幅f、左垂直平面Sの水平幅fは、次式で表される。
【0138】
【数30】

【0139】
図14は、本発明の実施例3に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法のフローチャートである。
【0140】
まず、ステップS11で、レーザースキャナ1が搭載された台車3を、ターゲットTの垂直平面S前方の水平な床面に設置し、水準器等を用いて走査の際の光軸の軌跡面Slocusが水平となるように調節する。そして、レーザースキャナ1により、ターゲットTの走査を行う。レーザースキャナ1は、スキャンヘッドを一定の方位角範囲で回動させながら走査を行う。従って、レーザービームの光軸は水平面内で回動し、一定の回転角ごとに測点までの距離情報がサンプリングされる。サンプリングにより得られる点群データは、コンピュータ3に転送され、点群データ記憶部12に保存される。
【0141】
このとき、レーザースキャナ1が照射するレーザービームの光軸の軌跡面(扇形状に広がる水平平面)Slocusが左垂直平面Sを切る線分を走査線EL1L2、軌跡面Slocusが右垂直平面Sを切る線分を走査線ER1R2と呼ぶ(図13参照)。
【0142】
次に、ステップS12で、幅算出部25は、点群データ記憶部12に保存された点群データの中から、左垂直平面Sの左側の端測点A及び右側の端測点Cを抽出し、端測点A,C間の距離rを算出する。距離rを計算は、式(11e)と同様にして行うことができる。
【0143】
次に、ステップS13で、幅算出部25は、点群データ記憶部12に保存された点群データの中から、右垂直平面Sの左側の端測点C及び右側の端測点Bを抽出し、端測点C,B間の距離rを算出する。距離rを計算は、式(11e)と同様にして行うことができる。
【0144】
次に、ステップS14で、水平幅補正部26は、計測された水平幅r,rを、それぞれ次式により補正して補正水平幅r’,r’を算出する。
【0145】
【数31】

【0146】
最後に、ステップS15で、高さ算出手段27は、レーザースキャナの計測原点Oの高さHを、次式により算出し、キャリブレーションパラメータ記憶部11に保存する。ここで、f−1(x),f−1(x)は、それぞれ、前記関数f(z),f(z)の逆関数である。
【0147】
【数32】

【0148】
以上の処理により、レーザースキャナの計測原点Oの高さのキャリブレーションパラメータの算出を行うことができる。
【0149】
尚、本実施例において、ターゲットTの左垂直平面Sの右側辺と右垂直平面Sの左側辺との間の間隙は直線状の間隙としたが、図15に示したような、曲線状であってもよい。この場合、高さzにおける左垂直平面S,右垂直平面Sの水平幅を関数f(z),f(z)で表すと、f(z)=r−f(z)の関係となり、f(z)た単調減少関数又は単調増加関数である必要がある。このようなターゲットTを使用した場合、f(z),f(z)の形は上記図13の場合と異なるが、それ以外は同様である。
【実施例4】
【0150】
図16は、実施例4に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法のフローチャートである。尚、本実施例で使用するレーザースキャナ1は図1と同様であり、レーザースキャナのキャリブレーション装置10のブロック図は図12と同様である。このキャリブレーション装置10は、実施例3と同様、レーザースキャナ1の計測原点Oの正確な高さHが未知の場合に、その高さHのキャリブレーションを行う。
【0151】
まず、ステップS21で、レーザースキャナ1が搭載された台車3を、ターゲットTの垂直平面S前方の水平な床面に設置し、水準器等を用いて走査の際の光軸の軌跡面Slocusが水平となるように調節する。そして、レーザースキャナ1により、図13や図15に示したようなターゲットTの走査を行う。走査の結果、サンプリングにより得られる点群データは、コンピュータ3に転送され、点群データ記憶部12に保存される。
【0152】
次に、ステップS22で、N回目の測定が終了していなければ、ステップS24でレーザースキャナ1の設置位置を移動させ、再びステップS21に戻る。ここで、レーザースキャナ1の設置位置は、ターゲットTの前方で且つターゲットTの横幅が走査の際の光軸の軌跡面Slocusに含まれる位置であればどこでもよいが、ターゲットTからレーザースキャナ1までの距離を変えることが好ましい。ステップS22で、N回目の測定が終了した場合には、次のステップS24に進む。
【0153】
ステップS24で、幅算出部25は、点群データ記憶部12に保存されたN組の点群データの中から、1番目の点群データから順次読み出す。ここでは、読み出された点群データをk番目(k∈{1,…,N})の点群データとして{(lk,i,θk,i)|i=1,2,…,M}と記す。ここで、(lk,i,θk,i)は、k組目の点群データにおけるi番目の測点Pk,iのレーザースキャナ座標系における極座標である。
【0154】
次に、ステップS25で、幅算出部25は、点群データ{(lk,i,θk,i)|i=1,2,…,M}の中から、左垂直平面Sの左側の端測点A及び右側の端測点Cを抽出し、端測点A,C間の距離rL,kを算出する。距離rL,kの計算は、式(11e)と同様にして行うことができる。
【0155】
次に、ステップS26で、幅算出部25は、点群データ{(lk,i,θk,i)|i=1,2,…,M}の中から、右垂直平面Sの左側の端測点C及び右側の端測点Bを抽出し、端測点C,B間の距離rR,kを算出する。距離rR,kを計算は、式(11e)と同様にして行うことができる。
【0156】
次に、ステップS27で、水平幅補正部26は、計測された水平幅rL,k,rR,kを、それぞれ式(31a),(31b)と同様の計算により補正して補正水平幅r’L,k,r’R,kを算出する。
【0157】
最後に、ステップS28で、高さ算出手段27は、レーザースキャナの計測原点Oの高さHを、式(32)と同様の計算により算出する。算出した高さHは、キャリブレーションパラメータ記憶部11に保存される。
【0158】
ステップS29で、上記ステップS24〜S28の処理が、点群データ記憶部12に保存されたN組の点群データのすべてについて終わっていなければ、再びステップS24に戻る。終わっていれば、ステップS30に移行する。
【0159】
ステップS30で、高さ算出手段27は、キャリブレーションパラメータ記憶部11に保存されたN個の高さH(k=1,…,N)を読み出し、その平均値Hを算出し、これを最終的な計測原点Oの高さとしてキャリブレーションパラメータ記憶部11に保存する。
【0160】
以上の処理により、レーザースキャナの計測原点Oの高さのキャリブレーションパラメータの算出を行うことができる。また、N回の測定の平均を行うことで、より誤差の少ない計測原点Oの高さのキャリブレーションを行うことができる。
【実施例5】
【0161】
図17は、本発明の実施例5に係るレーザースキャナのキャリブレーション装置の機能的な構成を示すブロック図である。尚、本実施例で使用するレーザースキャナは図1と同様である。また、図17において、図2と同様の構成部分については、同符号を付して説明は省略する。
【0162】
本実施例のキャリブレーション装置10は、点群データ記憶部12、幅算出部30、高さ算出部31、及び仰角算出部32を備えている。このキャリブレーション装置10は、レーザースキャナ1のレーザービームの光軸方向が水平からずれている場合に、その仰角φのキャリブレーションを行う。
【0163】
次に、図12のキャリブレーション装置10によるレーザースキャナのキャリブレーション方法について説明する。
【0164】
図18は、本発明の実施例5に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法で使用するターゲットTの外観斜視図である。ターゲットTは、水平幅が高さzの単調関数f(z)に従って変化する左垂直平面Sと、水平幅が高さzの単調関数f(z)に従って変化する右垂直平面Sとを備えている。本実施例では、一例として、左垂直平面Sと右垂直平面Sは合同な直角三角形とし、右垂直平面Sの直角三角形は、鈎の長さがr、股の長さがhで、鈎が水平な床面に沿って置かれ、股が床面に垂直となるように配置されている。左垂直平面Sは、右垂直平面Sを180°回転させた直角三角形であり、股と弦との間の頂点で床面に接し、股が床面に垂直、鈎が床面に水平となるように配置されている。左垂直平面Sと右垂直平面Sは平行で且つそれぞれ互いに一定の距離dだけ離隔した平面上にある。また、左垂直平面Sの右側辺(弦)と右垂直平面Sの左側辺(弦)とは一定の水平幅rだけ離隔して配されている。従って、左垂直平面Sの高さzにおける幅f(z)と、左垂直平面Sの高さzにおける幅f(z)は次式のようになる。
【0165】
【数33】

【0166】
図19は、実施例5に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法のフローチャートである。
【0167】
まず、ステップS31で、レーザースキャナ1が搭載された台車3を、ターゲットTの左垂直平面S及び右垂直平面S前方の水平な床面に設置し、水準器等を用いて走査の際の光軸の軌跡面Slocusが水平となるように調節する。そして、レーザースキャナ1により、ターゲットTの走査を行う。走査により得られる点群データは、コンピュータ3に転送され、点群データ記憶部12に保存される。
【0168】
このとき、レーザースキャナ1が照射するレーザービームの光軸の軌跡面Slocusが左垂直平面Sを切る線分を走査線EL1L2、軌跡面Slocusが右垂直平面Sを切る線分を走査線ER1R2と呼び、軌跡面Slocusの水平面からの仰角をφと記す(図18参照)。
【0169】
次に、ステップS32で、幅算出部30は、点群データ記憶部12に保存された点群データの中から、左垂直平面Sの左側の端測点A及び右側の端測点Cを抽出し、端測点A,C間の水平幅rを算出する。水平幅rを計算は、式(11e)と同様にして行うことができる。
【0170】
次に、ステップS33で、幅算出部30は、点群データ記憶部12に保存された点群データの中から、右垂直平面Sの左側の端測点C及び右側の端測点Bを抽出し、端測点C,B間の水平幅rを算出する。水平幅rを計算は、式(11e)と同様にして行うことができる。
【0171】
次に、ステップS34で、高さ算出部31は、水平幅r,rに基づいて、次式により左垂直平面Sを切る走査線EL1L2の高さh及び右垂直平面Sを切る走査線ER1R2の高さhを算出する。
【0172】
【数34】

【0173】
最後に、ステップS35で、仰角算出部32は、前記高さh,h、及び左垂直平面Sと右垂直平面Sの距離dに基づき、レーサースキャナ1の光軸の仰角φを式(35)により算出し、キャリブレーションパラメータ記憶部11に保存する。
【0174】
【数35】

【0175】
以上の処理により、レーザースキャナの光軸の仰角φのキャリブレーションパラメータの算出を行うことができる。
【実施例6】
【0176】
図20は、本発明の実施例6に係るレーザースキャナのキャリブレーション装置の機能的な構成を示すブロック図である。尚、本実施例で使用するレーザースキャナは図1と同様である。また、図20において、図2と同様の構成部分については、同符号を付して説明は省略する。
【0177】
本実施例のキャリブレーション装置10は、点群データ記憶部12、有効測点抽出部41、走査線算出部42、走査線間距離算出部43、仰角算出部44、及び平均化部45を備えている。このキャリブレーション装置10は、レーザースキャナ1のレーザービームの光軸方向が水平からずれている場合に、その仰角φのキャリブレーションを行う。
【0178】
次に、図20のキャリブレーション装置10によるレーザースキャナのキャリブレーション方法について説明する。
【0179】
図21は、本発明の実施例6に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法で使用するターゲットTの外観斜視図である。ターゲットTは、左側辺及び右側辺が垂直且つ平行な左垂直平面Sと、左側辺及び右側辺が垂直且つ平行な右垂直平面Sとを備えている。左垂直平面Sを含む平面と右垂直平面Sを含む平面とは、平行で且つそれぞれ互いに一定の距離dだけ離隔している。図21のターゲットTは、左垂直平面Sと右垂直平面Sは水平幅が同幅とされており、両者の水平幅をrと記す。また、左垂直平面Sと右垂直平面Sは水平距離でrだけ離隔している。
【0180】
図22は、実施例6に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法のフローチャートである。
【0181】
まず、ステップS41で、レーザースキャナ1が搭載された台車3を、ターゲットTの左垂直平面S及び右垂直平面S前方の水平な床面に設置し、水準器等を用いて走査の際の光軸の軌跡面Slocusが水平となるように調節する。そして、レーザースキャナ1により、ターゲットTの走査を行う。走査により得られる点群データ{(lk,i,θk,i)|i=1,2,…,M}(k∈{1,…,N})は、コンピュータ3に転送され、点群データ記憶部12に保存される。
【0182】
このとき、レーザースキャナ1が照射するレーザービームの光軸の軌跡面Slocusが左垂直平面Sを切る線分を走査線L、軌跡面Slocusが右垂直平面Sを切る線分を走査線Lと呼び、軌跡面Slocusの水平面からの仰角をφと記す(図21参照)。
【0183】
ステップS42において、N回目の測定が終了していなければ、ステップS43でレーザースキャナ1の設置位置を移動させ、再びステップS41に戻る。ここで、レーザースキャナ1の設置位置は、ターゲットTの前方で且つターゲットTの横幅が走査の際の光軸の軌跡面Slocusに含まれる位置であればどこでもよいが、ターゲットTからレーザースキャナ1までの距離を変えることが好ましい。ステップS42で、N回目の測定が終了した場合には、次のステップS44に進む。
【0184】
ステップS44で、有効測点抽出部41は、点群データ記憶部12に保存されたN組の点群データの中から、1番目の点群データから順次読み出す。ここでは、読み出された点群データをk番目(k∈{1,…,N})の点群データとして{(lk,i,θk,i)|i=1,2,…,M}と記す。ここで、(lk,i,θk,i)は、k組目の点群データにおけるi番目の測点Pk,iのレーザースキャナ座標系における極座標である。
【0185】
次に、ステップS45で、有効測点抽出部41は、上記点群データ{(lk,i,θk,i)|i=1,2,…,M}の中から、垂直平面Sの左右両側の端部の端測点A,Ck,Lを特定し、端測点A,Ck,L間のmk,L個の有効測点Pk,i(i=nk,L,…,nk,L+mk,L−1)の相対極座標{(lk,i,θk,i)|i=nk,L,nk,L+1,…,nk,L+mk,L−1}を抽出する。ここで、「相対極座標」とは、レーザスキャナ座標系における極座標のことをいう。また、左垂直平面S上の有効測点を「左有効測点」という。
【0186】
次に、ステップS46で、有効測点抽出部41は、上記点群データ{(lk,i,θk,i)|i=1,2,…,M}の中から、垂直平面Sの左右両側の端部の端測点Ck,R,Bを特定し、端測点Ck,R,B間のmk,R個の有効測点Pk,i(i=nk,R,…,nk,R+mk,R−1)の相対極座標{(lk,i,θk,i)|i=nk,R,nk,R+1,…,nk,R+mk,R−1}を抽出する。以下、右垂直平面S上の有効測点を「右有効測点」という。
【0187】
次に、ステップS47で、走査線算出部42は、各左有効測点及び各右有効測点の相対座標に基づき、互いに平行な2つの走査線Lk,L,Lk,Rの傾き及び切片を算出する。ここで、計測原点Ok,mを原点とし、軌跡面Slocus内の直交する二方向をx軸,y軸、x軸及びz軸と垂直な方向をz軸とする直交座標系を想定し、これを「相対直交座標系」という。相対直交座標系における走査線Lk,L,Lk,Rの傾きをp、走査線Lk,Lの切片をqk,L,走査線Lk,Rの切片をqk,Rとおく。走査線算出部42は、傾きp、切片qk,L,qk,Rを、走査線Lk,Lから各左有効測点Pk,i(i=nk,L,…,nk,L+mk,L−1)までの距離の和に、走査線Lk,Rから各右有効測点P(i=nk,R,…,nk,R+mk,R−1)までの距離の和g(p,qk,L,qk,R)を加えた値が最小となるように、最小自乗法により算出する。
【0188】
相対直交座標系における測点Pk,iの位置座標(以下、単に「位置座標」という。)を(xk,i,yk,i)とすると、
【0189】
【数36】

である。また、走査線Lk,Lはy=px+qk,L、走査線Lk,Rはy=px+qk,Rであるので、上記距離和g(p,qk,L,qk,R)は次式により表される。
【0190】
【数37】

したがって、この距離和g(p,qk,L,qk,R)を評価関数として、最小自乗法により傾きp、切片qk,L,qk,Rを計算することができる。
【0191】
次に、ステップS48で、走査線間距離算出部43は、走査線Lk,Lから走査線Lk,Rまでの距離d’を次式により算出する。
【0192】
【数38】

【0193】
最後に、ステップS49で、仰角算出部44は、距離d’及び距離dに基づき、レーサースキャナ1の光軸の仰角φを次式により算出すし、キャリブレーションパラメータ記憶部11に保存する。
【0194】
【数39】

【0195】
ステップS50で、上記ステップS44〜S49の処理が、点群データ記憶部12に保存されたN組の点群データのすべてについて終わっていなければ、再びステップS44に戻る。終わっていれば、ステップS51に移行する。
【0196】
ステップS51で、平均化部45は、キャリブレーションパラメータ記憶部11に保存されたN個の仰角φ(k=1,…,N)を読み出し、その平均値φを算出し、これを最終的なレーザースキャナ1の光軸の仰角φとしてキャリブレーションパラメータ記憶部11に保存する。
【0197】
以上の処理により、レーザースキャナ1の光軸の仰角φのキャリブレーションパラメータの算出を行うことができる。また、N回の測定の平均を行うことで、より誤差の少ないレーザースキャナ1の光軸の仰角φのキャリブレーションを行うことができる。
【実施例7】
【0198】
本実施例では、レーザースキャナ1が三次元レーザスキャナである場合のキャリブレーション方法について説明する。本実施例のキャリブレーション方法で使用するキャリブレーション装置の機能的な構成は、図2と同様である。また、図23は、実施例7に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法で使用するターゲットの外観斜視図である。本実施例で使用するキャリブレーション用のターゲットは、長方形の凸出した垂直平面ABCDを有する。この垂直平面ABCDの幅をr、高さをsとする。
【0199】
本実施例において、レーザースキャナ1は、三次元レーザースキャナである。三次元レーザースキャナとは、光軸の仰角を段階的に変えながら水平走査を行うことによって、三次元的な走査を行うレーザースキャナである。従って、レーザースキャナ1で得られる点群データは、二次元的に配列された点群であり各測点はPi,jと表される。ここで、iは水平方向(方位角方向)の走査の順番を表すインデックス、jは垂直方向(仰角方向)の走査の順番を表すインデックスである。実際にレーザースキャナ1から出力されるデータは、測点Pi,jの水平方向を表す方位角φi,j、測点Pi,jの垂直方向を表す仰角θi,j、及び計測原点Oから測点Pまでの距離(光軸の長さ)をli,jの組(φi,j,θi,j,li,j)である。尚、計測原点Oは、レーザースキャナから出力される光軸の原点である。
【0200】
点群データ記憶部12には、上述のような三次元レーザスキャナにより測定されたM×N個の測点の点群データ{Pi,j=(φi,j,θi,j,li,j)|i=1,…,M,j=1,…,N}が保存される。
【0201】
まず、有効測点抽出部13は、前記点群データ{Pi,j}の中から、垂直平面ABCDの4隅の頂点A,B,C,Dに最も近い測点P,P,P,Pを特定する。これらの測点P,P,P,Pを「隅測点」と呼ぶ。さらに有効測点抽出部13は、隅測点P,P,P,Pを頂点とする四角形で囲まれた領域内のm×n個の測点Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)(隅測点P,P,P,Pを含む。)の相対座標{Pi,j=(φi,j,θi,j,li,j)|i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1}を抽出する。これらの抽出された測点Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)を「有効測点」という。
【0202】
図24に隅測点P,P,P,Pと抽出されたすべての有効測点Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)の例を示す。
【0203】
本実施例のキャリブレーション装置では、測地座標系は垂直平面ABCDの4隅の頂点A,B,C,Dを基準に設定される。頂点A,B,C,Dの測地座標を、それぞれ(0,0,0),(0,0,s),(r,0,s),(r,0,0)とする(図24参照)。頂点Aと隅測点Pとの間の距離をd、頂点Bと隅測点Pとの間の距離をd、頂点Cと隅測点Pとの間の距離をd、頂点Dと隅測点Pとの間の距離をdとする。また、隅測点P,P,P,P以外の各有効測点Pi,jから垂直平面ABCDまでの距離をdi,jとする。
【0204】
次に、座標決定手段14は、距離d,d,d,d及び各距離di,jの和又は自乗和が最小となるように、相対座標を測地座標へ関係づける関係パラメータを決定する。この座標決定手段14は、第1初期化部16、第2初期化部17、変換パラメータ算出部18、原点座標確定部19、及び注視点座標確定部20を備えている。
【0205】
次に、第1初期化部16は、測地座標系における隅測点P,P,P,Pの位置座標の初期値を設定する。第2初期化部17は、隅測点P,P,P,Pの位置座標の初期値及び各有効測点の相対座標に基づいて、隅測点P,P,P,P以外の各有効測点Pi,j及び計測原点Oの測地座標系における位置座標の初期値を算出する。
【0206】
次に、変換パラメータ算出部18は、計測原点O及び隅測点P,P,P,Pを含む各有効測点Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)の位置座標の初期値から開始して、評価関数の値が最小となるように、計測原点O及び各有効測点Pi,jの回転及び平行移動を行う幾何変換の各変換パラメータを、反復法により算出する。このとき、評価関数として、距離d,d,d,d、及び各距離di,jの和又は自乗和が使用される。例えば、自乗和を評価関数に使用する場合には、幾何変換の回転量(オイラー角で表示する。)を(ω,δ,κ)、平行移動量を(Δx,Δy,Δz)として、評価関数f(ω,δ,κ,Δx,Δy,Δz)は次式(40)のように表される。
【0207】
【数40】

ここで、隅測点P,P,P,Pを幾何変換して得られる隅測点P’,P’,P’,P’の測地座標を、それぞれ(x’,y’,z’),(x’,y’,z’),(x’,y’,z’),(x’,y’,z’)とし、各有効測点Pi,jを幾何変換して得られる隅測点P’ i,jの測地座標を(x’ i,j,y’ i,j,z’ i,j)とした。幾何変換後の各有効測点Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)の測地座標(x’ i,j,y’ i,j,z’ i,j)は次式(41)で表される。
【0208】
【数41】

【0209】
次に、原点座標確定部19は、変換パラメータ算出部18により算出された各変換パラメータ(ω,δ,κ,Δx,Δy,Δz)によって、計測原点Oの位置座標の初期値を幾何変換し、計測原点Oの測地座標系における位置座標を算出する。
【0210】
最後に、注視点座標確定部20は、注視点Gの相対座標を点群データ{P i,j}から抽出し、該注視点Gの相対座標と計測原点Oの測地座標系における位置座標とに基づいて、注視点Gの測地座標系における位置座標を算出する。ここで、注視点Gは、三次元レーザスキャナの場合には、走査範囲(方位角方向の走査範囲及び仰角方向の走査範囲)の中心方向の光軸上の測点である。
【0211】
以上の計算処理によって、三次元レーザスキャナの測地座標系における位置と方向が定められる。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】台車に接地された本発明の実施例1に係るレーザースキャナの外観図である。
【図2】本発明の実施例1に係るレーザースキャナのキャリブレーション装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法で使用するターゲットの外観斜視図である。
【図4】本発明の実施例1に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法のフローチャートである。
【図5】ターゲットTの走査により得られる各測点Pと計測原点Oとの位置関係を示す図である。
【図6】実際にレーザースキャナから出力される点群データを示す図である。
【図7】端測点A,Bの初期値の設定を表す図である。
【図8】計測原点O’,端測点A’,B’と有効測点P’の位置関係を表す図である。
【図9】走査線E及び各測点の位置と距離d、距離d、及び距離d(j=n+1,…,n+m−2)の関係を表す図である。
【図10】本発明の実施例2に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法で使用するターゲットTの外観斜視図である。
【図11】ターゲットTの走査により得られる各測点と計測原点Oとの位置関係を示す図である。
【図12】本発明の実施例3に係るレーザースキャナのキャリブレーション装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施例3に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法で使用するターゲットTの外観斜視図である。
【図14】本発明の実施例3に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法のフローチャートである。
【図15】本発明の実施例3に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法で使用するターゲットTの他の例である。
【図16】実施例4に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法のフローチャートである。
【図17】本発明の実施例5に係るレーザースキャナのキャリブレーション装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図18】本発明の実施例5に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法で使用するターゲットTの外観斜視図である。
【図19】実施例5に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法のフローチャートである。
【図20】本発明の実施例6に係るレーザースキャナのキャリブレーション装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図21】本発明の実施例6に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法で使用するターゲットTの外観斜視図である。
【図22】実施例6に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法のフローチャートである。
【図23】実施例7に係るレーザースキャナのキャリブレーション方法で使用するターゲットの外観斜視図である。
【図24】隅測点P,P,P,Pと抽出されたすべての有効測点Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)の一例である。
【符号の説明】
【0213】
1 レーザースキャナ
2 台車
3 コンピュータ
9 通信インタフェース
10 キャリブレーション装置
11 キャリブレーションパラメータ記憶部
12 点群データ記憶部
13 有効測点抽出部
14 座標決定部
16 第1初期化部
17 第2初期化部
18 変換パラメータ算出部
19 原点座標確定部
20 注視点座標確定部
ターゲット
垂直平面
走査線
計測原点
locus 光軸の軌跡面
θ 走査角
G 注視点
25 幅算出部
26 水平幅補正部
27 高さ算出部
30 幅算出部
31 高さ算出部
32 仰角算出部
41 有効測点抽出部
42 走査線算出部
43 走査線間距離算出部
44 仰角算出部
45 平均化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両側辺が平行かつ垂直な垂直平面を有するターゲットを、前記垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより水平走査して得られる、M個(Mは整数)の測点に対する前記計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データを記憶する点群データ記憶手段と、
前記点群データの中から、前記垂直平面の左右両側の端部の測点(以下「端測点」という。)A,Bを特定し、前記端測点A,Bを含む前記端測点A,B間のm個の測点(以下「有効測点」という。)P(i=n,…,n+m−1)の相対座標を抽出する有効測点抽出手段と、
前記レーザースキャナの光軸の軌跡が前記垂直平面を切る線である走査線Eを基準に測地座標系を設定し、前記走査線Eの一方の端点Eから前記端測点Aまでの距離d、前記走査線Eの他方の端点Eから前記端測点Bまでの距離d、及び前記端測点A,B以外の前記各有効測点P(i=n+1,…,n+m−2)から前記走査線Eまでの距離dの和又は自乗和が最小となるように、前記相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定する座標決定手段と、
を備えたことを特徴とするレーザースキャナのキャリブレーション装置。
【請求項2】
前記座標決定手段は、
前記端測点A,Bが前記走査線E上に位置し、かつ端点Eから端測点Aまでの距離と端点Eから端測点Bまでの距離とが等しくなるように、前記測地座標系における前記端測点A,Bの位置座標の初期値を算出する第1の初期化手段と、
前記端測点A,Bの位置座標の初期値及び前記各有効測点の相対座標に基づき、前記端測点A,B以外の前記各有効測点P(i=n+1,…,n+m−2)及び前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標の初期値を算出する第2の初期化手段と、
前記距離d、前記距離d、及び前記距離d(i=n+1,…,n+m−2)の和又は自乗和を評価関数として、前記計測原点O及び前記端測点A,Bを含む前記各有効測点P(i=n,…,n+m−1)の位置座標の初期値から開始して、前記評価関数の値が最小となるように、前記計測原点O及び前記各有効測点Pの回転及び平行移動を行うヘルマート変換の各変換パラメータを、反復法により算出する変換パラメータ算出手段と、
算出された前記各変換パラメータにより前記計測原点Oの位置座標の初期値をヘルマート変換し、前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標を算出する原点座標確定手段と、
所定の角度範囲を回転走査する前記レーザースキャナの走査開始方向と走査終了方向の2つの方向間の走査角の二等分角方向の光軸上の測点である注視点Gの相対座標を前記点群データから抽出し、該注視点Gの相対座標と前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標とに基づいて、前記注視点Gの前記測地座標系における位置座標を算出する注視点座標確定手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載のレーザースキャナのキャリブレーション装置。
【請求項3】
前記点群データ記憶手段は、左右両側辺が平行かつ垂直な垂直平面を複数有し、各垂直平面は互いに平行であるターゲットを、前記各垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより水平走査して得られる、M個(Mは2より大きい整数)の測点に対する前記計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データを記憶するものであり、
前記有効測点抽出手段は、前記各垂直平面に対して、両端の端測点A,B(jは前記各垂直平面を区別する添字)を特定し、前記各有効測点Pj,iの相対座標を抽出するものであり、
前記座標決定手段は、前記レーザースキャナの光軸が前記各垂直平面を切る線である走査線Ep,1p,2を基準に測地座標系を設定し、前記各垂直平面における、前記走査線Ej,1j,2の一方の端点Ej,1から前記端測点Aまでの距離dj,A、前記走査線Ej,1j,2の他方の端点Ej,2から前記端測点Bまでの距離dj,B、及び前記両端測点A,B以外の前記各有効測点Pj,i(i=n+1,…,n+m−2)から前記走査線Ej,1j,2までの距離dj,iの和又は自乗和を、すべての前記垂直平面について足し合わせた量が最小となるように、前記相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定するものであることを特徴とする請求項1記載のレーザースキャナのキャリブレーション装置。
【請求項4】
左側辺が垂直な直線で且つ右側辺が傾斜した直線又は曲線である左垂直平面と、右側辺が垂直な直線で且つ左側辺が前記左垂直平面の右側辺と平行な傾斜直線又は傾斜曲線である右垂直平面と、を備え、前記左垂直平面と前記右垂直平面は平行で且つ同一平面上にあり、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺とは一定の水平幅だけ離隔しているターゲットを、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより走査して得られた、M個(Mは2より大きい整数)の測点の計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データを記憶する点群データ記憶手段と、
前記点群データの中から、前記左垂直平面の左側の端部の測点(以下「端測点」という。)A及び右側の端測点C、並びに前記右垂直平面の右側の端測点B及び左側の端測点Cを特定し、前記端測点A,C間の水平幅r及び前記端測点B,C間の水平幅rを算出する幅算出手段と、
高さzにおける前記左垂直平面の水平幅をf(z)、前記右垂直平面の水平幅をf(z)、f(z),f(z)の逆関数をそれぞれf−1(x),f−1(x)としたとき、前記レーザースキャナの計測原点Oの高さHを、高さf−1(r’)又は高さf−1(r’)の何れか若しくは高さf−1(r)と高さf−1(r)の平均値として算出する高さ算出手段と、
を備えたことを特徴とするレーザースキャナのキャリブレーション装置。
【請求項5】
前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺との間の水平幅をr、前記左垂直平面の左側辺と前記右垂直平面の右側辺との間の水平幅をr+rとしたとき、前記計測原点で計測された水平幅r,rを、それぞれ式(1a),(1b)により補正して補正水平幅r’,r’を算出する水平幅補正手段を備え、
前記高さ算出手段は、前記レーザースキャナの計測原点Oの高さHを、高さf−1(r’)又は高さf−1(r’)の何れか若しくは高さf−1(r’)と高さf−1(r’)の平均値として算出することを特徴とする請求項4記載のレーザースキャナのキャリブレーション装置。
【数1】

【請求項6】
前記点群データ記憶手段は、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方にあり高さが同一で且つ水平面上の位置が異なるN箇所の前記計測原点から測定されたN組の前記点群データを記憶するものであり、
前記幅算出手段は、N組の前記点群データについて、それぞれ前記端測点A,C間の水平幅及び前記端測点B,C間の水平幅を算出するとともに、前記各点群データについての前記端測点A,C間の水平幅の平均値を前記水平幅r、前記各点群データについての前記端測点B,C間の水平幅の平均値を前記水平幅rとして算出するものであることを特徴とする請求項4又は5記載のレーザースキャナのキャリブレーション装置。
【請求項7】
水平幅が高さzの単調関数f(z)に従って変化する左垂直平面と、水平幅が高さzの単調関数f(z)に従って変化する右垂直平面と、を備え、前記左垂直平面と前記右垂直平面は平行で且つそれぞれ互いに一定の距離dだけ離隔した平面上にあり、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺とは一定の水平幅だけ離隔しているターゲットを、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより走査して得られた、M個(Mは2より大きい整数)の測点の計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データを記憶する点群データ記憶手段と、
前記点群データの中から、前記左垂直平面の左側の端部の測点(以下「端測点」という。)A及び右側の端測点C、並びに前記右垂直平面の右側の端測点B及び左側の端測点Cを特定し、前記端測点A,C間の水平幅r及び前記端測点B,C間の水平幅rを算出する幅算出手段と、
前記関数f(z),f(z)の逆関数をそれぞれf−1(x),f−1(x)としたとき、前記左垂直平面における走査線の高さhをf−1(r)、前記右垂直平面における走査線の高さhをf−1(r)として算出する高さ算出手段と、
前記高さh、前記高さh、及び前記距離dに基づき、レーサースキャナの光軸の仰角θを式(2)により算出する仰角算出手段と、
を備えたことを特徴とするレーザースキャナのキャリブレーション装置。
【数2】

【請求項8】
左側辺及び右側辺が垂直且つ平行な左垂直平面と、左側辺及び右側辺が垂直且つ平行な右垂直平面と、を備え、前記左垂直平面と前記右垂直平面は平行で且つそれぞれ互いに一定の距離dだけ離隔した平面上にあり、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺とは一定の水平幅だけ離隔しているターゲットを、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより走査して得られた、M個(Mは2より大きい整数)の測点の計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データを記憶する点群データ記憶手段と、
前記点群データの中から、前記左垂直平面の左側の端部の測点(以下「端測点」という。)A及び右側の端測点C、並びに前記右垂直平面の右側の端測点B及び左側の端測点Cを特定し、前記端測点A,Cを含む前記端測点A,C間のm個の測点(以下「左有効測点」という。)P(i=n,…,n+m−1)の相対座標、及び前記端測点B,Cを含む前記端測点B,C間のm個の測点(以下「右有効測点」という。)P(i=n,…,n+m−1)の相対座標を抽出する有効測点抽出手段と、
前記各左有効測点及び前記各右有効測点の相対座標に基づき、互いに平行な2つの走査線L及びLの傾き及び切片を、前記走査線Lから前記各左有効測点P(i=n,…,n+m−1)までの距離の和に、前記走査線Lから前記各右有効測点P(i=n,…,n+m−1)までの距離の和を加えた値が最小となるように、最小自乗法により算出する走査線算出手段と、
前記走査線Lから前記走査線Lまでの距離d’を算出する走査線間距離算出手段と、
前記距離d’及び前記距離dに基づき、レーサースキャナの光軸の仰角θを式(3)により算出する仰角算出手段と、
を備えたことを特徴とするレーザースキャナのキャリブレーション装置。
【数3】

【請求項9】
前記点群データ記憶手段は、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方にあり高さが同一で且つ水平面上の位置が異なるN箇所の前記計測原点から測定されたN組の前記点群データを記憶するものであり、
前記有効測点抽出手段は、前記各点群データに対してそれぞれ前記左有効測点の相対座標及び前記右有効測点の相対座標を抽出し、
前記走査線算出手段は、前記各点群データに対してそれぞれ前記走査線L及び前記走査線Lの傾き及び切片を算出し、
前記走査線間距離算出手段は、前記各点群データに対してそれぞれ前記走査線Lから前記走査線Lまでの距離d’を算出し、
前記仰角算出手段は、前記各点群データに対してそれぞれレーサースキャナの光軸の前記仰角θを算出するものであり、
前記仰角算出手段が算出する前記仰角θの平均値を、レーサースキャナの光軸の仰角として出力する平均化手段を備えたことを特徴とする請求項8記載のレーザースキャナのキャリブレーション装置。
【請求項10】
長方形の凸出した垂直平面ABCDを有するターゲットを、前記垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより三次元的に走査して得られる、M×N個(M,Nは整数)の測点に対する前記計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データを記憶する点群データ記憶手段と、
前記点群データの中から、前記垂直平面ABCDの4隅の頂点A,B,C,Dに最も近い測点(以下「隅測点」という。)P,P,P,Pを特定し、前記隅測点P,P,P,Pを含む、前記隅測点P,P,P,Pを頂点とする四角形で囲まれた領域内のm×n個の測点(以下「有効測点」という。)Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)の相対座標を抽出する有効測点抽出手段と、
前記垂直平面ABCDの4隅の頂点A,B,C,Dを基準に測地座標系を設定し、前記頂点Aと前記隅測点Pとの間の距離d、前記頂点Bと前記隅測点Pとの間の距離d、前記頂点Cと前記隅測点Pとの間の距離d、前記頂点Dと前記隅測点Pとの間の距離d、及び前記隅測点P,P,P,P以外の前記各有効測点Pi,jから前記垂直平面ABCDまでの距離di,jの和又は自乗和が最小となるように、前記相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定する座標決定手段と、
を備えたことを特徴とするレーザースキャナのキャリブレーション装置。
【請求項11】
前記座標決定手段は、前記測地座標系における前記隅測点P,P,P,Pの位置座標の初期値を設定する第1の初期化手段と、
前記隅測点P,P,P,Pの位置座標の初期値及び前記各有効測点の相対座標に基づき、前記隅測点P,P,P,P以外の前記各有効測点Pi,j(及び前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標の初期値を算出する第2の初期化手段と、
前記距離d,d,d,d、及び前記各距離di,jの和又は自乗和を評価関数として、前記計測原点O及び前記隅測点P,P,P,Pを含む前記各有効測点Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)の位置座標の初期値から開始して、前記評価関数の値が最小となるように、前記計測原点O及び前記各有効測点Pi,jの回転及び平行移動を行う幾何変換の各変換パラメータを、反復法により算出する変換パラメータ算出手段と、
算出された前記各変換パラメータにより前記計測原点Oの位置座標の初期値をヘルマート変換し、前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標を算出する原点座標確定手段と、
所定の方位角範囲及び仰角範囲を回転走査する前記レーザースキャナの走査範囲の中心方向の光軸上の測点である注視点Gの相対座標を前記点群データから抽出し、該注視点Gの相対座標と前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標とに基づいて、前記注視点Gの前記測地座標系における位置座標を算出する注視点座標確定手段と、
を備えていることを特徴とする請求項10記載のレーザースキャナのキャリブレーション装置。
【請求項12】
コンピュータによりレーザースキャナのキャリブレーションを行うキャリブレーション方法であって、
左右両側辺が平行かつ垂直な垂直平面を有するターゲットを、前記垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより水平走査し、M個(Mは整数)の測点に対する前記計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存する走査ステップと、
前記記憶装置に保存された前記点群データの中から、前記垂直平面の左右両側の端部の測点(以下「端測点」という。)A,Bを特定し、前記端測点A,Bを含む前記端測点A,B間のm個の測点(以下「有効測点」という。)P(i=n,…,n+m−1)の相対座標を抽出する有効測点抽出ステップと、
前記レーザースキャナの光軸の軌跡が前記垂直平面を切る線である走査線Eを基準に測地座標系を設定し、前記走査線Eの一方の端点Eから前記端測点Aまでの距離d、前記走査線Eの他方の端点Eから前記端測点Bまでの距離d、及び前記端測点A,B以外の前記各有効測点P(i=n+1,…,n+m−2)から前記走査線Eまでの距離dの和又は自乗和が最小となるように、前記相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定する座標決定ステップと、
を実行することを特徴とするレーザースキャナのキャリブレーション方法。
【請求項13】
前記座標決定ステップにおいては、
前記端測点A,Bが前記走査線E上に位置し、かつ端点Eから前記端測点Aまでの距離と端点Eから前記端測点Bまでの距離とが等しくなるように、前記測地座標系における前記端測点A,Bの位置座標の初期値を算出する第1の初期化ステップと、
前記端測点A,Bの位置座標の初期値及び前記各有効測点の相対座標に基づき、前記端測点A,B以外の前記各有効測点P(i=n+1,…,n+m−2)及び前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標の初期値を算出する第2の初期化ステップと、
前記距離d、前記距離d、及び前記距離d(i=n+1,…,n+m−2)の和又は自乗和を評価関数として、前記計測原点O及び前記端測点A,Bを含む前記各有効測点P(i=n,…,n+m−1)の位置座標の初期値から開始して、前記評価関数の値が最小となるように、前記計測原点O及び前記各有効測点Pの回転及び平行移動を行うヘルマート変換の各変換パラメータを、反復法により算出する変換パラメータ算出ステップと、
算出された前記各変換パラメータにより前記計測原点Oの位置座標の初期値をヘルマート変換し、前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標を算出する原点座標確定ステップと、
所定の角度範囲を回転走査する前記レーザースキャナの走査開始方向と走査終了方向の2つの方向間の走査角の二等分角方向の光軸上の測点である注視点Gの相対座標を前記点群データから抽出し、該注視点Gの相対座標と前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標とに基づいて、前記注視点Gの前記測地座標系における位置座標を算出する注視点座標確定ステップと、
を実行することを特徴とする請求項12記載のレーザースキャナのキャリブレーション方法。
【請求項14】
前記走査ステップにおいては、左右両側辺が平行かつ垂直な垂直平面を複数有し、各垂直平面は互いに平行であるターゲットを、前記各垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより水平走査して得られる、M個(Mは2より大きい整数)の測点に対する前記計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存し、
前記有効測点抽出ステップにおいては、前記各垂直平面に対して、両端の端測点A,B(jは前記各垂直平面を区別する添字)を特定し、前記各有効測点Pj,iの相対座標を抽出し、
前記座標決定ステップにおいては、前記レーザースキャナの光軸が前記各垂直平面を切る線である走査線Ep,1p,2を基準に測地座標系を設定し、前記各垂直平面における、前記走査線Ej,1j,2の一方の端点Ej,1から前記端測点Aまでの距離dj,A、前記走査線Ej,1j,2の他方の端点Ej,2から前記端測点Bまでの距離dj,B、及び前記両端測点A,B以外の前記各有効測点Pj,i(i=n+1,…,n+m−2)から前記走査線Ej,1j,2までの距離dj,iの和又は自乗和を、すべての前記垂直平面について足し合わせた量が最小となるように、前記相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定することを特徴とする請求項12記載のレーザースキャナのキャリブレーション方法。
【請求項15】
コンピュータによりレーザースキャナのキャリブレーションを行うキャリブレーション方法であって、
左側辺が垂直な直線で且つ右側辺が傾斜した直線又は曲線である左垂直平面と、右側辺が垂直な直線で且つ左側辺が前記左垂直平面の右側辺と平行な傾斜直線又は傾斜曲線である右垂直平面と、を備え、前記左垂直平面と前記右垂直平面は平行で且つ同一平面上にあり、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺とは一定の水平幅だけ離隔しているターゲットを、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより走査して、M個(Mは2より大きい整数)の測点の計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存する走査ステップと、
前記記憶装置に保存された前記点群データの中から、前記左垂直平面の左側の端部の測点(以下「端測点」という。)A及び右側の端測点C、並びに前記右垂直平面の右側の端測点B及び左側の端測点Cを特定し、前記端測点A,C間の水平幅r及び前記端測点B,C間の水平幅rを算出する幅算出ステップと、
高さzにおける前記左垂直平面の水平幅をf(z)、前記右垂直平面の水平幅をf(z)、f(z),f(z)の逆関数をそれぞれf−1(x),f−1(x)としたとき、前記レーザースキャナの計測原点Oの高さHを、高さf−1(r’)又は高さf−1(r’)の何れか若しくは高さf−1(r)と高さf−1(r)の平均値として算出する高さ算出ステップと、
を実行することを特徴とするレーザースキャナのキャリブレーション方法。
【請求項16】
前記幅算出ステップを実行した後に、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺との間の水平幅をr、前記左垂直平面の左側辺と前記右垂直平面の右側辺との間の水平幅をr+rとしたとき、前記計測原点で計測された水平幅r,rを、それぞれ式(4a),(4b)により補正して補正水平幅r’,r’を算出する水平幅補正ステップを実行し、
前記高さ算出ステップにおいては、前記レーザースキャナの計測原点Oの高さHを、高さf−1(r’)又は高さf−1(r’)の何れか若しくは高さf−1(r’)と高さf−1(r’)の平均値として算出することを特徴とする請求項15記載のレーザースキャナのキャリブレーション方法。
【数4】

【請求項17】
前記走査ステップにおいては、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方にあり高さが同一で且つ水平面上の位置が異なるN箇所の前記計測原点から、レーザースキャナにより水平走査を行い、N組の前記点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存し、
前記幅算出ステップにおいては、前記記憶装置に保存されたN組の前記点群データについて、それぞれ前記端測点A,C間の水平幅及び前記端測点B,C間の水平幅を算出するとともに、前記各点群データについての前記端測点A,C間の水平幅の平均値を前記水平幅r、前記各点群データについての前記端測点B,C間の水平幅の平均値を前記水平幅rとして算出することを特徴とする請求項15又は16記載のレーザースキャナのキャリブレーション方法。
【請求項18】
コンピュータによりレーザースキャナのキャリブレーションを行うキャリブレーション方法であって、
水平幅が高さzの単調関数f(z)に従って変化する左垂直平面と、水平幅が高さzの単調関数f(z)に従って変化する右垂直平面と、を備え、前記左垂直平面と前記右垂直平面は平行で且つそれぞれ互いに一定の距離dだけ離隔した平面上にあり、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺とは一定の水平幅だけ離隔しているターゲットを、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより走査し、M個(Mは整数)の測点の計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存する走査ステップと、
前記記憶装置に保存された前記点群データの中から、前記左垂直平面の左側の端部の測点(以下「端測点」という。)A及び右側の端測点C、並びに前記右垂直平面の右側の端測点B及び左側の端測点Cを特定し、前記端測点A,C間の水平幅r及び前記端測点B,C間の水平幅rを算出する幅算出ステップと、
前記関数f(z),f(z)の逆関数をそれぞれf−1(x),f−1(x)としたとき、前記左垂直平面における走査線の高さhをf−1(r)、前記右垂直平面における走査線の高さhをf−1(r)として算出する高さ算出ステップと、
前記高さh、前記高さh、及び前記距離dに基づき、レーサースキャナの光軸の仰角θを式(5)により算出する仰角算出ステップと、
を実行することを特徴とするレーザースキャナのキャリブレーション方法。
【数5】

【請求項19】
コンピュータによりレーザースキャナのキャリブレーションを行うキャリブレーション方法であって、
左側辺及び右側辺が垂直且つ平行な左垂直平面と、左側辺及び右側辺が垂直且つ平行な右垂直平面と、を備え、前記左垂直平面と前記右垂直平面は平行で且つそれぞれ互いに一定の距離dだけ離隔した平面上にあり、前記左垂直平面の右側辺と前記右垂直平面の左側辺とは一定の水平幅だけ離隔しているターゲットを、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより走査し、M個(Mは整数)の測点の計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存する走査ステップと、
前記記憶装置に保存された前記点群データの中から、前記左垂直平面の左側の端部の測点(以下「端測点」という。)A及び右側の端測点C、並びに前記右垂直平面の右側の端測点B及び左側の端測点Cを特定し、前記端測点A,Cを含む前記端測点A,C間のm個の測点(以下「左有効測点」という。)P(i=n,…,n+m−1)の相対座標、及び前記端測点B,Cを含む前記端測点B,C間のm個の測点(以下「右有効測点」という。)P(i=n,…,n+m−1)の相対座標を抽出する有効測点抽出ステップと、
前記各左有効測点及び前記各右有効測点の相対座標に基づき、互いに平行な2つの走査線L及びLの傾き及び切片を、前記走査線Lから前記各左有効測点P(i=n,…,n+m−1)までの距離の和に、前記走査線Lから前記各右有効測点P(i=n,…,n+m−1)までの距離の和を加えた値が最小となるように、最小自乗法により算出する走査線算出ステップと、
前記走査線Lから前記走査線Lまでの距離d’を算出する走査線間距離算出ステップと、
前記距離d’及び前記距離dに基づき、レーサースキャナの光軸の仰角θを式(6)により算出する仰角算出ステップと、
を備えたことを特徴とするレーザースキャナのキャリブレーション方法。
【数6】

【請求項20】
前記走査ステップにおいては、前記左垂直平面及び前記右垂直平面の前方にあり高さが同一で且つ水平面上の位置が異なるN箇所の前記計測原点からレーザースキャナにより水平走査し、N組の前記点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存し、
前記有効測点抽出ステップにおいては、前記各点群データに対してそれぞれ前記左有効測点の相対座標及び前記右有効測点の相対座標を抽出し、
前記走査線算出ステップにおいては、前記各点群データに対してそれぞれ前記走査線L及び前記走査線Lの傾き及び切片を算出し、
前記走査線間距離算出ステップにおいては、前記各点群データに対してそれぞれ前記走査線Lから前記走査線Lまでの距離d’を算出し、
前記仰角算出ステップにおいては、前記各点群データに対してそれぞれレーサースキャナの光軸の前記仰角θを算出し、
その後、前記仰角算出ステップにおいて算出される前記仰角θの平均値を算出し、レーサースキャナの光軸の仰角として出力する平均化ステップを実行することを特徴とする請求項19記載のレーザースキャナのキャリブレーション方法。
【請求項21】
コンピュータによりレーザースキャナのキャリブレーションを行うキャリブレーション方法であって、
長方形の凸出した垂直平面ABCDを有するターゲットを、前記垂直平面の前方の計測原点Oからレーザースキャナにより三次元的に走査し、M×N個(M,Nは整数)の測点に対する前記計測原点Oを基準とする相対座標からなる点群データをコンピュータに取り込み記憶装置に保存する走査ステップと、
前記記憶装置に保存された前記点群データの中から、前記垂直平面ABCDの4隅の頂点A,B,C,Dに最も近い測点(以下「隅測点」という。)P,P,P,Pを特定し、前記隅測点P,P,P,Pを含む、前記隅測点P,P,P,Pを頂点とする四角形で囲まれた領域内のm×n個の測点(以下「有効測点」という。)Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)の相対座標を抽出する有効測点抽出ステップと、
前記垂直平面ABCDの4隅の頂点A,B,C,Dを基準に測地座標系を設定し、前記頂点Aと前記隅測点Pとの間の距離d、前記頂点Bと前記隅測点Pとの間の距離d、前記頂点Cと前記隅測点Pとの間の距離d、前記頂点Dと前記隅測点Pとの間の距離d、及び前記隅測点P,P,P,P以外の前記各有効測点Pi,jから前記垂直平面ABCDまでの距離di,jの和又は自乗和が最小となるように、前記相対座標を前記測地座標へ関係づける関係パラメータを決定する座標決定ステップと、
を実行することを特徴とするレーザースキャナのキャリブレーション方法。
【請求項22】
前記座標決定ステップにおいては、前記測地座標系における前記隅測点P,P,P,Pの位置座標の初期値を設定する第1の初期化ステップと、
前記隅測点P,P,P,Pの位置座標の初期値及び前記各有効測点の相対座標に基づき、前記隅測点P,P,P,P以外の前記各有効測点Pi,j及び前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標の初期値を算出する第2の初期化ステップと、
前記距離d,d,d,d、及び前記各距離di,jの和又は自乗和を評価関数として、前記計測原点O及び前記隅測点P,P,P,Pを含む前記各有効測点Pi,j(i=m,…,m+m−1,j=n,…,n+n−1)の位置座標の初期値から開始して、前記評価関数の値が最小となるように、前記計測原点O及び前記各有効測点Pi,jの回転及び平行移動を行う幾何変換の各変換パラメータを、反復法により算出する変換パラメータ算出ステップと、
算出された前記各変換パラメータにより前記計測原点Oの位置座標の初期値をヘルマート変換し、前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標を算出する原点座標確定ステップと、
所定の方位角範囲及び仰角範囲を回転走査する前記レーザースキャナの走査範囲の中心方向の光軸上の測点である注視点Gの相対座標を前記点群データから抽出し、該注視点Gの相対座標と前記計測原点Oの前記測地座標系における位置座標とに基づいて、前記注視点Gの前記測地座標系における位置座標を算出する注視点座標確定ステップと、
を実行することを特徴とする請求項21記載のレーザースキャナのキャリブレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−168472(P2009−168472A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3737(P2008−3737)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】