説明

レーザービームによって材料の層に連続した穿孔を作る方法

【課題】本発明の主題は、材料の層に連続した穴を作ること、特にエアバッグカバーの第1の層に目標破断線を作ることに関する。
【解決手段】各穴の製作の間に形成するプラズマの放射線が、加工されている表面から検出される。得られる信号パターンから、信号の開始の時間と、所定のエッジ基準を満たす下降エッジの出現の時間が検出され、記憶される。下降エッジが現れる時間のポイントが、レーザーをスイッチオフにする切り換え基準である。各穴のために記憶される時間における2つのポイントの差が、それぞれの穴のためのクオリティ基準を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の層に連続した穿孔(穴)を作る方法に関する。材料の層は、多層加工物の第1の層であり、または単層加工物を構成する。加工物は、特にエアバッグカバーである。
【背景技術】
【0002】
最も近い従来技術は特許文献1である。
材料の層を完全に通って延在する穴を作るために、穴の領域における材料が完全に除去された後にのみレーザービームがスイッチを切られることが保証されなければならない。例えばレーザーパワーやフォーカス位置などのプロセスパラメータの変動、または例えば材料の密度の変動や変形などの材料の層の特性の変動のために、固定された作動時間やパルスシーケンス(連続パルス)を設定することでは材料のこのタイプの完全な除去を保証することは可能でない。よって、材料の除去をモニターし、各穴が完成した直後にレーザーのスイッチを切ることが一般的に実施されており、それにより、他の層を潜在的に(場合によっては)損傷しうる付加的なレーザーパワーが必ずしも発生せず、出口表面上の穴の直径が小さく保たれることが保証されている。
【0003】
ツールとしてのレーザービームが永続的に固定された位置で加工物の表面に向けられ、加工物がレーザービームに対して移動させられ、加工物において互いにある間隔を置いて連続した穴が作られるプロセスでは、例えば、レーザービームから離れている加工物の表面の永続的に固定された位置に配置されたセンサーであって、出て行くレーザービームを検出するセンサーによって、材料の除去の全体がモニターされる。
【0004】
対照的に、加工物が永続的に固定された位置に設けられ、ツール、すなわちレーザービームが加工物に対して移動するプロセスでは、レーザービームから離れた表面に配置されたセンサーによるモニタリングは有効でない。センサーの位置とレーザービームの位置の関係が常に固定されなければならないので、センサーとレーザービームは加工物に対して一緒に移動しなければならない。これは、構造と制御技術において多大な複雑さをもたらし、従って故障(ブレークダウン)を非常に受けやすい。
【0005】
レーザービームから離れた表面にセンサーを配置することの別な不都合は、加工物が多層構造であり、穴が材料の第1の層にのみ作られるべきときには、このような構造とこのような構造に関連する方法が使えないことである。
【0006】
穴が完成した後にレーザービームのスイッチを切るために材料の除去を監視することに加えて、加工物が使用されるあるアプリケーションでは、穴が作られている間穴のためのクオリティパラメーター(品質パラメーター)を検出する必要がある。クオリティパラメーターによって、連続した穴を備えて作られた加工物が適合に分類されるか、不適合に分類されるかを決定することができる。
【0007】
特に、材料の層がエアバッグカバーの層であり、連続した穴が所定の破断線を形成するとき、穴の直径が狭い許容範囲内にあることが特に重要である。幾何学パラメータとしての穴の直径と穴の間隔、および材料の破裂強さは、共に所定の破断線の引裂き抵抗を担っている。これは、フォーカス位置がプロセス全体にわたって安定し続けなければならないからである。
【0008】
エアバッグカバーは安全関連部品であり、その所定の破断線は、エアバッグカバーの後ろに配置されたエアバッグが作動したときに所定の破裂力で確実に破裂し開かなければならないので、原則として自動車製造業者はプロセスパラメータの技術的安定性の証明に満足せず、有効性の理由のために製造プロセスの間に実行されなければならない100%のクオリティ制御とクオリティドキュメンテーション(文書化)を必要とする。
【0009】
特許文献1は、レーザービームを用いた除去方法と、当該方法に使用するのに適する装置を開示しており、第1材料からの第2材料の除去が、少なくとも1つの放射線検出器を用いて除去の間に形成するプラズマにおいて第2材料の存在をモニターすることで制御される。この目的のために、放射線検出器は、第2材料に特有の波長範囲でプラズマによって生じる放射線の強度を測定する。従って、例えば、センサーがもはや信号を生成しないまたは低い信号しか生成しないとき、あるとしても、僅かな量の第2材料しか第1材料に存在しないことを決定し、加工の停止を決定することができる。
【0010】
前述の方法は、プラスチックでコーティングされた電気又は電子部品の電気接続部からプラスチック材料の堆積物(デポジット)を取り除くのに有効だと言われている。
【0011】
プラズマ放射線は、信号振幅が所定値以下に落ちるとすぐに、放射線検出器により供給される信号振幅の関数として加工プロセスを単に終了させるために検出される。振幅は、検出される放射線強度に比例する。
【0012】
この方法が穴の作成の間プロセスを制御するために使用できることは述べられていない。
【0013】
特許文献2は、特にセラミック加工物を切断するために、レーザービームを用いて材料を加工する間クオリティを最適化するための方法および装置を開示している。
【0014】
この手法を実行するために、レーザービームは、加工すべき加工物の上側表面に向けられ、形成するプラズマから発する光信号がフォトダイオードにより検出される。フォトダイオードのレシーバー表面に当たるプラズマ放射線の強度の尺度(大きさ)であるテスト信号が、これらの信号に基づいてプラズマ放射線の平均強度を計算するプロセスコンピューターに記録される。プロセスコンピューターは、このプラズマ放射線強度を目標値と比較し、この目標値からの偏差に依存して、加工物のフィードを制御するために制御装置のための制御信号、およびレーザーの走査周波数を変更し若しくはレーザーパワーを変更するために制御装置のための制御信号を生成し、目標値からの測定平均プラズマ放射線強度の偏差を最小化する。この目的のために、使用されるプロセスコンピューターの走査速度はレーザーのパルス周波数と等しい。
【0015】
加工物を通るレーザーの通過を検出するために、第2フォトダイオードが、レーザービームから離れた下側表面に配置される。
【0016】
この文献に記載されているように、プロセスパラメータとプロセスの終了は2つのフォトダイオードのテスト信号によって制御される。
【0017】
特許文献3は、所定の切断線に沿ってレーザービームを移動させることで加工物をレーザー切断するための方法および装置を記載している。その領域ではレーザービームの移動方向に延在するプラズマが形成し、当該プラズマは連続的に観測され、プラズマの少なくとも1つの観測された特性が実行されている切断プロセスのクオリティと相関させられる。
【0018】
レーザービームのサイトで切断線において形成する可視プラズマが切断線の全長に沿って実質的に変化しないとき、すなわち特にプラズマから発する光の強度が一定であるときに良好な切断結果が得られると考えると、作られる切断のクオリティは、プロセスの間例えば強度を観測することで直接評価される。例えば材料の欠陥のためにプラズマにおいて瞬間的な変動(バリエーション)が観測され、または機器のエラーのために永続的な変動が観測される場合、これらの変動は低いクオリティの切断プロセスを表し、影響を受けた加工物は不適合な部品として分離され、プロセスは継続する。
【0019】
この場合、プラズマの観測は、プロセスを制御するためでなく、専らプロセスをモニターする役割を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】DE3913785A1
【特許文献2】DE4124162C1
【特許文献3】DE10261667A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明により解決すべき課題は、材料の層、特にエアバッグカバーの層にレーザーを用いて連続した穴を作るための方法であって、完全な穴の作製を保証し、穴のクオリティのための基準を確立する方法を利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この課題は、請求項1の特徴を備えた方法によって解決される。有効な実施形態は従属請求項に付随する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】レーザーのスイッチオン位相の間の放射線検出器の信号パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を図に示された実用的な例に基づき詳細に説明する。
連続した穿孔が切り込まれる材料の層は、単層加工物又は多層加工物の第1の層である。
従って、加工物がエアバッグカバーとして使用される場合、それは単層エアバッグカバー又は多層エアバッグカバーの支持層である。
支持層は、単に装飾層又はエアバッグカバーの柔らかい感触を保障する発泡層やスペーサー生地などのインターライニング層を備えた装飾層である他の層に積層される前に加工される。
支持層は、全ての層が互いに積層された後に加工されてもよい。
【0025】
この方法を実施するために、加工物は固定加工物ホルダーに取り付けられ、レーザービームは加工物の表面、特に裏面に向けられ、製作しようとする連続穴の所定方向に沿って加工物に対して動かされる。
レーザービームを放出するレーザーは、ビーム軸が加工物に対して穴が作られるべき位置に達したときはいつでもスイッチオンとなるように始動される。
レーザービームがアクティブになる領域では、材料は蒸発、イオン化され、プラズマが形成する。
【0026】
特許文献1に記載の方法と同様に、レーザーはプラズマに依存してスイッチオフにされる。プラズマの端部で、放射線検出器はレーザービームに対する固定位置に配置され、レーザービームの衝突のポイントに向けられる。この放射線検出器は、加工すべき材料によって生成されるプラズマ放射線の波長範囲に反応するが、レーザービームの波長範囲に反応しない。
【0027】
材料の層が多層加工物の第1の層である場合、後続層の材料から形成するプラズマは、放射線検出器で検出される波長範囲の放射線を放出してはならないか、又はそれは、潜在的に形成するプラズマの量を著しく減少させる、第1の層の材料より著しく低い密度を有しなければならない。
【0028】
しかしながら、レーザービームをスイッチオフにするのに使用される切り替え基準は、測定値が所定の目標値以下に低下するか又は達するかどうかではなく、それに代えて、当該基準は、レーザーがアクティブである間の所定の割合(パーセント)の信号低下の検出である。この信号低下は、プラズマ放射線の強度の所定の低下を反映する。以下では、この信号低下を下降エッジと呼ぶ。
【0029】
下降エッジの切り替え基準としての使用は、プロセスに前もって又はプロセスの初めに、信号が比較されなければならない材料特有の目標値を決定する必要がないという利点を有する。
【0030】
必要なのは、放射線検出器で検出されるプラズマの放射線強度がプラズマの感度範囲内になることを保障することだけである。従って、所定のエッジ継続時間内における所定の割合の信号振幅の低下が、下降エッジとして検出される。
【0031】
割合の低下は、少なくとも30%、例えば70%であるべきであり、エッジ継続時間は10msecより短く、例えば3msecであるべきである。図1は、時間にわたるレーザーパワーの制御(曲線1、上)と、時間にわたる放射線検出器の信号パターン(曲線2、下)を示す。
【0032】
従って、切り替え基準は、信号パターンの潜在的な小さい変動と、異なる材料のためにかなり異なる絶対的な信号振幅から独立している。
【0033】
レーザービームのスイッチオフに加えて、穴形成のための品質基準が形成するプラズマから得られる。
【0034】
除去品質に関する結論を引き出すために、プラズマの特性、特に放射線強度がプロセスを通して観測され使用される従来技術の方法と対照的に、本発明により提案される方法はプラズマの特性を完全に無視する。
【0035】
それに代えて、品質基準は、信号の生成から始まり下降エッジの検出までの検出される時間長さである。
【0036】
非常に安定したプロセスパラメータ、すなわち、レーザーパワー、パルス周波数及びパルス継続時間を仮定すると、この検出される時間長さは、特にフォーカス位置の変化の結果、所定の目標の時間長さから逸れてもよい。
【0037】
フォーカス位置の変化は、主に加工物の幾何学形状の変化、すなわち変形によって生じる。これらの変形の結果、レーザービームのフォーカスに対する加工物の位置は目標の位置に一致せず、これにより穴の直径が目標の穴の直径から逸れる。
【0038】
大きめの又は小さめの穴の直径は、別な一定のプロセスパラメータを仮定すると、多めの又は少なめの材料が除去され、蒸発させられ、イオン化されるという効果を有する。これは、検出される時間長さが相応して大きめに又は小さめになることを意味する。
【0039】
目標の時間長さは、レーザービームと加工物の間の位置に基準穴を作ることにより決定される。この位置では正確に調節されたフォーカス位置が保障される。
【0040】
プロセスの途中で、形成すべき連続の穴が次々に製作される一方、放射線検出器は形成するプラズマ放射線を検出する。検出器においてそれぞれの穴のために形成する信号パターンは、中央処理装置に伝達され、そこでエッジ基準と比較される。エッジ基準は、信号振幅において所定の割合の低下が検出されるときに満たされる。
【0041】
エッジ基準が満たされたことを決定した直後に、レーザーはスイッチオフにされ、その後レーザービームが次の穴のための位置に達した後にのみ再びスイッチオンにされる。
【0042】
それぞれの穴の製作の間プラズマ放射線の継続時間は、信号が開始する時間(時点)と下降エッジが検出される時間(時点)の差を計算して、それがそれぞれの穴にリンクするように差を記憶することで、決定・算出される。
【0043】
信号が開始する時間は、検出器の感度限界又は所定の閾値である。
【0044】
最後に、穴にリンクされた時間の値が所定の許容ウィンドウ内にあるか、従って穴の品質が許容限界内又は許容限界外にあるかを決定するためのチェックがなされる。エッジ基準を満たす下降エッジが所定の時間長さ内で検出されない場合、レーザーはスイッチオフにされ、関連する穴は欠陥品に分類される。
【符号の説明】
【0045】
1 曲線
2 曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービームを用いて材料の層に連続した穴を製作する方法であって、
レーザーにより放出されるレーザービームが材料の層に向けられ、それにより材料の除去の結果プラズマが形成され、当該プラズマは検出され、レーザーをスイッチオフにするための切り替え基準が得られる信号が生成される方法において、
それぞれの穴の製作の間信号が生成され、信号生成の開始の時間と、所定のエッジ基準を満たす下降エッジの出現する時間が検出され、これらがそれぞれの穴にリンクするように記憶され、
下降エッジが検出されるときに、レーザーはスイッチオフにされ、これは1つの穴の製作を表し、
それぞれの穴のために決定される2つの時間の差に基づいて、関連する穴のための品質基準として所定の目標の時間長さと比較される時間長さが計算されることを特徴とする方法。
【請求項2】
エッジ基準は、所定の割合より大きい値の信号振幅における低下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
信号振幅の低下の割合が、30%より大きく、好ましくは70%より大きいことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記低下が、10msecの時間内、好ましくは3msecの時間内に生じることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
エアバッグカバーにおける連続した穴からなる目標破断線の製作における請求項1に記載の方法の使用。
【請求項6】
エッジ基準を満たす下降エッジが検出されないときに、関連する穴が欠陥品として分類されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−64145(P2010−64145A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−201644(P2009−201644)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(502122347)イェーノプティク アウトマティジールングステヒニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【Fターム(参考)】