説明

レーザー光源装置

【課題】使用開始する際には常にメインスイッチ及びキースイッチがOFFとなるレーザー光源装置を、提供する。
【解決手段】電源回路2に対して電気回路3及びソレノイド4が並列接続されている。電気回路3とソレノイド4との接続点5と電源回路2との間には、メインスイッチ10が介在している。また、接続点5と電気回路3との間には、キースイッチ11が介在している。キースイッチ11は、作動片7bが第1の位置にあるときに回路を開き、作動片7bが第2の位置にあるときに回路を閉じる。ソレノイド4は、電源回路2からの駆動電流が供給されていない間はキースイッチ11の作動片7bを第1の位置へ移動させ、電源回路2からの駆動電流が供給されている間は作動片7bの第2の位置への移動を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を射出するレーザー光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光は、医療や工業における様々な場面にて用いられている。例えば、レーザーメスは、高エネルギーのレーザー光を、ファイババンドルからなるレーザプローブを通じて患者の患部に照射することによって、患部を焼き切るために用いられている。また、蛍光観察内視鏡は、低エネルギーのレーザー光を、内視鏡のライトガイド又は内視鏡の鉗子チャンネルに挿通されたレーザプローブを通じて患者の体腔内壁に照射して、その生体組織から蛍光を発光させて蛍光像を得るために用いられている。
【0003】
このように多用されるレーザ光であるが、それが操作者の意に反して射出された場合には、操作者が意図していない対象物に対して照射されてしまうことになり、その結果、例えば操作者や第三者の目に入射してその視覚機能に障害を生じさせてしまう等、様々な問題を生ずる危険があると考えられている。
【0004】
そのため、JIS(日本工業規格)のC6902では、「400nm〜700nmの可視の波長でクラス2のAELの5倍を超えるクラス3Bおよびクラス4のレーザシステムは、かぎを用いて初めてレーザ製品が運転できるようになっていなければならない」と、定められている。
【0005】
このJIS規格に沿って、従来、レーザー光源装置の電源回路中にメインスイッチとキースイッチとを直列に介在させることにより、両スイッチをともにONとした場合にのみ電源電流をレーザー射出回路に供給する回路構成が、採用されている。
【特許文献1】特開2002−116668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のレーザー光源装置の回路構成においては、メインスイッチ及びキースイッチとは、互いに独立して動作するスイッチとして単に直列接続されていただけであったので、一旦両スイッチをONとしてレーザー光源装置を使用した後にメインスイッチをOFFとすることによってレーザー光源装置を停止させたというケースにおいて、操作者がキースイッチをOFFとし忘れるという問題が生じ得た。この場合、次にこのレーザー光源装置を使用する操作者が、事前に各スイッチの状態をチェックせず、キースイッチは当然にOFFとなっているであろうという思い込みの下にメインスイッチをONとしてしまった場合には、この操作者は未だキースイッチをONとしていないからレーザー光が射出されることは無いと意識しているにも拘わらず、この操作者の意に反してレーザー光が射出されてしまうことがある。このように、従来のレーザー光源装置の回路構成は、操作者が両スイッチを使用終了の都度OFFとするとの信頼の下でしか安全を確保することができなかった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、メインスイッチをOFFとした時にはキースイッチも強制的にOFFとすることにより、レーザー光源装置を使用開始する際には常にメインスイッチ及びキースイッチがOFFとなっていることを担保する事である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために発明された本発明のレーザー光源装置は、電源回路からの駆動電流が供給されたレーザー回路中のレーザー光源がレーザー光を射出するレーザー光源装置であって、前記電源回路に対して前記レーザー回路及びソレノイドが回路を通じて並列接続されており、これらレーザー回路及びソレノイドの接続点と前記電源回路との間にメインスイッチが介在しているとともに、前記接続点と前記レーザー回路との間にキースイッチが介在しており、前記キースイッチは、第1の位置と第2の位置との間で移動可能である作動片を有し、この作動片が前記第1の位置にある時には前記回路を開き、また、前記作動片が前記第2の位置にある時には前記回路を閉じ、前記ソレノイドは、前記メインスイッチが前記回路を開くことによって前記電源回路からの駆動電流が停止されている間は、前記作動片に干渉して前記第1の位置へ移動させ、前記メインスイッチが前記回路を閉じることによって前記電源回路からの駆動電流が供給されている間は、前記作動片の移動範囲から退避してこの作動片の第2の位置への移動を許容することを、特徴とする。
【0009】
以上のように構成された本発明のレーザー光源装置によると、一旦レーザー光源装置を使用し終わってからメインスイッチをOFFとして回路を開くと、このメインスイッチを通じて電源回路から直接駆動電流を供給されていたソレノイドは、キースイッチの作動片に干渉して、第2の位置から第1の位置へ強制的に移動させる。その結果、キースイッチがOFFとなり、回路を開く。その後、レーザー光源装置を再度使用する時には、メインスイッチとキースイッチとが共にOFFとなっているので、操作者は、これら両スイッチを共にONとして回路を閉じなければならない。よって、メインスイッチをONとしただけでレーザー回路に電源回路からの駆動電流が供給されてしまう可能性がなくなるので、操作者の意に反するレーザー光の射出を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上に説明したように、本発明のレーザー光源装置によれば、キースイッチをOFFとした時にはメインスイッチも強制的にOFFとなるので、レーザー光源装置を使用開始する際には、常にメインスイッチ及びキースイッチがOFFとなっている。よって、操作者が意図せぬレーザー光の射出を未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、添付図面に基づいて、本発明を実施するための形態を、説明する。本実施形態は、レーザー光源装置の一種である蛍光観察内視鏡システムの光源装置に、本発明を適用したものである。
【0012】
図1は、本実施形態によるレーザー光源装置である光源プロセッサ装置1の外観を示す斜視図である。この光源プロセッサ装置1は、これに接続された図示せぬ電子内視鏡のライトガイドに対して可視照明光及びレーザー光を選択的に供給するとともに、電子内視鏡から入力された映像信号を処理することによって、可視照明光供給時に得られた映像信号に基づく可視像を表示するためのビデオ信号,及び、レーザー光供給時に得られた映像信号に基づく可視像を表示するためのビデオ信号に変換する。
【0013】
この光源プロセッサ装置1は、図1に示すように、その正面パネル(図1における手前左側の面)に、図示せぬ内視鏡のコネクタが接続されるソケット1aの他、メインスイッチ10,キースイッチ11及び操作盤12を備えている。図2は、これらメインスイッチ10,キースイッチ11及び操作盤12を含む光源プロセッサ装置1の内部回路の概略構成(電源供給系を中心とした回路構成)を示す回路図である。
【0014】
この図2において、2は、AC/DCコンバーターを備えた電源回路である。この電源回路2に対して、ソレノイド4及び電気回路3が並列に接続されている。この電気回路3は、光源プロセッサ装置1の内部回路における電源回路2及びソレノイド4を除いた部分であり、上述した光源プロセッサ装置1の各種機能を実現するための各種回路(レーザー光を発光する半導体レーザ[レーザー光源]や定電圧供給回路等からなるレーザー回路3a,各種回路を制御するための制御回路3b,等)を含む。また、この電気回路3には、上述した操作盤12を構成する各種のスイッチが接続されており、操作者による操作指示が入力される。
【0015】
図2においてソレノイド4の正電極及び電気回路3の正電極との接続点5と電源回路2の正電極との間には、メインスイッチ10が介在しており、この接続点5と電気回路3との間にはキースイッチ11が介在している。このメインスイッチ10は、トグルスイッチであり、押圧される毎にON(閉)及びOFF(開)を交互に切り替える。
【0016】
また、キースイッチ11は、図3(a),図4(a),図5(a)に示すように、光源プロセッサ装置1の図示せぬフレームに対して固定された外筒8と、鍵6が差し込まれるキーウェイ7aを備えるとともにこのキーウェイ7aに鍵6が差し込まれた状態においてのみ外筒8に対して回転するシリンダー7を有している。そして、このシリンダー7が図3(a)及び図4(a)に示す回転位置にあるときに回路を開き(OFF)、シリンダー7が図5(a)に示す回転位置にあるときに回路を閉じる(ON)ように、図2に示す電気スイッチがこのシリンダー7に連動する。さらに、このシリンダー7の外周面には、後述するソレノイド4の作動軸4aの先端に当接する板状の作動片7bが、当該シリンダー7の径方向に向けて一体に設けられている。従って、鍵6をキーウェイ7aに差し込んだ状態では、この鍵6に対して外力を加えても、作動片7bに対して外力を加えても、シリンダー7は回転し、キースイッチ11を開閉させることができる。但し、この作動片7bは、内視鏡プロセッサ装置1の正面パネルの裏面側に存在し、シリンダー7の先端面(キーウェイ7aが開口している面)のみが、正面パネルの表面に露出している。なお、鍵6は、シリンダー7がOFFの位置(図3(b))にあるときにのみキーウェイ7aに対して挿抜自在となっている。
【0017】
一方、ソレノイド4は、上述した作動軸4a,この作動軸4aを突出させる方向に付勢するバネ4b,及び、メインスイッチ10がON(閉)となって電源回路2から駆動電流が供給されている間のみ上述したバネ4bの付勢力に抗して作動軸4aを没入させる方向に電磁力を生じる電磁石4cから、構成されている。
【0018】
この作動軸4aは、キースイッチ11のシリンダー7の中心軸と直交する方向へ向けて、且つ、キースイッチ11のシリンダー7の作動片7bが図3(a)に示す回転位置から図5(a)に示す回転位置まで回転するまでの間中、その中心軸の延長線が当該作動片7bの側面(シリンダー7の径方向と並行な方向を向いた面)と交差する位置に、配置されている(図3(b),図4(b),図5(b)参照)。
【0019】
バネ4bは、作動軸4aが作動片7bに近接する方向に突出するように、この作動軸4aを付勢している。このバネ4bによる作動軸4aの突出量は、キースイッチ11の電気スイッチがOFF(開)となる回転位置(図3(b))にある作動片7aと当接する程度である。また、バネ4bの力は、キーウェイ7aに差し込まれている鍵6を操作者が通常の力で回転させたときに作動片7bに作用するトルクを上回る程度である。
【0020】
電磁石4cは、作動軸4aが作動片7bから離反する方向に没入させる。この電磁石4cによって没入された作動軸4aの先端の位置は、作動片7aの移動範囲から退避して、電気スイッチがON(閉)となる回転位置(図5(b))にある作動片7aと僅かに接する程度である。
【0021】
以上の構成により、電磁石4cに駆動電流が供給されることによって作動軸4aが没入している間のみ、キーウェイ7aに差し込まれた鍵6を摘んで操作者がシリンダー7をONの位置(図5(b))にまで回転させることが可能になるとともに、シリンダー7がONの位置(図5(b))にあるときに電磁石4cへの駆動電流供給が停止されると、作動軸4aが突出することによって、シリンダー7をOFFの位置(図3(b))にまで強制的に回転させるのである。
【0022】
以上のように構成された本実施形態の光源プロセッサ装置1によると、光源プロセッサ装置1を使用し終わった場合には、操作者がキースイッチ11を操作しなくても、メインスイッチ10をOFF(開)に切替さえすれば、ソレノイド4によって、キースイッチ11が強制的にOFF(開)に切り替わる。その結果、その後、当該操作者又は他の操作者が光源プロセッサ装置1を再使用する場合には、両スイッチ1b,1cが共にOFF(開)となっているので、操作者は、これら両スイッチ1b,1cを順次ON(閉)に切り替えなければならない。但し、キースイッチ11は、メインスイッチ10がON(閉)となった場合のみ、ソレノイド4が作動することによって、OFFからONへ切り替え可能となるので、メインスイッチ10,キースイッチ11の順にON(閉)に切り替えられなければならない。このようにして操作者が両スイッチ1b,1cを操作して共にON(閉)に切り替えた状態においてのみ、電源回路2から電気回路3に駆動電流が供給されてレーザー回路3aがレーザー光を射出することが可能になる。よって、操作者の意に反するレーザー光の射出を未然に防止することが可能になるのである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例である光源プロセッサ装置の外観を示す斜視図
【図2】光源プロセッサ装置の内部回路を示す回路図
【図3】キースイッチとソレノイドの状態を示す斜視図(a)及び正面図(b)
【図4】キースイッチとソレノイドの状態を示す斜視図(a)及び正面図(b)
【図5】キースイッチとソレノイドの状態を示す斜視図(a)及び正面図(b)
【符号の説明】
【0024】
1 光源プロセッサ装置
2 電源回路
3 電気回路
3a レーザー回路
4 ソレノイド
4a 作動軸
5 接続点
7 シリンダー
7b 作動片
8 外筒
10 メインスイッチ
11 キースイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源回路からの駆動電流が供給されたレーザー回路中のレーザー光源がレーザー光を射出するレーザー光源装置であって、
前記電源回路に対して前記レーザー回路及びソレノイドが回路を通じて並列接続されており、これらレーザー回路及びソレノイドの接続点と前記電源回路との間にメインスイッチが介在しているとともに、前記接続点と前記レーザー回路との間にキースイッチが介在しており、
前記キースイッチは、第1の位置と第2の位置との間で移動可能である作動片を有し、この作動片が前記第1の位置にある時には前記回路を開き、また、前記作動片が前記第2の位置にある時には前記回路を閉じ、
前記ソレノイドは、前記メインスイッチが前記回路を開くことによって前記電源回路からの駆動電流が停止されている間は、前記作動片に干渉して前記第1の位置へ移動させ、前記メインスイッチが前記回路を閉じることによって前記電源回路からの駆動電流が供給されている間は、前記作動片の移動範囲から退避してこの作動片の第2の位置への移動を許容する
ことを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項2】
前記ソレノイドは、突出することによって前記作動片に干渉するとともに没入することによって前記作動片の移動領域から退避する作動軸と、この作動軸を突出する方向へ付勢するバネと、前記駆動電流が供給された場合にのみ前記バネによる付勢に抗して前記作動軸を没入する方向へ移動させる電磁石とからなる
ことを特徴とする請求項1記載のレーザー光源装置。
【請求項3】
前記作動片は、鍵が挿入可能であるとともに前記鍵が挿入された時のみ回転可能なシリンダーに取り付けられている
ことを特徴とする請求項1記載のレーザー光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−116180(P2006−116180A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309424(P2004−309424)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】