説明

レーザー加工装置、レーザー加工方法、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置

【課題】生産効率を向上させてコストダウンを図ることを目的とする。
【解決手段】本発明に係るレーザー加工装置は、レーザー光を発生するレーザー光源部と、レーザー光を透過しレーザー品質を調整する光学系と、加工対象を加工する上で所望の加工パターンに成形するためのフォトマスクと、フォトマスクによって成形されたレーザー光を縮小し加工対象にレーザー光を照射する投影レンズとを有するレーザー加工装置において、フォトマスクの設置位置を制御することができるフォトマスク調整機構を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロメートルオーダーのレーザー加工装置、レーザー加工方法、レーザー加工によって形成されたノズル穴を有するノズルプレートを備えた液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液体噴射装置の1つとして、予め決められた方向に搬送される記録紙等の被記録媒体に対してインク(液体)を吐出して画像や文字等の記録を行うインクジェット方式の記録装置(例えば、プリンタやファックス等)が提供されている。この記録装置は、インクタンクからインク供給管を介してインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)にインクを供給し、該インクジェットヘッドに備えられたヘッドチップのノズル孔からインクを被記録媒体に吐出することで記録を行っている。
【0003】
上記したヘッドチップには、インクが充填される複数のチャネルが間隔をあけて並列に形成されていると共にこれらのチャネルに連通するノズル孔が形成されている。これらのノズル孔からインク滴を吐出するためには様々なアクチュエータが用いられるが、例えば上記したチャネルの側壁を圧電材料によって形成し、この側壁には駆動電極が形成されている方式が採用される。または、インク室内に貯留しているインクに対し、発熱体を用いる加熱によりバブルを発生させ、その際の圧力変化を利用してインク滴を吐出する方法が一般的である。
このような構成のヘッドチップを有するインクジェットヘッドには、上記したヘッドチップの駆動を制御する制御手段が備えられている。この制御手段は、ヘッドチップを駆動させるための駆動回路が形成された駆動回路基板と、駆動回路と駆動電極とを接続する信号線が形成されたフレキシブルプリント基板と、を備えている。このような制御手段を備えるインクジェットヘッドでは、駆動回路から信号線を介して駆動電極に駆動電圧を印加することで、側壁が変形してチャネル内の圧力が高められ、チャネル内のインクがノズル孔から吐出される構成となっている。
【0004】
ところで、上記したノズルプレートに形成されるノズル孔は、直径数十マイクロメートルサイズの貫通孔であって、上記したインク室が配列される方向に沿ってノズルプレートに複数形成されている。また、上記したノズル孔は、レーザー加工装置などを用いて、例えばノズルプレートの材料となるポリイミドフィルムなどの膜状部材にエキシマレーザーなどのレーザー光線を照射し形成される。さらに、現代で一般的に使用されているインクジェット記録装置の高分解能・高精度印刷の要求を満たすためには、ノズル孔の加工精度にマイクロメートルオーダーもしくはそれ以上の精度が要求されており、高度な技術発展に追従するには、日を追うごとに厳しい要求が突きつけられている。
また、ノズル孔の形成方法に関しては、様々な手法が用いられており、その一部を紹介すると、上述したような高精度のノズルを複数均一に作製する方法としては、エッチング、機械加工、レーザー加工などの方法が用いられる。特に、上記で紹介したエキシマレーザーを利用したレーザー加工方法は、常温常圧、かつ短時間で実施できることから汎用的である。さらに、エキシマレーザーを利用した加工方法は多様であり、例えば、マスク投影法(例えば、特許文献1参照)やマイクロレンズアレイ集光法(例えば、特許文献2参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−160371
【特許文献2】特開2002−283083
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の技術では、高い加工精度を維持するために、生産効率が低下することを余儀なくされている。すなわち、精度良くノズル孔を形成することができるレーザー加工方法といえども、加工精度はレーザーが透過する光学系の位置調整、加工工程の管理、並びに加工結果の品質判定によって向上されるものである。そのため、例えば加工精度にばらつきが生じた場合は、精度のばらつきが許容範囲に収まるまで、レーザー加工に関係する各種の調整を施す必要があり、これらの面で高精度が要求されるノズル孔加工は生産効率が悪くなりがちであり、インクジェットヘッドのコストアップの一因となっている。
また、従来用いられているレーザー加工方法では、単一となるパターンを使用し続けることを前提とし、単一のパターンでのみ光学系の調整を実施している。ところが、レーザーの焦点におけるエネルギー品質は完全に等価ではなく、不均一であるのが通常であるため、例えばフォトマスクのパターンを変更するとすれば、光学系の位置調整を施さなければならない。つまり、レーザー光源とフォトマスクパターンとの相対位置が数十マイクロメートル移動するだけでも、ノズルプレートに加工されるノズル孔の加工結果に大きな影響を与えてしまうために、フォトマスクパターンを変更する度に、上述した各種の調整を施す必要がある。これは、加工する製品が少量でしかも多品種にのぼる場合は、それだけ調整作業を頻繁に行わなければならず、作業者にとって大変な負荷となっている。
さらに、レーザーのエネルギー品質は、時間的に変化しており、長時間に渡る加工作業の場合は、調整を行わないまま作業を継続すると、レーザーの時間変化によって加工結果が均一にならないという問題が挙げられる。
【0007】
本発明に係るレーザー加工装置、レーザー加工方法、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、生産効率を向上させることでコストダウンを図ることができると共に、煩雑な作業を少なくし少量であって多品種の製品においても歩留まりが向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るレーザー加工装置は、レーザー光を発生するレーザー光源部と、前記レーザー光を透過しレーザー品質を調整する光学系と、加工対象を加工する上で所望の加工パターンに成形するためのフォトマスクと、前記フォトマスクによって成形されたレーザー光を縮小し前記加工対象にレーザー光を照射する投影レンズとを有するレーザー加工装置において、前記フォトマスクの設置位置を制御することができるフォトマスク調整機構を具備することを特徴としている。
【0009】
これにより、上記したレーザー加工装置では、フォトマスクの設置位置を制御することができるフォトマスク調整機構を設けているので、ノズルプレートを製造する際に光学系やフォトマスクなどの調整を精度のばらつきが収まるまで実施する必要がなく、フォトマスクの位置を制御することにより、適切な加工条件を維持することができる。そのため加工によってフォトマスクの配置を変更する際にも制御値にしたがって配置位置を制御すれば良いため、ノズルプレートの加工の手間を低減することができる上に、製造コストを低減することができる。
【0010】
また、本発明に係るレーザー加工装置は、フォトマスク調整機構が加工データを記憶する記憶部を具備することが好ましい。
これにより、加工データをフォトマスク調整機構に記憶させておくことで、ノズルプレートを製造する際にフォトマスクによって位置を決定する作業が不要となる。すなわち、フォトマスクの個別の設置位置のデータを記憶することにより、繰り返しフォトマスクを使用する場合に、再度設置位置を決定する作業を実施する必要が無く、生産性が向上する。
【0011】
また、本発明に係るレーザー加工装置は、前記フォトマスク調整機構が調整工程における加工精度を確認するための調整用フォトマスクと、本番工程における加工用フォトマスクを設けていることが好ましい。
これにより、レーザー光のエネルギー分布が不均一だったとしても、加工精度の良し悪しを調整用フォトマスクを用いることで検出し、その結果をもとに加工用フォトマスクを用いることによって、加工精度のばらつきを抑え、歩留まりの向上と製造コストの低減を推し進めることができる。
【0012】
また、本発明に係るレーザー加工装置は、加工データがフォトマスクの設置位置データと、加工対象の加工結果データを含んでいることが好ましい。
これにより、フォトマスク調整機構の記憶部に加工データとしてフォトマスクの設置位置データと加工対象の加工結果データを保存することができる。そのため、フォトマスクを交換して別のフォトマスクを使用する場合でも、再度そのフォトマスクを使用する場合は、過去のデータを検出し加工結果を引用することによって、従来必要であったフォトマスクの配置位置の設定を再度とり行う作業が必要なくなる上に、フォトマスクの配置位置と加工結果データを管理することができるため、複数のフォトマスクを使用する場合に、工程管理が安易にとり行うことができる。
【0013】
また、本発明に係るレーザー加工装置は、記憶部が調整用フォトマスクの全域における加工対象の加工結果データを記憶することができることが好ましい。
これにより、調整用のフォトマスクのマスクパターンの全域において、加工対象の加工結果データを取得することができる。そのため、調整用フォトマスクのマスクパターンの中で、レーザー光が照射される領域のうち最適なエネルギー分布の範囲を確認することができる。
【0014】
また、本発明に係る液体噴射ヘッドは、請求項1〜5のいずれか一項に記載されたレーザー加工装置によって形成されたノズル孔を有するノズルプレートと、液体を被記録媒体へ吐出する液体吐出部と、液体タンクから液体を供給されるとともに前記液体吐出部へ液体を供給する液体供給部と、を具備することを特徴としている。
これにより、被記録媒体へ液体を吐出する液体噴射ヘッドにおいて、安価に製造されたノズルプレートを装着することができる。そのため、液体噴射ヘッド全体の製造費も安価にすることができる。
【0015】
また、本発明に係る液体噴射装置は、被記録媒体を予め決められた搬送方向に搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送された被記録媒体の表面に対してノズル孔が対向する向きに配置された請求項6に記載の液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを前記搬送方向に直交する方向に前記被記録媒体に沿って往復移動させる移動手段と、液体を貯留する液体タンクと、前記液体タンクから前記液体噴射ヘッドへ液体を供給する液体供給部と、を備えることを特徴としている。
このような特徴により、搬送手段によって被記録媒体を搬送するとともに、移動手段によって液体噴射ヘッドを往復移動させながらノズル孔から被記録媒体に向けて液体を吐出させることで被記録媒体に画像や文字等が記録される。そのため、液体噴射記録装置において、安価に製造されたノズルプレートを具備することができる。これにより、液体噴射装置全体の製造費も安価にすることができる。
【0016】
また、本発明に係るレーザー加工方法は、レーザー加工装置において、レーザー光源部からレーザー光を出力し、該レーザー光の品質を調整する光学系、マスクパターンが形成されている調整用フォトマスク、および該レーザー光を縮小し透過する投影レンズを介して、調整用の加工対象に該レーザー光を照射する調整工程と、前記フォトマスクの位置を調整するフォトマスク調整機構に、前記調整工程において加工された加工対象の加工結果データを連絡するデータ連絡工程と、前記フォトマスク調整機構が有する記憶部に前記調整工程における加工条件と前記加工結果を記憶するデータ記憶工程と、前記データ記憶工程においてフォトマスクの最適設置位置と、光学系における最適パラメータを選定する選定工程と、前記調整用フォトマスクを加工用フォトマスクに変更し、前記最適設置位置にフォトマスクを設置する設置工程と、を備えたことを特徴としている。
このような特徴により、高い加工精度を維持するために、生産効率が低下することを余儀なくされていたノズルプレートの製造に関して、製造効率を向上することができる。すなわち、高精度にノズル孔を形成することができるレーザー加工方法として、加工精度を決める光学系の位置調整、加工工程の管理、並びに加工結果の品質判定の工程における煩雑さを低減することができる。その上、加工精度に生じるばらつきを見越した上で、ばらつきが許容範囲でノズルプレートを製造することができ、高精度が要求されるノズル孔加工の生産効率を向上し、液体噴射ヘッドのコストダウンに一役買うことができる。
また、レーザー加工方法におけるレーザーの焦点におけるエネルギー品質は完全に等価ではない不均一性にも対応することができるし、フォトマスクパターンを変更する度に再度校正していた光学機器の調整の手間を省くことができる。これは、加工する製品が少量でしかも多品種にのぼる場合においても、調整作業の必要が無く、作業者にとって作業負荷を減らすことができる。さらに、時間的に変化するレーザーのエネルギー品質においても、調整作業の手間を省くことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るレーザー加工装置、レーザー加工方法、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置によれば、生産効率を向上させることでコストダウンを図ることができると共に、煩雑な作業を少なくし少量であって多品種の製品においても歩留まりが向上することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための液体噴射装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための液体噴射ヘッドの斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するためのヘッドチップの斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するためのヘッドチップの分解斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するためのレーザー加工装置の構成図である。
【図6】本発明の実施の形態を説明するための調整用フォトマスクの説明図である。
【図7】本発明の実施の形態を説明するための加工用フォトマスクの説明図である。
【図8】本発明の実施の形態を説明するための加工位置と穴径精度の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るレーザー加工装置、レーザー加工方法、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態では、液体噴射装置の一例として、非導電性を有する非水性のインク(液体)Wを利用して記録を行うインクジェットプリンタ1を例に挙げて説明する。
【0020】
まず、第1の実施の形態について、図1に基づいて説明する。
本実施形態のインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、インクWを吐出する複数のインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)2と、記録紙(被記録媒体)Pを予め決められた矢印L1方向(搬送方向)に搬送する搬送手段3と、前記搬送方向に直交する矢印L2方向(走査方向)に複数のインクジェットヘッド2を往復移動させる移動手段4とを、備えている。
【0021】
つまり、このインクジェットプリンタ1は、記録紙Pを搬送方向に搬送しながら、該搬送方向に直交する走査方向にインクジェットヘッド2を移動させて、記録紙Pに文字や画像を記録する所謂シャトルタイプのプリンタである。
なお、本実施形態では、それぞれ異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー)のインクWを吐出する4つのインクジェットヘッド2を備えている場合を例にしている。なお、これら4つのインクジェットヘッド2は、同一構成とされている。
【0022】
これら4つのインクジェットヘッド2は、略直方体形状の筐体5内に組み込まれたキャリッジ6に搭載されている。
このキャリッジ6は、複数のインクジェットヘッド2を載置する平板状の基台6aと、該基台6aから垂直に立ち上げられた壁部6bと、で構成されており、上記操作方向に沿って配置されたガイドレール7によって往復移動可能に支持されている。また、キャリッジ6は、ガイドレール7に支持された状態で一対のプーリ8に巻回された搬送ベルト9に連結されている。一対のプーリ8のうち一方のプーリ8は、モータ10の出力軸に連結されており、モータ10からの回転駆動力を受けて回転するようになっている。これにより、キャリッジ6は、走査方向に向けて往復移動できるようになっている。
即ち、これら一対のガイドレール7、一対のプーリ8、搬送ベルト9及びモータ10は、上記移動手段4として機能する。
【0023】
また、筐体5には、一対のガイドレール7と同じ走査方向に沿って一対の搬入ローラ15と、一対の搬送ローラ16とが間隔を空けて並設されている。一対の搬入ローラ15は、筐体5の背面側に設けられ、一対の搬送ローラ16は筐体5の前面側に設けられている。そして、これら一対の搬入ローラ15及び一対の搬送ローラ16は、図示しないモータによって記録紙Pを間に挟んだ状態で回転するようになっている。これにより、筐体5の背面側から前面側に向かう前記搬送方向に沿って記録紙Pを搬送することができるようになっている。
即ち、これら一対の搬入ローラ15及び一対の搬送ローラ16は、上記搬送手段3として機能する。
【0024】
図2に示すように、各インクジェットヘッド2は、図1に示すキャリッジ6の基台6aに図示しないネジを介して取り付けられる矩形状の固定板20と、該固定板20の上面に固定されたヘッドチップ21と、該ヘッドチップ21の後述するインク導入口31aにインクWを供給する供給手段22と、後述する駆動電極37に駆動電圧を印加する制御手段23と、ヘッドチップ21内のインクWの温度を検出する温度センサ50と、を主に備えている。これら各インクジェットヘッド2は、搬送手段3によって搬送された記録紙Pの表面に対して後述するノズル孔33aが対向する向きに配置されている。
【0025】
図3に示すように、ヘッドチップ21は、アクチュエータプレート30、カバープレート31、支持プレート32及びノズルプレート33で主に構成されており、アクチュエータプレート30に図示せぬ接着材を介してカバープレート31が重ね合わされているとともに、重ね合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31の端面に図示せぬ接着材を介してノズルプレート33が貼着された構成からなる
【0026】
アクチュエータプレート30は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料で形成されたプレートである。このアクチュエータプレート30のカバープレート31側の面(表面)には、図3から図6に示すように、矢印L3方向(延在方向)に延びたチャネル35が矢印L1方向(配列方向)に一定間隔をあけて並列に複数形成されている。即ち、複数のチャネル35は、側壁36によってそれぞれ区分けされた状態となっている。これらのチャネル35は、インクWが充填される断面視凹形状の吐出チャネルであり、後述するカバープレート31のインク導入口31aにそれぞれ連通されている。チャネル35の延在方向の一端(先端)は、アクチュエータプレート30の先端面(ノズルプレート33側の端面)において開口されている。一方、チャネル35の延在方向の他端部(基端部)は、アクチュエータプレート30の途中まで延びており、基端側(ノズルプレート33側の反対側)に向かうにしたがって漸次深さが浅くなっている。また、アクチュエータプレート30には、チャネル35の基端からアクチュエータプレート30の基端面(ノズルプレート33側反対側の端面)まで延びた浅溝部38が形成されている。この浅溝部38はチャネル35の延長線上に形成されており、その一端はチャネル35の内側に向けて開口され、その他端はアクチュエータプレート30の基端面(ノズルプレート33側の反対側の端面)において開口され、図示しない封止手段によって封止されている。
【0027】
上記した複数のチャネル35の側壁36には、長さ方向に亘って駆動電極37が蒸着等により形成されている。そして、チャネル35の両側面に形成された駆動電極37は、接続電極39を介して後述するフレキシブル基板27の信号線28に電気的に接続されるようになっている。
そして、駆動電極37は、駆動電圧が印加されたときに、側壁36を圧電厚み滑り効果により変形させることでチャネル35内の圧力を高め、充填されたインクWをチャネル35内から吐出させる働きをしている。
【0028】
カバープレート31は、例えばセラミックス等で形成されたプレートであり、複数の浅溝部38の基端側部分を露出させた状態で、アクチュエータプレート30の表面に接着材を介して重ね合わせて貼着されている。また、カバープレート31には、ダンパ部材22からインクWが供給されてくるインク導入口31a(液体導入口)が形成されている。このインク導入口31aは、長方形の開口であり、チャネル35の配列方向(矢印L1方向)に延在されている。
【0029】
支持プレート32は、重ね合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31を支持していると共に、ノズルプレート33を支持している。支持プレート32には、チャネル35の配列方向(矢印L1方向)に延在する嵌合孔32aが形成されており、重ね合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31をこの嵌合孔32a内に嵌め込んだ状態で両プレート30、31を支持している。この際、支持プレート32の先端側の表面は、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面と面一となっている。
【0030】
ノズルプレート33は、厚みが50μm程度のポリイミド等のフィルム材からなるシート状のプレートであり、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面と、支持プレート32の先端側の表面と、に接着材を介して貼着されている。つまり、ノズルプレート33の一方の面は、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面と、支持プレート32の先端側の表面と、に接着される接着面となっており、ノズルプレート33の他方の面は、図1に示す記録紙Pに対向する対向面となっている。なお、ノズルプレート33の対向面には、インクWの付着等を防止するための撥水性を有する撥水膜がコーティングされている。
【0031】
また、このノズルプレート33には、チャネル35の配列方向(矢印L1方向)に所定の間隔を空けて複数のノズル孔33aが形成されている。これら複数のノズル孔33aは、チャネル35に対向する位置にそれぞれ形成されており、該チャネル35に連通するようになっている。各ノズル孔33aは、外形輪郭線が円形を描くように円状に形成されている。しかも、ノズル孔33aは、接着面側から対向面側に向かうに従い漸次縮径されたテーパ孔であり、接着面側の入口径(ノズル孔33aの外形輪郭線の直径)が対向面側の出口径よりも大きくなっている。なお、ノズル孔33aは、エキシマレーザー装置等を用いて形成されている。
【0032】
上記した構成のヘッドチップ21は、図2に示すように、上述したように固定板20の上面に固定されている。この固定板20の上面には、アルミニウム等で形成された矩形状のベースプレート24が垂直に立ち上がった状態で固定されていると共に、ヘッドチップ21のインク導入口31aにインクWを供給する流路部材22aが固定されている。この流路部材22aの上方には、インクWを貯留する貯留室を内部に有する圧力緩衝器(ダンパ)22bがベースプレート24に支持された状態で配置されている。この圧力緩衝器22bと流路部材22aとは、インク連結管22cを介して連結されている。また、圧力緩衝器22bの上部には、インクWが供給されてくる供給チューブ40が取り付けられている。
このように構成されているので、供給チューブ40を介して圧力緩衝器22bにインクWが供給されると、該インクWは圧力緩衝器22b内の貯留室に一旦貯留される。そして、圧力緩衝器22bは、貯留されたインクWのうち、所定量のインクWをインク連結管22c及び流路部材22aを介してヘッドチップ21のインク導入口31aに供給するようになっている。
即ち、流路部材22a、圧力緩衝器22b及びインク連結管22cは、上記供給手段22として機能する。
【0033】
なお、供給チューブ40は、図1に示すように、筐体5内に組み込まれたインクタンク41に連結されている。これにより、インクタンク41に貯留されている色の異なるインクWが、4つのインクジェットヘッド2にそれぞれ供給されるようになっている。
【0034】
一方、上記したヘッドチップ21の近傍には、図示しない温度センサが配設されている。この温度センサは、ヘッドチップ21の温度を検出することによってヘッドチップ21内のインクWの温度を検出するものである。詳しく説明すると、温度センサは、サーミスタからなる温度センサである。サーミスタは、温度変化に対して電気抵抗が変化する抵抗体であり、例えば金属酸化物や半導体、セラミックスなどからなり、使用温度は例えばマイナス数十度〜プラス百数十度程度である。
【0035】
また、図2に示すように、上記したヘッドチップ21の上方には、ヘッドチップ21の駆動を制御する制御手段23が設けられている。この制御手段23は、上記した温度センサの検出値に基づいて決定された大きさの駆動電圧を上記した駆動電極37に印加するものである。具体的に説明すると、制御手段23は、駆動回路基板26と、その駆動回路基板26とヘッドチップ21との間に介装されたフレキシブルプリント基板27と、温度センサの検出値に基づいて駆動電圧の大きさを決定する駆動電圧値設定手段60と、を備えている。
【0036】
駆動回路基板26は、上記したベースプレート24のヘッドチップ21側の面(圧力緩衝器22bに対向する面)に重ね合わせてビス等で取り付けられている。この駆動回路基板26には、ヘッドチップ21を駆動させるための集積回路等の駆動回路25が実装されていると共に、その駆動回路25に電気的に接続された図示せぬ配線パターンが形成されている。
また、駆動電圧値設定手段60は、駆動回路基板26上に配設されている。この駆動電圧値設定手段60は、温度センサによって検出された検出値と駆動電極37に印加する電圧値(駆動電圧)との対応関係を示す駆動電圧テーブルを有しており、温度センサによって検出されたインクWの温度に対応する大きさの駆動電圧を決定するものである。この駆動電圧値設定手段60は、駆動回路基板26上に形成された図示せぬ配線パターンを介して駆動回路25に電気的に接続されており、駆動電圧値設定手段60から駆動回路25に駆動電圧の情報が伝達される。そして、駆動回路25は駆動電圧値設定手段60で決定された大きさの駆動電圧を駆動電極37に印加する。
【0037】
フレキシブルプリント基板27は、柔軟性があって大きく変形可能な薄膜状のプリント基板であり、その一端が駆動回路基板26に固定され、その他端がアクチュエータプレート30の基端部(ノズルプレート33側の反対側の端部)に固定されている。このフレキシブルプリント基板27の一方の面(ベースプレート24側の面)には、図4に示すように、駆動回路25と複数の駆動電極37とをそれぞれ電気的に接続する複数の信号線28が形成されている。この信号線28は、図4に示すように、ヘッドチップ21側から駆動回路基板26側に向かって延びた帯状の配線パターンであり、フレキシブルプリント基板27の一方の面にプリント配線されている。この信号線28の一端は、駆動回路基板26に形成された図示せぬ配線パターンに電気的に接続されている。一方、信号線28の他端は、カバープレート31の基端側に露出されたアクチュエータプレート30の浅溝部38の基端側部分に嵌合されており、それにより、接続電極39に接触して電気的に接続されている。これにより、信号線28の他端は、接続電極39を介して駆動電極37に電気的に接続されている。
【0038】
次に、上述したように構成されたインクジェットプリンタ1を利用して、記録紙Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
なお、初期状態として、4つのインクタンク41にはそれぞれ異なる色のインクWが十分に封入されているものとする。また、インクタンク41内のインクWが供給チューブ40を介して圧力緩衝器22bに供給された状態となっている。そのため、所定量のインクWが、インク連結管22c及び流路部材22aを介してヘッドチップ21のインク導入口31aに供給され、インク導入口31aからチャネル35内に充填された状態となっている。
【0039】
このような初期状態のもと、インクジェットプリンタ1を作動させると、一対の搬入ローラ15及び一対の搬送ローラ16が回転して記録紙Pを搬送方向(矢印L1方向)に向けて搬送する。また、これと同時にモータ10がプーリ8を回転させて搬送ベルト9を動かす。これにより、キャリッジ6がガイドレール7でガイドされながら走査方向(矢印L2方向)に往復移動する。
そしてこの間に、各インクジェットヘッド2のヘッドチップ21より4色のインクWを記録紙Pに適宜吐出させることで、文字や画像等の記録を行うことができる。特に、シャトル方式であるので、記録紙Pの所望する範囲に対して正確に記録を行うことができる。
【0040】
ここで、各インクジェットヘッド2の動きについて、以下に詳細に説明する。
まず、温度センサによってヘッドチップ21内のインクWの温度が検出され、その検出値が不図示の配線を介して駆動電圧値設定手段60に伝達される。詳しく説明すると、サーミスタからなる温度センサは温度に応じて電気抵抗が変化するため、例えばヘッドチップ21の近傍に配設された温度センサと駆動電圧値設定手段60との間に流れる電流値の大きさによってヘッドチップ21の温度が検出され、さらにはヘッドチップ21内のインクWの温度が検出される。
【0041】
一方、キャリッジ6によって往復移動が開始されると、駆動回路25は、フレキシブル基板27の信号線28を介して駆動電極37に駆動電圧を印加する。より詳しくは、インクWを吐出するチャネル35の両側の2つの側壁36にそれぞれ設けられている駆動電極37に駆動電圧を印加し、この2つの側壁36を、インクWを吐出させるチャネル35に隣接しているチャネル35側へ突出するように変形させる。即ち、吐出するチャネル35があたかも膨らむように変形させる。また、このとき、駆動電圧値設定手段60において、上記した駆動電圧テーブルによって温度センサの検出値に応じた大きさの駆動電圧を決定し、その駆動電圧の情報を駆動回路25に伝達し、駆動回路25は、その大きさの駆動電圧を駆動電極37に印加する。このため、上記した2つの側壁36の変形量は、インクWの温度(粘性)に対応した大きさとなる。
【0042】
上記した2つの側壁36の圧電厚み滑り効果による変形によって、吐出するチャネル35の容積が増大する。そして、チャネル35の容積が増大したことにより、インクWがインク導入口31aからチャネル35に誘導される。そして、チャネル35の内部に誘導されたインクWは圧力波となってチャネル35の内部を通過し、この圧力波がノズル33aに到達したタイミングで、駆動電極37に印加した駆動電圧をゼロにする。これにより、側壁36の変形が元に戻り、一旦増大したチャネル35の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出するチャネル35の内部の圧力が増加し、インクWが加圧される。その結果、インクWがチャネル35内から吐出される。
【0043】
なお、ここで述べている駆動電極37は、それぞれ隣接するチャネル35から選択的にインクWを吐出させるための電極として、別々に機能するように形成されている。また、インクWを安定して吐出するために、さらなるインクWの加圧が必要な場合には、側壁36を吐出するチャネル35側へ突出するように変形させる。この動作によって、吐出するチャネル35の内部の圧力がさらに増加するので、インクWをより加圧することができる。但し、この動作は上述したとおり、インクWを安定して吐出させることを目的とするものであるので、必須な動作ではなく必要に応じて適宜使用すれば良い。
また、本実施形態では、非水性のインクWを使用しているので、上述した各動作を必要に応じて組み合わせて実行することにより、最適なインクWの吐出を実現することができる。
【0044】
吐出されたインクWは、ノズル孔33aを通って外部に吐出される。しかもノズル孔33aを通過する際に、インクWは液滴状、即ちインク滴となって吐出される。その結果、上述したように、記録紙Pに文字や画像等を記録することができる。
特に、本実施形態のノズル孔33aは、断面テーパ状であるので、インク滴を速い速度で真っ直ぐに直進性良く吐出することができる。よって、高画質に記録を行うことができる。
【0045】
上記した構成のインクジェットヘッド2及びインクジェットプリンタ1によれば、温度センサによってインクWの温度を検出し、その検出値に基づいて決定された大きさの駆動電圧を駆動電極37に印加するため、インクWの吐出量を一定にすることができる。
【0046】
次に前述したノズル孔33aを形成する方法について説明する。
図5に示すように、本実施形態のレーザー加工装置100は、レーザー光80を発生するレーザー光源部50と、レーザー光80を透過し、レーザー光80のレーザー品質を調整する光学系51と、加工対象133を加工する上で所望の加工パターンに成形するためのフォトマスク52と、フォトマスクの位置を調整する位置調整機構53と、フォトマスク52によって成形されたレーザー光80を縮小し、加工対象133にレーザー光80を照射する投影レンズ54とによって形成される。
【0047】
レーザー光源部50より発生するレーザー光80は、本実施形態では、エキシマレーザーを用いる。エキシマレーザーとは希ガスやハロゲンなどの混合ガスを用いて生成されるレーザー光である。希ガスは例えば、アルゴン、クリプトン、キセノンが使用され、ハロゲンは例えばフッ素、塩素が一般に使用されている。レーザー光80の生成メカニズムについて説明すると、混合ガス中でのパルス放電によって生成する励起状態希ガス原子とハロゲン原子によって形成されるエキシマからの放射光によってパルス発振することで、レーザー光80が生成され、レーザー光源部50より照射される。
【0048】
エキシマレーザーの加工プロセスを詳細に説明すると、エキシマレーザーは、材料の分子間結合力よりも大きなエネルギーを瞬時(例えば16ナノ秒)に加工対象に吸収させ、その部位の分子間結合を断ち切り、ガス化または極微粒子化させることにより、熱影響の極めて少ない高品位加工を行うという概要である。その加工工程は、吸収工程、光化学反応工程およびアブレーション工程の3つに大別される。
【0049】
吸収工程は、多くの物質は紫外線を高効率に吸収するという自然現象を利用し、エキシマレーザーの光エネルギーを加工対象の表面から極わずかな深さ(1μm以下)に吸収させる。
【0050】
光化学反応工程では、レーザー光80が紫外波長領域であり、吸収されたエネルギーは直接、特に高分子有機材の分子間の結合を切断する。
【0051】
アブレーション工程では、分子間化学結合が切断されガス化した物質が、その体積の急激な増大、即ち膨張により居場所を失い、結果として大気中に飛散する。なおアブレーション工程では全く熱を発生しないのではなく、アブレーション工程の最下層部において熱の残留を伴い、ワークの種類によっては溶融する。
以上のような加工プロセスをもって、エキシマレーザーを用いた加工を実施し、ノズル孔33aの加工に利用する。
【0052】
図5に示す光学系51は、本実施形態において具体的にはホモジナイザーやフィールドレンズを用いて構成している。
ホモジナイザーとは、レーザー光源部50から入射したレーザー光80を、均一な強度分布を持った矩形あるいはライン状に整形して出力する光学レンズユニットである。これによって、ホモジナイザーに対する入射光を回折することにより拡散、収束させて強度分布を均一化させる。
【0053】
フィールドレンズとは、レーザー光80の発散角度を調整し、フォトマスク52以降におけるレーザー光80の指向性を調整する機能を有している。このように構成することによって、フォトマスク52の前段において、フォトマスク52に形成されたパターン形状に最適であるとともに、加工効率の最適なレーザー光80を生成することができる。
以上のような、ホモジナイザーやフィールドレンズを用いて、図5に示す光学系51を構成している。なお、本実施形態において、光学系51の形態は特に限定せず、例えば、光学系51が図示しないミラーや投影レンズを具備しても良い。
【0054】
図5に示すフォトマスク52は、調整用フォトマスク52aと、加工用フォトマスク52bによって構成されており、本実施形態における調整工程において調整用フォトマスク52aを使用し、実際にノズルプレート33にノズル孔33aを形成する場合は、加工用フォトマスク52bを使用する。
【0055】
フォトマスク52には、調整用フォトマスク52aと加工用フォトマスク52bを変更・交換する機能を有するとともに、調整用フォトマスク52aを用いるフォトマスク調整工程において得られたデータを記憶し、加工条件に最適なフォトマスクに位置を調整する機能を有するフォトマスク調整機構53が具備されている。
【0056】
また、図5に示す投影レンズ54は、フォトマスク52によって成形されたレーザー光80を縮小し、加工対象133にレーザー光80を照射する機能を有し、加工対象133にレーザー光80が照射される工程の最終段調整部となっている。
【0057】
ここで、フォトマスク調整工程について詳述する。
調整用フォトマスク52aは、図6に示すように比較的広範囲なピンホールアレイ52cによって形成されている。図6aは図5におけるX方向とY方向の加工位置における調整用フォトマスク52aの正面図であり、図6bは図6aのピンホールアレイ52cを拡大した拡大図である。
一方、加工用フォトマスク52bは、例えば図7に示すように、ノズル孔33aが形成される形状にあわせて形成されている。本実施形態における加工用フォトマスク52bは、傾斜方向に形成された3ノズルを一組としてそれが複数個セットになって形成されているものを採用した。図7aは図5におけるX方向とY方向の加工位置における加工用フォトマスク52bの正面図であり、図7bは図7aのフォトマスクを拡大した拡大図である。
【0058】
調整工程において、まず、フォトマスク調整機構53は調整用フォトマスク52aを選択し、光学系51の後段であって、投影レンズ54の前段にセットする。その後、レーザー光源部50より発生したレーザー光80は、光学系51を透過し、フォトマスク52へ到達する。その後、投影レンズ54を透過したレーザー光80は、加工対象に照射される。ただし、このときの加工対象は図示しない調整用の加工対象を設置している。
【0059】
調整用の加工対象に照射されたレーザー光80が加工した結果を図8に示す。図8は、図5に示すX方向とY方向の加工位置に関し、調整用フォトマスク52a内における加工精度の分布を示している。図8に示す領域Aと領域Bは良好な加工結果(加工精度)を有する領域であり、領域Cは精度の面で問題があるなど不良な加工結果を有する領域である。図8に示すように通常、加工精度の分布は、極めて不均一であり、良好な領域は散在している。通常、加工用フォトマスク52bのみで調整する場合、局所的にしか加工結果が得られないため、良好な領域を探すのに多大な時間を要する。これは、加工用フォトマスク52bがノズル孔33aを形成するためのマスクパターンのみで構成されているためである。これに対し、本実施形態では、図8に示すように、調整用フォトマスク52aを用いて一度に加工精度の分布が得られるため、短時間で良好な加工領域を選択することができる。
【0060】
図8のように、加工精度が良好な領域は、複数散在するが、その中でも、最もサイズの大きい領域を選択するのがよい。なぜなら、図8に加工精度の分布は、時間的に変動するものであり、サイズの小さい領域ほど、不安定であるからである。例えば、図8の場合は、加工精度良好の領域Aを選択するのがより長期間の加工精度を保つことができる。
【0061】
次に、最適な前述の領域Aに加工用フォトマスク52bのフォトマスクパターンを位置決めする。このとき、注意しなければならないのは、レーザー加工装置100の中で変更・交換してよいのは、加工対象133とフォトマスク52のみである。それ以外の部分に変更を加えてしまうと、調整工程において認識した結果が意味を持たなくなってしまうため、最善の注意を払わなければならない。
【0062】
さらに、最適な加工領域である領域Aに加工用フォトマスク52bのフォトマスクパターンを位置合わせに対し、加工条件を整える。この後、レーザー光源部50からレーザー光80が照射され、光学系51、フォトマスク52、投影レンズ54を介して、加工対象133が加工される。
【0063】
このような構成を採用することによって、加工精度におけるばらつきを最小限に抑えることができるとともに、生産効率を向上し、インクジェットヘッドのコストダウンを実現することができる。
【0064】
また、本実施形態の変形例として、フォトマスク調整機構53に加工条件を記憶することができる記憶部を搭載しても良い。このような構成を採用することによって、例えば、フォトマスク52の品番や型番などを記憶することができる。すなわち、加工する製品が少量でしかも多品種にのぼる場合は、それだけ調整作業を頻繁に行わなければならないが、加工条件を記憶することによって、対象となるフォトマスクに対応した加工条件を瞬時に設定し、加工条件を変更する時間間隔を短くすることができる。また、そのときの環境状態を記憶することでより加工精度を向上することができる。すなわち、気温や湿度などはもちろんその他の機器の設定なども記憶することができ、作業者の負荷を低減するだけでなく、生産効率をより向上することができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、上述のとおり、調整用フォトマスク52aの精度の良い領域のうち、XY方向に広い領域(図8における領域A)を採用しているため、時間的にレーザーのエネルギー品質が変化しても、加工精度を維持することができる。また、上述したようにレーザー光80の調整方法を整えたため、時間的に変化するレーザーのエネルギー品質について、長時間に渡る加工作業であったとしても、調整を短時間で実施することができる。この調整工程を単純化することで、より製造コストを低減することができる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記した各実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。 例えば、上記した各実施の形態では、液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。
【0067】
また、上記した各実施の形態では、複数のノズル孔33aが配列方向に直線状に一列に配列されているが、本発明は、複数のノズル孔33aが直線状に配列されてなく、縦方向(矢印L2方向)にずらして配列されていてもよい。例えば、複数のノズル孔33aが斜めに配列されていてもよく、或いは、千鳥状に配列されていてもよい。
また、ノズル孔33aの形状に関しても、円形に限定されるものではない。例えば、三角等の多角形状や、楕円形状や星型形状でも構わない。
【0068】
また、上記した実施の形態では、カバープレート31にインク導入口31aが形成されているが、本発明は、アクチュエータプレートにインク導入口が形成されていてもよい。例えば、アクチュエータプレートの裏面(チャネルが形成された表面の反対側の面)に配列方向に延びた断面凹状のインク導入口が形成され、このインク導入口の底面に、チャネルに連通するスリットが形成された構成であってもよい。なお、この場合、IC基板26が固定されたベースプレート20とダンパ部材22,122との位置を入れ換えて、ダンパ部材22,122をアクチュエータプレートに重ね合わせるように配設すると共に、ベースプレート20をカバープレート31に重ね合わせるように配置すればよい。
【0069】
また、上記した実施の形態では、非水性のインクWを利用した場合を説明したが、例えば、導電性の水性インク、ソルベントインク、オイルインクやUVインク等を用いても構わない。
なお、水性インクを用いる場合には、ヘッドチップは次にように構成すれば良い。
即ち、アクチュエータプレートには、インクが充填される吐出チャネルとして機能する吐出チャネルと、インクが充填されないダミーチャネルとして機能するダミーチャネルと、が配列方向に交互に形成される。そして、インク導入口の底面には、吐出チャネルに対向する位置にスリットを形成する。これにより、インク導入口からスリットを通って吐出チャネルにだけインクが充填される。そして、ノズルプレートには、吐出チャネルに対向する位置にノズル孔が形成される。
このようにヘッドチップ21を構成することで、水性のインクであっても、吐出チャネルに設けられた駆動電極と、ダミーチャネルに設けられた駆動電極とをインクを介して導通させることなく、電気的に切り離した状態で使い分けることができる。従って、水性のインクを利用して記録を行うことができる。
特に、導電性を有するインクであっても問題なく利用できるので、インクジェットプリンタの付加価値を高めることができる。なお、その他は同様の作用効果を奏することができる。
【0070】
また、上記した実施の形態では、温度センサとしてサーミスタが用いられているが、本発明は、他の温度センサを用いることも可能である。例えば、温度センサとして熱電対などを用いることも可能である。
【0071】
また、上記した実施の形態では、駆動電圧値設定手段60が駆動回路基板26上に配設されているが、本発明は、上記構成に限定されるものではない。例えば、インクジェットプリンタ1の図示せぬ制御部に駆動電圧値設定手段60が配設されていてもよい。この場合、フレキシブルプリント基板27上の接続配線29と駆動電圧値設定手段60、及び、駆動回路25と駆動電圧値設定手段60は、駆動回路基板26と上記した制御部とを接続する配線を介してそれぞれ電気的に接続される。
【0072】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 インクジェットプリンタ(液体噴射装置)
2 インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
3 搬送手段
4 移動手段
21 ヘッドチップ
23 制御手段
25 駆動回路
26 駆動回路基板
27 フレキシブルプリント基板
33a ノズル孔
35 チャネル
36 側壁
37 駆動電極
50 レーザー光源部
51 光学系
52 フォトマスク
53 フォトマスク調整機構
54 投影レンズ
60 駆動電圧値設定手段
P 記録紙(被記録媒体)
W インク(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を発生するレーザー光源部と、前記レーザー光を透過しレーザー品質を調整する光学系と、加工対象を加工する上で所望の加工パターンに成形するためのフォトマスクと、前記フォトマスクによって成形されたレーザー光を縮小し前記加工対象にレーザー光を照射する投影レンズとを有するレーザー加工装置において、
前記フォトマスクの設置位置を制御することができるフォトマスク調整機構を具備することを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
前記フォトマスク調整機構は、加工データを記憶する記憶部を具備することを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
前記フォトマスク調整機構は、調整工程における加工精度を確認するための調整用フォトマスクと、本番工程における加工用フォトマスクを具備することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記加工データは、前記フォトマスクの設置位置データと、前記加工対象の加工結果データを含むことを特徴とする請求項2に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記調整用フォトマスクの全域における前記加工対象の加工結果データを記憶することができることを特徴とする請求項3に記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載されたレーザー加工装置によって形成されたノズル孔を有するノズルプレートと、液体を被記録媒体へ吐出する液体吐出部と、液体タンクから液体を供給されるとともに前記液体吐出部へ液体を供給する液体供給部と、を具備する液体噴射ヘッド。
【請求項7】
被記録媒体を予め決められた搬送方向に搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送された被記録媒体の表面に対してノズル孔が対向する向きに配置された請求項6に記載の液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを前記搬送方向に直交する方向に前記被記録媒体に沿って往復移動させる移動手段と、液体を貯留する液体タンクと、前記液体タンクから前記液体噴射ヘッドへ液体を供給する液体供給部と、を具備することを特徴とする液体噴射記録装置。
【請求項8】
レーザー加工装置において、レーザー光源部からレーザー光を出力し、該レーザー光の品質を調整する光学系、マスクパターンが形成されている調整用フォトマスク、および該レーザー光を縮小し透過する投影レンズを介して、調整用の加工対象に該レーザー光を照射する調整工程と、
前記フォトマスクの位置を調整するフォトマスク調整機構に、前記調整工程において加工された加工対象の加工結果データを連絡するデータ連絡工程と、
前記フォトマスク調整機構が有する記憶部に前記調整工程における加工条件と前記加工結果を記憶するデータ記憶工程と、
前記データ記憶工程においてフォトマスクの最適設置位置と、光学系における最適パラメータを選定する選定工程と、
前記調整用フォトマスクを加工用フォトマスクに変更し、前記最適設置位置にフォトマスクを設置する設置工程と、
を備えたことを特徴とするレーザー加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−172905(P2010−172905A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15312(P2009−15312)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】