説明

レーザー加工装置

【課題】レーザー加工装置において、レーザー照射手段のレンズ保護カバーの汚れを適正に検出する。
【解決手段】チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー照射手段によってレーザー加工を行うレーザー加工装置において、レーザー照射手段はレーザー光線を集光する集光器31を備え、集光器31は対物レンズ320と対物レンズ320と被加工物との間に配設され被加工物から飛散するデブリを遮断して対物レンズ320の汚染を防止するレンズ保護カバー342とを備え、集光器31に対向して撮像手段7が配設されてレンズ保護カバー342の汚れを検出するため、レンズ保護カバー342を集光器31から取り外さなくてもレンズ保護カバー342の汚れを確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー照射によって被加工物を加工するレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されて表面に形成されたウェーハは、分割予定ラインに沿って切断することにより個々のデバイスに形成され、各種電子機器等に利用されている。分割予定ラインの切断には、例えばレーザー加工装置を用いることができる。
【0003】
レーザー加工装置としては、被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物に対してレーザー光線を照射して加工を施すレーザー照射手段と、チャックテーブルとレーザー照射手段とを相対的に加工送りする加工送り手段とを備えた構成のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、加工によって飛散した飛沫が撮像手段を構成する対物レンズに付着すると、高価な対物レンズを交換しなければならず、ランニングコストが高額になることから、被加工物と対物レンズとの間にレンズ保護カバーを配設して対物レンズに飛沫が付着しないように構成した装置も開発され、本出願人によって特許出願されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−69249号公報
【特許文献2】特開2009−38181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザー加工装置においては、加工によって被加工物からデブリが飛散するため、そのデブリが、レーザー照射手段において対物レンズを保護するレンズ保護カバーに付着しうる。しかし、デブリがレンズ保護カバーに付着したか否かを確認するためには、レンズ保護カバーを定期的に集光器から取り外さなければならず、レンズ保護カバーの管理が煩わしいという問題がある。
【0007】
また、レンズ保護カバーにデブリが付着していてもレーザー光線の集光経路にデブリが付着していなければレンズ保護カバーの交換は不要であるにもかかわらず、レンズ保護カバーの交換を要するか否かの判断をオペレータが適切に行うことができないために、無駄にレンズ保護カバーを交換してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、レーザー加工装置において、レーザー照射手段のレンズ保護カバーの汚れを適正に検出できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射して加工を施すレーザー照射手段と、チャックテーブルとレーザー照射手段とを相対的に加工送りする加工送り手段とから少なくとも構成されたレーザー加工装置に関するもので、レーザー照射手段は、レーザー光線を発振する発振器と、発振器が発振したレーザー光線を集光する集光器とを備え、集光器は、レーザー光線を被加工物に集光する対物レンズと、対物レンズと被加工物との間に配設され被加工物から飛散するデブリを遮断して対物レンズの汚染を防止するレンズ保護カバーとを備え、集光器に対向して撮像手段が配設され、レンズ保護カバーの汚れを検出する。
【0010】
上記レーザー加工装置において、撮像手段は、汚れのないレンズ保護カバーを撮像して画像を記憶する第一の記憶手段と、レンズ保護カバーを定期的に撮像して画像を記憶する第二の記憶手段と、第一の記憶手段と第二の記憶手段とに記憶された画像を比較して相違部分が許容値を超えた際にレンズ保護カバーの交換を知らせる判断部とから構成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、集光器に対向する位置に撮像手段を配設してレンズ保護カバーの汚れを検出できるようにしたため、レンズ保護カバーを集光器から取り外さなくてもレンズ保護カバーの汚れを確認することができる。
【0012】
また、撮像手段が、汚れのないレンズ保護カバーを撮像して画像を記憶する第一の記憶手段と、レンズ保護カバーを定期的に撮像して画像を記憶する第二の記憶手段と、第一の記憶手段と第二の記憶手段とに記憶された画像を比較して相違部分が許容値を超えた際にレンズ保護カバーの交換を知らせる判断部とを備えていることにより、レンズ保護カバーを無駄に交換してしまうという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】レーザー加工装置の一例を示す斜視図である。
【図2】集光器を略示的に示す断面図である。
【図3】レンズ保護カバー及びその支持機構を略示的に示す断面図である。
【図4】集光器に対向する位置に配設された撮像手段を示す説明図である。
【図5】被加工物をレーザー加工する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すレーザー加工装置1は、チャックテーブル2に保持された被加工物に対してレーザー照射手段3によってレーザー加工を施す装置であり、チャックテーブル2は、加工送り手段4によって加工送り方向(X軸方向)に加工送り可能に支持されているとともに、割り出し送り手段5によってX軸方向に対して水平方向に直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に支持されている。
【0015】
加工送り手段4は、X軸方向の軸心を有するボールネジ40と、ボールネジ40と平行に配設された一対のガイドレール41と、ボールネジ40の一端に連結されたモータ42と、図示しない内部のナットがボールネジ40に螺合すると共に下部がガイドレール41に摺接するスライド部43とから構成されている。この加工送り手段4は、モータ42に駆動されてボールネジ40が回動するのに伴い、スライド部43がガイドレール41上をX軸方向に摺動してチャックテーブル2及び割り出し送り手段5をX軸方向に移動させる構成となっている。
【0016】
割り出し送り手段5は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ50と、ボールネジ50に平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50の一端に連結されたモータ52と、図示しない内部のナットがボールネジ50に螺合すると共に下部がガイドレール51に摺接する基台53とから構成されている。この割り出し送り手段5は、モータ52に駆動されてボールネジ50が回動するのに伴い、基台53がガイドレール51上をY軸方向に摺動してチャックテーブル2をY軸方向に移動させる構成となっている。
【0017】
チャックテーブル2の加工送り方向の移動経路の上方には、チャックテーブル2に保持された被加工物に対してレーザー光線を照射するレーザー照射手段3と、被加工物の加工すべき位置を検出するアライメント手段6が配設されている。アライメント手段6には、被加工物を撮像するカメラ60を備えている。
【0018】
レーザー照射手段3は、レーザー光線を発振する発振器30と、発振器30が発振したレーザー光線を集光する集光器31とを備えている。
【0019】
図2に示すように、集光器31の下端には対物レンズケース32を備えている。対物レンズケース32は、レーザー光線の光路上に配設され、レーザー光線を被加工物に集光する対物レンズ320を保持している。
【0020】
対物レンズケース32は、カバー部材33によって覆われている。カバー部材33の下部には、レーザー加工により生じるデブリが対物レンズ320に付着するのを防止するための遮蔽部34が配設されている。
【0021】
カバー部材33の側部には、エアを流入させるエア導入部330が形成されている。エア導入部330は、対物レンズケース32とカバー部材33の内周との間に形成された空間であるエアチャンバ331に連通している。
【0022】
図3に示すように、遮蔽部34は、環状枠体340と、外周部が環状の保持部341によって保持されたレンズ保護カバー342とを備えている。レンズ保護カバー342は、例えばガラス板で形成され、レーザー加工時に対物レンズ320と被加工物との間に位置するように配設されており、被加工物から飛散するデブリを遮断して対物レンズ320が汚染されるのを防止する役割を果たす。
【0023】
環状枠体340には、レンズ保護カバー342の下面に沿ってエアを噴出するための細孔340aが周方向に所定の間隔をおいて複数設けられている。細孔340aは、レンズ保護カバー342の外周側に形成されたエア流通路340bに連通している。エア流通路340bは、図2に示したエアチャンバ331に連通している。細孔340aからエアを噴出することによりエアカーテンを形成することができる。
【0024】
図1に示すように、加工送り手段4を構成するスライド部43には、撮像手段7が配設されている。図4に示すように、撮像手段7は、集光器31に対向しレンズ保護カバー342を撮像しうる位置に配設されている。
【0025】
撮像手段7は、カメラ部70と、メモリなどの記憶素子からなる第一の記憶手段71及び第二の記憶手段72とを備えている。第一の記憶手段71及び第二の記憶手段72は、カメラ部70が取得した画像情報を記憶する機能を有する。第一の記憶手段71及び第二の記憶手段72は、CPUなどにより構成され判断機能を有する判断部73に接続されており、判断部73は、第一の記憶手段71に記憶された画像情報と第二の記憶手段72に記憶された画像情報とを比較して相違部分を抽出することにより、レンズ保護カバー342の汚れを検出することができる。また、カメラ部70が取得した画像は、モニター8に表示させることができる。
【0026】
図1に示したレーザー加工装置1を用いて被加工物Wをレーザー加工する場合は、被加工物WがテープTに貼着されてリング状のフレームFに支持され、チャックテーブル2において保持される。そして、割り出し送り手段5によって駆動されてY軸方向に移動し、加工すべき分割予定ラインと集光器31とのY軸方向の位置をあわせた後、加工送り手段4によって駆動されてチャックテーブル2がX軸方向に移動するとともに、図5に示すように、集光器31からレーザー光線35が被加工物Wに照射され、分割予定ラインLがアブレーション加工され、溝Gが形成される。例えば以下の条件にて加工を行う。
(ア) レーザーの種類 :YVO4、YAGレーザー、
(イ) 波長 :355[nm](紫外光)
(ウ) 出力 :4[W]
(エ) 集光スポット径 :φ10[μm]
(オ) 繰り返し周波数 :50[kHz]
(カ) 加工送り速度 :100[mm/s]
【0027】
アブレーション加工を行うと、被加工物からデブリと呼ばれる加工屑が噴出する。このデブリは飛散するが、図2及び図3に示したように、集光器31には、レンズ保護カバー342を備えているため、対物レンズ320にデブリが付着するのを防止することができる。
【0028】
一方、加工中は、図3に示した細孔340aからエアを噴出してエアカーテンを形成しても、図4においてモニター8に表示されているように、レンズ保護カバー342にはデブリ90、91が付着しうる。
【0029】
このデブリ90、91は、撮像手段7によってレンズ保護カバー342を撮像することにより検出することができる。オペレータは、モニター8に表示されたデブリ90、91を確認することができるため、レンズ保護カバー342を集光器31から取り外さなくても、レンズ保護カバー342の汚れを確認することができ、適切なタイミングでレンズ保護カバー342を交換することができる。
【0030】
また、レーザー加工の開始前、すなわちデブリが飛散せず汚れのない状態のレンズ保護カバー342をあらかじめ撮像してその画像情報を第一の記憶手段71に記憶させておき、レーザー加工中は、レンズ保護カバー342を定期的に撮像して取得した画像情報を第二の記憶手段72に記憶させ、判断部73において第一の記憶手段71と第二の記憶手段72とに記憶された画像とを逐次比較する。そして、相違部分が許容値を超えた際に警報音を発したり警告画面をモニター8に表示させたりすることで、レンズ保護カバー342を交換すべきタイミングをオペレータに知らせることができる。このようにして、レンズ保護カバー342を無駄に交換してしまうのを防止することができる。
【0031】
図4においてモニター8に示されているように、レンズ保護カバー342の中心部はレーザー光線の集光経路342aとなっているため、集光経路342aにデブリ91が付着していると、レーザー光線にとっての障害物となり、分割予定ラインに対する均等な照射ができなくなる。すなわち、集光経路342a以外の領域にデブリ90が付着していても、集光経路342aにデブリが付着していなければ、レンズ保護カバー342の交換は不要となる。
【0032】
そこで、判断部73は、第一の記憶手段71に記憶された汚れのない状態のレンズ保護カバー342の画像情報と逐次取得して第二の記憶手段72に記憶された画像情報とを比較し、集光経路342aに付着したデブリを画像処理によって検出した時には、警報音を発したり警告画面をモニター8に表示させたりしてレンズ保護カバー342を交換すべき旨をオペレータに知らせる。そして、オペレータがレンズ保護カバー342を交換することで、レーザー照射を適切に行うことが可能となる。
【0033】
なお、図1に示した例では、撮像手段7がスライド部43に固定された状態となっているが、撮像手段7は、レンズ保護カバー342の汚れを検出できる位置であれば、図示の位置以外にも配設することができる。
【符号の説明】
【0034】
1:レーザー加工装置
2:チャックテーブル
3:レーザー照射手段
30:発振器 31:集光器
32:対物レンズケース 320:対物レンズ
33:カバー部材 330:エア導入部 331:エアチャンバ
34:遮蔽部
340:環状枠体 340a:細孔 340b:エア流通路
341:保持部
342:レンズ保護カバー 342a:集光経路
4:加工送り手段
40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:モータ 43:スライド部
5:割り出し送り手段
50:ボールネジ 51:ガイドレール 52:モータ 53:基台
6:アライメント手段 60:カメラ
7:撮像手段
70:カメラ部 71:第一の記憶手段 72:第二の記憶手段
73:判断部
8:モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射して加工を施すレーザー照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー照射手段とを相対的に加工送りする加工送り手段と、から少なくとも構成されたレーザー加工装置であって、
該レーザー照射手段は、レーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したレーザー光線を集光する集光器とを備え、
該集光器は、レーザー光線を被加工物に集光する対物レンズと、該対物レンズと被加工物との間に配設され該被加工物から飛散するデブリを遮断して該対物レンズの汚染を防止するレンズ保護カバーとを備え、
該集光器に対向して撮像手段が配設され、該レンズ保護カバーの汚れを検出する
レーザー加工装置。
【請求項2】
前記撮像手段は、汚れのない前記レンズ保護カバーを撮像して画像を記憶する第一の記憶手段と、該レンズ保護カバーを定期的に撮像して画像を記憶する第二の記憶手段と、該第一の記憶手段と該第二の記憶手段とに記憶された画像を比較して相違部分が許容値を超えた際に該レンズ保護カバーの交換を知らせる判断部と、
から構成される請求項1に記載のレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−179642(P2012−179642A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44913(P2011−44913)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】