説明

レーザ光照射装置

【課題】単な構成で、血管拡張作用の高い波長の光を病巣部である皮下の治療目的部位に対して照射することができるレーザ照射装置を提供する。
【解決手段】光ファイバ部110内において軸方向に沿って一定の間隔で配列されており、光ファイバ部110内を進むレーザ光を分散させつつ透過させる複数の分散体300a〜300eを有し、複数の分散体300a〜300eが配列された部分の光ファイバ110の側面を光照射口114として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を生体表面に向かって照射するレーザ光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ペインクリニックおよび整形外科の領域において低反応レベルレーザ治療器および直線偏光赤外線治療器などの光線療法機器が用いられている。たとえば、レーザ光を治療目的部位に照射する装置(特許文献1)、および単色光を治療目的部位に照射する装置(特許文献2)などの光線療法機器が提案されている。
【0003】
一般に、これらの光線療法機器は、生体表面上から光を照射することにより、「こり」および「痛み」を緩和するものである。このような光線療法機器を用いた光線治療の作用としては、一般的に神経伝達遮断作用が知られているが、さらに、近年では、循環改善による痛み関連物質(ブラジキニン、ヒスタミン、およびプロスタグランジンなど)および疲労関連物質(乳酸など)の拡散除去作用も重要視されている。特に、光の照射によって循環改善が生じる機構として、光に起因する血管平滑筋の直接的な弛緩効果が着目されている。また、光による血管平滑筋の弛緩に一酸化窒素(NO)の産生が関与していることも明らかにされてきている。
【0004】
このような血管拡張による循環改善は、照射する光の波長帯に依存すると考えられている。一般の光線療法機器では、波長810〜830nmのレーザ光または波長600nm〜1600nm(ピーク波長1000nm)の直線偏光近赤外線が用いられてきた。しかしながら、いくつかの研究によれば、血管拡張による循環改善作用は、短波長側でより大きいことが報告されている。特に、特許文献1〜3によれば、可視波長域532nm前後の光が血管を強く弛緩させる旨が報告されている。
【0005】
このように、短波長領域の光を使った新しい光線療法機器は十分な効果が期待されるが、短波長であるがゆえに光の組織深達性(生体組織内での光の透過性)が低いという問題がある。このような組織深達性が低い光を皮下にある病巣まで十分に到達させようとすると、比較的高い出力エネルギーの光を照射せねばならず、生体表面表層部を損傷させてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、この問題を解決するために、複数のレーザ光、レンズ、および反射鏡を組合せ、あるいはレーザ光を回転移動させつつ照射することによって、生体表面照射面のエネルギーを分散させて生体表面に損傷を与えないようにしつつ、皮下に集光させる技術が提案されている(特許文献3〜5)。
【0007】
しかしながら、上記特許文献3〜5に記載の光照射技術によれば、複数の光学部品、または駆動機構が必要となり、装置構成が複雑になってしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2001−187157号公報
【特許文献2】特開2001−212250号公報
【特許文献3】特開2004−329473号公報
【特許文献4】特開2004−329474号公報
【特許文献5】特開2004−329475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、レンズや反射鏡、および駆動機構を使わない簡単な構成で、血管拡張作用の高い波長の光を病巣部である皮下の治療目的部位に対して照射することができるレーザ照射装置を提供することである。
【0009】
特に、本発明は、簡単な構成で、生体表面を障害させることなく皮下の治療目的部位に十分な光を供給することができ、さらに、皮下内部を適度に温めることができるレーザ照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、下記する手段により達成される。
【0011】
本発明のレーザ光照射装置は、生体に対してレーザ光を照射するレーザ光照射装置であって、硬質性の光ファイバを備えるプローブと、前記光ファイバ内において軸方向に沿って一定の間隔で配列されており、光ファイバ内を進むレーザ光を分散させつつ透過させる複数の分散体と、を有し、前記複数の分散体が配列された部分の前記光ファイバの側面を光照射口として用いて、当該光照射口を生体表面に接触させた状態で、各分散体によって分散されて前記光照射口から放射される各レーザ光が皮下で重ね合わされて強められることを特徴とする。
【0012】
上記の各分散体は、レーザ光を散乱させるものであり、各分散体によって散乱された各レーザ光の位相が互いに揃う箇所でレーザ光が強められる。
【0013】
上記の各分散体は、レーザ光を1点に集めるように反射させるものである。
【0014】
上記のレーザ光照射装置は、さらに、前記照射口の周辺に設けられた接触センサと、前記接触センサが接触を感知している場合にのみ、レーザ光が照射されるように制御する制御部と、を有する。
【0015】
上記のレーザ光は、光効果および温熱効果により、皮下の循環改善、細胞の活性化、およびアポトーシスの誘導を行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光照射装置によれば、レンズや鏡を使わずに、レーザ光を光ファイバ内に配列された分散体で分散させるので、簡単な構成で、血管拡張作用の高い波長の光を病巣部である皮下の治療目的部位に対して照射することができる。特に、簡単な構成で、生体表面を障害させることなく皮下の治療目的部位に十分な光を供給することができ、さらに、皮下内部を適度に温めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。本実施の形態の光照射装置は、光ファイバ部自体を加工して光ファイバ部内に複数の分散体を形成し、これら複数の分散体で分散させた各レーザ光を側面から放射するように構成される。以下、図面を参照しつつ、本実施の形態の光照射装置を説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態の光照射装置の概略構成について説明する図である。
【0019】
本実施の形態の光照射装置1は、光ファイバ部110を備えるプローブ100と、光ファイバ部110内を進むレーザ光を分散させつつ透過させる複数の分散体300a〜300e(以下、分散体300と総称する)と、を有する。複数の分散体300は、光ファイバ部110内において軸方向に沿って一定の間隔で配列されており、各分散体300によって分散されたレーザ光が皮下で重ね合わされる。
【0020】
図1に示されるとおり、光照射装置1は、プローブ100と、プローブ100が接続される制御部200とを有する。制御部200は、光照射装置1の制御を行うものである。たとえば、制御部200には、光の照射条件を設定し、照射の開始を指示するための操作部202と、種々の表示を行う表示パネル204とが設けられている。
【0021】
一方、プローブ100は、レーザ光を照射するものであり、光ファイバ部110と、その光ファイバ部110が取り付けられる基体部120と、プローブ100の生体表面接触面に設けられる接触センサ(タッチセンサ)130とを有する。
【0022】
基体部120内には、光ファイバ部110へレーザ光を供給するためのレーザ光源121が設けられている。レーザ光源121で発生したレーザ光は、図示していない光学系に導かれて光ファイバ部110に供給される。
【0023】
レーザ光源121で発生するレーザ光は、好ましくは、可視光または紫外線であり、より好ましくは、レーザ光の波長は、波長450〜650nmである。このような波長領域のレーザ光を用いることによって、後述する光効果および温熱効果が発揮しやすくなる。レーザ光源121としては、たとえば、半導体レーザ素子やNdドープYVO結晶などの固体レーザ素子を用いることができる。なお、本実施の形態と異なり、レーザ光源121を基体部120の外部、たとえば制御部200内に配置する構成を採用してもよい。
【0024】
以上のようにレーザ光が進行する光ファイバ部110は硬質性の光ファイバであり、たとえば、SiO(石英ガラス)系光ファイバまたはプラスチック光ファイバを用いて構成される。光ファイバ部110は、たとえば、中心軸に位置してレーザ光が通過するコア111と、それを取り囲むクラッド112と、を含む二層構造で成り立っている。さらに、クラッド112の外側には、被覆部113が設けられている。たとえば、被覆部113は、一般的な光ファイバの場合と同様に、光ファイバ部の強度を高めるための1次被覆と、取扱性を高めるための2次被覆とからなる。また、被覆部113の外側にさらに筐体(不図示)が設けられていてもよい。
【0025】
本実施の形態では、コア111および/またはクラッド112において、軸方向に沿って一定の間隔で形成された複数の分散体300、すなわち、分散体300a,300b、300c、300d、および300eを有する。なお、図1では、例示的かつ模式的に、5つの分散体300が示されている。
【0026】
複数の分散体300は、光ファイバ部110のコア111内を進むレーザ光を分散させつつ、透過させるものである。すなわち、各分散体300をレーザ光が通過するたびに、このレーザ光の一部分が分散し、レーザ光の他部分が通過する。本実施の形態では、分散体300は、レーザ光を散乱させる散乱体である。複数の分散体300は、光ファイバ部110の通常の部分(分散体以外の他の部分)に比べて屈折率が変化しているものであればよく、たとえば、溝部、凸部、グレーティング(格子)、傷部、または切り込み部で構成される。これらの複数の分散体300は、半導体微細加工技術などを用いて、クラッド112を加工することによって得られる。また、分散体300の形成のためには、必要に応じて、コア111も加工される。
【0027】
たとえば、複数の分散体300として溝部を採用する場合には、以下のような方法により溝部を形成することができる。まず、治具を用いて光ファイバ部111を位置決め固定した上で、光ファイバ部111の表面をフォトレジスト層で被覆する。次いで、フォトリソグラフィーを用いて、光ファイバ部111の軸方向に沿って配列される複数の開口をフォトレジスト層に形成する。そして、複数の開口が形成されたフォトレジスト層をマスクとして用いて、ドライエッチングすることで、開口に対応した部分の光ファイバ部111が選択的にエッチングされる。この結果、図1に示されるように、軸方向に沿って一定の間隔で配列された複数の分散体300として機能する複数の溝部を形成することができる。特に、このような方法で複数の分散体300を形成する場合には、図1に示されるとおり、光ファイバ部111の中心軸から偏って分散体300を設けることができる(図1では、上方向に偏っている)。このように、光ファイバ部111の中心軸から偏って分散体300を形成することによって、対象部位である生体表面側に散乱される光を増やすことが可能となる。
【0028】
また、光ファイバを用いたブラッグ回折格子を製造する際に用いられている方法を用いて、分散体300を形成することもできる。この場合、たとえば、SiO系光ファイバ部110のコア111またはクラッド112に予め感光性成分としてGeO(酸化ゲルマニウム)などを添加しておき、これに例えば紫外光など所定波長の光を照射させて、その光エネルギー強度分布などに応じた屈折率変化パターンを形成してもよい。このような方法を用いて製造されたグレーティング(回折格子)を分散体300として用いることもできる。この場合も、紫外光などの光を照射する箇所および/または方向を制御することによって、光ファイバ部111の中心軸から偏って分散体300を形成したり、中心軸に対して分散体300の面(反射面)を傾けて形成したりすることもできる。
【0029】
このような分散体300間の間隔dは、治療目的部位で光の位相が一致して強め合うように決定されている。図2は、複数の分散体によって分散されたレーザ光が皮下の集光点で強め合う作用を説明するための図である。図2(a)は、光ファイバ部110内を進行中の光が、光ファイバ部に形成された溝によって、部分的に散乱される状態を示している。また、図2(b)では、分散されたレーザ光が皮下の集光点で強め合う作用を説明するための図である。ここでは、説明の簡略化のため、2つの分散体300a,300bがある場合について説明する。
【0030】
図2(b)中において、集光点をAとし、集光点Aから光ファイバ部110(より正確には、分散体300を含む面)に直角に下ろした点(集光点Aの光ファイバ110への投影点)をBとする。また、図2(b)中において、隣接する分散体300a,300b間の間隔をdとし、光ファイバ部110(より正確には、分散体300を含む面)から集光点Aまでの距離をhとし、分散体300aと上記の投影点Bとの間において光ファイバ110の軸方向に沿った距離をxとし、分散体300aおよび300bから集光点Aまでの距離をそれぞれRおよびR’とする。
【0031】
図2(b)に示される場合、分散した光が集光点Aで強めあうようにするためには、以下の式(1)の関係を満たすように、隣接する分散体300間の間隔dが決定されることが可能である。すなわち、分散した光が集光点Aで強めあうようにするためには、隣接する分散体300a,300bを経由して集光点Aに至るまでの光路差が波長の整数倍となればよい。この結果、光ファイバ部110から距離hの地点で位相が一致して、レーザ光を強めあうことができる。ここで、λは波長であり、nは、正の整数である。
【0032】
【数1】

【0033】
ここで、図2(b)から、以下の式(2)および式(3)が成り立つ。
【0034】
【数2】

【0035】
したがって、式(2)および式(3)を上記の式(1)に代入することによって、以下の式(4)が得られる。
【0036】
【数3】

【0037】
そして、式(4)を変形することによって、式(5)が得られる。
【0038】
【数4】

【0039】
したがって、上記式(5)が成立するような間隔dを持った複数の分散体300を形成することによって、光ファイバ部110からの距離がhの集光点Aにおいて位相が一致して、光が強め合うように構成することができる。
【0040】
なお、光ファイバ部110内でのレーザ光の進行につれて光が散乱されるため、先端に向かって光ファイバ部110が細くなるように構成することもできる。
【0041】
以上のように、複数の分散体300について説明したが、複数の分散体300が設けられている部分では、図1に示されるとおり、光ファイバ部110の側面の被覆部113が取り除かれており、光照射口114を形成している。また、光照射口114の部分では、被覆部113が取り除かれるのみならず、分散されたレーザ光が外部へ照射されやすくするために、光ファイバ部110のクラッド112が平面形状などに加工されていてもよい。
【0042】
また、図1に示されるとおり、光ファイバ部111の中心軸から偏って分散体300が形成されている場合には、当該中心軸を基準として当該分散体300の反対側(図1中の下側)における側面の被腹部113が取り除かれて光照射口114が形成されることが望ましい。なお、図1に示されるとおり、光照射口114は、光ファイバ部110の軸方向に沿って、複数の分散体300が配置されている配置範囲と重複する範囲、または当該配置範囲よりも光ファイバ部110の端部側にずれた範囲に形成することができる。
【0043】
また、上記の光照射口114の周辺には、上述した接触センサ(タッチセンサ)130が設けられている。接触センサ130の構成自体は、従来の接触センサと同様であるので、詳しい説明を省略する。接触センサ130は、接触を感知するセンサであり、接触の感知結果は、不図示の信号線を介して上記制御部200へ入力される。この結果、制御部200は、接触センサ130が接触を感知している場合にのみ、レーザ光が照射される一方、利用者から照射が指示されている場合であっても、接触センサ130が接触を感知していない場合には、照射しないように制御できる。
【0044】
以上のように構成される本実施の形態の光照射装置1は、以下のように処理を実行する。
【0045】
まず、光ファイバ部110の側面の光照射口114が生体表面に接触されている状態で、操作部利用者によって照射開示の指示がなされる。
【0046】
制御部200は、接触センサ130が生体との接触を感知しているか否かを判断し、接触センサ130が生体との接触を感知している場合に限って、光源121からレーザ光を出力させる。
【0047】
出力されたレーザ光は、光ファイバ部110内のコア111内を進行し、各分散体300において、一部は、生体表面側に分岐しつつ、残りは透過する。複数の分散体300によって生体方向に向かって散乱されたレーザは、光照射口114からそれぞれ放射される。そして、光照射口114から放射された各レーザ光は、皮下の集光点Aにおいて重ね合わされて強められる。
【0048】
したがって、このように供給されたレーザ光を複数の分散体300によって複数にレーザ光を分岐して照射し、分岐したレーザ光を再び皮下の集光点Aで集めることによって、生体表面に損傷を与えないようにしつつ、皮下に集光させることができる。
【0049】
なお、本実施の形態の光照射装置1は、皮下深部の病巣を目的部位とする場合に好適に用いられる。特に、熱によって間接的に引き起こされるのではなく特定の波長の光による直接的な効果(光効果)によって、皮下の循環改善を行うことができる。具体的には、筋・筋膜性の腰痛、肩こり、狭心症、裾創、閉塞性動脈硬化症(arteriosclerotic obliterans:ASO)、閉塞性動脈炎(パージャー病 thromboangitis obliterans:TAO)、糖尿病性動脈閉塞などの循環不全を伴う幅広い疾病に有用である。さらに、温熱効果によって、皮下深部の細胞の活性化、およびアポトーシスの誘導を行うことができる。
【0050】
以上のように説明した本実施の形態の光照射装置1によれば、光ファイバ部110内において軸方向に沿って一定の間隔で配列されており光ファイバ部110内を進むレーザ光を分散させつつ透過させる複数の分散体300を有し、複数の分散体300が配列された部分の前記光ファイバの側面を光照射口114として用いて、光照射口114を生体表面に接触させた状態で、各分散体によって分散されて前記光照射口114から放射される各レーザ光が皮下で重ね合わされて強められる。したがって、レンズや反射鏡、および駆動機構を使わない簡単な構成で、血管拡張作用の高い波長の光を病巣部である皮下深部の目的部位に対して照射することができる。特に、簡単な構成で、生体表面を障害させることなく皮下の目的部位に十分な光を供給することができ、さらに、皮下内部を適度に温めることができる。
【0051】
また、本実施の形態の光照射装置1によれば、各分散体300は、図2(a)に示されるようにレーザ光を散乱させるものであり、各分散体300によって散乱された各レーザ光の位相が互いに揃う箇所でレーザ光が強めることができる。
【0052】
さらに、照射口114の周辺に設けられた接触センサ130が設けられており、接触センサ130が接触を感知している場合にのみ、レーザ光が照射されるように制御する制御部200を有するので、照射口114が生体表面から離れている場合にレーザ光が照射されることを防止し、本装置の取扱者および患者がレーザ光を直視することが防止でき、この点においても安全性を高めることができる。
【0053】
また、本実施の形態の照射装置1によれば、光効果および温熱効果により、皮下の循環改善、細胞の活性化、およびアポトーシスの誘導を行うことができる波長領域のレーザ光を用いるので、筋・筋膜性の腰痛、肩こり、狭心症、裾創、閉塞性動脈硬化症、閉塞性動脈炎、糖尿病性動脈閉塞などの循環不全を伴う幅広い疾病に有用であるのみならず、さらに、温熱効果によって、皮下深部の細胞の活性化、およびアポトーシスの誘導を行うことができる。
【0054】
以上のように、本実施の形態の光照射装置1について説明したが、本発明は、この場合に限られるものではない。たとえば、レーザ光を図2(a)に示されるように放射状に散乱させ、光の干渉効果を利用して光を強め合わせる代わりに、光ファイバ部110内を進むレーザ光の一部を反射させつつ残りの部分を透過させる小型ハーフミラー部として機能する分散体を光ファイバ部110内に構成してもよい。これらハーフミラー部は、各レーザ光を1点に集めるように反射させることにより、光を強め合わせる。この場合、製造プロセス時に、ドライエッチングの方向性や紫外線の照射角度を調節することによって、各ハーフ反射体の反射面の角度を設定する手間が増えるが、四方八方に分散させる場合に比べて、エネルギーの利用効率は高まり、皮下深部へエネルギーを届けやすいメリットがある。また、この場合も、光ファイバ部110自体を加工して、ハーフミラー部が構成することができるので、別途、反射鏡などを用意する必要がなくなる。
【0055】
なお、本発明は、生体の皮膚からレーザ光を照射する場合のみならず、光ファイバ部110を生体内に挿入して、レーザ光を照射する場合にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の好適な実施の形態における光照射装置の概略図である。
【図2】複数の分散体によって分散された2つのレーザ光が皮下の集光点で強め合う作用を説明するための図である。
【符号の説明】
【0057】
1 光照射装置、
100 プローブ、
110 光ファイバ部、
111 コア、
112 クラッド、
113 被覆部、
114 光照射口、
120 基体部、
121 レーザ光源、
130 接触センサ、
200 制御部、
202 操作部、
204 表示パネル、
300a〜300e 分散体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に対してレーザ光を照射するレーザ光照射装置であって、
硬質性の光ファイバを備えるプローブと、
前記光ファイバ内において軸方向に沿って一定の間隔で配列されており、光ファイバ内を進むレーザ光を分散させつつ透過させる複数の分散体と、を有し、
前記複数の分散体が配列された部分の前記光ファイバの側面を光照射口として用いて、当該光照射口を生体表面に接触させた状態で、各分散体によって分散されて前記光照射口から放射される各レーザ光が皮下で重ね合わされて強められることを特徴とするレーザ光照射装置。
【請求項2】
前記各分散体は、レーザ光を散乱させるものであり、
各分散体によって散乱された各レーザ光の位相が互いに揃う箇所でレーザ光が強められることを特徴とする請求項1に記載のレーザ光照射装置。
【請求項3】
前記各分散体は、レーザ光を1点に集めるように反射させるものであることを特徴とする請求項1に記載のレーザ光照射装置。
【請求項4】
さらに、前記照射口の周辺に設けられた接触センサと、
前記接触センサが接触を感知している場合にのみ、レーザ光が照射されるように制御する制御部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のレーザ光照射装置。
【請求項5】
前記レーザ光は、光効果および温熱効果により、皮下の循環改善、細胞の活性化、およびアポトーシスの誘導を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のレーザ光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−325987(P2006−325987A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154640(P2005−154640)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】