説明

レーザ共振器

【課題】光学部品の損傷防止と共振器の高効率動作を両立させることができ、波長変換素子へ入射するレーザ光の偏光を波長変換素子に適した本来の偏光方向に固定することができ、かつ単一の偏光選択素子を用いて装置構成を簡略化できるレーザ共振器を提供する。
【解決手段】第1波長のレーザ光(基本波4)を励起するレーザ媒体12と、第1波長のレーザ光をこれと異なる第2波長(波長変換光5)に変換する波長変換素子17とを備えたレーザ共振器。レーザ媒体と波長変換素子の間に、基本波4の偏光状態を制御する偏光制御素子15bと、基本波4のうち波長変換素子に適した偏光成分を波長変換素子に向けて伝搬させ、その他の偏光成分を損失光として飛散させる偏光選択素子15aとを順に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
高効率のレーザ共振器として、例えば特許文献1〜3が既に提案されている。
【0003】
特許文献1の「Qスイッチレーザ」は、稜線の直交する一対のルーフプリズムにより共振器を構成し偏光分離素子からジャイアントパルスを取り出すQスイッチレーザの高効率化を簡易に行い、効率の経時変化を少なくすることを目的とする。
そのため、このレーザ共振器は、図5に示すように、一対のルーフプリズム51,52の一方の稜線方向を偏光分離素子55の偏光面と略平行に設定し、電圧スイッチング回路57によりスイッチング電圧を発生しこれをポッケルスセル54に印加することでQスイッチ動作を得ると共に、出力量調整電圧発生回路58により発生させた電圧をポッケルセル54に印加することで共振器から取り出す光出力の割合を設定するものである。なお53は、レーザ媒体である。
【0004】
特許文献2の「光共振器、それを備えたレーザ発振器及び波長変換装置」は、連続発振及びパルス発振の波長可変レーザ、固体レーザなどの各種レーザにおける共振器の出力ミラーの透過率(反射率)を、同じレーザ装置で連続発振、パルス発振などの発振形態に合わせて共振器内の光学素子を交換することなく、最適化でき、波長変換装置の光共振器としても適用できることを目的とする。
そのため、このレーザ共振器は、図6に示すように、従来の光共振器の出力ミラーに用いられてきた、多層膜コーティング部分反射ミラーをポラライザー62と偏光回転素子63を組み合わせた構成に置き換えたものである。
【0005】
特許文献3の「レーザ発振器」は、内部波長変換型のレーザ共振器において光学部品の損傷防止と共振器の高効率動作を両立させることを目的とする。
そのため、このレーザ共振器は、図7に示すように、レーザ媒質72を励起して第1波長のレーザ光を発生させるレーザ共振器70において、レーザ共振器70の光路上に設置され、第1波長のレーザ光をこの第1波長と異なる第2波長のレーザ光に変換する波長変換素子74と、レーザ共振器の光路上に設置され、第1波長のレーザ光の損失を制御する損失制御素子75とを有するものである。
【0006】
【特許文献1】特開平5−206560号公報、「Qスイッチレーザ」
【特許文献2】特開2002−344051号公報、「光共振器、それを備えたレーザ発振器及び波長変換装置」
【特許文献3】特開2007−53160号公報、「レーザ共振器」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献3のレーザ共振器は、損失制御素子75により第1波長のレーザ光の損失を制御するので、初期条件設定時や共振器立ち上げ時など、波長変換素子74における波長変換効率が低い状態においても、レーザ共振器内部のレーザ強度の過度の上昇を抑え、光学部品の損傷を防止することができる。
従って、このレーザ共振器は、光学部品の損傷防止と共振器の高効率動作を両立させることができる特徴を有している。
【0008】
しかし、このレーザ共振器では、楕円偏光のレーザ光が波長変換素子74に入射する。波長変換素子は本来の偏光成分と、それと直交する偏光成分に対して異なる屈折率を持つため、本来の偏光成分以外が含まれるレーザ光が入射すると波長変換素子内での複屈折作用により偏光の乱れが生じる問題点があった。
【0009】
図8は、特許文献3のレーザ共振器の第1実施形態図である。この図において、71a,71bは終端ミラー(全反射ミラー)、72はレーザ媒質(Nd:YAG,Nd:YLFなど)、73は共振器内を往復するレーザ光、74はパルス動作用のQスイッチ、75は損失制御素子、75aは偏光選択素子(例えばPBS)、75bは偏光制御素子(例えば1/4波長板)、76は出力ミラー、77は波長変換素子(LBO,BBOなど)、78は損失光、79はレーザ光出力(波長変換光)である。
この実施態様では、損失制御素子75を偏光選択素子75aと偏光制御素子75bで構成し、レーザの動作状況に応じて1/4波長板75bを調整し、偏光選択素子75aにおける損失光78を制御する。
【0010】
しかし、1/4波長板75bを通過した楕円偏光のレーザ光が波長変換素子77に入射するため、上述した複屈折により1/4波長板75bの回転角度により生じる損失に本来の設計との誤差が生じる。この複屈折作用は結晶長などの設計によって異なるが、これが特に大きくなるような設計においては不適切な調整により光学部品損傷のおそれがある。
手動で1/4波長板75bを調整する場合にはパワーメータ等でレーザの出力、すなわち動作状態を監視しながら調整することにより回避が可能であるが、自動運転などでは出力のフィードバック機構が必要になるほか、制御ロジックも複雑になるという問題点がある。
【0011】
図9は、特許文献3のレーザ共振器の第2実施形態図である。この図において、75aは偏光選択素子(例えばPBS)、75bは偏光制御素子(例えば1/2波長板)、75cは偏光選択素子(例えばPBS)であり、その他の符号は、図8と同様である。
この実施態様では、損失制御素子75を偏光選択素子75a、偏光制御素子75b、及び偏光選択素子75cで構成し、レーザの動作状況に応じて1/2波長板75bを調整し、偏光選択素子75a,75cにおける損失光78を制御する。
この実施形態では、偏光選択素子75cによって波長変換素子77へ入射するレーザ光の偏光が本来の偏光方向に固定されるため上記の現象は起こらないが、偏光選択素子が複数必要であるなど装置が複雑になる問題点がある。
【0012】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。
すなわち、本発明の目的は、光学部品の損傷防止と共振器の高効率動作を両立させることができ、波長変換素子へ入射するレーザ光の偏光を波長変換素子に適した本来の偏光方向に固定することができ、かつ単一の偏光選択素子を用いて装置構成を簡略化できるレーザ共振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、第1波長のレーザ光を発生するレーザ媒体と、第1波長のレーザ光をこれと異なる第2波長に変換する波長変換素子とを備えたレーザ共振器であって、
前記レーザ媒体と波長変換素子の間に、第1波長のレーザ光の偏光状態を制御する偏光制御素子と、第1波長のレーザ光のうち波長変換素子に適した偏光成分を前記波長変換素子に向けて伝搬させ、その他の偏光成分を損失光として飛散させる偏光選択素子とを順に備える、ことを特徴とするレーザ共振器が提供される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、互いに交叉しない第1と第2の直線光路と、該2つの直線光路に交叉する第3の直線光路とを有し、
前記第1直線光路に、第1直線光路上のレーザ光を全反射する第1終端ミラーと、前記波長変換素子と、第1直線光路と第3直線光路の交点に位置し、第1波長のレーザ光を第2直線光路と第3直線光路の交点に向けて高反射し、第2波長のレーザ光を高透過させる出力ミラーとを順に備え、
前記第2直線光路に、第2直線光路上のレーザ光を全反射する第2終端ミラーと、前記レーザ媒体と、前記偏光制御素子と、前記偏光選択素子とを順に備え、
該偏光選択素子は、第2直線光路と第3直線光路の交点に位置し、第1波長のレーザ光のうち波長変換素子に適した偏光成分を前記出力ミラーに向けて反射し、その他の偏光成分を損失光として透過させる。
【0015】
前記偏光制御素子は、1/4波長板又はポッケルス素子であり、前記偏光選択素子は、ポラライザーであるのがよい。
【0016】
また、前記第2直線光路の偏光制御素子と偏光選択素子の間にQスイッチを備えることが好ましい。
【0017】
また、第2直線光路のレーザ媒体と偏光制御素子の間にQスイッチを備えてもよい。
【0018】
また、第1直線光路の波長変換素子と出力ミラーの間にQスイッチを備えてもよい。
【0019】
また、第3直線光路の偏光選択素子と出力ミラーの間にQスイッチを備えてもよい。
【発明の効果】
【0020】
上記本発明の構成によれば、レーザ媒体と波長変換素子の間に、第1波長のレーザ光の偏光状態を制御する偏光制御素子と、第1波長のレーザ光のうち波長変換素子に適した偏光成分を前記波長変換素子に向けて伝搬させ、その他の偏光成分を損失光として飛散させる偏光選択素子とを順に備えるので、波長変換素子へ入射するレーザ光の偏光を偏光選択素子により波長変換素子に適した本来の偏光方向に固定することができる。
【0021】
また、本発明の好ましい実施形態によれば、第1終端ミラー、出力ミラー、偏光選択素子、レーザ媒体、および第2終端ミラーの間で第1波長のレーザ光が閉じ込められて往復し、その間に第1波長のレーザ光のビームエネルギーを蓄積することができる。
また、波長変換素子により第1波長のレーザ光をこれと異なる第2波長に変換し、これを出力ミラーを透して外部に波長変換光として出力することができる。
【0022】
さらに、偏光制御素子と偏光選択素子により、波長変換素子に適した偏光成分以外を損失光として透過させることができるので、光学部品の損傷防止と共振器の高効率動作を両立させることができ、同時に波長変換素子へ入射するレーザ光の偏光を波長変換素子に適した本来の偏光方向に固定することができる。
また、上記構成により偏光選択素子(ポラライザー)は1つで足り、かつ全体構成を簡略化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0024】
図1は、本発明によるレーザ共振器の第1実施形態図である。
この図において、本発明のレーザ共振器10は、第1波長のレーザ光4(以下、基本波という)を励起するレーザ媒体12と、第1波長のレーザ光をこれと異なる第2波長5(以下、波長変換光という)に変換する波長変換素子17とを備える。
【0025】
また本発明のレーザ共振器10は、さらに、レーザ媒体12と波長変換素子17の間に、第1波長のレーザ光の偏光状態を制御する偏光制御素子15bと、第1波長のレーザ光のうち波長変換素子に適した偏光成分を波長変換素子に向けて伝搬させ、その他の偏光成分を損失光として飛散させる偏光選択素子15aとを順に備える。
以下、図1に基づき具体的に説明する。
【0026】
図1において、本発明のレーザ共振器10は、互いに交叉しない第1と第2の直線光路1,2と、この2つの直線光路1,2に交叉する第3の直線光路3とを有する。
第1直線光路1と第2直線光路2は、この例では互いに平行であるが、本発明はこれに限定されず、互いに交叉しない限りで斜め又は直交してもよい。
第3直線光路3は、この例では第1直線光路1及び第2直線光路2と垂直に交叉しているが、本発明はこれに限定されず、両者に交叉する限りで斜めでもよい。
【0027】
本発明のレーザ共振器10は、さらに、第1直線光路1上に、第1終端ミラー11a、波長変換素子17、出力ミラー16を(この図で左から)順に備える。
【0028】
第1終端ミラー11aは、全反射ミラーであり、第1直線光路1上のレーザ光を全反射する。このレーザ光には、第1波長のレーザ光(基本波4)と第2波長のレーザ光(波長変換光5)が含まれる。
【0029】
波長変換素子17は、LBO,BBOなどであり、光軸方向に光を透過させ、入射する第1波長のレーザ光(基本波4)をこれと異なる第2波長(波長変換光5)に変換して出射する。従って、第1直線光路1上には基本波4と波長変換光5が混在する。
【0030】
出力ミラー16は、基本波4に対して高反射ミラーであり、第1直線光路1と第3直線光路3の交点に光軸に対して傾斜して位置する。この傾斜角は、第1直線光路1の光を第3直線光路3に向けて反射するように設定されている。この構成により、出力ミラー16は、第1波長のレーザ光(基本波4)を第2直線光路2と第3直線光路3の交点に向けて高反射する。
第2直線光路2と第3直線光路3の交点には、後述する偏光選択素子15aが配置されており、偏光選択素子15aから出力ミラー16に向かう光(基本波4)は、同様に出力ミラー16で、第1直線光路1上の波長変換素子17に向けて高反射される。
出力ミラー16は、第2波長のレーザ光(波長変換光5)に対しては高透過性を有し、波長変換素子17を出た波長変換光5をそのまま透過させ、レーザ光出力として外部に取出される。
【0031】
本発明のレーザ共振器10は、さらに、第2直線光路2上に、第2終端ミラー11b、レーザ媒体12、偏光制御素子15b、偏光選択素子15aを(この図で左から)順に備える。
【0032】
第2終端ミラー11bは、全反射ミラーであり、第2直線光路2上のレーザ光を全反射する。このレーザ光は、第1波長のレーザ光(基本波4)である。
【0033】
レーザ媒体12は、例えばNd:YAG,Nd:YLF等の固体レーザ媒体であり、図示しない励起源によりレーザ媒体が励起され、第1波長のレーザ光(基本波4)が発生して第2直線光路2上に出力する。
【0034】
この例において、偏光選択素子15aと偏光制御素子15bにより損失制御素子15が構成されている。
【0035】
偏光制御素子15bは、好ましくは1/4波長板であるが、ポッケルス素子であってもよい。偏光制御素子15bは、第1波長のレーザ光(基本波4)の偏光状態を制御する機能を有する。この制御は、偏光状態を変化しない場合と、偏光状態を変化させる場合とを手動又はフィードバックを伴う自動で行う。偏光状態の変化は、偏光方向の変化でも直線偏光を楕円偏光にさせる場合のいずれでもよい。
【0036】
1/4波長板は、入射方位角が0又は90度では直線偏光をそのまま通過させ、それ以外の入射方位角では直線偏光を楕円偏光に変換する機能を有する。従って、偏光制御素子15bが1/4波長板である場合、その第2直線光路2に対する回転により第1波長のレーザ光(基本波4)の偏光方向をそのまま通過させることも、楕円偏光に変換することもできる。
【0037】
ポッケルス素子は、電界を加えると偏光が変化する素子である。従って、偏光制御素子15bがポッケルス素子である場合、電界を加えるための印加電圧のON/OFFにより、基本波4の偏光方向を制御することができる。この場合、印加電圧をOFFすることにより、基本波4の偏光方向を変化させないこともできる。
【0038】
偏光選択素子15aは、例えばポラライザーであり、第2直線光路2と第3直線光路3の交点に位置する。偏光選択素子15aは、第1波長のレーザ光(基本波4)のうち波長変換素子17に適した偏光成分を出力ミラー16に向けて反射し、その他の偏光成分を損失光18として透過させるようになっている。
【0039】
上述した本発明の構成によれば、第1終端ミラー11a、出力ミラー16、偏光選択素子15a、レーザ媒体12、および第2終端ミラー11bの間で第1波長のレーザ光(基本波4)が閉じ込められて往復し、その間に基本波4のビームエネルギーを蓄積することができる。
また、波長変換素子17により基本波4をこれと異なる第2波長に変換し、これを出力ミラー16を透して外部に波長変換光5として出力することができる。
【0040】
さらに、偏光選択素子15aと偏光制御素子15bにより損失制御素子15が構成されているので、偏光制御素子15aと偏光選択素子15bにより、波長変換素子17に適した偏光成分以外を損失光18として透過させることができるので、光学部品の損傷防止と共振器の高効率動作を両立させることができる。
【0041】
すなわち、偏光制御素子15b(1/4波長板)により偏光状態を変えられたレーザ光は本来の偏光成分と、それに直交する偏光成分からなる。偏光制御素子15b(PBS)により、直交する偏光成分に相当する出力は損失光18として共振器外に排出される。共振器内に残った出力は偏光制御素子15b(PBS)によって本来の偏光成分のみに戻っているため、波長変換素子17において複屈折作用を生じない。
従って、偏光選択素子15aにより、波長変換素子17へ入射するレーザ光(基本波4)の偏光を波長変換素子17に適した本来の偏光方向に固定することができる。
また、上記構成により偏光選択素子15aは1つで足り、かつ全体構成を簡略化できる。
【0042】
図1において、本発明のレーザ共振器10は、さらに、第2直線光路2の偏光制御素子15bと偏光選択素子15aの間にQスイッチ14を備える。Qスイッチ14は、好ましくは、AO−Qスイッチ又はEO−Qスイッチであるのがよい。
すなわち、本発明のレーザ共振器10をAO-Qスイッチ(又はEO−Qスイッチ)によりパルス動作させる場合、偏光制御素子15b(1/4波長板)の位置は図1のようにQスイッチ14を挟んで偏光選択素子15a(PBS)の反対側であることが望ましい。
この構成により、本発明のレーザ共振器10をQスイッチ14により作動する高出力パルスレーザとして用いることができる。
【0043】
図1のレーザ共振器は基本的には直線偏光動作であるため、Qスイッチ14は無偏光用より性能が高い直線偏光用のものを用いる。ただし、直線偏光用のQスイッチは本来の偏光成分と直交する偏光成分に対しては性能が低い。
この例では、偏光選択素子15aにより本来の直線偏光になった光がそのままQスイッチ14に(この図で左向きに)入射するためQスイッチ14が最適動作する。ただし、レーザ媒質側からQスイッチ14へ(この図で右向きに)入射する光は直交する偏光成分を含んでしまうため、その分はQスイッチの性能低下が生じる。
【0044】
図2は、本発明によるレーザ共振器の第2実施形態図である。この図において、本発明のレーザ共振器10は、第2直線光路2のレーザ媒体12と偏光制御素子15bの間にQスイッチ14を備える。その他の構成は図1と同様である。
この構成により、本発明のレーザ共振器10をQスイッチ14により作動する高出力パルスレーザとして用いることができる。
この例では、偏光選択素子15aを通過した本来の直線偏光成分のみの光が偏光制御素子15b(1/4波長板)によって偏光状態を変えられ、直交する偏光成分を含んだ状態でQスイッチ14に入射してしまうためQスイッチ14の性能が低下する。
【0045】
図3は、本発明によるレーザ共振器の第3実施形態図である。この図において、本発明のレーザ共振器10は、第1直線光路1の波長変換素子17と出力ミラー16の間にQスイッチ14を備える。その他の構成は図1と同様である。
この構成により、本発明のレーザ共振器10をQスイッチ14により作動する高出力パルスレーザとして用いることができる。
この例では、偏光選択素子15aを通過した本来の直線偏光成分のみの光がQスイッチ14に両方向において入射するためQスイッチ14が最適動作する。
【0046】
図4は、本発明によるレーザ共振器の第4実施形態図である。この図において、本発明のレーザ共振器10は、第3直線光路3の偏光選択素子15aと出力ミラー16の間にQスイッチを備える。その他の構成は図1と同様である。
この構成により、本発明のレーザ共振器10をQスイッチ14により作動する高出力パルスレーザとして用いることができる。
この例では、偏光選択素子15aを通過した本来の直線偏光成分のみの光がQスイッチ14に両方向において入射するためQスイッチ14が最適動作する。
【0047】
上述したように、図1〜図4に示した本発明の第1〜第4実施形態のいずれによっても、偏光制御素子15bと偏光選択素子15aにより、波長変換素子17に適した偏光成分以外を損失光として透過させることができるので、光学部品の損傷防止と共振器の高効率動作を両立させることができ、同時に波長変換結晶17へ入射するレーザ光の偏光を波長変換素子に適した本来の偏光方向に固定することができる。
また、上記構成により偏光選択素子(ポラライザー)は1つで足り、かつ全体構成を簡略化できる。
さらに、本発明のレーザ共振器10をQスイッチ14により作動する高出力パルスレーザとして用いることができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明によるレーザ共振器の第1実施形態図である。
【図2】本発明によるレーザ共振器の第2実施形態図である。
【図3】本発明によるレーザ共振器の第3実施形態図である。
【図4】本発明によるレーザ共振器の第4実施形態図である。
【図5】特許文献1の「Qスイッチレーザ」の模式図である。
【図6】特許文献2の「光共振器」の模式図である。
【図7】特許文献3の「レーザ発振器」の模式図である。
【図8】特許文献3のレーザ共振器の第1実施形態図である。
【図9】特許文献3のレーザ共振器の第2実施形態図である。
【符号の説明】
【0050】
1 第1直線光路、2 第2直線光路、3 第3直線光路、
4 第1波長のレーザ光(基本波)、
5 第2波長のレーザ光(波長変換光)、
10 レーザ共振器、
11a 第1終端ミラー、11b 第2終端ミラー、
12 レーザ媒体、15 損失制御素子、
15a 偏光選択素子、15b 偏光制御素子、
16出力ミラー、17 波長変換素子、18 損失光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長のレーザ光を発生するレーザ媒体と、第1波長のレーザ光をこれと異なる第2波長に変換する波長変換素子とを備えたレーザ共振器であって、
前記レーザ媒体と波長変換素子の間に、第1波長のレーザ光の偏光状態を制御する偏光制御素子と、第1波長のレーザ光のうち波長変換素子に適した偏光成分を前記波長変換素子に向けて伝搬させ、その他の偏光成分を損失光として飛散させる偏光選択素子とを順に備える、ことを特徴とするレーザ共振器。
【請求項2】
互いに交叉しない第1と第2の直線光路と、該2つの直線光路に交叉する第3の直線光路とを有し、
前記第1直線光路に、第1直線光路上のレーザ光を全反射する第1終端ミラーと、前記波長変換素子と、第1直線光路と第3直線光路の交点に位置し、第1波長のレーザ光を第2直線光路と第3直線光路の交点に向けて高反射し、第2波長のレーザ光を高透過させる出力ミラーとを順に備え、
前記第2直線光路に、第2直線光路上のレーザ光を全反射する第2終端ミラーと、前記レーザ媒体と、前記偏光制御素子と、前記偏光選択素子とを順に備え、
該偏光選択素子は、第2直線光路と第3直線光路の交点に位置し、第1波長のレーザ光のうち波長変換素子に適した偏光成分を前記出力ミラーに向けて反射し、その他の偏光成分を損失光として透過させる、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ共振器。
【請求項3】
前記偏光制御素子は、1/4波長板又はポッケルス素子であり、
前記偏光選択素子は、ポラライザーである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ共振器。
【請求項4】
前記第2直線光路の偏光制御素子と偏光選択素子の間にQスイッチを備える、ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ共振器。
【請求項5】
前記第2直線光路のレーザ媒体と偏光制御素子の間にQスイッチを備える、ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ共振器。
【請求項6】
前記第1直線光路の波長変換素子と出力ミラーの間にQスイッチを備える、ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ共振器。
【請求項7】
前記第3直線光路の偏光選択素子と出力ミラーの間にQスイッチを備える、ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ共振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−212406(P2009−212406A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55745(P2008−55745)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】