レーザ処理装置
【課題】a−Si膜をポリシリコン膜に改質するアニーリング処理等のレーザ処理を迅速化することができ、タクトタイムの短縮が可能な処理装置を提供する。
【解決手段】複数本のシリンドリカルレンズ12を有するシリンドリカルレンズアレイ2aにより、例えば8個の平板状のレーザビーム4を整形し、これを基板1上のa−Si膜に照射する。そして、基板1をこの照射領域5のギャップGで移動させて、細長い照射領域5をギャップGで基板上に形成する。このギャップGを画素ピッチとすることにより、画素領域において、画素トランジスタの形成予定領域のみを照射領域5とすることができる。
【解決手段】複数本のシリンドリカルレンズ12を有するシリンドリカルレンズアレイ2aにより、例えば8個の平板状のレーザビーム4を整形し、これを基板1上のa−Si膜に照射する。そして、基板1をこの照射領域5のギャップGで移動させて、細長い照射領域5をギャップGで基板上に形成する。このギャップGを画素ピッチとすることにより、画素領域において、画素トランジスタの形成予定領域のみを照射領域5とすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファスシリコン膜(以下、a−Si膜という)にレーザ光を照射してアニールすることにより、a−Siを多結晶シリコン(以下、ポリシリコンという)に結晶化させる場合等に使用されるレーザ処理装置に関し、特に、複数個のシリンドリカルレンズを使用したレーザ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆スタガ構造の薄膜トランジスタとしては、絶縁性基板上にCr又はAl等の金属層によりゲート電極を形成し、次いで、このゲート電極を含む基板上にゲート絶縁膜として例えばSiN膜を形成し、その後、全面に水素化アモルファスシリコン(以下、a−Si:Hと記載する)膜を形成し、このa−Si:H膜をゲート電極上の所定領域にアイランド状にパターニングし、更に、金属層によりソース・ドレイン電極を形成したアモルファスシリコントランジスタがある。
【0003】
しかしながら、このアモルファスシリコントランジスタは、a−Si:H膜をチャネル領域に使用しているので、チャネル領域における電荷の移動度が小さいという難点がある。このため、アモルファスシリコントランジスタは、例えば、液晶表示装置の画素部の画素トランジスタとしては使用可能であるが、高速の書き換えが要求される周辺駆動回路の駆動トランジスタとしては、チャネル領域の電荷移動度が小さすぎて、使用することが困難である。
【0004】
一方、多結晶シリコン膜を直接基板上に形成しようとすると、LPCVD(減圧化学気相成長)法により形成することになるが、これは1500℃程度の高温プロセスになるため、液晶表示装置のようなガラス基板(軟化点が400〜500℃)上に多結晶シリコン膜を直接形成することはできない。
【0005】
そこで、一旦、チャネル領域にa−Si:H膜を形成し、その後、このa−Si:H膜にYAGエキシマレーザ等のレーザ光を照射してレーザアニールすることにより、極短時間での溶融凝固の相転移により、a−Si:H膜をポリシリコン膜に結晶化させる低温ポリシリコンプロセスが採用されるようになっている。これにより、ガラス基板上のチャネル領域を電荷移動度が高くトランジスタ動作の高速化が可能なポリシリコン膜により形成することが可能になる(特許文献1)。
【0006】
また、この種のレーザアニール装置において、パルスレーザ光を1個のシリンドリカルレンズにより、基板上の照射領域が帯状のビームになるように整形して、このレーザ光学系又は基板を相対的に前記照射領域の幅方向に移動させることにより、レーザ光で基板上の全領域を走査することにより、a−Si:H膜をポリシリコン膜に結晶化させるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−63196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の従来のレーザ処理技術は、基板上の照射領域におけるビーム長が例えば750mm、ビーム幅が例えば350μmと狭く、細長い帯状のレーザ光をその幅方向に走査して、レーザ光を基板の全域で走査させてレーザ処理しているために、処理時間が長く、タクトタイムが長いという問題点がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、a−Si膜をポリシリコン膜に改質するアニーリング処理等のレーザ処理を迅速化することができ、タクトタイムの短縮が可能な処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るレーザ処理装置は、パルスレーザ光を発光するレーザ光源と、このレーザ光源からのパルスレーザ光を基板上の照射領域が複数本の帯状になるように整形する複数個のシリンドリカルレンズと、前記基板と前記シリンドリカルレンズとを前記照射領域の幅方向及び長手方向に相対的に移動させるように制御する制御装置と、を有し、前記シリンドリカルレンズはその長手方向に垂直の方向に一定のレンズピッチで相互に平行に配置されており、前記制御装置は、前記基板上の第1領域では、前記帯状の照射領域がその幅方向に第1ピッチとなるようにパルスレーザ光を照射し、第2領域では、前記帯状の照射領域がその幅方向に前記第1ピッチよりも小さい第2ピッチでパルスレーザ光を照射するように前記レーザ光源の発光と前記基板及び前記シリンドリカルレンズの相対的移動を制御することを特徴とする。
【0011】
このレーザ処理装置は、a−Si膜をポリシリコン膜に改質するアニーリング処理に特に有効である。また、1個のガラス基板から、液晶表示装置の複数個のパネルを製造する際に適用すると、特に有効である。
【0012】
そこで、本発明の一態様として、前記基板は、1又は複数個の液晶表示パネルを製造するガラス基板であり、前記第1領域は画素領域であり、前記第2領域は駆動回路を形成する前記パネルの周辺領域である場合、前記制御装置は、例えば、前記ガラス基板上の前記第1領域では、前記パルスレーザ光の照射領域が画素領域の画素ピッチと一致するように前記パルスレーザ光を照射し、前記ガラス基板上の前記第2領域では、前記パルスレーザ光の照射領域がその幅方向に相互に連なるようにその幅以下のピッチでパルスレーザ光を照射するように制御する。また、前記基板にはアライメントマークが画素ピッチGで複数個形成されており、このアライメントマークを撮像するカメラを設け、前記制御装置は、前記カメラが、基板上のアライメントマークを検出する都度、パルスレーザ光を照射させるように制御することもできる。
【0013】
本発明においては、例えば、液晶表示装置のパネルの製造に使用した場合、画素は、所定の画素ピッチで配置されているので、前記照射領域の第1ピッチを画素ピッチと同一としておくことにより、制御装置は、画素領域(第1領域)においては、帯状のパルスレーザ光を、画素ピッチと同一のピッチで照射することができる。これにより、画素領域における画素が形成されるべき箇所については、レーザ処理によりポリシリコンへの改質処理を行うことができ、その間の領域は、レーザ処理しないので、全体の処理を高効率化して、タクトタイムを短縮できる。一方、パネルの周辺部に配置されるドライブ回路の形成領域(第2領域)においては、パルスレーザ光を画素ピッチよりも小さいピッチで、パルスレーザ光を照射することにより、レーザ処理領域を第1領域よりも広くして、駆動回路の形成位置の任意性を高め、駆動回路の形成位置の選択範囲を広くすることができる。このとき、第2領域においては、第2ピッチをパルスレーザ光の幅と同一とすることにより、パルスレーザ光の照射領域を、その幅方向に連ねることができ、第2領域においては、その全域でレーザ処理(ポリシリコン化)することができる。
【発明の効果】
【0014】
従って、本発明によれば、第1領域では、レーザ処理が不要な部分はレーザ光を照射しないようにして照射領域を間引いてレーザ処理するので、基板の全域でレーザ処理することはなく、高速でレーザ処理することができ、処理のタクトタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ処理装置を示す斜視図である。
【図2】第1領域(画素領域)のアニール態様を示す図である。
【図3】第2領域(周辺領域)のアニール態様を示す図である。
【図4】図3の次工程を示す図である。
【図5】図4の次工程を示す図である。
【図6】図5の次工程を示す図である。
【図7】図6の次工程を示す図である。
【図8】図7の次工程を示す図である。
【図9】ガラス基板上のレーザ照射態様を示す図である。
【図10】図9の次の工程を示す図である。
【図11】図10の次の工程を示す図である。
【図12】本発明の効果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1に示すように、レーザ処理すべき基板1の上方に、シリンドリカルレンズアレイ2a、2bが2枚平行に設置されている。各シリンドリカルレンズアレイ2a、2bには、例えば、8本のシリンドリカルレンズ12が相互に平行に所定のレンズピッチで形成されている。適宜のパルスレーザ光源(図示せず)からパルスレーザ光が、適宜の制御装置により制御されて出力される。このレーザ光源から出射されたパルスレーザ光は、2枚のシリンドリカルレンズアレイ2a、2bにより、平板状のレーザビームに整形されて基板上に照射される。よって、基板上において、レーザ光の各ビーム4の照射領域5は帯状をなし、相互に平行である。このレーザビーム4の照射領域5は、例えば、幅が250μmであり、長さが50mmである。また、レーザビーム4の照射位置におけるピッチは、画素ピッチと同一であり、例えば、750μmである。又は、このレーザビーム4のピッチは、画素ピッチの2又は整数倍でもよい。このレーザビーム4のピッチは、シリンドリカルレンズアレイ2a、2b及びその他の光学系の光学特性を調整することにより、シリンドリカルレンズアレイ2a、2bのシリンドリカルレンズ12の配列ピッチ(レンズピッチ)と同一とすることができる。よって、このシリンドリカルレンズのレンズピッチを、液晶表示パネルの画素ピッチに対応させて、予めシリンドリカルレンズアレイ2a、2bを用意しておき、これらのシリンドリカルレンズアレイ2a、2bの中から、処理すべきパネルの画素ピッチに応じて使用するシリンドリカルレンズアレイ2a、2bを選択することにより、容易に光学系を構成することができる。
【0017】
レーザ処理すべき基板は、ガラス基板の上に、a−Si膜が形成されており、このa−Si膜にレーザ光を照射して、これを一旦溶融させた後、凝固させることにより、ポリシリコン膜に改質することができる。このガラス基板の大きさは、例えば、幅が1m又は2mである。そして、通常、1枚のガラス基板1上上に複数枚のパネルを形成し、その後、これらの全てのパネルについて、フォトリソグラフィにより画素トランジスタ及び駆動回路トランジスタ等を形成し、その後,パネルを切断分離して、複数枚の表示パネルを同時に製造する。
【0018】
次に、本実施形態の動作について、制御装置の制御態様と共に説明する。レーザ光源は、例えば、波長が1064nmのレーザ光とその3次高調波の355nmを含み、その周波数は例えば200HzであるNd:YAGレーザ光である。このレーザ光源から出射されたパルスレーザ光は、図1に示すシリンドリカルレンズアレイ2a、2bに入射し、シリンドリカルレンズ12により、平板状のビーム4に整形される。これにより、基板1の表面には、照射領域5が帯状のレーザビーム4が照射される。
【0019】
図9は、ガラス基板20上に6枚の液晶表示パネルが形成される6枚取りのガラス基板を示す。この各表示パネルは、第1領域としての画素が形成される画素領域21と、第2領域としての駆動回路が形成される周辺領域22とから構成される。
【0020】
例えば、液晶表示装置の周辺回路として、画素の駆動トランジスタを形成する場合、ガラス基板上にAl等の金属膜からなるゲート電極を、スパッタによりパターン形成する。そして、シラン及びH2ガスを原料ガスとし、250〜300℃の低温プラズマCVD法により、全面にSiN膜からなるゲート絶縁膜を形成する。その後、ゲート絶縁膜上に、例えば、プラズマCVD法によりa−Si:H膜を形成する。このa−Si:H膜はシランとH2ガスを混合したガスを原料ガスとして成膜する。このa−Si:H膜のゲート電極上の領域をチャネル形成予定領域として、このチャネル形成予定領域にレーザ光を照射してアニールし、このチャネル形成予定領域を多結晶化してポリシリコンチャネル領域を形成する。
【0021】
このレーザ処理に際し、図2は、画素領域のレーザ照射態様を示し、図3乃至図8は、周辺領域のレーザ照射態様を示す。先ず、図2に示す画素領域においては、シリンドリカルレンズアレイ2a、2bの例えば8個のシリンドリカルレンズ12により、画素ピッチGと同一ピッチで、例えば、8個のレーザビーム4が基板1上に照射される。そして、制御装置が、基板1又はレーザ照射系を相対的にレーザビーム4の照射領域5の幅方向(矢印a方向)に移動させる。このとき、例えば、基板1をa方向に移動させる場合、制御装置は、基板1が画素ピッチGだけ移動したときに、レーザ光を照射する。これは、例えば、基板1にアライメントマークを画素ピッチGで複数個形成しておき、このアライメントマークをカメラ(図示せず)により撮像し、基板1がa方向に移動してカメラによりアライメントマークが検出される都度、パルス状のレーザビーム4を基板1に照射すればよい。これにより、基板1には1ショットで8個のレーザビーム4が画素ピッチGの間隔で照射される。そして、画素ピッチGだけ基板1を相対的に移動させる都度、パルスレーザ光のショットを行う。これにより、定常状態では、基板上において1カ所のレーザビーム照射を受けた位置では、8回、レーザショットを受けることになり、基板上のa−Si膜は、8回、レーザ処理を受ける。これにより、このレーザ処理を受けた照射領域5において、a−Siがポリシリコンに改質される。前述のごとく、例えば、パルスレーザ光の照射領域5の幅は250μm、長さは50mmであり、画素ピッチGは750μmであり、1個の画素トランジスタの大きさが30μm四方であるから、照射領域5は50mmの長さの領域に1列に並ぶ全ての画素トランジスタを十分にカバーする領域であり、この画素ピッチG毎に照射領域5を形成して、基板をレーザ光で走査することにより、全ての画素トランジスタ形成予定領域のアモルファスシリコンをポリシリコンに改質することができる。一方、画素ピッチが750μmであるから、500μmの領域には、レーザ光が照射されない。このため、レーザ処理を効率化及び迅速化することができ、タクトタイムを短縮することができる。
【0022】
一方、周辺領域22の駆動回路の形成領域においては、図3に示すように、1ショットのレーザビーム4の照射を行い、1個の照射領域5を形成した後、図4に示すように、基板1を相対的に照射領域5の幅だけ、この幅方向(a方向)に移動させ(シフトさせ)、その後、1ショットのレーザビーム4を照射する。これにより、2ショットのレーザ照射領域5が連なって形成される。
【0023】
次に、図5に示すように、基板1を相対的に照射領域5の幅だけ、この幅方向に移動させ、その後、1ショットのレーザビーム4を照射する。これにより、3ショットのレーザ照射領域5が連なって形成される。
【0024】
次に、図6に示すように、基板1を相対的に照射領域5の幅だけ、この幅方向に移動させ、その後、1ショットのレーザビーム4を照射する。これにより、4ショットのレーザ照射領域5が連なって形成される。
【0025】
次に、図7に示すように、基板1を相対的に照射領域5の幅だけ、この幅方向に移動させ、その後、1ショットのレーザビーム4を照射する。これにより、5ショットのレーザ照射領域5が連なって形成される。
【0026】
次に、図8に示すように、基板1を相対的に照射領域5の幅だけ、この幅方向に移動させ、その後、1ショットのレーザビーム4を照射するという動作を繰り返すことにより、周辺回路22の全領域にてレーザ照射領域5が連なり、周辺領域22の全領域がレーザ処理を受ける。
【0027】
このようにして、レーザ処理を間引いてレーザ処理を迅速化することができる第1領域(例えば、画素領域)では、画素トランジスタ形成予定領域のようにレーザ処理が必要な領域のみ、レーザ処理し、駆動トランジスタのように、形成予定領域に周期性が無く、任意の位置に形成する場合があるような第2領域(例えば,周辺領域)では、その全ての領域にレーザ処理する。これにより、従来よりも、レーザ処理を迅速化することができ、タクトタイムを短縮することができる。
【0028】
次に、第1領域及び第2領域のレーザ照射態様について説明する。図9に示すように、ガラス基板20には、その各表示パネルの形成領域(図示例は、6個)に、画素が形成される画素領域21とドライバ回路等が形成される周辺領域22とが設けられているが、先ず、この周辺領域22に合わせて、シリンドリカルレンズアレイ2aを含む光学系を位置させ、レーザビーム4の照射領域5をこの周辺領域22上に位置させる。つまり、このレーザビーム4の照射領域5の長手方向がこの周辺領域22の幅方向をまたぐようにシリンドリカルレンズアレイ2aを設置する。そして、図10に矢印bにて示すように、基板1をシリンドリカルレンズアレイ2aに対して相対的に照射領域5の幅方向に移動させ、図3乃至図8に示す工程によりレーザショットを行い、照射領域5を連ねることにより、周辺領域22の全域を図8に示すようにレーザ処理する。このとき、図10に示すレーザ処理領域は、幅が50mm(照射領域5の長さ)の帯状の領域となり、周辺領域22を超えて画素領域21の一部もレーザ処理される。この図3乃至図8に示す工程のレーザ処理は、最終的に、図10に示すように、レーザ走査方向に直交する方向(矢印c方向)にシフトされて、終了する。つまり、図10に示す工程の最後において、シリンドリカルレンズアレイ12aは、図10に矢印bにて示す走査方向に垂直の方向(矢印c方向)に、照射領域5の長さ分シフトする。
【0029】
その後、図11に示すように、レーザショットを図10の逆方向(矢印d方向)に走査するが、このとき、画素領域21においては、図2に示す態様により、照射領域5を形成していく。従って、画素領域21において、画素ピッチG(750μm)で幅が250μmの照射領域5が形成される。この照射領域5の中間の領域は、レーザ処理されない。これにより、画素領域21内の画素トランジスタのチャネル領域を含む領域が、レーザ処理されて、ポリシリコン膜に改質される。なお、1枚のガラス基板20から複数枚(図示例は8枚)の表示パネルが得られるが、レーザ走査が、画素領域21から別のパネルの画素領域21に移動する際には、パネル間の周辺領域23を通過するので、この周辺領域23も、図3乃至図8に示す工程でその全域をレーザ処理する。以後、同様の工程を繰り返して、ガラス基板の全域を、画素ピッチGでレーザショットする工程と、照射領域が連なるようにレーザショットする工程とにより、レーザ処理する。
【0030】
このようにして、画素トランジスタ及び駆動トランジスタのチャネル領域は、アモルファスシリコンからポリシリコンに改質され、トランジスタ動作の高速化が確保される。一方、トランジスタが形成されない領域は、アモルファスシリコンのままである。これにより、レーザ処理の迅速化及び高速化を図ることができ、レーザ処理のタクトタイムを短縮することができる。
【0031】
図12は、横軸にパネルサイズをとり、縦軸にタクトタイムをとって、本発明の効果を示すグラフ図である。図中、■は、波長が308nmで周波数が600Hzのエキシマレーザを使用して基板の全面をレーザ処理した場合のタクトタイムである。また、▲は波長が355nm+1064nmで周波数が200HzのNd:YAGレーザを使用して基板の全面をレーザ処理した場合のタクトタイムである。これに対し、◆は、本発明の実施形態であり、波長が355nm+1064nmで周波数が200HzのNd:YAGレーザを使用して、基板を図11に示すようにレーザ処理した場合のタクトタイムである。この図12から明らかなように、パネルサイズが20インチの場合はあまり効果がないが、パネルサイズが40インチから70インチになるにつれて、タクトタイムが大幅に短くなっている。パネルサイズが大きいほど、本発明の効果が大きいのは、パネルサイズが大きくなると、画素領域の面積が周辺領域の面積に比して、相対的に大きくなるからである。
【0032】
本発明は、液晶表示パネルの製造に限らず、レーザ処理が必要な技術分野において、そのタクトタイムの向上に有効である。また、1個のシリンドリカルレンズアレイ2a、2bに形成するシリンドリカルレンズ12の数は、上記実施形態では8個であったが、本発明は、これに限らず、種々設定することができる。図2に示す工程においては、基板1のレーザ処理箇所は、通常、このシリンドリカルレンズ12の個数に応じて、それと同数のレーザ処理を受けるが、シリンドリカルレンズ2a、2bの1回の移動を、画素ピッチGの2倍以上とすることにより、基板上のレーザ処理箇所のレーザ処理の回数を、シリンドリカルレンズ2a、2bの数の1/2以下に減じることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、液晶表示装置の表示パネルのように、膜の改質のようにレーザ処理が必要な技術分野に有益である。
【符号の説明】
【0034】
1:基板
2a、2b:シリンドリカルレンズアレイ
4:レーザビーム
5:照射領域
12:シリンドリカルレンズ
20:ガラス基板
21:画素領域
22:周辺領域
23:周辺領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファスシリコン膜(以下、a−Si膜という)にレーザ光を照射してアニールすることにより、a−Siを多結晶シリコン(以下、ポリシリコンという)に結晶化させる場合等に使用されるレーザ処理装置に関し、特に、複数個のシリンドリカルレンズを使用したレーザ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆スタガ構造の薄膜トランジスタとしては、絶縁性基板上にCr又はAl等の金属層によりゲート電極を形成し、次いで、このゲート電極を含む基板上にゲート絶縁膜として例えばSiN膜を形成し、その後、全面に水素化アモルファスシリコン(以下、a−Si:Hと記載する)膜を形成し、このa−Si:H膜をゲート電極上の所定領域にアイランド状にパターニングし、更に、金属層によりソース・ドレイン電極を形成したアモルファスシリコントランジスタがある。
【0003】
しかしながら、このアモルファスシリコントランジスタは、a−Si:H膜をチャネル領域に使用しているので、チャネル領域における電荷の移動度が小さいという難点がある。このため、アモルファスシリコントランジスタは、例えば、液晶表示装置の画素部の画素トランジスタとしては使用可能であるが、高速の書き換えが要求される周辺駆動回路の駆動トランジスタとしては、チャネル領域の電荷移動度が小さすぎて、使用することが困難である。
【0004】
一方、多結晶シリコン膜を直接基板上に形成しようとすると、LPCVD(減圧化学気相成長)法により形成することになるが、これは1500℃程度の高温プロセスになるため、液晶表示装置のようなガラス基板(軟化点が400〜500℃)上に多結晶シリコン膜を直接形成することはできない。
【0005】
そこで、一旦、チャネル領域にa−Si:H膜を形成し、その後、このa−Si:H膜にYAGエキシマレーザ等のレーザ光を照射してレーザアニールすることにより、極短時間での溶融凝固の相転移により、a−Si:H膜をポリシリコン膜に結晶化させる低温ポリシリコンプロセスが採用されるようになっている。これにより、ガラス基板上のチャネル領域を電荷移動度が高くトランジスタ動作の高速化が可能なポリシリコン膜により形成することが可能になる(特許文献1)。
【0006】
また、この種のレーザアニール装置において、パルスレーザ光を1個のシリンドリカルレンズにより、基板上の照射領域が帯状のビームになるように整形して、このレーザ光学系又は基板を相対的に前記照射領域の幅方向に移動させることにより、レーザ光で基板上の全領域を走査することにより、a−Si:H膜をポリシリコン膜に結晶化させるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−63196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の従来のレーザ処理技術は、基板上の照射領域におけるビーム長が例えば750mm、ビーム幅が例えば350μmと狭く、細長い帯状のレーザ光をその幅方向に走査して、レーザ光を基板の全域で走査させてレーザ処理しているために、処理時間が長く、タクトタイムが長いという問題点がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、a−Si膜をポリシリコン膜に改質するアニーリング処理等のレーザ処理を迅速化することができ、タクトタイムの短縮が可能な処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るレーザ処理装置は、パルスレーザ光を発光するレーザ光源と、このレーザ光源からのパルスレーザ光を基板上の照射領域が複数本の帯状になるように整形する複数個のシリンドリカルレンズと、前記基板と前記シリンドリカルレンズとを前記照射領域の幅方向及び長手方向に相対的に移動させるように制御する制御装置と、を有し、前記シリンドリカルレンズはその長手方向に垂直の方向に一定のレンズピッチで相互に平行に配置されており、前記制御装置は、前記基板上の第1領域では、前記帯状の照射領域がその幅方向に第1ピッチとなるようにパルスレーザ光を照射し、第2領域では、前記帯状の照射領域がその幅方向に前記第1ピッチよりも小さい第2ピッチでパルスレーザ光を照射するように前記レーザ光源の発光と前記基板及び前記シリンドリカルレンズの相対的移動を制御することを特徴とする。
【0011】
このレーザ処理装置は、a−Si膜をポリシリコン膜に改質するアニーリング処理に特に有効である。また、1個のガラス基板から、液晶表示装置の複数個のパネルを製造する際に適用すると、特に有効である。
【0012】
そこで、本発明の一態様として、前記基板は、1又は複数個の液晶表示パネルを製造するガラス基板であり、前記第1領域は画素領域であり、前記第2領域は駆動回路を形成する前記パネルの周辺領域である場合、前記制御装置は、例えば、前記ガラス基板上の前記第1領域では、前記パルスレーザ光の照射領域が画素領域の画素ピッチと一致するように前記パルスレーザ光を照射し、前記ガラス基板上の前記第2領域では、前記パルスレーザ光の照射領域がその幅方向に相互に連なるようにその幅以下のピッチでパルスレーザ光を照射するように制御する。また、前記基板にはアライメントマークが画素ピッチGで複数個形成されており、このアライメントマークを撮像するカメラを設け、前記制御装置は、前記カメラが、基板上のアライメントマークを検出する都度、パルスレーザ光を照射させるように制御することもできる。
【0013】
本発明においては、例えば、液晶表示装置のパネルの製造に使用した場合、画素は、所定の画素ピッチで配置されているので、前記照射領域の第1ピッチを画素ピッチと同一としておくことにより、制御装置は、画素領域(第1領域)においては、帯状のパルスレーザ光を、画素ピッチと同一のピッチで照射することができる。これにより、画素領域における画素が形成されるべき箇所については、レーザ処理によりポリシリコンへの改質処理を行うことができ、その間の領域は、レーザ処理しないので、全体の処理を高効率化して、タクトタイムを短縮できる。一方、パネルの周辺部に配置されるドライブ回路の形成領域(第2領域)においては、パルスレーザ光を画素ピッチよりも小さいピッチで、パルスレーザ光を照射することにより、レーザ処理領域を第1領域よりも広くして、駆動回路の形成位置の任意性を高め、駆動回路の形成位置の選択範囲を広くすることができる。このとき、第2領域においては、第2ピッチをパルスレーザ光の幅と同一とすることにより、パルスレーザ光の照射領域を、その幅方向に連ねることができ、第2領域においては、その全域でレーザ処理(ポリシリコン化)することができる。
【発明の効果】
【0014】
従って、本発明によれば、第1領域では、レーザ処理が不要な部分はレーザ光を照射しないようにして照射領域を間引いてレーザ処理するので、基板の全域でレーザ処理することはなく、高速でレーザ処理することができ、処理のタクトタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ処理装置を示す斜視図である。
【図2】第1領域(画素領域)のアニール態様を示す図である。
【図3】第2領域(周辺領域)のアニール態様を示す図である。
【図4】図3の次工程を示す図である。
【図5】図4の次工程を示す図である。
【図6】図5の次工程を示す図である。
【図7】図6の次工程を示す図である。
【図8】図7の次工程を示す図である。
【図9】ガラス基板上のレーザ照射態様を示す図である。
【図10】図9の次の工程を示す図である。
【図11】図10の次の工程を示す図である。
【図12】本発明の効果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1に示すように、レーザ処理すべき基板1の上方に、シリンドリカルレンズアレイ2a、2bが2枚平行に設置されている。各シリンドリカルレンズアレイ2a、2bには、例えば、8本のシリンドリカルレンズ12が相互に平行に所定のレンズピッチで形成されている。適宜のパルスレーザ光源(図示せず)からパルスレーザ光が、適宜の制御装置により制御されて出力される。このレーザ光源から出射されたパルスレーザ光は、2枚のシリンドリカルレンズアレイ2a、2bにより、平板状のレーザビームに整形されて基板上に照射される。よって、基板上において、レーザ光の各ビーム4の照射領域5は帯状をなし、相互に平行である。このレーザビーム4の照射領域5は、例えば、幅が250μmであり、長さが50mmである。また、レーザビーム4の照射位置におけるピッチは、画素ピッチと同一であり、例えば、750μmである。又は、このレーザビーム4のピッチは、画素ピッチの2又は整数倍でもよい。このレーザビーム4のピッチは、シリンドリカルレンズアレイ2a、2b及びその他の光学系の光学特性を調整することにより、シリンドリカルレンズアレイ2a、2bのシリンドリカルレンズ12の配列ピッチ(レンズピッチ)と同一とすることができる。よって、このシリンドリカルレンズのレンズピッチを、液晶表示パネルの画素ピッチに対応させて、予めシリンドリカルレンズアレイ2a、2bを用意しておき、これらのシリンドリカルレンズアレイ2a、2bの中から、処理すべきパネルの画素ピッチに応じて使用するシリンドリカルレンズアレイ2a、2bを選択することにより、容易に光学系を構成することができる。
【0017】
レーザ処理すべき基板は、ガラス基板の上に、a−Si膜が形成されており、このa−Si膜にレーザ光を照射して、これを一旦溶融させた後、凝固させることにより、ポリシリコン膜に改質することができる。このガラス基板の大きさは、例えば、幅が1m又は2mである。そして、通常、1枚のガラス基板1上上に複数枚のパネルを形成し、その後、これらの全てのパネルについて、フォトリソグラフィにより画素トランジスタ及び駆動回路トランジスタ等を形成し、その後,パネルを切断分離して、複数枚の表示パネルを同時に製造する。
【0018】
次に、本実施形態の動作について、制御装置の制御態様と共に説明する。レーザ光源は、例えば、波長が1064nmのレーザ光とその3次高調波の355nmを含み、その周波数は例えば200HzであるNd:YAGレーザ光である。このレーザ光源から出射されたパルスレーザ光は、図1に示すシリンドリカルレンズアレイ2a、2bに入射し、シリンドリカルレンズ12により、平板状のビーム4に整形される。これにより、基板1の表面には、照射領域5が帯状のレーザビーム4が照射される。
【0019】
図9は、ガラス基板20上に6枚の液晶表示パネルが形成される6枚取りのガラス基板を示す。この各表示パネルは、第1領域としての画素が形成される画素領域21と、第2領域としての駆動回路が形成される周辺領域22とから構成される。
【0020】
例えば、液晶表示装置の周辺回路として、画素の駆動トランジスタを形成する場合、ガラス基板上にAl等の金属膜からなるゲート電極を、スパッタによりパターン形成する。そして、シラン及びH2ガスを原料ガスとし、250〜300℃の低温プラズマCVD法により、全面にSiN膜からなるゲート絶縁膜を形成する。その後、ゲート絶縁膜上に、例えば、プラズマCVD法によりa−Si:H膜を形成する。このa−Si:H膜はシランとH2ガスを混合したガスを原料ガスとして成膜する。このa−Si:H膜のゲート電極上の領域をチャネル形成予定領域として、このチャネル形成予定領域にレーザ光を照射してアニールし、このチャネル形成予定領域を多結晶化してポリシリコンチャネル領域を形成する。
【0021】
このレーザ処理に際し、図2は、画素領域のレーザ照射態様を示し、図3乃至図8は、周辺領域のレーザ照射態様を示す。先ず、図2に示す画素領域においては、シリンドリカルレンズアレイ2a、2bの例えば8個のシリンドリカルレンズ12により、画素ピッチGと同一ピッチで、例えば、8個のレーザビーム4が基板1上に照射される。そして、制御装置が、基板1又はレーザ照射系を相対的にレーザビーム4の照射領域5の幅方向(矢印a方向)に移動させる。このとき、例えば、基板1をa方向に移動させる場合、制御装置は、基板1が画素ピッチGだけ移動したときに、レーザ光を照射する。これは、例えば、基板1にアライメントマークを画素ピッチGで複数個形成しておき、このアライメントマークをカメラ(図示せず)により撮像し、基板1がa方向に移動してカメラによりアライメントマークが検出される都度、パルス状のレーザビーム4を基板1に照射すればよい。これにより、基板1には1ショットで8個のレーザビーム4が画素ピッチGの間隔で照射される。そして、画素ピッチGだけ基板1を相対的に移動させる都度、パルスレーザ光のショットを行う。これにより、定常状態では、基板上において1カ所のレーザビーム照射を受けた位置では、8回、レーザショットを受けることになり、基板上のa−Si膜は、8回、レーザ処理を受ける。これにより、このレーザ処理を受けた照射領域5において、a−Siがポリシリコンに改質される。前述のごとく、例えば、パルスレーザ光の照射領域5の幅は250μm、長さは50mmであり、画素ピッチGは750μmであり、1個の画素トランジスタの大きさが30μm四方であるから、照射領域5は50mmの長さの領域に1列に並ぶ全ての画素トランジスタを十分にカバーする領域であり、この画素ピッチG毎に照射領域5を形成して、基板をレーザ光で走査することにより、全ての画素トランジスタ形成予定領域のアモルファスシリコンをポリシリコンに改質することができる。一方、画素ピッチが750μmであるから、500μmの領域には、レーザ光が照射されない。このため、レーザ処理を効率化及び迅速化することができ、タクトタイムを短縮することができる。
【0022】
一方、周辺領域22の駆動回路の形成領域においては、図3に示すように、1ショットのレーザビーム4の照射を行い、1個の照射領域5を形成した後、図4に示すように、基板1を相対的に照射領域5の幅だけ、この幅方向(a方向)に移動させ(シフトさせ)、その後、1ショットのレーザビーム4を照射する。これにより、2ショットのレーザ照射領域5が連なって形成される。
【0023】
次に、図5に示すように、基板1を相対的に照射領域5の幅だけ、この幅方向に移動させ、その後、1ショットのレーザビーム4を照射する。これにより、3ショットのレーザ照射領域5が連なって形成される。
【0024】
次に、図6に示すように、基板1を相対的に照射領域5の幅だけ、この幅方向に移動させ、その後、1ショットのレーザビーム4を照射する。これにより、4ショットのレーザ照射領域5が連なって形成される。
【0025】
次に、図7に示すように、基板1を相対的に照射領域5の幅だけ、この幅方向に移動させ、その後、1ショットのレーザビーム4を照射する。これにより、5ショットのレーザ照射領域5が連なって形成される。
【0026】
次に、図8に示すように、基板1を相対的に照射領域5の幅だけ、この幅方向に移動させ、その後、1ショットのレーザビーム4を照射するという動作を繰り返すことにより、周辺回路22の全領域にてレーザ照射領域5が連なり、周辺領域22の全領域がレーザ処理を受ける。
【0027】
このようにして、レーザ処理を間引いてレーザ処理を迅速化することができる第1領域(例えば、画素領域)では、画素トランジスタ形成予定領域のようにレーザ処理が必要な領域のみ、レーザ処理し、駆動トランジスタのように、形成予定領域に周期性が無く、任意の位置に形成する場合があるような第2領域(例えば,周辺領域)では、その全ての領域にレーザ処理する。これにより、従来よりも、レーザ処理を迅速化することができ、タクトタイムを短縮することができる。
【0028】
次に、第1領域及び第2領域のレーザ照射態様について説明する。図9に示すように、ガラス基板20には、その各表示パネルの形成領域(図示例は、6個)に、画素が形成される画素領域21とドライバ回路等が形成される周辺領域22とが設けられているが、先ず、この周辺領域22に合わせて、シリンドリカルレンズアレイ2aを含む光学系を位置させ、レーザビーム4の照射領域5をこの周辺領域22上に位置させる。つまり、このレーザビーム4の照射領域5の長手方向がこの周辺領域22の幅方向をまたぐようにシリンドリカルレンズアレイ2aを設置する。そして、図10に矢印bにて示すように、基板1をシリンドリカルレンズアレイ2aに対して相対的に照射領域5の幅方向に移動させ、図3乃至図8に示す工程によりレーザショットを行い、照射領域5を連ねることにより、周辺領域22の全域を図8に示すようにレーザ処理する。このとき、図10に示すレーザ処理領域は、幅が50mm(照射領域5の長さ)の帯状の領域となり、周辺領域22を超えて画素領域21の一部もレーザ処理される。この図3乃至図8に示す工程のレーザ処理は、最終的に、図10に示すように、レーザ走査方向に直交する方向(矢印c方向)にシフトされて、終了する。つまり、図10に示す工程の最後において、シリンドリカルレンズアレイ12aは、図10に矢印bにて示す走査方向に垂直の方向(矢印c方向)に、照射領域5の長さ分シフトする。
【0029】
その後、図11に示すように、レーザショットを図10の逆方向(矢印d方向)に走査するが、このとき、画素領域21においては、図2に示す態様により、照射領域5を形成していく。従って、画素領域21において、画素ピッチG(750μm)で幅が250μmの照射領域5が形成される。この照射領域5の中間の領域は、レーザ処理されない。これにより、画素領域21内の画素トランジスタのチャネル領域を含む領域が、レーザ処理されて、ポリシリコン膜に改質される。なお、1枚のガラス基板20から複数枚(図示例は8枚)の表示パネルが得られるが、レーザ走査が、画素領域21から別のパネルの画素領域21に移動する際には、パネル間の周辺領域23を通過するので、この周辺領域23も、図3乃至図8に示す工程でその全域をレーザ処理する。以後、同様の工程を繰り返して、ガラス基板の全域を、画素ピッチGでレーザショットする工程と、照射領域が連なるようにレーザショットする工程とにより、レーザ処理する。
【0030】
このようにして、画素トランジスタ及び駆動トランジスタのチャネル領域は、アモルファスシリコンからポリシリコンに改質され、トランジスタ動作の高速化が確保される。一方、トランジスタが形成されない領域は、アモルファスシリコンのままである。これにより、レーザ処理の迅速化及び高速化を図ることができ、レーザ処理のタクトタイムを短縮することができる。
【0031】
図12は、横軸にパネルサイズをとり、縦軸にタクトタイムをとって、本発明の効果を示すグラフ図である。図中、■は、波長が308nmで周波数が600Hzのエキシマレーザを使用して基板の全面をレーザ処理した場合のタクトタイムである。また、▲は波長が355nm+1064nmで周波数が200HzのNd:YAGレーザを使用して基板の全面をレーザ処理した場合のタクトタイムである。これに対し、◆は、本発明の実施形態であり、波長が355nm+1064nmで周波数が200HzのNd:YAGレーザを使用して、基板を図11に示すようにレーザ処理した場合のタクトタイムである。この図12から明らかなように、パネルサイズが20インチの場合はあまり効果がないが、パネルサイズが40インチから70インチになるにつれて、タクトタイムが大幅に短くなっている。パネルサイズが大きいほど、本発明の効果が大きいのは、パネルサイズが大きくなると、画素領域の面積が周辺領域の面積に比して、相対的に大きくなるからである。
【0032】
本発明は、液晶表示パネルの製造に限らず、レーザ処理が必要な技術分野において、そのタクトタイムの向上に有効である。また、1個のシリンドリカルレンズアレイ2a、2bに形成するシリンドリカルレンズ12の数は、上記実施形態では8個であったが、本発明は、これに限らず、種々設定することができる。図2に示す工程においては、基板1のレーザ処理箇所は、通常、このシリンドリカルレンズ12の個数に応じて、それと同数のレーザ処理を受けるが、シリンドリカルレンズ2a、2bの1回の移動を、画素ピッチGの2倍以上とすることにより、基板上のレーザ処理箇所のレーザ処理の回数を、シリンドリカルレンズ2a、2bの数の1/2以下に減じることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、液晶表示装置の表示パネルのように、膜の改質のようにレーザ処理が必要な技術分野に有益である。
【符号の説明】
【0034】
1:基板
2a、2b:シリンドリカルレンズアレイ
4:レーザビーム
5:照射領域
12:シリンドリカルレンズ
20:ガラス基板
21:画素領域
22:周辺領域
23:周辺領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザ光を発光するレーザ光源と、このレーザ光源からのパルスレーザ光を基板上の照射領域が複数本の帯状になるように整形する複数個のシリンドリカルレンズと、前記基板と前記シリンドリカルレンズとを前記照射領域の幅方向及び長手方向に相対的に移動させるように制御する制御装置と、を有し、前記シリンドリカルレンズはその長手方向に垂直の方向に一定のレンズピッチで相互に平行に配置されており、前記制御装置は、前記基板上の第1領域では、前記帯状の照射領域がその幅方向に第1ピッチとなるようにパルスレーザ光を照射し、第2領域では、前記帯状の照射領域がその幅方向に前記第1ピッチよりも小さい第2ピッチでパルスレーザ光を照射するように前記レーザ光源の発光と前記基板及び前記シリンドリカルレンズの相対的移動を制御することを特徴とするレーザ処理装置。
【請求項2】
前記基板は、1又は複数個の液晶表示パネルを製造するガラス基板であり、前記第1領域は画素領域であり、前記第2領域は駆動回路を形成する前記パネルの周辺領域であり、前記制御装置は、前記ガラス基板上の前記第1領域では、前記パルスレーザ光の照射領域が画素領域の画素ピッチと一致するように前記パルスレーザ光を照射し、前記ガラス基板上の前記第2領域では、前記パルスレーザ光の照射領域がその幅方向に相互に連なるようにその幅以下のピッチでパルスレーザ光を照射するように制御することを特徴とする請求項1に記載のレーザ処理装置。
【請求項3】
前記基板にはアライメントマークが画素ピッチGで複数個形成されており、このアライメントマークを撮像するカメラを設け、前記制御装置は、前記カメラが、基板上のアライメントマークを検出する都度、パルスレーザ光を照射させることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ処理装置。
【請求項1】
パルスレーザ光を発光するレーザ光源と、このレーザ光源からのパルスレーザ光を基板上の照射領域が複数本の帯状になるように整形する複数個のシリンドリカルレンズと、前記基板と前記シリンドリカルレンズとを前記照射領域の幅方向及び長手方向に相対的に移動させるように制御する制御装置と、を有し、前記シリンドリカルレンズはその長手方向に垂直の方向に一定のレンズピッチで相互に平行に配置されており、前記制御装置は、前記基板上の第1領域では、前記帯状の照射領域がその幅方向に第1ピッチとなるようにパルスレーザ光を照射し、第2領域では、前記帯状の照射領域がその幅方向に前記第1ピッチよりも小さい第2ピッチでパルスレーザ光を照射するように前記レーザ光源の発光と前記基板及び前記シリンドリカルレンズの相対的移動を制御することを特徴とするレーザ処理装置。
【請求項2】
前記基板は、1又は複数個の液晶表示パネルを製造するガラス基板であり、前記第1領域は画素領域であり、前記第2領域は駆動回路を形成する前記パネルの周辺領域であり、前記制御装置は、前記ガラス基板上の前記第1領域では、前記パルスレーザ光の照射領域が画素領域の画素ピッチと一致するように前記パルスレーザ光を照射し、前記ガラス基板上の前記第2領域では、前記パルスレーザ光の照射領域がその幅方向に相互に連なるようにその幅以下のピッチでパルスレーザ光を照射するように制御することを特徴とする請求項1に記載のレーザ処理装置。
【請求項3】
前記基板にはアライメントマークが画素ピッチGで複数個形成されており、このアライメントマークを撮像するカメラを設け、前記制御装置は、前記カメラが、基板上のアライメントマークを検出する都度、パルスレーザ光を照射させることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−243818(P2012−243818A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109797(P2011−109797)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】
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