説明

レーザ加工機

【課題】ワークをレーザ光によって穴明け加工するものにあって、加工精度の低下の防止や作業の迅速化を可能とするレーザ加工機を提供する。
【解決手段】プリント基板4にレーザ光で穴明け加工を行うレーザ加工機は、テーブル装置にサブテーブル装置3を備えている。サブテーブル装置3は、プリント基板4とサブテーブル板12の載置面12aとの間に気圧を発生させてプリント基板4を浮上させる浮上装置15と、浮上したプリント基板4を上面4a側から抑える端部上面抑え装置30と、端部上面抑え装置30により浮上が抑えられたプリント基板4の側面4bを水平方向から挟み込み、プリント基板4の浮遊移動を抑えて整列させる整列装置40とを有している。プリント基板4の浮上により下方に溜まるデブリの影響を受けず、加工精度の低下の防止が図れると共に、フレキシブルシートの交換などの作業工程を低減し、作業の迅速化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリント基板等のワークをレーザ光によって穴明け加工するレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板を加工する加工機にあっては、加工位置精度の向上などを目的に、テーブルに対してプリント基板を固定及び位置決めする必要がある。例えば特許文献1のものでは、プリント基板を空中で支持し、下方側から真空ポンプに接続された複数のパイプで吸引し、空中のプリント基板の撓みを取る手法を採用している。また、例えば特許文献2のものでは、プリント基板を、テーブル上に交換可能に設けられた平板に対して真空吸着することで、プリント基板のテーブルに対する固定及び位置決めを行う手法を採用している。
【0003】
ところで、上記特許文献1及び特許文献2のものは、プリント基板上でワイヤボンディング等の電極接続作業を行うものであり、穴明け加工するものではない。プリント基板に穴明け加工を施す場合、プリント基板の下方にデブリが排出されるため、上記特許文献1及び特許文献2のように真空吸着するものでは、デブリを真空ポンプに吸入してしまう虞があり、好ましい手法ではない。
【0004】
そのため、一般的にレーザ光によりプリント基板に穴明け加工を行うものでは、テーブルとプリント基板との間に網目状のフレキシブルシートを挿入して該プリント基板を固定し、穴明け加工により発生するデブリを該フレキシブルシートに付着させる手法が採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−79098号公報
【特許文献2】特開平8−64997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようなテーブルとプリント基板との間にフレキシブルシートを挿入する手法であっても、何枚かのプリント基板に穴明け加工を施しているうちに、同じ箇所にデブリが溜まるという問題がある。このように同じ箇所にデブリが溜まると、プリント基板の載置面が凸凹となり、新たに載置されるプリント基板に歪みが生じるため、加工精度の低下を招く虞がある。このような加工精度の低下を防止するためには、フレキシブルシートを頻繁に交換する必要があり、作業の迅速化の妨げとなる。
【0007】
そこで本発明は、ワークをレーザ光によって穴明け加工するものにあって、加工精度の低下の防止や作業の迅速化を可能とするレーザ加工機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は(例えば図1乃至図6参照)、レーザ光(61)を照射自在な加工ヘッド(5)と、板状のワーク(4)を載置し得る載置面(12a)を有するテーブル(11)と、を備え、前記加工ヘッド(5)と前記テーブル(11)とを水平方向に相対移動制御し、ワーク(4)にレーザ光(61)を照射して穴明け加工を行うレーザ加工機(1)において、
前記テーブル(11)は、
ワーク(4)と前記載置面(12a)との間に気圧を発生させて該ワーク(4)を浮上させる浮上装置(15)と、
前記浮上装置(15)により浮上したワーク(4)を上面(4a)側から抑える上面抑え装置(30,50)と、
前記上面抑え装置(30,50)により浮上が抑えられたワーク(4)の側面(4b)を、前記水平方向の少なくとも1軸方向に挟み込み、該ワーク(4)の浮遊移動を抑えて整列させる整列装置(40)と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は(例えば図2及び図3参照)、前記上面抑え装置(30)は、前記載置面(12a)に載置されたワーク(4)の端部の上方に進退自在な端部抑え部材(35)と、前記端部抑え部材(35)をワーク(4)の端部の上方に進退自在に移動駆動させる端部抑え部材駆動装置(31)と、を有し、
前記上面抑え装置(30)は、ワーク(4)の搬入時に前記端部抑え部材(35)をワーク設置領域の上方から退避させ、ワーク(4)の搬入後にあって前記浮上装置(15)を起動する前に前記端部抑え部材(35)をワーク設置領域の上方に進出させ、ワーク(4)の搬出時に前記端部抑え部材(35)をワーク設置領域の上方から退避させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は(例えば図4乃至図6参照)、前記上面抑え装置(50)は、前記浮上装置(15)の気圧により浮上したワーク(4)が上方に撓むことを防止するように該ワーク(4)の上面(4a)上を移動自在な撓み抑え部材(54A,54B)と、前記撓み抑え部材(54A,54B)をワーク(4)の上面(4a)上で移動駆動させる撓み抑え部材駆動装置(51A,51B)と、を有し、
前記上面抑え装置(50)は、前記穴明け加工時に、前記加工ヘッド(5)に対向するレーザ照射領域(60)の移動に合わせて、前記撓み抑え部材(54A,54B)を該レーザ照射領域(60)の近傍に位置するように移動することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は(例えば図6参照)、前記浮上装置により浮上したワークを前記上面抑え装置に吸着させる吸着装置(70)を有することを特徴とする。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明によると、浮上装置によりワークを浮上し、上面抑え装置により浮上したワークを上面側から抑えると共に、整列装置によりワークの浮遊移動を抑えて整列させるので、ワークを浮遊させた状態で高精度に位置決めすることができると共に、下方に溜まるデブリの影響を受けないようにすることができ、加工精度の低下の防止を図ることができる。また、テーブルとプリント基板との間にフレキシブルシートを挿入することを不要とすることができ、フレキシブルシートの交換などの作業工程を低減し、作業の迅速化も図ることができる。
【0014】
請求項2に係る本発明によると、上面抑え装置が、ワークの搬入時に端部抑え部材をワーク設置領域の上方から退避させ、ワークの搬入後にあって浮上装置を起動する前に端部抑え部材をワーク設置領域の上方に進出させ、ワークの搬出時に端部抑え部材をワーク設置領域の上方から退避させるので、ワークを浮上した際にワークを端部抑え部材により上面側から抑えることができるものでありながら、ワークの搬入や搬出を円滑に行うことを可能とすることができる。
【0015】
請求項3に係る本発明によると、上面抑え装置が、穴明け加工時に、加工ヘッドに対向するレーザ照射領域の移動に合わせて、撓み抑え部材を該レーザ照射領域の近傍に位置するように移動するので、気圧によってワークのレーザ照射領域が上方に撓むことの防止を図ることができる。
【0016】
請求項4に係る本発明によると、浮上装置により浮上したワークを上面抑え装置に吸着させる吸着装置を有しているので、穴明け加工が進行して気圧による浮力が減少してきた場合にあっても、ワークを浮上した位置に保持することを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係るレーザ加工機を示す正面図。
【図2】端部上面抑え装置及び整列装置を示す拡大模式図で、(a)はテーブルにワークを載置した状態の図、(b)はワークを浮上して上面から抑えた状態の図、(c)はワークの浮遊移動を抑えた状態の図。
【図3】ワークの浮上及び整列を示す説明図で、(a)はテーブルにワークを載置した状態の図、(b)は端部抑え部材をワーク設置領域の上方に進出させた状態の図、(c)はワークを浮上して上面から抑えた状態の図、(d)はワークの浮遊移動を抑えた状態の図。
【図4】ワークの穴明け加工時を示す説明図で、(a)は上方視図、(b)は断面側面図。
【図5】撓み抑え装置を示す上方視模式図。
【図6】ワークの穴明け加工中を示す一部拡大断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態を図1乃至図6に沿って説明する。図1に示すように、板状のワークであるプリント基板4に穴明け加工を行うレーザ加工機1は、床面に設置されるベッド20を有しており、該ベッド20の上方には門型コラム6が固定されている。
【0019】
門型コラム6の上部には、レーザ発振器7が配設されており、該レーザ発振器7から発信されたレーザ光は、ミラー8によって偏向され、加工ヘッド5に導かれる。加工ヘッド5は、ガルバノスキャナ9及びfθレンズ10を有しており、ミラー8から導かれたレーザ光を、ガルバノスキャナ9により位置決めすると共にfθレンズ10を通過させて、後述するプリント基板(ワーク)4のレーザ照射領域60における所望の位置に精度良く照射自在に構成され、該プリント基板4の所望の位置に穴明け加工を施す。
【0020】
一方、加工ヘッド5の下方側にあって、上記ベッド20の上面には、テーブル装置11が配置されている。テーブル装置(テーブル)11は、水平方向であるXY方向に移動駆動自在なXYテーブル2とその上方に設置されたサブテーブル装置3とを有して構成されている。XYテーブル2は、ベッド20に対してY方向に移動駆動自在なY方向テーブル2Yと、該Y方向テーブル2Yに対してX方向に移動駆動自在なX方向テーブル2Xと、を有して構成されている。
【0021】
これらY方向テーブル2YとX方向テーブル2Xとは、それぞれ図示を省略したモータ等のアクチュエータで駆動されるボールネジ等の動力伝達手段を介して移動駆動される。これにより、加工ヘッド5とテーブル装置11とは、不図示の制御部によって、水平方向に相対移動制御され、プリント基板4に対する加工領域(レーザ照射領域60)の位置制御が行われる。サブテーブル装置3は、図3に示すように、プリント基板4を載置し得る載置面12aが上面に形成されたサブテーブル板12を有しており、該サブテーブル板12の下方側には、浮上装置15が配設されている。
【0022】
詳細には、テーブル装置11が有する浮上装置15は、サブテーブル板12の下方側を覆うように、かつサブテーブル板12の下方に密封空間16aを存するように該サブテーブル板12に密着されたエア密封板16と、該密封空間16a、パイプライン17を介して接続されたコンプレッサ18とを有している。上記サブテーブル板12には、図示を省略した多数の貫通孔が形成されており、浮上装置15は、コンプレッサ18を起動すると、パイプライン17を介して密封空間16aに気圧が生じ、多数の貫通孔を介してサブテーブル板12の載置面12aから気圧が発生するように空気Airが噴き出し、プリント基板4を浮上させるように構成されている。なお、この気圧は、プリント基板4の種類や厚み等にもよるが、0.2〜0.3MPa程度の圧力となることが望ましい。
【0023】
一方、図2に示すように、サブテーブル装置3の外縁部分には、上面抑え装置としての端部上面抑え装置30と整列装置40とが配設されている。詳細には、サブテーブル板12の外縁部分にベース部材25が固着されて設置されており、該ベース部材25の内側(プリント基板4を載置する側)にあって、上方に上面抑え装置30が配置され、下方に整列装置40が配置されている。
【0024】
詳細には、テーブル装置11が有する端部上面抑え装置30は、上記浮上装置15により浮上したプリント基板4を上面側から抑えるためのものであり、大まかに、載置面12aに載置されたプリント基板4の端部の上方に進退自在な端部抑え部材35と、該端部抑え部材35をプリント基板4の端部の上方に進退自在に移動駆動させる端部抑え用アクチュエータ(端部抑え部材駆動装置)31と、を有している。端部抑え用アクチュエータ31は、例えば直動式エアシリンダ型からなり、伸縮駆動自在な駆動軸33と、該駆動軸33の先端部に取付けられたフランジ32とを有しており、該フランジ32が端部抑え部材35の側面に固着されている。
【0025】
端部抑え部材35は、プリント基板4の上面4aの端部に上方から当接し得る下面35aを有していると共に、内部に詳しくは後述する吸着装置70に接続される中空孔35bが形成されている。該端部抑え部材35は、端部抑え用アクチュエータ31によりプリント基板4(ワーク設置領域)の端部の上方に進出されることで、下面35aが浮上したプリント基板4の端部を上方から抑え、該プリント基板4の浮上を抑えることになる。なお、端部抑え部材35及び端部抑え用アクチュエータ31のセットは、図4(a)に示すように、サブテーブル装置3の四辺に配置されており、それぞれ内側に進退移動し得るように構成されている。
【0026】
一方、テーブル装置11が有する整列装置40は、プリント基板4の浮遊移動を抑えて整列するためのものであり、大まかに、プリント基板4の側面4bを挟み込むための端面45aが形成された側面抑え部材45と、該側面抑え部材45をプリント基板4のX方向(水平方向の少なくとも1軸方向)に対して進退自在に移動駆動させる側面抑え用アクチュエータ41と、を有している。側面抑え用アクチュエータ41は、例えば直動式エアシリンダ型からなり、伸縮駆動自在な駆動軸43と、該駆動軸43の先端部に取付けられたフランジ42とを有しており、該フランジ42が側面抑え部材45の側面に固着されている。
【0027】
プリント基板4の上記側面抑え部材45とは反対側には、図3に示すように、サブテーブル板12に固定されているだけの当接部材48が備えられており、側面抑え用アクチュエータ41の伸縮によって側面4bが押されたプリント基板4は、当接部材48の側面48aと側面抑え部材45の端面45aとの間に挟み込まれて、該プリント基板4の浮遊移動が抑えられ、当接部材48に対して該プリント基板4が整列される形となる。
【0028】
なお、本実施の形態における整列装置40は、当接部材48と側面抑え部材45とでプリント基板4をX方向に挟み込むものを説明したが、プリント基板4をY方向に挟み込むように構成したものでもよく、さらに、プリント基板4をX方向及びY方向の両方向に対して挟み込むように構成したものでもよい。
【0029】
一方、サブテーブル装置3の上方部分には、図5に示す上面抑え装置としての撓み抑え装置50が配設されている。詳細には、テーブル装置11が有する撓み抑え装置50は、プリント基板4の設置領域よりもY方向の外側にあって、X方向に平行に対向して配置された直動アクチュエータ(撓み抑え部材駆動装置)51A,51Bと、それら直動アクチュエータ51A,51Bによってそれぞれ移動駆動される移動部材52A,52Bと、Y方向に対向した一対からなり、そのうちの一方が移動部材52A,52Bに固定された軸受部材53A,53Bと、一対の軸受部材53A,53BをX方向に対して移動自在に支持する一対のリニアガイド58,58と、一対の軸受部材53A,53Bのそれぞれにより回転自在に支持された2本の抑えローラ(撓み抑え部材)54A,54Bと、を有して構成されている。
【0030】
即ち、直動アクチュエータ51A,51Bの駆動によって、これら2本の抑えローラ54A,54Bが、浮上したプリント基板4が上方に撓むことを防止するようにプリント基板4の上面4a上を転動移動し得るように構成されている。これら2本の抑えローラ54A,54Bは、プリント基板4上のレーザ照射領域60の近傍に位置するように移動制御され、例えば図5中の左方側のレーザ照射領域60について穴明け加工を行う際は、図5中実線で示す位置にあり、例えばレーザ照射領域60が図5中の右方側の位置に移動した場合は、抑えローラ54Bが図5中二点鎖線で示す位置に移動すると共に、抑えローラ54Aが抑えローラ54Bのあった位置に移動するように構成されている。なお、抑えローラ54Aと抑えローラ54Bとの間隔は、レーザ照射領域60の大きさ(加工ヘッド5のサイズ)に起因して決定されるが、概ね30〜150mm程度となる。
【0031】
上記抑えローラ54A,54Bは、図6に示すように、内部にそれぞれ中空孔54Aa,54Baが形成されていると共に、それら抑えローラ54A,54Bの表面からは、中空孔54Aa,54Baに向けて図示を省略した多数の貫通孔が形成されている。抑えローラ54A,54Bの形態としては多孔質、メッシュ、スポンジ等であり、材質としては金属、セラミック、樹脂等が用いられる。一方、上述した端部抑え部材35の下面35aからも、中空孔35bに向けて多数の貫通孔35hが形成されている。これら抑えローラ54A,54Bの中空孔54Aa,54Baと、上述した端部抑え部材35の中空孔35bとは、吸着装置70のパイプライン72に接続されており、該パイプライン72は真空ポンプ71に接続されている。即ち、端部抑え部材35の貫通孔35hや抑えローラ54A,54Bの貫通孔(不図示)は、それぞれ中空孔35b,54Aa,54Baが真空ポンプ71により真空状態に吸引されることにより、それぞれの貫通孔から矢印Vacのように空気を吸引し、プリント基板4の上面4aを吸着し得るように構成されている。なお、貫通孔35hはドリル孔であり、図6の紙面垂直方向に列状に複数設けられている。この端部抑え部材35の材質は金属、樹脂、ゴム等が用いられる。
【0032】
なお、本実施の形態では、プリント基板4の上方への撓みを抑えるものとして、抑えローラ54A,54Bを用い、プリント基板4の上面4a上を転動移動するものを説明したが、プリント基板4の表面を傷付けないような素材を用いたものであれば、例えば板状に形成してプリント基板4の上面4a上を摺動させるように構成してもよい。
【0033】
つづいて、本レーザ加工機1の動作について図に沿って説明する。プリント基板4の搬入時にあっては、図2(a)及び図3(a)に示すように、サブテーブル装置3の4辺の端部抑え部材35は、外側に向かって退避した位置にあり、また、側面抑え部材45も外側に向かって退避した位置にある。これにより、プリント基板4は、図示を省略した搬入装置によって、何ら阻害されることなく、サブテーブル板12の載置面12a上に搬入されて載置される。
【0034】
サブテーブル板12の載置面12a上にプリント基板4が搬入されると、図3(b)に示すように、端部上面抑え装置30は、サブテーブル装置3の4辺にある端部抑え部材35を、端部抑え用アクチュエータ31によりプリント基板4の端部の上方(ワーク設置領域の上方)に進出される。
【0035】
続いて、図2(b)及び図3(c)に示すように、浮上装置15のコンプレッサ18は作動され、密封空間16aに気圧が生じると、図示を省略したサブテーブル板12の貫通孔から空気Airが噴出され、プリント基板4が浮上される。浮上したプリント基板4の上面4aは、上述のように進出された端部抑え部材35の下面35aに当接し、つまり端部上面抑え装置30によってプリント基板4の4辺の端部が上方から抑えられる。
【0036】
そして、図2(c)及び図3(d)に示すように、整列装置40は、側面抑え部材45を側面抑え用アクチュエータ41により駆動し、該側面抑え部材45をプリント基板4の側面4bに当接させて押圧していくことで、プリント基板4の反対側にある当接部材48と該側面抑え部材45とにより水平方向に対して挟み込む。これにより、プリント基板4は、当接部材48に対して水平方向に整列され、プリント基板4を浮遊させた状態でサブテーブル装置3に対して高精度に位置決めすると共に、サブテーブル板12の貫通孔から噴出された空気Airがプリント基板4の端部の隙間から逃げることを抑制し、プリント基板4の浮上用の気圧の維持も行う。
【0037】
以上のようにプリント基板4が浮上されつつ上方から抑えられ、かつ水平方向に対して位置決めされると、上述したXYテーブル2(図1参照)によってXY方向の位置が制御され、図4(a)に示すように、加工ヘッド5の真下のレーザ照射領域60が所望の穴明け加工位置に位置合せされる。例えば図4(a)に示す状態では、図中の最も左側の一列目における複数のレーザ照射領域60を上方から下方(即ちY方向)にかけて順次移動して穴明け加工し、次に一列右側(即ちX方向)に移行して、図中の左側から二列目における複数のレーザ照射領域60を上方から下方にかけて順次移動して穴明け加工する。
【0038】
1つのレーザ照射領域60について穴明け加工する際は、図4(b)に示すように、ガルバノスキャナ9によって位置制御されたレーザ光61により、そのレーザ照射領域60において複数箇所の穴明け加工を行うものである。1つのレーザ照射領域60について穴明け加工が終了すると、図4(a)に沿って説明したように、次のレーザ照射領域60へ、順次上方から下方に移動し、かつその列が終了すると一列ずつ右側に移動するように加工範囲を移動していくことになる。
【0039】
そして、図4(a)に示すように、上方から下方にかけて一列のレーザ照射領域60について穴明け加工を行う場合には、プリント基板4のその列が位置する部分が上方に撓まないように、撓み抑え装置50の直動アクチュエータ51A,51Bが駆動制御され、抑えローラ54A及び抑えローラ54Bが、図4(b)に示すように、そのレーザ照射領域60の一列の両側近傍を上方から抑えるように位置制御される。これにより、プリント基板4の加工部分において上記気圧による撓みが抑えられ、高精度の穴明け加工を可能にする。
【0040】
なお、上記で説明したレーザ照射領域60の移動制御は、上記図4(a)のパターン(図中左側の列から右側の列へ移動するパターン)に限るものではなく、どのような移動パターンでも構わないが、どのようなパターンであっても、穴明け加工するレーザ照射領域60に対する両側近傍に抑えローラ54A及び抑えローラ54Bが位置するように制御することが好ましい。
【0041】
ところで、上述のようにレーザ照射領域60においてレーザ光61によりプリント基板4に穴明け加工を行うと、図6に示すように、穴明け加工されたスルーホール4hが多数形成されることになる。すると、プリント基板4とサブテーブル板12との間に溜まっていた気圧(噴出された空気Air)が、それらスルーホール4hから漏れ出し、プリント基板4の浮力が減少していくことになり、スルーホール4hが増えると、プリント基板4の落下の虞も生じてくる。
【0042】
そこで、上述した吸着装置70の真空ポンプ71を駆動し、端部抑え部材35の中空孔35bと抑えローラ54A,54Bの中空孔54Aa,54Baとを介して、端部抑え部材35の貫通孔35hや抑えローラ54A,54Bの貫通孔(不図示)から、矢印Vacのように空気を吸引し、プリント基板4の上面4aを吸着する。これにより、穴明け加工が進行してスルーホール4hが増えたとしても、プリント基板4の落下が確実に防止され、プリント基板4を浮上した位置に保持する。
【0043】
このようにして吸着装置70によりプリント基板4を吸着しながら、抑えローラ54A,54Bを移動しつつレーザ照射領域60を移動制御していき、プリント基板4に対する全ての穴明け加工を終了する。すると、吸着装置70によるプリント基板4の吸着を解除し、かつ浮上装置15による浮上を終了する。これにより、プリント基板4は、サブテーブル板12の載置面12a上に載置される。さらに、抑えローラ54A,54Bをプリント基板4の上方から退避させると共に、4辺の端部抑え部材35もプリント基板4の上方から退避させる。これにより、穴明け加工を終了したプリント基板4は、図示を省略した搬出装置によって、何ら阻害されることなく、レーザ加工機1の外部に搬出される。
【0044】
以上説明したように本レーザ加工機1によると、浮上装置15によりプリント基板4を浮上し、上面抑え装置としての端部上面抑え装置30や撓み抑え装置50により浮上したプリント基板4を上面4a側から抑えると共に、整列装置40によりプリント基板4の浮遊移動を抑えて整列させるので、プリント基板4を浮遊させた状態で高精度に位置決めすることができると共に、下方(サブテーブル板12の載置面12a)に溜まるデブリの影響を受けないようにすることができ、加工精度の低下の防止を図ることができる。また、例えばサブテーブル板12とプリント基板4との間にフレキシブルシートを挿入することを不要とすることができ、フレキシブルシートの交換などの作業工程を低減し、作業の迅速化も図ることができる。
【0045】
また、端部上面抑え装置30が、プリント基板4の搬入時に端部抑え部材35をプリント基板4の設置領域の上方から退避させ、プリント基板4の搬入後にあって浮上装置15を起動する前に端部抑え部材35をプリント基板4の設置領域の上方に進出させ、プリント基板4の搬出時に端部抑え部材35をプリント基板4の設置領域の上方から退避させるので、プリント基板4を浮上した際にプリント基板4を端部抑え部材35により上面側から抑えることができるものでありながら、プリント基板4の搬入や搬出を円滑に行うことを可能とすることができる。
【0046】
さらに、撓み抑え装置50が、穴明け加工時に、加工ヘッド5に対向するレーザ照射領域60の移動に合わせて、抑えローラ54A,54Bを該レーザ照射領域60の近傍に位置するように移動するので、気圧によってプリント基板4のレーザ照射領域60の部分が上方に撓むことの防止を図ることができる。
【0047】
そして、浮上装置15により浮上したプリント基板4を、端部上面抑え装置30の端部抑え部材35や撓み抑え装置50の抑えローラ54A,54Bに吸着させる吸着装置70を有しているので、穴明け加工が進行して気圧による浮力が減少してきた場合にあっても、プリント基板4を浮上した位置に保持することを可能とすることができる。
【0048】
なお、以上説明した実施の形態においては、ワークがプリント基板であるものを説明したが、特に板状のものであれば、どのようなワークであっても、本発明を適用し得る。
【0049】
また、本実施の形態にあっては、門型コラム6に対して加工ヘッド5が固定され、テーブル装置11(つまりワーク)が水平方向に移動することで、加工領域を相対移動制御するものを説明したが、これに限らず、テーブル(つまりワーク)が固定され、加工ヘッドが水平方向に移動するものであっても、本発明を適用し得る。
【符号の説明】
【0050】
1 レーザ加工機
4 ワーク(プリント基板)
4a 上面
4b 側面
5 加工ヘッド
11 テーブル(テーブル装置)
12a 載置面
15 浮上装置
30 上面抑え装置(端部上面抑え装置)
31 端部抑え部材駆動装置(端部抑え用アクチュエータ)
35 端部抑え部材
40 整列装置
50 上面抑え装置(撓み抑え装置)
51A,51B 撓み抑え部材駆動装置(直動アクチュエータ)
54A,54B 撓み抑え部材(抑えローラ)
60 レーザ照射領域
61 レーザ光
70 吸着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射自在な加工ヘッドと、板状のワークを載置し得る載置面を有するテーブルと、を備え、前記加工ヘッドと前記テーブルとを水平方向に相対移動制御し、ワークにレーザ光を照射して穴明け加工を行うレーザ加工機において、
前記テーブルは、
ワークと前記載置面との間に気圧を発生させて該ワークを浮上させる浮上装置と、
前記浮上装置により浮上したワークを上面側から抑える上面抑え装置と、
前記上面抑え装置により浮上が抑えられたワークの側面を、前記水平方向の少なくとも1軸方向に挟み込み、該ワークの浮遊移動を抑えて整列させる整列装置と、を有する、
ことを特徴とするレーザ加工機。
【請求項2】
前記上面抑え装置は、前記載置面に載置されたワークの端部の上方に進退自在な端部抑え部材と、前記端部抑え部材をワークの端部の上方に進退自在に移動駆動させる端部抑え部材駆動装置と、を有し、
前記上面抑え装置は、ワークの搬入時に前記端部抑え部材をワーク設置領域の上方から退避させ、ワークの搬入後にあって前記浮上装置を起動する前に前記端部抑え部材をワーク設置領域の上方に進出させ、ワークの搬出時に前記端部抑え部材をワーク設置領域の上方から退避させる、
ことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記上面抑え装置は、前記浮上装置の気圧により浮上したワークが上方に撓むことを防止するように該ワークの上面上を移動自在な撓み抑え部材と、前記撓み抑え部材をワークの上面上で移動駆動させる撓み抑え部材駆動装置と、を有し、
前記上面抑え装置は、前記穴明け加工時に、前記加工ヘッドに対向するレーザ照射領域の移動に合わせて、前記撓み抑え部材を該レーザ照射領域の近傍に位置するように移動する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記浮上装置により浮上したワークを前記上面抑え装置に吸着させる吸着装置を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載のレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−71150(P2013−71150A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211631(P2011−211631)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000233332)日立ビアメカニクス株式会社 (237)
【Fターム(参考)】