説明

レーザ加工装置の液柱観察装置および液柱観察方法

【解決手段】加圧液体を液柱Cにして噴射するとともに該液柱でレーザ光Lを導光させて照射する噴射ノズル10aを有した加工ヘッド6を備えた液体レーザ加工装置2の液柱観察装置11に関する。液柱観察装置11は、上記加工ヘッドから液体が噴射されてレーザ光が照射されるレーザ光の反射板13と、上記噴射ノズルから出射される上記集光レンズ側への反射光を受光する受光手段14とを備えている。そして上記反射板に向けて加工ヘッドから液体を噴射してレーザ光を照射すると、判定手段17は該レーザ光が乱れのない液柱で導光されて上記反射板で反射したか、または、乱れた液柱の内部で散乱したかを、上記受光手段に受光された反射光から判定するようになっている。
【効果】噴射ノズルより噴射される液柱の乱れを検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工装置の液柱観察装置および液柱観察方法に関し、噴射ノズルより加圧液体を液柱にして噴射するとともに該液柱でレーザ光を導光させるレーザ加工装置の液柱観察装置および液柱観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加圧液体を供給する液体供給手段と、レーザ光を発振するレーザ発振器と、上記加圧液体を液柱にして噴射する噴射ノズルおよび上記液柱内に上記レーザ光を導光する集光レンズを有する加工ヘッドとを備え、上記レーザ光を上記液柱で導光させて照射するレーザ加工装置が知られている(特許文献1〜3)。
このうち特許文献1、2には上記液柱にレーザ光を導光するための光軸調整方法が記載され、また特許文献3には液柱で導光されたレーザ光の出力を測定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−262163号公報
【特許文献2】特開2007−61914号公報
【特許文献3】特開2009−248120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記加工ヘッドと被加工物とが最適な距離から離れると、上記液柱の加工ヘッドから遠い箇所の表面が空気の乱れなどから乱れ、その場合液柱の内部でレーザ光が散乱してしまい、被加工物の加工ができなくなる。
このため、従来は作業者が目視で加工ヘッドと被加工物との距離を調整して、液柱の乱れが発生しないようにしていたが、この調整作業は煩雑であり、またその間隔は作業者によってばらつきがあるなどの問題があった。
このような問題に鑑み、本発明は液柱の乱れを検出することが可能なレーザ加工装置の液柱観察装置および液柱観察方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1におけるレーザ加工装置の液柱観察装置は、加圧液体を供給する液体供給手段と、レーザ光を発振するレーザ発振器と、上記加圧液体を液柱にして噴射する噴射ノズルおよび上記液柱内に上記レーザ光を導光させる集光レンズを有する加工ヘッドとを備え、上記レーザ光を上記液柱で導光させて照射するレーザ加工装置の液柱観察装置であって、
上記加工ヘッドから液体が噴射されてレーザ光が照射されるレーザ光の反射板と、上記噴射ノズルから出射される上記集光レンズ側への反射光を受光する受光手段とを設け、
さらに、上記反射板に向けて加工ヘッドから液体を噴射してレーザ光を照射し、該レーザ光が乱れのない液柱で導光されて上記反射板で反射したか、または、乱れた液柱の内部で散乱したかを、上記受光手段に受光された反射光から判定する判定手段を備えたことを特徴としている。
【0006】
また請求項3におけるレーザ加工装置の液柱観察装置は、加圧液体を供給する液体供給手段と、レーザ光を発振するレーザ発振器と、上記加圧液体を液柱にして噴射する噴射ノズルおよび上記液柱内に上記レーザ光を導光させる集光レンズを有する加工ヘッドとを備え、上記レーザ光を上記液柱で導光させて照射するレーザ加工装置の液柱観察装置であって、
上記液体の噴射方向に対して斜めに設けられ、上記加工ヘッドから液体が噴射されてレーザ光が照射されるレーザ光を透過させる光透過部材と、該光透過部材を透過した透過光を検出する検出手段と、上記噴射ノズルから出射される上記集光レンズ側への反射光を受光する受光手段とを設け、
さらに、上記光透過部材に向けて加工ヘッドから液体を噴射してレーザ光を照射し、該レーザ光が乱れのない液柱で導光されて上記光透過部材を透過したか、または、乱れた液柱の内部で散乱したかを、上記検出手段による透過光の検出および上記受光手段による反射光の受光から判定する判定手段を備えたことを特徴としている。
【0007】
さらに請求項5におけるレーザ加工装置の液柱観察方法は、加圧液体を供給する液体供給手段と、レーザ光を発振するレーザ発振器と、上記加圧液体を液柱にして噴射する噴射ノズルおよび上記液柱内に上記レーザ光を導光させる集光レンズを有する加工ヘッドとを備え、上記レーザ光を上記液柱で導光させて照射するレーザ加工装置の液柱観察方法であって、
上記噴射ノズルから出射される上記集光レンズ側への反射光を受光する受光手段を設け、
上記受光手段で所定強度範囲内のレーザ光が受光されることで液柱に乱れがないと判定するとともに、上記所定強度範囲に満たないレーザ光が受光されることで乱れが生じていると判定し、さらに、上記所定強度範囲を超えるレーザ光が受光されることで上記噴射ノズルに対する集光レンズの光軸位置が一致していないと判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記請求項1の発明によれば、液柱が乱れなく反射板まで到達した場合、該液柱で導光されるレーザ光は上記反射板で反射し、その反射光は上記噴射ノズルから集光レンズ側に出射されて受光手段に受光されることとなる。
一方、液柱が反射板に到達する前に乱れた場合には、レーザ光は乱れた液柱の内部で反射して散乱し、それらの一部が噴射ノズルから集光レンズ側に出射されて、受光手段に受光されることとなる。
そして判定手段は、このような受光手段に受光されたレーザ光の反射光に基づき、上記液柱の乱れの有無を判定するようになっている。
【0009】
上記請求項3の発明によれば、液柱が乱れなく光透過部材まで到達した場合、該液柱内を導光されるレーザ光のほとんどは光透過部材を透過した透過光となって上記検出手段に受光され、レーザ光の反射光は受光手段に入射しないこととなる。
一方、液柱が光透過部材に到達する前に乱れた場合には、レーザ光は乱れた液柱の内部で反射して散乱し、それらの一部が噴射ノズルから集光レンズ側に出射されて、受光手段に受光されることとなる。
そして、判定手段は、このような検出手段への透過光や、受光手段に受光されたレーザ光の反射光に基づき、上記液柱の乱れの有無を判定するようになっている。
【0010】
上記請求項5の発明によれば、液柱に乱れがなくほとんどの反射光が受光手段に受光される場合に比較して、液柱に乱れがある場合は液柱の内部で散乱した一部の反射光しか受光手段に受光されないため、反射光の強度は弱いものとなる。
一方、レーザ光の光軸位置が噴射ノズルに一致していない場合は、噴射ノズルの縁でレーザ光が反射してその反射光が受光手段に受光されることとなり、このとき受光手段に受光される反射光の強度は液柱に乱れがなく受光手段に受光される場合に比較して強いものとなる。
つまり、上記受光手段に受光される反射光の強度に基づいて、液柱の乱れの有無と、レーザ光の光軸位置が一致しているか否かを判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例にかかるレーザ加工装置の液柱観察装置を示す正面図。
【図2】液柱内の光の散乱を説明する図。
【図3】反射板への噴射状態を説明する図。
【図4】光透過部材への噴射状態を説明する図。
【図5】受光手段に受光されたレーザ光の強度分布を示した図。
【図6】受光手段に受光されたレーザ光の強度分布を示した図。
【図7】受光手段に受光されたレーザ光の強度分布を示した図。
【図8】受光手段に受光されたレーザ光の強度分布を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図示実施例について説明すると、図1はレーザ加工装置1を示し、被加工物2を載置する作業テーブル3と、加圧液体を供給する液体供給手段4と、レーザ光Lを発振するレーザ発振器5と、上記加圧液体を液柱Cにして噴射するとともに、該液柱C内にレーザ光Lを導光する加工ヘッド6と、該加工ヘッド6を昇降させる移動手段としての昇降手段7とを備えている。
上記作業テーブル3はいわゆるX−Yテーブルとなっており、載置された被加工物2を水平なX−Y方向に移動させるようになっている。
上記液体供給手段4は水等の液体を加圧して上記加工ヘッド6に送液するようになっており、またレーザ発振器5は水に吸収されにくい波長を有するレーザ光Lを発振するようになっている。
上記加工ヘッド6は、上記昇降手段7によって垂直なZ方向に昇降されるようになっており、その内部には上記レーザ光Lを導光する反射ミラー8および集光レンズ9が設けられ、また加工ヘッド6の下端には上記加圧液体を噴射する噴射ノズル10aが形成されたノズル10が設けられている。
上記ノズル10は中空筒状に形成されるとともに、この中空部分に上記液体供給手段4より液体が供給され、該ノズル10の中空部分の上部はレーザ光Lを透過させるガラス板10bによって密封されていることから、上記液体は中空部分を満たして上記噴射ノズル10aより下方に噴射されるようになっている。
上記噴射ノズル10aの上方および下方はそれぞれ円錐状に拡径するように形成されており、これにより該噴射ノズル10aより噴射される液体は円柱状の液柱Cとなる。
そして、上記レーザ発振器5で発振されたレーザ光Lは、反射ミラー8で反射された後上記集光レンズ9によって集光されることにより、上記ガラス板10bを透過して噴射ノズル10aの内側に焦点を結ぶようになっており、その結果上記噴射ノズル10aにより形成される液柱Cの内部で導光されて上記被加工物2に照射されるようになっている。
なお、このようなレーザ加工装置1自体は従来公知であるため、これ以上の説明は省略する。
【0013】
上記構成を有するレーザ加工装置1において、上記ノズル10により形成される液柱Cは、その先端が噴射ノズル10aから離れ過ぎると、図2に示すように液柱Cの表面が空気との摩擦等によって乱れて拡散することが知られている。
レーザ光Lは液柱Cと周囲の大気との境界で反射しながら導光されるため、このように液柱Cの表面が乱れると、レーザ光Lは乱れた部分で反射して散乱し、一部は再び噴射ノズル10a側に向けて導光されてしまうことが判明した。
このため、本実施例にかかるレーザ加工装置1には、上記液柱Cの乱れを観察する液柱観察装置11を設けて、上記液柱Cの乱れが発生しないように加工ヘッド6と被加工物2との間隔を設定するようになっている。
【0014】
液柱観察装置11は、上記噴射ノズル10aの中心にレーザ光Lの焦点が位置するように光軸位置を調整する光軸調整手段12と、作業テーブル3に固定された反射板13と、上記加工ヘッド6に設けられた受光手段14と、作業テーブル3に固定された光透過部材15および検出手段16と、上記検出手段16や受光手段14に受光されたレーザ光Lに応じて上記液柱Cの乱れの有無を判定する判定手段17とから構成されている。
上記作業テーブル3には、上記被加工物2とは異なる位置に、上記反射板13と、光透過部材15および検出手段16とがそれぞれ固定されており、液柱Cの乱れを観察する際には、上記作業テーブル3がこれらを加工ヘッド6の下方に移動させるようになっている。
上記光軸調整手段12は上記ノズル10を水平方向に移動させる図示しない駆動手段によって構成され、ノズル10の噴射ノズル10aの中心にレーザ光Lの焦点を位置させるようになっている。
【0015】
上記反射板13は、上記作業テーブル3における上記被加工物2とは異なる位置に設けられており、ステンレスなどの金属板の表面を鏡面加工したものとなっている。
また、反射板13の上面の高さは上記被加工物2の上面の高さと同じ高さとなっている。
このような構成によれば、上記加工ヘッド6の噴射ノズル10aより噴射された液体からなる液柱Cが反射板13に到達するまで乱れなかった場合、図3に示すように上記液柱Cで導光されたレーザ光Lの大部分は、反射板13で反射することとなる。
その場合、反射したレーザ光Lの反射光は液柱Cを今度は噴射ノズル10aの方向に向けて上方に導光されることとなり、その反射光は噴射ノズル10aから集光レンズ9側に出射されて、ダイクロイックミラーからなる上記反射ミラー8を透過して受光手段14に受光される。
逆に、液柱Cが反射板13に到達するまでに乱れた場合、レーザ光Lは図2に示すように乱れた液柱Cで反射して散乱してしまうため、一部のレーザ光Lの反射光が液柱Cで噴射ノズル10aの方向に導光され、その反射光は噴射ノズル10aから集光レンズ9側に出射されて受光手段14に受光される。
この時受光手段14に受光されるレーザ光Lの反射光の強度は、反射板13まで乱れずに到達した液柱Cで導光されて上記反射板13で反射したレーザ光Lの反射光に比較すると、これに満たない非常に弱いものであって、微弱なレーザ光Lの反射光として受光される。
【0016】
上記受光手段14は、CCDカメラを備えるとともに受光したレーザ光Lの反射光の強度分布を計測するよう構成されており、上記加工ヘッド6に設けられている。詳しくは上記ノズル10に形成した噴射ノズル10aの中心軸上に設けられ、かつ上記集光レンズ9の上方に設けられている。
また受光手段14は上記反射ミラー8の上方に設けられており、上記反射ミラー8の下方より透過したレーザ光Lの反射光を受光すると、その強度信号を上記判定手段17に送信するようになっている。
つまり、受光手段14は、上記レーザ発振器5で発振されて集光レンズ9で集光されたレーザ光Lが、液柱Cで導光された後に上記反射板13などで反射して、再び液柱Cで導光されて噴射ノズル10aから出射される上記集光レンズ9側への反射光を受光するようになっている。
なお、反射ミラー8を集光レンズ9とノズル10との間に配置して、集光レンズ9から噴射ノズル10aへ照射されるレーザ光Lを透過させ、また、噴射ノズル10aから出射される反射光を加工ヘッド6の側方に設けた受光手段14に向けて反射するように構成することもできる。
【0017】
上記光透過部材15および検出手段16は、上記作業テーブル3によってノズル10における噴射ノズル10aの下方に位置させることができるようになっている。
光透過部材15はガラス製となっており、検出手段16よりも加工ヘッド6側に設置されるとともに、噴射ノズル10aから噴射される液柱Cに対して斜めに設けられている。
上記ノズル10より噴射された液体からなる液柱Cは、図4に示すように光透過部材15に到達するとその表面に沿って斜め下方に流れるようになっており、液体が上記検出手段16にかからないようになっている。
上記検出手段16は出力計からなり、上記光透過部材15を透過したレーザ光Lの透過光が入射すると、受光したレーザ光Lの出力を測定して、これを上記判定手段17に送信するようになっており、特に所定出力以上のレーザ光Lの入射を検出するようになっている。
このような構成によれば、上記加工ヘッド6の噴射ノズル10aより噴射された液体により形成された液柱Cが光透過部材15に到達するまで乱れなかった場合、上記液柱Cで導光されたレーザ光Lの大部分は、上記光透過部材15を透過した後上記検出手段16に入射し、それ以外の一部のレーザ光Lは光透過部材15の表面で光透過部材15の傾斜角に応じた角度方向へ反射されて下方へと流れる液体の内部で導光される。したがって、レーザ光Lが噴射ノズル10aの方へ反射して受光手段14に受光されることはない。
逆に、液柱Cが光透過部材15に到達するまでに乱れた場合、レーザ光Lは図2に示すように乱れた液柱Cによって散乱してしまい、一部のレーザ光Lは噴射ノズル10aの方向へ反射され、一部のレーザ光Lが光透過部材15を透過して上記検出手段16に入射することとなる。すなわち、微弱なレーザ光Lの反射光が受光手段14に受光されることになる。
【0018】
上記構成を有するレーザ加工装置1における液柱観察装置11の動作について説明する。
最初に、上記判定手段17は上記昇降手段7によって加工ヘッド6を加工に適した作業テーブル3との間隔よりも離隔させておき、その状態で上記液体供給手段4が液体をノズル10に供給し、ノズル10の噴射ノズル10aからは液体が噴射され液柱Cが形成される。
このとき、加工ヘッド6を離隔して位置させることで、噴射ノズル10aより噴射される液柱Cには乱れが発生し、その状態で上記レーザ発振器5がレーザ光Lを発振する。なお、液柱Cを観察する際は、被加工物の加工時よりも低出力でレーザ光Lを発振させる。
ここで、上記噴射ノズル10aの中心に集光レンズ9で集光されたレーザ光Lの焦点が一致していない場合、レーザ光Lは液柱Cの内部で導光されずに上記噴射ノズル10aの縁で反射する。
すなわち、噴射ノズル10aから集光レンズ9側へ反射光が出射され、この反射光は集光レンズ9、反射ミラー8を透過して受光手段14に受光される。
これにより、上記受光手段14には図5に示すように非常に強度の高いレーザ光Lの反射光が受光されることとなる。このように非常に高い強度のレーザ光Lの反射光が受光手段14に受光された場合、上記判定手段17は噴射ノズル10aにレーザ光Lの光軸位置が一致していないと判定する。
そして判定手段17は、上記光軸調整手段12を制御して、図5のような非常に高い強度のレーザ光Lの反射光が受光手段14に受光されないよう、集光レンズ9に対して上記ノズル10を移動させ、噴射ノズル10aの中心軸と集光レンズ9の光軸位置とを一致させる。
【0019】
このようにして噴射ノズル10aの中心軸とレーザ光Lの光軸位置とを一致させても、加工ヘッド6は離隔して位置しているため、図2に示すように噴射ノズル10aより噴射された液柱Cの先端には乱れが生じている。
この状態では、上述したように乱れた液柱Cによってレーザ光Lが反射されて散乱されるため、一部のレーザ光Lが上方に反射して再び液柱Cで導光され、この反射光は上記噴射ノズル10aを通過して集光レンズ9側へ出射されて上記受光手段14に受光されることとなる。
このように、受光手段14に受光された反射光は、液柱Cによって散乱されたものであるため、図6に示すように微弱でノズル10内の液体やガラス板10bを介して揺らいだものとなっている。
このような微弱な光からなるレーザ光Lの反射光が受光手段14に受光された場合には、上記判定手段17は液柱Cが乱れているものと判定する。
【0020】
このような状態から、上記作業テーブル3は上記噴射ノズル10aの下方に上記光透過部材15および検出手段16を位置させ、さらに上記昇降手段7が加工ヘッド6を徐々に下降させて作業テーブル3に接近させる。
最初、液柱Cは光透過部材15に到達するまでに乱れていることから、レーザ光Lは図2に示すように乱れた液柱Cによって散乱しており、受光手段14には図6に示すような比較的低く、かつ揺らいだ状態の微弱なレーザ光Lが受光されている。
その後、加工ヘッド6が下降して液柱Cが乱れずに上記光透過部材15まで到達するようになると、図4に示すように上記液柱Cで導光されたレーザ光Lの大部分は上記光透過部材15を透過し、その透過光が上記検出手段16に受光される。
その結果、検出手段16には上記レーザ発振器5より照射された際の出力に比べて、若干出力が低下した状態でレーザ光Lの透過光が入射し、所定出力以上のレーザ光Lが検出されることとなる。
このように、レーザ光Lはこの光透過部材15を透過して検出手段16に受光されるか、また、わずかでも光透過部材15の表面で反射されていても、光透過部材15の表面は斜め上方を向いているため、レーザ光Lは上記噴射ノズル10aの方向には反射せず、光透過部材15に沿って斜め下方に流れる液体の内部で導光されて、上記受光手段14には図7に示すようにレーザ光Lの反射光は受光されないこととなる。
つまり、上記検出手段16において所定出力以上のレーザ光Lの透過光が検出され、また受光手段14にレーザ光Lの反射光が受光されなかった場合、液柱Cは乱れなく光透過部材15まで到達しているものといえ、判定手段17は液柱Cが乱れていないものと判定する。
【0021】
このようにして上記光透過部材15および検出手段16によって、乱れのない液柱Cが認識されたら、上記作業テーブル3が作動して、液柱Cの下方に上記反射板13を位置させる。
反射板13を位置させた際に、液柱Cに乱れが発生した場合には、レーザ光Lは液柱C内で散乱されてしまうため、受光手段14には図6に示すような比較的弱く、かつ揺らいだ状態の微弱なレーザ光Lの反射光が受光されることとなる。
この状態は、上記噴射ノズル10aと反射板13とが乱れを生じない適切な距離から離れていることを示しているため、上記判定手段17は昇降手段7を制御して加工ヘッド6を徐々に下降させて接近させてゆく。
そして液柱Cが乱れなく反射板13に到達すると、図3に示すように液柱Cで導光されたレーザ光Lのほとんどは上記反射板13で反射し、該反射光は再び液柱Cで導光されて噴射ノズル10aを通過して、集光レンズ9側に出射されて上記受光手段14に受光される。
その結果、上記受光手段14には図8に示すように所定強度のレーザ光Lの反射光が受光されることとなり、このときの反射光の強度は、図5に示すような噴射ノズル10aの縁で反射したレーザ光Lの反射光の強度よりも低く、図6に示す乱れた液柱Cによって散乱したレーザ光Lの反射光の強度よりも高くなっている。
そして判定手段17には、このようなレーザ光Lが乱れのない液柱Cで導光された場合の反射光を判定するための所定強度範囲が設定されており、受光手段14に図8のような所定強度範囲の強度のレーザ光Lの反射光が受光されると、上記反射板13に乱れのない状態で液柱Cが到達しているものと判定し、このときの加工ヘッド6の高さを記憶して、反射板13と噴射ノズル10aとの距離を記憶する。
なお上記判定手段17には、上記液柱Cに乱れがないと判定する所定強度範囲の他に、この所定強度範囲に満たない、上述した液柱Cに乱れが生じていると判定するための強度範囲と、この所定強度範囲を超える、上述した集光レンズ9の光軸位置が一致していないと判定するための強度範囲とが設定されている。
【0022】
逆に、作業テーブル3が噴射ノズル10aより噴射される液柱Cの下方に反射板13を位置させた際に、液柱Cに乱れがなかった場合、判定手段17は昇降手段7により加工ヘッド6を徐々に上昇させ、反射板13から離隔させる。
これにより、液柱Cに乱れが生じて受光手段14に図6に示すような微妙なレーザ光Lの反射光が受光されると、判定手段17は液柱Cに乱れが生じていると判定して、その直前の加工ヘッド6の高さを記憶して、反射板13と噴射ノズル10aとの距離を記憶する。
つまり、上記反射板13を用いて液柱Cの乱れの有無を検出しながら加工ヘッド6を昇降させることにより、液柱Cに乱れが発生しないような噴射ノズル10aと反射板13との距離を認識することが可能となる。
そして上記反射板13の上面の高さは被加工物2の上面の高さに一致しているため、このときの加工ヘッド6の高さを記憶することにより、被加工物2に対しても乱れのない液柱Cを噴射することが可能となる。
【0023】
上記実施例によれば、噴射ノズル10aから出射される上記集光レンズ9側への反射光を受光手段14に受光させることで、該レーザ光Lが、乱れのない液柱Cで導光されて反射板13で反射したか、乱れた液柱Cの内部で散乱したかを判定することができる。
またレーザ光Lを反射板13で反射させながら上記昇降手段7が加工ヘッド6を接近または離隔させることで、液柱Cの乱れが発生しないような噴射ノズル10aと反射板13との距離を認識し、定量的に噴射ノズル10aと反射板13との距離、すなわち被加工物2との間隔を設定することができる。
なお、このような液柱の観察は、被加工物の加工前および加工後のみならず、加工作業を中断して行うようにしても良い。
【0024】
なお、上記実施例においては、必ずしも上記光透過部材15および検出手段16を設ける必要はなく、上記反射板13および加工ヘッド6に設けた受光手段14によって液柱Cの乱れの有無を観察するようにしてもよい。また、上記実施例における反射板13を設けず、代わりに被加工物2を反射板として用いてもよい。
また、上記実施例においては、液体を下方に向けて噴射し、レーザ光Lを上方から下方へ照射するよう構成しているが、横方向へ液体を噴射し、横方向へレーザ光Lを照射するよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 液体レーザ加工装置 4 液体供給手段
5 レーザ発振器 6 加工ヘッド
7 昇降手段 9 集光レンズ
10 ノズル 10a 噴射ノズル
11 液柱観察装置 12 光軸調整手段
13 反射板 14 受光手段
15 光透過部材 16 検出手段
17 判定手段 C 液柱
L レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧液体を供給する液体供給手段と、レーザ光を発振するレーザ発振器と、上記加圧液体を液柱にして噴射する噴射ノズルおよび上記液柱内に上記レーザ光を導光させる集光レンズを有する加工ヘッドとを備え、上記レーザ光を上記液柱で導光させて照射するレーザ加工装置の液柱観察装置であって、
上記加工ヘッドから液体が噴射されてレーザ光が照射されるレーザ光の反射板と、上記噴射ノズルから出射される上記集光レンズ側への反射光を受光する受光手段とを設け、
さらに、上記反射板に向けて加工ヘッドから液体を噴射してレーザ光を照射し、該レーザ光が乱れのない液柱で導光されて上記反射板で反射したか、または、乱れた液柱の内部で散乱したかを、上記受光手段に受光された反射光から判定する判定手段を備えたことを特徴とするレーザ加工装置の液柱観察装置。
【請求項2】
上記反射板に対し上記加工ヘッドを液体の噴射方向前後に相対的に移動させる移動手段を設け、
上記判定手段の判定結果に応じて、上記移動手段により加工ヘッドを反射板に対して接近もしくは離隔させることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置の液柱観察装置。
【請求項3】
加圧液体を供給する液体供給手段と、レーザ光を発振するレーザ発振器と、上記加圧液体を液柱にして噴射する噴射ノズルおよび上記液柱内に上記レーザ光を導光させる集光レンズを有する加工ヘッドとを備え、上記レーザ光を上記液柱で導光させて照射するレーザ加工装置の液柱観察装置であって、
上記液体の噴射方向に対して斜めに設けられ、上記加工ヘッドから液体が噴射されてレーザ光が照射されるレーザ光を透過させる光透過部材と、該光透過部材を透過した透過光を検出する検出手段と、上記噴射ノズルから出射される上記集光レンズ側への反射光を受光する受光手段とを設け、
さらに、上記光透過部材に向けて加工ヘッドから液体を噴射してレーザ光を照射し、該レーザ光が乱れのない液柱で導光されて上記光透過部材を透過したか、または、乱れた液柱の内部で散乱したかを、上記検出手段による透過光の検出および上記受光手段による反射光の受光から判定する判定手段を備えたことを特徴とするレーザ加工装置の液柱観察装置。
【請求項4】
上記噴射ノズルに対する集光レンズの光軸位置を調整する光軸調整手段を設け、
上記判定出段は、乱れた液柱の内部で散乱して受光される反射光よりも強い、所定強度以上の反射光を上記受光手段が受光した場合に、噴射ノズルに対する集光レンズの光軸位置が一致していないと判定することを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工装置の液柱観察装置。
【請求項5】
加圧液体を供給する液体供給手段と、レーザ光を発振するレーザ発振器と、上記加圧液体を液柱にして噴射する噴射ノズルおよび上記液柱内に上記レーザ光を導光させる集光レンズを有する加工ヘッドとを備え、上記レーザ光を上記液柱で導光させて照射するレーザ加工装置の液柱観察方法であって、
上記噴射ノズルから出射される上記集光レンズ側への反射光を受光する受光手段を設け、
上記受光手段で所定強度範囲内のレーザ光が受光されることで液柱に乱れがないと判定するとともに、上記所定強度範囲に満たないレーザ光が受光されることで乱れが生じていると判定し、さらに、上記所定強度範囲を超えるレーザ光が受光されることで上記噴射ノズルに対する集光レンズの光軸位置が一致していないと判定することを特徴とするレーザ加工装置の液柱観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−212710(P2011−212710A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82728(P2010−82728)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】