説明

レーザ加工装置及びレーザ加工方法

【課題】厚みを有する被加工物を、COレーザよりも波長が短いレーザを用いて切断することができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を得ることを目的とする。
【解決手段】レーザ出射部24によって、被加工物30を切断するためのレーザビーム(COレーザよりも波長が短いYAG系レーザ)が出射され、光学系26によって、レーザ出射部24から出射されたレーザビームのエネルギー分布が、被加工物30の位置において該被加工物30の切断の進行方向に対して偏重するように該レーザビームが集束されるので、レーザビームのパワーが溶融金属の温度上昇により消費できるようにレーザビームを集束させることが可能となり、溶融金属の温度を高温にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置及びレーザ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、特許文献1に記載されているような、金属板のワークを切断する加工ヘッドに、レーザ発振器から光ファイバーを介してレーザビームが送られ、該レーザビームによってワークを切断するレーザ切断装置の開発が進んでいる。この光ファイバーを用いたレーザ(以下、「ファイバーレーザ」という。)は、固体レーザ(例えば、YAG系レーザ)が光ファイバーを用いて伝送されるものである。
そして、ファイバーレーザは、気体レーザ(例えば、COレーザ)に比較してレーザの生成に要する電気エネルギーが少なく、ロッドタイプの固体レーザに比較してレーザビームの品質(レーザビームの集光性と直進性)が高く、高出力化が可能であるため、普及が進んでいる。
【0003】
ここで、レーザ加工装置は、被加工物である金属の切断において、レーザビームのパワーだけでなく、レーザビームを被加工物に照射すると共に吹きつける酸素ガス(アシストガス)によって金属が酸化する酸化熱も利用して被加工物を高温にすることにより、切断を行う場合がある。被加工物が高温となることで、被加工物を構成する金属及び酸化熱を得る過程で生成される酸化金属は、溶融して溶融金属となる。そして、溶融金属が上記アシストガスの圧力によって被加工物から吹き流されて除去されることによって、被加工物は切断される。
ところで、溶融金属は、温度が高いほど粘性が下がり流動性が高くなるため、レーザ加工装置は、被加工物の切断温度を高くすることで溶融金属の粘性を下げ、アシストガスによる溶融金属の排除性を向上させる必要がある。
【0004】
このため、レーザビームによる切断では、被加工物内部の温度、すなわち切断温度を高温にしなければならない。例えば、切断対象となる被加工物がFe(鉄)の場合、切断温度は、1200℃〜1700℃前後としなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−296266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ファイバーレーザ等に用いられるYAG系レーザでは、従来から用いられているCOレーザに比較して切断時の温度が上昇しにくいことが指摘されている。
【0007】
この理由は、以下のように考えられている。
YAG系レーザとCOレーザとでは、YAG系レーザの波長が1.06〜1.08μm、COレーザの波長が10.6μmというように波長の大きさが異なることによって、材料に対するレーザの吸収率(以下、「材料吸収率」という。)及びプラズマに対するレーザの吸収率(以下、「プラズマ吸収率」という。)が異なる。例えば、従来から知られている図7の実験例に示すように、鉄に対する材料吸収率は、COレーザでは0.08であり、COレーザよりも波長の短いYAG系レーザでは0.39である。
【0008】
このように、YAG系レーザでは、COレーザに比較して材料吸収率が高いため、COレーザに比較して被加工物の溶融にレーザビームのパワーがより消費され、そのためレーザビームのパワーが被加工物の温度上昇に寄与しづらい。さらに、被加工物を切断する際には、被加工物である金属の一部が蒸発し、プラズマ化する。そして、切断される被加工物内部での温度上昇には、プラズマ温度が寄与するが、YAG系レーザのプラズマ吸収率は、COレーザに比較して100分の1程度である。そのため、YAG系レーザは、切断する被加工物内部でのプラズマ温度を上昇させにくい。
【0009】
また、ファイバーレーザを用いた場合は、レーザ発振器の個体差、ファイバーの経年的な劣化、ファイバーに対する力学的なストレス(応力)の蓄積及び偏在等によってクラッドとコアとの界面にストレスが生じ、屈折率が変化することによって、レーザビームの品質及び出力の低下が生じ、レーザ加工装置の切断性能が低下することがある。
【0010】
この結果、COレーザよりも波長が短いレーザビームを用いたレーザ加工装置は、厚みを有する被加工物を切断する場合、被加工物内部の温度を切断に必要な温度まで上昇させることができず、被加工物を切断することができない場合があるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、厚みを有する被加工物を、COレーザよりも波長が短いレーザを用いて切断することができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ加工装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るレーザ加工装置は、被加工物を切断するためのCOレーザよりも波長が短いレーザビームを出射する出射手段と、前記出射手段から出射された前記レーザビームのエネルギー分布が前記被加工物の位置において該被加工物の切断の進行方向に対して偏重するように、該レーザビームを集束させる集束手段と、を備える。
【0013】
本発明によれば、出射手段によって、被加工物を切断するためのCOレーザよりも波長が短いレーザビームが出射され、集束手段によって、前記出射手段から出射されたレーザビームが、レーザビームのエネルギー分布が被加工物の位置において該被加工物の切断の進行方向に対して偏重するように集束される。
【0014】
COレーザよりも波長が短いレーザ(例えば、YAG系レーザ)は、材料吸収率が高く、プラズマ吸収率が低い、そのため、被加工物をレーザビームで切断する場合に、被加工物の内部を、アシストガスで吹き飛ばせるほど低い粘性を溶融金属が有するほどの高温にすることができなかった。
【0015】
そこで、本発明は、レーザビームのエネルギー分布が被加工物の位置において該被加工物の切断の進行方向に対して偏重するようにレーザビームを集束させる。これによって、レーザビームのパワーが溶融金属の温度上昇により消費されるようにレーザビームを集束させることが可能となり、溶融金属の温度を高温にできる。この結果、溶融金属をアシストガスで吹き飛ばせるほど溶融金属の粘性を下げることが可能となるので、本発明は、厚みを有する被加工物を、COレーザよりも波長が短いレーザを用いて切断することができる。
【0016】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記レーザビームが、前記被加工物における該レーザビームの吸収率に応じて前記偏重の度合いが調整されてもよい。
本発明によれば、被加工物における該レーザビームの吸収率に応じて、レーザビームの偏重の度合いが調整されるので、厚みを有する被加工物を、COレーザよりも波長が短いレーザを用いてより確実に切断することができる。
【0017】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記集束手段に、前記レーザビームを集束させるためのレンズが設けられており、該レンズの中心軸線からずれた位置に前記レーザビームが入射されてもよい。
本発明によれば、レーザビームを集束させるためのレンズが設けられている集束手段に対して、レンズの中心軸線からずれた位置にレーザビームを入射させるので、簡易な構成で、被加工物の位置において該被加工物の切断の進行方向に対して偏重するようにレーザビームを集束させることができる。
【0018】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記出射手段が、前記被加工物の切断の進行方向と前記偏重の方向とが一致するように、前記被加工物の切断方向に応じて回転されてもよい。
本発明によれば、出射手段が、被加工物の切断の進行方向とレーザビームの偏重の方向とが一致するように、被加工物の切断方向に応じて回転されるので、簡易な構成で、レーザビームの長軸方向と該被加工物の切断の進行方向とを一致させることができる。
【0019】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記レーザビームを、ファイバーレーザとしてもよい。
本発明によれば、ファイバーレーザは高品質で高出力のレーザビームであるため、厚みを有する被加工物を、より確実に切断することができる。
【0020】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記レーザビームを、ディスクレーザとしてもよい。
本発明によれば、ディスクレーザは高品質で高出力のレーザビームであるため、厚みを有する被加工物を、より確実に切断することができる。
【0021】
一方、上記課題を解決するために、本発明のレーザ加工方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るレーザ加工方法は、被加工物を切断するためのCOレーザよりも波長が短いレーザビームを出射する第1工程と、前記出射手段から出射された前記レーザビームのエネルギー分布が前記被加工物の位置において該被加工物の切断の進行方向に対して偏重するように、該レーザビームを集束させる第2工程と、を含む。
【0022】
本発明によれば、レーザビームのエネルギー分布が被加工物の位置において該被加工物の切断の進行方向に対して偏重するようにレーザビームを集束されるので、レーザビームのパワーが溶融金属の温度上昇により消費されるようにレーザビームを集束させることが可能となり、溶融金属の温度を高温にできる。この結果、溶融金属をアシストガスで吹き飛ばせるほど溶融金属の粘性を下げることが可能となるので、本発明は、厚みを有する被加工物を、COレーザよりも波長が短いレーザを用いて切断することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、厚みを有する被加工物を、COレーザよりも波長が短いレーザを用いて切断することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の光学系の構成を示す模式図である。
【図2】従来のレーザ加工装置の光学系の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の焦点位置におけるレーザビームのエネルギー分布を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置による切断方向とレーザビームの向きとの関係を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の全体構成図である。
【図6】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の筐筒の縦断面図である。
【図7】レーザビームの波長に応じた材料吸収率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1に、本実施形態に係るレーザ加工装置10の光学系の構成を示す。
レーザ加工装置10は、レーザ発振器20、光ファイバー22、レーザ出射部24、及び光学系26を備えている。なお、本実施形態に係るレーザ加工装置10は、光ファイバー22を媒質に用いたファイバーレーザを用いる。
また、本実施形態では、レーザ加工装置10を、テーブル28に載置されている被加工物30に連続的にレーザビームを照射することで被加工物30を切断するレーザ切断装置として用いる場合について説明する。
【0027】
なお、被加工物30は、金属であり、本実施形態では被加工物30を一例として鉄(Fe)とする。また、被加工物30の厚みは、例えば10〜数十mm(例えば50mm)である。また、本実施形態に係るレーザ加工装置10は、被加工物30を切断する際に、アシストガスである酸素ガスを切断部分に吹きかけながら切断する。
【0028】
レーザ発振器20は、レーザ(本実施形態では、YAG系レーザ)を生成し、生成されたレーザは、光ファイバー22で伝送され、光ファイバー22の末端に設けられているレーザ出射部24から光学系26へ出射される。
【0029】
光学系26は、上流側からコリメート光学系40及び集光光学系42を有しており、コリメート光学系40及び集光光学系42は、中心軸線44が同軸となるように配置されている。
【0030】
コリメート光学系40は、コリメートレンズを備えており、光ファイバー22から出射される所定の拡がり(開口数NA=sinθ)を有するレーザビームを平行光にする。
【0031】
集光光学系42は、コリメート光学系40によって平行光とされたレーザビームを、テーブル28に載置された被加工物30を切断するために適した径となるように集束させる。
【0032】
なお、コリメート光学系40及び集光光学系42は、例えば、石英ガラスで形成されている。また、コリメート光学系40及び集光光学系42は、各々一つのレンズで構成されてもよいし、複数のレンズで構成されてもよい。
【0033】
さらに、本実施形態に係るレーザ加工装置10は、レーザ出射部24が光学系26(コリメート光学系40及び集光光学系42)の中心軸線44から長さLずれた位置に配置される。
これにより、レーザビームは、光学系26の中心軸線44から長さLずれた位置(以下、「入射位置」という。)から光学系26へ入射される。そして、レーザビームは、入射位置とは逆の位置であり、光学系の中心軸線44から長さdずれた位置(以下、「焦点位置」という。)に焦点を結ぶこととなる。なお、焦点位置は、被加工物30の位置とされる。
【0034】
ここで、YAG系レーザを用いた従来のレーザ加工装置10’を図2に示す。図2に示される従来のレーザ加工装置10’は、レーザ出射部24が光学系26の中心軸線44上に配置され、焦点位置におけるレーザビームの断面形状が円形である。そして、焦点位置におけるレーザビームのエネルギー分布は、中心が一番高く、中心から外側へ同心円状に徐々に低くなっている。
しかし、被加工物30の厚みが厚い(例えば10〜数十mm(例えば50mm))場合、図2に示すような従来のレーザ加工装置10’は、被加工物30を切断できない場合があった。
【0035】
この理由は、YAG系レーザは、COレーザに比較して材料吸収率が高く、プラズマ吸収率が低いためと考えられる。
より具体的に説明すると、YAG系レーザは、COレーザに比較して材料吸収率が高いため、被加工物30の溶融にレーザビームのパワーがより消費され、レーザビームのパワーが被加工物30の温度上昇に寄与しづらい。さらに、被加工物30が切断される際には、被加工物30である金属の一部が蒸発し、プラズマ化する。そして、切断される被加工物30内部での温度上昇には、プラズマ温度が寄与するが、YAG系レーザのプラズマ吸収率は、COレーザに比較して低く、YAG系レーザは、切断する被加工物30内部でのプラズマ温度を上昇させにくいためであると考えられる。
【0036】
この結果、被加工物30を構成する金属及び酸化金属が溶融し溶融金属となり、被加工物30内部で溶融池が発生しても、レーザビームは、溶融池の温度を十分に上昇させることができないため、溶融金属の粘性が下がらず、アシストガスは、溶融金属を被加工物30内部から流し出すことができない。このため、従来のレーザ加工装置では、内部に溶融池が発生する厚みを有する被加工物30を切断することができない場合があった。
【0037】
一方、本実施形態に係るレーザ加工装置10は、光学系26の中心軸線44から長さLだけずれた位置にレーザビームを入射させることで、図3に示すように、レーザビームのエネルギー分布が焦点位置、すなわち、被加工物30の位置で被加工物30の切断の進行方向に対して偏重するようにレーザビームを集束させる。
【0038】
また、レーザビームは、被加工物30におけるレーザビームの吸収率に応じて偏重の度合いが調整される。
なお、ここでいう、偏重の度合いとは、一例として、図3に示される領域S1と領域S2との割り合いをいう。領域S1及び領域S2は、焦点位置におけるレーザビームのエネルギー分布の最大値を通る中心軸線46を分割線として、被加工物30の切断方向の前後方向で分割した領域であり、領域S1が切断方向の後ろ方向であり、領域S2が切断方向の前方向である。
【0039】
このように、領域S1と領域S2との大きさが異なるように焦点位置におけるレーザビームのエネルギー分布を偏重させることで、レーザビームのパワーを、被加工物30を構成する金属の溶融と、溶融金属の温度上昇とに分けて消費させることができる。
【0040】
例えば、本実施形態に係るレーザ加工装置10は、領域S1と領域S2との割り合いを、領域S1:領域S2=0.39:0.08とする。この割り合いは、COレーザ及びYAG系レーザの鉄に対する材料吸収率に基づくものである。
YAG系レーザは、材料吸収率が高いため、金属の溶融には大きなパワーを必要としない一方、プラズマ吸収率が低いため、溶融金属の温度上昇のためにより大きなパワーを必要とする。すなわち、被加工物30の切断方向前方の領域である領域S2の割り合いに応じたパワーで、まず金属の溶融を行い、領域S2よりも広い領域であり、被加工物30の切断方向後方の領域である領域S1の割り合いに応じたパワーで、溶融金属の温度上昇を行う。
【0041】
この結果、溶融金属の粘性が上がり、アシストガスは、その圧力で溶融金属を被加工物30外に吹き流すことができるので、レーザ加工装置10は、厚みのある被加工物30を切断することが可能となる。
【0042】
また、偏重の度合いの調整方法としては、中心軸線44に対するレーザ出射部24の位置、すなわち長さLを調整することで、中心軸線44に対する焦点位置のずれである長さdを変えると共に、焦点位置におけるレーザビームのエネルギー分布の偏重の度合いを調整する。なお、レーザ出射部24の光学系26からの高さ方向の位置の調整をさらに組み合わせることで、焦点位置におけるレーザビームのエネルギー分布の偏重の度合いを調整してもよい。
さらに、領域S1,S2の割り合いは、レーザ加工装置10で用いるレーザビームの種類、及び被加工物30の組成等に応じて調整され、より適した偏重の度合いで被加工物30の切断が行われる。
【0043】
なお、本実施形態に係るレーザ加工装置10は、図4に示すように、厚みのある被加工物30を切断するために、レーザビームの長軸方向と被加工物30の切断の進行方向とが一致するようにレーザビームを集束させる。
【0044】
図5は、レーザ加工装置10の全体構成図であり、該図5及び図6を参照して、レーザビームの長軸方向と被加工物30の切断の進行方向とが一致させる方法について説明する。
レーザ加工装置10が備える光学系26は、上部にレーザ出射部24が配置されている筐筒50に収められている。
【0045】
筐筒50は、3軸方向(xyz軸)に移動できる3軸アーム52によって支持され、3軸アーム52が駆動することによって、被加工物30の切断の進行方向が変化する。なお、3軸アーム52の移動は、制御盤54によって制御される。
【0046】
また、本実施形態に係る筐筒50は、図6の筐筒50の縦断面図に示すように、上下で分割されており、上部筐筒50Aには、レーザ出射部24が配置され、下部筐筒50Bには、光学系26が配置されている。
【0047】
下部筐筒50Bは、3軸アーム52に支持され、上部筐筒50Aは、下部筐筒50Bに対して同軸上で回転可能なように嵌め合わされている。
【0048】
さらに、下部筐筒50Bの側面には、モータ56が設けられている。
モータ56の回転軸56Aには、方向補正ギア58Aが、上部筐筒50Aの側面に設けられているギア58Bに噛み合うように設けられている。
【0049】
そして、モータ56の回転軸56Aの回転角度は、3軸アーム52の移動による被加工物30の切断の進行方向の変化に同期して制御盤54によって制御される。
制御盤54は、方向補正ギア58Aに噛み合わされているギア58Bを介して上部筐筒50A、すなわちレーザ出射部24を回転させることによって、被加工物30の切断の進行方向とレーザビームの偏重の方向とが一致するように、モータ56の回転軸56Aの回転角度を制御する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ加工装置10は、レーザ出射部24によって、被加工物30を切断するためのレーザビーム(COレーザよりも波長が短いYAG系レーザ)が出射され、光学系26によって、レーザ出射部24から出射されたレーザビームのエネルギー分布が、被加工物30の位置において該被加工物の切断の進行方向に対して偏重するように該レーザビームが集束されるので、レーザビームのパワーが溶融金属の温度上昇により消費できるようにレーザビームを集束させることが可能となり、溶融金属の温度を高温にできる。
【0051】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0052】
例えば、上記実施形態では、レーザ加工装置10を、被加工物30を切断するレーザ切断装置として用いる場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、レーザ加工装置10を複数の被加工物を溶接するレーザ溶接装置として用いる形態としてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、アシストガスとして酸素ガスを用いる場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、アシストガスとして窒素ガスやアルゴンガス等、他のガスを用いる形態としてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、レーザ加工装置10にYAG系レーザを用いた場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、COレーザよりも波長の短いレーザであれば他のレーザを用いる形態としてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、レーザ加工装置にファイバーレーザを用いた場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ディスクレーザ(波長1.05〜1.09μm)を用いる形態としてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、3軸アーム52に支持された筐筒50を移動させることによって、被加工物30の切断の進行方向を変化させる場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、筐筒50を移動可能とせずに、被加工物30を載置したテーブル28を3軸方向に移動可能とし、テーブル28を移動させることによって、被加工物30の切断の進行方向を変化させる形態としてもよい。なお、この形態の場合、モータ56の回転軸56Aの回転角度は、テーブル28の移動による被加工物30の切断の進行方向の変化に同期して制御盤54によって制御される。
【0057】
また、上記実施形態では、3軸アーム52に筐筒50が支持される場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、縦(x)及び横(y)に移動する2軸アームに支持される形態としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 レーザ加工装置
24 レーザ出射部
26 光学系
30 被加工物
40 コリメート光学系
44 集光光学系
56 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を切断するためのCOレーザよりも波長が短いレーザを出射する出射手段と、
前記出射手段から出射された前記レーザビームのエネルギー分布が前記被加工物の位置において該被加工物の切断の進行方向に対して偏重するように、該レーザビームを集束させる集束手段と、
を備えたレーザ加工装置。
【請求項2】
前記レーザビームは、前記被加工物における該レーザビームの吸収率に応じて前記偏重の度合いが調整される請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記集束手段は、前記レーザビームを集束させるためのレンズが設けられており、該レンズの中心軸線からずれた位置に前記レーザビームが入射される請求項1又は請求項2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記出射手段は、前記被加工物の切断の進行方向と前記偏重の方向とが一致するように、前記被加工物の切断方向に応じて回転される請求項1から請求項3の何れか1項記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記レーザビームは、ファイバーレーザである請求項1から請求項4の何れか1項記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザビームは、ディスクレーザである請求項1から請求項4の何れか1項記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
被加工物を切断するためのCOレーザよりも波長が短いレーザを出射する第1工程と、
前記出射手段から出射された前記レーザビームのエネルギー分布が前記被加工物の位置において該被加工物の切断の進行方向に対して偏重するように、該レーザビームを集束させる第2工程と、
を含むレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−86229(P2012−86229A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232675(P2010−232675)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】