説明

レーザ加工装置及びレーザ加工装置における光路調整方法

【課題】レーザ加工に使用されるレーザ光が不可視光であっても、容易に当該レーザ光のスリットへの照射方向を調整できるレーザ加工装置及びレーザ加工装置における光路調整方法を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置1において、レーザ発振器10より不可視域の波長を含む複数の波長を有するレーザ光が出射され、当該レーザ光のうち波長フィルタ32a〜32dの何れかにより所定の波長を有するレーザ光が濾波されて、その濾波されたレーザ光が反射角調整ミラー33a〜33dにより反射して、光路内に配置されたターゲット42を照射し、ターゲット42が可視光に変換して反射させることにより当該レーザ光がスリットを照射する位置を可視化できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置及びレーザ加工装置における光路調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体や液晶パネル等の微細なデバイスの回路の修正を行うための顕微鏡レーザリペア装置においては、レーザ発振器より出射されるレーザ光が、スリットで形成されるスリット開口を照射して、上記スリット開口を透過したレーザ光をデバイスに照射させることで、スリット形状の範囲のみをデバイス修正することができる。
【0003】
上記顕微鏡レーザリペア装置としては、例えば、互いに直交する方向に設けられ、それぞれが接近・離間する方向へ移動可能な二対のスリット部材を備え、当該スリット部材で形成されるスリット開口部を透過するレーザ光により、スリット形状のデバイス修正等が実行可能なスリット幅調整装置および顕微鏡レーザリペア装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−47657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなレーザリペア装置においては、修正対象となるデバイスの多様性に対応するために、紫外域、可視域、赤外域、にわたる広範囲な波長域からなるレーザ光から、当該修正に適した波長のレーザ光を、波長フィルタ等を介して選択して使用する、ということが一般的に行われている。
ここで、上記使用されるレーザ光は、その波長によってスリットへの照射方向にずれが生じるため、そのずれを補正するために光路調整を行わなければならない。
【0005】
しかしながら、紫外域や赤外域の波長からなるレーザ光、つまり不可視光については、ユーザが当該レーザ光を目視しながら光路調整を行うことが出来ないため、実際にデバイスに対して不可視光を照射して、その照射されたデバイスを観察することによってしか光路調整を実行することが出来なかった。そのため、不可視光に対する光路調整には時間的・労力的にユーザの負担が大きいという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、レーザ加工に使用されるレーザ光が不可視光であっても、容易に当該レーザ光のスリットへの照射方向を調整できるレーザ加工装置及びレーザ加工装置における光路調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
レーザ光を出射し、光路内に設けられたスリットにより形成されるスリット開口を透過させたレーザ光を、試料に照射して加工するレーザ加工装置において、
不可視域の波長を含む複数の波長を有するレーザ光を出射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器より出射されたレーザ光を濾波する波長フィルタと、
前記波長フィルタにより濾波されたレーザ光を前記スリットに向けて所定の反射角度で反射させ、前記反射角度が調整可能な反射角調整ミラーと、
前記光路内に配置され、前記反射角調整ミラーにより反射したレーザ光の中で、所定の波長を有する不可視域のレーザ光が前記スリットを照射する位置を可視化する可視化部と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記波長フィルタと前記反射角調整ミラーを一組とする調整ユニットを、前記波長フィルタにより濾波するレーザ光の波長に応じて複数組備え、前記複数組のうち何れか一つの調整ユニットが前記光路内に配置されるように構成したユニット切換選択部を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、前記可視化部は、不可視域の波長を有するレーザ光が照射されると可視光を反射させる反射板を含んで構成されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザ加工装置において、前記可視化部は、前記スリットが設けられる位置に着脱自在に設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載のレーザ加工装置における光路調整方法において、前記ユニット切換選択部における前記複数組の調整ユニットのうち、所望する波長のレーザ光を濾波する調整ユニットを前記光路内に配置するステップと、前記所望する波長のレーザ光を可視化する可視化部を光路内に配置するステップと、前記レーザ発振器によりレーザ光を出射するステップと、前記反射角調整ミラーにより前記反射角を調整する調整ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、レーザ加工装置において、レーザ発振器より不可視域の波長を含む複数の波長を有するレーザ光が出射され、波長フィルタにより濾波されて、その濾波されたレーザ光が反射角調整ミラーにより反射して、光路内に配置された可視化部により、当該レーザ光の中で不可視域のレーザ光がスリットを照射する位置を可視化できるように構成されている。
そのため、ユーザは当該レーザ光がスリットを照射する位置を目視した上で、当該レーザ光のスリットへの照射方向のずれを、反射角調整ミラーの反射角を調整することで容易に修正できる。
したがって、本発明は、レーザ加工に使用されるレーザ光が不可視光であっても、容易に当該レーザ光のスリットへの照射方向を調整できるレーザ加工装置であるといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図を参照して、本発明に係るレーザ加工装置の具体的な態様を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0014】
図1は、本発明に係るレーザ加工装置1の概略構成を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図であり、図2は、本発明に係るレーザ加工装置1における反射角調整ミラー33a〜33dの構造を説明する図であり、(A)はXZ平面図、(B)はYZ平面図であり、図3は、本発明に係るレーザ加工装置1において、レーザ発振器10より出射されたレーザ光の光路とターゲット42を示す概略構成図であり、(A)はYZ平面図であり、(B)はYX平面図である。
なお、以下の説明では、レーザ加工装置1の左右方向をX軸方向として、その前後方向をY軸方向とし、上下方向をZ軸方向とする。
【0015】
図1に示すように、レーザ加工装置1は、例えば、レーザ光を照射して試料(デバイス)に生じた欠陥等の修正を行う顕微鏡レーザリペア装置であり、レーザ光をY軸方向に出射するためのレーザ発振器10と、レーザ発振器10より出射されたレーザ光の径を拡大するビームエキスパンダ20と、ビームエキスパンダ20を透過したレーザ光を濾波し、当該濾波されたY軸方向のレーザ光をZ軸方向に反射させるユニット切換選択部30と、ユニット切換選択部30により反射されたレーザ光の試料への到達範囲を制限するためのスリット部40と、スリット部40のXY方向を調整する回転テーブル45と、試料上にレーザ光を結像させる結像レンズ50及び対物レンズ部60と、図示しないステージ上に載置された試料や試料のスリット加工範囲を観察するための観察部70と、等を備えて構成されている。
【0016】
レーザ発振器10は、1064(nm)の波長(基本波長)を有するレーザ光(不可視光)と、532(nm)の波長を有する第二高調波としてのレーザ光(可視光)と、355(nm)の波長を有する第三高調波としてのレーザ光(不可視光)と、266(nm)の波長を有する第四高調波としてのレーザ光(不可視光)と、を含んだレーザ光をビームエキスパンダ20に向けて出射するレーザ光源である。
なお、レーザ発振器10は、紫外域〜赤外域にわたる広範な波長域を有するレーザ光を出射するものであっても良いし、上記4つの異なる波長を有するそれぞれのレーザ光を同時に出射できるように構成したものであってもよい。
【0017】
ビームエキスパンダ20は、レーザ発振器10より出力されたレーザ光の径を拡大し、当該拡大した径を有するレーザ光をユニット切換選択部30に向けて出射している。
【0018】
ユニット切換選択部30は、例えば、図1(A)に示されるように、XZ平面視で円形状に形成されており、その円周部にそれぞれ90度間隔で4つの調整ユニット31a、31b、31c、31dを備え、Y軸方向を中心軸として90度ずつ回転するように構成されている。そのため、ユニット切換選択部30を0度、90度、180度、270度と回転させることにより、4つの調整ユニット31a〜31dのうちの何れか一つ(図1では、31a)を光路内に配置することができる。つまり、ユーザはユニット切換選択部30により、所望する波長のレーザ光を濾波する調整ユニットを光路内に配置することが可能となる。
【0019】
調整ユニット31a、31b、31c、31dは、それぞれ、波長フィルタ32a、32b、32c、32dと、反射角調整ミラー33a、33b、33c、33dと、を備えて構成される。
【0020】
波長フィルタ32a〜32dは、それぞれ、ビームエキスパンダ20を透過したレーザ光から、所定の波長を有するレーザ光を濾波するフィルタである。一例として、本実施形態においては、波長フィルタ32aが1064(nm)の波長を有するレーザ光を、波長フィルタ32bが532(nm)の波長を有するレーザ光を、波長フィルタ32cが355(nm)の波長を有するレーザ光を、波長フィルタ32dが266(nm)の波長を有するレーザ光を濾波するフィルタとする。
【0021】
反射角調整ミラー33a〜33dは、それぞれ、波長フィルタ32a〜32dにて濾波されたレーザ光をスリット部40(Z軸(下)方向)に向けて反射させている。
また、反射角調整ミラー33a〜33dは、それぞれ、図2(A)(B)に示すように、ミラー固定部材36a〜36dに固定されており、当該ミラー固定部材36a〜36dの裏面(XZ面)と、ユニット切換選択部30の本体部30aとを、同心円状に配置された3本のネジ部材34a〜34dが貫通し、かつ、双方はネジ部材34a〜34dと同じ位置に配置された、3本のバネ部材35a〜35dに接続されている。
そのため、ユーザは、3本のネジ部材34a〜34dの進退と、3本のバネ部材35a〜35dの弾性変形とによって、ミラー固定部材36a〜36dを所望の角度まで傾斜させることにより、反射角調整ミラー33a〜33dを当該所望の角度に調整することができる。
【0022】
スリット部40(スリット)は、固定部41(可視化部)と、スリット部材44a、44b、44c、44dと、を含んで構成される。
【0023】
固定部41は、ターゲット42(反射板)と、固定部材43と含んで構成される。
【0024】
ターゲット42は、例えば、発光物質に不可視域の波長を有するレーザ光を入射するとレーザ光の形状や強弱に応じて可視光を発光するという性質に基づいて、粉末状の発光物質を塗布したシートを一部に貼り付け、当該シートに不可視域の波長を有するレーザ光を入射させ、当該レーザ光を可視光に変換して反射させる反射板として機能するカード式センサである。このカード式センサは、入射されるレーザ光の波長域によって感度が相違するため、波長フィルタ32a〜32dにより濾波するレーザ光の波長に応じて、逐次最適な(高感度を発揮し得る)カード式センサを選択する。
【0025】
また、上記ターゲット42には、図3(A)(B)に示されるように所定の基準位置にマーク42aが付されている。ここで、所定の基準位置とは、波長フィルタ32a〜32dにより濾波されたレーザ光が、後述のスリット部材44a〜44dによって形成されるスリット開口を精確に照射するために通過すべき位置である。
つまり、上記ターゲット42として最適なカード式センサを光路内に配置しておくことにより、波長フィルタ32a〜32dにより濾波されたレーザ光が不可視光(波長フィルタ32a、32c、32dの何れかにて濾波されたレーザ光)であった場合でも、ターゲット42にて可視光を発光させることができる。そのため、例えば、図3(A)で示される濾波されたレーザ光が、ターゲット42上でマーク42aとずれて反射する位置(つまり、スリットを照射する位置)を、ユーザは目視によって、図3(B)における発光位置42bとして把握でき、当該位置とマーク42aが付された位置とのずれを確認することが出来る。そして、ユーザは反射角調整ミラー33a〜33dの角度を調整することにより、上記ずれを容易に修正することが出来る。
【0026】
また、ターゲット42は固定部材43に対して着脱自在に設けられており、試料に対するレーザ加工を実行する際は、ターゲット42を取り外し、集光レンズを固定部材43で固定する。そして、反射角調整ミラー33a〜33dの何れかによって反射したレーザ光をスリット開口に集光する。そのため、ターゲット42は固定部材43による着脱を容易にするために、集光レンズと同径を有する円盤状に形成されている。
【0027】
固定部材43は、例えば、ターゲット42(又は集光レンズ)の側面を固定して支持するためのレンズホルダーである。
【0028】
スリット部材44a、44bは、平面視矩形板状に形成され、互いに対向する先端部がテーパ刃状に形成されている。そして、スリット部材44a、44bは、図示しないステッピングモータ等により駆動力が付与されて、互いに接近・離間するようにX軸方向に可動するので、X軸方向に任意の隙間を形成することが可能となる。
スリット部材44c、44dは、スリット部材44a、44bの下方に設けられ、平面視矩形板状に形成され、互いに対向する先端部がテーパ刃状に形成されている。そして、スリット部材44c、44dは、図示しないステッピングモータ等により駆動力が付与されて、互いに接近・離間するようにY軸方向に可動するので、Y軸方向に任意の隙間を形成することが可能となる。
したがって、スリット部材44a〜44dによって形成される隙間(スリット開口)のみをレーザ光が透過するように制限することによって、試料の加工範囲を調整することが可能となる。
【0029】
回転テーブル45は、スリット部40を載置しており、回転用ステッピングモータ等により駆動力が付与されることで、Z軸方向を中心として回転可能なテーブルである。そのため、回転テーブル45を回転させることにより、スリット部40のスリット部材44a、44bにより形成される隙間の向きと、スリット部材44c、44dにより形成される隙間の向きを、精確にX,Y軸方向に一致させるように調整することが出来る。
【0030】
結像レンズ50は、スリット部40のスリット開口及び回転テーブル45を透過したレーザ光を結像させ、後述の対物レンズ部60と組み合わせることにより当該レーザ光を試料に照射させる。
【0031】
対物レンズ部60は、各波長域(紫外域、近紫外域、可視光域、近赤外域)ごとに設けけられた、倍率の異なる複数の対物レンズと、その複数の対物レンズをX軸方向に所定間隔で搭載し、例えば、モータ等により駆動力を付与されてX軸方向に直線駆動する対物レンズ切換え部61と、等を備えて構成されている。そして、加工する試料の種類や大きさに応じて、対物レンズ切換え部61をX軸方向に所定量移動させ、対物レンズを、ユニット切換選択部30によって濾波されるレーザ光の波長域と倍率に適したレンズ(例えば、対物レンズ62)に切換えて光路内に配置し、スリット形状のレーザ光を試料に照射出来るようになっている。
なお、対物レンズ切換え部61は、各波長域ごとに倍率の異なる複数の対物レンズを搭載し、光路内に配置される調整ユニット31a〜31dの種類に応じて(つまり、濾波されるレーザ光の波長に応じて)、自動的に適切な波長域と倍率を有する対物レンズに切換えられるように制御してもよい。
【0032】
観察部70は、スリット照明用光源72と、このスリット照明用光源72から発せられたX軸(左)方向の光を光路方向(Z軸(下)方向)に向けて反射させるためのハーフミラー72aと、落射照明用光源73と、この落射照明用光源73から発せられたX軸(左)方向の光を光路方向(Z軸(下)方向)に向けて反射させるためのハーフミラー73aと、観察用CCDカメラ74及びオートフォーカス用CCDカメラ76と、観察用の反射光を取得するためのハーフミラー74aと、チューブレンズ74bと、ミラー74cと、ビームスプリッタ74dと、等を備えて構成される。
【0033】
スリット照明用光源72は、光路と交差する方向(例えば、X軸(左)方向)に照明光を発し、この照明光は、光路上に設けられたハーフミラー72aによって光路方向(Z軸(下)方向)に反射し、スリット40のスリット開口部を透過して、結像レンズ50、対物レンズ部60を介して試料に照射される。
落射照明用光源73は、光路と交差する方向(例えば、X軸(左)方向)に照明光を発し、この照明光は、光路上に設けられたハーフミラー73aによって光路方向(Z軸(下)方向)に反射し、結像レンズ50、対物レンズ部60を介して試料に照射される。
【0034】
観察用CCDカメラ74とオートフォーカス用CCDカメラ76は、試料から反射された落射照明用光源73又はスリット照明用光源72の照明光を受光して、試料と試料上のスリット加工を行う範囲の投影とフォーカス調整を各々行う。
つまり、試料から反射された落射照明用光源73又はスリット照明用光源72の照明光は、対物レンズ部60の対物レンズ62を通過して平行光となり、ハーフミラー74aで光路と交差する方向(X軸(右)方向)に反射する。そして、当該反射光は、上記平行光をチューブレンズ74bで中間結像し、ミラー74cにて光路と平行な方向(Z軸(上)方向)に反射し、ビームスプリッタ74dによって直線透過する光と、光路と交差する方向(X軸(右)方向)に反射する光に分離され、それぞれ、観察用CCDカメラ74とオートフォーカス用CCDカメラ76にて受光される。
そのため、スリット照明用光源72及び落射照明用光源73より試料に照射された照明光の反射光を受光することで、ユーザは、オートフォーカス用CCDカメラ76によりフォーカシングされた状態で、観察用CCDカメラ74を介して試料及び試料上のレーザ加工を行う範囲を精確に観察できるようになっている。
したがって、観察用CCDカメラ74で視認しながら、事前にスリット部40及び回転テーブル45によりレーザ加工を行う範囲を調整することが可能となる。
【0035】
次いで、本実施形態におけるレーザ発振器10より出射されるレーザ光の光路調整方法について、図4の工程フローチャートを用いて説明する。
【0036】
まず、ユーザは、ユニット切換選択部30を回転させることにより、所望する波長のレーザ光を濾波する調整ユニット31a〜31dのうちの何れか一つを光路内に配置する(ステップS1)。
次いで、ユーザは、ステップS1にて配置した調整ユニットにより濾波されるレーザ光の波長に対応する最適なターゲット42を、固定部材43に固定して光路内に配置する(ステップS2)。
なお、ステップS2における処理を実施した後にステップS1の処理を行っても勿論良い。つまり、所定のターゲット42を選択して固定部材43に固定し、ユニット切換選択部30を回転させて、そのターゲット42に対応する調整ユニット31a〜31dのうちの何れか一つを光路内に配置する工程も可能である。
【0037】
次いで、ユーザは、レーザ発振器10よりレーザ光を出射させ(ステップS3)、ターゲット42により反射光を発生させることにより、ステップS1にて配置した調整ユニットにより濾波されるレーザ光のターゲット42上の照射位置を確認する(ステップS4)。
【0038】
次いで、ユーザは、上記レーザ光の照射位置と基準位置としてのマーク42aの位置とのずれを確認する(ステップS5)。
そして、ユーザは、上記ずれがあると判断する場合(ステップS5;Yes)、反射角調整ミラー33a〜33dの反射角を調整し(ステップS6)、ステップS3以降の処理を繰り返す。
一方で、ユーザは、上記ずれがないと判断する場合(ステップS5;No)、本処理を終了し、ターゲット42に換えて集光レンズを固定部材43に固定することで、試料に対する精確な加工処理を実行できるようになる。
【0039】
以上のように、本発明に係るレーザ加工装置1において、レーザ発振器10より不可視域の波長を含む複数の波長を有するレーザ光が出射され、当該レーザ光のうち波長フィルタ32a〜32dの何れかにより所定の波長を有するレーザ光が濾波されて、その濾波されたレーザ光が反射角調整ミラー33a〜33dにより反射して、光路内に配置されたターゲット42を照射し、ターゲット42が可視光を発光させることにより当該レーザ光がスリットを照射する位置を可視化できるように構成されている。
そのため、ユーザは上記位置を目視した上で、当該レーザ光のスリットへの照射方向のずれを、反射角調整ミラー33a〜33dの反射角を調整することで容易に修正できる。
したがって、本発明は、レーザ加工に使用されるレーザ光が不可視光であっても、容易に当該レーザ光のスリットへの照射方向を調整できるレーザ加工装置であるといえる。
【0040】
また、レーザ加工装置1は、それぞれが波長フィルタ32a〜32dと反射角調整ミラー33a〜33dで構成される調整ユニット31a〜31dを備えたユニット切換選択部30を有し、そのユニット切換選択部30を回転させることにより、調整ユニット31a〜31dのうち何れか一つの調整ユニットが光路内に配置されるように構成されている。
そのため、ユーザはレーザ加工装置1によるレーザ加工の対象となる試料の種類や加工内容に応じて、逐次所望される波長を有するレーザ光を濾波し、当該レーザ光の光路調整を行うことが可能となる。
【0041】
また、レーザ加工装置1におけるターゲット42は、不可視域の波長を有するレーザ光を入射させると、当該レーザ光を可視光に変換して反射させる反射板としての性質を備えたカード式センサを用いている。
そのため、ユーザは、波長フィルタ32a〜32dにより濾波するレーザ光の波長に応じて、逐次最適なカード式センサを選択するだけで、容易に可視域の波長を有するレーザ光を可視化することが可能となる。
【0042】
また、ターゲット42は固定部材43に対して着脱自在に設けられている。
そのため、上記反射角調整ミラー33a〜33dによる反射角の調整を終え、試料に対するレーザ加工を実行する際は、ターゲット42を取り外し、集光レンズを固定部材43で固定しておくことで、レーザ光をスリット開口に集光し、そのスリット開口を透過したレーザ光によって試料に対するレーザ加工を実施することができる。
【0043】
なお、上記実施形態において、可視化部の配置位置は固定部41としたが、当該位置に限定されるものではなく、例えば、光路内で固定部41よりもZ軸方向上方に配置しても勿論良い。
また、ユニット切換選択部30において、波長フィルタ32a〜32dにより濾波されたレーザ光が可視光(波長フィルタ32bにて濾波されたレーザ光)であった場合、ターゲット42は、上記カード式センサである必要は無く、普通紙のような拡散面を有するものであれば足りる。
また、本発明に係る対物レンズ切換え部61は、複数の対物レンズを搭載し、所定の対物レンズを光路内に切換えて配置出来るものであればよく、例えば、回転式レボルバ等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るレーザ加工装置の概略構成を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図2】本発明に係るレーザ加工装置における反射角調整ミラーの構造を説明する図であり、(A)はXZ平面図、(B)はYZ平面図である。
【図3】本発明に係るレーザ加工装置において、レーザ発振器より出射されたレーザ光の光路とターゲットを示す概略構成図であり、(A)はYZ平面図であり、(B)はYX平面図である。
【図4】本発明における光路調整方法を説明する工程フローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1 レーザ加工装置
10 レーザ発振器
30 ユニット切換選択部
31a〜31d 調整ユニット
32a〜32d 波長フィルタ
33a〜33d 反射角調整ミラー
40 スリット部(スリット)
41 固定部(可視化部)
42 ターゲット(反射板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射し、光路内に設けられたスリットにより形成されるスリット開口を透過させたレーザ光を、試料に照射して加工するレーザ加工装置において、
不可視域の波長を含む複数の波長を有するレーザ光を出射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器より出射されたレーザ光を濾波する波長フィルタと、
前記波長フィルタにより濾波されたレーザ光を前記スリットに向けて所定の反射角度で反射させ、前記反射角度が調整可能な反射角調整ミラーと、
前記光路内に配置され、前記反射角調整ミラーにより反射したレーザ光の中で、所定の波長を有する不可視域のレーザ光が前記スリットを照射する位置を可視化する可視化部と、
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記波長フィルタと前記反射角調整ミラーを一組とする調整ユニットを、前記波長フィルタにより濾波するレーザ光の波長に応じて複数組備え、前記複数組のうち何れか一つの調整ユニットが前記光路内に配置されるように構成したユニット切換選択部を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、
前記可視化部は、不可視域の波長を有するレーザ光が照射されると可視光を反射させる反射板を含んで構成されることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザ加工装置において、
前記可視化部は、前記スリットが設けられる位置に着脱自在に設けられることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項2に記載のレーザ加工装置における光路調整方法において、
前記ユニット切換選択部における前記複数組の調整ユニットのうち、所望する波長のレーザ光を濾波する調整ユニットを前記光路内に配置するステップと、
前記所望する波長のレーザ光を可視化する可視化部を光路内に配置するステップと、
前記レーザ発振器によりレーザ光を出射するステップと、
前記反射角調整ミラーにより前記反射角を調整する調整ステップと、
を備えるレーザ加工装置における光路調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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