説明

レーザ加工装置

【課題】部品点数の増大やコストの上昇や構成の複雑化を回避し、しかも、レーザ発振器から出射されるレーザ光の一部をモニタすることなく、加工対象物に照射されるレーザ出力のパワーをリニアリティに調整する。
【解決手段】レーザマーキング装置1は、ユーザが操作装置8を操作してレーザ出力のパワーとして所望の値を設定すると、記憶装置9記憶されている設定値とレーザ出力のパワーとの対応関係に基づいて、そのユーザが設定した設定値に対応するレーザ出力のパワーを導出し、続いて記憶装置9に記憶されている1/2波長板角度とレーザ出力のパワーとの対応関係に基づいて、その導出したレーザ出力のパワーに対応する1/2波長板角度を導出し、その導出した回動角度となるように1/2波長板3を回動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を加工対象物に照射して加工を行うレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ光を加工対象物に照射して加工を行うレーザ加工装置が供されている。レーザ加工装置の1つであるレーザマーキング装置は、金属、樹脂、セラミック、半導体、紙、ガラスなどの多種多様の素材からなる加工対象物(ワーク)の表面に、多種多様な文字、記号、図形などをマーキングするものである。このようなレーザマーキング装置は、レーザ発振器から出射されるレーザ光のパワーを加工対象物の素材の種類などに応じて調整可能となっており、レーザ光のパワーを調整することにより、加工対象物の素材の種類などに応じた最適なマーキング濃度でマーキング可能となっている。そして、電流及び発振周波数により決定される発振条件に基づいてレーザ光を出射するレーザ発振器においては、上記した発振条件を変更することでレーザ光のパワーを調整するのが一般的である。
【0003】
ところで、レーザ発振器から出射されるレーザ光のパワーには機差(個体差)があり、そのレーザ発振器が有するレーザ光のパワーの機差により、レーザマーキング装置から加工対象物に照射されるレーザ出力のパワーにばらつきが生じる。そのため、複数のレーザマーキング装置が同じ種類の複数の加工対象物に均一にマーキングする場合には、それら複数のレーザマーキング装置におけるレーザ出力のパワーのばらつきを解消するために、それら複数のレーザマーキング装置のレーザ発振器毎にレーザ光のパワーを調整する必要がある。
【0004】
しかしながら、複数のレーザマーキング装置のレーザ発振器毎にレーザ光のパワーを調整する作業は非常に煩雑であるという問題がある。また、励起LD電流を制御することにより、レーザ発振器から出射されるレーザ光のパワーの機差を解消することが可能であるが、ビーム品質や拡がり角度などの特性が変化してしまうため、マーキング品質を維持することが困難になる。
【0005】
そこで、上記した問題を解決すべく、レーザ発振器から出射されるレーザ光の偏光面を回転させる1/4波長板を設け、ビームスプリッタで分岐されたレーザ光の一部を光検出器により受光して受光量を検出し、その検出した受光量が所望の値となるように波長板を回動制御する構成があり、このような構成によれば、レーザ発振器から出射されるレーザ光のパワーを調整する作業を必要とすることなく、1/4波長板を回動制御することにより、レーザマーキング装置から加工対象物に照射されるレーザ出力のパワーを所望の値に設定可能となる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−097782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載されているものでは、レーザ発振器から出射されるレーザ光を分岐させるビームスプリッタ及び当該ビームスプリッタで分岐されたレーザ光の一部を受光して受光量を検出する光検出器が必要となり、その分、部品点数が増大し、コストが上昇し、構成が複雑になるという問題がある。しかも、本来は加工に用いるレーザ光の一部をモニタするという無駄が生じるという問題もある。
【0007】
一方、本出願人が出願した特願2006−099060には、1/2波長板と偏光部材との相対回動角度を変更することにより、偏光部材を通過するレーザ出力のパワーを調整するようにしている。ところが、これは、偏光部材を通過するレーザ出力のパワーを自動的に設定するものではなく、偏光部材を通過するレーザ出力のパワーを自動的に設定するには、ユーザが設定する設定値に基づく1/2波長板と偏光部材との相対回動角度の変化量とレーザ出力のパワーとの対応関係を予め測定して記憶させておく必要があり、また、設定可能な分解能の分だけ上記した相対回動角度の変化量とレーザ出力のパワーとの対応関係を測定する必要があり、面倒なものである。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数の増大やコストの上昇や構成の複雑化を回避し、しかも、レーザ発振器から出射されるレーザ光の一部をモニタすることなく、加工対象物に照射されるレーザ出力のパワーをリニアリティに調整することができるレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載したレーザ加工装置は、電流及び発振周波数により決定される発振条件に基づいてレーザ光を出射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から出射されたレーザ光の光軸上で当該光軸に沿った軸を中心とした前記レーザ発振器との偏光面の相対回動角度に応じて同レーザ光のうち所定の偏光方向のレーザ光のみを通過させる偏光手段と、前記レーザ発振器及び前記偏光手段のうち少なくともいずれかを回動手段により回動させることで、前記偏光手段を通過して加工対象物に照射するためのレーザ出力のパワーを調整する制御手段とを備えたレーザ加工装置であって、前記レーザ出力のパワーに対応する設定値を設定すべくユーザが操作する操作手段と、前記設定値(P)と前記相対回動角度(θ)との対応関係をP=(cosθ+1)/2として記憶する記憶手段とを備え、前記制御手段は、前記ユーザの前記操作手段による操作量に応じた相対回動角度を前記記憶手段に記憶されている対応関係から導出し、前記レーザ発振器と前記偏光手段との偏光面の相対回動角度が当該導出した相対回動角度となるように、前記レーザ発振器及び前記偏光手段のうち少なくともいずれかを前記回動手段により回動させるように構成したところに特徴を有する。
【0010】
請求項2に記載したレーザ加工装置は、前記偏光手段は、前記レーザ発振器との偏光面の相対回動角度に応じて同レーザ光の偏光方向を変更する波長板と、前記波長板を通過したレーザ光の光軸上で当該光軸に沿った軸を中心とした前記波長板との偏光面の相対回動角度に応じて同レーザ光の偏光方向を変更し且つ同レーザ光のうち所定の偏光方向のレーザ光のみを通過させる偏光部材とを備え、前記制御手段は、前記ユーザの前記操作手段による操作量に応じた相対回動角度を前記記憶手段に記憶されている対応関係から導出し、前記レーザ発振器と前記偏光手段との偏光面の相対回動角度が当該導出した相対回動角度となるように、前記レーザ発振器、前記波長板及び前記偏光部材のうち少なくともいずれかを回動手段により回動させるように構成したところに特徴を有する。
【0011】
請求項3に記載したレーザ加工装置は、前記制御手段は、前記ユーザの前記操作手段による操作量に応じた相対回動角度を前記記憶手段に記憶されている対応関係から導出し、前記レーザ発振器と前記偏光手段との偏光面の相対回動角度が当該導出した相対回動角度となるように、前記波長板のみを回動させるように構成したところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載したレーザ加工装置によれば、ユーザが操作手段を操作してレーザ出力のパワーとして所望の設定値(P)を設定すると、制御手段は、ユーザの操作手段による操作量に応じた相対回動角度(θ)を、記憶手段に記憶されているP=(cosθ+1)/2という対応関係から導出し、レーザ発振器と偏光手段との偏光面の相対回動角度が当該導出した相対回動角度となるようにレーザ発振器及び偏光手段のうち少なくともいずれかを回動手段により回動させる。
【0013】
これにより、レーザ発振器から出射されるレーザ光を分岐させるビームスプリッタ及び当該ビームスプリッタで分岐されたレーザ光の一部を受光して受光量を検出する光検出器が必要となる従来のものとは異なって、それらビームスプリッタ及び光検出器が不要となるので、部品点数の増大やコストの上昇や構成の複雑化を回避し、しかも、レーザ発振器から出射されるレーザ光の一部をモニタすることなく、加工対象物に照射されるレーザ出力のパワーをリニアリティに調整することができる。また、ユーザが設定値を設定する分解能に応じてレーザ出力のパワーの設定精度を高めることができる。
【0014】
請求項2に記載したレーザ加工装置によれば、偏光手段は、レーザ発振器との偏光面の相対回動角度に応じて同レーザ光の偏光方向を変更する波長板と、波長板を通過したレーザ光の光軸上で当該光軸に沿った軸を中心とした波長板との偏光面の相対回動角度に応じて同レーザ光の偏光方向を変更し且つ同レーザ光のうち所定の偏光方向のレーザ光のみを通過させる偏光部材とを備えている。この場合、ユーザが操作手段を操作してレーザ出力のパワーとして所望の設定値(P)を設定すると、制御手段は、ユーザの操作手段による操作量に応じた相対回動角度(θ)を、記憶手段に記憶されているP=(cosθ+1)/2という対応関係から導出し、レーザ発振器と偏光手段との偏光面の相対回動角度が当該導出した相対回動角度となるようにレーザ発振器、波長板及び偏光部材のうち少なくともいずれかを回動手段により回動させる。これにより、レーザ発振器、波長板及び偏光部材のうち少なくともいずれかを回動させることで、加工対象物に照射されるレーザ出力のパワーをリニアリティに調整することができる。
【0015】
請求項3に記載したレーザ加工装置によれば、ユーザが操作手段を操作してレーザ出力のパワーとして所望の設定値(P)を設定すると、制御手段は、波長板のみを回動させる。これにより、波長板のみを回動させることで、加工対象物に照射されるレーザ出力のパワーをリニアリティに調整することができる。特に、この場合は、波長板のみを回動させることで、レーザ加工装置から出射されるレーザ光の偏光方向を常に所定の偏光方向に保つことができ、レーザ出力を変更したとしても加工品質を一定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明をレーザマーキング装置に適用した第1の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、レーザマーキング装置の構成を概略的に示している。レーザマーキング装置1は、レーザ発振器2、1/2波長板3(本発明でいう偏光手段、波長板)、偏光板4(本発明でいう偏光手段、偏光部材)、回動装置5(本発明でいう回動手段)、ダンパ6、制御装置7(本発明でいう制御手段)、操作装置8(本発明でいう操作手段)及び記憶装置9(本発明でいう記憶手段)を備えて構成されている。
【0017】
レーザ発振器2は、電流及び発振周波数により決定される発振条件に基づいてレーザ光を出射する。このレーザ発振器2は、発振条件が一定とされており、レーザ光のパワーが一定とされている。尚、一定である発振条件とはレーザ光のパワーが速やかに所望の値で安定する特定の発振条件である。また、このレーザ発振器2は、可視領域の波長を有するレーザ光を出射するものであり、その波長は532[nm]に設定されている。
【0018】
1/2波長板3は、レーザ発振器2から出射されたレーザ光の光軸上で当該光軸に沿った軸中心で回動可能に設けられ、その回動角度(レーザ発振器2との偏光面の相対回動角度)に応じて当該レーザ光の偏光方向(向き)を変更する。1/2波長板3は、例えば「0°〜45°」で回動されることで、直線偏光(レーザ発振器2から出射されたレーザ光)の偏光面の角度を「0°〜90°」に偏光することで、水平な直線偏光を垂直な直線偏光に変更する。
【0019】
偏光板4は、例えば針状結晶がガラス製の透明なベースで支持(挟持)されて構成されており、上記した1/2波長板3を通過したレーザ光の光軸上で当該光軸に沿った軸中心で回動可能に設けられ、その回動角度(1/2波長板3との偏光面の相対回動角度)に応じて当該レーザ光の偏光方向(向き)を変更し且つ当該レーザ光のうち所定の偏光方向のレーザ光のみを通過させ、所定の偏光方向以外のレーザ光を通過させることなく当該レーザ光を予め設定された反射方向に反射させる。
【0020】
ダンパ6は、レーザ光を良好に吸収すべく例えばつや消し黒色系金属から構成されており、レーザ光が偏光板4にて反射される反射方向に配置され、偏光板4にて反射されたレーザ光を吸収する。
【0021】
回動装置5は、上記した1/2波長板3及び偏光板4を回動可能な駆動源となるモータから構成されており、駆動電流が供給されることで1/2波長板3及び偏光板4を回動させる。この場合、1/2波長板3及び偏光板4のうち少なくともいずれかを回動させることで、レーザ光の偏光方向を基準方向に設定するための外部から操作不可能な内部調整機構を備えている。すなわち、レーザマーキング装置1の製造途中において、レーザ発振器2、1/2波長板3及び偏光板4の各間に組み付け誤差などが生じて偏光板4を通過したレーザ出力のパワーとして所望の値が得られない場合などに、上記した内部調整機構を操作して1/2波長板3や偏光板4を回動させることで所望の値が得られるように構成されている。尚、上記した基準方向とは回動不可能に設けられたレーザ発振器2が出射するレーザ光に基づいた方向である。
【0022】
操作装置8は、ユーザが設定値を設定すべく操作可能に構成されている。記憶装置9は、図2に示すように、設定値とレーザ出力のパワーとの対応関係及び1/2波長板角度(1/2波長板3の回動角度)とレーザ出力のパワーとの対応関係を記憶している。設定値とレーザ出力のパワーとの対応関係は、正比例の対応関係にある。1/2波長板角度とレーザ出力のパワーとの対応関係は、cos関数の対応関係にある。具体的には、レーザ出力のパワーを「P」、1/2波長板3の回動角度を「θ」、レーザ出力の最大パワー(θ=0のときのレーザ出力のパワー)を「Pmax」とすると、
P=Pmax・(cosθ+1)/2
となり、
θ=cos−1(2P/Pmax−1)
となる。
【0023】
本実施形態では、レーザ出力のパワーである「P」が具体的な単位(例えば[W])を有する絶対的な物理量として説明しているために、「(cosθ+1)/2」の項に、「P」と同一の単位を有する物理量であるレーザ出力の最大パワーである「Pmax」の項を乗じている。一方、レーザ出力のパワーを設定するための設定値が単位を有しない相対的な量である場合には、「Pmax」を「1」として計算することができ、つまり、
P=(cosθ+1)/2
となり、
θ=cos−1(2P−1)
となる。
【0024】
制御装置7は、ユーザが操作装置8を操作して設定値を設定したことにより、そのユーザが設定した設定値を操作装置8から入力すると、記憶装置9に記憶されている設定値とレーザ出力のパワーとの対応関係に基づいてユーザが設定した設定値に対応するレーザ出力のパワーを導出し、続いて記憶装置9に記憶されている1/2波長板角度とレーザ出力のパワーとの対応関係に基づいて当該導出したレーザ出力のパワーに対応する1/2波長板3の回動角度を導出する。そして、制御装置7は、回動装置5に回動指令信号を出力し、その導出した回動角度だけ1/2波長板3を回動させる。
【0025】
本実施形態では、図2に示すように、例えばレーザ発振器2から出射されるレーザ光のパワーに「6W〜8W」で機差(個体差)がある場合には、出射されるレーザ光の最大パワーが「6W」のレーザ発振器2を備えているレーザマーキング装置1においては、図2(a)に示すように、レーザ出力のパワーとして「0W〜6W」が得られるようにするには1/2波長板3を「0°〜45°」の回動範囲(回動範囲の全て)で回動させることになり、一方、出射されるレーザ光の最大パワーが「8W」のレーザ発振器2を備えているレーザマーキング装置1においては、図2(b)に示すように、レーザ出力のパワーとして「0W〜6W」が得られるようにするには1/2波長板3を「約15°〜45°」の回動範囲(回動範囲の一部)で回動させることになる。尚、回動装置5の設定分解能は例えば200設定(0.5%〜100%)であり、レーザ出力のパワーとして「0.03W」単位で所望の値が得られる。また、本実施形態では、ユーザが操作装置8にて設定する設定値が相対値(0%〜100%)である場合を示しているが、レーザ出力のパワー([W])を直接設定可能であっても良い。また、操作装置8が設定値をダイヤル目盛(ボリューム)式で設定可能な構成であっても良い。
【0026】
ガルバノミラー10は、偏光板4と加工対象物11との間に配置され、駆動連結されている例えばモータからなる駆動源により駆動され、その駆動速度は駆動を開始してから予め設定されている一定の駆動速度に達するまで、つまり、マーキングする際の書き出し部分で加速するように構成されている。上記した回動装置5は、ガルバノミラー10の駆動速度が一定の駆動速度に達するまでの加速中であるときには、レーザ出力のパワーがユーザにより設定された設定値まで徐々に大きくなるように1/2波長板3を回動させる。換言すると、回動装置5は、ガルバノミラー10の駆動速度が一定の駆動速度に達するまでの加速中であるときには、加工対象物11上でのマーキング濃度が全ての箇所で均一となるように1/2波長板3を回動させる。これにより、偏光板4を通過したレーザ出力がガルバノミラー10を介して加工対象物11に照射され、多種多様な文字、記号、図形などがマーキングされる。
【0027】
ところで、以上は、1/2波長板3のみを回動させる場合を説明したが、1/2波長板3及び偏光板4の双方を回動させても良く、偏光板4のみを回動させても良い。また、レーザ発振器2をも回動可能に構成することにより、レーザ発振器2、1/2波長板3及び偏光板4のうち少なくともいずれかを回動させても良い。
【0028】
以上に説明したように第1の実施形態によれば、レーザマーキング装置1において、ユーザが操作装置8を操作してレーザ出力のパワーとして所望の値を設定すると、記憶装置9に記憶されている設定値とレーザ出力のパワーとの対応関係に基づいて、そのユーザが設定した設定値に対応するレーザ出力のパワーを導出し、続いて記憶装置9に記憶されている1/2波長板角度とレーザ出力のパワーとの対応関係に基づいて、その導出したレーザ出力のパワーに対応する1/2波長板角度を導出し、その導出した回動角度となるように1/2波長板3を回動させるように構成したので、部品点数の増大やコストの上昇や構成の複雑化を回避し、しかも、レーザ発振器2から出射されるレーザ光の一部をモニタすることなく、加工対象物に照射されるレーザ出力のパワーをリニアリティに調整することができる。また、ユーザが設定値を設定する分解能に応じてレーザ出力のパワーの設定精度を高めることができる。
【0029】
この場合、1/2波長板3のみを回動させるように構成したので、レーザマーキング装置1から出射されるレーザ光の偏光方向を常に所定の偏光方向に保つことができ、レーザ出力を変更したとしてもマーキング品質を一定に保つことができる。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図3を参照して説明する。尚、上記した第1の実施形態と同一部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。上記した第1の実施形態は、1/2波長板3を回動させることで所望のレーザ出力のパワーが得られるように構成されているが、第2の実施形態は、偏光部材を回動させることで所望のレーザ出力のパワーが得られるように構成されている。
【0031】
すなわち、レーザマーキング装置21において、偏光板22は、レーザ発振器2から出射されたレーザ光の光軸上で当該光軸に沿った軸中心で回動可能に設けられ、その回動角度(レーザ発振器2との偏光面の相対回動角度)に応じて当該レーザ光の偏光方向(向き)を変更し且つ当該レーザ光のうち所定の偏光方向のレーザ光のみを通過させ、所定の偏光方向以外のレーザ光を通過させることなく当該レーザ光を予め設定された反射方向に反射させる。回動装置23は、上記した偏光板22を回動可能な駆動源となるモータから構成されており、駆動電流が供給されることで偏光板22を回動させる。
【0032】
この場合、記憶装置25は、第1の実施形態で説明した1/2波長板角度とレーザ出力のパワーとの対応関係に代わって、その1/2波長板角度とレーザ出力のパワーとの対応関係と同様にcos関数の対応関係にある偏光板角度(偏光板22の回動角度)とレーザ出力のパワーとの対応関係を記憶している。そして、制御装置24は、ユーザが操作装置8を操作して設定値を設定したことにより、そのユーザが設定した設定値を操作装置8から入力すると、記憶装置25に記憶されている設定値とレーザ出力のパワーとの対応関係に基づいてユーザが設定した設定値に対応するレーザ出力のパワーを導出し、続いて記憶装置25に記憶されている偏光板角度とレーザ出力のパワーとの対応関係に基づいて当該導出したレーザ出力のパワーに対応する偏光板22の回動角度を導出する。そして、制御装置24は、回動装置23に回動指令信号を出力し、その導出した回動角度だけ偏光板22を回動させる。尚、この場合も、レーザ発振器2をも回動可能に構成することにより、レーザ発振器2及び偏光板22のうち少なくともいずれかを回動させても良い。
【0033】
以上に説明したように第2の実施形態によれば、レーザマーキング装置21において、ユーザが操作装置8を操作してレーザ出力のパワーとして所望の値を設定すると、記憶装置25に記憶されている設定値とレーザ出力のパワーとの対応関係に基づいて、そのユーザが設定した設定値に対応するレーザ出力のパワーを導出し、続いて記憶装置25に記憶されている偏光板角度とレーザ出力のパワーとの対応関係に基づいて、その導出したレーザ出力のパワーに対応する偏光板角度を導出し、その導出した回動角度となるように偏光板22を回動させるように構成したので、上記した第1の実施形態に記載したものと同様にして、部品点数の増大やコストの上昇や構成の複雑化を回避し、しかも、レーザ発振器2から出射されるレーザ光の一部をモニタすることなく、加工対象物に照射されるレーザ出力のパワーをリニアリティに調整することができる。また、ユーザが設定値を設定する分解能に応じてレーザ出力のパワーの設定精度を高めることができる。
【0034】
(その他の実施形態)
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形または拡張することができる。
レーザ発振器2は、可視領域の波長(532[nm])を有するレーザ光を出射するものに限らず、他の波長(532[nm])を有するレーザ光を出射するものであっても良い。
偏光板4、22は、ベースがガラス製のものに限らず、例えば石英製や樹脂製のものであっても良い。尚、ベースが樹脂製のものでは、ベースがガラス製や石英製のものに対して装置全体を安価にすることができる。
【0035】
1/2波長板3及び偏光板4、22のうち少なくともいずれかを回動させることでレーザ光の偏光方向を基準方向に設定する内部調整機構を備える構成に限らず、例えばレーザ発振器2をも回動可能に構成し、レーザ発振器2、1/2波長板3及び偏光板4、22のうち少なくともいずれかを回動させることでレーザ光の偏光方向を基準方向に設定する内部調整機構を備える構成であっても良い。
1/2波長板3に限らず、1/4波長板などの他の波長板を採用する構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す機能ブロック図
【図2】設定値とレーザ出力との対応関係及び1/2波長板角度とレーザ出力との対応関係を示す図
【図3】本発明の第2の実施形態を示す機能ブロック図
【符号の説明】
【0037】
図面中、1はレーザマーキング装置(レーザ加工装置)、2はレーザ発振器、3は1/2波長板(偏光手段、波長板)、4は偏光板(偏光手段、偏光部材)、5は回動装置(回動手段)、7は制御装置(制御手段)、8は操作装置(操作手段)、9は記憶装置(記憶手段)、11は加工対象物、21はレーザマーキング装置(レーザ加工装置)、22は偏光板(偏光手段、偏光部材)、23は回動装置(回動手段)、24は制御装置(制御手段)、25は記憶装置(記憶手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流及び発振周波数により決定される発振条件に基づいてレーザ光を出射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から出射されたレーザ光の光軸上で当該光軸に沿った軸を中心とした前記レーザ発振器との偏光面の相対回動角度に応じて同レーザ光のうち所定の偏光方向のレーザ光のみを通過させる偏光手段と、
前記レーザ発振器及び前記偏光手段のうち少なくともいずれかを回動手段により回動させることで、前記偏光手段を通過して加工対象物に照射するためのレーザ出力のパワーを調整する制御手段とを備えたレーザ加工装置であって、
前記レーザ出力のパワーに対応する設定値を設定すべくユーザが操作する操作手段と、
前記設定値(P)と前記相対回動角度(θ)との対応関係をP=(cosθ+1)/2として記憶する記憶手段とを備え、
前記制御手段は、前記ユーザの前記操作手段による操作量に応じた相対回動角度を前記記憶手段に記憶されている対応関係から導出し、前記レーザ発振器と前記偏光手段との偏光面の相対回動角度が当該導出した相対回動角度となるように、前記レーザ発振器及び前記偏光手段のうち少なくともいずれかを前記回動手段により回動させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記偏光手段は、前記レーザ発振器との偏光面の相対回動角度に応じて同レーザ光の偏光方向を変更する波長板と、前記波長板を通過したレーザ光の光軸上で当該光軸に沿った軸を中心とした前記波長板との偏光面の相対回動角度に応じて同レーザ光の偏光方向を変更し且つ同レーザ光のうち所定の偏光方向のレーザ光のみを通過させる偏光部材とを備え、
前記制御手段は、前記ユーザの前記操作手段による操作量に応じた相対回動角度を前記記憶手段に記憶されている対応関係から導出し、前記レーザ発振器と前記偏光手段との偏光面の相対回動角度が当該導出した相対回動角度となるように、前記レーザ発振器、前記波長板及び前記偏光部材のうち少なくともいずれかを回動手段により回動させることを特徴とする請求項1に記載したレーザ加工装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ユーザの前記操作手段による操作量に応じた相対回動角度を前記記憶手段に記憶されている対応関係から導出し、前記レーザ発振器と前記偏光手段との偏光面の相対回動角度が当該導出した相対回動角度となるように、前記波長板のみを回動させることを特徴とする請求項2に記載したレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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