説明

レーザ加工装置

【課題】本発明は紙やフイルム等のシート状媒体に対してレーザ光を使用して加工を行うレーザ加工装置に関し、特に被加工物の高速移動に対応する小型のレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【解決手段】レーザ加工装置として、レーザ光源と、該レーザ光源からの光を連続紙等の媒体上に照射する2つのヘッドを設け、更に上記レーザ光源から2つのヘッドに光を伝送する伝送光学系と、上記媒体を搬送する媒体搬送機構と、上記ヘッドを媒体に対して移動させる移動機構とを設け、光路切替部によってレーザ光源からのレーザ光を一方のヘッドに導き、媒体に対する加工処理を行なうと共に、他方のヘッドは加工開始位置に復帰させ、以後交互に2つのヘッドを操作し、順次媒体に対してレーザ光を照射し、媒体に対するレーザ加工を高速に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やフイルム、板、ブロック等の媒体に対してレーザ光を使用して加工を行うレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光による媒体に対する加工装置として、例えば特許文献1のレーザ裁断機や特許文献2のミシン目形成装置が提案されている。特許文献1のレーザ裁断機は、ヘッドをX方向に移動可能にヘッド支持梁に取り付け、更にヘッド支持梁をY方向に移動可能に載置台に取り付け、ヘッドを被裁断物載置上でX方向、Y方向に移動可能に設置すると共に、上記ヘッドに対してレーザビーム偏向器を介してレーザ発振器からレーザ光を供給し、紙や布等のシート状媒体を裁断する構成であり、ビームと同軸に射出するアシストガスノズル以外に傾斜してサブノズルを設けた発明である。
【0003】
また、特許文献2のミシン目形成装置は、レーザ光源から出力されたレーザビームをコリメータレンズ、ミラーを介してガルバノミラーとfθレンズで構成されるスキャン集光光学系に導き、F1方向に移動する連続用紙にレーザビームを照射してミシン目形成を行う構成であり、第1方向(F1方向)に沿って移動する連続用紙に対して、上記第1方向とほぼ直交する第2方向に沿ってミシン目を順次形成する発明である。
【特許文献1】実開平6−15891号公報
【特許文献2】特開2001−242410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のレーザ裁断機の場合、切断動作を行う工程とは別にX、Y方向にヘッドを移動し、ヘッドを加工開始位置まで移動する復帰工程が必要となる。このため、被加工物に対して高速加工ができない。
【0005】
また、特許文献2のミシン目形成装置では、レーザ光をガルバノミラーとfθレンズから成るスキャン集光光学系に導く構成が必要であるため、装置が大型化する。
そこで、本発明は被加工物の移動を停止させることなく、被加工物に対して高速にレーザ加工を行ない、装置も大型化することのないレーザ加工装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、レーザ光源と、該レーザ光源からの光を連続紙等の媒体上に照射する複数のヘッドを設け、更に上記レーザ光源から複数のヘッドに光を伝送する伝送光学系と、上記媒体を搬送する媒体搬送機構と、上記複数のヘッドを媒体に対して移動させる移動機構とを設け、光路切替部によってレーザ光源からのレーザ光を複数のヘッドに選択的に導き、複数のヘッドから順次媒体に対してレーザ光を照射し、媒体に対するレーザ加工を高速に行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、媒体の移動を停止させることなく、連続紙等の媒体に対して高速加工を行ない、装置も小型化できるレーザ加工装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第1の実施形態を図1から図6に基づいて説明する。
図1は、本実施形態のレーザ加工装置の概略図である。また、図2は連続紙である媒体をレーザ加工装置内で搬送させる構成を示す概略図であり、図1に示すD方向からの矢視図である。媒体はレーザを照射する対象物となる被加工物である。
【0009】
図3は、図1をA方向から視た後述する集光ヘッドの矢視図である。また、図4は、図1をBの方向から視た矢視図であり、集光レンズによって媒体上に集光されるレーザ光の様子を示す図である。
【0010】
図1において、レーザ加工装置1に媒体2を供給する上位装置7は、例えばインクジェットプリンタや、レーザビームプリンタ、オフセット印刷機等の画像記録装置、或いは巻き出し装置等であり、連続紙である媒体2をレーザ加工装置1に連続的に供給する。
【0011】
レーザ加工装置1の内部に配設された媒体搬送機構10は、図2に示すように上位装置7から供給される媒体2を矢印a方向に搬送し、集光ヘッド4a、4bの移動部近傍を一定の搬送速度を保持した状態で搬送し、レーザ加工装置1の下流側に配設された不図示の後処理機に媒体を送出する。
【0012】
具体的には、図2に示すように、矢印方向に回転する駆動ローラ対11によって媒体2を矢印a方向に搬送し、更にガイド12a−12b、12c−12dに沿って媒体2を搬送し、テンションローラ対13により不図示の後処理機に送る。後処理機は、例えば紙折機、製本機、スタッカ、フィニッシャ、丁合機等であり、媒体2に対して対応する処理を施す。
【0013】
尚、ガイド12a−12bと12c−12dの隙間は、後述する集光レンズ18a、18bを介して照射されるレーザ光によって媒体2に対する加工が施されるレーザ加工部であり、媒体2を加工する際に発生する粉塵や煙等を不図示の負圧ポンプを使用してフィルタに導く吸引ノズル14が設けられている。
【0014】
図1に示すように、レーザ加工装置1はレーザ光源5、1軸ステージ3a、3b、光路切替手段9で構成されている。レーザ光源5は、例えばCO2レーザやYAGレーザ等の平行光であるレーザ出射光5aを出射する光源であり、加工条件に応じた光出力で連続発光若しくはパルス発光する。
【0015】
光路切替手段9はコーナーキューブ9aを1軸移動ステージに固定した構成であり、光路切替手段9の両側に反射ミラー8a、8bが配設されている。反射ミラー8aはレーザ出射光5aからコーナーキューブ9aを退避させた時(後述する図5(a)参照)、レーザ出射光5aが照射されるミラーであり、1軸ステージ3aを移動する集光ヘッド4aの移動方向に平行な方向に向かって光路を曲げるような角度に固定されている。また、ミラー8bはレーザ出射5aの光路にコーナーキューブ9aが挿入された時(後述する図5(b)参照)、ミラー8bにはコーナーキューブ9aからの反射光が照射され、もう一方の1軸ステージ3bを移動する集光ヘッド4bの移動方向に平行な方向に向かって光路を曲げるような角度に固定されている。
【0016】
1軸ステージ3a、3bは、媒体2の搬送方向に対して傾斜角度θ1を有して配設されており、集光ヘッド4aは1軸ステージ3aに沿って矢印6a、6b方向に移動可能に構成され、集光ヘッド4bも1軸ステージ3bに沿って矢印6a、6b方向に移動可能に構成されている。ここで、矢印6a方向は集光ヘッド4a、4bが媒体2に加工を行う際の加工工程移動方向であり、矢印6b方向は集光ヘッド4a、4bが加工開始位置に戻る際の復帰工程移動方向である。
【0017】
尚、1軸ステージ3a、3bの媒体2の搬送方向に対する傾斜角度θ1は、媒体2の搬送速度と集光ヘッド4a、4bの移動速度に応じて、媒体2上の加工軌跡16が所望の方向となるように任意に設定されている。
【0018】
次に各構成要素間の作用について説明する。
上位装置7から供給された媒体2は、前述の図2に示す媒体搬送機構10により矢印a方向に搬送され、1軸ステージ3a、3bと交差して搬送された後に、前述の後処理機へと送られる。不図示の装置フレームに固定されたレーザ光源1から出射されたほぼ平行なレーザ出射光5aは、光路切替手段9に内蔵された互いに直角な3面の反射面を有する光学部材であるコーナーキューブ9aによって反射し、搬送方向下流側の1軸ステージ3bに固定されたミラー8bに入射する。
【0019】
さらに、ミラー8bで反射したレーザ光は、1軸ステージ3bに沿って往復移動可能な集光ヘッド4bに入射する。集光ヘッド4bは、前述の図3に示すように、ミラー17bで反射したレーザ光を集光レンズ18bによって微小スポットまで絞って単位面積当たりのパワーを高め、媒体2の表面に一定の焦点方向の位置関係を保持して照射する。このレーザ光の照射によって媒体2上のスポット照射位置の温度は、媒体材料の沸点以上の温度まで急上昇し、媒体材料が瞬時に気化し、例えば穴加工が行われる。
【0020】
集光ヘッド4a、4bは、前述のように対応する1軸ステージ3a、3bに沿って駆動するが、媒体搬送機構10と共に、不図示の制御部によって、媒体2の搬送方向に対する位置情報に従ってタイミング同期が取られ、媒体2の適切な位置に対して媒体2上の加工軌跡16がトレースされるように往復方向に対して移動制御される。
【0021】
次に図5(a)、(b)を使用して、具体的なレーザ光の照射処理を説明する。
図5(a)の状態は、集光ヘッド4aが加工開始位置である4a−1の位置にあり、集光ヘッド4bが加工終了位置である4b−2の位置にあることを示す。この状態で、コーナーキューブ9aはレーザ出射光5aから退避させた位置にあり、レーザ出射光5aはミラー8aで反射し、集光ヘッド4aに導かれ、集光ヘッド4a内のミラー17aを介して集光レンズ18aに入射し、媒体2の加工開始位置上に微少スポットを結ぶ。
【0022】
その後、媒体2の搬送に同期して集光ヘッド4aが加工開始位置である4a−1から加工終了位置である4a−2の位置まで媒体2を加工しながら移動すると同時に、集光ヘッド4bが加工終了位置である4b−2から加工開始位置である4b−1の位置まで移動する。したがって、この間前述のように、レーザ光が照射された媒体2上のスポット照射位置には順次レーザ加工が行なわれる。
【0023】
次に、図5(b)に示す様に、コーナーキューブ9aを移動し、レーザ出射光5aにコーナーキューブ9aを挿入し、コーナーキューブ9aによりレーザ出射光5aを反射させると、レーザ光源5から出射したレーザ光は、コーナーキューブ9a、ミラー8bを介して集光ヘッド4bに導かれる。そして、集光ヘッド4b内のミラー17b及び集光レンズ18bを介して媒体2の加工開始位置上に微少スポットを結ぶ。
【0024】
その後、媒体2の搬送に同期して集光ヘッド4bが加工開始位置である4b−1から加工終了位置である4b−2の位置まで、媒体2に加工を施しながら移動すると同時に、集光ヘッド4aが加工終了位置である4a−2から加工開始位置である4a−1の位置まで移動する。
【0025】
以下、2つの集光ヘッド4a、4bは相互に逆方向に往復運動を繰り返し、一方の集光ヘッドが媒体2に加工を行っている間、他方の集光ヘッドは加工開始位置まで復帰し、次の媒体2への加工処理の準備を行う。
【0026】
このように光路切替手段9を用いて1つのレーザ光源5から出射された1本のレーザ出射光5aを2つの集光ヘッド4a、4bに選択的に導く事が出来る。そのため2つの集光ヘッド4a、4bにそれぞれレーザ光源5を配置する構成に比べて装置を安価で小型に出来る。また、光路切替は1本のレーザ出射光5a中にコーナーキューブ9aを退避、挿入させるだけで良いので光路切替時のコーナーキューブ9aの移動距離はわずかで良いため光路切替時間を短時間に出来る。
【0027】
また、2つの集光ヘッドを交互に切り替えて加工に使用することにより、集光ヘッドが1つの場合に比べて、1軸ステージ当たり集光ヘッドが移動する時間は約2倍だけ長くても良いことになる。つまり、1軸ステージの移動速度が不足するような媒体搬送速度に対しても、2つのヘッドを並列にして逆方向に移動させて加工を交互に繰り返すことにより、より高速な媒体搬送に対応したレーザ加工を行うことができる。
【0028】
特に、レーザ光源の場合、加工線速度の大きさに対して必要な光パワーが大きくなる特性を持ち、本実施形態の構成をとることで、より加工線速度を遅くすることができ、低出力の光源を採用することも可能になる。
【0029】
ここで、集光ヘッド4a、4bは、それぞれ1軸ステージ3a、3bの移動軸周りに角度θ2だけ回転した状態で矢印6a、6b方向に移動可能なように固定されており、図1のBから視た時の状態は、前述の図4に示す状態である。ここで、それぞれの集光ヘッド4a、4bの光軸を、媒体面の法線方向に対して互いに逆方向にθ2だけ傾けておくと、集光ヘッド4a、4bの焦点距離fと開口径Dとで定義されるNA(レンズ開口数)は、
NA=sinθ3=D/2f
で表され、この時のθ2とθ3の関係を、
θ3<θ2
となるように設定することにより、媒体2の集光レンズとの反対側に位置する図示しない媒体載置台表面から反射されるビームのレーザ光源側への戻り反射光を無くすことができる。
【0030】
同時に、並列に位置する1軸ステージ及び集光ヘッド同士の位置的な干渉も起こり難くい配置が実現できる。また、θ2だけ傾ける方向には制限はなく、任意に設定できる。ちなみに、交互に移動する2つの集光ヘッドがすれ違う瞬間に、加工中の集光ヘッドから出射した光の内、加工面付近で反射した光が非加工の復帰中の集光ヘッドに入射しレーザ光源側へ戻るが、その際には復帰中の集光ヘッドからレーザ光源への光路は光路切替手段9によって遮光されている為レーザ光源側に戻ることはない。
【0031】
また、2つの集光ヘッドを媒体に対して上方又は下方の空間のどちらか一方にのみ配置した。その為他方の空間に媒体の搬送部材などを自由に配置できる。
また、前述したように、光路の切り替えを行う際にコーナーキューブ9aを繰り返し移動するが、その際に機械的なガタなどにより、図6(a)に示すようにコーナーキューブ9aがθだけ傾いた状態になる場合がある。コーナーキューブとは、90度の直角を3つ合成した三角錐のプリズムで成るコーナーキューブプリズムや、表面が金属で形が正方形または直角二等辺三角形の反射板3枚をお互いが直角に向くようにつなぎ合わせたコーナーキューブリフレクタを指し、光を来た方向に正確に反射するという性質を持った光学素子である。通常の反射面が1面だけの反射ミラーでは、角度θだけミラー位置が回転すると、反射光線は入射光線に対して2θだけ傾く。しかし、本実施形態では、光路切替手段9としてコーナーキューブ9aを採用するため、反射部材の位置が回転方向に変化しても反射光線が傾くことはない。従って、常に一定の角度で集光ヘッドへビームを向けることができ、光路途中の開口部などでけられることがないため、安定したパワーを維持することができる。
【0032】
但し、コーナーキューブ9aが、図6(b)に示すように並進方向にdだけずれた場合は、反射光線は2dだけ並進方向にずれるが、角度ずれが発生した場合のように光路長が長くなるにつれて部材に対するビーム位置の並進ずれ量が拡大することはないため、それほど問題とはならない。
【0033】
尚、前述のレーザ光源5としては、加工する材料の特性に合わせて炭酸ガスレーザやYAGレーザ、エキシマレーザ、半導体レーザ等を適宜選択することができる。また、光路中の透過光学素子材料も光源の波長に合わせて、合成石英やBK7等の、紫外から可視、近赤外域に対応する光学ガラスや赤外域用のGeやZnSe等を適宜選択することができる。さらに、反射素子としては、ガラス基板にアルミや金をコーティングしたミラーを波長域に応じて用いることができる。
【0034】
また、1軸ステージとしては、ステッピングモータをベルトなどの伝達部材で直線運動に変換する方式のものや、磁石を直線状に配置して可動部コイルの電流制御を行うことによるボイスコイルモータなどの方式があり、必要な加速度や位置精度に応じて選択できる。
【0035】
また、媒体2の搬送速度を、上流側にある印刷機の印字モードに従って低速や高速に不連続に切り替える場合は、媒体上の加工軌跡を常に搬送方向に垂直に保つための方法として、ミラー8a、8bと共に1軸ステージの駆動方向の角度θ1を変える方向に回転させるか、又は予め複数の角度に設定した1軸ステージを複数用意しておき、光路切り替え手段で選択するようにすればよい。この場合は、集光ヘッドの駆動速度は一定でよい。
【0036】
これとは逆に、1軸ステージの角度を固定とする場合には、集光ヘッドの駆動速度を切り替えればよい。これらの場合には、媒体2の搬送速度を検出する図示しない駆動ローラなどに内蔵されるエンコーダから出力されるパルス信号をもとにして、1軸ステージの角度位置や集光ヘッドの駆動速度を制御すれば、媒体2に対する位置ずれのない加工軌跡を得ることができる。
【0037】
また、媒体2への加工内容としては切断のみならず、光源をパルス駆動することによりミシン目状の加工を行ない、又は光源のパワーを中間的な値に設定することにより折り目用のハーフカット加工やマーキング加工などを行うこともできる。
【0038】
さらに、集光ヘッド4a、4b内のミラーと集光レンズを一体化した素子として、偏心放物面鏡を用いることにより、部品点数削減や小型化の効果が得られ、特に赤外領域の光源を用いる場合には透過素子内での吸収によるパワー損失を減らすことができる。
【0039】
以上のように、上記第1実施形態によれば、2つの集光ヘッドを使用し、レーザ加工工程と復帰工程を交互に行い、紙やフイルム等のシート状媒体の搬送を停止することなく高速なレーザ加工処理を行うことができる。このことにより、集光ヘッドの移動速度を遅くしてレーザパワーを小さくすることも可能になる。また、前述のように、反射光がレーザ光源側に戻らないため光学面の損傷を防止できる。
【0040】
また、光路切替手段9の角度ずれがあっても反射角度は一定に保たれるため、途中の光路でビームがけられたり、集光レンズへ傾いて入射することによる収差の増加などが発生せず、切断ビームスポットのパワー密度が低下することがないため、切断面の品質を向上できる。
【0041】
さらに、2つの集光ヘッドの加工軌跡を同一直線上に位置付けられるため、ヘッドの復帰工程の時間を最小限に抑えられる。また、2つの集光ヘッドを媒体に対して同じ側の空間、つまり媒体2の表面側か裏面側に配置するので2つの集光ヘッドの配置が容易である。
【0042】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、2つの集光ヘッドを媒体2の表裏両側の空間に配置し、媒体2を挟むように対向して配置した例である。
【0043】
図7は本実施形態のレーザ加工装置20の概略図であり、図8は連続紙である媒体をレーザ加工装置20内で搬送させる構成を示す概略図であり、図7に示すD方向からの矢視図である。また、図9は図7に示すレーザ加工装置20をC方向から視た矢視図である。尚、本実施形態のレーザ加工装置20に対して、前述の第1の実施形態と同様、インクジェットプリンタ等の上位装置から連続紙である媒体2が供給される。
【0044】
レーザ加工装置20は、レーザ光源21、光路切替手段22、1軸ステージ23a、23bで構成され、1軸ステージ23a、23bには集光ヘッド24a、24bが矢印6a、6b方向に移動可能に取り付けられている。尚、レーザ光源21は、前述と同様CO2レーザやYAGレーザ等の平行光であるレーザ出射光21aを出射する光源であり、加工条件に応じた光出力で連続発光若しくはパルス発光する。
【0045】
光路切替手段22は媒体2の厚さ方向に離間されて配置された2枚のミラー25a、25bと、その2枚のミラー25a、25bを媒体2の搬送方向に移動可能に支持する1軸ステージから構成されている。ミラー25a、25bはレーザ光源1から出射したレーザ出射光21aに対して退避した位置と反射する位置に切り替えられる。
【0046】
1軸ステージ23aに取り付けられた集光ヘッド24aは1軸ステージ23aに沿って矢印6a、6b方向に移動可能に構成され、集光ヘッド24bも1軸ステージ23bに沿って矢印6a、6b方向に移動可能に構成されている。この矢印6a方向は、前述と同様、集光ヘッド24a、24bが媒体2に加工を行う際の加工工程移動方向であり、矢印6b方向は集光ヘッド24a、24bが加工開始位置に戻る際の復帰工程移動方向である。
【0047】
また、媒体2の搬送は図8に示すように、矢印方向に回転する駆動ローラ対26によって媒体2を矢印a方向に搬送し、更にガイド27a−27b、27c(27d)−27eに沿って媒体2を搬送し、テンションローラ対28により不図示の後処理機に送る。
【0048】
また、本例では、媒体2面を挟むように対向してレーザ光を照射する配置であるため、ガイド27a−27b、27c−27e間に隙間を設け、媒体2を集光レンズの焦点方向に対してガイドし、駆動ローラ対26で媒体2を押し出す方向に駆動し、テンションローラ対28で媒体2に引っ張り力が発生しないように、媒体紙面内に対して圧縮方向に微小な力を与えるよう搬送制御する。その際、媒体2の弛みの大きさを検出する弛みセンサ29の出力を図示しない制御部によりテンションローラ対28にフィードバックし、回転制御を行う。このように構成することにより、媒体2の加工箇所における引っ張りに起因する破断を防止する。
【0049】
レーザ光源21から出射したレーザ出射光21aは、ミラー30により光路切替手段22に向かって反射され、光路切替手段22の位置によって、集光ヘッド24a又は24bに導かれる。例えば、図9に示すミラー25a、25b(光路切替手段22)が図7の実線位置に存在する状態では、レーザ光源21から出射したレーザ出射光21aはミラー30で反射され、ミラー25aで反射し、更にミラー25bで反射した光が集光ヘッド24aに入射する。この場合、図9の実線で示す光路となり、集光ヘッド24aが加工工程の移動方向6aに沿って移動し、媒体2に対して加工が施され、その間集光ヘッド24bは復帰工程である移動方向6bに沿って移動し、次の加工開始位置に戻る。
【0050】
一方、ミラー25a、25b(光路切替手段22)が図7の2点鎖線の位置に移動した状態では、ミラー30で反射したレーザ出射光21aは集光ヘッド24bに直接入射し、図9に示す2点鎖線の光路となる。この間、集光ヘッド24bが加工工程の移動方向6aに沿って移動し、媒体2に対して加工を行い、集光ヘッド24aは復帰工程の移動方向6bに沿って移動し、次の加工開始位置に戻る。
【0051】
このようにミラー25a、25b(光路切替手段22)の位置を交互に切り換えることにより、2つの集光ヘッド24a、24bへの光路をそれぞれ切り替え、高速移動する媒体2に対して媒体2を停止させることなく、レーザ加工を施すことができる。
【0052】
以上のように、上記第2実施形態によれば、媒体2の両側つまり媒体2に対して上方及び下方の空間に集光ヘッド24a、24bを配置したので、1軸ステージ23a、23bの幅が大きくても、並列することによる干渉の問題がなく、互いに集光光軸を傾斜させて同一の場所に集光させる配置をとらなくても集光レンズの口径を大きくすることが可能となり、集光力を上げて微小なスポットを形成できるためパワー密度が高まり、より高速な紙搬送に対応することが可能となる。
【0053】
また、1軸ステージ形状の自由度が増すのでレイアウトし易くなる。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態は、集光ヘッドをそれぞれ1軸ステージに配設し、3つの1軸ステージを媒体2の同じ面側に並列に配置したレーザ加工装置を説明するものである。
【0054】
図10は本実施形態のレーザ加工装置の概略図であり、図11は図10に示すE方向から視た集光レンズと媒体付近の矢視図である。尚、本実施形態のレーザ加工装置に対しても、前述の第1、第2の実施形態と同様、インクジェットプリンタ等の上位装置から連続紙である媒体2が供給される。
【0055】
本例のレーザ加工装置は、レーザ光源31、光路切替手段32、1軸ステージ33a、33b、33cで構成され、1軸ステージ33a、33b、33cには集光ヘッド34a、34b、34cが矢印6a、6b方向に移動可能に取り付けられている。尚、レーザ光源31は、前述と同様CO2レーザやYAGレーザ等の平行光であるレーザ出射光31aを出射する光源であり、加工条件に応じた光出力で連続発光若しくはパルス発光される。
【0056】
光路切替手段32は直線状に配置した3枚のミラー32a、32b、32cで構成され、ミラー32a、32bはレーザ光源31からの光路中に挿抜可能にそれぞれ1軸ステージに配置されている。一方、ミラー32cの配設位置は固定されている。
【0057】
ミラー32a、32b、32cで反射された光は、それぞれ集光ヘッド34a、34b、34cに入射する。すなわち、レーザ光源31からのレーザ出射光31aの光路中にミラー32a及び32bを挿抜することによって、レーザ光源31からの光を集光ヘッド34a、34b、34cに選択的に入射させることができる。この際の媒体2上の集光スポットの位置は図11に示すように並列に配置し、集光ヘッド34a、34b、34c内の集光レンズ37a、37b、37cを介してレーザ光が光路切替手段32により順次選択されて照射される。
【0058】
光路の切り替え動作は、第1、第2実施形態と同様、媒体2の搬送タイミングに同期させて制御しても良い。また、媒体2の種類によって異なるスポット径を3つの集光ヘッド34a、34b、34cごとに設定して選択するようにしても良い。
【0059】
又、1本の加工軌跡を時系列に3つのスポットで分担して繋げていき、それぞれ加工幅などの条件の異なる加工を1本の加工軌跡内に分割して行っても良い。この場合搬送方向に垂直な方向に厚みや材料特性が異なる構造を持つ媒体に対してもそれぞれ最適な加工を行うことが可能となる。
【0060】
一方、ミラー32a、32b、32cの反射角度をそれぞれ変えて1軸ステージ33a、33b、33cの搬送方向に対する相対的な配置角度を変え、各1軸ステージを選択できるように構成しても良い。
【0061】
また、3つの集光ヘッド34b、34cの光軸を傾けることにより、集光ヘッド34aにより媒体2上に集光されるスポットが移動した時の軌跡に、集光ヘッド34b、34cにより媒体2上に集光されるスポットが移動した時の軌跡を一致させるようにし、3つの集光ヘッドを交互に切り替えて加工しても良い。この場合、加工する際に発生する粉塵や煙等を不図示の負圧ポンプを使用してフィルタに導く吸引ノズル14の個数は1つで済む。さらに、3つの集光ヘッドの内、スポット径や焦点深度が同一の2つの集光ヘッドを逆方向に移動させて加工を交互に繰り返すことにより、第1の実施形態で示したように高速な媒体搬送に対応したレーザ加工を行い、異なるスポット径や焦点深度に設定された残りの1つの集光ヘッドを用いて前述の2つの集光ヘッドで行う加工とは性質の異なる加工を行うことが可能である。
【0062】
以上のように、第3実施形態によれば、媒体2の厚さや材料に応じて、異なるスポット径や焦点深度の集光ヘッドを選択的に用い、又は1軸ステージの配置角度を選択することができるため、媒体種類や加工方向などの加工適用範囲を広げることができる。
【0063】
また、3つの集光スポットが移動する軌跡を一致させるようにすれば、3つの集光ヘッドを交互に切り替えて加工に使用することにより、集光ヘッドが1つの場合に比べて、1軸ステージ当たり集光ヘッドが移動する時間は約3倍だけ長くても良いことになる。
【0064】
尚、上記実施形態では、3つの集光ヘッド構成について説明したが、4つ以上の集光ヘッドを配置する構成としてもよい。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0065】
第4実施形態は、光路切替手段として、軸中心に回転する回転部材に透過部と反射部を設けた回転板を使用するレーザ加工装置を説明するものである。
図12は本実施形態のレーザ加工装置の概略図であり、図13は本例のレーザ加工装置に使用する光路切替手段の構成を示す図である。
【0066】
本実施形態のレーザ加工装置は、レーザ光源41、光路切替手段42、1軸ステージ43a、43bで構成され、1軸ステージ43a、43bには不図示の集光ヘッドがそれぞれ移動可能に取り付けられている。尚、1軸ステージ43a、43bに配設された集光ヘッドは、前述の第1実施形態と同様、前述の矢印6a、6b方向に移動可能であり、媒体2にレーザ加工を施す際矢印6a方向に移動し、復帰工程では矢印6b方向に移動する。
【0067】
光路切替手段42は、図13に示すように回転板で構成され、軸42aを中心に回転可能に構成され、回転板には反射部42bと透過部42cが交互に設けられている。例えば、反射部42bには誘電体多層膜や、アルミ、金等の金属膜を回転板にコーティングして構成されている。また、基板材料として、例えばガラスや金属等が使用可能である。
【0068】
また、透過部42cは、例えば回転板の対応する部分をくり抜いた空間で構成され、光量損失が無い構成である。また、光路切替手段42の回転にエンコーダ付きのモータを使用し、媒体搬送系や1軸ステージの制御系と同期させることによって、光路切え替えタイミングを安定に制御する。
【0069】
例えば、1軸ステージ43aの集光ヘッドにより加工工程においては、光路切替手段42を回転させ、レーザ出射光41aの光路上に透過部42cを位置させ、レーザ出射光41aをミラー45aを介して1軸ステージ43a側の集光ヘッドに導き、媒体2に対するレーザ加工を行う。一方、1軸ステージ43bの集光ヘッドにより加工工程においては、光路切替手段42を回転させ、レーザ出射光41aの光路上に反射部42bを位置させ、ミラー45bを介して1軸ステージ43b側の集光ヘッドに導き、媒体2に対するレーザ加工処理を行う。
【0070】
以上のように、第4実施形態によれば、光路切替手段42として回転体を用いることにより、反射面の角度や位置の精度を高くすることができ、光路途中の開口によるけられになどによるパワー損失が発生しない。また、光路切り替えタイミングを安定に制御することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態についてそれぞれ説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。例えば、前述した本発明の各実施形態に示された全体構成から幾つかの構成要素を削除してもよいし、更には各実施形態の異なる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0072】
また、光路切替手段として直線状に移動する反射面を有する光学部材を直線状に移動させたが、反射面を傾けて光路を切り換えても良い。
また、レーザ光源からの光を光ファイバの一端に入射させ、光ファイバの他端を移動させることにより光路を切り換えても良い。
【0073】
また、レーザ光源からの光を、結晶への印加電圧により偏光方向を回転可能な、ポッケルスセルやカーセルなどの偏光回転素子へ入射させた後に、偏光ビームスプリッターへ入射させることにより、透過光と反射光とを選択的に切り換えても良い。この場合、ポッケルスセルやカーセルなどの替わりに、1/2波長板を挿入・退避させて偏光方向を回転させても良い。
【0074】
また、ヘッドから媒体にビームを照射する際に集光レンズを用いてビームを集光させたが、集光レンズを用いないで例えば平行ビームを照射しても良い。
また、媒体の切断加工だけでなく、マーキングやアニール処理、焼き入れ等の他の媒体加工に用いる事も出来る。
【0075】
また、光源からヘッドまでの光路の構成は光源の配置等に合わせて種々の構成とする事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】第1実施形態のレーザ加工装置の概略図である。
【図2】図1示すD方向からの矢視図である。
【図3】図1のA方向からの集光ヘッドの矢視図である。
【図4】図1のB方向からの矢視図であり、集光レンズによって媒体上に集光されるレーザ光の様子を示す図である。
【図5】(a)は、光路切替手段が上方に移動し、一方の1軸ステージに配設された集光ヘッドによるレーザ加工の開始状態を示す図であり、(b)は、光路切替手段が下方に移動し、他方の1軸ステージに配設された集光ヘッドによるレーザ加工の開始状態を示す図である。
【図6】(a)は、コーナーキューブのθ方向調整を示し、(b)は、コーナーキューブのd方向調整を示す図である。
【図7】第2実施形態のレーザ加工装置の概略図である。
【図8】図7示すD方向からの矢視図である。
【図9】図7示すC方向からの矢視図である。
【図10】第3実施形態のレーザ加工装置の概略図である。
【図11】図10示すE方向からの矢視図である。
【図12】第4実施形態のレーザ加工装置の概略図である。
【図13】第4実施形態のレーザ加工装置において使用される光路切替手段の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0077】
1・・・レーザ加工装置
2・・・媒体
3a、3b・・1軸ステージ
4a、4b・・集光ヘッド
5・・レーザ光源
5a・・レーザ出射光
6a、6b・・矢印
7・・上位装置
8a、8b・・ミラー
9・・・光路切替手段
9a・・コーナーキューブ
10・・媒体搬送機構
11・・駆動ローラ対
12a−12b、12c−12d・・ガイド
13・・テンションローラ対
14・・吸引ノズル
17a、17b・・ミラー
18a、18b・・集光レンズ
20・・レーザ加工装置
21・・レーザ光源
21a・・レーザ出射光
23a、23b・・1軸ステージ
24a、24b・・集光ヘッド
25a、25b・・ミラー
26・・駆動ローラ対
27a−27b、27c−27e・・ガイド
28・・テンションローラ対
29・・弛みセンサ
30・・ミラー
30・・レーザ加工装置
31a・・レーザ出射光
33a、33b、33c・・1軸ステージ
34a、34b、34c・・集光ヘッド
35a、35b、35c・・ミラー
41・・レーザ光源
42・・光路切替手段
43a、43b・・1軸ステージ
42a・・軸
42b・・反射部
42c・・透過部
45a、45b・・ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源からの光を媒体上に照射する複数のヘッドと、
前記レーザ光源から前記複数のヘッドに光を伝送する伝送光学系と、
前記媒体の媒体搬送機構と、
前記複数のヘッドを前記媒体に対して移動させる移動機構と、を有し、
前記伝送光学系は前記レーザ光源から前記複数のヘッドへ選択的に光を導く光路切り替え部を有することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記複数のヘッドを前記媒体の搬送方向に対して斜めに移動させることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記複数のヘッドは、前記媒体に対して上方又は下方の空間のどちらか一方に配置されることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記複数のヘッドはそれぞれ前記光を前記媒体上に集光するレンズを有し、前記複数のヘッドのそれぞれの前記レンズの光軸が他の前記複数のヘッドの前記レンズの集光視野角に入らないように傾けて配置されることを特徴とする請求項3記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記複数のヘッドは、前記媒体に対して上方及び下方の空間に配置されることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記光路切り替え部は少なくとも前記レーザ光源からの光を反射する反射面を有する光学素子を有することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記光路切り替え部は前記光学素子の移動機構を有すことを特徴とする請求項6記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記光学素子はコーナーキューブであることを特徴とする請求項6記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記光学素子は同一平面上に反射面と、透過面を有することを特徴とする請求項6記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記複数のヘッドにより前記媒体に照射された光は同一直線上に位置することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。

【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−166068(P2009−166068A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5440(P2008−5440)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】