説明

レーザ加工装置

【課題】スキャナ間で走査特性が大きく異なる場合であっても、加工品質の低下を抑制しつつ、非加工区間の走査に要する時間を短縮することができるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】第1加工線の終端でレーザ光を遮断させてから第2加工線の始端で加工を開始させるまでの遮断期間において、第1加工線の描画情報に基づいてスキャナの走査を終了させる走査終了点から、第2加工線の描画情報に基づいて走査を開始させる走査開始点までの距離の各方向成分を算出する距離算出部42と、距離の各方向成分のうち、最大成分に係るスキャナの走査速度及び走査開始点での待ち時間を当該方向成分に基づいて決定する走査パラメータ決定部43と、走査パラメータ決定部43によって決定された走査速度及び待ち時間に基づいて、走査終了点から走査開始点までスキャナを移動させる非加工区間走査制御部44により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に係り、さらに詳しくは、レーザ光を走査させて文字などを加工するレーザ加工装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を走査させて文字などをワーク上に加工する際、加工品質の低下を抑制しつつ、加工処理に要する時間を短縮するために、非加工区間を高速で走査させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。上記非加工区間とは、レーザ光の照射を停止させる加工終了点から、次に照射を開始させる加工開始点までの非照射区間のことである。特許文献1に記載のレーザ加工装置では、非加工区間における走査速度と加工開始点での待ち時間とを非加工区間の長さ、すなわち、加工終了点と加工開始点とを結ぶ直線の長さに基づいて決定している。上記待ち時間は、スキャナを高速で移動させた際に停止点で生じるスキャナのリンギングを減衰させるために、スキャナを加工開始点で待機させる待機時間であり、加工開始点でスキャナを所定時間待機させることにより、加工開始部分が揺らいで加工品質が低下するのを防止することができる。
【0003】
レーザ光を光軸と交差する方向に走査させるスキャナは、ガルバノスキャナと呼ばれ、互いに直交する回転軸をそれぞれ中心として回転させる2つのミラーと、これらのミラーを回転させるための駆動用モーターによって構成される。通常、上記2つのミラーのうち、レーザ光が最初に入射されるミラーはX方向走査用ミラーであり、X方向走査用ミラーによって反射されたレーザ光が入射されるミラーはY方向走査用ミラーである。一般に、Y方向走査用ミラーは、X方向走査用ミラーに比べて、サイズが大きく、慣性モーメントも大きい。このため、X方向走査用ミラーを回転させてレーザ光を走査させるXスキャナと、Y方向走査用ミラーを回転させてレーザ光を走査させるYスキャナとでは、走査特性が異なるので、適切な走査速度や待ち時間も異なると考えられる。ところが、上述したレーザ加工装置では、非加工区間を走査させる際の各スキャナの走査速度や加工開始点での待ち時間が非加工区間の長さで決定される。このため、単に、走査特性の良いスキャナに合わせて走査速度や待ち時間を設定すると、加工開始点でスキャナのリンギングが十分に減衰されず、加工品質が低下してしまう。一方、単に、走査特性の悪いスキャナに合わせて走査速度や待ち時間を設定すると、非加工区間の走査に要する時間が増大してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−148322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、スキャナ間で走査特性が異なる場合であっても、加工品質の低下を抑制しつつ、非加工区間の走査に要する時間を短縮することができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明によるレーザ加工装置は、レーザ光を生成するレーザ光生成手段と、上記レーザ光の光軸と交差するX方向及びY方向に上記レーザ光をそれぞれ走査させるXスキャナ及びYスキャナと、第1加工線及び第2加工線の描画情報を保持する描画情報記憶手段と、上記レーザ光を遮断するレーザ光遮断手段と、上記描画情報に基づいて、上記Xスキャナ、上記Yスキャナ及び上記レーザ光遮断手段を制御する走査制御手段とを備え、上記走査制御手段が、第1加工線の終端で上記レーザ光を遮断させてから第2加工線の始端で加工を開始させるまでの遮断期間において、第1加工線の描画情報に基づいてXスキャナ及びYスキャナの走査を終了させる走査終了点から、第2加工線の描画情報に基づいて走査を開始させる走査開始点までの距離のX方向及びY方向成分を算出する距離算出手段と、上記距離算出手段による算出結果に基づいて、上記距離の各方向成分のうち、最も大きな方向成分に係るスキャナの走査速度及び上記走査開始点での待ち時間を決定する走査パラメータ決定手段と、上記走査パラメータ決定手段によって決定された走査速度及び待ち時間に基づいて、上記走査終了点から上記走査開始点まで上記Xスキャナ及び上記Yスキャナを移動させる非加工区間走査制御手段とを有するように構成される。
【0007】
このレーザ加工装置では、レーザ光の遮断期間に係る走査終了点と走査開始点との距離のX方向及びY方向成分のうち、最も大きな方向成分に基づいて、これらの走査点間を移動させる際の当該方向成分に係るスキャナの走査速度及び待ち時間が決定される。この様な構成によれば、最も大きな方向成分に係るスキャナの走査速度及び待ち時間を当該最も大きな方向成分に応じて定めることにより、他のスキャナの走査速度を抑え、或いは、早く走査を終了させることができる。従って、慣性モーメントなどの走査特性がスキャナ間で大きく異なる場合であっても、各スキャナを適切な走査速度及び待ち時間で移動させることができ、加工品質の低下を抑制しつつ、非加工区間の走査に要する時間を短縮することができる。
【0008】
第2の本発明によるレーザ加工装置は、レーザ光を生成するレーザ光生成手段と、上記レーザ光の光軸方向の焦点位置を調整可能なZスキャナと、上記レーザ光の光軸と交差するX方向及びY方向に上記レーザ光をそれぞれ走査させるXスキャナ及びYスキャナと、第1加工線及び第2加工線の描画情報を保持する描画情報記憶手段と、上記レーザ光を遮断するレーザ光遮断手段と、上記描画情報に基づいて、上記Xスキャナ、上記Yスキャナ、上記Zスキャナ及び上記レーザ光遮断手段を制御する走査制御手段とを備え、上記走査制御手段が、第1加工線の終端で上記レーザ光を遮断させてから第2加工線の始端で加工を開始させるまでの遮断期間において、第1加工線の描画情報に基づいてXスキャナ、Yスキャナ及びZスキャナの走査を終了させる走査終了点から、第2加工線の描画情報に基づいて走査を開始させる走査開始点までの距離のX方向、Y方向及びZ方向成分を算出する距離算出手段と、上記距離算出手段による算出結果に基づいて、上記距離の各方向成分のうち、最も大きな方向成分に係るスキャナの走査速度及び上記走査開始点での待ち時間を決定する走査パラメータ決定手段と、上記走査パラメータ決定手段によって決定された走査速度及び待ち時間に基づいて、上記走査終了点から上記走査開始点まで上記Xスキャナ、上記Yスキャナ及び上記Zスキャナを移動させる非加工区間走査制御手段とを有するように構成される。
【0009】
このレーザ加工装置では、レーザ光の遮断期間に係る走査終了点と走査開始点との距離のX方向、Y方向及びZ方向成分のうち、最も大きな方向成分に基づいて、これらの走査点間を移動させる際の当該方向成分に係るスキャナの走査速度及び待ち時間が決定される。この様な構成によれば、最も大きな方向成分に係るスキャナの走査速度及び待ち時間を当該最も大きな方向成分に応じて定めることにより、他のスキャナの走査速度を抑え、或いは、早く走査を終了させることができる。
【0010】
第3の本発明によるレーザ加工装置は、上記構成に加え、スキャナごとに異なる上記走査速度及び上記待ち時間をスキャナの移動距離に関連付けて保持する走査パラメータテーブルを備え、上記走査パラメータ決定手段が、上記最も大きな方向成分に係るスキャナに対応する上記走査パラメータテーブルから当該方向成分に対応する走査速度及び待ち時間を抽出するように構成される。
【0011】
この様な構成によれば、最も大きな方向成分に係るスキャナに対応する走査パラメータテーブルから当該方向成分に対応する走査速度及び待ち時間を抽出して当該スキャナの走査速度及び待ち時間が決定されるので、より適切な走査速度及び待ち時間で各スキャナを移動させることができる。
【0012】
第4の本発明によるレーザ加工装置は、上記構成に加え、上記走査速度及び上記待ち時間をスキャナの移動距離に関連付けて保持し、走査特性の異なる2以上の走査パラメータテーブルと、上記走査パラメータテーブルの1つを選択させる走査パラメータテーブル選択手段とを備え、上記走査パラメータ決定手段が、選択された走査パラメータテーブルに基づいて、上記最も大きな方向成分に係るスキャナの走査速度及び待ち時間を決定するように構成される。
【0013】
この様な構成によれば、走査特性の異なる複数の走査パラメータテーブルの1つを選択させ、選択された走査パラメータテーブルに基づいて最も大きな方向成分に係るスキャナの走査速度及び待ち時間が決定されるので、加工品質を重視して各スキャナを移動させたり、加工時間の短縮を優先して各スキャナを移動させることができる。
【0014】
第5の本発明によるレーザ加工装置は、上記構成に加え、上記非加工区間走査制御手段が、上記最も大きな方向成分に係るスキャナを第1スキャナとし、第1スキャナ以外のスキャナを第2スキャナとして、第2スキャナを上記走査パラメータ決定手段によって決定された走査速度と略同一の走査速度で移動させ、上記走査開始点で第1スキャナの待ち時間が経過するまで待機させるように構成される。
【0015】
第6の本発明によるレーザ加工装置は、上記構成に加え、上記非加工区間走査制御手段が、上記最も大きな方向成分に係るスキャナを第1スキャナとし、第1スキャナ以外のスキャナを第2スキャナとして、第1スキャナを上記走査パラメータ決定手段によって決定された走査速度で移動させる場合に、上記走査終了点及び上記走査開始点間の移動に要する時間を算出する移動時間算出手段を有し、第2スキャナを第1スキャナと略同一の移動時間で上記走査終了点及び上記走査開始点間を移動させ、上記走査開始点で第1スキャナの待ち時間が経過するまで待機させるように構成される。
【0016】
第7の本発明によるレーザ加工装置は、レーザ光を生成するレーザ光生成手段と、上記レーザ光の光軸と交差するX方向及びY方向に上記レーザ光をそれぞれ走査させるXスキャナ及びYスキャナと、第1加工線及び第2加工線の描画情報を保持する描画情報記憶手段と、上記レーザ光を遮断するレーザ光遮断手段と、上記描画情報に基づいて、上記Xスキャナ、上記Yスキャナ及び上記レーザ光遮断手段を制御する走査制御手段とを備え、上記走査制御手段が、第1加工線の終端で上記レーザ光を遮断させてから第2加工線の始端で加工を開始させるまでの遮断期間において、第1加工線の描画情報に基づいてXスキャナ及びYスキャナの走査を終了させる走査終了点から、第2加工線の描画情報に基づいて走査を開始させる走査開始点までの距離のX方向及びY方向成分を算出する距離算出手段と、スキャナごとに、走査速度及び上記走査開始点での待ち時間をスキャナの移動距離に関連付けて保持する走査パラメータテーブルと、各スキャナについて、上記距離算出手段による算出結果を参照し、上記走査パラメータテーブルから上記走査速度及び上記待ち時間を抽出して、上記走査終了点から上記走査開始点までの移動に要する時間と上記待ち時間との合計時間を算出し、最も長い合計時間に係るスキャナの走査速度及び上記待ち時間を決定する走査パラメータ決定手段と、上記走査パラメータ決定手段によって決定された走査速度及び待ち時間に基づいて、上記走査終了点から上記走査開始点まで上記Xスキャナ及び上記Yスキャナを移動させる非加工区間走査制御手段とを有するように構成される。
【0017】
このレーザ加工装置では、走査パラメータテーブルとして、スキャナごとに走査速度及び待ち時間がスキャナの移動距離に関連付けて予め保持される。そして、各スキャナについて、レーザ光の遮断期間に係る走査終了点と走査開始点との距離のX方向及びY方向成分の算出結果を参照し、走査パラメータテーブルから走査速度及び待ち時間を抽出して、走査点間の移動時間と待ち時間との合計時間が算出される。この合計時間が最も長いスキャナの走査速度及び待ち時間が決定される。この様な構成によれば、走査点間の移動時間と待ち時間との合計時間が最も長いスキャナの走査速度及び待ち時間に基づいて各スキャナを移動させるので、慣性モーメントなどの走査特性がスキャナ間で異なる場合であっても、各スキャナを適切な走査速度及び待ち時間で移動させることができ、加工品質の低下を抑制しつつ、非加工区間の走査に要する時間を短縮することができる。
【0018】
第8の本発明によるレーザ加工装置は、レーザ光を生成するレーザ光生成手段と、上記レーザ光の光軸方向の焦点位置を調整可能なZスキャナと、上記レーザ光の光軸と交差するX方向及びY方向に上記レーザ光をそれぞれ走査させるXスキャナ及びYスキャナと、第1加工線及び第2加工線の描画情報を保持する描画情報記憶手段と、上記レーザ光を遮断するレーザ光遮断手段と、上記描画情報に基づいて、上記Xスキャナ、上記Yスキャナ、上記Zスキャナ及び上記レーザ光遮断手段を制御する走査制御手段とを備え、上記走査制御手段が、第1加工線の終端で上記レーザ光を遮断させてから第2加工線の始端で加工を開始させるまでの遮断期間において、第1加工線の描画情報に基づいてXスキャナ、Yスキャナ及びZスキャナの走査を終了させる走査終了点から、第2加工線の描画情報に基づいて走査を開始させる走査開始点までの距離のX方向、Y方向及びZ方向成分を算出する距離算出手段と、スキャナごとに、走査速度及び上記走査開始点での待ち時間をスキャナの移動距離に関連付けて保持する走査パラメータテーブルと、各スキャナについて、上記距離算出手段による算出結果を参照し、上記走査パラメータテーブルから上記走査速度及び上記待ち時間を抽出して、上記走査終了点から上記走査開始点までの移動に要する時間と上記待ち時間との合計時間を算出し、最も長い合計時間に係るスキャナの走査速度及び上記待ち時間を決定する走査パラメータ決定手段と、上記走査パラメータ決定手段によって決定された走査速度及び待ち時間に基づいて、上記走査終了点から上記走査開始点まで上記Xスキャナ、上記Yスキャナ及び上記Zスキャナを移動させる非加工区間走査制御手段とを有するように構成される。
【0019】
このレーザ加工装置では、走査パラメータテーブルとして、スキャナごとに走査速度及び待ち時間がスキャナの移動距離に関連付けて予め保持される。そして、各スキャナについて、レーザ光の遮断期間に係る走査終了点と走査開始点との距離のX方向、Y方向及びZ方向成分の算出結果を参照し、走査パラメータテーブルから走査速度及び待ち時間を抽出して、走査点間の移動時間と待ち時間との合計時間が算出される。この合計時間が最も長いスキャナの走査速度及び待ち時間が決定される。この様な構成によれば、走査点間の移動時間と待ち時間との合計時間が最も長いスキャナの走査速度及び待ち時間に基づいて各スキャナを移動させるので、慣性モーメントなどの走査特性がスキャナ間で異なる場合であっても、各スキャナを適切な走査速度及び待ち時間で移動させることができ、加工品質の低下を抑制しつつ、非加工区間の走査に要する時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるレーザ加工装置によれば、最も大きな方向成分に係るスキャナの走査速度及び待ち時間を当該最も大きな方向成分に応じて定めることにより、他のスキャナの走査速度を抑え、或いは、早く走査を終了させることができる。また、走査パラメータテーブルとして、スキャナごとに走査速度及び待ち時間をスキャナの移動距離に関連付けて保持し、走査点間の移動時間と待ち時間との合計時間が最も長いスキャナの走査速度及び待ち時間に基づいて各スキャナを移動させることにより、各スキャナを適切な走査速度及び待ち時間で移動させることができる。従って、慣性モーメントなどの走査特性がスキャナ間で大きく異なる場合であっても、各スキャナを適切な走査速度及び待ち時間で移動させることができ、加工品質の低下を抑制しつつ、非加工区間の走査に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1によるレーザ加工装置100の概略構成の一例を示したブロック図である。
【図2】図1のレーザ加工装置100におけるZ方向のスキャン動作の一例を示した説明図であり、レンズ間の距離を短くして焦点位置が遠ざかる様子が示されている。
【図3】図1のレーザ加工装置100におけるZ方向のスキャン動作の一例を示した説明図であり、レンズ間の距離を長くして焦点位置が近づく様子が示されている。
【図4】図1のレーザ加工装置100のヘッド部4の構成例を示した斜視図であり、リアカバーが取り外されたヘッド部4を右前方から見た様子が示されている。
【図5】図1のレーザ加工装置100のヘッド部4の構成例を示した斜視図であり、リアカバーが取り外されたヘッド部4を左前方から見た様子が示されている。
【図6】図1のレーザ加工装置100のヘッド部4の構成例を示した斜視図であり、リアカバーが取り外されたヘッド部4を下側から見た様子が示されている。
【図7】図1のレーザ加工装置100の要部における構成例を示したブロック図であり、メイン制御回路11内の機能構成の一例が示されている。
【図8】図1のレーザ加工装置100の動作の一例を示した説明図であり、ワークW上の加工線A2と助走区間A1,A3及びつなぎ区間A4が示されている。
【図9】図1のレーザ加工装置100の動作の一例を示した説明図であり、走査終了点Q1から走査開始点Q2までのつなぎ区間Bの高速走査の様子が示されている。
【図10】図1のレーザ加工装置100の構成例を示した図であり、走査パラメータテーブル45aの一例が示されている。
【図11】図1のレーザ加工装置100の動作の一例を示した説明図であり、走査終了点Q1及び走査開始点Q2間の距離の等しい2つのつなぎ区間が示されている。
【図12】図1のレーザ加工装置100の動作の一例を示した図であり、加工品質を調整するための設定画面51が示されている。
【図13】図1のレーザ加工装置100の動作の一例を示した図であり、品質調整レベルの変更ウィンドウ54が表示された設定画面51が示されている。
【図14】図1のレーザ加工装置100の動作の一例を示した図であり、助走長レベル及び待ち時間レベルを選択させる設定画面51が示されている。
【図15】図1のレーザ加工装置100の動作の一例を示した図であり、品質調整レベルの変更ウィンドウ59が表示された設定画面51が示されている。
【図16】図1のレーザ加工装置100の動作の一例を示したフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態2によるレーザ加工装置の要部における構成例を示したブロック図であり、メイン制御回路60内の機能構成の一例が示されている。
【図18】図17のレーザ加工装置の動作の一例を示した説明図であり、走査終了点Q1から走査開始点Q2までのつなぎ区間C1〜C3の高速走査の様子が示されている。
【図19】本発明の他の実施の形態によるレーザ加工装置の構成例を示した図であり、スキャナごとの走査パラメータテーブルの一例が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1.
<レーザ加工装置>
図1は、本発明の実施の形態1によるレーザ加工装置100の概略構成の一例を示したブロック図である。このレーザ加工装置100は、レーザ光を走査させてワークWを加工する加工装置であり、コンソール1、本体部2、光ファイバーケーブル3及びヘッド部4からなる。コンソール1は、ワークWの加工条件などを入力し、或いは、ディスプレイ上にパラメータの設定画面などを表示する入出力装置である。
【0023】
本体部2は、メイン制御回路11、ワーク加工情報記憶部12、電源回路13、励起光源14及びレーザ光増幅器15により構成されるレーザ発振器ユニットであり、レーザ発振の制御やレーザ光の走査制御を行っている。励起光源14は、レーザ媒質を励起するための励起光を生成し、レーザ光増幅器15へ出射する光源装置であり、LD(レーザダイオード)などの発光素子と、集光レンズによって構成される。
【0024】
レーザ光増幅器15は、コアにレーザ媒質が添加された光ファイバーを用いてレーザ光を増幅するファイバーレーザであり、エネルギー密度の高い高出力のレーザ光が生成される。このレーザ光増幅器15は、低出力の種光を発生させるマスターオシレータ部、種光を増幅するパワーアンプ部、ポンピング用光源装置、アイソレータなどによって構成され、光ファイバーケーブル3と直接連結している。マスターオシレータ部及びパワーアンプ部は、レーザ媒質としてイッテルビウム(Yb)などの希土類元素が添加された希土類ドープ光ファイバーによって構成される。
【0025】
レーザ光増幅器15では、励起光によって励起されたレーザ媒質の誘導放射によりレーザ光を増幅し、増幅されたレーザ光を光ファイバーの外へ出射させることなく、そのまま光ファイバーケーブル3に伝送する。
【0026】
レーザ光増幅器15には、例えば、レーザ発振を制御するためのQスイッチが設けられており、Qスイッチの切り替えにより、連続発振をパルス発振に変換することができ、ピークパワーの大きなパルス波を生成することができる。なお、レーザ光増幅器15としては、種光を生成するLDを直接にオン又はオフすることによって、パルス発振可能な発振器のように、Qスイッチを備えないものであっても良い。
【0027】
光ファイバーケーブル3は、レーザ光増幅器15によって増幅されたレーザ光をヘッド部4に伝送するデリバリファイバーである。ヘッド部4は、本体部2のレーザ光増幅器15から光ファイバーケーブル3を介して伝送されたレーザ光を走査させるスキャナユニットであり、レーザ光をワークWに向けて出射する。
【0028】
このヘッド部4は、光アイソレータ21、ビームエキスパンダ22、ビームサンプラー23、シャッタ24、フォトインタラプタ25、ダイクロイックミラー26、Zスキャナ27、XYスキャナ28、パワーモニタ29及びガイド光源30からなる。
【0029】
光アイソレータ21は、光ファイバーケーブル3の端面から出射されたレーザ光を通過させ、戻り光を抑制する戻り光抑制手段であり、光ファイバーケーブル3を介して伝送されたレーザ光をビームエキスパンダ22へ出射する。この光アイソレータ21により、光アイソレータ21の光ファイバーケーブル3側の端面からビームエキスパンダ22側の端面に向う方向を順方向として、レーザ光は、順方向にのみ伝送され、逆方向への伝送は制限される。
【0030】
この様な光アイソレータ21は、例えば、アパーチャ、偏光子、ファラデー回転子によって構成される。アパーチャは、通過光を制限するための遮断板である。偏光子は、複屈折結晶からなるロッド状の光学素子である。ファラデー回転子は、磁界の印加によって偏光面を回転させる磁気光学素子である。
【0031】
ビームエキスパンダ22は、レーザ光のビーム径を拡大させるビーム径拡大機構であり、光アイソレータ21と光軸を一致させて配置される。このビームエキスパンダ22は、光路上に配置された複数のレンズによって構成され、レンズ間の距離を調整することにより、ビーム径を所望の値に変換している。ビームサンプラー23は、ビームエキスパンダ22を通過したレーザ光の一部をダイクロイックミラー26に向けて反射させ、他の一部をパワーモニタ29側へ透過させる光学素子である。
【0032】
パワーモニタ29は、ビームサンプラー23を透過したレーザ光を受光し、レーザパワーを検出するレーザパワー検出用センサであり、レーザパワーの検出結果をパワーレベル検出信号として本体部2内のメイン制御回路11へ出力する。この様なパワーモニタ29としては、例えば、サーモパイル(熱電堆)、或いは、フォトダイオードが用いられる。
【0033】
シャッタ24は、レーザ光を必要に応じて遮断するための遮断装置であり、遮断板や遮断板を移動させる駆動機構によって構成される。このシャッタ24は、ビームサンプラー23及びダイクロイックミラー26間に配置されている。
【0034】
フォトインタラプタ25は、シャッタ24が閉じているか否かを光学的に検出する光学センサである。ダイクロイックミラー26は、特定波長の光のみを反射し、他の波長の光を透過させる光学素子であり、シャッタ24を通過したレーザ光をZスキャナ27に向けて反射し、ガイド光源30からのガイド光をそのまま透過させる。
【0035】
Zスキャナ27は、光路上に配置された1又は2以上のレンズと、レンズを移動させるレンズ駆動用モーターによって構成されるレーザ光の走査機構であり、レンズを移動させることによって、ヘッド部4から出射されるレーザ光の焦点位置を光軸方向に移動させている。また、Zスキャナ27は、レーザ光の集光機能を有している。なお、このZスキャナ27は、ワークWの高さに追随してレーザ光の焦点位置を光軸方向に移動させることが可能な走査機構である。
【0036】
XYスキャナ28は、交差する回転軸にそれぞれ配置された2つのミラーと、これらのミラーを回転させるミラー駆動用モーターによって構成されるレーザ光の走査機構であり、回転軸を中心としてミラーを回転させることによって、レーザ光を光軸と交差する方向に走査させる。ここでは、加工対象面に照射されるレーザ光の光軸方向をZ方向と呼び、光軸と交差する互いに平行でない2つの方向をそれぞれX方向及びY方向と呼ぶものとする。
【0037】
Zスキャナ27を通過したレーザ光は、XYスキャナ28のガルバノミラーによって反射され、ワークWに照射される。ガイド光源30は、レーザ光の照射位置をワークW上で可視化するためのガイド光を生成する光源装置である。ガイド光源30から出射されたガイド光は、ダイクロイックミラー26を透過し、レーザ光の光路に入る。レーザ光の光路に入ったガイド光は、Zスキャナ27及びXYスキャナ28を経てワークWに照射される。
【0038】
ワーク加工情報記憶部12は、ワークWのレーザ加工に関する情報をワーク加工情報として保持するメモリであり、ワーク加工情報として、文字などをワークW上に加工する際の加工線の描画情報、レーザ発振を制御するためのレーザ出力制御情報などが保持される。加工線の描画情報は、レーザ光の照射目標を示す3次元位置情報、例えば、座標データからなる。また、レーザ出力制御情報としては、例えば、レーザ光のピークパワー、パルス幅、繰返し周波数などが保持される。
【0039】
ピークパワーは、パルスエネルギーをパルス幅で除算することによって得られる物理量である。パルス幅は、ピークパワーの半分程度のパワーレベルにおけるパルス波の時間長であり、繰返し周波数は、パルス発振の周波数である。また、中心波長は、レーザ光増幅器15により生成されるレーザ光の波長である。
【0040】
メイン制御回路11は、ワーク加工情報記憶部12内に保持されているワーク加工情報に基づいて、励起光源14、レーザ光増幅器15、Zスキャナ27、XYスキャナ28及びシャッタ24を制御する制御部である。具体的には、レーザ出力制御情報に基づいて、ヘッド部4から出射されるレーザ光のピークパワーやパルス幅を調整するための発振器制御信号を生成し、励起光源14及びレーザ光増幅器15へ出力する動作が行われる。
【0041】
また、レーザ出力制御情報や描画情報に基づいて、Zスキャナ27のレンズ駆動用モーター、XYスキャナ28のミラー駆動用モーター、及び、シャッタ24を制御するための駆動信号を生成し、Zスキャナ27、XYスキャナ28及びシャッタ24へ出力する動作が行われる。電源回路13は、励起光源14やレーザ光増幅器15、ヘッド部4内の駆動用モーターなどに電力を供給する電源装置である。
【0042】
この様なレーザ加工装置100としては、例えば、レーザ光を照射することによってワークWの表面に文字や図形をマーキングするレーザマーカが考えられる。また、ワーク加工情報としての描画情報やレーザ出力制御情報は、コンソール1からの入力情報に基づいて手動で設定され、或いは、自動的に設定される。なお、本実施の形態では、レーザ光増幅器15がファイバーレーザからなるが、レーザ光増幅器として固体レーザを用いるものにも本発明は適用することができる。
【0043】
<Z方向スキャン>
図2及び図3は、図1のレーザ加工装置100におけるZ方向のスキャン動作の一例を模式的に示した説明図であり、ヘッド部4内のZスキャナ27及びXYスキャナ28が示されている。図2には、入射レンズ27a及び出射レンズ27b間の距離Rd1を短くすることによってレーザ光の焦点位置がヘッド部4から遠ざかる様子が示されている。また、図3には、入射レンズ27a及び出射レンズ27b間の距離Rd2を長くすることによって焦点位置がヘッド部4に近づく様子が示されている。
【0044】
XYスキャナ28は、X方向走査用のガルバノミラー及びその駆動用モーターからなるXスキャナ28aと、Y方向走査用のガルバノミラー及びその駆動用モーターからなるYスキャナ28bによって構成される。
【0045】
このZスキャナ27は、ダイクロイックミラー26側に配置される入射レンズ27aと、ミラー32側に配置される出射レンズ27bと、入射レンズ27aを光軸方向に移動させるレンズ駆動用モーター(図示せず)により構成される。入射レンズ27aと出射レンズ27bとの間の距離Rd1を短くすれば、ビームの拡がり角が大きくなるので、ヘッド部4から出射されるレーザ光の光軸方向の焦点位置は、レーザ光の出射面、すなわち、ヘッド部4のアンダーフレーム33に設けられた開口面から遠ざかり、ワーキングディスタンスLd1が長くなる。
【0046】
一方、入射レンズ27aと出射レンズ27bとの間の距離Rd2(Rd2>Rd1)を長くすれば、ビームの拡がり角が小さくなるので、ヘッド部4から出射されるレーザ光の光軸方向の焦点位置は、出射面に近づき、ワーキングディスタンスLd2(Ld2<Ld1)が短くなる。
【0047】
つまり、入射レンズ27aを出射レンズ27bに近づくように移動させることによって、焦点位置を遠ざけることができ、また、入射レンズ27aを出射レンズ27bから遠ざかるように移動させることによって、焦点位置を近づけることができる。
【0048】
<ヘッド部>
図4〜図6は、図1のレーザ加工装置100のヘッド部4の構成例を示した斜視図であり、リアカバーが取り外されたヘッド部4内の様子が示されている。図4には、ヘッド部4を右前方から見た様子が示され、図5には、ヘッド部4を左前方から見た様子が示されている。また、図6には、ヘッド部4を下側から見た様子が示されている。
【0049】
このヘッド部4は、図示しないリアカバー、フロントカバー4a、アンダーフレーム33及びリアフレーム34からなる直方体形状の箱体内部が、フロントフレーム35及びセンターフレーム36によって3つの領域に区分され、これらの領域内に各デバイスが収容されている。アンダーフレーム33、リアフレーム34、フロントフレーム35及びセンターフレーム36は、いずれも矩形形状の金属板、例えば、アルミ板からなる部材であり、リアフレーム34、フロントフレーム35及びセンターフレーム36は、いずれもアンダーフレーム33上に立てた状態で配置されている。
【0050】
リアフレーム34は、光ファイバーケーブル3が後面に取り付けられ、前面に光アイソレータ21などが取り付けられるフレームである。光ファイバーケーブル3は、カバー部3aを介して光軸がリアフレーム34のフレーム面と交差するように取り付けられている。光アイソレータ21は、光ファイバーケーブル3と光軸を一致させて配置されている。
【0051】
フロントフレーム35は、光アイソレータ21及びビームエキスパンダ22を介在させて、リアフレーム34と対向配置されるフレームである。センターフレーム36は、リアフレーム34とフロントフレーム35とを連結するフレームであり、互いに対向する端面がそれぞれフレーム34,35に固着されている。このセンターフレーム36は、光アイソレータ21やビームエキスパンダ22と略平行に配置され、フレーム34〜36は、上から見てH形状に配置されている。
【0052】
フロントフレーム35よりも前側の領域は、フロントカバー4aで覆われており、ビームサンプラー23、シャッタ24、フォトインタラプタ25、ダイクロイックミラー26、Zスキャナ27、ミラー32、パワーモニタ29及びガイド光源30が収容されている。
【0053】
フロントフレーム35とリアフレーム34との間でセンターフレーム36の右側の領域には、光アイソレータ21及びビームエキスパンダ22が収容されている。光アイソレータ21及びビームエキスパンダ22は、光軸がセンターフレーム36と平行になるように配置されている。
【0054】
一方、フロントフレーム35とリアフレーム34との間でセンターフレーム36の左側の領域には、ヘッド制御基板37及びXYスキャナ28が収容されている。ヘッド制御基板37は、シャッタ24、フォトインタラプタ25、パワーモニタ29、ガイド光源30、図示しない各種のインジケータを制御するための制御回路が形成された配線基板である。
【0055】
ヘッド部4の底面を構成するアンダーフレーム33には、XYスキャナ28によって走査されたレーザ光を出射するための開口33aが形成されており、カバーレンズが配置される。ダイクロイックミラー26により反射されたレーザ光は、Zスキャナ27を通過後、X方向走査用のガルバノミラー28cによって反射される。そして、Y方向走査用のガルバノミラー28dによって反射され、開口33aを介してワークWに照射される。
【0056】
<メイン制御回路>
図7は、図1のレーザ加工装置100の要部における構成例を示したブロック図であり、メイン制御回路11内の機能構成の一例が示されている。このメイン制御回路11は、ワーク加工情報記憶部12から加工線の描画情報を読み出して、Zスキャナ27、XYスキャナ28及びシャッタ24を制御する制御部であり、加工区間走査制御部41、距離算出部42、走査パラメータ決定部43、非加工区間走査制御部44、走査パラメータテーブル記憶部45及び走査パラメータテーブル選択部46により構成される。
【0057】
加工区間走査制御部41は、描画情報に基づいて、レーザ光の照射を開始させる加工開始点からレーザ光を遮断させる加工終了点までの加工区間を判断し、Xスキャナ28a、Yスキャナ28b及びZスキャナ27を制御するためのスキャナ駆動信号や、シャッタ24を制御するためのシャッタ駆動信号を生成する。上記加工区間は、レーザ光の照射区間であり、例えば、走査方向に関わらず一定の速さでレーザ光を走査させる制御が行われる。
【0058】
距離算出部42は、描画情報に基づいて、第1加工線の加工終了点から次にレーザ光の照射を開始させる第2加工線の加工開始点までの非加工区間を判断する。そして、第1加工線の終端でレーザ光を遮断させてから第2加工線の始端で加工を開始させるまでのレーザ光の遮断期間において、第1加工線の描画情報に基づいてXスキャナ28a、Yスキャナ28b及びZスキャナ27の走査を終了させる走査終了点と、第2加工線の描画情報に基づいて走査を開始させる走査開始点との距離のX方向、Y方向及びZ方向成分を算出する。
【0059】
なお、本実施の形態では、走査終了点及び走査開始点間の距離のX方向、Y方向及びZ方向成分を算出し、最も大きな方向成分に係るスキャナの走査速度及び待ち時間を決定するが、上記距離についてX方向及びY方向成分のみを算出し、これらの方向成分のうち最も大きな方向成分に係るスキャナの走査速度及び待ち時間を当該方向成分に基づいて決定するものも本発明には含まれる。
【0060】
上記非加工区間は、レーザ光の非照射区間である。また、上記走査終了点及び走査開始点は、非加工期間において全てのスキャナが停止する停止点である。ここでは、文字などを加工する際のスキャナの応答遅れや制動区間を考慮して、加工終了点の通過後しばらく助走させてからスキャナの走査を終了させるものとする。また、スキャナが所定の走査速度に達するまでの加速区間を考慮して、スキャナは、停止点からしばらく助走してから加工開始点を通過する。非加工区間には、この様な助走区間が存在することから、全てのスキャナを停止させる上記走査終了点及び走査開始点は、加工終了点又は加工開始点の近傍に位置する。
【0061】
非加工区間における走査終了点及び走査開始点間の移動区間をつなぎ区間と呼ぶことにすると、このつなぎ区間は、レーザ光を照射させずにスキャナを移動させる空走区間である。ここで、加工終了点、加工開始点、走査終了点及び走査開始点は、空間内の点であり、走査終了点と走査開始点との間の距離とは、2点を結ぶ直線の長さのことである。
【0062】
走査パラメータ決定部43は、走査終了点と走査開始点との間の距離の各方向成分のうち、最も大きな方向成分に係るスキャナを第1スキャナと呼び、第1スキャナ以外のスキャナを第2スキャナと呼ぶことにして、距離算出部42による算出結果に基づいて、非加工区間における第1スキャナの走査速度及び走査開始点での待ち時間を決定する。
【0063】
非加工区間走査制御部44は、走査パラメータ決定部43によって決定された走査速度及び待ち時間に基づいて、走査終了点から走査開始点までXスキャナ28a、Yスキャナ28b及びZスキャナ27を移動させるためのスキャナ駆動信号を生成する。
【0064】
ここでは、非加工区間走査制御部44が、移動時間算出部44a、走査速度推定部44b及び高速走査部44cからなり、走査終了点から走査開始点まで第1スキャナ及び第2スキャナをいずれも一定の走査速度で移動させ、つなぎ区間の端点でほぼ同時に停止させる動作が行われるものとする。
【0065】
すなわち、移動時間算出部44aは、第1スキャナを走査パラメータ決定部43によって決定された走査速度で移動させる場合に、つなぎ区間の移動に要する時間を判定する。この移動時間は、走査終了点及び走査開始点間の距離の各方向成分と走査速度とから算出される。走査速度推定部44bは、移動時間算出部44aによって算出された移動時間に基づいて、第2スキャナを第1スキャナと略同一の移動時間で走査終了点及び走査開始点間を移動させることができる速度として、第2スキャナの走査速度を推定する。第2スキャナの走査速度は、移動時間の算出結果と走査終了点及び走査開始点間の距離の各方向成分とから算出される。
【0066】
高速走査部44cは、第1スキャナを走査パラメータ決定部43によって決定された走査速度を目標速度として移動させるとともに、第2スキャナを走査速度推定部44bによって推定された走査速度を目標速度として移動させる。また、高速走査部44cは、第2スキャナについて、走査開始点で第1スキャナの待ち時間が経過するまで待機させる。
【0067】
走査パラメータテーブル記憶部45には、走査速度及び待ち時間を走査パラメータとしてスキャナの移動距離に関連付けて保持する複数の走査パラメータテーブル45aが予め格納されている。各走査パラメータテーブル45aは、走査特性が異なっており、加工品質を重視させるのか、或いは、加工時間の短縮を優先させるのかを多段階で選択できるようになっている。
【0068】
走査パラメータテーブル選択部46は、走査テーブル指示部47及び設定画面生成部48からなり、走査パラメータテーブルの1つを選択させる。すなわち、設定画面生成部48は、コンソール1からの操作入力信号に基づいて、パラメータの設定画面を表示するための画面データを生成し、コンソール1へ出力する。この設定画面としては、加工品質を調整するための入力画面が想定される。なお、コンソール1は、ディスプレイとマウスなどのポインティングデバイスとで代用することができる。また、コンソール1に代えて、RS−232C又はRS−422方式で外部機器と通信するようなものであっても良い。
【0069】
走査テーブル指示部47は、コンソール1からの操作入力信号に基づいて、ユーザが指定した品質レベルを判断し、対応する走査パラメータテーブル45aを走査パラメータ決定部43に指示する。
【0070】
走査パラメータ決定部43では、走査パラメータテーブル選択部46によって選択された走査パラメータテーブル45aに基づいて、第1スキャナの走査速度及び待ち時間を決定する動作が行われる。
【0071】
<加工線と助走区間、つなぎ区間>
図8は、図1のレーザ加工装置100の動作の一例を示した説明図であり、文字をワークW上に加工する際の加工線A2と助走区間A1,A3及びつなぎ区間A4が示されている。文字列「XY」をワークW上に加工する場合、例えば、文字「X」、文字「Y」の順で加工が行われる。まず、スキャナの停止点、すなわち、走査開始点P1から最初の加工開始点P2までの助走区間A1は、所定の走査速度に達するまでスキャナを加速させ、かつ、応答遅れを解消させるための非加工区間である。
【0072】
加工開始点P2から加工終了点P3までの区間は、加工線A2の加工区間であり、レーザ光が一定の速さで走査される。加工終了点P3から走査終了点P4までの助走区間A3は、スキャナを停止させ、かつ、応答遅れを解消させるための非加工区間である。走査終了点P4から次の走査開始点P5までのつなぎ区間A4は、レーザ光を照射させずにスキャナを高速で移動させる非加工区間である。
【0073】
このつなぎ区間A4は、文字内の高速走査区間であり、走査終了点P4及び走査開始P5間の距離の各方向成分のうち、最大成分に基づいて、各スキャナの走査速度と走査開始点P5における待ち時間が定められる。すなわち、最大成分に対応する第1スキャナについて、走査パラメータテーブルを参照して最大成分に対応する走査速度V1及び待ち時間T1が抽出され、走査パラメータとして設定される。一方、第1スキャナ以外の第2スキャナについては、第1スキャナの移動時間と、対応する方向成分とから、第1スキャナの走査速度よりも遅い速度として走査速度V2が算出される。また、第2スキャナの待ち時間T2としては、第1スキャナの待ち時間T1と略同一の待ち時間が設定される。
【0074】
つなぎ区間A4の終端点としての走査開始点P5では、高速移動によるスキャナの応答遅れやリンギングを解消させるために上記待ち時間だけ待機させる。なお、つなぎ区間A4は、非加工区間であるので、始端点としての走査開始点P4では、待ち時間を設ける必要はない。
【0075】
走査開始点P5から加工開始点P6までの助走区間、加工開始点P6から加工終了点P7までの加工区間、加工終了点P7から走査終了点P8までの助走区間を経て、文字「X」の加工が完了する。走査終了点P8から文字「Y」の最初の加工開始点P10に対応する走査開始点P9までの非加工区間は、つなぎ区間A4である。
【0076】
このつなぎ区間A4は、文字間の高速走査区間であるが、文字内のつなぎ区間A4と同様の走査が行われる。つなぎ区間A4の終端点としての走査開始点P9における所定の待ち時間の経過後、文字「Y」の加工が文字「X」の場合と同様に行われる。
【0077】
<つなぎ区間の高速走査>
図9は、図1のレーザ加工装置100の動作の一例を示した説明図であり、走査終了点Q1から走査開始点Q2までのつなぎ区間Bの高速走査の様子が示されている。つなぎ区間Bでは、走査終了点Q1及び走査開始点Q2間の距離のX方向成分x1、Y方向成分y1、Z方向成分z1のうち、最大成分に基づいて、当該方向成分に対応するスキャナの走査速度と、走査開始点Q2での待ち時間が決定される。
【0078】
この例では、走査終了点Q1を原点とする直交座標系を用いて走査開始点Q2の位置が表されており、x1>y1>z1となっている。この場合、走査終了点Q1、走査開始点Q2間の距離の最も大きな方向成分は、x1であり、この最大成分に基づいてXスキャナ28aの走査速度V1及び待ち時間T1が定められる。
【0079】
Yスキャナ28b及びZスキャナ27の走査速度及び待ち時間は、Xスキャナ28aの走査速度V1、待ち時間T1、つなぎ区間Bの方向成分x1、y1及びz1から算出される。すなわち、Yスキャナ28bの走査速度V2yは、Xスキャナ28aの移動時間x1/V1に基づいて、V2y=y1×V1/x1から求められる。また、Zスキャナ27の走査速度V2zは、移動時間x1/V1に基づいて、V2z=z1×V1/x1から求められる(V2y,V2z<V1)。また、Yスキャナ28b及びZスキャナ27の待ち時間T2は、T2=T1から定められる。
【0080】
<走査パラメータテーブル>
図10は、図1のレーザ加工装置100の構成例を示した図であり、走査パラメータテーブル45aの一例が示されている。この走査パラメータテーブルは、スキャナの走査速度と走査開始点での待ち時間とをスキャナの移動距離に関連付けて保持するデータベースであり、実験結果に基づいて予め定められる。
【0081】
一般に、スキャナを高速走査させる場合、走査速度を速くすれば、つなぎ区間の移動に要する時間は短くなるが、スキャナの応答遅れやリンギングを十分に解消させるために走査開始点での待ち時間を長くする必要がある。一方、走査速度を遅くすれば、待ち時間は短くすることができるが、つなぎ区間の移動に要する時間が長くなる。実験によれば、適切な走査速度と待ち時間は、スキャナの移動距離によって異なることが判明した。
【0082】
この走査パラメータテーブルでは、移動距離が0mm以上5.0mm未満の範囲で、走査速度が移動距離の増加に伴って単調に増加している。例えば、走査速度は、移動距離が1.0mm未満である場合に、9000mm/s、移動距離が1.0mm以上2.0mm未満である場合に、9200m/s、移動距離が2.0mm以上3.0mm未満である場合に、9400m/sとなっている。
【0083】
また、走査速度は、移動距離が5.0mm以上10.0mm未満である場合に、10000mm/s、移動距離が10.0mm以上80.0mm未満である場合に、20000m/sとなっている。
【0084】
また、待ち時間は、移動距離の増加に伴って単調に増加し、例えば、移動距離が1.0mm未満である場合に、100μs、移動距離が1.0mm以上2.0mm未満である場合に、200μsとなっている。
【0085】
図11(a)及び(b)は、図1のレーザ加工装置100の動作の一例を示した説明図であり、走査終了点Q1及び走査開始点Q2間の距離の等しい2つのつなぎ区間が示されている。図11(a)には、走査終了点Q1及び走査開始点Q2間の距離のX成分が大きい場合が示され、図11(b)には、Y成分が大きい場合が示されている。
【0086】
従来のレーザ加工装置の場合、非加工区間の長さに基づいて走査速度及び待ち時間が定められるので、つなぎ区間の距離が同じであれば、待ち時間は同じである。このため、図11(a)の場合と図11(b)の場合とでは、走査開始点Q2における待ち時間が同じとなり、どちらかの場合で待ち時間が不足し、加工品質が低下する。
【0087】
これに対して、本実施の形態では、走査終了点Q1及び走査開始点Q2間の距離のX方向成分及びY方向成分のうち、最大成分に基づいて当該方向成分に係るスキャナの走査速度と待ち時間とを決定するので、他のスキャナの走査速度を抑えることができ、各スキャナを適切な走査速度及び待ち時間で移動させることができる。
【0088】
<コンソール画面>
図12〜図15は、図1のレーザ加工装置100の動作の一例を示した図であり、コンソール1のディスプレイ上に表示されるパラメータの設定画面51が示されている。図12には、加工品質を調整するための設定画面51が示されている。設定画面51は、走査パラメータテーブル45aをユーザに選択させる入力画面であり、所定の操作入力に基づいて表示される。
【0089】
設定画面51には、品質調整レベルの選択欄52が設けられており、プルダウンボタン53を操作すれば、品質調整レベルを変更することができる。この品質調整レベルは、加工品質を重視させるのか、或いは、加工時間の短縮を優先させるのかを8段階で選択させるパラメータである。
【0090】
図13には、品質調整レベルの変更ウィンドウ54が表示された設定画面51が示されている。変更ウィンドウ54は、選択欄52のプルダウンボタン53を操作することによって表示され、アイコンボタン55を操作することにより、「無効」、「レベル1」〜「レベル8」、「任意」のいずれかを選択することができる。
【0091】
レベル1からレベル3は、タクト優先、すなわち、加工時間の短縮を優先させる調整レベルであり、レベル5からレベル8は、加工品質重視の調整レベルである。デフォルトでは、レベル4が選択される。加工品質を重視させる調整レベルでは、走査開始点における待ち時間が、タクト優先に比べて長くなる。なお、レベル1からレベル3を加工品質重視の調整レベルとし、レベル5からレベル8をタクト優先の調整レベルとしても良い。
【0092】
図14には、助走長レベル及び待ち時間レベルを選択させる設定画面51が示されている。この設定画面51は、品質調整レベルとして任意を選択した場合に表示され、助走長レベルの選択欄56、Zスキャナ及びXYスキャナの待ち時間レベルの選択欄57,58が設けられている。
【0093】
助走長レベルの選択欄56のプルダウンボタンを操作すれば、助走区間の長さに係る調整レベルを変更することができる。また、待ち時間レベルの選択欄57のプルダウンボタンを操作すれば、Zスキャナの待ち時間に係る調整レベルを変更することができる。また、待ち時間レベルの選択欄58のプルダウンボタンを操作すれば、XYスキャナの待ち時間に係る調整レベルを変更することができる。
【0094】
図15には、品質調整レベルの変更ウィンドウ59が表示された設定画面51が示されている。変更ウィンドウ59は、選択欄56〜58のプルダウンボタンを操作することによって表示され、アイコンボタンを操作することにより、「レベル1」〜「レベル8」のいずれかを選択することができる。
【0095】
図16のステップS101〜S106は、図1のレーザ加工装置100の動作の一例を示したフローチャートである。まず、距離算出部42は、描画情報からつなぎ区間を抽出し、つなぎ区間の距離の最大成分を判定する(ステップS101,S102)。
【0096】
次に、走査パラメータ決定部43は、走査パラメータテーブル45aを参照し、最大成分に対応する走査速度及び待ち時間を読み出して、第1スキャナの走査パラメータを決定する(ステップS103,S104)。
【0097】
次に、非加工区間走査制御部44は、第1スキャナの走査パラメータに基づいて第2スキャナの走査パラメータを算出し、各スキャナへスキャナ駆動信号を出力する(ステップS105,S106)。
【0098】
本実施の形態によれば、最大成分に係るスキャナの走査速度及び待ち時間を当該最大成分に応じて定めることにより、他のスキャナの走査速度を抑えることができる。従って、慣性モーメントなどの走査特性がスキャナ間で大きく異なる場合であっても、各スキャナを適切な走査速度及び待ち時間で移動させることができ、加工品質の低下を抑制しつつ、非加工区間の走査に要する時間を短縮することができる。
【0099】
また、走査特性の異なる複数の走査パラメータテーブル45aの1つを選択させ、選択された走査パラメータテーブル45aに基づいて最大成分に係るスキャナの走査速度及び待ち時間が決定されるので、加工品質を重視して各スキャナを移動させたり、加工時間の短縮を優先して各スキャナを移動させることができる。
【0100】
実施の形態2.
実施の形態1では、第2スキャナを第1スキャナと略同一の移動時間でつなぎ区間を移動させ、走査開始点で第1スキャナの待ち時間が経過するまで待機させる場合の例について説明した。これに対して、本実施の形態では、第2スキャナを第1スキャナと略同一の走査速度で移動させ、走査開始点で第1スキャナの待ち時間が経過するまで待機させる場合について説明する。
【0101】
図17は、本発明の実施の形態2によるレーザ加工装置の要部における構成例を示したブロック図であり、メイン制御回路60内の機能構成の一例が示されている。このメイン制御回路60は、図7のメイン制御回路11と比較すれば、非加工区間走査制御部61が、走査速度設定部62及び高速走査部63からなる点で異なっている。
【0102】
非加工区間走査制御部61は、走査パラメータ決定部43によって決定された走査速度及び待ち時間に基づいて、走査終了点から走査開始点までXスキャナ28a、Yスキャナ28b及びZスキャナ27を移動させるためのスキャナ駆動信号を生成する。
【0103】
走査速度設定部62は、つなぎ区間の距離の最大成分に係る第1スキャナの走査速度として、走査パラメータ決定部43によって決定された走査速度を設定し、第1スキャナ以外の第2スキャナについては、第1スキャナの走査速度を略同一の走査速度を設定する。
【0104】
高速走査部63は、走査終了点から走査開始点まで走査速度設定部62によって設定された走査速度で各スキャナを移動させ、走査開始点で第2スキャナを第1スキャナの待ち時間が経過するまで待機させる。
【0105】
図18は、図17のレーザ加工装置の動作の一例を示した説明図であり、走査終了点Q1から走査開始点Q2までのつなぎ区間C1〜C3の高速走査の様子が示されている。つなぎ区間C1〜C3では、走査終了点Q1及び走査開始点Q2間の距離のX方向成分x1、Y方向成分y1、Z方向成分z1のうち、最大成分に基づいて、当該方向成分に対応するスキャナの走査速度と、走査開始点Q2での待ち時間が決定される。
【0106】
この例では、走査終了点Q1を原点とする直交座標系を用いて走査開始点Q2の位置が表されており、x1>y1>z1となっている。この場合、走査終了点Q1、走査開始点Q2間の距離の最も大きな方向成分は、x1であり、この最大成分に基づいてXスキャナ28aの走査速度V1及び待ち時間T1が定められる。
【0107】
そして、Yスキャナ28b及びZスキャナ27の走査速度及び待ち時間は、Xスキャナ28aの走査速度V1、待ち時間T1から定められる。すなわち、Yスキャナ28bの走査速度V2yとZスキャナ27の走査速度V2zとは、Xスキャナ28aの走査速度V1と略同一に設定される。
【0108】
また、Yスキャナ28bの待ち時間T2yは、T2y=T1+(Yスキャナが走査開始点に到着してからXスキャナが走査開始点に到着するまでの時間)から定められる。また、Zスキャナ27の待ち時間T2zは、T2z=T1+(Zスキャナが走査開始点に到着してからXスキャナが走査開始点に到着するまでの時間)から定められる。
【0109】
従って、最初のつなぎ区間C1では、各スキャナが同じ走査速度V1で移動し、Zスキャナ27が最初に停止する。次のつなぎ区間C2では、Xスキャナ及びYスキャナが同じ走査速度V1で移動し、Yスキャナ28bが次に停止する。そして、最後のつなぎ区間C3では、Xスキャナ28aが走査速度V1で移動し、走査開始点Q2で停止する。
【0110】
本実施の形態によれば、最大成分に係るスキャナの走査速度及び待ち時間を当該最大成分に応じて定めることにより、他のスキャナの走査を早く終了させることができる。従って、慣性モーメントなどの走査特性がスキャナ間で大きく異なる場合であっても、各スキャナを適切な走査速度及び待ち時間で移動させることができ、加工品質の低下を抑制しつつ、非加工区間の走査に要する時間を短縮することができる。
【0111】
実施の形態3.
上記実施の形態1及び2では、走査終了点Q1及び走査開始点Q2間の距離の各方向成分のうち、最も大きな方向成分に着目して各スキャナの走査速度及び待ち時間を決定する場合の例について説明した。これに対して、本実施の形態では、走査終了点Q1から走査開始点Q2までのスキャナの移動に要する時間と走査開始点Q2での待ち時間との合計時間に着目して各スキャナの走査速度及び待ち時間を決定する場合について説明する。
【0112】
本実施の形態による走査パラメータ決定部43は、各スキャナについて、距離算出部42による算出結果を参照し、走査パラメータテーブル45aから対応する走査速度及び走査開始点での待ち時間を抽出する。そして、各スキャナについて走査終了点Q1から走査開始点Q2までの移動に要する時間と待ち時間との合計時間を算出し、最も長い合計時間に係るスキャナの走査速度及び待ち時間を決定する。
【0113】
走査パラメータテーブル記憶部45には、スキャナごとに、走査速度及び走査開始点での待ち時間をスキャナの移動距離に関連付けて保持する走査パラメータテーブル45aが予め格納される。
【0114】
非加工区間走査制御部44では、上記走査パラメータ決定部43によって決定された走査速度及び待ち時間に基づいて、走査終了点Q1から走査開始点Q2までXスキャナ28a、Yスキャナ28b及びZスキャナ27を移動させる。
【0115】
図19(a)及び(b)は、本実施の形態によるレーザ加工装置100の構成例を示した図であり、走査パラメータテーブル45aの一例が示されている。図19(a)には、Xスキャナ用のパラメータテーブルが示され、図19(b)には、Yスキャナ用のパラメータテーブルが示されている。
【0116】
これらのパラメータテーブルは、Yスキャナ28bが、Xスキャナ28aに比べて、ガルバノミラーの慣性モーメントが大きくて走査特性が劣るとした場合のスキャナごとの走査パラメータテーブルである。
【0117】
具体的には、Xスキャナ用のパラメータテーブルについて、移動距離が0mm以上5.0mm未満の範囲で、走査速度が移動距離の増加に伴って単調に増加している。例えば、走査速度は、移動距離が1.0mm未満である場合に、9000mm/s、移動距離が1.0mm以上2.0mm未満である場合に、9200m/s、移動距離が2.0mm以上3.0mm未満である場合に、9400m/sとなっている。また、走査速度は、移動距離が5.0mm以上10.0mm未満である場合に、10000mm/s、移動距離が10.0mm以上80.0mm未満である場合に、20000m/sとなっている。
【0118】
待ち時間は、移動距離の増加に伴って単調に増加し、例えば、移動距離が1.0mm未満である場合に、100μs、移動距離が1.0mm以上2.0mm未満である場合に、200μsとなっている。
【0119】
一方、Yスキャナ用のパラメータテーブルについて、移動距離が0mm以上5.0mm未満の範囲で、走査速度が移動距離の増加に伴って単調に増加している。例えば、走査速度は、移動距離が1.0mm未満である場合に、9100mm/s、移動距離が1.0mm以上2.0mm未満である場合に、9300m/s、移動距離が2.0mm以上3.0mm未満である場合に、9500m/sとなっている。また、走査速度は、移動距離が5.0mm以上10.0mm未満である場合に、10000mm/s、移動距離が10.0mm以上80.0mm未満である場合に、20000m/sとなっている。
【0120】
待ち時間は、移動距離の増加に伴って単調に増加し、例えば、移動距離が1.0mm未満である場合に、200μs、移動距離が1.0mm以上2.0mm未満である場合に、400μsとなっている。
【0121】
これらのパラメータテーブルを比較すれば、移動距離が5.0mm以上8.0mm未満である範囲で、各スキャナの走査速度が同じであるのに対して、Xスキャナの待ち時間=800μs、Yスキャナの待ち時間=1100μsとなっており、Yスキャナの方が応答遅れやリンギングの解消により長い時間を要することが分かる。
【0122】
走査パラメータ決定部43では、各スキャナについて、距離算出部42によって算出された距離の方向成分に対応する走査速度及び待ち時間をパラメータテーブルから抽出し、走査終了点Q1から走査開始点Q2までの移動時間と待ち時間との合計時間を算出する。この合計時間を各スキャナについて比較し、最も長い合計時間に係るスキャナの走査速度及び待ち時間を決定する。
【0123】
例えば、走査終了点Q1及び走査開始点Q2間の距離について算出された方向成分が、X方向成分=9mm、Y方向成分=5mmである場合、Xスキャナ28aの走査速度及び待ち時間として、Xスキャナ用パラメータテーブルから、走査速度=10000mm/s、待ち時間=1000μsが抽出される。一方、Yスキャナ28bの走査速度及び待ち時間としては、Yスキャナ用パラメータテーブルから、走査速度=10000mm/s、待ち時間=1100μsが抽出される。
【0124】
この場合、走査終了点Q1及び走査開始点Q2間の移動時間と待ち時間との合計時間は、距離の方向成分が短いにもかかわらず、Yスキャナ28bの方がXスキャナ28aに比べて長い。そこで、合計時間の長いYスキャナ28bについて、走査速度及び待ち時間が、Yスキャナ用パラメータテーブルに基づいてそれぞれ10000mm/s及び1100μsと決定される。Xスキャナ28aの走査速度及び待ち時間は、Yスキャナ28bの走査速度及び待ち時間に基づいて定められる。
【0125】
本実施の形態によれば、走査終了点Q1及び走査開始点Q2間の移動時間と待ち時間との合計時間が最も長いスキャナの走査速度及び待ち時間に基づいて各スキャナを移動させるので、慣性モーメントなどの走査特性がスキャナ間で異なる場合であっても、各スキャナを適切な走査速度及び待ち時間で移動させることができ、加工品質の低下を抑制しつつ、非加工区間の走査に要する時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0126】
1 コンソール
2 本体部
3 光ファイバーケーブル
4 ヘッド部
11 メイン制御回路
12 ワーク加工情報記憶部
13 電源回路
14 励起光源
15 レーザ光増幅器
21 光アイソレータ
22 ビームエキスパンダ
23 ビームサンプラー
24 シャッタ
25 フォトインタラプタ
26 ダイクロイックミラー
27 Zスキャナ
28 XYスキャナ
28a Xスキャナ
28b Yスキャナ
28c,28d ガルバノミラー
29 パワーモニタ
30 ガイド光源
41 加工区間走査制御部
42 距離算出部
43 走査パラメータ決定部
44 非加工区間走査制御部
44a 移動時間算出部
44b 走査速度推定部
44c 高速走査部
45 走査パラメータテーブル記憶部
45a 走査パラメータテーブル
46 走査パラメータテーブル選択部
47 走査パラメータテーブル指示部
48 設定画面生成部
60 メイン制御回路
61 非加工区間走査制御部
62 走査速度設定部
63 高速走査部
100 レーザ加工装置
A1,A3 助走区間
A2 加工線
A4 つなぎ区間
B,C1〜C3 つなぎ区間
P1,P5,P9,P13,Q2 走査開始点
P4,P8,P12,P16,Q1 走査終了点
P2,P6,P10,P14 加工開始点
P3,P7,P11,P15 加工終了点
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を生成するレーザ光生成手段と、
上記レーザ光の光軸と交差するX方向及びY方向に上記レーザ光をそれぞれ走査させるXスキャナ及びYスキャナと、
第1加工線及び第2加工線の描画情報を保持する描画情報記憶手段と、
上記レーザ光を遮断するレーザ光遮断手段と、
上記描画情報に基づいて、上記Xスキャナ、上記Yスキャナ及び上記レーザ光遮断手段を制御する走査制御手段とを備え、
上記走査制御手段は、第1加工線の終端で上記レーザ光を遮断させてから第2加工線の始端で加工を開始させるまでの遮断期間において、第1加工線の描画情報に基づいてXスキャナ及びYスキャナの走査を終了させる走査終了点から、第2加工線の描画情報に基づいて走査を開始させる走査開始点までの距離のX方向及びY方向成分を算出する距離算出手段と、
上記距離算出手段による算出結果に基づいて、上記距離の各方向成分のうち、最も大きな方向成分に係るスキャナの走査速度及び上記走査開始点での待ち時間を決定する走査パラメータ決定手段と、
上記走査パラメータ決定手段によって決定された走査速度及び待ち時間に基づいて、上記走査終了点から上記走査開始点まで上記Xスキャナ及び上記Yスキャナを移動させる非加工区間走査制御手段とを有することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
レーザ光を生成するレーザ光生成手段と、
上記レーザ光の光軸方向の焦点位置を調整可能なZスキャナと、
上記レーザ光の光軸と交差するX方向及びY方向に上記レーザ光をそれぞれ走査させるXスキャナ及びYスキャナと、
第1加工線及び第2加工線の描画情報を保持する描画情報記憶手段と、
上記レーザ光を遮断するレーザ光遮断手段と、
上記描画情報に基づいて、上記Xスキャナ、上記Yスキャナ、上記Zスキャナ及び上記レーザ光遮断手段を制御する走査制御手段とを備え、
上記走査制御手段は、第1加工線の終端で上記レーザ光を遮断させてから第2加工線の始端で加工を開始させるまでの遮断期間において、第1加工線の描画情報に基づいてXスキャナ、Yスキャナ及びZスキャナの走査を終了させる走査終了点から、第2加工線の描画情報に基づいて走査を開始させる走査開始点までの距離のX方向、Y方向及びZ方向成分を算出する距離算出手段と、
上記距離算出手段による算出結果に基づいて、上記距離の各方向成分のうち、最も大きな方向成分に係るスキャナの走査速度及び上記走査開始点での待ち時間を決定する走査パラメータ決定手段と、
上記走査パラメータ決定手段によって決定された走査速度及び待ち時間に基づいて、上記走査終了点から上記走査開始点まで上記Xスキャナ、上記Yスキャナ及び上記Zスキャナを移動させる非加工区間走査制御手段とを有することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
スキャナごとに異なる上記走査速度及び上記待ち時間をスキャナの移動距離に関連付けて保持する走査パラメータテーブルを備え、
上記走査パラメータ決定手段が、上記最も大きな方向成分に係るスキャナに対応する上記走査パラメータテーブルから当該方向成分に対応する走査速度及び待ち時間を抽出することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
上記走査速度及び上記待ち時間をスキャナの移動距離に関連付けて保持し、走査特性の異なる2以上の走査パラメータテーブルと、
上記走査パラメータテーブルの1つを選択させる走査パラメータテーブル選択手段とを備え、
上記走査パラメータ決定手段が、選択された走査パラメータテーブルに基づいて、上記最も大きな方向成分に係るスキャナの走査速度及び待ち時間を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
上記非加工区間走査制御手段が、上記最も大きな方向成分に係るスキャナを第1スキャナとし、第1スキャナ以外のスキャナを第2スキャナとして、第2スキャナを上記走査パラメータ決定手段によって決定された走査速度と略同一の走査速度で移動させ、上記走査開始点で第1スキャナの待ち時間が経過するまで待機させることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
上記非加工区間走査制御手段は、上記最も大きな方向成分に係るスキャナを第1スキャナとし、第1スキャナ以外のスキャナを第2スキャナとして、第1スキャナを上記走査パラメータ決定手段によって決定された走査速度で移動させる場合に、上記走査終了点及び上記走査開始点間の移動に要する時間を算出する移動時間算出手段を有し、第2スキャナを第1スキャナと略同一の移動時間で上記走査終了点及び上記走査開始点間を移動させ、上記走査開始点で第1スキャナの待ち時間が経過するまで待機させることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
レーザ光を生成するレーザ光生成手段と、
上記レーザ光の光軸と交差するX方向及びY方向に上記レーザ光をそれぞれ走査させるXスキャナ及びYスキャナと、
第1加工線及び第2加工線の描画情報を保持する描画情報記憶手段と、
上記レーザ光を遮断するレーザ光遮断手段と、
上記描画情報に基づいて、上記Xスキャナ、上記Yスキャナ及び上記レーザ光遮断手段を制御する走査制御手段とを備え、
上記走査制御手段は、第1加工線の終端で上記レーザ光を遮断させてから第2加工線の始端で加工を開始させるまでの遮断期間において、第1加工線の描画情報に基づいてXスキャナ及びYスキャナの走査を終了させる走査終了点から、第2加工線の描画情報に基づいて走査を開始させる走査開始点までの距離のX方向及びY方向成分を算出する距離算出手段と、
スキャナごとに、走査速度及び上記走査開始点での待ち時間をスキャナの移動距離に関連付けて保持する走査パラメータテーブルと、
各スキャナについて、上記距離算出手段による算出結果を参照し、上記走査パラメータテーブルから上記走査速度及び上記待ち時間を抽出して、上記走査終了点から上記走査開始点までの移動に要する時間と上記待ち時間との合計時間を算出し、最も長い合計時間に係るスキャナの走査速度及び上記待ち時間を決定する走査パラメータ決定手段と、
上記走査パラメータ決定手段によって決定された走査速度及び待ち時間に基づいて、上記走査終了点から上記走査開始点まで上記Xスキャナ及び上記Yスキャナを移動させる非加工区間走査制御手段とを有することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
レーザ光を生成するレーザ光生成手段と、
上記レーザ光の光軸方向の焦点位置を調整可能なZスキャナと、
上記レーザ光の光軸と交差するX方向及びY方向に上記レーザ光をそれぞれ走査させるXスキャナ及びYスキャナと、
第1加工線及び第2加工線の描画情報を保持する描画情報記憶手段と、
上記レーザ光を遮断するレーザ光遮断手段と、
上記描画情報に基づいて、上記Xスキャナ、上記Yスキャナ、上記Zスキャナ及び上記レーザ光遮断手段を制御する走査制御手段とを備え、
上記走査制御手段は、第1加工線の終端で上記レーザ光を遮断させてから第2加工線の始端で加工を開始させるまでの遮断期間において、第1加工線の描画情報に基づいてXスキャナ、Yスキャナ及びZスキャナの走査を終了させる走査終了点から、第2加工線の描画情報に基づいて走査を開始させる走査開始点までの距離のX方向、Y方向及びZ方向成分を算出する距離算出手段と、
スキャナごとに、走査速度及び上記走査開始点での待ち時間をスキャナの移動距離に関連付けて保持する走査パラメータテーブルと、
各スキャナについて、上記距離算出手段による算出結果を参照し、上記走査パラメータテーブルから上記走査速度及び上記待ち時間を抽出して、上記走査終了点から上記走査開始点までの移動に要する時間と上記待ち時間との合計時間を算出し、最も長い合計時間に係るスキャナの走査速度及び上記待ち時間を決定する走査パラメータ決定手段と、
上記走査パラメータ決定手段によって決定された走査速度及び待ち時間に基づいて、上記走査終了点から上記走査開始点まで上記Xスキャナ、上記Yスキャナ及び上記Zスキャナを移動させる非加工区間走査制御手段とを有することを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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