説明

レーザ加工装置

【課題】様々な形状の加工対象物を容易、かつ安価にテーブルに固定することができ、かつ、レーザ加工精度に優れるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】平板状の加工対象物OBを固定するテーブル201と、テーブル201を回転させる回転手段と、前記テーブルにセットされた平板状の加工対象物OBにレーザ光を対物レンズで集光して照射する光加工ヘッド200と、テーブル201を光加工ヘッド200と相対的に前記テーブル201の半径方向に移動する半径方向移動手段と、テーブル201が複数の凹部を有し、加工対象物OBが、テーブル201の凹部に脱着可能な固定部材によりテーブル201に固定可能にされ、フォーカスサーボ制御手段が、レーザ光の焦点が少なくとも固定部材を移動する間、加工対象物OBの縁から内側の近傍に設定した境界位置又は固定部材の近傍領域の境界位置の強度で制御信号をホールドする信号ホールド手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を集光して照射し、加工対象物の表面にピット、溝、反応跡などを作製するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光加工ヘッドから加工用レーザ光を対物レンズにて集光して平板状の加工対象物に照射するとともに、該加工対象物をセットしたテーブルを回転させることで、加工対象物の表面にピット、溝、反応跡などの構造物を作製するレーザ加工装置が知られている。
【0003】
このようなレーザ加工装置においてはレーザ光の焦点が加工対象物の表面に合うよう、レーザ光の反射光を用いて作成した信号により対物レンズを駆動するフォーカスサーボ制御が行われている。
フォーカスサーボ制御は、テーブルに円形の加工対象物を1枚セットしてレーザ加工を行う場合は、加工対象物の中心とテーブルの中心が合っていれば、レーザ光の焦点は常に加工対象物上にあるが、加工対象物が円形でない場合や、テーブルに複数の加工対象物をセットしてレーザ加工を行う場合は、レーザ光の焦点は加工対象物とテーブルとを移動することになるため、加工対象物とテーブルとの間の段差、又は隙間でフォーカスサーボ制御が外れる可能性が高いという問題がある。
【0004】
加工対象物とテーブルとの間の段差、又は隙間でフォーカスサーボ制御が外れる可能性が高いという問題に対応するため、加工対象物とテーブルとの境界をレーザ光が移動するときは、フォーカスサーボ可能な範囲が広く、フォーカスエラー信号に生じる周波数の高い信号がフォーカスサーボ信号ではカットされるフォーカスサーボ制御(精度は悪いが外れにくいフォーカスサーボ制御)を行い、加工対象物上にレーザ光の焦点があるときは、高精度のフォーカスサーボ制御を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この提案の方法では、加工対象物とテーブルとの境界を精度よく検出することが必要である。
前記特許文献1の実施例1、及び実施例2では、加工対象物の縁に反射率の異なる膜をつけることで、加工対象物とテーブルとの境界を精度よく検出している。しかしながら、この方法では膜をつける工数が必要であるため、加工効率が悪いという問題がある。
【0005】
前記特許文献1の実施例3では、テーブルを回転させるスピンドルモータに内蔵されるエンコーダが出力するインデックス信号で回転基準位置を検出し、この位置からエンコーダが出力するパルス信号のパルス数をカウントし、このカウント値が所定値になったことを検出することで、加工対象物とテーブルとの境界を精度よく検出しており、この方法であれば、テーブルにおける回転基準位置を変化させないようにし、加工対象物をテーブルの所定位置にセットするのみでよいので、加工効率を高くすることができる。
そして、加工対象物をテーブルの所定位置にセットするには、例えば、特許文献2の図1に示されているようにテーブルの所定位置に加工対象物と同じ形状の穴を設けた固定治具をセットし、この穴に加工対象物をセットすればよい。また、テーブル自体に加工対象物と同じ形状のざぐりを設けるようにしてもよい。
しかしながら、加工対象物の形状が複数ある場合は、それらの加工対象物の形状に合った穴を設けた固定治具、又は各加工対象物の形状に合ったざぐりを設けたテーブルを複数用意する必要があるため、装置のコストが高くなるという問題がある。また、複数の固定治具、又はテーブルの置場を設ける必要があるため、作業スペースを広くする必要があるという問題がある。
【0006】
したがって、様々な形状の加工対象物を容易、かつ安価にテーブルに固定することができ、かつ、レーザ加工精度に優れるレーザ加工装置の提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−200745号公報
【特許文献2】特開2008−93723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、様々な形状の加工対象物を容易、かつ安価にテーブルに固定することができ、かつ、レーザ加工精度に優れるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 平板状の加工対象物を固定するテーブルと、
前記テーブルを回転させる回転手段と、
前記テーブルにセットされた平板状の加工対象物にレーザ光を対物レンズで集光して照射する光加工ヘッドと、
前記テーブルを前記光加工ヘッドと相対的に前記テーブルの半径方向に移動する半径方向移動手段と、
前記加工対象物に照射したレーザ光の反射光から作成した信号を用いて前記レーザ光の焦点が前記加工対象物、及び前記テーブルのいずれかに合うよう制御するフォーカスサーボ制御手段とを有するレーザ加工装置であって、
前記テーブルが、前記加工対象物を固定する面に該面を基準として複数の凹部を有し、
前記加工対象物が、前記テーブルの凹部に脱着可能な固定部材を装着することによりテーブルに固定可能にされ、
前記フォーカスサーボ制御手段が、前記レーザ光の焦点が少なくとも前記固定部材を移動する間、前記加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置又は前記固定部材の近傍領域の境界位置の強度で制御信号をホールドする信号ホールド手段を有することを特徴とするレーザ加工装置である。
<2> 前記回転手段により回転されるテーブルの回転位置を検出する回転位置検出手段と、
前記半径方向移動手段により移動されるテーブルの半径方向移動位置を検出する半径方向移動位置検出手段とを有し、
前記信号ホールド手段が、
加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置又は固定部材の近傍領域の境界位置が予め記憶され、
前記回転位置検出手段により検出されたテーブルの回転位置と、前記半径方向移動位置検出手段により検出されたテーブルの半径方向移動位置とにより、レーザ光の焦点が前記記憶された加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置又は固定部材の近傍領域の境界位置になったと判定したとき、制御信号をホールドする前記<1>に記載のレーザ加工装置である。
<3> 前記信号ホールド手段が、テーブル上の加工対象物が固定されていない部分における、凹部の近傍領域の境界位置が予め記憶され、
前記回転位置検出手段により検出されたテーブルの回転位置と、前記半径方向移動位置検出手段により検出されたテーブルの半径方向移動位置とにより、レーザ光の焦点が前記記憶されたテーブル上の加工対象物が固定されていない部分における、凹部の近傍領域の境界位置になったと判定したとき、制御信号をホールドする前記<2>に記載のレーザ加工装置である。
<4> 前記フォーカスサーボ制御手段が、加工対象物とテーブルとの段差でフォーカスサーボ制御が外れないように制御を行う第1のフォーカスサーボ制御手段と、レーザ光の焦点の加工対象物の表面への追従性が第1のフォーカスサーボ制御手段よりよい第2のフォーカスサーボ制御手段とからなり、
前記加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置で前記第1のフォーカスサーボ制御手段と、前記第2のフォーカスサーボ制御手段とを切り替えるフォーカスサーボ制御切替手段とを有する前記<1>から<3>のいずれかに記載のレーザ加工装置である。
<5> 前記固定部材が、テーブルに装着する側に棒状のピンを有する前記<1>から<4>のいずれかに記載のレーザ加工装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、様々な形状の加工対象物を容易、かつ安価にテーブルに固定することができ、かつ、レーザ加工精度に優れるレーザ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、実施例1のテーブル(不図示)に加工対象物を1つ固定したときの状態を加工面の上方から見た図である。
【図1B】図1Bは、実施例1の加工対象物の加工面に垂直な方向の断面図である。
【図1C】図1Cは、実施例2のテーブル(不図示)に加工対象物を1つ固定したときの状態を加工面の上方から見た図である。
【図1D】図1Dは、実施例2の加工対象物の加工面に垂直な方向の断面図である。
【図2】図2は、本発明のレーザ加工方法の一実施形態である実施例1、及び2を実施するレーザ加工装置の構成を示す図である。
【図3A】図3Aは、実施例3のテーブル(不図示)に加工対象物を1つ固定したときの状態を加工面の上方から見た図である。
【図3B】図3Bは、実施例3の加工対象物の加工面に垂直な方向の断面図である。
【図3C】図3Cは、実施例4のテーブル(不図示)に加工対象物を1つ固定したときの状態を加工面の上方から見た図である。
【図3D】図3Dは、実施例4の加工対象物の加工面に垂直な方向の断面図である。
【図4】図4は、実施例5のテーブルに加工対象物を4つ固定したときの状態を加工面の上方から見た図である。
【図5】図5は、実施例6のテーブルに加工対象物を4つ固定したときの状態を加工面の上方から見た図である。
【図6】図6は、本発明のレーザ加工方法の一実施形態である実施例3〜6を実施するレーザ加工装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(レーザ加工装置)
本発明のレーザ加工装置は、テーブルと、回転手段と、光加工ヘッドと、半径方向移動手段と、フォーカスサーボ制御手段とを有してなり、必要に応じて更にその他の構成を有してなる。
【0013】
<テーブル>
前記テーブルは、平板状の加工対象物を固定する。
前記テーブルは、前記加工対象物を固定する面に該面を基準として複数の凹部を有する。
前記テーブルの凹部は、脱着可能な固定部材が装着される。
前記テーブルの形状、大きさ、材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0014】
−凹部−
前記テーブルにおける凹部の形成位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加工対象物が円形であれば、加工対象物の縁の外側近傍で加工対象物の中心からの角度が等角度間隔になるように3つ以上の位置とする、加工対象物が多角形であれば、加工対象物のいくつかの辺の中心付近の位置とする、などが挙げられる。
これらの中でも、加工対象物が円形であれば、加工対象物の縁に沿って120°間隔で3つの位置が、加工対象物が円形でありオリフラがある場合は、オリフラの端の2つの位置とこの位置の中間位置の反対側の縁部分の位置が、後述する固定部材の数が少なくて加工対象物を確実に固定することができる点で、有利である。
また、加工対象物が多角形であれば、加工対象物の辺の中心付近であり加工対象物の中心からの角度が等角度間隔になるように3つ乃至4つの位置が、後述する固定部材の数が少なくて加工対象物を確実に固定することができる点で、有利である。
【0015】
前記凹部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円柱状、角柱状、コの字形状、などが挙げられる。これらの中でも、円柱状が、後述する固定部材の装着部分を円柱状にすれば容易に固定部材をセットできる点で、有利である。
前記テーブルにおける各凹部の形状は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0016】
前記凹部の幅としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mm〜10mmが好ましく、1mm〜5mmがより好ましく、1mm〜3mmが特に好ましい。前記凹部の幅が、1mm未満であると、後述する固定部材の装着部分が折れる危険性があり、10mmを超えると、固定部材の加工対象物を固定する部分を必要以上に大きくしなくてはならない。一方、前記凹部の幅が前記特に好ましい範囲内であると、固定部材の装着部分(棒状のピン)の強度が十分あり、加工対象物を固定する部分を適度な大きさにできる点で、有利である。
前記テーブルにおける各凹部の幅は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0017】
前記凹部の厚み(テーブル表面からの深さ)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mm〜25mmが好ましく、10mm〜20mmがより好ましく、13mm〜17mmが特に好ましい。前記凹部の厚みが、5mm未満であると、固定部材を装着した際の強度が弱いため、レーザ加工中に加工対象物が外れてしまう危険性があり、25mmを超えると、固定部材を装着する際と取り除く際に力がかかるため、固定部材の装着に時間がかかり効率が悪くなる可能性がある。一方、前記凹部の厚みが前記特に好ましい範囲内であると、固定部材を装着した際の強度が十分強いためレーザ加工中に加工対象物が外れてしまう危険性は極めて低く、装着は適度な力で行うことができるため、装着に時間がかからない点で、有利である。
前記テーブルにおける各凹部の厚みは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0018】
−加工対象物の固定−
前記テーブルは、前記凹部に固定部材が装着されることにより、加工対象物を固定することができるようになる。
【0019】
前記固定部材の装着箇所としては、加工対象物を固定することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、加工対象物の形状が円形にオリフラカットが入った形状である場合には、図1A、及び図1Bに示すように3箇所に固定部材を装着することで、加工対象物を固定することができる。また、加工対象物の形状が正方形である場合には、図1C、及び図1Dに示すように4箇所に固定部材を装着することで、加工対象物を固定することができる。
【0020】
なお、前記加工対象物の固定では、更に、前記テーブルに吸引孔を設け、吸引手段により吸引することにより加工対象物を固定してもよい。
前記吸引手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空ポンプが挙げられる。
【0021】
−固定部材−
前記固定部材は、前記凹部に脱着可能に装着され、テーブルに加工対象物を固定可能にする。
前記固定部材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、テーブルに装着する側に棒状のピンを有する形状が、テーブルへの装着が容易な点で、好ましい。
【0022】
前記固定部材の加工対象物を固定する部分における加工対象物の加工面に平行な方向の断面の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円、楕円、正方形、長方形などが挙げられる。これらの中でも、円が、向きを気にせず装着することができる点で、有利である。
前記固定部材の加工対象物を固定する部分における加工対象物の加工面に垂直な方向の断面の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正方形、長方形、上部が丸みを有する長方形又は正方形などが挙げられる。これらの中でも、長方形又は正方形が、後述する光ヘッドの対物レンズと固定部材が接触しない高さまで高さを大きくして加工対象物と接触する部分の面積を大きくすることができる点、及び後述する最適な高さである加工対象物の厚さと略同一の高さにしても、加工対象物と接触する箇所の面積を大きく保ったままにすることができる点で、有利である。
【0023】
前記固定部材をテーブルに装着したときの高さの上限としては、後述する光ヘッドの対物レンズと固定部材が接触しなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記対物レンズの焦点距離を1.5mmとし、加工対象物の厚さを0.5mmとすると、加工対象物の加工面から、0.5mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましく、0.1mm以下が特に好ましい。また、前記固定部材をテーブルに装着したときの高さの下限としては、テーブルが回転することで加工対象物が外れてしまわなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加工対象物の厚みの1/2以上が好ましく、2/3以上がより好ましく、加工対象物の厚み以上が特に好ましい。
前記固定部材をテーブルに装着したときの高さが、加工対象物の厚みの1/2未満であると、テーブルが回転することで加工対象物が外れてしまう危険性があり、加工対象物の加工面から0.7mmを超えると、固定部材の装着が不十分である場合、後述する光ヘッドの対物レンズと固定部材が接触してしまう可能性がある。一方、前記固定部材をテーブルに装着したときの高さが前記特に好ましい範囲内であると、テーブルの回転により加工対象物が外れてしまう危険性は極めて低く、後述する光ヘッドの対物レンズと固定部材が接触してしまう可能性も極めて低い点で、有利である。
【0024】
前記固定部材の加工対象物を固定する部分における幅の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、10mm以下が特に好ましい。また、前記固定部材の幅の下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上が特に好ましい。
前記固定部材の加工対象物を固定する部分における幅が、1mm未満であると、テーブルの回転により加工対象物が外れる危険性があり、30mmを超えると、前記テーブルの凹部に固定部材の装着部分(棒状のピン)を装着するときに凹部が見えにくくなるため装着に時間がかかる可能性がある。一方、前記固定部材の加工対象物を固定する部分における幅が前記特に好ましい範囲内であると、テーブルの回転により加工対象物が外れる危険性は極めて小さく、テーブルの凹部に固定部材を装着することが容易である点で、有利である。
【0025】
前記固定部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、セラミックス、ゴム、樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、適度な硬度の樹脂が加工対象物に傷をつけず、ある程度の変形が許容されるため、加工対象物を固定する力が強い点で好ましい。
【0026】
固定部材のテーブルへの装着部分である前記棒状のピンの形状、幅及び長さとしては、前記テーブルの凹部の形状、幅及び厚み(深さ)に合致し、固定部材の装着に大きな力がかからず装着した際、簡単に動かないものにする。
【0027】
前記テーブルに装着する各固定部材は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。前記固定部材は、加工対象物の形状に応じて適宜選択することができる。
【0028】
−加工対象物−
前記加工対象物は、平板状である。
前記加工対象物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、LEDウェハー、半導体ウェハーなどの基板が挙げられる。
前記基板の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、円形が好ましい。
前記基板の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0029】
前記基板としては、その材質、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記材質としては、無機物、有機物などが挙げられ、前記構造としては単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては用途等に応じて適宜選択することができる。
前記無機物としては、ガラス、サファイア、シリコン(Si)、石英(SiO)などが挙げられる。
前記有機物としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、低融点フッ素樹脂、ポリメタアクリル酸メチル(PMMA)、トリアセテートセルロース(TAC)、などが挙げられる。
【0030】
前記基板は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、100μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましい。
【0031】
前記基板は、その表面に薄膜を形成したものであってもよい。
前記薄膜を形成する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
前記テーブルに固定する加工対象物は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
また、1つのテーブルに固定する加工対象物の形状は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記固定部材をテーブルの凹部の適切な箇所に装着することにより、様々な形状、大きさの加工対象物をテーブルの所定位置へ固定することを、1種類のテーブルで行うことができる。
【0033】
<回転手段>
前記回転手段は、テーブルを回転させる手段である。
前記回転手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンドルモータが挙げられる。
【0034】
<光加工ヘッド>
前記光加工ヘッドは、前記テーブルにセットされた平板状の加工対象物にレーザ光を対物レンズで集光して照射する。
前記光加工ヘッドとしては、特に制限はなく、公知の光加工ヘッドを目的に応じて適宜選択することができる。
前記光加工ヘッドの例としては、レーザ光源、コリメートレンズ、偏光ビームスプリッタ、1/4波長板、対物レンズ、凸レンズ、シリンドリカルレンズ、4分割フォトディテクタ、フォーカスアクチュエータなどを有し、レーザ光源からの加工用レーザ光、及びサーボ用レーザ光を加工対象物に対物レンズにより集光させるとともに加工対象物からの反射光を受光し、作成された信号に基づいてフォーカスサーボ制御を行うものが挙げられる。なお、サーボ用レーザ光を使用しないものであってもよい。
【0035】
<半径方向移動手段>
前記半径方向移動手段は、前記テーブルを前記光加工ヘッドと相対的に前記テーブルの半径方向に移動する手段である。
前記半径方向移動手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィードモータが挙げられる。
【0036】
<フォーカスサーボ制御手段>
前記フォーカスサーボ制御手段は、前記加工対象物に照射したレーザ光の反射光から作成した信号を用いて前記レーザ光の焦点が前記加工対象物、及び前記テーブルのいずれかに合うよう制御する手段である。
前記フォーカスサーボ制御手段は、少なくとも信号ホールド手段を有する。
【0037】
−信号ホールド手段−
前記信号ホールド手段は、前記レーザ光の焦点が少なくとも前記固定部材を移動する間、前記加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置又は、前記固定部材の近傍領域の境界位置の強度でフォーカスアクチュエータを駆動する信号に相当する制御信号をホールドする手段である。これにより、前記固定部材によりレーザ光の焦点が、レーザ光が照射されている位置から急激にずれてもフォーカスアクチュエータは駆動せず、フォーカスサーボ制御が外れないようにすることができる。
前記加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置とは、加工対象物の縁からレーザ光が対物レンズにより集光されることで形成されるレーザスポットの直径以上内側に設定された境界位置である。加工対象物の大きさのバラツキを考慮すると、境界位置は、加工対象物の大きさの設定値から定まる加工対象物の縁から1mm〜3mm内側に設定するとよい。
前記固定部材の近傍領域とは、前記加工対象物の加工面と平行な面において、固定部材の外周からレーザスポットの直径以上外側までの領域である。固定部材の幅のバラツキを考慮すると、近傍領域は、固定部材の幅の設定値から定まる固定部材の外周から1mm〜3mm外側までの領域とするとよい。
【0038】
前記信号ホールド手段は、加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置又は固定部材の近傍領域の境界位置が予め記憶され、後述する回転位置検出手段により検出されたテーブルの回転位置と、後述する半径方向移動位置検出手段により検出されたテーブルの半径方向移動位置とにより、レーザ光の焦点が前記記憶された加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置又は固定部材の近傍領域の境界位置になったと判定したとき、制御信号をホールドすることが好ましい。これにより、簡単な構成で、フォーカスエラー信号が乱れる位置の直前でフォーカスサーボ制御のホールドが可能になる。
【0039】
また、前記信号ホールド手段は、テーブル上の加工対象物が固定されていない部分における、凹部の近傍領域の境界位置が予め記憶され、後述する回転位置検出手段により検出されたテーブルの回転位置と、後述する半径方向移動位置検出手段により検出されたテーブルの半径方向移動位置とにより、レーザ光の焦点が前記記憶されたテーブル上の加工対象物が固定されていない部分における、凹部の近傍領域の境界位置になったと判定したとき、制御信号をホールドすることが好ましい。これにより、加工対象物が固定されていない部分における、凹部をレーザ光が照射してフォーカスエラー信号が乱れてもフォーカスサーボ制御が外れないようにすることができる。
前記凹部の近傍領域とは、前記加工対象物の加工面と平行な面において、凹部の外周からレーザスポットの直径以上外側までの領域である。凹部の大きさのバラツキを考慮すると、近傍領域は、凹部の大きさの設定値から定まる凹部の外周から1mm〜3mm外側までの領域とするとよい。
【0040】
フォーカスサーボ制御の制御信号をホールドする領域としては、少なくともレーザ光の焦点が移動する固定部材を含んでいれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固定部材の領域、固定部材及び固定部材の近傍領域、加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置から外側の領域、固定部材及びテーブル上の加工対象物が固定されていない部分における凹部と該凹部の近傍領域、などが挙げられる。
これらの中でも、フォーカスサーボ制御手段が1つの場合は、加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置から外側の領域で制御信号をホールドすることが好ましい。また、後述するフォーカスサーボ制御手段が2つの場合は、固定部材及び固定部材の近傍領域、及びテーブル上の加工対象物が固定されていない部分における凹部及び凹部近傍領域で制御信号をホールドすることが好ましい。
【0041】
前記信号ホールド手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マスク信号発生回路、及び導通回路により行うことができる(図2、図6参照)。
【0042】
前記マスク信号発生回路では、入力した半径位置ごとのフォーカスサーボホールド点と、フォーカスサーボホールド解除点の回転角度を記憶し、コントローラから作動開始の指示が入力されると作動を開始する。そして、回転角度を入力し続け、回転角度0になったときに半径値を入力し、この半径値において記憶されているフォーカスサーボホールド点(例えば、レーザ光の焦点が、固定部材の近傍領域の境界位置又は加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置)の回転角度になったときに出力している信号レベルをhighにし、フォーカスサーボホールド解除点(フォーカスサーボホールド点と同じ境界位置であり、レーザ光の焦点がホールド領域を通過した後の境界位置)の回転角度になったときに信号レベルをlowにする。
導通回路は、マスク信号発生回路から入力される信号がhighになると、フォーカスエラー信号生成回路から入力される信号を停止し、強度0の信号をフォーカスサーボ回路へ出力する。そして、マスク信号発生回路から入力される信号がlowになると、フォーカスエラー信号生成回路から入力された信号をそのままフォーカスサーボ回路へ出力する。
これにより、フォーカスサーボホールド点からフォーカスサーボホールド解除点までの間、フォーカスサーボ回路が出力する信号、及びドライブ回路が出力する信号は一定になり、光ヘッドのフォーカスアクチュエータは駆動せずレーザ光の焦点位置は一定の高さのまま保持される。
【0043】
また、前記信号ホールド手段としては、特開平3−134832号公報に記載されている手段を用いることもできる。
【0044】
<回転位置検出手段>
前記回転位置検出手段は、前記回転手段により回転されるテーブルの回転位置を検出する。
前記回転位置検出手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、回転角度検出回路(図2、図6参照)が挙げられる。
前記回転角度検出回路では、スピンドルモータ内のエンコーダから出力されるパルス列信号が供給され、コントローラの指示により、作動開始して、パルス列信号のパルス数をカウントすることでテーブルの回転角度を検出してコントローラ、マスク信号検出回路などに供給する。
なお、スピンドルモータ内のエンコーダから1回転ごとに出力されるインデックス信号も供給され、このインデックス信号が供給されるとそれまでカウントしたパルス列信号のパルス数をリセットする。即ち、インデックス信号が供給される回転角度が、回転角度0°である。
【0045】
<半径方向移動位置検出手段>
前記半径方向移動位置検出手段は、半径方向移動手段により移動されるテーブルの半径方向移動位置を検出する。
前記半径方向移動位置検出手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、半径値検出回路(図2、図6参照)が挙げられる。
前記半径値検出回路では、フィードモータ内のエンコーダから出力されるパルス列信号が供給され、所定位置からのパルス信号のパルス数をカウントして移動距離を検出し、予め計測してある所定位置と半径位置0との間の距離を加算又は減算することでテーブルの半径位置を検出して、半径値を表す検出信号を出力する。
なお、前記所定位置はフィードモータの駆動限界位置であり、前記半径値検出回路は、フィードモータを駆動限界位置に向けて駆動させた際、フィードモータ内のエンコーダからパルス信号が供給されなくなったタイミングでパルス数のカウント値を0にする。
【0046】
<フォーカスサーボ制御の切替>
前記フォーカスサーボ制御手段は、加工対象物とテーブルの段差でフォーカスサーボ制御が外れないように制御を行う第1のフォーカスサーボ制御手段と、レーザ光の焦点の加工対象物の表面への追従性が第1のフォーカスサーボ制御手段よりよい第2のフォーカスサーボ制御手段とからなることが好ましい。
【0047】
前記フォーカスサーボ制御手段の切替は、フォーカスサーボ制御切替手段により行われる。
【0048】
−フォーカスサーボ制御切替手段−
前記フォーカスサーボ制御切替手段は、加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置で前記第1のフォーカスサーボ制御手段と、前記第2のフォーカスサーボ制御手段とを切り替える。
前記フォーカスサーボ制御切替手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、切換信号発生回路と、信号切替回路とが挙げられる(図6参照)。
【0049】
フォーカスサーボ制御を切り替える位置である加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置は、前記ホールド手段によりホールドを行う領域の境界位置の一例として説明した、加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置と同じである。フォーカスサーボ制御切替手段は、第1のフォーカスサーボ制御手段が、加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置の外側で制御を行い、第2のフォーカスサーボ制御手段が加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置の内側で制御を行うようフォーカスサーボ制御を切り替える。なお、第1と第2のフォーカスサーボ制御手段をこの境界位置で切り替える場合は、前記ホールド手段によりホールドを行う領域は、加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置の外側の領域よりも狭い領域であり、例えば固定部材及び固定部材の近傍領域である。
【0050】
前記切換信号発生回路は、半径値ごとに加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置の箇所の回転角度が小さい回転角度から順にメモリに記憶されている。また、各回転角度には、レーザ光の焦点がこれから境界位置の外側になる場合は「1」が、境界位置の内側になる場合は「2」のデータが付加されている。そして、前記切換信号発生回路は、コントローラからの指示により、プログラムがスタートし、フォーカスサーボ制御を切り換えるための2つの信号を出力する。
前記プログラムとしては、例えば、以下の通りである。
回転角度検出回路から入力する回転角度が0°になると、半径値検出回路が出力する半径値を取り込んで、メモリからその半径値において記憶されている境界位置の箇所の回転角度を引き出す。回転角度検出回路から入力する回転角度が引き出した回転角度に一致し、その回転角度に「1」のデータが付加されている場合(図3Aのフォーカスサーボ切り替え点7Aの場合)は、信号1を出力し、その回転角度に「2」のデータが付加されている場合(図3Aのフォーカスサーボ切り替え点7Bの場合)は、信号2を出力する。そして、コントローラから終了の指令が入力すると、プログラムを終了する。
【0051】
前記信号切替回路は、切換信号発生回路から入力した信号に応じた信号を出力する。即ち、信号2(第1のフォーカスサーボ制御手段から第2のフォーカスサーボ制御手段に切り換える信号)が入力したときは、第2のフォーカスサーボ制御手段の回路であるフォーカスサーボ回路2からの信号を出力し、信号1(第2のフォーカスサーボ制御手段から第1のフォーカスサーボ制御手段に切り換える信号)が入力したときは、第1のフォーカスサーボ制御手段の回路であるフォーカスサーボ回路1からの信号を出力する。
【0052】
前記フォーカスサーボ制御の切替を行う場合、前記フォーカスサーボ制御のホールドは、前記第1のフォーカスサーボ制御手段で行う。
【0053】
フォーカスサーボ制御のホールドのみでは、テーブル又は加工対象物表面とレーザ光の光軸が完全に垂直でない場合は、ホールド解除点近傍では焦点と加工対象物表面のずれが大きくレーザ加工の精度が落ちることがあるが、前記フォーカスサーボ制御手段の切り替えを行うことにより、レーザ加工の精度を上げることができる。
【0054】
なお、その他のレーザ加工装置の詳細な動作については、特開2007-216263号公報、特開2008−93723号公報、特開2008−93724号公報、特開2008−200745号公報、特開2009−82932号公報、特開2009−87434号公報に記載の事項を適宜用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
図1A、図1B、及び図2に実施例1の概要を示す。図1Aは、テーブル(不図示)に加工対象物を1つ固定したときの状態を加工面の上方から見た図である。図1Bは、加工対象物の加工面に垂直な方向の断面図である。図1A、及び図1B中、符号1はレーザ光照射跡を示し、符号2はフォーカスサーボホールド点を示し、符号3はフォーカスサーボホールド解除点を示し、符号4は固定部材を示し、符号5はテーブルを示し、符号OBは加工対象物を示す。
図1A、及び図1Bに示されるように、実施例1では、加工面に対して垂直方向から見た場合、円形にオリフラカットが入った形状である加工対象物OBを、図に示される3箇所に位置する固定部材4で固定した。
前記加工対象物OBは、厚さ0.5mm、2インチのサファイア基板を使用した。
前記固定部材4は、加工対象物OBの固定部と、テーブルに装着する側に棒状のピンを有する構成からなり、前記棒状のピンをテーブルの凹部(形状:円柱、幅:2mm、深さ:15mm)に挿入することでテーブルに固定した。前記固定部材4の加工対象物OBの固定部は、テーブル5表面からの高さが0.5mm(加工対象物表面からの高さは、0.0mm)であり、形状は円柱で加工対象物の加工面に平行な方向の断面における幅が10mmであり、棒状のピンの部分は、形状は円柱で、長さ14mm、幅2mmのものを使用した。
【0057】
実施例1では、フォーカスサーボ制御は、レーザ光の焦点が加工対象物OBからテーブル5へ移動するときは、加工対象物OBの縁から内側の近傍に設定した境界位置(加工対象物OBのエッジから2mm程度の位置)でホールド(図1Aの符号2)し、テーブル5から加工対象物OBへ移動するときは、同様の加工対象物OBの縁から内側の近傍に設定した境界位置(加工対象物OBのエッジから2mm程度の位置)でホールド解除した(図1Aの符号3)。
【0058】
レーザ加工装置の詳細を図2に基づいて説明する。図2は、本発明のレーザ加工装置の一実施形態の構成を示す図である。このレーザ加工装置は、固定部材(不図示)により加工対象物OBが固定されたテーブル201と、加工対象物OBに向けて加工用レーザ光を照射して加工対象物を加工するとともに、フォーカスサーボ制御が行われる光加工ヘッド200を有する。前記光加工ヘッドは、サーボ用レーザ光を更に照射してもよい。前記フォーカスサーボ制御は、加工用レーザ光、及びサーボ用レーザ光の少なくともいずれかの反射光を用いて行われる。テーブル201は円形に形成されていて、スピンドルモータ300及びフィードモータ400により駆動される。
【0059】
スピンドルモータ300は、その回転により、回転軸を介してテーブル201を回転駆動する。スピンドルモータ300内には、該モータ300即ちテーブル201の回転を検出して、該回転を表す回転検出信号を出力するエンコーダが組み込まれている。この回転検出信号は、テーブル201の回転位置が一つの基準回転位置に来るごとに発生されるインデックス信号Indexと、所定の微小な回転角度ずつハイレベルとローレベルを繰返すパルス列信号からなるとともにパルス列信号は互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号Φ及びB相信号Φとからなる。該回転検出信号は、スピンドルモータ制御回路及び回転角度検出回路に供給される。スピンドルモータ制御回路は、エンコーダからのパルス列信号を用いてスピンドルモータ300の回転速度を計算し、コントローラによって指定された回転速度に等しくなるようにスピンドルモータ300の回転を制御する。回転角度検出回路は、コントローラの指示により作動開始し、パルス列信号のパルス数をカウントすることでスピンドルモータ即ちテーブル201の回転角度を検出してコントローラ、及びマスク信号検出回路に供給する。なお、インデックス信号Indexが入力すると、回転角度検出回路はカウント値をリセットして0にする。即ち、インデックス信号Indexが入力したときが回転角度0°である。
【0060】
フィードモータ400は、スクリューロッドを回転させて、テーブル201を半径方向に移動させる。スクリューロッドは、その一端にてフィードモータ400の回転軸に一体回転するように連結され、その他端に支持部材に固着されたナット(図示しない)に螺合している。支持部材は、スピンドルモータを固定支持するとともに、テーブル201の径方向への移動のみが許容されている。したがって、フィードモータ400が回転すると、スピンドルモータ300、テーブル201及び支持部材はスクリューロッド及びナットからなるねじ機構によりテーブルの径方向に変位する。
【0061】
フィードモータ400内にも、フィードモータ400の回転を検出して、前記スピンドルモータ内に組み込まれているエンコーダと同様なパルス列信号を出力するエンコーダが組み込まれている。このパルス列信号は、半径値検出回路及びフィードモータ制御回路に出力される。半径値検出回路は、エンコーダからのパルス列信号をカウントするカウント回路を有し、このカウント回路のカウント値に基づいてレーザ光が照射されるテーブルの半径位置を検出して、半径値を表す検出信号を出力する。なお、カウント回路の初期設定は、コントローラによる指示により、フィードモータ制御回路と協働して行われる。
【0062】
即ち、コントローラは、初期において、フィードモータ制御回路に支持部材の初期位置への移動及び半径値検出回路に初期設定を指示する。この指示により、フィードモータ制御回路は、フィードモータを回転させて支持部材を初期位置に移動させる。なお、この初期位置は、フィードモータによって駆動される支持部材の駆動制限位置である。半径値検出回路は、この支持部材の移動中、エンコーダからのパルス列信号を入力し続けている。そして、支持部材が初期位置まで達してフィードモータの回転が停止すると、半径値検出回路はエンコーダからのパルス列信号の入力停止を検出して、内蔵のカウント回路のカウント値を「0」にリセットする。このとき、半径値検出回路は、フィードモータ制御回路に出力停止のための信号を出力し、これにより、フィードモータ制御回路はフィードモータへの駆動信号の出力を停止する。
【0063】
フィードモータ制御回路は、コントローラの指示により、フィードモータを駆動制御して、レーザ光の照射位置をテーブルの指定半径位置へ移動させたり、テーブルを半径方向に指定速度で移動させる。具体的には、フィードモータ制御回路は、コントローラによって指定される半径位置へのレーザ光の照射位置の移動が指示されたときには、半径値検出回路によって検出される半径値を用いてフィードモータの回転を制御し、検出される半径値がコントローラから指定された半径値に等しくなるまでフィードモータを回転させる。また、フィードモータ制御回路は、コントローラによって指定される移動速度でレーザ光の照射位置をテーブルの半径方向に移動させることが指示されたときには、エンコーダからのパルス列信号からテーブルの半径方向への移動速度を計算して、計算された移動速度がコントローラによって指定される移動速度に等しくなるようにフィードモータの回転を制御する。即ち、フィードモータ制御回路は、コントローラの指示により、フィードモータ400を駆動制御して、レーザ光の照射位置をテーブル201の指定半径位置に移動させたり、テーブル201を半径方向に指定速度で移動させる。
【0064】
加工ヘッド200は、レーザ光源、コリメートレンズ、偏光ビームスプリッタ、1/4波長板、対物レンズ、凸レンズ、シリンドリカルレンズ、4分割フォトディテクタ、フォーカスアクチュエータなどを有し、レーザ光源からの加工用レーザ光、及びサーボ用レーザ光を加工対象物に対物レンズにより集光させるとともに加工対象物OBからの反射光を受光する。レーザ光源は、コントローラによって作動制御される記録信号供給回路(発光信号供給回路)、及びレーザ駆動回路によって駆動制御される。記録信号供給回路(発光信号供給回路)は、コントローラからの加工模様を表すデータを入力して、同データに対応したパルス列信号をレーザ駆動回路に供給する。レーザ駆動回路は、コントローラによって制御されて、記録信号供給回路(発光信号供給回路)からのパルス列信号に対応した駆動信号又は記録信号供給回路(発光信号供給回路)とは無関係に初期駆動信号(レーザ加工されない一定強度の信号)をレーザ光源に供給する。初期駆動信号は、フォーカスサーボ制御を開始する際に供給される。
【0065】
また、加工対象物OBに照射された加工用レーザ光、及びサーボ用レーザ光の少なくともいずれかによる反射光は、4分割フォトディテクタに導かれて受光される。4分割フォトディテクタは、信号増幅回路を介して出力される受光信号をフォーカスエラー信号生成回路に供給する。フォーカスエラー信号生成回路は、信号増幅回路からの受光信号に基づいてフォーカスエラー信号を生成し、導通回路に出力する。
【0066】
次に、フォーカスサーボ制御のホールドと、ホールド解除について説明する。前記フォーカスサーボ制御のホールドと、ホールド解除は、マスク信号発生回路、及び導通回路からなる信号ホールド手段により行われる。
入力装置からコントローラに、半径方向の送りピッチと、レーザ加工開始時の半径位置と、加工対象物の形状とが入力されると、コントローラは半径位置ごとのフォーカスサーボホールド点と、フォーカスサーボホールド解除点とを回転角度として計算し、計算したデータをマスク信号発生回路へ出力する。このときデータにはホールド点は「1」、ホールド解除点は「2」のデータが付加されている。レーザ光はらせん状に移動するが、回転角度0のときの半径位置は次の回転角度0のときまで同じであり、次の回転角度0のときに半径方向の送りピッチ分半径方向に移動するとして計算すればよい。
【0067】
前記マスク信号発生回路では、入力した半径位置ごとのフォーカスサーボホールド点と、フォーカスサーボホールド解除点の回転角度をメモリに記憶し、コントローラから作動開始の指示が入力されると作動を開始する。そして、回転角度を入力し続け、回転角度0になったときに半径値を入力し、この半径値において記憶されているフォーカスサーボホールド点(加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置で、それまでレーザ光の焦点はこの境界位置の内側にいる場合)の回転角度になったときに出力している信号レベルをhighにし、フォーカスサーボホールド解除点(加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置で、それまでレーザ光の焦点はこの境界位置の外側にいる場合)の回転角度になったときに信号レベルをlowにする。
導通回路は、マスク信号発生回路から入力される信号がhighになると、フォーカスエラー信号生成回路から入力される信号を停止し、強度0の信号をフォーカスサーボ回路へ出力する。そして、マスク信号発生回路から入力される信号がlowになると、フォーカスエラー信号生成回路から入力された信号をそのままフォーカスサーボ回路へ出力する。
これにより、フォーカスサーボホールド点からフォーカスサーボホールド解除点までの間、フォーカスサーボ回路が出力する信号、及びドライブ回路が出力する信号は一定になり、光ヘッドのフォーカスアクチュエータは駆動せずレーザ光の焦点位置は一定の高さのまま保持される。
【0068】
そして、フォーカスサーボ回路は、コントローラにより指示されて作動開始し、導通回路から出力された信号に基づいてフォーカスサーボ信号を生成し、ドライブ回路に供給する。ドライブ回路は、このフォーカスサーボ信号に応じて光加工ヘッド内のフォーカスアクチュエータを駆動制御し、フォーカスサーボがホールドされていないときは、加工用レーザ光が加工対象物の表面で合焦するようにする。なお、フォーカスアクチュエータは、光ヘッド200内に設けられて対物レンズを光軸方向に変位させるものである。
【0069】
なお、その他の詳細な動作については、特開2007-216263号公報、特開2008−93723号公報、特開2008−93724号公報、特開2008−200745号公報、特開2009−82932号公報、特開2009−87434号公報に記載の事項を適宜用いることができる。
【0070】
これらの動作により、固定部材によりテーブルに固定された加工対象物を、フォーカスサーボ制御を行いながらレーザ加工を行っても加工対象物とテーブルの段差箇所や固定部材でフォーカスサーボ制御が外れることがなく、レーザ加工できることが示された。
【0071】
(実施例2)
実施例1において、加工面に対して垂直方向から見た場合の形状が円形にオリフラカットが入った形状の加工対象物であった点を、加工面に対して垂直方向から見た場合の形状が正方形の加工対象物とした以外は、実施例1と同様にしてレーザ加工を行った。
【0072】
図1C、及び図1Dに実施例2の概要を示す。図1Cは、テーブル(不図示)に加工対象物を1つ固定したときの状態を加工面の上方から見た図である。図1Dは、加工対象物の加工面に垂直な方向の断面図である。図1C、及び図1D中、符号1はレーザ光照射跡を示し、符号2はフォーカスサーボホールド点を示し、符号3はフォーカスサーボホールド解除点を示し、符号4は固定部材を示し、符号5はテーブルを示し、符号OBは加工対象物を示す。
図1C、及び図1Dに示されるように、実施例2では、加工面に平行な方向の断面の形状が正方形の加工対象物を、図に示される4箇所に位置する固定部材で固定した。
前記固定部材は、実施例1と同じものを用いた。
なお、実施例2でも、フォーカスサーボ制御は、レーザ光の焦点が加工対象物OBからテーブル5へ移動するときは、加工対象物OBの縁から内側の近傍に設定した境界位置(加工対象物OBのエッジから2mm程度の位置)でホールド(図1Cの符号2)し、テーブル5から加工対象物OBへ移動するときは、同様の加工対象物OBの縁から内側の近傍に設定した境界位置(加工対象物OBのエッジから2mm程度の位置)でホールド解除した(図1Dの符号3)。
【0073】
実施例2においても、固定部材によりテーブルに固定された加工対象物を、フォーカスサーボ制御を行いながらレーザ加工を行っても加工対象物とテーブルの段差箇所や固定部材でフォーカスサーボ制御が外れることがなく、レーザ加工できることが示された。
【0074】
(実施例3)
図3A、図3B、及び図6に実施例3の概要を示す。図3Aは、テーブル(不図示)に加工対象物を1つ固定したときの状態を加工面の上方から見た図である。図3Bは、加工対象物の加工面に垂直な方向の断面図である。図3A、及び図3B中、符号1はレーザ光照射跡を示し、符号6はフォーカスサーボホールド領域を示し、符号7A、及び7Bはフォーカスサーボ切り替え点を示し、符号4は固定部材を示し、符号4Aは固定部材及び固定部材近傍領域を示し、符号5はテーブルを示し、符号OBは加工対象物を示す。
図3A、及び図3Bに示されるように、実施例3では、実施例1と同様にして加工対象物OBをテーブル5に固定した。
【0075】
実施例3では、フォーカスサーボ制御は、フォーカスサーボ制御のホールドに加え、2種類のフォーカスサーボ制御を切り替えて行った(図3A参照)。
即ち、フォーカスサーボ制御が外れる可能性が高い、固定部材及び固定部材の近傍領域(図3Aの符号6(4A))で、フォーカスサーボ制御をホールドした。なお、固定部材の近傍領域は、固定部材の加工対象物OBの固定部分の外周から2mm外側までの領域とした。
また、レーザ光の焦点が加工対象物OBの内側近傍に設定した境界位置の内側から外側へ移動するときは、この境界位置(加工対象物OBのエッジから2mm程度の位置)で、レーザ光の焦点の加工対象物OBの表面への追従性がよいフォーカスサーボ制御(第2のフォーカスサーボ制御)から、加工対象物とテーブルの段差でフォーカスサーボ制御が外れないように制御するフォーカスサーボ制御(第1のフォーカスサーボ制御)に切り替えた(図3Aの符号7A)。
また、レーザ光の焦点が加工対象物OBの内側近傍に設定した境界位置の外側から内側へ移動するときは、この境界位置(加工対象物OBのエッジから2mm程度の位置)で、加工対象物とテーブルの段差でフォーカスサーボ制御が外れないように制御するフォーカスサーボ制御(第1のフォーカスサーボ制御)から、レーザ光の焦点の加工対象物の表面への追従性がよいフォーカスサーボ制御(第2のフォーカスサーボ制御)に切り替えた(図3Aの符号7B)。
【0076】
レーザ加工装置の詳細を図6に基づいて説明する。図6は、本発明のレーザ加工装置の一実施形態の構成を示す図である。このレーザ加工装置は、前記実施例1のフォーカスサーボ制御を第1のフォーカスサーボ制御と、第2のフォーカスサーボ制御とを切り替えることが可能な構成に変更したものである。なお、前記実施例1と同一の回路などは説明を省略し、作動などの異なる回路は異なる部分を説明する。
なお、図6では、テーブルに複数の加工対象物OBが固定された場合が記載されているが、加工対象物OBが1つの場合は、図2と同様にすればよい。
【0077】
光加工ヘッド200は、加工用レーザ光とサーボ用レーザ光の2つを照射する。2つのレーザ光は波長を異ならせているため(例えば、加工用レーザ光は400nm付近の青色レーザ、サーボ用レーザ光は650nm付近の赤色レーザ)、ダイクロイックミラーで合成され、2つのレーザ光による反射光はダイクロイックミラーで分離される。そしてそれぞれの反射光を受光する受光光学系1、受光光学系2が設けられている。
【0078】
サーボ用レーザ光による反射光は、受光光学系1とHF信号増幅回路1、フォーカスエラー信号生成回路1、導通回路、及びフォーカスサーボ回路1によるフォーカスサーボ制御(第1のフォーカスサーボ制御手段)に用いられる。
加工用レーザ光による反射光は、受光光学系2とHF信号増幅回路2、フォーカスエラー信号生成回路2、及びフォーカスサーボ回路2によるフォーカスサーボ制御(第2のフォーカスサーボ制御手段)に用いられる。
【0079】
信号切替回路は、切換信号発生回路から信号2が入力したときは、フォーカスサーボ回路2から入力した信号を出力し、切換信号発生回路から信号1が入力したときは、フォーカスサーボ回路1から入力した信号を出力する。
【0080】
回転角度検出回路は、スピンドルモータのエンコーダから回転検出信号が入力すると、テーブル201の回転角度を検出して切換信号発生回路に出力する。
【0081】
切換信号発生回路は、半径値ごとに加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置の箇所の回転角度が小さい回転角度から順にメモリに記憶されている。また、各回転角度には、レーザ光の焦点がこれから境界位置の外側になる場合は「1」が、境界位置の内側になる場合は「2」のデータが付加されている。そして、前記切換信号発生回路は、コントローラからの指示により、プログラムがスタートし、決定された信号を出力する。なお、記憶されている半径値ごとの回転角度のデータは、マスク信号発生回路と同様、入力装置からコントローラに入力した半径方向の送りピッチと、レーザ加工開始時の半径位置と、加工対象物の形状に基づいてコントローラ内で計算され、コントローラから入力したものである。
前記プログラムは、以下の通りである。
回転角度検出回路から入力する回転角度が0°になると、コントローラが出力する半径値を取り込んで、メモリからその半径値において記憶されている境界位置の箇所の回転角度を引き出す。回転角度検出回路から入力する回転角度が引き出した回転角度に一致し、その回転角度に「1」のデータが付加されている場合(図3Aのフォーカスサーボ切り替え点7Aの場合)は、信号1を出力し、その回転角度に「2」のデータが付加されている場合(図3Aのフォーカスサーボ切り替え点7Bの場合)は、信号2を出力する。そして、コントローラから終了の指令が入力すると、プログラムを終了する。
【0082】
前記レーザ加工装置は、所定の半径位置からレーザ加工を開始する。ここで、信号切替回路は、コントローラの指示によりフォーカスサーボ回路1から入力した信号を出力するようにされる。そして、図示されていない回路がフォーカスエラー信号生成回路1が出力する信号に発生したS字信号が0クロスしたタイミングを検出すると、コントローラからフォーカスサーボ回路1に作動指示が出ることでフォーカスサーボの引き込みが行われる。
【0083】
その後、切換信号発生回路は、レーザ光の焦点が加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置の外側からこの境界位置に来たときに信号2を出力し、レーザ光の焦点が加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置の内側からこの境界位置に来たときに信号1を出力し、それにより信号切替回路が出力する信号を切り替えるので、加工対象物上にレーザ光が照射されているときは受光光学系2とHF信号増幅回路2、フォーカスエラー信号生成回路2、及びフォーカスサーボ回路2でフォーカスサーボ制御が行われ、加工対象物の縁の近傍、固定部材及びテーブル上にレーザ光が照射されているときは受光光学系1とHF信号増幅回路1、フォーカスエラー信号生成回路1、導通回路、及びフォーカスサーボ回路1でフォーカスサーボ制御が行われる。即ち、加工対象物とテーブルとの段差箇所をレーザ光が通過するときは、必ず受光光学系1とHF信号増幅回路1、フォーカスエラー信号生成回路1、導通回路、及びフォーカスサーボ回路1によるフォーカスサーボ(即ちS字検出距離が長く、カットオフ周波数が小さく設定され、フォーカスサーボが外れにくいフォーカスサーボ)が行われるので、加工対象物とテーブルとの段差箇所でフォーカスサーボが外れないようにすることができ、受光光学系2とHF信号増幅回路2、フォーカスエラー信号生成回路2、及びフォーカスサーボ回路2によるフォーカスサーボは、S字検出距離やカットオフ周波数が通常の光ディスク装置におけるフォーカスサーボと同程度に設定され、追従性がよいフォーカスサーボであるので、加工対象物のレーザ加工精度を高精度にできるフォーカスサーボ制御を行うことができる。
【0084】
また、実施例3では、受光光学系1とHF信号増幅回路1、フォーカスエラー信号生成回路1、導通回路、及びフォーカスサーボ回路1によるフォーカスサーボ制御において、実施例1と同様の仕組みでフォーカスサーボ制御のホールドと、ホールド解除を行った。実施例1との相違点は、実施例1では、フォーカスサーボホールドの期間を、加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置の外側の領域をレーザ光の焦点が通過する間としていたのに対し、実施例3では、固定部材及び固定部材の近傍領域をレーザ光の焦点が通過する間とした点である。
【0085】
前記実施例1、及び2では、テーブル又は加工対象物表面とレーザ光の光軸が完全に垂直でない場合は、ホールド解除点近傍では焦点と加工対象物表面のずれが大きくレーザ加工の精度が落ちることがあるが、実施例3では、固定部材、及びテーブル上をレーザ光が通過する間は、フォーカスサーボ制御を精度は悪いが外れにくいフォーカスサーボ制御(受光光学系1とHF信号増幅回路1、フォーカスエラー信号生成回路1、導通回路、及びフォーカスサーボ回路1によるフォーカスサーボ制御)に切り替え、フォーカスサーボ制御が外れる可能性が高い箇所(固定部材及び固定部材の近傍領域)のみをフォーカスサーボ制御をホールドするようにしたことにより、レーザ加工の精度が、実施例1、及び2よりも優れていた。
【0086】
(実施例4)
実施例3において、加工面に対して垂直方向から見た形状が円形にオリフラカットが入った形状の加工対象物であった点を、加工面に対して垂直方向から見た形状が正方形の加工対象物とした以外は、実施例3と同様にしてレーザ加工を行った。
【0087】
図3C、及び図3Dに実施例3の概要を示す。図3Cは、テーブル(不図示)に加工対象物を1つ固定したときの状態を加工面の上方から見た図である。図3Dは、加工対象物の加工面に垂直な方向の断面図である。図3C、及び図3D中、符号1はレーザ光照射跡を示し、符号6はフォーカスサーボホールド領域を示し、符号7A、及び7Bはフォーカスサーボ切り替え点を示し、符号4Aは固定部材及び固定部材の近傍領域を示し、符号5はテーブルを示し、符号OBは加工対象物を示し、符号8は凹部及び凹部の近傍領域を示す。
図3C、及び図3Dに示されるように、実施例4では、加工面に対して垂直方向から見た形状が正方形の加工対象物OBを、図に示される4箇所に位置する固定部材4で固定した。
前記固定部材4は、実施例1と同じものを用いた。
【0088】
実施例4でも、フォーカスサーボ制御の切り替えを加工対象物OBの縁から内側の近傍に設定した境界位置(加工対象物OBのエッジから2mm程度の位置)で行い、フォーカスサーボホールド領域を、固定部材及び固定部材の近傍領域(図3Cの符号6(4A))、加工対象物が固定されていない部分における凹部及び凹部の近傍領域(図3Cの符号6(8))とした。なお、固定部材の近傍領域は、実施例3と同じ範囲とし、凹部の近傍領域は、加工対象物OBの加工面と平行な面において凹部の外周から2mm程度外側までの領域とした。
【0089】
実施例4においても実施例3と同様にレーザ加工の精度が、実施例1、及び2よりも優れていた。
【0090】
(実施例5)
実施例3において、加工対象物を1つでレーザ加工を行っていた点を、加工対象物を4つでレーザ加工を行った以外は、実施例3と同様にしてレーザ加工を行った。
【0091】
図4に実施例5の概要を示す。図4は、テーブル5に加工対象物OBを4つ固定したときの状態を加工面の上方から見た図である。図4中、符号1はレーザ光照射跡を示し、符号6はフォーカスサーボホールド領域を示し、符号7A、及び7Bはフォーカスサーボ切り替え点を示し、符号4は固定部材を示し、符号4Aは固定部材及び固定部材の近傍領域を示し、符号5はテーブルを示し、符号OBは加工対象物を示す。
図4に示されるように、実施例5では、実施例3と同様にして1つの加工対象物OBを、図に示される3箇所に位置する固定部材4で固定した。
前記固定部材4は、実施例3と同じものを用いた。
【0092】
なお、実施例5では、フォーカスサーボ制御の切り替えを、個々の加工対象物OBの縁から内側近傍に設定した境界位置(図4の符号7A、7B)(加工対象物OBのエッジから2mm程度の位置)で行い、フォーカスサーボホールド領域を、固定部材及び固定部材の近傍領域(図4の符号6(4A))とした。なお、固定部材の近傍領域は、実施例3と同じ範囲とした。
【0093】
実施例5では、複数の加工対象物OBにレーザ加工を行うことができ、実施例3と同様にレーザ加工の精度が、実施例1、及び2よりも優れていた。
【0094】
(実施例6)
実施例4において、加工対象物を1つでレーザ加工を行っていた点を、加工対象物を4つでレーザ加工を行った以外は、実施例4と同様にしてレーザ加工を行った。
【0095】
図5に実施例6の概要を示す。図5は、テーブル5に加工対象物OBを4つ固定したときの状態を加工面の上方から見た図である。図5中、符号1はレーザ光照射跡を示し、符号6はフォーカスサーボホールド領域を示し、符号7A、及び7Bはフォーカスサーボ切り替え点を示し、符号4Aは固定部材及び固定部材の近傍領域を示し、符号5はテーブルを示し、符号OBは加工対象物を示し、符号8は凹部及び凹部の近傍領域を示す。
図5に示されるように、実施例6では、実施例4と同様にして1つの加工対象物OBを、図に示される4箇所に位置する固定部材4で固定した。
前記固定部材4は、実施例4と同じものを用いた。
【0096】
なお、実施例6でも、フォーカスサーボ制御の切り替えを、個々の加工対象物OBの縁から内側の近傍に設定した境界位置(図5の符号7A、7B)(加工対象物OBのエッジから2mm程度の位置)で行い、フォーカスサーボホールド領域を、固定部材及び固定部材の近傍領域(図5の符号6(4A))、及び加工対象物が固定されていない部分における凹部及び凹部の近傍領域(図5の符号6(8))とした。なお、固定部材の近傍領域、及び凹部の近傍領域は、実施例4と同じ範囲とした。
【0097】
実施例6では、複数の加工対象物OBにレーザ加工を行うことができ、実施例4と同様にレーザ加工の精度が、実施例1、及び2よりも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のレーザ加工方法は、LEDウェハ、半導体ウェハ、及びマスター原盤の製造に関するレーザ加工等、レーザ加工分野に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 レーザ光照射跡
2 フォーカスサーボホールド点
3 フォーカスサーボホールド解除点
4 固定部材
4A 固定部材及び固定部材の近傍領域
5 テーブル
6 フォーカスサーボホールド領域
7A フォーカスサーボ切り替え点
7B フォーカスサーボ切り替え点
8 凹部及び凹部の近傍領域
200 光加工ヘッド
201 テーブル
300 スピンドルモータ
400 フィードモータ
OB 加工対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の加工対象物を固定するテーブルと、
前記テーブルを回転させる回転手段と、
前記テーブルにセットされた平板状の加工対象物にレーザ光を対物レンズで集光して照射する光加工ヘッドと、
前記テーブルを前記光加工ヘッドと相対的に前記テーブルの半径方向に移動する半径方向移動手段と、
前記加工対象物に照射したレーザ光の反射光から作成した信号を用いて前記レーザ光の焦点が前記加工対象物、及び前記テーブルのいずれかに合うよう制御するフォーカスサーボ制御手段とを有するレーザ加工装置であって、
前記テーブルが、前記加工対象物を固定する面に該面を基準として複数の凹部を有し、
前記加工対象物が、前記テーブルの凹部に脱着可能な固定部材を装着することによりテーブルに固定可能にされ、
前記フォーカスサーボ制御手段が、前記レーザ光の焦点が少なくとも前記固定部材を移動する間、前記加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置又は前記固定部材の近傍領域の境界位置の強度で制御信号をホールドする信号ホールド手段を有することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記回転手段により回転されるテーブルの回転位置を検出する回転位置検出手段と、
前記半径方向移動手段により移動されるテーブルの半径方向移動位置を検出する半径方向移動位置検出手段とを有し、
前記信号ホールド手段が、
加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置又は固定部材の近傍領域の境界位置が予め記憶され、
前記回転位置検出手段により検出されたテーブルの回転位置と、前記半径方向移動位置検出手段により検出されたテーブルの半径方向移動位置とにより、レーザ光の焦点が前記記憶された加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置又は固定部材の近傍領域の境界位置になったと判定したとき、制御信号をホールドする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記信号ホールド手段が、テーブル上の加工対象物が固定されていない部分における、凹部の近傍領域の境界位置が予め記憶され、
前記回転位置検出手段により検出されたテーブルの回転位置と、前記半径方向移動位置検出手段により検出されたテーブルの半径方向移動位置とにより、レーザ光の焦点が前記記憶されたテーブル上の加工対象物が固定されていない部分における、凹部の近傍領域の境界位置になったと判定したとき、制御信号をホールドする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記フォーカスサーボ制御手段が、加工対象物とテーブルとの段差でフォーカスサーボ制御が外れないように制御を行う第1のフォーカスサーボ制御手段と、レーザ光の焦点の加工対象物の表面への追従性が第1のフォーカスサーボ制御手段よりよい第2のフォーカスサーボ制御手段とからなり、
前記加工対象物の縁から内側の近傍に設定した境界位置で前記第1のフォーカスサーボ制御手段と、前記第2のフォーカスサーボ制御手段とを切り替えるフォーカスサーボ制御切替手段とを有する請求項1から3のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記固定部材が、テーブルに装着する側に棒状のピンを有する請求項1から4のいずれかに記載のレーザ加工装置。


【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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