説明

レーザ加工装置

【課題】簡易な構成であっても、ワークに加工用レーザ光が的確に照射されていることを把握可能なレーザ加工装置を提供すること。
【解決手段】このレーザ加工装置APは、第一軸AX1に沿って加工用レーザ光をワークWに照射するための加工用レーザ照射部10と、第一軸AX1とは異なる第二軸AX2に沿って、加工用レーザ光とワークWとの位置ずれを検出するための検知光を照射するための検知光照射部12と、検知光照射部12が照射した検知光がワークWに反射した反射光の進路上に配置され、その反射光の到達位置を認知可能なゲージ部14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに加工用レーザ光を照射しワークを加工するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに加工用レーザ光を照射しワークを加工するレーザ加工装置では、加工用レーザ光の焦点位置を把握し、レーザ加工装置にティーチングすることで自動化されたレーザ加工を行うことが可能になる。下記特許文献1では、レーザ加工装置を構成するロッドフレーム各部の温度を把握し、その温度変化によって加工用レーザ光の照射方向がどのようにずれるかを把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−208584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の技術では、加工用レーザ光の焦点位置を把握するために、レーザ変位計を用いることが行われていた。しかしながら、レーザ変位計が作業中にずれてしまえば、的確な加工ができず、しかも作業者がそれに気づかないおそれがある。また、レーザ変位計の計測距離が短い場合には、レーザ変位計をワークに近接配置する必要があり、加工部位周辺の空間を制限することになる。
【0005】
特に、鉄道車両のように多品種少量生産の場合には、様々な種類のワークに的確にレーザ加工を行う必要があることから、ワークに対して加工用レーザ光が的確に当たっていることを簡便且つ確実に把握する必要がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成であっても、ワークに加工用レーザ光が的確に照射されていることを把握可能なレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係るレーザ加工装置は、ワークに加工用レーザ光を照射しワークを加工するレーザ加工装置であって、第一軸に沿って加工用レーザ光をワークに照射するための加工用レーザ照射部を備え、更に、前記第一軸とは異なる第二軸に沿って、前記加工用レーザ光と前記ワークとの位置ずれを検出するための検知光を照射する検知光照射部と、前記検知光照射部が照射した検知光が前記ワークに反射した反射光の進路上に配置され、その反射光の到達位置を認知可能なゲージ部と、を備える。
【0008】
本発明によれば、加工用レーザ光が照射される第一軸とは異なる第二軸に沿って検知光を照射するので、ワークに当たった検知光は、加工用レーザ光とは異なる軌跡で反射される。従って、その反射光は、加工用レーザ光の影響を受けない場所まで導くことができる。そこで本発明では、反射光の到達位置を検知可能なゲージ部を設けることで、加工用レーザ光の影響をうけることなく、加工用レーザ光が的確な位置に照射されているか否かを認知することができる。例えば、検知光を加工用レーザ光とが交わる位置、すなわち第一軸と第二軸が交わる位置を加工用レーザ光の焦点位置とし、その焦点位置にワークが適切に配置されている場合の反射光の到達位置をゲージ部で認知できるように設定することができる。このように設定することで、ワークが加工用レーザ照射部から離れてしまった場合や、ワークが加工用レーザ照射部に近づいてしまった場合に、ゲージ部における反射光の到達位置を監視することで、それらを認知することができる。
【0009】
また本発明に係るレーザ加工装置では、前記検知光は可視光であることも好ましい。
【0010】
この好ましい態様によれば、ワークと加工用レーザ光とが当たる水平方向(ワーク表面に沿った方向)における位置ずれも、作業者が目視することができる。更に、ゲージ部における反射光の到達位置も目視することができるので、より簡便且つ確実に、ワークが加工用レーザ照射部から離れてしまった場合や、ワークが加工用レーザ照射部に近づいてしまった場合を認識できる。
【0011】
また本発明に係るレーザ加工装置では、前記加工用レーザ照射部は、前記第一軸に沿って前記ワークに影響を与えないティーチング用の設定光を照射可能なように構成され、前記検知光と前記設定光が所定位置で交わるように監視する監視装置を備えることも好ましい。
【0012】
この好ましい態様では、ティーチング用の設定光と、認知光とが所定位置で交わるように監視することができるので、加工用レーザ光の焦点位置において認知光と加工用レーザ光とが確実に交わるように設定することができる。
【0013】
また本発明に係るレーザ加工装置では、前記設定光は非可視光であることも好ましい。
【0014】
この好ましい態様では、設定光を非可視光とすることで、加工用レーザ光と同様の光学系を用いることができ、レーザ加工装置の構成を簡易なものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な構成であっても、ワークに加工用レーザ光が的確に照射されていることを把握可能なレーザ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態であるレーザ加工装置の概念構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
図1を参照しながら本発明の実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。図1は、本実施形態に係るレーザ加工装置APの概念構成を示す図である。図1に示すように、レーザ加工装置APは、加工用レーザ照射部10と、検知光照射部12と、ゲージ部14と、監視装置16と、を備える。
【0019】
加工用レーザ照射部10は、第一軸AX1に沿って加工用レーザ光をワークWに照射する部分である。第一軸AX1は、ワークWに対する垂線VLに対して、図中左側に角度θ4傾斜している。加工用レーザ照射部10は、加工用レーザ光に代えて、ワークWに影響を与えないティーチング用の設定光を照射可能なように構成されている。加工用レーザ照射部10は、第一軸AX1に沿って設定光を照射する。
【0020】
本実施形態の場合、加工用レーザ光も設定光も非可視光を用いている。従って、加工用レーザ光用の光学系と、設定光用の光学系とは連動するように構成されている。加工用レーザ光の波長と設定光の波長とは同一でなくてもよいけれども、互いの焦点距離は同一であるように構成される。もっとも、焦点距離の同一性は厳密なものではなく、0.1mm〜0.2mm程度のずれは許容されうるものである。
【0021】
検知光照射部12は、第一軸AX1とは異なる第二軸AX2に沿って、加工用レーザ光とワークWとの位置ずれを検出するための検知光を照射する。第二軸AX2は、第一軸AX1に対して、図中左側に角度θ3傾斜している。従って、第二軸AX2は、ワークWに対する垂線VLに対して、図中左側に角度θ1(θ1=θ3+θ4)傾斜している。
【0022】
第二軸AX2に沿って照射された検知光は、ワークWに当たって反射し、反射光となって第三軸AX3に沿って進む。従って、第二軸AX2は、ワークWに対する垂線VLに対して、図中右側に角度θ2(θ2=θ1)傾斜している。
【0023】
第三軸AX3上には、ゲージ部14が配置されている。ゲージ部14は、検知光照射部12が照射した検知光がワークWに反射した反射光の進路上に配置され、その反射光の到達位置を認知可能なものである。本実施形態の場合、検知光は可視光なので、ゲージ部14は、どこに可視光が当たったかを認知可能なように構成されている。
【0024】
ゲージ部14は、基準位置14cが略中央に形成され、基準位置14cを挟んだ両側に、近接側端部141及び離隔側端部142が形成されている。加工用レーザ照射部10及び検知光照射部12と、ワークWとの相対的な位置関係が的確(加工用レーザ光の焦点位置とワークWとが合致)であれば、反射光は基準位置14cに照射されるように構成されている。ワークWが的確な位置よりも下がっていると、検知光がワークWに当たる位置が図中右側にずれるので、反射光がゲージ部14に当たる位置は離隔側端部142に近づく。一方、ワークWが的確な位置よりも上がっていると、検知光がワークWに当たる位置が図中左側にずれるので、反射光がゲージ部14に当たる位置は近接側端部141に近づく。
【0025】
本実施形態の場合、加工用レーザ照射部10と検知光照射部12との相対的な位置関係は、加工用レーザ光の焦点位置において加工用レーザ光(設定光)と検知光とが交差するように設定されている。監視装置16は、この相対的な関係がずれていないか検出するための装置である。
【0026】
上述したように本実施形態に係るレーザ加工装置APは、ワークWに加工用レーザ光を照射しワークWを加工するレーザ加工装置であって、第一軸AX1に沿って加工用レーザ光をワークWに照射するための加工用レーザ照射部10を備え、更に、第一軸AX1とは異なる第二軸AX2に沿って、加工用レーザ光とワークWとの位置ずれを検出するための検知光を照射するための検知光照射部12と、検知光照射部12が照射した検知光がワークWに反射した反射光の進路上に配置され、その反射光の到達位置を認知可能なゲージ部14と、を備える。
【0027】
加工用レーザ光が照射される第一軸AX1とは異なる第二軸AX2に沿って検知光を照射するので、ワークWに当たった検知光は、加工用レーザ光とは異なる軌跡で反射される。従って、その反射光は、加工用レーザ光の影響を受けない場所まで導くことができる。そこで、反射光の到達位置を検知可能なゲージ14部を設けることで、加工用レーザ光の影響をうけることなく、加工用レーザ光が的確な位置に照射されているか否かを認知することができる。検知光を加工用レーザ光とが交わる位置、すなわち第一軸AX1と第二軸AX2が交わる位置を加工用レーザ光の焦点位置とし、その焦点位置にワークWが適切に配置されている場合の反射光の到達位置をゲージ部14で認知できるように設定することができる。このように設定することで、ワークWが加工用レーザ照射部10から離れてしまった場合や、ワークWが加工用レーザ照射部10に近づいてしまった場合に、ゲージ部14における反射光の到達位置を監視することで、それらを認知することができる。
【0028】
また、検知光は可視光であるので、ワークWと加工用レーザ光とが当たる水平方向(ワーク表面に沿った方向)における位置ずれも、作業者が目視することができる。更に、ゲージ部14における反射光の到達位置も目視することができるので、より簡便且つ確実に、ワークWが加工用レーザ照射部10から離れてしまった場合や、ワークWが加工用レーザ照射部10に近づいてしまった場合を認識できる。
【0029】
また、加工用レーザ照射部10は、第一軸AX1に沿ってワークWに影響を与えないティーチング用の設定光を照射可能なように構成され、検知光と設定光が所定位置で交わるように監視する監視装置16を備える。
【0030】
監視装置16は、ティーチング用の設定光と、認知光とが所定位置で交わるように監視することができるので、加工用レーザ光の焦点位置において認知光と加工用レーザ光とが確実に交わるように設定することができる。
【0031】
また、設定光は非可視光であるので、加工用レーザ光と同様の光学系を用いることができ、レーザ加工装置の構成を簡易なものとすることができる。
【0032】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0033】
AP:レーザ加工装置
10:加工用レーザ照射部
12:検知光照射部
14:ゲージ部
14c:基準位置
141:近接側端部
142:離隔側端部
16:監視装置
AX1:第一軸
AX2:第二軸
AX3:第三軸
W:ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに加工用レーザ光を照射しワークを加工するレーザ加工装置であって、
第一軸に沿って加工用レーザ光をワークに照射するための加工用レーザ照射部を備え、
更に、前記第一軸とは異なる第二軸に沿って、前記加工用レーザ光と前記ワークとの位置ずれを検出するための検知光を照射する検知光照射部と、
前記検知光照射部が照射した検知光が前記ワークに反射した反射光の進路上に配置され、その反射光の到達位置を認知可能なゲージ部と、を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記検知光は可視光であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記加工用レーザ照射部は、前記第一軸に沿って前記ワークに影響を与えないティーチング用の設定光を照射可能なように構成され、
前記検知光と前記設定光が所定位置で交わるように監視する監視装置を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記設定光は非可視光であることを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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