説明

レーザ加工装置

【課題】所定の幅を有するワークの幅方向端部のアシストガスによる変位を簡便な構成で抑制できるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置1は、加工ヘッド9と、加工ヘッド9を移動するXYステージ10と、ワークWの幅方向端部を支持する端部支持手段11と、ワークWの幅方向端部よりも内側を支持するコンベア8とを備える。端部支持手段11は、加工ヘッド9の移動に伴い、これと同期してワークWの長さ方向における加工ヘッド9の位置に対応しながら、コンベア8とは独立してワークWの長さ方向に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光とアシストガスを用いてワークを加工するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーザ加工装置において所定の幅を有する金属板状等のワークを切断加工する際には、ワークの加工部分に対し、加工ヘッドのノズルから、レーザ光が照射されるとともに、アシストガスが噴射される。このとき、加工部分の素材が、レーザ光により溶融又は蒸発し、アシストガスにより除去される。このため、加工されるワークの支持は、剣山式等の支持手段を用い、ワークを支持する部材にレーザ光が当たらないようにして行われる。
【0003】
このような加工を行う場合には、ワーク上の加工部分が、ノズルからのアシストガスにより順次ノズルから離れる方向に押されてから弾性により元の位置に戻るという現象が生じ易い。この現象が生じると、加工部分が振動し、ノズルとの距離が変動するので、各加工部分の加工条件を一定に維持できず、正確な加工が困難となる。
【0004】
このような不都合は、特に、ワークの端縁から加工が開始される場合に顕著となる。すなわち、ワーク端縁の加工開始部分では、剣山式等の支持手段による支持力が弱く、かつ急にアシストガスが噴射されるので、ノズルと加工部分との距離が急激に大きく変化する。このため、加工条件の不安定さは顕著となる。また、加工部分の大きな変位により、ノズルとワークが干渉する等の不具合も発生する。
【0005】
このようなアシストガスの噴射による不都合を極力回避するため、従来、低速で加工を行うようにしている。また、加工ヘッド下方の加工位置を囲うようにしてワークを局所的に支持する支持手段を設け、ワークの各加工部分を順次局所的に支持しながら加工を行うようにしたものも知られている。
【0006】
例えば、特許文献1のレーザ切断加工装置では、加工ヘッドのノズルを囲み、かつ下端部までの距離がレーザ光の焦点距離に一致するホルダと、被加工物を上方へ付勢してホルダに密着させる支持板とで被加工物の支持手段を構成している。加工に際しては、被加工物がXYステージにより支持され、加工ヘッド及びホルダと支持板との間で移動される。その際、ホルダと支持板は、被加工物のうち、ホルダと支持板との間に現に位置している部分を局所的に支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−103388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、コイル材を順次巻き戻して得られる鋼帯をワークとして加工する場合には、ワークに対して加工ヘッド側を移動させる必要がある。この場合、上述の特許文献1に記載のような局所的な支持手段をコイル材の加工に適用し、ワークの幅方向端部をも支持させるためには、加工ヘッドとともに支持手段を、ワークの幅方向端部をも含む広い範囲にわたって移動させる機構を設ける必要がある。
【0009】
このような機構は、大掛かりなものとなり、装置のコストを増大させるので、上述の局所的な支持手段は、コイル材をワークとして加工する場合には適していない。また、ワークを全体的に下側から支持する剣山式等の支持手段を用いる場合には、かかる支持手段と干渉するので、上述の局所的な支持手段は採用できない。
【0010】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点に鑑み、所定の幅を有するワークの幅方向端部のアシストガスによる変位を簡便な構成で抑制できるレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のレーザ加工装置は、所定の幅を有するワークを支持するワーク支持手段と、加工部分にアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射する加工ヘッドと、前記ワーク支持手段により支持されたワークの加工軌跡に沿って前記加工ヘッドを移動する加工ヘッド移動手段とを備え、前記ワーク支持手段は、前記ワークの幅方向端部を支持する端部支持手段と、該ワークの幅方向端部の内側を支持する内側支持手段とを備え、前記端部支持手段は、前記加工ヘッドの移動に伴い、これと同期して前記ワークの長さ方向における該加工ヘッドの位置に対応しながら、前記内側支持手段とは独立して前記ワークの長さ方向に移動することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、加工ヘッドが移動すると、ワークの長さ方向における加工ヘッドの位置も変化する。このとき、変化する加工ヘッドの該長さ方向の位置に対応する位置に、端部支持手段も同期して移動する。この端部支持手段の移動は、内側支持手段とは独立してワークの長さ方向に対して行われる。
【0013】
このため、加工ヘッドがワークの幅方向端部を加工するときには、加工ヘッドのワーク長さ方向の位置に対応しながら端部支持手段が移動するので、端部支持手段は、その加工部分の近傍においてワークを支持することができる。したがって、本発明によれば、ワークの幅方向端部における加工部分の支持力を強化し、該加工部分の変位を抑制することができる。
【0014】
また、端部支持手段は、ワークの長さ方向における加工ヘッドの移動と同期して移動するので、該加工ヘッドの位置に対応する位置においてのみワークの幅方向端部を支持すれば足りる。したがって、端部支持手段は、簡便に構成することができる。
【0015】
さらに、端部支持手段によりワークの幅方向端部を支持し、内側支持手段によりワークの幅方向端部の内側を支持するので、内側支持手段と干渉することなく端部支持手段を設けることができる。
【0016】
本発明においては、前記加工ヘッド移動手段は、前記加工ヘッドを前記ワークの幅方向に駆動する第1駆動機構と、該第1駆動機構を該ワークの長さ方向に駆動する第2駆動機構とを備え、前記第1駆動機構は、前記加工ヘッドを前記ワークの幅方向に移動自在に案内するガイド部材を備え、前記端部支持手段は、前記ガイド部材の端部に設けられていてもよい。
【0017】
これによれば、第1駆動機構のガイド部材の端部に端部支持手段を設けるだけで、端部支持手段を、ワークの長さ方向における加工ヘッドの位置に対応する位置に、同期して移動させることができる。また、その移動を、内側支持手段とは独立してワークの長さ方向に対して行うことができる。
【0018】
また、本発明においては、前記端部支持手段は、前記ワークの幅方向端部を、該ワークの面に垂直な方向において非接触で保持する保持手段を備えていてもよい。これによれば、ワークの幅方向端部を、ワークの長さ方向については移動自在としながら、適切に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1の装置のXYステージ部分の構成を模式的に示す図である。
【図3】図1の装置においてワークの幅方向端部が加工される様子を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1に示すように、実施形態のレーザ加工装置1は、ワークWを供給するワーク供給部2と、ワーク供給部2から供給されるワークWに対して切断加工を施すワーク加工部3と、ワーク加工部3においてワークWから切断されたブランク4を次の工程に搬送するマグネットコンベア5とを備える。
【0021】
ワーク供給部2は、鋼帯を巻回したコイル材6と、コイル材6をロール間に通してコイル材6の歪を矯正するレベラ7とを備える。ワーク加工部3へのワークWの供給は、コイル材6を巻き戻し、レベラ7により巻き癖等の歪を除去しながら、ワークWとしてワーク加工部3へ送ることにより行われる。
【0022】
ワーク加工部3は、ワーク供給部2から供給されるワークWを支持して搬送するコンベア8と、コンベア8上に支持されたワークWに対して切断加工を行うための加工ヘッド9と、加工ヘッド9を、ワークWの幅方向であるX方向及び長さ方向であるY方向に移動するXYステージ10と、XYステージ10に設けられた2つの端部支持手段11とを備える。2つの端部支持手段11は、コンベア8上に支持されたワークWの幅方向両端部をそれぞれ支持する。
【0023】
XYステージ10は、本発明における加工ヘッド移動手段に対応する。コンベア8は、本発明における内側支持手段に対応する。また、端部支持手段11及びコンベア8により、本発明におけるワーク支持手段が構成される。
【0024】
コンベア8は、剣山式のものであり、ワークWを下面から支持する剣山状の多数の支持部材12を備える。コンベア8は、ワーク供給部2から供給されるワークWの幅方向両端部よりも内側の部分を、支持部材12により、ワークWの下面側から支持する。各支持部材12によるワークWの支持は、加工ヘッド9からのレーザ光が当たらない位置において行われる。支持部材12がレーザ光により影響を受けるのを回避するためである。
【0025】
XYステージ10は、コンベア8上に支持されたワークWの加工軌跡に沿って加工ヘッド9を駆動する。その際、加工ヘッド9は、ワークWに対し、レーザ光の照射及びアシストガスの噴射を行い、切断加工を施す。
【0026】
図2は、ワーク加工部3におけるXYステージ部分を示す。図2において、(a)はXYステージ10を下から見た様子、(b)は(a)の部分をY方向に沿ってワークWの搬送方向下流側から見た様子を示している。
【0027】
図2に示すように、XYステージ10は、H−タイプのガントリステージであり、加工ヘッド9をX方向に駆動する第1駆動機構13と、第1駆動機構13をY方向に駆動する第2駆動機構14とを備える。第1駆動機構13は、加工ヘッド9を、X方向に沿って設けられたX方向ガイド部材15によりX方向に案内し、図示していないサーボモータを用いてX方向に駆動する。
【0028】
第2駆動機構14は、Y方向に沿った2本のY方向ガイド部材16によりX方向ガイド部材15の両端部をY方向に案内し、図示していないサーボモータを用いてX方向ガイド部材15をY方向に駆動する。これにより、第1駆動機構13は、Y方向に駆動される。
【0029】
X方向ガイド部材15の両端部の下面側には、上述の2つの端部支持手段11をそれぞれ構成する2つのスライダ17と、スライダ17により駆動される2つの保持手段18とが設けられる。各スライダ17は、必要に応じ、対応する保持手段18をX方向に駆動し、該保持手段18の位置を調整する。
【0030】
各保持手段18は、Y方向に沿って配置された2つのベルヌーイパッド18aを備える。コンベア8の支持部材12によって支持されたワークWの各幅方向端部は、対応する保持手段18により、ベルヌーイパッド18aを介して保持される。この保持は、ベルヌーイの原理に従い、非接触で行われる。各保持手段18のY方向位置は、図2(a)のように、各保持手段18の2つのベルヌーイパッド18aの中間に加工ヘッド9のY方向位置が位置するように設定される。
【0031】
この構成において、ワークWの切断加工を行う際には、ワーク供給部2により、コイル材6がレベラ7で平板化され、ワークWとして順次、ワーク加工部3に供給される。
【0032】
ワーク加工部3では、供給されるワークWを、コンベア8が支持部材12を介して支持し、搬送する。この搬送は、所定のタイミング毎に、ワークWの所定長さ毎の加工単位が、XYステージ10下の加工位置に順次位置するように行われる。また、必要に応じ、各端部支持手段11における保持手段18がワークWの幅方向端部を適切に支持できるように、保持手段18のX方向位置が、スライダ17により調整される。
【0033】
切断加工は、加工位置に順次位置されるワークWの加工単位毎に行われる。すなわちワークWの加工単位が加工位置に位置されると、XYステージ10により加工ヘッド9が所定の加工軌跡に沿って移動される。この間、加工ヘッド9からレーザ光がワークW上に照射され、その照射位置にアシストガスが噴射される。これにより、加工軌跡に沿ってワークWが切断加工される。加工単位についての切断加工が完了すると、次の加工単位がコンベア8により加工位置に位置づけられ、同様にして切断加工が行われる。
【0034】
この切断加工に際しては、XYステージ10上の各端部支持手段11により、ワークWの幅方向両端部が支持される。このとき、加工ヘッド9のY方向位置は、常に、各端部支持手段11における2つのベルヌーイパッド18aの中間に存在するので、各端部支持手段11は、加工ヘッド9のY方向位置に対し、対応する位置に同期して位置しながら、コンベア8とは独立してY方向に移動する。
【0035】
したがって、加工ヘッド9がワークWの幅方向端部を加工するときには、必ずその加工部分が、端部支持手段11の保持手段18により保持され、支持される。また、この支持は、加工ヘッド9の移動に応じ、コンベア8によるワークWの支持とは独立して支持位置を変えながら行われる。
【0036】
図3は、ワークWの幅方向端部が加工される様子を示す。図3のように、ワークWの幅方向端部を加工軌跡19に沿って加工する際、保持手段18を有しない従来のレーザ加工装置の場合には、ワークWの幅方向端部が剣山式等の支持部材により支持されている場合であっても、該幅方向端部ではワークWの内側に比べ、加工部分の周囲が均等に支持されず、支持力も弱い。このため、加工ヘッドからのアシストガスの噴射によって、加工部分が変位し、振動が生じ易い。
【0037】
特に、加工ヘッドからのレーザ光がワークWの端縁を外側から横切るようにしてワークWの切断を開始する場合には、アシストガスがワークW端部の加工部分に突然噴射されるので、ワークWの加工部分が急激に激しく振動する。加工部分が振動すると、加工部分がレーザ光の焦点位置から外れて加工を適切に行うのが困難となったり、加工ヘッドにワークWが衝突したりする。
【0038】
これに対し、本実施形態では、ワークWの幅方向端部を加工するときには、図3に示すように、加工部分の近傍が、保持手段18により支持される。この支持は、保持手段18の2つのベルヌーイパッド18aにより、加工部分のY方向に沿った両側において行われる。
【0039】
このとき、各ベルヌーイパッド18aは、ワークWの対応部分を、裏面から非接触で吸着し、ワークWの面に垂直な方向について保持する。これにより、該対応部分は、Y方向に移動自在に支持される。この支持は、加工ヘッド9の移動に応じ、Y方向に支持位置を変えながら行われる。
【0040】
この保持手段18による支持によって、幅方向端部の加工部分におけるアシストガスの噴射による変位は効果的に抑制される。ワークWの端縁を外側から横切るようにして加工を開始する場合でも、同様に加工部分の変位は抑制される。したがって、ワークWの幅方向端部の加工は、加工条件を極力一定に維持しながら適切に行われる。
【0041】
図1のように、このような切断加工によって順次得られるブランク4は、コンベア8からマグネットコンベア5に受け渡され、マグネットコンベア5により、順次次のプレス加工等の工程に供するために移送される。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、端部支持手段11は、常に加工ヘッド9のY方向位置に対応するY方向位置に位置するので、加工ヘッド9がワークWの幅方向端部を加工するときには、常に加工部分を端部支持手段11により支持することができる。このため、ワークWの幅方向端部の加工に際しては、加工部分の支持力を強化することができる。これにより、アシストガスの噴射による該加工部分の振動を抑制し、加工条件を適切に維持することができる。
【0043】
また、端部支持手段11をX方向ガイド部材15の両端部に設けたので、ワークWの幅方向端部を、加工ヘッド9のY方向位置に対応する位置において、コンベア8によるワークWの支持とは独立して支持位置を変えながら支持することができる。また、このようなワークWの幅方向端部の支持を、簡便な構成により実現することができる。
【0044】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、実施形態においては、内側支持手段として、支持部材12による剣山式の支持手段を用いているが、他の支持手段、例えば、ハニカム式の支持手段を用いてもよい。
【0045】
また、上述の実施形態においては、保持手段18として、ベルヌーイパッド18aを用いた非接触式のものを採用しているが、吸着手段としてベルヌーイパッド18aを用いたものに限らず、マグネット等、他の吸着手段を用いたものでもよい。また、ワークWとの摺動抵抗や、ワークWとの接触によるキズを抑制するためには、非接触式のものが好ましいが、接触式のものでもよい。
【符号の説明】
【0046】
8…コンベア(内側支持手段)、9…加工ヘッド、10…XYステージ(加工ヘッド移動手段)、11…端部支持手段、13…第1駆動機構、14…第2駆動機構、18…保持手段、19…加工軌跡、W…ワーク。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅を有するワークを支持するワーク支持手段と、
加工部分にアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射する加工ヘッドと、
前記ワーク支持手段により支持されたワークの加工軌跡に沿って前記加工ヘッドを移動する加工ヘッド移動手段とを備え、
前記ワーク支持手段は、前記ワークの幅方向端部を支持する端部支持手段と、該ワークの幅方向端部の内側を支持する内側支持手段とを備え、
前記端部支持手段は、前記加工ヘッドの移動に伴い、これと同期して前記ワークの長さ方向における該加工ヘッドの位置に対応しながら、前記内側支持手段とは独立して前記ワークの長さ方向に移動することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記加工ヘッド移動手段は、前記加工ヘッドを前記ワークの幅方向に駆動する第1駆動機構と、該第1駆動機構を該ワークの長さ方向に駆動する第2駆動機構とを備え、
前記第1駆動機構は、前記加工ヘッドを前記ワークの幅方向に移動自在に案内するガイド部材を備え、
前記端部支持手段は、前記ガイド部材の端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記端部支持手段は、前記ワークの幅方向端部を、該ワークの面に垂直な方向において非接触で保持する保持手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate