説明

レーザ手術装置

【課題】レーザ光にロスが生じることなく、しかも治療部位を明るく観察することのできるレーザ手術装置を提供する。
【解決手段】治療用のレーザ光を発振する治療用レーザ光源11と、照明光学系20と、観察光学系30と、治療部位Eaに照準を合わせるための照準光を発振する照準用レーザ光源40と、治療用レーザ光源11により発振されたレーザ光と照準用レーザ光源40により発振された照準光を導光する光ファイバ12と、光ファイバ12に導光されたレーザ光と照準光を治療部位Eaに照射する照射光学系50とを備え、 前記照準光を反射する第1反射部材61と、前記レーザ光を反射する第2反射部材62とを備え、光ファイバ12の出射端面12bから出射される光を治療部Eaに向けて反射させる反射位置へ第1反射部材61と第2反射部材62のどちらか一方を切り換え可能に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光発振手段で発振したレーザ光を治療部位に照射するレーザ手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、照準光で治療部位を照射してその照射位置を照準した後、その照射位置にレーザ光を照射するレーザ手術装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかるレーザ手術装置は、治療用のレーザ光を発振するレーザ光源と、治療部位を照明する照明光学系と、その治療部位を観察するための観察光学系と、治療部位を照準するための照準光を発振する照準用レーザ光源と、レーザ光源および照準用レーザ光源により発振されたレーザ光および照準光を導光する光ファイバと、この光ファイバに導光されたレーザ光と照準光を治療部位に照射する照射光学系とを備えている。
【0004】
照射光学系は、光ファイバの出射端から出射されるレーザ光を治療部位に向けて反射させる反射ミラーを備え、この反射ミラーで反射されたレーザ光は対物レンズを介して治療部位を照射することになる。
【特許文献1】特開2005−46247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなレーザ手術装置では、反射ミラーが対物レンズの光軸上に設けられているため、図8に示すように、反射ミラー1を大きくすると観察光学系の観察光路2を遮ることになり、治療部位を十分な明るさで観察することができなくなってしまう。逆に、観察光路を遮らないように反射ミラーを小さくすると、レーザ光3にロスが生じるという問題がある。
【0006】
この発明の目的は、レーザ光にロスが生じることなく、しかも治療部位を明るく観察することのできるレーザ手術装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、治療用のレーザ光を発振するレーザ光発振手段と、治療部位を照明する照明光学系と、その治療部位を観察する観察光学系と、前記治療部位に照準を合わせるための照準光を発振する照準光出力手段と、前記レーザ光発振手段により発振されたレーザ光と前記照準光出力手段により発振された照準光を導光する光ファイバと、前記光ファイバに導光されたレーザ光と照準光を前記治療部位に照射する照射光学系とを備えたレーザ手術装置において、
前記照準光を反射する第1光学反射部材と、前記レーザ光を反射する第2光学反射部材とを備え、
前記光ファイバの出射端から出射される光を前記治療部に向けて反射させる反射位置へ前記第1光学反射部材と第2光学反射部材のどちらか一方を切り換え可能に配置できるようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、第1光学反射部材と第2光学反射部材とのなす角度が約45°でこれらが一体となって回動することにより、前記反射位置へ切り換え可能に配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、第1,第2光学反射部材が前記反射位置に配置されたことを検知するセンサを設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、第1光学反射部材は、前記照準光を反射させ且つ透過する特性を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、第2光学反射部材は、観察光学系の観察光路から外れた部分に照準光を全反射する特性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、レーザ光にロスが生じることなく、しかも治療部位を明るく観察することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明に係るレーザ手術装置の実施の形態である一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0014】
[構成]
図1に示すレーザ手術装置10は、治療用レーザ光を発振する治療用レーザ光源(レーザ光発振手段)11と、被検眼Eの治療部位Eaを照明するための照明光学系20と、その治療部位Eaを観察するための観察光学系30と、治療部位に照準を合わせるための照準レーザ光(照準光)を発振する照準用レーザ光源(照準光出力手段)40と、治療用レーザ光源11から発振された治療用レーザ光と照準用レーザ光源40から発振された照準レーザ光を導光する光ファイバ12と、この光ファイバ12に導光されたレーザ光と照準光を治療部位Eaに照射するための照射光学系50とを備えている。
【0015】
治療用レーザ光源11は、532nmの波長の治療用レーザ光を発振するものである。この治療用レーザ光は、ダイクロイックミラー13を透過して集光レンズ14により光ファイバ12の入射端面12aに集光されて光ファイバ12内に導入される。
【0016】
照準用レーザ光源40は、635nmの波長の照準用レーザ光を発振するものである。この照準用レーザ光は、ダイクロイックミラー13により反射されて集光レンズ14により光ファイバ12の入射端面12aに集光されて光ファイバ12内に導入される。光ファイバ12内に導入されたレーザ光は導光されて出射端面(出射端)12bから出射される。
【0017】
照射光学系50は、光ファイバ12の出射端面12bから出射されるレーザ光を集光して平行光束にするレンズ51と、このレンズ51により平行光束にされたレーザ光を集光する集光レンズ52と、被検眼Eにおける合焦位置でのレーザ光のスポット径の大きさを変更するためのレンズ53,54と、このレンズ53,54を透過したレーザ光を平行光束にするレンズ55と、このレンズ55により平行光束にされたレーザ光を被検眼Eに向けて反射させる反射手段60と、この反射手段60で反射されたレーザ光を被検眼Eの治療部位Eaへ集光させる対物レンズ56とを有している。なお、Pは被検眼Eに装着したコンタクトレンズであり、これは被検眼のパワーを打ち消すためのものである。
【0018】
反射手段60は、45度の入射にて635nmの波長の光を50%透過し50%反射させ且つその波長以外の光を全透過する第1反射部材61と、45度の入射にて532nmの波長の光を全反射し且つ635nmの波長の光を50%透過し50%反射させるとともに532nmおよび630nmの波長以外の波長域の光を全透過させる第2反射部材62とを有している(図5参照)。
【0019】
この第1反射部材61と第2反射部材62は、所定の角度をなして一体に連結されており、第1,第2反射部材61,62は一体に回動して図2に示す位置へ切り換えられるようになっている。すなわち、対物レンズ56の光軸に対して45°の角度となる位置に配置されるようになっている。この第1,第2反射部材61,62の位置の切り換えは例えばソレノイドなどで行われる。
【0020】
なお、治療用レーザ光が観察光学系に入らないように第1,第2反射部材61,62のなす角度は45°より小さく設定されている。
【0021】
また、第1,第2反射部材61,62が図2に示す位置へ切り換えられると、図示しないマイクロスイッチ(センサ)により検知されるようになっている。
【0022】
照明光学系20は、ハロゲンランプ等の照明光源21と、この照明光源21から射出された照明光を反射して被検眼Eの瞳孔へ入射させる分割ミラー23とを有している。
【0023】
観察光学系30は、左右一対の接眼レンズ系31と、結像レンズ32と、532nmの波長の光をカットするフィルタFと、変倍光学系33とを有している。
[動 作]
次に、上記のように構成されるレーザ手術装置10の動作について説明する。
【0024】
先ず、図1に示すように、反射手段60の第1反射部材61を光路中に配置させておくとともに照明光源21を点灯させる。この照明光源21から発光された照明光が分割ミラー23を介して被検眼Eの瞳孔に入射し、被検眼Eの眼底を照明する。眼底の反射光は、対物レンズ56,第1反射部材61,変倍光学系33,フィルタFおよび結像レンズ32等を介して接眼レンズ系31に達する。検者は接眼レンズ系31を通して眼底を観察し、治療部位Eaを見付ける。
【0025】
この際、第1反射部材61は、635nmの波長以外の波長域の光を全透過するので、眼底を明るく観察することができ、このため治療部位Eaは見付け易いものとなる。
【0026】
治療部位Eaを見付けたら、照準用レーザ光源40から照準用レーザ光を発振させる。この照準用レーザ光は、ダイクロイックミラー13により反射されて集光レンズ14により光ファイバ12の入射端面12aに集光され、光ファイバ12内に導入される。光ファイバ12内に導入された照準用レーザ光は光ファイバ12の出射端面12bから出射される。
【0027】
出射端面12bから出射された照準用レーザ光は、各レンズ51〜55を透過して第1反射部材61に達し、ここで反射して対物レンズ56により被検眼Eの眼底に照射される。この眼底で反射される照準用レーザ光は、対物レンズ56,第1反射部材61(50%透過),変倍光学系33,フィルタFおよび結像レンズ32等を介して接眼レンズ系31に達し、検者は照準用レーザ光の照射位置すなわち眼底に形成される照準用レーザ光のスポットを観察することができることになる。
【0028】
そして、光学系20,30,50を備えた本体を左右上下に移動させてそのスポットを治療部位Eaに一致させる。スポットが治療部位Eaに一致したら、図2に示すように、反射手段60を回動させて第1,第2反射部材61,62を光路中に配置させる。これにより、レンズ51〜55を透過してきた照準用レーザ光は第2反射部材62により反射されることになる。
【0029】
ここで、第1反射部材61は、図3に示すように、対物レンズ56の光軸に対して45°の傾きで光路に配置されているとき、630nmの波長の光を反射させ他の波長域の光を透過するが、図4に示すように、対物レンズ56の光軸に対して直交する位置に配置されると、特性が変わって640nmの波長の光を反射させ他の波長域の光を透過するようになる。
【0030】
このため、図2に示す第2反射部材62で反射した照準用レーザ光は第1反射部材61を透過し、対物レンズ56により被検眼Eの治療部位Eaを照射する。この治療部位Eaで反射する照準用レーザ光は、対物レンズ56および第1,第2反射部材61,62(50%透過)を透過し、変倍光学系33,フィルタFおよび結像レンズ32等を介して接眼レンズ系31に達するので、検者は照準用レーザ光の照射位置を確認することができる。
【0031】
この際も、532nm,640nm以外の波長域の光は第2反射部材62を透過するので、眼底を観察することできることになる。
【0032】
次に、治療用レーザ光源11から治療用レーザ光を発振させる。この場合、マイクロスイッチが第1,第2反射部材61,62を検知していないときには、治療用レーザ光源11が治療用レーザ光を発振しないようにしておく。
【0033】
治療用レーザ光源11から発振された治療用レーザ光は、ダイクロイックミラー13を透過して集光レンズ14により光ファイバ12の入射端面12aに集光されて光ファイバ12内に導入され、光ファイバ12の出射端面12bから出射される。
【0034】
出射端面12bから出射された治療用レーザ光は、各レンズ51〜55を透過して第2反射部材62に達し、ここで全反射して第1反射部材61を透過し、対物レンズ56により被検眼Eの治療部位Eaを照射する。
【0035】
このように、治療用レーザ光は第2反射部材62で全反射し且つ第1反射部材61を全透過し、しかも観察光学系30の観察光路(図8参照)にかかっても問題がないことにより、治療用レーザ光の光束の全てを第2反射部材62で反射させることができるので、治療用レーザ光のロスをなくして治療部位Eaを照射することができる。
【0036】
治療部位Eaで反射する治療用レーザ光は、対物レンズ56および第1反射部材61を透過するが、第2反射部材62は図5に示す特性を有しているので、532nmの波長の治療用レーザ光は、第2反射部材62で全反射し、また、532nmの波長の光をカットするフィルタFが観察光学系30に配置されていることにより、検者の観察眼に到達してしまうことはない。治療用レーザ光の照射中も、532nm,630nm以外の波長域の光は第2反射部材62を全透過するので、眼底を観察することできる。
【0037】
図6は、第2反射部材162の他の例を示したものであり、この第2反射部材162の中央部(2つの観察光路に挟まれる部分)に、照準用レーザ光を全反射させる照準光全反射帯162Aを設けたものである。この照準光全反射帯162Aの両側の反射ミラー部分162Bは、図7に示すように532nmの波長の光を全反射し、他の波長の光を全透過するようになっている。
【0038】
この第2反射部材162を用いると、照準光全反射帯162Aで照準用レーザ光が全反射し、反射ミラー部分162Bが630nmの波長の光を透過することにより、治療用レーザ光を照射している間でも眼底上の照準位置が分かり易いものとなる。
【0039】
この発明は上記実施例に限らず、この発明を逸脱しない範囲で種々設計変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明にかかるレーザ手術装置の構成を示した光学配置図である。
【図2】第1,第2反射部材を切り換えた状態を示した光学配置図である。
【図3】第1反射部材の光学特性を示した説明図である。
【図4】第1反射部材の位置を切り換えた場合の光学特性を示した説明図である。
【図5】第2反射部材の光学特性を示した説明図である。
【図6】第2反射部材の他の例を示した説明図である。
【図7】図6に示す第2反射部材の反射ミラー部分の光学特性を示した説明図である。
【図8】反射ミラーに対する観察光学系の観察光路とレーザ光との位置関係を示した説明図である。
【符号の説明】
【0041】
10 レーザ手術装置
11 治療用レーザ光源(レーザ光発振手段)
12 光ファイバ
12b 出射端面(出射端面)
20 照明光学系
30 観察光学系
40 照準用レーザ光源(照準光出力手段)
50 照射光学系
61 第1反射部材
62 第2反射部材
Ea 治療部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用のレーザ光を発振するレーザ光発振手段と、治療部位を照明する照明光学系と、その治療部位を観察する観察光学系と、前記治療部位に照準を合わせるための照準光を発振する照準光出力手段と、前記レーザ光発振手段により発振されたレーザ光と前記照準光出力手段により発振された照準光を導光する光ファイバと、前記光ファイバに導光されたレーザ光と照準光を前記治療部位に照射する照射光学系とを備えたレーザ手術装置において、
前記照準光を反射する第1光学反射部材と、前記レーザ光を反射する第2光学反射部材とを備え、
前記光ファイバの出射端から出射される光を前記治療部に向けて反射させる反射位置へ前記第1光学反射部材と第2光学反射部材のどちらか一方を切り換え可能に配置できるようにしたことを特徴とするレーザ手術装置。
【請求項2】
第1光学反射部材と第2光学反射部材とのなす角度が約45°でこれらが一体となって回動することにより、前記反射位置へ切り換え可能に配置されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ手術装置。
【請求項3】
第1,第2光学反射部材が前記反射位置に配置されたことを検知するセンサを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザ手術装置。
【請求項4】
第1光学反射部材は、前記照準光を反射させ且つ透過する特性を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のレーザ手術装置。
【請求項5】
第2光学反射部材は、観察光学系の観察光路から外れた部分に照準光を全反射する特性を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載のレーザ手術装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−179(P2010−179A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160404(P2008−160404)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】