レーザ溶接装置およびレーザ溶接方法
【課題】 ワークを2枚の板材の重ね継手でレーザ溶接を行う際の板材相互の隙間を適正に確保し、溶接品質を向上させる。
【解決手段】 亜鉛メッキ鋼板からなる2枚の板材Wu,Wd相互間に、上側の板材Wuに形成した突起部5によって隙間Sを形成する。突起部5近傍の溶接進行方向と直交する側のワークWに対し、2枚の板材Wu,Wd相互を接触させるべく加圧ローラ11により加圧し、この加圧状態で、加圧ローラ11と突起部5との間のレーザ光照射部位7近傍に、隙間Sを確保した状態で2枚の板材Wu,Wd相互が接触する方向に加圧ピン15により加圧する。加圧ピン15は、レーザ光照射部位7より溶接進行方向前側に位置する。
【解決手段】 亜鉛メッキ鋼板からなる2枚の板材Wu,Wd相互間に、上側の板材Wuに形成した突起部5によって隙間Sを形成する。突起部5近傍の溶接進行方向と直交する側のワークWに対し、2枚の板材Wu,Wd相互を接触させるべく加圧ローラ11により加圧し、この加圧状態で、加圧ローラ11と突起部5との間のレーザ光照射部位7近傍に、隙間Sを確保した状態で2枚の板材Wu,Wd相互が接触する方向に加圧ピン15により加圧する。加圧ピン15は、レーザ光照射部位7より溶接進行方向前側に位置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱によりガスが発生する被覆層にて表面処理されたワークを2枚の板材の重ね継手でレーザ溶接を行うレーザ溶接装置およびレーザ溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ溶接などの局部加熱による溶接は、ワークに対する入熱が少ないことからワークの溶接歪みが少ない溶接方法として、突き合わせ溶接や重ね溶接などに用いられている。入熱が少ない理由は、レーザビームなどの局部加熱源を小さな点に集めてエネルギを集中することができ、高速で溶接可能だからである。
【0003】
このようなレーザ溶接では、ワークのエネルギ入熱部のみを溶融して接合を行うため、ワークの溶融量が少なく、継手隙間を小さくする必要がある。
【0004】
また、亜鉛メッキ鋼板をレーザ溶接する際には、特に重ね溶接において、ワーク表面の亜鉛メッキ層が蒸発、飛散して溶接欠陥(ブローホールや気泡)が生じることから、これを防ぐためにワーク相互間に適正な隙間を設ける必要があり、この隙間を設けるために、ワークに突起部を設けることが一般的に行われている。
【0005】
例えば、下記特許文献1に記載のものは、重ね合わせた2枚のメッキ鋼板の上板に、下板に向けて突出する突起部を設け、この突起部を下板に接触させることでメッキ鋼板相互に隙間を形成している。この際、突起部近傍の上板を治具により下板に向けて加圧し、突起部の高さに対応した隙間を確保するようにしている。
【特許文献1】特開2001−162388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の技術では、突起部,加圧部および溶接部の位置関係と、突起部の高さに応じて隙間が変化することから、これらの管理を精度よく行う必要があり、このため隙間を適正に確保することが困難であり、隙間が変化することで、溶接ビード形状が不安定となって溶接品質の低下を招いている。
【0007】
そこで、本発明は、ワークを2枚の板材の重ね継手でレーザ溶接を行う際の板材相互の隙間を適正に確保し、溶接品質を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、加熱によりガスが発生する被覆層にて表面処理されたワークを2枚の板材の重ね継手でレーザ溶接を行うレーザ溶接装置において、前記2枚の板材相互間に隙間を形成するための隙間確保部を設けるとともに、この隙間確保部の近傍に、前記2枚の板材相互を接触させるべく加圧する第1加圧部を設け、この第1加圧部と前記隙間確保部との間における前記2枚の板材相互間に隙間を有するレーザ光照射部位近傍に対し、前記隙間を確保した状態で前記2枚の板材相互が接触する方向に加圧し、かつ前記第1加圧部に対して加圧方向に規定寸法ずれた位置に設置した第2加圧部を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、隙間確保部と2枚の板材相互を接触させるべく加圧する第1加圧部との間のレーザ光照射部位近傍において、第2加圧部により、2枚の板材相互が接触する方向に加圧して、隙間を確保するようにしたので、隙間確保部,第1加圧部およびレーザ光照射部位の相互の位置関係や、隙間確保部の寸法が多少変化したとしても、第1加圧部に対して加圧方向に規定寸法ずれた位置にある第2加圧部による加圧によって、レーザ光照射部位での隙間を適正に確保することができ、溶接品質を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態を示すレーザ溶接装置の側面図、図2は、図1のA矢視方向から見た要部の正面図である。ここでのワークWは、加熱によりガスが発生する、例えば亜鉛が表面処理としてメッキされている亜鉛メッキ鋼板である2枚の板材Wu,Wdを重ね合わせたもので、この2枚の板材Wu,Wdに対し、レーザ加工ヘッド1から照射されるレーザ光3により重ね継手溶接を行う。
【0012】
そして、ここでの上部に位置する板材Wuには、例えばエンボス加工によって形成した隙間確保部としての突起部5を、下部の板材Wdに向けて突出して設けており、この突起部5の図2中で右側の近傍にレーザ光3を照射し、ここをレーザ照射部位7としている。
【0013】
レーザ加工ヘッド1に一端を接続した光ファイバ5の他端に設けるレーザ発振器としては、例えばYAGレーザを用い、図1中の矢印Bで示す右方向(図2中では紙面手前方向)にレーザ加工ヘッド1が移動しながら溶接を行う。
【0014】
図2に示すように、レーザ加工ヘッド1の下部側面にはローラ保持ブロック9を装着し、ローラ保持ブロック9の先端には、ローラ保持ブラケット10の上部を取り付ける。そしてローラ保持ブラケット10の下部側面には、第1加圧部を構成する加圧ローラ11を、支持軸13を介して回転可能に取り付ける。
【0015】
この加圧ローラ11は、レーザ照射部位7に対し突起部5と反対側に位置しており、この位置でワークWに対して上側の板材Wuを加圧し、この加圧した板材Wuを下側の板材Wdに接触させる。これにより、突起部5と加圧ローラ11との間の板材Wu,Wd相互間に、図2中でほぼ三角形状となる隙間Sを形成する。
【0016】
また、レーザ加工ヘッド1の下部における溶接進行方向(図1中の矢印B方向)前方側には、第2加圧部となる加圧ピン15の上部を取り付け、加圧ピン15の下部は、図1に示すようにレーザ光3側に向けて屈曲させ、その下端により図2のように上側の板材Wuを加圧する。加圧ピン15による板材Wuへの加圧位置は、図1に示すようにレーザ光3によるレーザ照射部位7に対して溶接進行方向Bの前方で、かつ溶接進行方向の同一直線上に位置している。
【0017】
加圧ピン15の下端は、板材Wu,Wd相互を密着させるように加圧する加圧ローラ11の下端より、例えばh=0.2〜0.3mm上方に規定寸法ずれた位置に設置し、加圧ピン15による加圧時には、板材Wuと板材Wdとの間の隙間が適正なものとなるようにする。
【0018】
上記したレーザ加工ヘッド1は、レーザ溶接用ロボット19により保持されて上記した溶接進行方向Bに向けて移動する。レーザ溶接用ロボット19はヘッド保持ブラケット21を備えている。ヘッド保持ブラケット21は、基部23の先端に、図1中で上下方向に延長されるシリンダ取付部25を備えるとともに、シリンダ取付部25の上端に図1中で右方向に突出するガイド取付部27を備えている。シリンダ取付部25には、レーザ加工ヘッド1を上下動させるエアシリンダ29を装着し、ガイド取付部27には、レーザ加工ヘッド1の上下移動をガイドするガイドレール31の上部を装着している。
【0019】
一方、レーザ加工ヘッド1には、ヘッド保持具33を装着している。ヘッド保持具33は、レーザ加工ヘッド1に固定される固定部35と、エアシリンダ29のピストンロッド37の先端が連結固定される連結部39と、ガイドレール31に沿って上下動するスライド部41とを、それぞれ備えている。
【0020】
また、レーザ加工ヘッド1またはヘッド保持具33には、溶接部を保護するためのシールドガスとなるアルゴンガスを吐出するノズル43を、図示しないブラケットを介して取り付けている。このノズル43には、図示しないアルゴンガスボンベからガス配管を通してアルゴンガスを供給する。さらに、特に図示しないが、溶接フュームやスパッタからレーザ照射口を保護するエアシャッタとなるエアを放出する機構を備えている。
【0021】
なお、加圧ローラ11によるワークWに対する加圧部位は、レーザ照射部位7に対し溶接進行方向Bに直交する図2中で右側方位置と、加圧ピン15に対し溶接進行方向Bに直交する図2中で右側方位置との間のP(図1)の範囲内におけるどの位置にあってもよい。
【0022】
図3は、上記した加圧ローラ11および加圧ピン15により、ワークWを加圧した状態で、レーザ光3をワークWに照射しつつ、レーザ加工ヘッド1を溶接進行方向Bへ移動させつつレーザ溶接を行っている状態を簡略化して示した斜視図である。
【0023】
次に作用を説明する。まず、図4(a)のように、板材Wdの上に、突起部5を備える板材Wuを載せる。このとき、各板材Wu,Wdは撓みなどの発生により、突起部5は、その全体が板材Wdに接触するわけではなく、図4(a)のように板材Wdに対して離間している部分がある。
【0024】
この状態で、レーザ溶接用ロボット19により、レーザ加工ヘッド1をワークWの加工部位の上方位置まで移動させた後、エアシリンダ29の駆動により、そのピストンロッド37が図1中で下方に進出移動することで、ヘッド保持具33を介してレーザ加工ヘッド1が下方に移動する。
【0025】
これにより、図4(b)のように、加圧ローラ11が突起部5から所定間隔離れた位置にて板材Wuに接触し、その近傍の突起部5は、板材Wdに対して離間している部位が板材Wdに接触する。このとき、加圧ピン15は板材Wuにまだ接触していない。
【0026】
その後、さらにエアシリンダ29の駆動によりレーザ加工ヘッド1を下降させることで、図4(c)のように板材Wuが変形し始め、これに伴い加圧ピン15も板材Wuに接触して加圧する。続いて図4(d)のように、加圧ローラ11による加圧部分で板材Wuが板材Wdに接触することになり、この状態でワークWに対する加圧が完了する。
【0027】
図4(d)のように、加圧ローラ11が、板材Wuを板材Wdに接触させるまで加圧した状態では、加圧ピン15は、その加圧部下方位置での板材Wuの下面と板材Wdの上面との間に形成される隙間寸法tが、亜鉛メッキ鋼板の板材Wu,Wd相互の重ね合わせ溶接を行う際の適正な値となるように、加圧している。
【0028】
上記した隙間寸法tの適正な値とは、レーザ光3照射時の加熱により発生する亜鉛メッキ層のガスを逃がし得る最低許容値以上である。このような隙間寸法tは、加圧ピン15の下端を、加圧ローラ11の下端より、前記した規定寸法hだけ上方にずれた位置とすることで容易に形成できる。
【0029】
上記したワークWに対する加圧状態で、レーザ溶接用ロボット19の教示動作に従って、レーザ加工ヘッド1が図3に示すように溶接進行方向Bに向けて移動することで、レーザ溶接を行う。このとき、加圧ローラ11は板材Wuに対して回転しながら移動し、加圧ピン15は板材Wuに対して接触した状態で移動する。
【0030】
上記のようなレーザ溶接を行う際には、加圧ピン15が、板材Wu,Wd相互を接触させている加圧ローラ11と突起部5との間のレーザ照射部位7近傍を加圧することで、レーザ照射部位7近傍の板材Wu,Wd相互間の隙間寸法tを適正に確保する。
【0031】
この際、本実施形態では、突起部5,加圧ローラ11およびレーザ照射部位7の相互の位置関係や、突起部5の高さが多少変化しても、加圧ローラ11と加圧ピン15との上下位置を規定寸法hだけずらせているので、上記した隙間寸法tを一定に確保できる。
【0032】
したがって、これら突起部5,加圧ローラ11およびレーザ照射部位7の相互の位置関係や、突起部5の高さの管理を精度よく行うことなく、隙間寸法tを適正に確保することができ、ワークW表面の亜鉛メッキ層が蒸発、飛散しても、溶接欠陥(ブローホールや気泡)の発生を防止し、これにより溶接ビード形状も安定して溶接品質が向上する。
【0033】
図5(a)〜(c)は、上記した突起部5,加圧ローラ11およびレーザ照射部位7の相互の位置関係や、突起部5の高さが変化した例を示している。
【0034】
図5(b)は、突起部5と加圧ピン15との間隔Cが、図5(a)の同間隔Dより広い例である。この例では、レーザ加工ヘッド1が、図5(a)に対して突起部5からより離れた位置にあり、この際加圧ローラ11および加圧ピン15はレーザ加工ヘッド1に一体化しているので、両者相互の高さの差(規定寸法h)および図中で左右方向の間隔Eは、図5(a)と(b)で同一である。
【0035】
また、加圧ローラ11による加圧部位では板材Wu,Wd相互が密着しているので、加圧ローラ11と下部の板材Wdの上面との間隔も、上部の板材Wuの板厚分となって図5(a)と(b)で一定であり、したがって、加圧ピン15と板材Wdとの間隔も一定となり、加圧ピン15に対応する板材Wuの下面と板材Wdの上面との隙間寸法tも、板材Wuの傾斜角度の相違によって僅かに相違するものの、図5(a)と(b)でほぼ同一となる。
【0036】
以上より、突起部5と加圧ピン15との間隔D,Cが、図5(a),(b)のように変化しても、レーザ照射部位7近傍の隙間寸法tを一定に確保することができる。
【0037】
図5(c)は、突起部5の高さFが、図5(a)の同高さGより高い例である。この例では、レーザ加工ヘッド1とワークWとの相対位置関係が、図5(a),(c)で同一であり、また加圧ローラ11および加圧ピン15はレーザ加工ヘッド1に一体化しているので、上記と同様に両者相互の高さの差(規定寸法h)および図中で左右方向の間隔Eは、図5(a)と(c)で同一である。なお、加圧力については、突起部5の高さFが高くなる分高くすることになる。
【0038】
したがって、この例においても、加圧ローラ11による加圧部位では板材Wu,Wd相互が密着しているので、加圧ローラ11と下部の板材Wdの上面との間隔も、板材Wuの板厚分となって図5(a)と(c)で同一であり、よって、加圧ピン15と板材Wdとの間隔も図5(a)と(c)で同一となり、板材Wuの下面と板材Wdの上面との隙間寸法tも、板材Wuの傾斜角度の相違によって僅かに相違するものの、図5(a)と(c)でほぼ同一となる。
【0039】
以上より、突起部5の高さG,Fが、図5(a),(c)のように変化しても、レーザ照射部位7近傍の隙間寸法tを一定に確保することができる。
【0040】
上記した本実施形態では、突起部5,加圧ローラ11およびレーザ照射部位7の相互の位置関係や、突起部5の高さの変化の許容値を、加圧ピン15を設けない従来例に対し、適正な隙間寸法tを確保した状態で大きくとることができる。
【0041】
また、加圧力の管理についても、従来に比較して許容値を大きくとることができ、また前記図4(a)の状態で発生しうる突起部5と下部の板材Wdとの隙間についても、従来に比較して許容値を大きくとることができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、以下に示す作用効果を得ることができる。
【0043】
加圧ローラ11および加圧ピン15をワークWの一方側の上方から加圧するので、ワークWの端末近傍のみでなく、端末から離れた部位に対するレーザ溶接についても、隙間寸法tを適正に確保しつつ実施可能である。
【0044】
プレス加工などにより板厚が変化した場合でも、加圧ローラ11と加圧ピン15との上下高さの差(規定寸法h)が一定なので、隙間寸法tを適正に確保することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、加圧ローラ11と加圧ピン15との高さの差(規定寸法h)を規定値に管理する必要があるが、これら加圧ローラ11および加圧ピン15は、前記図1に示したように、レーザ加工ヘッド1に一体化しているので、取り付け時(または設備保全時,仕業点検時など)の精度を確保することで、容易に管理可能であり、隙間寸法tを容易に確保することができる。
【0046】
ワークWに対する加圧力としては、加圧ローラ11と加圧ピン15にかかる圧力の合計値を管理すればよい。
【0047】
なお、加圧ローラ11および加圧ピン15は、溶接作業時においてレーザ照射部位7の近傍に位置してそれとの相対位置が一定であることから、加圧ローラ11または加圧ピン15に、前記したアルゴンガスを吐出するノズル43の機能をもたせてもよい。
【0048】
また、加圧ローラ11は、ワークW上を回転せずに、加圧ピン15のように摺動するピン状としてもよく、逆に加圧ピン15は、ワークW上を摺動せずに、加圧ローラ11のように回転するローラとしてもよい。
【0049】
さらに、図3のように溶接進行方向Bに連続する突起部5に代えて、円形の突起部を溶接進行方向Bに沿って所定間隔を置いて断続的に複数設けてもよい。
【0050】
また、隙間確保部として前記した突起部5に代えて、図6(a)のように、2枚の板材Wu,Wd相互間に異材45を挿入して隙間Sを確保する方法や、図6(b)のように上部の板材Wuに上方に向けて屈曲する屈曲部47を設けて隙間Sを確保する方法でもよい。
【0051】
なお、板材Wu,Wd相互間の隙間を形成するための前記した突起部5は、下側の板材Wdに設けても構わない。
【0052】
ただし、2枚の板材Wu,Wd相互で剛性が異なるとすれば、加圧する上部の板材Wuを剛性の低いものとした方が加圧しやすく、したがってこの加圧しやすい上部の板材、つまり剛性の低い板材に対してエンボス加工を行う方が成形性がよいので、2枚の板材Wu,Wd相互の剛性が異なる場合には、上部の板材に突起部5を設けた方がよい。
【0053】
また、上部の板材Wuに突起部5を設けた場合、溶接する上側から突起部5と溶接部位との位置関係を確認できるため、溶接作業自体および溶接後の品質確認などが容易である。
【0054】
図7は、突起部5と加圧ローラ11との間隔をH、加圧ローラ11と加圧ピン15との間隔をE、突起部5の高さ相当寸法をt0、加圧ピン15における隙間寸法をt、加圧ローラ11と加圧ピン15との高さ寸法差をhとした場合の、各値相互の関係を示している。
【0055】
このような各値相互の位置関係において、突起部5の高さは、t0/H>h/E、すなわち、t0>(H/E)×h、が成り立つように設定する。この式が成り立たない場合には、突起部5の高さ(突起部5の高さ相当寸法t0)が低すぎることになり、隙間寸法tも適正値より小さくなってしまう。
【0056】
このように、突起部5の高さを、最低値で管理することで、ある一定の幅で管理する場合に比較して管理が容易となる。
【0057】
本発明の第2の実施形態として、加圧ローラ11の加圧によって発生する荷重を測定し、この測定した荷重に応じて、ワークWに対する加圧ローラ11と加圧ピン15を合わせた全体の加圧力を調整する。これにより、加圧力が高すぎることによるワークW(下側の板材Wd)の変形を防ぎ、板材Wu,Wd相互の隙間の変形を防いで隙間寸法tを適正なものとする。また、加圧に必要なエネルギを最小限とすることができる。
【0058】
また、必要な加圧力の変化を記録することで、突起部5の精度変化、板材Wu,Wd相互間の合わせの精度変化をモニタリングすることができる。
【0059】
例えば、前記図5(a)〜(c)において、加圧ローラ11による荷重が一定となるように合計加圧力を変化させる。表1は、そのときの加圧力を示す。
【表1】
【0060】
加圧ローラ11による荷重を一定の100Nとなるようにした状態で、加圧ピン15による荷重が、図5(a)では200N,図5(b)では100N,図5(c)では300Nとなり、合計加圧力は、図5(a)で300N,図5(b)で200N,図5(c)で400Nとなる。すなわちこの場合、加圧ピン15は、加圧ピン15が突起部5に近い位置にあるほど、また突起部5の高さ寸法が大きいほど、2枚の板材Wu,Wdへの加圧力を大きくしている。
【0061】
このように、板材Wu,Wd相互が密着して加圧される部位の荷重を一定とすることで、下側の板材Wdの変形を防ぎ、溶接部での隙間寸法tを適正に確保することができる。
【0062】
これに対し、表2は、合計加圧力を図5(a)〜(c)のすべてにおいて一定の400Nとした場合の、加圧ローラ11と加圧ピン15による荷重を示している。この場合には、加圧ローラ11における荷重が図5(a)〜(c)で互いに変化してしまい、この結果下側の板材Wdが、例えば荷重が300Nとなる図5(b)では変形し、溶接部での隙間寸法tを適正に確保することができなくなる。
【表2】
【0063】
図8は、本発明の第3の実施形態に係わる、前記図4(b)に対応する正面図である。この実施形態は、2枚の板材Wu,Wdを間に挟んで加圧ローラ11と反対側に、下側の板材Wdを受けて、加圧ローラ11との間で2枚の板材Wu,Wdを挟持するワーク受け部としてのローラ側受け治具49を設けるとともに、2枚の板材Wu,Wdを間に挟んで加圧ローラ11と反対側の、突起部5に対応する部位に、下側の板材Wdを受けるワーク受け部としての突起部側受け治具51を設けている。
【0064】
これにより、特に板材Wdの剛性が低く、2枚の板材Wu,Wd相互の合わせばらつきを矯正するためなどに、加圧力を高めた場合に、板材Wdの変形を防止することができ、隙間寸法tを精度よく確保することができる。
【0065】
なお、上記したローラ側受け治具49や突起部側受け治具51に代えて、板材Wd自体に補強材を設けて強度を高め、変形を防ぐようにしてもよい。
【0066】
図9は、本発明の第4の実施形態に係わる、前記図3に対応する斜視図である。この実施形態は、第1の実施形態における1本の加圧ピン15に代えて、2本の加圧ピン53,55により、レーザ光照射部位7に対して溶接進行方向Bの両側の2箇所を加圧する構成としている。ここで、2本の加圧ピン53,55による2箇所の加圧位置は、レーザ光照射部位7から等距離にあるものとする。
【0067】
上記2本の加圧ピン53,55は、図10(a),(b)に示すように、前記図1に示したものと同様なレーザ加工ヘッド1に設けた支持軸57に、リンク機構59を介して支持してある。リンク機構59は、支持軸57に対し左右に延びて上下に揺動可能な横リンク61と、横リンク61の両端に対して上端を回転可能に連結する一方、下端を前記加圧ピン53,55に連結する一対の縦リンク63,65とを、それぞれ備えている。
【0068】
すなわち、図10(a)のように互いに同一高さとなった状態の2本の加圧ピン53,55が、上側の板材Wuに対し、加圧ローラ11の加圧動作に続いて加圧動作を行うと、板材Wuの傾斜に沿ってリンク機構59が図10中で時計回り方向に回転する。この際、2本の加圧ピン53,55の上下高さの平均値が、各ピン53,55相互の中間位置の上下高さ、すなわち第1の実施形態における加圧ピン15の上下高さと同等となり、結果として加圧ローラ11と2本の加圧ピン53,55との間の高さの差(規定寸法h)を、第1の実施形態と同様に確保することができる。
【0069】
このように、2本の加圧ピン53,55によりレーザ照射部位7の両側の2箇所を加圧することで、加圧部位がレーザ照射部位7に対して溶接進行方向同等位置となり、第1の実施形態のように加圧ピン15による加圧部位がレーザ照射部位7より溶接進行方向前方となる場合と比較して、隙間寸法tをより適正なものとすることができる。
【0070】
また、上記した第4の実施形態において、2本の加圧ピン53,55の高さの差を、図示しない加圧部位置検出手段によって検出し、この検出した差が規定値から外れている場合には、異常判定手段によって、溶接位置のずれや突起部5の異常を判定し、溶接作業を停止する処理を行う。
【0071】
図11は、本発明の第5の実施形態に係わるレーザ溶接装置の模式化した平面図である。この実施形態は、前記図1に示した第1の実施形態におけるレーザ加工ヘッド1に対し、加圧ローラ11および加圧ピン15を、溶接点となるレーザ照射部位7を中心として一体的に回転可能に構成している。
【0072】
この場合、図11(a)のように図中で上から下に向かってレーザ加工ヘッド1が移動してレーザ溶接を行っている状態で、図11(b)のように図中で左方向へレーザ加工ヘッド1が移動しつつ連続してレーザ溶接を行う場合、その溶接進行方向がBからBaに変化する方向変換点67で、加圧ローラ11および加圧ピン15を、互いに一体化した状態で図11中で時計回り方向に90度回転させる。この際、レーザ溶接用ロボット19の姿勢はそのままで変化させる必要はない。なお、図11中の符号69で示すものは、溶接ビードである。
【0073】
加圧ローラ11および加圧ピン15を一体的に回転させる具体的な手段としては、図1におけるレーザ加工ヘッド1やヘッド保持具33に、モータおよびこのモータによってこれらに対して回転する部材を取り付け、この回転する部材に加圧ローラ11および加圧ピン15を固定保持させればよい。
【0074】
なお、上記した各実施形態では、ワークWに対して下方に向けて加圧する例を示したが、ワークを起立させた状態で、水平方向に向けて加圧する場合にも本発明を適用することができる。
【0075】
図12は、本発明の第6の実施形態を示すレーザ溶接装置の、前記図1に対応する側面図、図13は、図12の右方向(溶接進行方向Bの前方)から見た正面図である。この実施形態は、第1加圧部として、レーザ加工ヘッド1とは別体の上部治具71を、上側の板材Wuに対して下方に向けて押し付けている。下側の板材Wdの下部には下部治具73を設け、これら各治具71,73でワークWを挟持している。なお、図12では、上部治具71,下部治具73および上側の板材Wuを省略している。
【0076】
ここでのレーザ加工ヘッド1は、図12中で左側に装着した水平可動台座75を備え、図13中で左右方向に延びる水平スライドレール77に沿って水平可動台座75とともにスライド移動する。水平可動台座75には水平駆動エアシリンダ79のピストンロッド81を連結し、水平駆動エアシリンダ79の駆動によりレーザ加工ヘッド1が図13中で左右方向に移動する。
【0077】
水平スライドレール77および水平駆動エアシリンダ79は、上下可動台座83の下部側面に固定してあり、上下可動台座83は図12,13中で上下に延びる上下スライドレール85に沿って移動する。上下可動台座83の上端には上下駆動エアシリンダ87のピストンロッド88を連結し、上下駆動エアシリンダ87の駆動により、上下可動台座83がレーザ加工ヘッド1とともに図12,13中で上下方向に移動する。
【0078】
上下スライドレール85および上下駆動エアシリンダ87は、レーザ溶接用ロボット19に設けたヘッド保持ブラケット89に固定保持させる。
【0079】
そして、このレーザ加工ヘッド1には、前記図1に示した第1の実施形態と同様に加圧ピン15を設けている。また、レーザ加工ヘッド1には、図13に示すように、前記図2におけるローラ保持ブロック9を装着した位置に、上部治具71との相対位置関係を規定する位置規定手段としての位置決め機構91を装着している。
【0080】
位置決め機構91は、レーザ加工ヘッド1から上部治具71に向けて水平方向に延びる水平部材93と、水平部材93の途中から下方に延びる鉛直部材95とをそれぞれ備えている。そして、水平部材93の先端下部に半球形状の上下位置決め用突起97を、当接部として設けるとともに、鉛直部材95の先端側部に同じく半球形状の水平位置決め用突起99を、当接部として上部治具71に対向して設けている。
【0081】
次に、上記図12,13に示した第6の実施形態の作用を説明する。上下治具71と下部治具73との間でワークWを挟持して加圧し、この加圧状態で、レーザ加工ヘッド1をレーザ溶接ロボット19により図13に対応する位置まで移動させる。このとき、水平駆動エアシリンダ79および上下駆動エアシリンダ87は、いずれも前進限位置まで各ピストンロッド81および88を前進させておく。
【0082】
そして、上記図13の状態から、レーザ溶接ロボット19の教示動作により、レーザ加工ヘッド1を、図13中で右方向に移動させて、水平位置決め用突起99を上部治具71の側面に当接させ、さらに押し込む。これにより、ピストンロッド81は後退して後退限位置にて停止する。このピストンロッド81の後退限位置で、第1加圧部である上部治具71と加圧ピン15との間の水平方向間隔が、前記図1に示した第1の実施形態における加圧ローラ11と加圧ピン15との間の同間隔と同等となる。
【0083】
続いて、レーザ溶接ロボット19の教示動作により、レーザ加工ヘッド1を、図13中で下方に向けて移動させて、上下位置決め用突起97を上部治具71の上面に当接させ、さらに押し込む。これにより、ピストンロッド88は後退して後退限位置にて停止する。このピストンロッド88の後退限位置で、第1加圧部である上部治具71と加圧ピン15との上下(高さ)方向間隔が、前記図1に示した第1の実施形態における加圧ローラ11と加圧ピン15との同間隔(規定寸法h)と同等となる。
【0084】
このように、上部治具71に対する加圧ピン15の相対位置を位置決めした状態では、図13に対する図14の模式図で示すように、加圧ピン15により上側の板材Wuを加圧し、規定の隙間寸法tを確保した状態となる。
【0085】
上記した第6の実施形態によれば、上部治具71が溶接前にワークWを下部治具73との間で挟持固定し、板材Wuと板材Wdとを互いに密着させておくことで、レーザ加工ヘッド1の加圧によるワークWの位置ずれを防止することができる。また、第1加圧部を上部治具71としてレーザ加工ヘッド1と別体としているので、レーザ加工ヘッド1側の構造を簡素化することができる。
【0086】
さらに、2枚の板材Wu,Wd相互の合わせ状態の修正は上部治具71によって行い、加圧ピン15での加圧で行う必要がないので、加圧ピン15の加圧力を第1の実施形態に比較して弱くすることができ、上側の板材Wuの変形を抑えることができる。
【0087】
また、レーザ加工ヘッド1は、ワークWを挟持している上部治具71に対し、位置決め機構91により位置決めしているので、レーザ加工ヘッド1のワークWに対する姿勢が安定し、その結果隙間寸法tも安定して溶接品質が向上する。
【0088】
図15は、本発明の第7の実施形態を示すレーザ溶接装置の、前記図14に対応する模式図である。この実施形態は、前記図14における位置決め機構91に代えて、位置決め機構101を設けている。
【0089】
位置決め機構101は、上部治具71の上面位置を検出する位置検出手段としての上下位置センサ部103を備えるとともに、上部治具71の図15中で左側面位置を検出する位置検出手段としての左右位置センサ部105を備えている。
【0090】
そして、この実施形態においては、レーザ溶接ロボット19の教示動作によって、加圧ピン15が前記図13における加圧ピン15とほぼ同じ位置となるようレーザ加工ヘッド1を移動させ、この状態から、さらにレーザ溶接ロボット19の教示動作により、レーザ加工ヘッド1を図15中で右方向に移動させて、左右位置センサ部105による上部治具71の検出動作をまず実施する。
【0091】
左右位置センサ部105が上部治具71を検出したら、レーザ加工ヘッド1の上記した図15中での右方向への移動を停止させ、今度はレーザ溶接ロボット19の教示動作により、レーザ加工ヘッド1を図15中で下方向に移動させて、上下位置センサ部103による上部治具71の検出動作を実施する。そして、上下位置センサ部103が上部治具71を検出したら、レーザ加工ヘッド1の上記した図15中での下方向への移動を停止させる。
【0092】
この状態で、レーザ加工ヘッド1は上部治具71に対する相対位置が規定され、このとき加圧ピン15は、2枚の板材Wu,Wd相互間に前記した規定の隙間寸法tを確保するよう上側の板材Wuを加圧している。
【0093】
上記した第7の実施形態によれば、前記図12〜図14に示した第6の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第7の実施形態によれば、第6の実施形態のような位置決め機構91をレーザ加工ヘッド1とともにスライド移動させるスライド機構が不要な分、構造を簡素化することができる。
【0094】
図16は、本発明の第8の実施形態を示すレーザ溶接装置の、前記図14に対応する模式図である。この実施形態は、加圧ローラ11および加圧ピン15を、第1の実施形態と同様にレーザ加工ヘッド1に一体化する一方、被位置決め部としての治具107を下側の板材Wdに当接させて位置決めしている。
【0095】
そして、レーザ加工ヘッド1に第1の実施形態と同様な位置決め機構91を設け、この位置決め機構91の水平部材93および鉛直部材95により治具107に対して位置決めを行うことで、レーザ加工ヘッド1のワークWに対する姿勢を適正に確保する。
【0096】
上記した位置決め機構91および治具107により加圧部位置規定手段を構成している。
【0097】
なお、上述の第6〜第8の各実施形態においては、位置決め機構91または101を、レーザ加工ヘッド1の両側に一対設けてもよい。これにより、レーザ照射部位7に対し、突起部5と治具71との位置が逆転した場合に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すレーザ溶接装置の側面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図1のレーザ溶接装置によりレーザ溶接を行っている状態を簡略化して示した斜視図である。
【図4】図1のレーザ溶接装置によるワークに対する加圧動作を示す動作説明図である。
【図5】図1のレーザ溶接装置における突起部,加圧ローラおよびレーザ照射部位の位置関係や、突起部の高さが変化した例を示す説明図である。
【図6】第1の実施形態の突起部に代わる隙間確保部の構成を示す説明図で、(a)は2枚の板材相互間に異材を挿入した例、(b)は上側の板材に上方に向けて屈曲する屈曲部を設けた例である。
【図7】突起部,加圧ローラ,加圧ピン相互の間隔や、突起部の高さ、加圧ピンにおける隙間寸法、加圧ローラと加圧ピンとの高さ寸法差に基づく、各値相互の関係を示す説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係わる、図4(b)に対応する正面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係わる、図3に対応する斜視図である。
【図10】第4の実施形態における加圧前の状態(a)と、加圧後の状態(b)とをそれぞれ示す動作説明図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係わるレーザ溶接装置の溶接動作を示す模式化した平面図である。
【図12】本発明の第6の実施形態を示すレーザ溶接装置の、図1に対応する側面図である。
【図13】図12の右方向(溶接進行方向前方)から見た正面図である。
【図14】図13に示したレーザ溶接装置の模式図である。
【図15】本発明の第7の実施形態を示すレーザ溶接装置の、図14に対応する模式図である。
【図16】本発明の第8の実施形態を示すレーザ溶接装置の、図14に対応する模式図である。
【符号の説明】
【0099】
W ワーク
Wu,Wd 板材
5 突起部(隙間確保部)
7 レーザ光照射部位
11 加圧ローラ(第1加圧部)
15 加圧ピン(第2加圧部)
45 異材(隙間確保部)
47 屈曲部(隙間確保部)
49 ローラ側受け治具(ワーク受け部)
51 突起部側受け治具(ワーク受け部)
91 位置決め機構(位置規定手段,加圧部位置規定手段)
97 上下位置決め用突起(当接部)
99 水平位置決め用突起(当接部)
101 位置決め機構(位置規定手段)
103 上下位置センサ部(位置検出手段)
105 左右位置センサ部(位置検出手段)
107 治具(被位置決め部,加圧部位置規定手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱によりガスが発生する被覆層にて表面処理されたワークを2枚の板材の重ね継手でレーザ溶接を行うレーザ溶接装置およびレーザ溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ溶接などの局部加熱による溶接は、ワークに対する入熱が少ないことからワークの溶接歪みが少ない溶接方法として、突き合わせ溶接や重ね溶接などに用いられている。入熱が少ない理由は、レーザビームなどの局部加熱源を小さな点に集めてエネルギを集中することができ、高速で溶接可能だからである。
【0003】
このようなレーザ溶接では、ワークのエネルギ入熱部のみを溶融して接合を行うため、ワークの溶融量が少なく、継手隙間を小さくする必要がある。
【0004】
また、亜鉛メッキ鋼板をレーザ溶接する際には、特に重ね溶接において、ワーク表面の亜鉛メッキ層が蒸発、飛散して溶接欠陥(ブローホールや気泡)が生じることから、これを防ぐためにワーク相互間に適正な隙間を設ける必要があり、この隙間を設けるために、ワークに突起部を設けることが一般的に行われている。
【0005】
例えば、下記特許文献1に記載のものは、重ね合わせた2枚のメッキ鋼板の上板に、下板に向けて突出する突起部を設け、この突起部を下板に接触させることでメッキ鋼板相互に隙間を形成している。この際、突起部近傍の上板を治具により下板に向けて加圧し、突起部の高さに対応した隙間を確保するようにしている。
【特許文献1】特開2001−162388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の技術では、突起部,加圧部および溶接部の位置関係と、突起部の高さに応じて隙間が変化することから、これらの管理を精度よく行う必要があり、このため隙間を適正に確保することが困難であり、隙間が変化することで、溶接ビード形状が不安定となって溶接品質の低下を招いている。
【0007】
そこで、本発明は、ワークを2枚の板材の重ね継手でレーザ溶接を行う際の板材相互の隙間を適正に確保し、溶接品質を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、加熱によりガスが発生する被覆層にて表面処理されたワークを2枚の板材の重ね継手でレーザ溶接を行うレーザ溶接装置において、前記2枚の板材相互間に隙間を形成するための隙間確保部を設けるとともに、この隙間確保部の近傍に、前記2枚の板材相互を接触させるべく加圧する第1加圧部を設け、この第1加圧部と前記隙間確保部との間における前記2枚の板材相互間に隙間を有するレーザ光照射部位近傍に対し、前記隙間を確保した状態で前記2枚の板材相互が接触する方向に加圧し、かつ前記第1加圧部に対して加圧方向に規定寸法ずれた位置に設置した第2加圧部を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、隙間確保部と2枚の板材相互を接触させるべく加圧する第1加圧部との間のレーザ光照射部位近傍において、第2加圧部により、2枚の板材相互が接触する方向に加圧して、隙間を確保するようにしたので、隙間確保部,第1加圧部およびレーザ光照射部位の相互の位置関係や、隙間確保部の寸法が多少変化したとしても、第1加圧部に対して加圧方向に規定寸法ずれた位置にある第2加圧部による加圧によって、レーザ光照射部位での隙間を適正に確保することができ、溶接品質を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態を示すレーザ溶接装置の側面図、図2は、図1のA矢視方向から見た要部の正面図である。ここでのワークWは、加熱によりガスが発生する、例えば亜鉛が表面処理としてメッキされている亜鉛メッキ鋼板である2枚の板材Wu,Wdを重ね合わせたもので、この2枚の板材Wu,Wdに対し、レーザ加工ヘッド1から照射されるレーザ光3により重ね継手溶接を行う。
【0012】
そして、ここでの上部に位置する板材Wuには、例えばエンボス加工によって形成した隙間確保部としての突起部5を、下部の板材Wdに向けて突出して設けており、この突起部5の図2中で右側の近傍にレーザ光3を照射し、ここをレーザ照射部位7としている。
【0013】
レーザ加工ヘッド1に一端を接続した光ファイバ5の他端に設けるレーザ発振器としては、例えばYAGレーザを用い、図1中の矢印Bで示す右方向(図2中では紙面手前方向)にレーザ加工ヘッド1が移動しながら溶接を行う。
【0014】
図2に示すように、レーザ加工ヘッド1の下部側面にはローラ保持ブロック9を装着し、ローラ保持ブロック9の先端には、ローラ保持ブラケット10の上部を取り付ける。そしてローラ保持ブラケット10の下部側面には、第1加圧部を構成する加圧ローラ11を、支持軸13を介して回転可能に取り付ける。
【0015】
この加圧ローラ11は、レーザ照射部位7に対し突起部5と反対側に位置しており、この位置でワークWに対して上側の板材Wuを加圧し、この加圧した板材Wuを下側の板材Wdに接触させる。これにより、突起部5と加圧ローラ11との間の板材Wu,Wd相互間に、図2中でほぼ三角形状となる隙間Sを形成する。
【0016】
また、レーザ加工ヘッド1の下部における溶接進行方向(図1中の矢印B方向)前方側には、第2加圧部となる加圧ピン15の上部を取り付け、加圧ピン15の下部は、図1に示すようにレーザ光3側に向けて屈曲させ、その下端により図2のように上側の板材Wuを加圧する。加圧ピン15による板材Wuへの加圧位置は、図1に示すようにレーザ光3によるレーザ照射部位7に対して溶接進行方向Bの前方で、かつ溶接進行方向の同一直線上に位置している。
【0017】
加圧ピン15の下端は、板材Wu,Wd相互を密着させるように加圧する加圧ローラ11の下端より、例えばh=0.2〜0.3mm上方に規定寸法ずれた位置に設置し、加圧ピン15による加圧時には、板材Wuと板材Wdとの間の隙間が適正なものとなるようにする。
【0018】
上記したレーザ加工ヘッド1は、レーザ溶接用ロボット19により保持されて上記した溶接進行方向Bに向けて移動する。レーザ溶接用ロボット19はヘッド保持ブラケット21を備えている。ヘッド保持ブラケット21は、基部23の先端に、図1中で上下方向に延長されるシリンダ取付部25を備えるとともに、シリンダ取付部25の上端に図1中で右方向に突出するガイド取付部27を備えている。シリンダ取付部25には、レーザ加工ヘッド1を上下動させるエアシリンダ29を装着し、ガイド取付部27には、レーザ加工ヘッド1の上下移動をガイドするガイドレール31の上部を装着している。
【0019】
一方、レーザ加工ヘッド1には、ヘッド保持具33を装着している。ヘッド保持具33は、レーザ加工ヘッド1に固定される固定部35と、エアシリンダ29のピストンロッド37の先端が連結固定される連結部39と、ガイドレール31に沿って上下動するスライド部41とを、それぞれ備えている。
【0020】
また、レーザ加工ヘッド1またはヘッド保持具33には、溶接部を保護するためのシールドガスとなるアルゴンガスを吐出するノズル43を、図示しないブラケットを介して取り付けている。このノズル43には、図示しないアルゴンガスボンベからガス配管を通してアルゴンガスを供給する。さらに、特に図示しないが、溶接フュームやスパッタからレーザ照射口を保護するエアシャッタとなるエアを放出する機構を備えている。
【0021】
なお、加圧ローラ11によるワークWに対する加圧部位は、レーザ照射部位7に対し溶接進行方向Bに直交する図2中で右側方位置と、加圧ピン15に対し溶接進行方向Bに直交する図2中で右側方位置との間のP(図1)の範囲内におけるどの位置にあってもよい。
【0022】
図3は、上記した加圧ローラ11および加圧ピン15により、ワークWを加圧した状態で、レーザ光3をワークWに照射しつつ、レーザ加工ヘッド1を溶接進行方向Bへ移動させつつレーザ溶接を行っている状態を簡略化して示した斜視図である。
【0023】
次に作用を説明する。まず、図4(a)のように、板材Wdの上に、突起部5を備える板材Wuを載せる。このとき、各板材Wu,Wdは撓みなどの発生により、突起部5は、その全体が板材Wdに接触するわけではなく、図4(a)のように板材Wdに対して離間している部分がある。
【0024】
この状態で、レーザ溶接用ロボット19により、レーザ加工ヘッド1をワークWの加工部位の上方位置まで移動させた後、エアシリンダ29の駆動により、そのピストンロッド37が図1中で下方に進出移動することで、ヘッド保持具33を介してレーザ加工ヘッド1が下方に移動する。
【0025】
これにより、図4(b)のように、加圧ローラ11が突起部5から所定間隔離れた位置にて板材Wuに接触し、その近傍の突起部5は、板材Wdに対して離間している部位が板材Wdに接触する。このとき、加圧ピン15は板材Wuにまだ接触していない。
【0026】
その後、さらにエアシリンダ29の駆動によりレーザ加工ヘッド1を下降させることで、図4(c)のように板材Wuが変形し始め、これに伴い加圧ピン15も板材Wuに接触して加圧する。続いて図4(d)のように、加圧ローラ11による加圧部分で板材Wuが板材Wdに接触することになり、この状態でワークWに対する加圧が完了する。
【0027】
図4(d)のように、加圧ローラ11が、板材Wuを板材Wdに接触させるまで加圧した状態では、加圧ピン15は、その加圧部下方位置での板材Wuの下面と板材Wdの上面との間に形成される隙間寸法tが、亜鉛メッキ鋼板の板材Wu,Wd相互の重ね合わせ溶接を行う際の適正な値となるように、加圧している。
【0028】
上記した隙間寸法tの適正な値とは、レーザ光3照射時の加熱により発生する亜鉛メッキ層のガスを逃がし得る最低許容値以上である。このような隙間寸法tは、加圧ピン15の下端を、加圧ローラ11の下端より、前記した規定寸法hだけ上方にずれた位置とすることで容易に形成できる。
【0029】
上記したワークWに対する加圧状態で、レーザ溶接用ロボット19の教示動作に従って、レーザ加工ヘッド1が図3に示すように溶接進行方向Bに向けて移動することで、レーザ溶接を行う。このとき、加圧ローラ11は板材Wuに対して回転しながら移動し、加圧ピン15は板材Wuに対して接触した状態で移動する。
【0030】
上記のようなレーザ溶接を行う際には、加圧ピン15が、板材Wu,Wd相互を接触させている加圧ローラ11と突起部5との間のレーザ照射部位7近傍を加圧することで、レーザ照射部位7近傍の板材Wu,Wd相互間の隙間寸法tを適正に確保する。
【0031】
この際、本実施形態では、突起部5,加圧ローラ11およびレーザ照射部位7の相互の位置関係や、突起部5の高さが多少変化しても、加圧ローラ11と加圧ピン15との上下位置を規定寸法hだけずらせているので、上記した隙間寸法tを一定に確保できる。
【0032】
したがって、これら突起部5,加圧ローラ11およびレーザ照射部位7の相互の位置関係や、突起部5の高さの管理を精度よく行うことなく、隙間寸法tを適正に確保することができ、ワークW表面の亜鉛メッキ層が蒸発、飛散しても、溶接欠陥(ブローホールや気泡)の発生を防止し、これにより溶接ビード形状も安定して溶接品質が向上する。
【0033】
図5(a)〜(c)は、上記した突起部5,加圧ローラ11およびレーザ照射部位7の相互の位置関係や、突起部5の高さが変化した例を示している。
【0034】
図5(b)は、突起部5と加圧ピン15との間隔Cが、図5(a)の同間隔Dより広い例である。この例では、レーザ加工ヘッド1が、図5(a)に対して突起部5からより離れた位置にあり、この際加圧ローラ11および加圧ピン15はレーザ加工ヘッド1に一体化しているので、両者相互の高さの差(規定寸法h)および図中で左右方向の間隔Eは、図5(a)と(b)で同一である。
【0035】
また、加圧ローラ11による加圧部位では板材Wu,Wd相互が密着しているので、加圧ローラ11と下部の板材Wdの上面との間隔も、上部の板材Wuの板厚分となって図5(a)と(b)で一定であり、したがって、加圧ピン15と板材Wdとの間隔も一定となり、加圧ピン15に対応する板材Wuの下面と板材Wdの上面との隙間寸法tも、板材Wuの傾斜角度の相違によって僅かに相違するものの、図5(a)と(b)でほぼ同一となる。
【0036】
以上より、突起部5と加圧ピン15との間隔D,Cが、図5(a),(b)のように変化しても、レーザ照射部位7近傍の隙間寸法tを一定に確保することができる。
【0037】
図5(c)は、突起部5の高さFが、図5(a)の同高さGより高い例である。この例では、レーザ加工ヘッド1とワークWとの相対位置関係が、図5(a),(c)で同一であり、また加圧ローラ11および加圧ピン15はレーザ加工ヘッド1に一体化しているので、上記と同様に両者相互の高さの差(規定寸法h)および図中で左右方向の間隔Eは、図5(a)と(c)で同一である。なお、加圧力については、突起部5の高さFが高くなる分高くすることになる。
【0038】
したがって、この例においても、加圧ローラ11による加圧部位では板材Wu,Wd相互が密着しているので、加圧ローラ11と下部の板材Wdの上面との間隔も、板材Wuの板厚分となって図5(a)と(c)で同一であり、よって、加圧ピン15と板材Wdとの間隔も図5(a)と(c)で同一となり、板材Wuの下面と板材Wdの上面との隙間寸法tも、板材Wuの傾斜角度の相違によって僅かに相違するものの、図5(a)と(c)でほぼ同一となる。
【0039】
以上より、突起部5の高さG,Fが、図5(a),(c)のように変化しても、レーザ照射部位7近傍の隙間寸法tを一定に確保することができる。
【0040】
上記した本実施形態では、突起部5,加圧ローラ11およびレーザ照射部位7の相互の位置関係や、突起部5の高さの変化の許容値を、加圧ピン15を設けない従来例に対し、適正な隙間寸法tを確保した状態で大きくとることができる。
【0041】
また、加圧力の管理についても、従来に比較して許容値を大きくとることができ、また前記図4(a)の状態で発生しうる突起部5と下部の板材Wdとの隙間についても、従来に比較して許容値を大きくとることができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、以下に示す作用効果を得ることができる。
【0043】
加圧ローラ11および加圧ピン15をワークWの一方側の上方から加圧するので、ワークWの端末近傍のみでなく、端末から離れた部位に対するレーザ溶接についても、隙間寸法tを適正に確保しつつ実施可能である。
【0044】
プレス加工などにより板厚が変化した場合でも、加圧ローラ11と加圧ピン15との上下高さの差(規定寸法h)が一定なので、隙間寸法tを適正に確保することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、加圧ローラ11と加圧ピン15との高さの差(規定寸法h)を規定値に管理する必要があるが、これら加圧ローラ11および加圧ピン15は、前記図1に示したように、レーザ加工ヘッド1に一体化しているので、取り付け時(または設備保全時,仕業点検時など)の精度を確保することで、容易に管理可能であり、隙間寸法tを容易に確保することができる。
【0046】
ワークWに対する加圧力としては、加圧ローラ11と加圧ピン15にかかる圧力の合計値を管理すればよい。
【0047】
なお、加圧ローラ11および加圧ピン15は、溶接作業時においてレーザ照射部位7の近傍に位置してそれとの相対位置が一定であることから、加圧ローラ11または加圧ピン15に、前記したアルゴンガスを吐出するノズル43の機能をもたせてもよい。
【0048】
また、加圧ローラ11は、ワークW上を回転せずに、加圧ピン15のように摺動するピン状としてもよく、逆に加圧ピン15は、ワークW上を摺動せずに、加圧ローラ11のように回転するローラとしてもよい。
【0049】
さらに、図3のように溶接進行方向Bに連続する突起部5に代えて、円形の突起部を溶接進行方向Bに沿って所定間隔を置いて断続的に複数設けてもよい。
【0050】
また、隙間確保部として前記した突起部5に代えて、図6(a)のように、2枚の板材Wu,Wd相互間に異材45を挿入して隙間Sを確保する方法や、図6(b)のように上部の板材Wuに上方に向けて屈曲する屈曲部47を設けて隙間Sを確保する方法でもよい。
【0051】
なお、板材Wu,Wd相互間の隙間を形成するための前記した突起部5は、下側の板材Wdに設けても構わない。
【0052】
ただし、2枚の板材Wu,Wd相互で剛性が異なるとすれば、加圧する上部の板材Wuを剛性の低いものとした方が加圧しやすく、したがってこの加圧しやすい上部の板材、つまり剛性の低い板材に対してエンボス加工を行う方が成形性がよいので、2枚の板材Wu,Wd相互の剛性が異なる場合には、上部の板材に突起部5を設けた方がよい。
【0053】
また、上部の板材Wuに突起部5を設けた場合、溶接する上側から突起部5と溶接部位との位置関係を確認できるため、溶接作業自体および溶接後の品質確認などが容易である。
【0054】
図7は、突起部5と加圧ローラ11との間隔をH、加圧ローラ11と加圧ピン15との間隔をE、突起部5の高さ相当寸法をt0、加圧ピン15における隙間寸法をt、加圧ローラ11と加圧ピン15との高さ寸法差をhとした場合の、各値相互の関係を示している。
【0055】
このような各値相互の位置関係において、突起部5の高さは、t0/H>h/E、すなわち、t0>(H/E)×h、が成り立つように設定する。この式が成り立たない場合には、突起部5の高さ(突起部5の高さ相当寸法t0)が低すぎることになり、隙間寸法tも適正値より小さくなってしまう。
【0056】
このように、突起部5の高さを、最低値で管理することで、ある一定の幅で管理する場合に比較して管理が容易となる。
【0057】
本発明の第2の実施形態として、加圧ローラ11の加圧によって発生する荷重を測定し、この測定した荷重に応じて、ワークWに対する加圧ローラ11と加圧ピン15を合わせた全体の加圧力を調整する。これにより、加圧力が高すぎることによるワークW(下側の板材Wd)の変形を防ぎ、板材Wu,Wd相互の隙間の変形を防いで隙間寸法tを適正なものとする。また、加圧に必要なエネルギを最小限とすることができる。
【0058】
また、必要な加圧力の変化を記録することで、突起部5の精度変化、板材Wu,Wd相互間の合わせの精度変化をモニタリングすることができる。
【0059】
例えば、前記図5(a)〜(c)において、加圧ローラ11による荷重が一定となるように合計加圧力を変化させる。表1は、そのときの加圧力を示す。
【表1】
【0060】
加圧ローラ11による荷重を一定の100Nとなるようにした状態で、加圧ピン15による荷重が、図5(a)では200N,図5(b)では100N,図5(c)では300Nとなり、合計加圧力は、図5(a)で300N,図5(b)で200N,図5(c)で400Nとなる。すなわちこの場合、加圧ピン15は、加圧ピン15が突起部5に近い位置にあるほど、また突起部5の高さ寸法が大きいほど、2枚の板材Wu,Wdへの加圧力を大きくしている。
【0061】
このように、板材Wu,Wd相互が密着して加圧される部位の荷重を一定とすることで、下側の板材Wdの変形を防ぎ、溶接部での隙間寸法tを適正に確保することができる。
【0062】
これに対し、表2は、合計加圧力を図5(a)〜(c)のすべてにおいて一定の400Nとした場合の、加圧ローラ11と加圧ピン15による荷重を示している。この場合には、加圧ローラ11における荷重が図5(a)〜(c)で互いに変化してしまい、この結果下側の板材Wdが、例えば荷重が300Nとなる図5(b)では変形し、溶接部での隙間寸法tを適正に確保することができなくなる。
【表2】
【0063】
図8は、本発明の第3の実施形態に係わる、前記図4(b)に対応する正面図である。この実施形態は、2枚の板材Wu,Wdを間に挟んで加圧ローラ11と反対側に、下側の板材Wdを受けて、加圧ローラ11との間で2枚の板材Wu,Wdを挟持するワーク受け部としてのローラ側受け治具49を設けるとともに、2枚の板材Wu,Wdを間に挟んで加圧ローラ11と反対側の、突起部5に対応する部位に、下側の板材Wdを受けるワーク受け部としての突起部側受け治具51を設けている。
【0064】
これにより、特に板材Wdの剛性が低く、2枚の板材Wu,Wd相互の合わせばらつきを矯正するためなどに、加圧力を高めた場合に、板材Wdの変形を防止することができ、隙間寸法tを精度よく確保することができる。
【0065】
なお、上記したローラ側受け治具49や突起部側受け治具51に代えて、板材Wd自体に補強材を設けて強度を高め、変形を防ぐようにしてもよい。
【0066】
図9は、本発明の第4の実施形態に係わる、前記図3に対応する斜視図である。この実施形態は、第1の実施形態における1本の加圧ピン15に代えて、2本の加圧ピン53,55により、レーザ光照射部位7に対して溶接進行方向Bの両側の2箇所を加圧する構成としている。ここで、2本の加圧ピン53,55による2箇所の加圧位置は、レーザ光照射部位7から等距離にあるものとする。
【0067】
上記2本の加圧ピン53,55は、図10(a),(b)に示すように、前記図1に示したものと同様なレーザ加工ヘッド1に設けた支持軸57に、リンク機構59を介して支持してある。リンク機構59は、支持軸57に対し左右に延びて上下に揺動可能な横リンク61と、横リンク61の両端に対して上端を回転可能に連結する一方、下端を前記加圧ピン53,55に連結する一対の縦リンク63,65とを、それぞれ備えている。
【0068】
すなわち、図10(a)のように互いに同一高さとなった状態の2本の加圧ピン53,55が、上側の板材Wuに対し、加圧ローラ11の加圧動作に続いて加圧動作を行うと、板材Wuの傾斜に沿ってリンク機構59が図10中で時計回り方向に回転する。この際、2本の加圧ピン53,55の上下高さの平均値が、各ピン53,55相互の中間位置の上下高さ、すなわち第1の実施形態における加圧ピン15の上下高さと同等となり、結果として加圧ローラ11と2本の加圧ピン53,55との間の高さの差(規定寸法h)を、第1の実施形態と同様に確保することができる。
【0069】
このように、2本の加圧ピン53,55によりレーザ照射部位7の両側の2箇所を加圧することで、加圧部位がレーザ照射部位7に対して溶接進行方向同等位置となり、第1の実施形態のように加圧ピン15による加圧部位がレーザ照射部位7より溶接進行方向前方となる場合と比較して、隙間寸法tをより適正なものとすることができる。
【0070】
また、上記した第4の実施形態において、2本の加圧ピン53,55の高さの差を、図示しない加圧部位置検出手段によって検出し、この検出した差が規定値から外れている場合には、異常判定手段によって、溶接位置のずれや突起部5の異常を判定し、溶接作業を停止する処理を行う。
【0071】
図11は、本発明の第5の実施形態に係わるレーザ溶接装置の模式化した平面図である。この実施形態は、前記図1に示した第1の実施形態におけるレーザ加工ヘッド1に対し、加圧ローラ11および加圧ピン15を、溶接点となるレーザ照射部位7を中心として一体的に回転可能に構成している。
【0072】
この場合、図11(a)のように図中で上から下に向かってレーザ加工ヘッド1が移動してレーザ溶接を行っている状態で、図11(b)のように図中で左方向へレーザ加工ヘッド1が移動しつつ連続してレーザ溶接を行う場合、その溶接進行方向がBからBaに変化する方向変換点67で、加圧ローラ11および加圧ピン15を、互いに一体化した状態で図11中で時計回り方向に90度回転させる。この際、レーザ溶接用ロボット19の姿勢はそのままで変化させる必要はない。なお、図11中の符号69で示すものは、溶接ビードである。
【0073】
加圧ローラ11および加圧ピン15を一体的に回転させる具体的な手段としては、図1におけるレーザ加工ヘッド1やヘッド保持具33に、モータおよびこのモータによってこれらに対して回転する部材を取り付け、この回転する部材に加圧ローラ11および加圧ピン15を固定保持させればよい。
【0074】
なお、上記した各実施形態では、ワークWに対して下方に向けて加圧する例を示したが、ワークを起立させた状態で、水平方向に向けて加圧する場合にも本発明を適用することができる。
【0075】
図12は、本発明の第6の実施形態を示すレーザ溶接装置の、前記図1に対応する側面図、図13は、図12の右方向(溶接進行方向Bの前方)から見た正面図である。この実施形態は、第1加圧部として、レーザ加工ヘッド1とは別体の上部治具71を、上側の板材Wuに対して下方に向けて押し付けている。下側の板材Wdの下部には下部治具73を設け、これら各治具71,73でワークWを挟持している。なお、図12では、上部治具71,下部治具73および上側の板材Wuを省略している。
【0076】
ここでのレーザ加工ヘッド1は、図12中で左側に装着した水平可動台座75を備え、図13中で左右方向に延びる水平スライドレール77に沿って水平可動台座75とともにスライド移動する。水平可動台座75には水平駆動エアシリンダ79のピストンロッド81を連結し、水平駆動エアシリンダ79の駆動によりレーザ加工ヘッド1が図13中で左右方向に移動する。
【0077】
水平スライドレール77および水平駆動エアシリンダ79は、上下可動台座83の下部側面に固定してあり、上下可動台座83は図12,13中で上下に延びる上下スライドレール85に沿って移動する。上下可動台座83の上端には上下駆動エアシリンダ87のピストンロッド88を連結し、上下駆動エアシリンダ87の駆動により、上下可動台座83がレーザ加工ヘッド1とともに図12,13中で上下方向に移動する。
【0078】
上下スライドレール85および上下駆動エアシリンダ87は、レーザ溶接用ロボット19に設けたヘッド保持ブラケット89に固定保持させる。
【0079】
そして、このレーザ加工ヘッド1には、前記図1に示した第1の実施形態と同様に加圧ピン15を設けている。また、レーザ加工ヘッド1には、図13に示すように、前記図2におけるローラ保持ブロック9を装着した位置に、上部治具71との相対位置関係を規定する位置規定手段としての位置決め機構91を装着している。
【0080】
位置決め機構91は、レーザ加工ヘッド1から上部治具71に向けて水平方向に延びる水平部材93と、水平部材93の途中から下方に延びる鉛直部材95とをそれぞれ備えている。そして、水平部材93の先端下部に半球形状の上下位置決め用突起97を、当接部として設けるとともに、鉛直部材95の先端側部に同じく半球形状の水平位置決め用突起99を、当接部として上部治具71に対向して設けている。
【0081】
次に、上記図12,13に示した第6の実施形態の作用を説明する。上下治具71と下部治具73との間でワークWを挟持して加圧し、この加圧状態で、レーザ加工ヘッド1をレーザ溶接ロボット19により図13に対応する位置まで移動させる。このとき、水平駆動エアシリンダ79および上下駆動エアシリンダ87は、いずれも前進限位置まで各ピストンロッド81および88を前進させておく。
【0082】
そして、上記図13の状態から、レーザ溶接ロボット19の教示動作により、レーザ加工ヘッド1を、図13中で右方向に移動させて、水平位置決め用突起99を上部治具71の側面に当接させ、さらに押し込む。これにより、ピストンロッド81は後退して後退限位置にて停止する。このピストンロッド81の後退限位置で、第1加圧部である上部治具71と加圧ピン15との間の水平方向間隔が、前記図1に示した第1の実施形態における加圧ローラ11と加圧ピン15との間の同間隔と同等となる。
【0083】
続いて、レーザ溶接ロボット19の教示動作により、レーザ加工ヘッド1を、図13中で下方に向けて移動させて、上下位置決め用突起97を上部治具71の上面に当接させ、さらに押し込む。これにより、ピストンロッド88は後退して後退限位置にて停止する。このピストンロッド88の後退限位置で、第1加圧部である上部治具71と加圧ピン15との上下(高さ)方向間隔が、前記図1に示した第1の実施形態における加圧ローラ11と加圧ピン15との同間隔(規定寸法h)と同等となる。
【0084】
このように、上部治具71に対する加圧ピン15の相対位置を位置決めした状態では、図13に対する図14の模式図で示すように、加圧ピン15により上側の板材Wuを加圧し、規定の隙間寸法tを確保した状態となる。
【0085】
上記した第6の実施形態によれば、上部治具71が溶接前にワークWを下部治具73との間で挟持固定し、板材Wuと板材Wdとを互いに密着させておくことで、レーザ加工ヘッド1の加圧によるワークWの位置ずれを防止することができる。また、第1加圧部を上部治具71としてレーザ加工ヘッド1と別体としているので、レーザ加工ヘッド1側の構造を簡素化することができる。
【0086】
さらに、2枚の板材Wu,Wd相互の合わせ状態の修正は上部治具71によって行い、加圧ピン15での加圧で行う必要がないので、加圧ピン15の加圧力を第1の実施形態に比較して弱くすることができ、上側の板材Wuの変形を抑えることができる。
【0087】
また、レーザ加工ヘッド1は、ワークWを挟持している上部治具71に対し、位置決め機構91により位置決めしているので、レーザ加工ヘッド1のワークWに対する姿勢が安定し、その結果隙間寸法tも安定して溶接品質が向上する。
【0088】
図15は、本発明の第7の実施形態を示すレーザ溶接装置の、前記図14に対応する模式図である。この実施形態は、前記図14における位置決め機構91に代えて、位置決め機構101を設けている。
【0089】
位置決め機構101は、上部治具71の上面位置を検出する位置検出手段としての上下位置センサ部103を備えるとともに、上部治具71の図15中で左側面位置を検出する位置検出手段としての左右位置センサ部105を備えている。
【0090】
そして、この実施形態においては、レーザ溶接ロボット19の教示動作によって、加圧ピン15が前記図13における加圧ピン15とほぼ同じ位置となるようレーザ加工ヘッド1を移動させ、この状態から、さらにレーザ溶接ロボット19の教示動作により、レーザ加工ヘッド1を図15中で右方向に移動させて、左右位置センサ部105による上部治具71の検出動作をまず実施する。
【0091】
左右位置センサ部105が上部治具71を検出したら、レーザ加工ヘッド1の上記した図15中での右方向への移動を停止させ、今度はレーザ溶接ロボット19の教示動作により、レーザ加工ヘッド1を図15中で下方向に移動させて、上下位置センサ部103による上部治具71の検出動作を実施する。そして、上下位置センサ部103が上部治具71を検出したら、レーザ加工ヘッド1の上記した図15中での下方向への移動を停止させる。
【0092】
この状態で、レーザ加工ヘッド1は上部治具71に対する相対位置が規定され、このとき加圧ピン15は、2枚の板材Wu,Wd相互間に前記した規定の隙間寸法tを確保するよう上側の板材Wuを加圧している。
【0093】
上記した第7の実施形態によれば、前記図12〜図14に示した第6の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第7の実施形態によれば、第6の実施形態のような位置決め機構91をレーザ加工ヘッド1とともにスライド移動させるスライド機構が不要な分、構造を簡素化することができる。
【0094】
図16は、本発明の第8の実施形態を示すレーザ溶接装置の、前記図14に対応する模式図である。この実施形態は、加圧ローラ11および加圧ピン15を、第1の実施形態と同様にレーザ加工ヘッド1に一体化する一方、被位置決め部としての治具107を下側の板材Wdに当接させて位置決めしている。
【0095】
そして、レーザ加工ヘッド1に第1の実施形態と同様な位置決め機構91を設け、この位置決め機構91の水平部材93および鉛直部材95により治具107に対して位置決めを行うことで、レーザ加工ヘッド1のワークWに対する姿勢を適正に確保する。
【0096】
上記した位置決め機構91および治具107により加圧部位置規定手段を構成している。
【0097】
なお、上述の第6〜第8の各実施形態においては、位置決め機構91または101を、レーザ加工ヘッド1の両側に一対設けてもよい。これにより、レーザ照射部位7に対し、突起部5と治具71との位置が逆転した場合に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すレーザ溶接装置の側面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図1のレーザ溶接装置によりレーザ溶接を行っている状態を簡略化して示した斜視図である。
【図4】図1のレーザ溶接装置によるワークに対する加圧動作を示す動作説明図である。
【図5】図1のレーザ溶接装置における突起部,加圧ローラおよびレーザ照射部位の位置関係や、突起部の高さが変化した例を示す説明図である。
【図6】第1の実施形態の突起部に代わる隙間確保部の構成を示す説明図で、(a)は2枚の板材相互間に異材を挿入した例、(b)は上側の板材に上方に向けて屈曲する屈曲部を設けた例である。
【図7】突起部,加圧ローラ,加圧ピン相互の間隔や、突起部の高さ、加圧ピンにおける隙間寸法、加圧ローラと加圧ピンとの高さ寸法差に基づく、各値相互の関係を示す説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係わる、図4(b)に対応する正面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係わる、図3に対応する斜視図である。
【図10】第4の実施形態における加圧前の状態(a)と、加圧後の状態(b)とをそれぞれ示す動作説明図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係わるレーザ溶接装置の溶接動作を示す模式化した平面図である。
【図12】本発明の第6の実施形態を示すレーザ溶接装置の、図1に対応する側面図である。
【図13】図12の右方向(溶接進行方向前方)から見た正面図である。
【図14】図13に示したレーザ溶接装置の模式図である。
【図15】本発明の第7の実施形態を示すレーザ溶接装置の、図14に対応する模式図である。
【図16】本発明の第8の実施形態を示すレーザ溶接装置の、図14に対応する模式図である。
【符号の説明】
【0099】
W ワーク
Wu,Wd 板材
5 突起部(隙間確保部)
7 レーザ光照射部位
11 加圧ローラ(第1加圧部)
15 加圧ピン(第2加圧部)
45 異材(隙間確保部)
47 屈曲部(隙間確保部)
49 ローラ側受け治具(ワーク受け部)
51 突起部側受け治具(ワーク受け部)
91 位置決め機構(位置規定手段,加圧部位置規定手段)
97 上下位置決め用突起(当接部)
99 水平位置決め用突起(当接部)
101 位置決め機構(位置規定手段)
103 上下位置センサ部(位置検出手段)
105 左右位置センサ部(位置検出手段)
107 治具(被位置決め部,加圧部位置規定手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱によりガスが発生する被覆層にて表面処理されたワークを2枚の板材の重ね継手でレーザ溶接を行うレーザ溶接装置において、前記2枚の板材相互間に隙間を形成するための隙間確保部を設けるとともに、この隙間確保部の近傍に、前記2枚の板材相互を接触させるべく加圧する第1加圧部を設け、この第1加圧部と前記隙間確保部との間における前記2枚の板材相互間に隙間を有するレーザ光照射部位近傍に対し、前記隙間を確保した状態で前記2枚の板材相互が接触する方向に加圧し、かつ前記第1加圧部に対して加圧方向に規定寸法ずれた位置に設置した第2加圧部を設けたことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
前記第2加圧部は、前記レーザ光照射部位近傍における前記2枚の板材相互の隙間を、前記加熱により発生するガスを逃がし得る最低許容値以上とするよう加圧することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項3】
前記2枚の板材を間に挟んで前記第1加圧部と反対側に、第1加圧部との間で前記2枚の板材を挟持するワーク受け部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ溶接装置。
【請求項4】
前記2枚の板材を間に挟んで前記第1加圧部と反対側の、前記隙間確保部に対応する部位に、前記2枚の板材を受けるワーク受け部を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項5】
前記第1,第2各加圧部を、前記レーザ加工ヘッド対し、前記レーザ光の中心軸線を中心として一体的に回転可能としたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項6】
前記第1加圧部を、レーザ光を照射するレーザ加工ヘッドと別体とする一方、前記第2加圧部を前記レーザ加工ヘッドに一体化し、前記第2加圧部が、前記隙間を確保した状態で前記2枚の板材相互が接触する方向に加圧する際に、前記第1加圧部と前記第2加圧部との相対位置関係を規定する位置規定手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項7】
前記位置規定手段は、前記第1加圧部に当接する当接部として、前記レーザ加工ヘッドに一体化して設けられていることを特徴とする請求項6に記載のレーザ溶接装置。
【請求項8】
前記位置規定手段は、前記2枚の板材相互を接触させるべく加圧した状態の前記第1加圧部の位置を検出する位置検出手段の検出動作に基づいて、前記第1加圧部と前記第2加圧部との相対位置関係を規定することを特徴とする請求項6に記載のレーザ溶接装置。
【請求項9】
前記第1加圧部および前記第2加圧部を、レーザ光を照射するレーザ加工ヘッドに一体化し、前記第1加圧部および前記第2加圧部が、前記2枚の板材を加圧した状態で、この2枚の板材に対する位置関係を規定する加圧部位置規定手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項10】
前記加圧部位置規定手段は、前記ワーク側に設置した被位置決め部と、前記レーザ加工ヘッドに設けられ、前記被位置決め部に当接する当接部とを備えることを特徴とする請求項9に記載のレーザ溶接装置。
【請求項11】
前記第1加圧部による前記2枚の板材への加圧力を一定とした状態で、前記第2加圧部が、前記レーザ光照射部位近傍に、前記隙間を確保した状態で前記2枚の板材相互が接触する方向に加圧することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項12】
前記第2加圧部は、前記隙間確保部に近い位置にあるほど、前記2枚の板材への加圧力を大きくすることを特徴とする請求項11に記載のレーザ溶接装置。
【請求項13】
前記第2加圧部は、前記隙間確保部により確保される前記2枚の板材相互の隙間が大きいほど、前記2枚の板材への加圧力を大きくすることを特徴とする請求項11に記載のレーザ溶接装置。
【請求項14】
前記第2加圧部は、前記レーザ光照射部位に対して溶接進行方向両側の2箇所を加圧する構成としたことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項15】
前記第2加圧部の2箇所の加圧部位を、加圧方向に相対移動可能とし、それぞれの加圧方向の位置を検出する加圧部位置検出手段を設け、この位置検出手段が検出する各位置の差が規定値から外れている場合に、加圧異常であると判定する異常判定手段を設けたことを特徴とする請求項14に記載のレーザ溶接装置。
【請求項16】
加熱によりガスが発生する被覆層にて表面処理されたワークを2枚の板材の重ね継手でレーザ溶接を行うレーザ溶接方法において、前記2枚の板材相互間に隙間確保部によって隙間を形成し、前記隙間確保部近傍に対し、前記2枚の板材相互を接触させるべく第1加圧部により加圧し、この加圧状態で、前記第1加圧部と前記隙間確保部との間における前記2枚の板材相互間に隙間を有するレーザ光照射部位近傍を、前記隙間を確保した状態で前記2枚の板材相互が接触する方向に、前記第1の加圧部に対して加圧方向に規定の寸法だけずれた位置に設置した第2加圧部により加圧することを特徴とするレーザ溶接方法。
【請求項1】
加熱によりガスが発生する被覆層にて表面処理されたワークを2枚の板材の重ね継手でレーザ溶接を行うレーザ溶接装置において、前記2枚の板材相互間に隙間を形成するための隙間確保部を設けるとともに、この隙間確保部の近傍に、前記2枚の板材相互を接触させるべく加圧する第1加圧部を設け、この第1加圧部と前記隙間確保部との間における前記2枚の板材相互間に隙間を有するレーザ光照射部位近傍に対し、前記隙間を確保した状態で前記2枚の板材相互が接触する方向に加圧し、かつ前記第1加圧部に対して加圧方向に規定寸法ずれた位置に設置した第2加圧部を設けたことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
前記第2加圧部は、前記レーザ光照射部位近傍における前記2枚の板材相互の隙間を、前記加熱により発生するガスを逃がし得る最低許容値以上とするよう加圧することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項3】
前記2枚の板材を間に挟んで前記第1加圧部と反対側に、第1加圧部との間で前記2枚の板材を挟持するワーク受け部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ溶接装置。
【請求項4】
前記2枚の板材を間に挟んで前記第1加圧部と反対側の、前記隙間確保部に対応する部位に、前記2枚の板材を受けるワーク受け部を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項5】
前記第1,第2各加圧部を、前記レーザ加工ヘッド対し、前記レーザ光の中心軸線を中心として一体的に回転可能としたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項6】
前記第1加圧部を、レーザ光を照射するレーザ加工ヘッドと別体とする一方、前記第2加圧部を前記レーザ加工ヘッドに一体化し、前記第2加圧部が、前記隙間を確保した状態で前記2枚の板材相互が接触する方向に加圧する際に、前記第1加圧部と前記第2加圧部との相対位置関係を規定する位置規定手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項7】
前記位置規定手段は、前記第1加圧部に当接する当接部として、前記レーザ加工ヘッドに一体化して設けられていることを特徴とする請求項6に記載のレーザ溶接装置。
【請求項8】
前記位置規定手段は、前記2枚の板材相互を接触させるべく加圧した状態の前記第1加圧部の位置を検出する位置検出手段の検出動作に基づいて、前記第1加圧部と前記第2加圧部との相対位置関係を規定することを特徴とする請求項6に記載のレーザ溶接装置。
【請求項9】
前記第1加圧部および前記第2加圧部を、レーザ光を照射するレーザ加工ヘッドに一体化し、前記第1加圧部および前記第2加圧部が、前記2枚の板材を加圧した状態で、この2枚の板材に対する位置関係を規定する加圧部位置規定手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項10】
前記加圧部位置規定手段は、前記ワーク側に設置した被位置決め部と、前記レーザ加工ヘッドに設けられ、前記被位置決め部に当接する当接部とを備えることを特徴とする請求項9に記載のレーザ溶接装置。
【請求項11】
前記第1加圧部による前記2枚の板材への加圧力を一定とした状態で、前記第2加圧部が、前記レーザ光照射部位近傍に、前記隙間を確保した状態で前記2枚の板材相互が接触する方向に加圧することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項12】
前記第2加圧部は、前記隙間確保部に近い位置にあるほど、前記2枚の板材への加圧力を大きくすることを特徴とする請求項11に記載のレーザ溶接装置。
【請求項13】
前記第2加圧部は、前記隙間確保部により確保される前記2枚の板材相互の隙間が大きいほど、前記2枚の板材への加圧力を大きくすることを特徴とする請求項11に記載のレーザ溶接装置。
【請求項14】
前記第2加圧部は、前記レーザ光照射部位に対して溶接進行方向両側の2箇所を加圧する構成としたことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項15】
前記第2加圧部の2箇所の加圧部位を、加圧方向に相対移動可能とし、それぞれの加圧方向の位置を検出する加圧部位置検出手段を設け、この位置検出手段が検出する各位置の差が規定値から外れている場合に、加圧異常であると判定する異常判定手段を設けたことを特徴とする請求項14に記載のレーザ溶接装置。
【請求項16】
加熱によりガスが発生する被覆層にて表面処理されたワークを2枚の板材の重ね継手でレーザ溶接を行うレーザ溶接方法において、前記2枚の板材相互間に隙間確保部によって隙間を形成し、前記隙間確保部近傍に対し、前記2枚の板材相互を接触させるべく第1加圧部により加圧し、この加圧状態で、前記第1加圧部と前記隙間確保部との間における前記2枚の板材相互間に隙間を有するレーザ光照射部位近傍を、前記隙間を確保した状態で前記2枚の板材相互が接触する方向に、前記第1の加圧部に対して加圧方向に規定の寸法だけずれた位置に設置した第2加圧部により加圧することを特徴とするレーザ溶接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−909(P2007−909A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185342(P2005−185342)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]