説明

レーザ衝撃ピーニング方法およびその方法に用いるコーティングならびにその方法で作られた物品

【課題】閉じ込められた閉込め媒体によるレーザ衝撃ピーニングコーティングを提供すること。
【解決手段】物体の表面をレーザ衝撃ピーニングする一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング(57)は、透明閉込め層(66)から離間したアブレーション媒体層(64)と、これらの間にある透明液体閉込め媒体(68)(「透明」とは、レーザ衝撃ピーニングに使用するレーザビームに対して透明であることを意味する)とを有する。透明液体閉込め媒体(68)の例として、レーザビームを発射する表面上に流体の閉込めカーテンを流すことのない、水と、水と寒天との混合物とがある。一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング(57)は、接着層(60)がアブレーション媒体層(64)の第1の側(71)に配置されるテープ(59)としてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ衝撃ピーニングに関し、詳細には、レーザ衝撃ピーニングのコーティングおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ衝撃ピーニング(LSP)またはレーザ衝撃処理は、物品の表面をレーザ衝撃ピーニングすることにより深い圧縮残留応力(compressive residual stresses)が加わる領域を生成するためのプロセスである。レーザ衝撃ピーニングは、米国特許第3850698号「Altering material Properties」、米国特許第4401477号「Laser Shock Processing」、および米国特許第5131957号「Material Properties」に開示された方法と同様に、一般に、高出力パルスレーザおよび低出力パルスレーザからの1つまたは複数の照射パルスを使用して、物品の表面に向けて強力な衝撃波を発生させる。当業界で理解され本明細書中で使用されているレーザ衝撃ピーニングは、レーザ光源からのパルスレーザビームを使用して、表面の薄層若しくはプラズマを形成する表面のコーティング(テープもしくは塗料)を瞬間的にアブレーションまたは気化することにより、レーザビームの衝突点に向けて爆発力を発生させて、表面の一部に強力で局所的な圧縮力を発生させることを意味する。
【0003】
レーザ衝撃ピーニングは、ガスタービンエンジン分野における多くの適用について開発が進められており、この適用のいくつかが、本出願人にすべて譲渡された、米国特許第5756965号「On The Fly Laser Shock Peening」、米国特許第5591009号「Laser shock peened gas turbine engine fan blade edges」、米国特許第5531570号「Distortion control for laser shock peened gas turbine engine compressor blade edges」、米国特許第5492447号「Laser shock peened rotor components for turbomachinery」、米国特許第5674329号「Adhesive tape covered laser shock peening」、および米国特許第5674328号「Dry tape covered laser shock peening」に開示されている。
【0004】
約20〜50ジュールの高エネルギーレーザビームまたは約3〜10ジュールの低エネルギーレーザビームが使用されているが、他のレベルについても検討されている。例えば、1997年10月7日発行の米国特許第5674329号(Mannava他)「LSP process using high energy lasers」および1999年8月3日発行の米国特許第5932120号(Mannava他)「LSP process using low energy lasers」を参照されたい。ネオジウムドープしたイットリウムアルミニウムガーネット(Nd YAG)、Nd:YLF等の異なるレーザ材料を使用して、低エネルギーレーザビームを発生させることができる。レーザ衝撃ピーニングプロセスは、一般に、物品上に流れた水もしくは他の閉込め液体媒体のカーテンを使用して、プラズマ閉込め媒体を提供するものである。この媒体により、プラズマは、LSP効果を構成するところの、塑性変形とこれに伴う残留応力パターンとを生成する衝撃波圧力を迅速に達成することが可能となる。水のカーテンは閉込め媒体を提供する。即ち、プロセスにより発生した衝撃波を、閉じ込め、さらに、レーザ衝撃ピーニング対象の構成要素の材料の大部分に向けなおすこととなり、有益な圧縮残留応力を発生させる。空間的な制約または構成要素の形状により、ある適用については、流水を送出することができない。本出願人にすべて譲渡された、米国特許第6677037号「Laser Shock Peening Tape, Method And Article」、米国特許第5674329号「Adhesive tape covered laser shock peening」、および米国特許第5674328号「Dry tape covered laser shock peening」は、流水のカーテンまたは別の透明閉込め材料のシートを含む、LSP処理で使用する種々のコーティングおよび閉込め媒体について記載している。空間的な制約またはレーザ衝撃ピーニングされる構成要素の形状により、ある適用については、必ずしも流水を送出することができるわけではない。閉込め媒体を包装し、このパッケージを構成要素に取り付けて、所望のLSP効果を達成することが望ましい。
【特許文献1】米国特許第3850698号
【特許文献2】米国特許第4401477号
【特許文献3】米国特許第5131957号
【特許文献4】米国特許第5756965号
【特許文献5】米国特許第5591009号
【特許文献6】米国特許第5531570号
【特許文献7】米国特許第5492447号
【特許文献8】米国特許第5674329号
【特許文献9】米国特許第5674328号
【特許文献10】米国特許第5932120号
【特許文献11】米国特許第6677037号
【特許文献12】米国特許第6049058号
【特許文献13】米国特許第6245486号
【特許文献14】米国特許第6558485号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一体型レーザ衝撃ピーニングコーティングは、透明閉込め層から離間したアブレーション媒体層と、これらの間にある透明液体閉込め媒体とを含む。「透明」とは、レーザ衝撃ピーニングに使用するレーザビームに対して透明であることを意味する。水または水と寒天との混合物が、適切な透明液体閉込め媒体の例である。一体型レーザ衝撃ピーニングコーティングは、アブレーション媒体層が対向する第1の側と第2の側とを有し、接着層が第1の側に配置され、透明液体閉込め媒体が、透明閉込め層により第2の側に対して閉じ込められるテープとすることができる。一体型レーザ衝撃ピーニングコーティングは、物品の基板を一体型レーザ衝撃ピーニングコーティングでコーティングするレーザ衝撃ピーニングを受ける準備の整った物品に使用することができる。
【0006】
物品をレーザ衝撃ピーニングする方法は、物品の基板のレーザ衝撃ピーニング面を一体型レーザ衝撃ピーニングコーティングでコーティングするステップを含む。一体型レーザ衝撃ピーニングコーティングは、透明閉込め層から離間したアブレーション媒体層を含む。透明液体閉込め媒体が、一体型レーザ衝撃ピーニングコーティングとアブレーション媒体層との間に配置される。透明とは、レーザ衝撃ピーニングに使用するレーザビームに対して透明であることを意味する。コーティングされた基板上に十分な出力でレーザビームを発射することにより、レーザ衝撃ピーニング面から基板内へ延びる深い圧縮残留応力を有する領域を形成する、アブレーション媒体層の少なくとも一部を気化する。発射ステップは、レーザビームと物品とを連続して移動させながら、コーティングされた基板に比較的一定の間隔で繰り返すパルスを有するレーザを発射するステップを含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1、2および3では、ファン動翼8が、動翼台36から動翼先端38へ半径方向外側に延びる、チタン合金製のエーロフォイル34を有する。ファン動翼8は物品12の例示であり、硬質合金基板10を有する。この上に、一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング57が形成され、レーザ衝撃ピーニングのためにこのコーティングを使用する方法が適用される。基板10のレーザ衝撃ピーニング面54は、透明閉込め層66から離間したアブレーション媒体層64とこれらの間の透明液体閉込め媒体68とを含む一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング57により被覆されている。透明液体閉込め媒体68は、アブレーション媒体層64と透明閉込め層66との間に閉じ込められた閉込め層として働く。
【0008】
図示したように、例示的な実施形態では、一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング57は、アブレーション媒体層64が対向する第1の側71と第2の側73を有するテープ59である。接着層60が第1の側71に配置され、透明液体閉込め媒体68がアブレーション媒体層64の第2の側73に対して閉じ込められる。ビニル等の透明プラスチックを透明閉込め層66として使用することができる。
【0009】
一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング57は、フィルムまたはテープ59の形とすることができる。一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング57がテープ状の場合には、粘着性の接着層60を含む。この点で、一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング57がフィルム状の場合には、一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング57を塗布する前に、適当な接着材料を、レーザ衝撃ピーニング面54に直接塗布して接着層60としてもよい。アブレーション層および透明閉込め層として提案される材料には、ビニルプラスチックフィルム等のプラスチックが挙げられよう。この点で、アブレーション媒体を黒に着色し、閉込め層を透明にしてもよい。このフィルムまたはテープを衝撃ピーニング面54に対して擦るか押圧するかして、アブレーション層とレーザ衝撃ピーニング面との間に残る泡を除去すべきである。一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング57は、基板10をコーティングして、レーザ衝撃ピーニングコーティング面55を形成する。
【0010】
図1および2は、航空機のターボファンガスタービンエンジンのファン動翼8の概略図であり、ファン動翼8が、例示的に、一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング57を使用したレーザ衝撃ピーニングを受ける。ファン動翼8は、動翼台36から動翼先端38へ半径方向外側に延びるエーロフォイル34を含む。ファン動翼8は翼根部40を含み、この翼根部40は、台36から翼根部40の半径方向内端部37へ半径方向内側に延びる。翼根部40の半径方向内端部37には、動翼シャンク44により台36に接続された動翼根部42がある。エーロフォイル34は、エーロフォイルの前縁LEと後縁TEとの間で翼弦方向に延びる。エーロフォイル34の翼弦Cは、図2に示す動翼の各横断面での前縁LEと後縁TEとの間の線である。エーロフォイル34の圧力側46は、矢印Vで示す一般的な回転方向を向き、吸込側48は、エーロフォイルの他側に位置し、中間線MLは、一般に、翼弦方向に2つの面の中間に配置される。
【0011】
ファン動翼8は、動翼台36から動翼先端38へエーロフォイル34の前縁LEおよび後縁TEに沿ってそれぞれ延びる前縁部50および後縁部70を有する。前縁部50および後縁部70は第1の幅W1および第2の幅W2をそれぞれ含み、前縁部50および後縁部70が、エーロフォイル34の前縁および後縁に沿って生じる切欠き52および裂け目を取り囲むようになっている。エーロフォイル34は、エンジン動作中に回転するファン動翼8が発生する遠心力により生じる、大きな引張り応力場の影響を受ける。また、エーロフォイル34は、エンジン動作中に発生する振動の影響を受け、切欠き52および裂け目により高サイクル疲労応力が増加して、切欠き52および裂け目の周りに更なる応力集中を生じさせる。
【0012】
切欠きおよび裂け目から生じるひび割れ線に沿った動翼の一部の疲労破壊に対処するために、図2に示すように、圧力側46および吸込側48の少なくとも一方(好ましくは両方)は、レーザ衝撃ピーニング面54とプレストレスト(pre-stressed)領域56とを有する。これらの領域は、レーザ衝撃ピーニング面からエーロフォイル34内へ延び、レーザ衝撃ピーニング(LSP)により加えられる深い圧縮残留応力を有する。好ましくは、プレストレスト領域56は、幅W1およびW2全体にわたって、翼弦方向に前縁部50および後縁部70と同一の広がりを持ち、幅の少なくとも一部が一体化するようにエーロフォイル34内に十分に深く延びる。図では、プレストレスト領域56が、前縁LEに沿って半径方向に前縁部50と同一の広がりを持っているが、これより短くてもよい。
【0013】
図3および4では、動翼8がロボットアーム28内に取り付けられて、移動され位置決めされる。この実行中にレーザ衝撃ピーニングが行われる。ここでは、本発明が実用上の実施形態として、前縁部50をレーザ衝撃ピーニングすることが描かれており、具体的には、レーザ衝撃ピーニング面54が、重なり合う(複数の)レーザ衝撃ピーニング円形スポット58を有する一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング57により被覆されるものとして、例示される。一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング57として、粘着テープ59の層が代表的であるが、フィルム状であってもよい。
【0014】
図4では、レーザ衝撃ピーニング装置1が示される。このレーザ衝撃ピーニング装置1は、レーザビーム装置と光学系35とを含む。レーザビーム装置は、発振器と前段増幅器とを持つ発生器31と、ビームスプリッタ(このスプリッタは、前段増幅されたレーザビームを、第1の増幅器30および第2の増幅器32をそれぞれ有する2つの光伝送回路に供給する)とを有する。工学系35は、レーザ衝撃ピーニングコーティング面55および一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング57とにレーザビーム2を伝送して集束させる光学素子を有する。コントローラ24を使用してレーザビーム装置を変調して作動させ、こうして、レーザビーム2を制御しつつレーザ衝撃ピーニングコーティング面55上に発射することができる。
【0015】
レーザビーム衝撃による圧縮プレストレスト領域56の深い圧縮残留応力は、一般に、レーザ衝撃ピーニング面54から、レーザ衝撃による圧縮残留応力の加わる領域内へ約20〜50ミルの深さまで延びる約50〜150KPSI(キロポンド/平方インチ)(3515〜10550(kgf/cm))である。レーザビーム衝撃による深い圧縮残留応力は、レーザ衝撃ピーニングコーティング面55に対して高エネルギーのレーザビーム2を数ミル焦点をずらして繰り返し発射することにより発生する。一般に、レーザビーム2は、ギガワット/cmの大きさの最大出力密度を有し、従来技術のコーティング面55上を流れる水または他の流体のカーテンを使用せずに発射される。アブレーション媒体がアブレーションされてプラズマを発生させ、これにより材料表面に衝撃波が生じる。これらの衝撃波は、透明液体閉込め媒体68または閉込め層によりレーザ衝撃ピーニング面54側へ向けなおされ、レーザ衝撃ピーニング面54下方の材料内で移動する衝撃波(圧力波)を発生させる。これらの衝撃波の振幅および量により、圧縮応力の深さおよび強度が決まる。一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング57を使用して、標的面を保護し、プラズマを発生し、爆発を閉じ込め、衝撃波をレーザ衝撃ピーニング面54に向ける。
【0016】
図4に示すように、レーザ衝撃ピーニングコーティング面55への複数列の発射によりコーティング面55がレーザ衝撃ピーニングされるべく、実行中にレーザを連続して発射させることができる。本発明の方法の好ましい実施形態は、隣接するレーザ衝撃ピーニング円形スポットが異なる列に当たるように、レーザビームをテープ面に連続して発射しながら、動翼を連続して移動させるステップを含む。しかし、ビームと面とが相対移動するのであれば、代わりにレーザビームを移動させてもよい。レーザビームと物品12とを連続して移動させながら、コーティングされた基板10に比較的一定の間隔で繰り返すパルスを有するレーザを発射させる。
【0017】
図4および5は、このような4本の列S1〜S4のレーザ衝撃ピーニング円形スポット58(円で示す)のパターンを示す。列S1は実線の円で示されているのに対し、その他の列は点線の円で示され、横列中心線62に沿って対応する中心Xを持つ、隣接しないレーザ衝撃ピーニング円形スポット58を有する特徴を示している。列のパターンは、レーザ衝撃ピーニングコーティング面55を完全に被覆している。レーザ衝撃ピーニング円形スポット58は、重なり合うレーザ衝撃ピーニング円形スポットの横列74に直径Dを有する。パターンは、レーザ衝撃ピーニングコーティング面55上の重なり合う衝撃ピーニング円形スポットの、複数の重なった横列74とすることができる。第1の重なりは、所与の横列の隣接するレーザ衝撃ピーニング円形スポット58間にあり、一般に、隣接するレーザ衝撃ピーニング円形スポット58の中心X間の第1のずれO1により画定され、直径Dの約30〜50%以上で変化することができる。第2の重なりは、隣接する横列の隣接するレーザ衝撃ピーニング円形スポット58間にあり、一般に、隣接する横列中心線62間の第2のずれO2により画定され、適用およびレーザビームの強度またはフルエンスに応じて直径Dの約30〜50%で変化することができる。第3の重なりは、隣接する横列74の隣接するレーザ衝撃ピーニング円形スポット58の中心X間の直線のずれO3の形であり、特定の適用に応じて直径Dの約30〜50%で変化することができる。
【0018】
本方法は、エーロフォイルの表面に目に見える影響や損傷を与えることなく、未使用のテープまたはほぼ未使用のテープのみをアブレーションすることができるように構成される。これは、動翼の動作に望ましくない空力作用を及ぼすおそれのある、レーザによる小さな欠陥または再溶解さえも防止するためである。パターン全体を被覆するために複数列が必要であり、レーザ衝撃ピーニング面54の再コーティングがレーザ発射の各列間で行われる。このレーザ発射の各列は、しばしば「レップ(rep)」と呼ばれる発射間隔を持つ複数のレーザ発射またはパルスを有する。レップ中に、部品を移動させて、次のレーザ衝撃ピーニング円形スポット58の位置で次のパルスが発生するようにする。好ましくは、部品を連続して移動させ、レーザビームのパルスまたは発射時に適切な位置にあるようにタイミングを取る。各列の1回または複数回の繰返しを使用して、各レーザ衝撃ピーニング円形スポット58に複数回当てるようにしてもよい。これにより、各発射またはレーザパルスで使用するレーザ出力を少なくすることができる。
【0019】
図6では、本発明によるレーザ衝撃ピーニングプロセスの代替形態が示される。このプロセスにより、5本の横列のレーザ衝撃ピーニングスポットを使用し、4本の列S1、S2、S3、S4でレーザ衝撃ピーニング面54の全域を被覆して、ファン動翼前縁の全体または一部をレーザ衝撃ピーニングすることができる。レーザ衝撃ピーニングプロセスは、第1の列から始まる。この第1の列では、動翼を連続して移動させ、レーザビームを連続して発射またはパルスしながら、列1で4つのスポットずつレーザ衝撃ピーニングする。S1等の所与の列の隣接したレーザ衝撃ピーニングスポット間で移動するように、部品のタイミングを取る。タイミングは、動翼上の連続したレーザ発射のパルス間のレップと一致する。重なり合うレーザ衝撃ピーニング円形スポット58の5本の横列すべてが、ある距離だけ離間した各列のスポットを含み、同列の他のレーザ衝撃ピーニングスポットが周りのテープに作用しないようにする。第1のテーピングによって先に設けられる列1は、図6で完全な実線で示されているが、列S2、S3、S4等の他のレーザ衝撃ピーニングスポットは、点線、一点鎖線、二点鎖線の円でそれぞれ示されている。列S1と列S2との間のような次の列の前に、レーザ衝撃ピーニングされるレーザ衝撃ピーニング面54の全域に再びテーピングされる。この再テーピング処置により、レーザ衝撃ピーニング面のむき出しの金属がレーザビームに直接当たることが避けられる。列間および隣接するスポット間が離間した5本の横列の面積の約30%を被覆するためには、部品が実際に計4回テーピングされるように、1本のテープと3本の再テープとが必要であることがわかっている。これは、代わりとなる塗布および再塗布ステップよりもはるかに迅速で人手および機械が少なくてすむ。2〜5本の横列のあるファン動翼等の所与の部品をレーザ衝撃ピーニングすることが望ましいことがわかっている。各スポット58を3回以上レーザ衝撃ピーニングすることが望ましいこともわかっている。各スポット58に3回当てる場合、計12回のテーピングについて、3組の列S1〜S4に1回のテーピングと11回の再テーピングが必要である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態について、この原理を説明するために完全に説明したが、添付の特許請求の範囲に記載された発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更および改変を好ましい実施形態に加えることができることを理解すべきである。
【0021】
本明細書では、本発明の好ましい例示的な実施形態であると考えられるものについて説明したが、本明細書の教示から、本発明の他の変更が当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲において、このようなすべての変更が本発明の真の趣旨および範囲に確実に含まれることが望ましい。したがって、特許請求の範囲に定義され区別された発明が、米国特許証により確実になることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一体型レーザ衝撃ピーニングコーティングおよびその使用方法の例示的な実施形態を使用してレーザ衝撃ピーニングされた、ガスタービンエンジンのファン動翼の斜視図である。
【図2】図1のファン動翼の横断面図である。
【図3】一体型レーザ衝撃ピーニングコーティングでコーティングされ、レーザ衝撃ピーニングシステム内に取り付けられた、図1の動翼の概略斜視図である。
【図4】図3の一体型レーザ衝撃ピーニングコーティングでコーティングされた動翼が、レーザ衝撃ピーニングされる状態を示す、一部横断面および一部概略図である。
【図5】レーザ衝撃ピーニング面上の、レーザ衝撃ピーニング円形スポットのパターンの概略図である。
【図6】4列のレーザ衝撃ピーニング円形スポットを有する特定のパターンの概略図である。
【符号の説明】
【0023】
10 基板
12 物品
57 一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング
59 テープ
60 接着層
64 アブレーション媒体層
66 透明閉込め層
68 透明液体閉込め媒体
71 第1の側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
「透明」をレーザ衝撃ピーニングに使用するレーザビームに対して透明であると定義した上で、透明閉込め層(66)から離間したアブレーション媒体層(64)と、これらの間にある透明液体閉込め媒体(68)とを有する一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング(57)。
【請求項2】
前記透明液体閉込め媒体(68)は水を含むことを特徴とする請求項1に記載の一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング(57)。
【請求項3】
前記透明液体閉込め媒体(68)は水と寒天との混合物を含むことを特徴とする請求項1記載の一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング(57)。
【請求項4】
前記コーティングがテープ(59)であり、前記テープが、
対向する第1の側(71)と第2の側(73)とを有する前記アブレーション媒体層(64)と、
前記第1の側(71)に配置された接着層(60)と、
前記透明閉込め層(66)により前記第2の側(73)に対して閉じ込められた透明液体閉込め媒体(68)と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング(57)。
【請求項5】
「透明」をレーザ衝撃ピーニングに使用するレーザビームに対して透明であると定義した上で、透明閉込め層(66)から離間したアブレーション媒体層(64)と、これらの間にある透明液体閉込め媒体(68)とを有する一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング(57)でコーティングされた基板(10)を備えることを特徴とするレーザ衝撃ピーニング用コーティング物品(12)。
【請求項6】
前記コーティングがテープ(59)であり、前記テープが、
対向する第1の側(71)と第2の側(73)とを有する前記アブレーション媒体層(64)と、
前記第1の側(71)に配置された接着層(60)と、
前記透明閉込め層(66)により前記第2の側(73)に対して閉じ込められた透明液体閉込め媒体(68)とをさらに含むことを特徴とする請求項5記載のコーティング物品(12)。
【請求項7】
物品(12)をレーザ衝撃ピーニングする方法であって、
前記物品(12)の基板(10)のレーザ衝撃ピーニング面を、一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング(57)でコーティングするステップを含み、
「透明」をレーザ衝撃ピーニングに使用するレーザビームに対して透明であると定義した場合に、前記一体型レーザ衝撃ピーニングコーティング(57)が、透明閉込め層(66)から離間したアブレーション媒体層(64)と、これらの間にある透明液体閉込め媒体(68)とを有し、
さらに、コーティングされた基板(10)上に、レーザビームを発射するステップと、
十分な出力でレーザビームを発射することにより、前記レーザ衝撃ピーニング面から前記基板(10)内へ延びる深い圧縮残留応力を有する領域を形成する、前記アブレーション媒体層(64)の少なくとも一部を気化するステップとを含むことを特徴とするレーザ衝撃ピーニング方法。
【請求項8】
前記コーティングがテープ(59)であり、前記テープが、
対向する第1の側(71)と第2の側(73)とを有する前記アブレーション媒体層(64)と、
前記第1の側(71)に配置された接着層(60)と、
前記透明閉込め層(66)により前記第2の側(73)に対して閉じ込められた透明液体閉込め媒体(68)とをさらに含むことを特徴とする請求項7記載のレーザ衝撃ピーニング方法。
【請求項9】
前記レーザビームと前記コーティングした基板(10)とを連続して移動させながら、前記コーティングされた基板(10)に比較的一定の間隔で繰り返すパルスを有するレーザビームを発射するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7記載のレーザ衝撃ピーニング方法。
【請求項10】
前記コーティングがテープ(59)であり、前記テープが、
対向する第1の側(71)と第2の側(73)とを有する前記アブレーション媒体層(64)と、
前記第1の側(71)に配置された接着層(60)と、
前記透明閉込め層(66)により前記第2の側(73)に対して閉じ込められた透明液体閉込め媒体(68)とをさらに含むことを特徴とする請求項9記載のレーザ衝撃ピーニング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−159290(P2006−159290A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347490(P2005−347490)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】