説明

レーザ通信装置の自動姿勢制御システム及び自動姿勢制御方法

【課題】 レーザ通信装置同士を対向するようにその姿勢を制御し、通信可能とするレーザ通信装置の自動姿勢制御システム及び自動姿勢制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 レーザ通信装置1から送信されたGPSデータに基づいて、レーザ通信装置の位置情報を演算し、2つのレーザ通信装置1の位置情報に基づいて、それぞれの通信相手側のレーザ通信装置1の補正領域29を演算し、それぞれの補正領域29に複数の計測点31,32を設定し、この計測点31,32にレーザ3の光軸が向かうようにレーザ通信装置1の制御角を演算し、前記制御角においてのレーザ3のゲイン値を取得し、当該ゲイン値を角度とともに記憶し、記憶されているゲイン値の中からゲイン値が最も高いときの方位角及び仰角に姿勢を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、レーザ通信を行う複数のレーザ通信装置の方位角方向及び仰角方向を制御し、レーザ通信に最適な姿勢に制御するレーザ通信装置の自動姿勢制御システム及び自動姿勢制御方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
レーザ通信装置は、レーザビームを通信相手側の装置に到達させて通信を行うものである。レーザビームは指向性が高く、その光束の断面は距離が遠くなったときでも比較的変化しないため、例えば、1〜4km間の長距離の通信を行うことが可能である。また、レーザ通信装置は、携帯電話回線やPHS回線等の無線公衆回線に比べて、非常に高速な通信を行うことができ、かつレーザ通信装置間で直接通信を行うため、インターネットを介した通信に比べセキュリティ性が高いという利点がある。
【0003】
レーザ通信装置を設置するときには、図1に示すように、支持台2A,2Bの上にレーザ通信装置1Aとレーザ通信装置1Bをそれぞれ設置し、一方のレーザ通信装置1の送信部から照射されたレーザの光軸が他方のレーザ通信装置の受信部に照射されるように双方のレーザ通信装置について調整している。
具体的には、レーザ通信装置1に備えられている望遠鏡(図示しない)を覗きながら手動で調整し、支持台2に固定している。
【0004】
また、移動体と固定体間、又は移動体間でのレーザ通信で、通信相手局を捕捉追尾するレーザ通信用捕捉追尾装置が発明されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−349945号公報
【特許文献2】特開2005−65131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザ通信装置の間隔が数十mの間隔で設置する場合には、レーザ通信装置に搭載されている望遠鏡を覗き、レーザの光軸を変更することにより双方を対向させて設置することができたが、レーザ通信装置の間隔が長距離(例えば、4km)のときには、望遠鏡を覗きながら双方を対向させる場合には、通信相手のレーザ通信装置を視認しづらく、さらに僅かな角度のずれでもレーザ通信装置間の距離が長いため通信可能範囲を外れてしまうため、レーザ通信装置の設置には繁雑な作業が必要であった。
【0006】
なお、GPSを用いることにより、緯度、経度、高度等のデータを取得することができるが、現在民間で使用することができるGPSは、約16m程度の誤差が発生するため、GPSから得られたデータだけではレーザ通信が可能な領域にまでレーザ通信装置を移動させることができなかった。
【0007】
また、特許文献1及び2記載のレーザ通信装置の捕捉追尾装置は、上述のような作業を行った後に、通信が可能となった状態から、レーザ通信装置が移動したときに自動的に追尾するものであり、通信不可能な状態から通信可能な状態に姿勢を制御するものではなかった。
【0008】
本願発明は、係る問題に鑑み、通信を行うレーザ通信装置同士を対向するようにその姿勢を制御し、通信可能とするレーザ通信装置の自動姿勢制御システム及び自動姿勢制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明にかかるレーザ通信装置の自動姿勢制御システムは、複数のレーザ通信装置の方位角方向及び仰角方向の姿勢を制御する自動姿勢制御システムであって、レーザ通信装置又はその近傍に備えられたGPSデータ受信手段によって受信されたGPSデータに基づいて、当該レーザ通信装置の位置情報を演算する位置情報演算手段と、2つの前記レーザ通信装置の位置情報に基づいて、それぞれの通信相手側のレーザ通信装置の位置の補正領域を演算する第1補正領域演算手段と、前記第1補正領域演算手段によって演算されたそれぞれの補正領域に複数の計測点を設定する計測点設定手段と、前記計測点設定手段によって設定された計測点にレーザの光軸が向かうようにレーザ通信装置の制御角を演算する制御角演算手段と、前記制御角においてのレーザのゲイン値を取得し、当該ゲイン値を角度とともに記憶するゲイン値記憶手段と、前記ゲイン値記憶手段に記憶されているゲイン値の中からゲイン値が最も高いときの方位角及び仰角に姿勢を制御する姿勢制御手段とを備えたことを特徴としている。
また、本願発明に係るレーザ通信装置の自動姿勢制御方法は、複数のレーザ通信装置の方位角方向及び仰角方向の姿勢を制御する自動姿勢制御方法であって、レーザ通信装置の又はその近傍に備えられたGPSデータ受信手段によって受信されたGPSデータに基づいて、当該レーザ通信装置の位置情報を演算し、2つのレーザ通信装置の位置情報に基づいて、それぞれの通信相手側のレーザ通信装置の位置の第1補正領域を演算し、前記第1補正領域に設定された複数の計測点におけるレーザのゲイン値を取得し、取得したゲイン値と制御角を対応させて記憶し、記憶したゲイン値の中から最も高いゲイン値の制御角にレーザ通信装置の姿勢を制御することを特徴とする。
したがって、GPSデータから通信相手の大まかな位置を測定し、当該GPSの測定誤差範囲内を走査させ、ゲイン値が最も高い制御角に姿勢を制御することができる。
【0010】
また、前記計測点設定手段が、計測点間の距離が予め設定された距離となるように設定してもよい。
【0011】
また、前記第1補正領域演算手段が、前記位置情報演算手段によって求められたレーザ通信を行う2つのレーザ通信装置の緯度、経度、高度と、前記GPSデータによる測定誤差とに基づき補正領域を演算してもよい。
【0012】
また、前記ゲイン値記憶手段に記憶されているゲイン値の中から最もゲイン値が高い計測点を中心とし、既に演算された補正領域よりも小さい補正領域を演算する第2補正領域演算手段を備え、前記計測点設定手段が、前記第2補正領域演算手段によって演算された第2補正領域に複数の計測点を設定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本願発明に係るレーザ通信装置の自動姿勢制御システム及び自動姿勢制御方法は、GPSから各レーザ通信装置の位置情報を取得するのでレーザ通信装置の大まかな位置が分かる。さらに、GPSから得た位置情報に基づいて第1補正領域を演算し、その第1補正領域の中からゲイン値を測定し、ゲイン値が最も高くなるときの制御角にレーザ通信装置の姿勢を移動させるので、設置者が繁雑な作業を行うことなくレーザ通信装置の焦点を合わせることができる。また、手作業でレーザ通信装置の姿勢を制御していたときには、レーザ通信装置間の距離が長くなればなるほど作業の繁雑さが増えていったが、距離に関係なく自動的に姿勢制御を行うことができる。
【0014】
また、計測点を予め設定された距離間隔に設定しているので、計測点の密度に粗密が無くなり、正確な焦点を求めることができる。
【0015】
また、第1補正領域は、GPSから得られた位置情報と、当該GPSの測定誤差に基づいて設定しているので、測定誤差に基づいた過不足のない測定を行うことができる。
【0016】
また、ゲイン値が最も高い計測点を中心に、既に演算された補正領域よりも小さい領域の補正領域を第2補正領域として求め、この第2補正領域の中から測定点を求め、ゲイン値を取得しているので、効率的な計測を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本願発明に係るレーザ通信装置の自動姿勢制御システム及び自動姿勢制御方法について図1〜6に基づいて説明する。
図1は、レーザ通信装置の自動姿勢制御システムの概略図であり、支持台2A,2Bにレーザ通信装置1A,1Bが設置され、レーザ通信装置1A,1Bから照射されたレーザ3によって通信可能となっている。図1には示されていないが、レーザ通信装置1は、支持台2に備えられた方位角駆動手段5及び仰角駆動手段6を備えており、コンピュータCから送信される制御信号によって、レーザ通信装置1の方位角及び仰角を変更可能となっている。また、この支持台2にはGPSアンテナ等のGPS受信手段7を備えてあり、当該レーザ通信装置1の位置がわかるようになっている。
【0018】
また、レーザ通信装置1A,1BとコンピュータCとは通信可能で有り、さらにコンピュータC,Cは、インターネットや公衆無線通信等の通信網4を介して通信接続可能となっている。具体的には、コンピュータC同士が直接インターネット介してデータの送受信を行う場合や、サーバ(図示しない)にアクセスし、当該サーバ経由でデータの送受信を行ってもよい。また、コンピュータCに携帯電話機等を接続し、携帯電話網を介してデータの送受信を行ってもよい。なお、通信網4を介した通信は、レーザ通信装置1の方位角、仰角を制御するためのデータや、レーザ通信装置1のレーザ3のゲイン値のデータを送受信するためのものであり、レーザ3を用いた通信より低速度であってもよい。
【0019】
図2は、レーザ通信装置の自動姿勢制御システムに関するブロック図である。本願レーザ通信装置の自動姿勢制御システムは、主にレーザ通信装置1A側に設置されるレーザ通信装置制御部Aと、レーザ通信装置1B側に設置されるレーザ通信装置制御部Bと、コンピュータCとによって構成される。前記レーザ通信装置制御部Aは支持台2Aに、レーザ通信装置制御部Bは支持台2Bに備えられているが、別体であってもよい。
【0020】
前記レーザ通信装置制御部A,Bは、方位角駆動手段5A,5Bと、仰角駆動手段6A,6Bと、GPSデータ受信手段7A,7Bと、制御データ送受信手段8A,8Bとを備えている。
【0021】
コンピュータCには、送受信手段9と、位置情報演算手段10と、第1補正領域演算手段11と、計測点設定手段12と、制御角演算手段13と、ゲイン値記憶手段14と、姿勢制御手段15と、第2補正領域演算手段16とを備えている。
【0022】
前記方位角駆動手段5は、前記コンピュータCから送信された制御データに基づいてレーザ通信装置1の方位角を変更するものである。方位角駆動手段5は、ステップモータやパルスモータ等によって構成されている。ステップモータやパルスモータ等を用いることにより、正確な角度制御ができるようにしている。
【0023】
前記仰角駆動手段は、前記コンピュータCから送信された制御データに基づいて、レーザ通信装置1の仰角を変更するものである。仰角駆動手段6は、前記方位角駆動手段5と同様にステップモータやパルスモータ等によって構成されている。ステップモータやパルスモータ等を用いることにより、正確な角度制御ができるようにしている。
【0024】
前記GPSデータ受信手段7は、GPS(Global Positioning System)からGPSデータを受信するアンテナである。当該GPSデータ受信手段7は、レーザ通信装置1、又は支持台2、もしくはレーザ通信装置1の近傍に備えさせる。つまり、GPSデータ受信手段7によってレーザ通信装置1が設置されている緯度、経度、高度からなる位置情報を得ることができる。なお、GPSの特性上、この位置情報は、約16m程度の測定誤差がある。したがって、レーザ通信装置1とGPSデータ受信手段7とが1〜2m離れて設置されていてもGPSの測定誤差の範囲内となる。
【0025】
前記制御データ送受信手段8は、コンピュータCから送信された制御データ等を受信し、前記GPSデータやレーザのゲイン値データを送信する手段である。制御データ送受信手段8は、携帯電話端末等の無線機器であってもよいし、インターネットを介して通信を行う機器であってもよい。
【0026】
前記送受信手段9は、前記レーザ通信装置制御部A,Bに各種データを送信したり、当該レーザ通信装置制御部A,Bから送信されたデータを受信する手段である。
【0027】
前記位置情報演算手段10は、前記GPSデータ受信手段7A及びGPSデータ受信手段7Bから送信されたGPSデータから、レーザ通信装置1Aの緯度、経度、高度、及び、レーザ通信装置1Bの緯度、経度、高度のそれぞれを演算する手段である。図3は、GPSデータに基づいて、通信を行う2つのレーザ通信装置1A,1Bの緯度、経度、高度(標高)とを演算結果を示した画面図であり、画面17の上段の欄18Aには、レーザ通信装置1Aの緯度、経度、標高(高度)が表示され、下段の欄18Bには、レーザ通信装置1Bの緯度、経度、標高(高度)が表示されている。
【0028】
前記第1補正領域演算手段11は、前記位置情報演算手段10で得られた2つのレーザ通信装置1A,1B間の距離を演算し、通信相手のレーザ通信装置1B,1Aの第1補正領域をレーザ通信装置1毎に演算する手段である。補正領域29(29A)は、図5(a)に示しているように、GPSデータから得られた位置30(30A)を中心とした上下左右16m角の領域である。なお、前記第1補正領域は16m角の領域を設定してるが、この値はGPSに依存するものであり、GPSの測定誤差が例えば10mになったのであれば、第1補正領域も10m角となる。
【0029】
前記計測点設定手段12は、前記第1補正領域演算手段11によって得られた第1補正領域29A,29Bの双方に複数の計測点を設定する手段である。前記計測点は、第1補正領域29内にランダムに設定してもよいが、図5(b)に示しているように計測点31を予め設定した間隔で設定する方がよい。図5(b)では9つの計測点(31a〜31i,32a〜32i)を設定しているが、これに限定するものではない。
【0030】
前記制御角演算手段13は、前記計測点設定手段によって設定された計測点にレーザの光軸が向かうようにレーザ通信装置の制御角を双方のレーザ通信装置1に対して演算する手段である。つまり、この制御角演算手段13によって、測定の際のレーザ通信装置1の方位角及び仰角が得られる。そして、演算された制御角の制御データを各レーザ通信装置1に送信する。
【0031】
前記ゲイン値記憶手段14は、制御角演算手段13によって演算された制御角においてのレーザのゲイン値を当該制御角とともに記憶する手段である。
【0032】
前記姿勢制御手段15は、前記ゲイン値記憶手段14に記憶されているゲイン値の中から最もゲイン値が高いゲイン値の制御角にレーザ通信装置1を制御する姿勢制御する手段である。
【0033】
前記第2補正領域演算手段16は、前記ゲイン値記憶手段14に記憶されているゲイン値の中から最もゲイン値が高い計測点を中心とし、かつ前記当該計測点を測定したときの補正領域よりも小さい領域となる第2補正領域を演算する手段である。
【0034】
つぎに、レーザ通信装置の姿勢制御方法を図4、及び他の図面をもとに説明する。
図1に示すようにレーザ通信装置1A及びレーザ通信装置1Bを支持台2A,2Bに設置する。この時点でレーザ通信装置1A及びレーザ通信装置1Bは、お互いに自身のレーザの光軸が通信相手のレーザ通信装置1の受信部に向いていないため、レーザ3による通信はできない状態となっている。なお、コンピュータCからレーザ通信装置1に各種制御データを送信したり、コンピュータC,C同士の通信は可能である。
【0035】
まず、操作者はコンピュータCに図3に示す自動姿勢制御システムの制御画面17を表示させる。この制御画面17には、GPSデータ受信手段7Aが受信した信号に基づく、現在地の緯度、現在地の経度、現在地の標高を表示する位置情報表示欄18A、GPSデータ受信手段7Bが受信した信号に基づく、現在地の緯度、現在地の経度、現在地の標高を表示する位置情報表示欄18B、2つのレーザ通信装置1A,1B間の距離及びレーザ通信装置1Aから他方のレーザ通信装置1Bを見たときの方位角と仰角を表示する角度表示欄19とを備えている。また、レーザ通信装置1の方位角を左向きに移動させる「L」ボタン20、方位角を右向きに移動させる「R」ボタン21、仰角を上向きに移動させる「U」ボタン22、仰角を下向きに移動させる「D」ボタン、方位角及び仰角を基準値に戻すための「原点」ボタン24、当該自動姿勢制御画面を終了するための「処理終了」ボタン25、位置情報表示欄18A,18Bのデータに基づき角度表示欄19の各値を演算させる「制御角度演算」ボタン26、2つのレーザ通信装置1A,1Bを自動的に姿勢制御する「自動制御」ボタン27、位置情報表示欄18A,18B及び角度表示欄19の各値を消去するための「データクリア」ボタン28とを備えている。
【0036】
まず、コンピュータCは、通信を行う2つのレーザ通信装置1A,1Bのレーザ通信装置制御部A,Bに備えられたGPSデータ受信手段7が、GPSデータを受信する(S1)。そして、受信したGPSデータをコンピュータCに送信し、位置情報演算手段10は、2つのレーザ通信装置1A,1Bそれぞれの「緯度」、「経度」、「高度」からなる位置情報を演算し(S2)、制御画面17の位置情報表示欄18A,18Bに演算結果を表示する。「制御角度演算」ボタン26が押下されると、前記第1補正領域演算手段11によって、2つのレーザ通信装置1A,1Bの位置情報から、2点間の距離を演算し(S3)、レーザ通信装置1Aから通信相手のレーザ通信装置1Bを見たときの方位角、仰角、高度を演算し、角度表示欄19に各値を表示する。
【0037】
つぎに、「自動制御」ボタン27が押下されると、2つのレーザ通信装置1A,1Bの位置情報に基づいて、図5(a)に示すように、通信相手先の位置を中心とした16m角の領域で構成される第1補正領域29を演算する(S4)。図5(a)は、レーザ通信装置1AのGPSに基づく位置30Aを中心とした第1補正領域29Aと、レーザ通信装置1BのGPSに基づく位置30Bを中心とした第1補正領域29Bとを示した図であり、当該2つの第1補正領域29A,29Bの一部が重なり合っている状態を示している。つまり、当該重なり合った領域にレーザ3の光軸を照射するように方位角及び仰角を制御する。
【0038】
ステップ4において第1補正領域29A,29Bが演算されると、予め設定された距離に計測点を設定する(S5)。図5(b)は、第1補正領域29Aに9つの計測点31a〜31iを設定し、第1補正領域29Bにも同様に9つの計測点32a〜32iを設定している。図5(b)では、各第1補正領域29に9つの計測点を設定しているが、レーザ通信装置1の特性からこれより多くても又は少なくてもよい。また、2つのレーザ通信装置1A,1Bの距離によって、レーザ3の光速の断面積の大きさも変わるので、装置間の距離に基づいて計測点の数を増やしたり減らしたりしてもよい。
【0039】
ステップ5で計測点が設定されると、前記第1補正領域29Aから1つの計測点31(例えば、計測点31a)と、前記第1補正領域29Bから1つの計測点32(例えば、計測点32a)を選択し(S6)、当該選択点にレーザ3の光軸が向くように方位角及び仰角を演算する(S7)。つまり、レーザ通信装置1Aの制御角、及びレーザ通信装置1Bの制御角を演算し、当該演算した制御角にレーザ通信装置1A,1Bを移動させる(S9)。そして、当該制御角に移動した2つのレーザ通信装置1A,1Bのそれぞれのゲイン値をレーザ通信装置1A及びレーザ通信装置1Bから受信し、各レーザ通信装置1A,1Bの制御角と、各レーザ通信装置1A,1Bのゲイン値とをゲイン値記憶手段に記憶する(S9)。その後、前記計測点の全ての組み合わせて、全計測点を測定したか否かを判定する(S10)。そして、全ての計測点について測定した場合には、ステップ11に移行し、そうでない場合には、ステップ6に移行し、全ての計測点の組み合わせについて測定する。図5(b)では、第1補正領域29Aに9つの計測点31、第1補正領域29Bに9つの計測点があるので、これらの組み合わせとしては81組の組み合わせができる。したがって、ゲイン値記憶手段に記憶されるデータは、81組のデータが記憶されることになる。
【0040】
ステップ10において全ての計測点の組み合わせについての測定を行った後は、これらの測定したゲイン値の中から最も高いゲイン値のデータを選択する(S11)。このときの選択基準となるゲイン値は、2つのレーザ通信装置のゲイン値の合計値であってもよいし、2つのレーザ通信装置のゲイン値の平均値であってもよい。
本実施例では、図5(b)の計測点31iと計測点32aにレーザ3の光軸が向かうようにしたときのゲイン値が最も高いときを例示する。
【0041】
ステップ11においてゲイン値が最も高い計測点が選択されると、当該選択されたゲイン値に対応した測定点を中心とし、直前に求めた補正領域よりも小さい大きさの第2補正領域を演算する(S12)。本実施例では、直前の補正領域の1/4の大きさの領域を補正領域と設定している。したがって、図5(b)で、計測点31iと32aとの組み合わせが、最も高いゲイン値となる計測点なので、図5(c)の斜線部分の領域が第2補正領域38A,38Bとなる。第2補正領域が設定されると、ステップ5と同じように予め設定された距離に計測点を設定する(S13)。つまり、第2補正領域38Aには、計測点33a〜33iの9つの計測点を設定し、第2補正領域38Bには、34a〜34iの9つの計測点を設定する。
【0042】
ステップ13で計測点33a〜33i,34a〜34iが設定されると、前記第2補正領域38Aから1つの計測点33(例えば、計測点33a)と、前記第2補正領域38Bから1つの計測点34(例えば、計測点34a)を選択し(S14)、当該選択点にレーザ3の光軸が向くように方位角及び仰角を演算する(S16)。つまり、レーザ通信装置1Aの制御角、及びレーザ通信装置1Bの制御角を演算し、当該演算した制御角にレーザ通信装置1A,1Bを移動させる(S16)。そして、当該制御角に移動した2つのレーザ通信装置1A,1Bのそれぞれのゲイン値をレーザ通信装置1A及びレーザ通信装置1Bから受信し、各レーザ通信装置1A,1Bの制御角と、各レーザ通信装置1A,1Bのゲイン値とをゲイン値記憶手段に記憶する(S17)。その後、前記計測点の全ての組み合わせて、全計測点を測定したか否かを判定する(S18)。そして、全ての計測点について測定した場合には、ステップ19に移行し、そうでない場合には、ステップ14に移行し、全ての計測点の組み合わせについて測定する。図5(c)では、第2補正領域38Aに9つの計測点33、第2補正領域38Bに9つの計測点があるので、これらの組み合わせとしては81組の組み合わせができる。したがって、ゲイン値記憶手段に記憶されるデータは、81組のデータが記憶されることになる。
【0043】
ステップ18において、現在の第2補正領域において設定された計測点の全ての組み合わせについて測定を行った後は、これらの中からレーザ通信が可能となる基準ゲイン値よりも大きなゲイン値となる計測点があるか否かを判定する(S19)。基準ゲイン値よりも大きなゲイン値があるときには当該ゲイン値となる計測点のデータをもとに制御角を確定し(S20)、レーザ通信装置制御部A,Bに制御データを送信し、方位角及び仰角を移動させ、姿勢制御を行う。
ステップ18において、基準ゲイン値に満たさなかったときには、最も高いゲイン値となった計測点を中心とし、現在の第2補正領域よりも小さな領域を新たな第2補正領域とし(S12)、当該第2補正領域に計測点を設定し(S13)し、徐々に計測する領域を小さくしながら、基準ゲイン値よりも高いゲイン値となる計測点を見つけ出していく。
そして、最終的には、基準ゲイン値よりも高いゲイン値となる計測点(焦点)35を見つけることができる。
【0044】
以上に示したように、レーザ通信装置1A,1Bの姿勢を制御することによって、レーザ通信が行うことができなかった状態からレーザ通信を行うことができるようにすることができる。
【0045】
なお、上述の実施例では、測定したゲイン値に基づいて補正領域を小さくしていき基準ゲイン値よりも高いゲイン値となる計測点(焦点)を検出しているが、図6に示しているように、第1補正領域29A,29Bを設定した後に、多数の計測点36,…,36、37,…,37を設定し、計測点の全ての組み合わせの中から最もゲイン値の高い計測点36,37を焦点としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】レーザ通信装置の自動姿勢制御システムの概略図である。
【図2】レーザ通信装置の自動姿勢制御システムのブロック図である。
【図3】自動姿勢制御システムの制御画面である。
【図4】レーザ通信装置の自動姿勢制御方法のフロー図である。
【図5】補正領域と計測点との説明図である。
【図6】補正領域と計測点との説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1,1A,1B レーザ通信装置
2,2A,2B 支持台
3 レーザ
4 通信網
5,5A,5B 方位角駆動手段
6,6A,6B 仰角駆動手段
7,7A,7B データ受信手段
8,8A,8B 制御データ送受信手段
9 送受信手段
10 位置情報演算手段
11 補正領域演算手段
12 計測点設定手段
13 制御角演算手段
14 ゲイン値記憶手段
15 姿勢制御手段
16 補正領域演算手段
17 制御画面
18A,18B 位置情報表示欄
19 角度表示欄
20,21,22,23,24,25,26,27,28 ボタン
29,29A,29B 補正領域
30,30A,30B GPSによる位置
31,32,33,34,36,37 計測点
35 焦点
38A,38B 補正領域
A,B レーザ通信装置制御部
C コンピュータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザ通信装置の方位角方向及び仰角方向の姿勢を制御する自動姿勢制御システムであって、
レーザ通信装置又はその近傍に備えられたGPSデータ受信手段によって受信されたGPSデータに基づいて、当該レーザ通信装置の位置情報を演算する位置情報演算手段と、
2つの前記レーザ通信装置の位置情報に基づいて、それぞれの通信相手側のレーザ通信装置の位置の補正領域を演算する第1補正領域演算手段と、
前記第1補正領域演算手段によって演算されたそれぞれの補正領域に複数の計測点を設定する計測点設定手段と、
前記計測点設定手段によって設定された計測点にレーザの光軸が向かうようにレーザ通信装置の制御角を演算する制御角演算手段と、
前記制御角においてのレーザのゲイン値を取得し、当該ゲイン値を角度とともに記憶するゲイン値記憶手段と、
前記ゲイン値記憶手段に記憶されているゲイン値の中からゲイン値が最も高いときの方位角及び仰角に姿勢を制御する姿勢制御手段とを備えたることを特徴とするレーザ通信装置の自動姿勢制御システム。
【請求項2】
前記計測点設定手段は、計測点間の距離が予め設定された距離となるように設定してなる請求項1記載のレーザ通信装置の自動姿勢制御システム。
【請求項3】
前記第1補正領域演算手段は、前記位置情報演算手段によって求められたレーザ通信を行う2つのレーザ通信装置の緯度、経度、高度と、前記GPSデータによる測定誤差とに基づき補正領域を演算してなる請求項1又は2記載のレーザ通信装置の自動姿勢制御システム。
【請求項4】
前記ゲイン値記憶手段に記憶されているゲイン値の中から最もゲイン値が高い計測点を中心とし、既に演算された補正領域よりも小さい補正領域を演算する第2補正領域演算手段を備えてなり、
前記計測点設定手段は、前記第2補正領域演算手段によって演算された第2補正領域に複数の計測点を設定してなる請求項1〜3のいずれかに記載のレーザ通信装置の自動姿勢制御システム。
【請求項5】
複数のレーザ通信装置の方位角方向及び仰角方向の姿勢を制御する自動姿勢制御方法であって、
レーザ通信装置の又はその近傍に備えられたGPSデータ受信手段によって受信されたGPSデータに基づいて、当該レーザ通信装置の位置情報を演算し、
2つのレーザ通信装置の位置情報に基づいて、それぞれの通信相手側のレーザ通信装置の位置の第1補正領域を演算し、
前記第1補正領域に設定された複数の計測点におけるレーザのゲイン値を取得し、
取得したゲイン値と制御角を対応させて記憶し、
記憶したゲイン値の中から最も高いゲイン値の制御角にレーザ通信装置の姿勢を制御することを特徴とするレーザ通信装置の自動姿勢制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−66926(P2008−66926A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241136(P2006−241136)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(506302550)株式会社アイ・シー・マスター (2)
【Fターム(参考)】