説明

レーダークロスセクション測定システム

【課題】航空機等のレーダークロスセクションの測定を対象物からの近傍界で行え、かつ小さなアンテナで行えるようにする。
【解決手段】複数の小さなアンテナの集合によって、大きなアンテナを形成し、コンパクトレンジ法を実現する。そして、小さなアンテナ間の補正のために対象物またはアンテナを移動させて、小さなアンテナ間のデータを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機等の対象物の電磁波の反射特性を、複数アンテナの集合による大アンテナを用いたコンパクトレンジ法で測定する、レーダークロスセクション測定システムに関するものである。
【技術背景】
【0002】
現在、航空機等のレーダークロスセクション測定は、遠方界で行っている。遠方界とは、対象物に電磁波を照射するとき、対象物の中央部と端部の間で16分の1波長のずれが生じない距離を言う。例えば、10GHzで翼端長さが20mの航空機を1mのアンテナで測定するとき、1.2kmの遠くから測定しなければならない。
この方法と別の測定方法にコンパクトレンジ法がある。
この場合は、対象物から10m程度離れた所から平行ビームを送信して測定できるが、通常アンテナの大きさは対象物の3倍程度必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように遠方界では距離が長すぎ、コンパクトレンジ法では、巨大なアンテナを準備しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような従来技術の背景の中で、
・小さなアンテナを複数並べて、大きなアンテナと同等にする。
・小さなアンテナ間には電磁波が存在しないか、電磁波密度が少ないので、対象物が小さなアンテナ群を上下、左右に数回に分けて平行移動させる。
そして数回データを取得して、データ処理し、レーダークロスセクション測定の精度を向上させる。
【実施例】
【0005】
実施例1
直径300mmの小さなアンテナ5個を用いて、横3m、縦1.5mの合成アンテナを作る。これを用いたバイスタティックレーダークロスセクション測定システムの例を図1に示す。
対象物に模型の航空機を用いた。大きさは幅1.5m、長さ1mとする。
この航空機に各種の電波吸収体を貼る。なお、周波数は30GHzから50GHzを用いた。
なお、バイスタティックの場合、送信アンテナと受信アンテナの軸をそれぞれ航空機のほうに向け、反射波の強度を測定する。なお、標準試料として、コーナーリフレクタや大アンテナ以上の大きさの金属の平板を使う。
なお、航空機を上下、左右に500mm、数回に分けて平行移動させてデータを取得した。今回は25回データを取得し、25回の加算値を用い、金属の平板での測定値の25倍の値で割ってRCS値とする。なお、データ処理には別の方法もある。
【0006】
実施例2
実施例1の受信アンテナを、1つの小さなアンテナが上下、左右に移動するタイプに変更した。
この実施例を図2に示した。
なお、受信アンテナを上下に10回、左右に10回、合計100回移動させて測定する。
また、航空機は上下、左右に移動させない。その結果、実施例1の場合と同様に、今回は100回の加算値を金属の平板での測定値の100倍の値で割ってRCS値とする。なお、この値は実施例1の値のおおむね95%の値を示す。
【0007】
実施例3
実施例2の受信アンテナを上下、左右に移動したとき、この移動データを画像化する。この画像から航空機のどの部分から電波の反射が大きいかがすぐわかり、電波吸収材の改善および航空機の形状改善に大いに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】送信、受信アンテナ共小さなアンテナを5個使用したバイスタティックRCS測定システム
【図2】受信アンテナに、小さなアンテナが上下、左右に移動する方式を用いた測定システム
【記号の説明】
A: 5つの小さなアンテナからなる送信用大アンテナ
B: 5つの小さなアンテナからなる受信用大アンテナ
C: ベクトルネットワークアナライザ
D: パーソナルコンピュータ
E: ポジションコントローラ
F: 上下、左右移動機
G: 小さな1つのアンテナが上下、左右に移動するアンテナシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の小さなアンテナの集合による大アンテナを用いたコンパクトレンジ法により、対象物のレーダークロスセクションを測定するシステム
【請求項2】
複数の小さなアンテナの集合による大アンテナ1つで送信および受信を行うものスタティックタイプの請求項1記載のシステム
【請求項3】
対象物または大アンテナを、上下、左右に数回に分けて移動させて小アンテナ間のデータを取得し、レーダークロスセクションの精度を高める、請求項1、2記載のシステム
【請求項4】
複数アンテナの集合による送信用と受信用の大アンテナ2つでそれぞれの軸を対象物に向けたバイスタティックタイプの請求項1記載のシステム
【請求項5】
対象物を、上下・左右に数回に分けて移動させて小アンテナ間のデータを取得し、レーダークロスセクションの精度を高める、請求項1、4記載のシステム
【請求項6】
大アンテナ2つのうち、1つを上下、左右に数回に分けて移動させて小アンテナ間のデータを取得し、レーダークロスセクションの精度を高める、請求項1、4記載のシステム
【請求項7】
複数の小さなアンテナの集合による大アンテナ1つと、小さなアンテナをX、Yステージで上下、左右に移動させる構造のもう1つのアンテナシステムからなる請求項4、5、6記載のシステム
【請求項8】
小さなアンテナをX、Yステージで上下、左右に移動させる際、X、Yのデータを画像化することを特長とした請求項7記載のシステム

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−276332(P2009−276332A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152216(P2008−152216)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(502383889)キーコム株式会社 (28)
【Fターム(参考)】