説明

レーダ信号処理装置、及びレーダ信号処理方法

【課題】本発明は、複数の比較的明るいターゲットが互いに近接する場合に、そのターゲットによる検出精度への影響を抑えることができるとともに、処理負担を軽減させることができるレーダ信号処理装置、及びレーダ信号処理方法を提供する。
【解決手段】セル積分回路部101は、レーダ信号の平均化セル領域内の振幅値を積分し、振幅値積分データを算出する。最大振幅値比較部102は、平均化セル領域内でのレーダ信号の最大振幅値を取得する。最大振幅値比較部102は、取得した最大振幅値の情報を除去データとして最大振幅値記憶部103に記憶させる。閾値基礎データ算出部104は、振幅値積分データに基づく積分値から、除去データに基づく最大振幅値を差し引く。これによって、閾値基礎データ算出部104は、最大振幅値除去後の振幅積分データである修正積分データを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、探知対象外のものであるクラッタを除去してターゲットを抽出するためのCFAR(Constant False Alarm Rate:一定誤警報確率)機能を有するレーダ信号処理装置、及びレーダ信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なレーダ信号処理装置に用いられるセルアベレージCFARは、周辺のクラッタがある確率分布に従うと仮定することにより、ターゲットの検出を行う処理方法である(例えば、非特許文献1参照)。このセルアベレージCFARでは、所望方向周辺の平均化セル領域内で、レーダ信号の振幅値(波高値)の平均値が算出される。そして、その平均値と所定のクラッタ分布(クラッタマップ)とに基づいて閾値としてのCFARスレッショルドが算出され、そのCFARスレッショルドに基づいてクラッタとターゲットとの識別が行われる。
【0003】
しかしながら、このセルアベレージCFARでは、レーダ装置のビームの範囲内で例えば海上の船舶群等が互いに近接し、複数の明るい信号(振幅値の大きな信号)がレーダ信号に含まれている場合、セルアベレージ領域内の信号が所定のクラッタ分布から外れることがある。このような場合には、CFARスレッショルドの値は、本来のCFARスレッショルドの値よりも高い値に設定されてしまう。この結果、ターゲットとクラッタとの識別が正確に行われなくなる。そして、レーダ信号の振幅値のうち、ターゲットとしての人工物の反射によって生じた振幅値であっても、CFARスレッショルドに満たない場合には、検出もれが発生してしまうという問題がある。従って、複数のターゲットが互いに近接する場合には、そのターゲットによって検出精度に影響が生じてしまう。
【0004】
このようなセルアベレージCFARに対して、順序統計CFAR(OS CFAR:Order Statistics CFAR)が考えられている(例えば、非特許文献2参照)。この順序統計CFARでは、参照セル内の信号の振幅値が大きさ順に並び替えられる。そして、この並び替えられた信号の振幅値の中から代表値が決定され、その代表値に基づいてクラッタ分布が仮定されてCFARスレッショルドが決定される。このような信号処理によって、極端に明るいターゲットによる影響が排除される可能性がある。
【0005】
【非特許文献1】Hansen V.G. and Ward H.R., “Detection performance of the cell averaging LOG/CFAR receiver”, IEEE Trans, Aerosp. & Electron. Syst., AES-8, 5, pp.648-652, Sep. 1972
【非特許文献2】Rohling H.,“Radar CFAR thresholding in clutter and multiple target simulations”, IEEE Trans, Aerosp. & Electron. Syst., AES-19, 4, pp.608-621, Sep. 1983
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、非特許文献2に示すような順序統計CFARを用いた従来のレーダ信号処理装置では、全ての参照セル内の情報をメモリ又はレジスタに格納し、順序整理を実行して統計情報を算出する必要がある。このため、レーダ信号処理装置における演算規模が大きくなってしまうという問題がある。
【0007】
また、非特許文献2に示すような順序統計CFARでは、参照セル内の情報の並び替えを行うものの、その順番からクラッタ分布を選択して閾値を算出するため、クラッタ分布の種類が適切に選択されていなければ、極端に明るいターゲットが混入した際に、非特許文献1に示すようなセルアベレージCFARと同様に、正しくターゲットを識別できないことがある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、複数の比較的明るいターゲットが互いに近接する場合に、そのターゲットによる検出精度への影響を抑えることができるとともに、処理負担を軽減させることができるレーダ信号処理装置、及びレーダ信号処理方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るレーダ信号処理装置は、入力されたレーダ信号からターゲットとクラッタとを識別するものであって、入力された注目セル指定信号に基づいて決定される平均化セル領域をレーダ信号に設定して、レーダ信号の平均化セル領域内の振幅値を積分し振幅値積分データを算出するレーダ信号積分演算部、レーダ信号を監視し、レーダ信号の平均化セル領域内での最大振幅値を取得し、その最大振幅値を除去データとして記憶する除去データ取得部、振幅値積分データに基づくレーダ信号の積分値から除去データに基づく最大振幅値を除去して修正積分データを算出し、その修正積分データを平均化セル領域のセル数である平均化セル数で平均化してターゲットを識別するための閾値の算出用のデータである閾値基礎データを算出する閾値基礎データ算出部、閾値基礎データと所定のクラッタ分布とに基づいて閾値を算出する閾値算出部、及び算出された閾値に基づいて、レーダ信号にターゲットが含まれているか否かを判定するターゲット判定部を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明のレーダ信号処理装置によれば、除去データ取得部がレーダ信号の平均化セル領域内の最大振幅値を取得しその最大振幅値を除去データとして記憶し、閾値基礎データ算出部が振幅値積分データに基づくレーダ信号の積分値から除去データに基づく最大振幅値を除去した後に閾値基礎データを算出するので、クラッタに対応する比較的小さい振幅値が主に振幅値積分データを構成することによって、複数の比較的明るいターゲットが互いに近接する場合に、そのターゲットによる検出精度への影響を抑えることができる。これとともに、非特許文献2に示す従来のレーダ装置のような順序統計処理が不要となることにより、処理負担を軽減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるレーダ信号処理装置100を示すブロック図である。
図1において、レーダ信号処理装置100は、レーダ装置1及び操作盤11に電気的に接続されている。レーダ装置1は、エコー(反射波)の強度に応じたレーダ信号(レーダ受信信号)と、エコーの発生位置を示すための距離及び方位角等の情報とを互いに対応付けて、レーダ信号処理装置100及び操作盤11に出力する。
【0012】
操作盤11は、操作部12及びターゲット表示部13を有している。操作部12は、操作員によって操作される。ターゲット表示部13は、例えばモニタ等である。また、操作盤11は、注目セル指定信号(注目位置指定信号)をレーダ信号処理装置100に出力する。この注目セル指定信号とは、レーダ信号処理装置100による演算処理対象である注目セルを指定するための信号である。この注目セルは、操作員によって決定される。なお、この注目セルは、図2(b)及び図3(b)における左右方向の中心の領域である。
【0013】
注目セルが指定されることによって、レーダ信号処理装置100により平均化セル領域が決定される。この平均化セル領域とは、レーダ信号からターゲットとクラッタとを識別するためのレーダ信号処理装置100の演算対象の領域である。また、平均化セル領域は、レーダ装置1の探知方向(一方向又は二方向)において、注目セルを中心とした注目セルの周囲所定数のセルである。なお、この平均化セル領域は、図2(b)及び図3(b)における注目セルの領域の右側及び左側にそれぞれ隣接する領域である。
【0014】
レーダ信号処理装置100は、レーダ信号積分演算部としてのセル積分回路部101、最大振幅値比較部102、最大振幅値記憶部103、閾値基礎データ算出部(最大振幅値除去部)104、閾値算出部105及びターゲット判定部106を有している。セル積分回路部101は、操作盤11から入力された注目セル指定信号に対応する平均化セル領域を、レーダ装置1から入力されたレーダ信号に設定する。また、セル積分回路部101は、レーダ信号の平均化セル領域内の振幅値を積分し、振幅値積分データ(クラッタの積分振幅値の情報)を算出する。さらに、セル積分回路部101は、算出した振幅値積分データを閾値基礎データ算出部104に送る。
【0015】
最大振幅値比較部102は、レーダ信号の平均化セル領域内の振幅値を監視(測定)し、振幅値の大きさをレンジに対する分解能毎に順次比較する。そして、最大振幅値比較部102は、振幅値の大きさを比較することによって、平均化セル領域内での最大振幅値(最大の波高値:例えば図2(a)及び図3(a)に示すBの振幅値)を取得する。また、最大振幅値比較部102は、取得した最大振幅値の情報を除去データとして最大振幅値記憶部103に記憶させる。
【0016】
閾値基礎データ算出部104は、セル積分回路部101から振幅値積分データを受けるとともに、最大振幅値記憶部103に記憶されている除去データを読み込む。また、閾値基礎データ算出部104は、振幅値積分データに基づくレーダ信号の積分値から、除去データに基づく最大振幅値を差し引く。即ち、閾値基礎データ算出部104は、レーダ信号の積分値から最大振幅値を除去する。
【0017】
これによって、閾値基礎データ算出部104は、最大振幅値除去後の振幅積分データである修正積分データを算出する。また、閾値基礎データ算出部104は、修正積分データを閾値算出部105に送る。なお、最大振幅値比較部102及び最大振幅値記憶部103は、除去データ取得部110を構成している。
【0018】
閾値算出部105は、修正積分データに基づくレーダ信号の積分値を、平均化セル領域のセル数である平均化セル数で平均化する。例えば、注目セルと平均化セル領域のセル数との総和をXとした場合には、X−1が平均化セル数となる。そして、閾値算出部105は、修正積分データに基づくレーダ信号の積分値を、平均化セル数で平均化することによって、その平均の信号レベルを閾値基礎データとして算出する。この閾値基礎データとは、レーダ信号からターゲットを識別するための閾値の算出用のデータである。
【0019】
また、閾値算出部105は、所定のクラッタ分布と閾値基礎データとに基づいて、閾値としてのCFARスレッショルドを算出する。ここで、クラッタ分布とは、クラッタの統計的分布の傾向を示すクラッタの分布パターンである。このクラッタ分布は、閾値算出部105に予め記憶されている。また、クラッタ分布には、例えばワイブル分布や対数正規分布等が複数用いられる。
【0020】
ターゲット判定部106は、閾値算出部105によって算出されたCFARスレッショルドと、レーダ信号における注目セルの振幅値とを比較する。つまり、ターゲット判定部106は、CFARスレッショルドに基づいて、レーダ信号にターゲットが含まれているか否かを判定する。
【0021】
ターゲット判定部106は、注目セルのレーダ信号の振幅値がCFARスレッショルド以上である場合には、レーダ信号の注目セルにターゲットが存在すると判定し、注目セルでターゲットが検出されたことを示す検出ビットを生成する。一方、ターゲット判定部106は、注目セルのレーダ信号の振幅値がCFARスレッショルド未満である場合には、注目セルにターゲットが存在しないもと判定し、注目セルでターゲットが検出されなかったことを示す非検出ビットを生成する。
【0022】
また、ターゲット判定部106は、検出ビット又は非検出ビットと、注目セルの情報とを含む判定信号をターゲット表示部13へ出力する。ターゲット表示部13は、判定信号に基づいて、レーダ装置1の探知範囲内に存在するターゲットを表示する。
【0023】
ここで、レーダ信号処理装置100は、演算処理部(DSP等)、記憶部(ROM、RAM及びハードディスク等)及び信号入出力部を持ったコンピュータ(図示せず)により構成することができる。レーダ信号処理装置100のコンピュータの記憶部には、セル積分回路部101、最大振幅値比較部102、最大振幅値記憶部103、閾値基礎データ算出部104、閾値算出部105及びターゲット判定部106の機能を実現するためのプログラムが格納されている。
【0024】
次に、図1のレーダ信号処理装置100によるCFARスレッショルドの算出方式の概要について説明する。図2は、一般的な信号処理方法でのターゲットの識別方式の一例を説明するための説明図である。図3は、図1のレーダ信号処理装置100によるターゲットの識別方式の一例を説明するための説明図である。なお、ここでは、2つの明るいターゲットA,Bが、互いに近接している場合について説明する。
【0025】
図2において、注目セルを図の中心と決めた場合の平均化セル領域は、図2(b)に示すようになる。従来の信号処理方法では、この範囲内に、明るいターゲットBが入っているため、図2(c)に示すように、レーダ信号に対するCFARスレッショルドの値(閾値)が高くなってしまう。この結果、ターゲットA,Bの振幅値よりもCFARスレッショルドが高くなってしまい、図2(d)に示すように、単独であれば検出されるはずのターゲットA,Bがレーダ信号処理装置100によって検出されない。
【0026】
これに対して、レーダ信号処理装置100では、レーダ信号の積分値から最大振幅値を除去した上で、CFARスレッショルドを算出しているため、図3(c)に示すように、CFARスレッショルドの増大が抑制される。これによって、ターゲットA,Bの振幅値が、CFARスレッショルド以上となる。この結果、ターゲットA,Bが、図3(d)に示すように、レーダ信号処理装置100によって検出される。
【0027】
次に、動作について説明する。図4は、図1のレーダ信号処理装置100の動作を示すフローチャートである。図4において、レーダ信号処理装置100は、操作盤11からの注目セル指定信号により、レーダ信号に対して、平均化セル領域を設定する(ステップS101)。そして、レーダ信号処理装置100は、平均化セル領域内のレーダ信号の振幅値を積分する(ステップS102)。
【0028】
また、レーダ信号処理装置100は、レーダ信号の平均化セル領域内における最大振幅値を取得するとともに、その最大振幅値を除去データとして記憶する(ステップS103)。そして、レーダ信号処理装置100は、振幅値積分データに基づくレーダ信号の積分値から除去データに基づく最大振幅値を除去し、修正積分データを算出する(ステップS104)。この後、レーダ信号処理装置100は、修正積分データに基づくレーダ信号の積分値を平均化して閾値基礎データを算出し、閾値基礎データ及びクラッタ分布に基づいてCFARスレッショルドを算出する(ステップS105)。
【0029】
そして、レーダ信号処理装置100は、レーダ信号の注目セルにおいてCFARスレッショルド以上の振幅値が存在するか否かを確認する(ステップS106)。このときに、レーダ信号処理装置100は、CFARスレッショルド以上の振幅値が存在することを確認した場合には、ターゲットを検出したと判定し、ターゲット検出ビットを生成する(ステップS107)。そして、レーダ信号処理装置100は、ターゲット検出ビットを含む判定信号をターゲット表示部13に送り、以降、同様の動作を繰り返す。
【0030】
一方、レーダ信号処理装置100は、レーダ信号の注目セルにおいてCFARスレッショルド以上の振幅値が存在しないことを確認した場合には(ステップS106のNO方向)、ターゲットを検出していない(非検出である)と判定し、ターゲット非検出ビットを生成する(ステップS108)。そして、レーダ信号処理装置100は、ターゲット非検出ビットを含む判定信号をターゲット表示部13に送り、同様の動作を繰り返す。
【0031】
上記のようなレーダ信号処理装置では、最大振幅値比較部102が、レーダ信号の平均化セル領域内の最大振幅値を取得し、その最大振幅値を除去データとして最大振幅値記憶部103記憶させる。そして、閾値基礎データ算出部104が、振幅値積分データに基づくレーダ信号の積分値から除去データに基づく最大振幅値を除去した後に、閾値基礎データを算出する。この構成により、クラッタに対応する比較的小さい振幅値が主に振幅値積分データを構成することによって、複数の比較的明るいターゲットが互いに近接する場合に、そのターゲットによる検出精度への影響を抑えることができる。これとともに、非特許文献2に示す従来のレーダ装置のような順序統計処理が不要となることにより、処理負担を軽減させることができる。
【0032】
また、注目セルの周辺のターゲットに依存しない安定したCFARスレッショルドを算出可能となることにより、検出漏れの発生を抑えることができ、ロバスト性を向上させることができる。
【0033】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、レーダ信号処理装置100がレーダ信号の積分値から最大振幅値を除去した上で閾値基礎データを算出した。これに対して、実施の形態2では、レーダ信号処理装置100がレーダ信号の積分値から最大振幅値を含む複数の振幅値を除去した上で振幅値基礎データを算出する。
【0034】
図5は、この発明の実施の形態2によるレーダ信号処理装置100を示すブロック図である。図5において、実施の形態2のレーダ信号処理装置100は、実施の形態1における最大振幅値比較部102、最大振幅値記憶部103及び閾値基礎データ算出部104に代えて、それぞれNデータ振幅値比較部202、Nデータ振幅値記憶部203及び閾値基礎データ算出部(Nデータ振幅値除去部)204を有している。なお、実施の形態2では、Nデータ振幅値比較部202及びNデータ振幅値記憶部203が除去データ取得部210を構成している。
【0035】
また、レーダ信号処理装置100のNデータ振幅値比較部202、Nデータ振幅値記憶部203及び閾値基礎データ算出部204は、操作盤11から、想定ターゲット数(N)指定信号を受ける。この想定ターゲット数Nとは、運用の際に想定される検出ターゲット数であり、2以上の整数が用いられる。また、指定ターゲット数は、操作員によって決定される。
【0036】
ここで、実施の形態1では、N=2を前提として、近接(隣接)する2つのターゲットが混在して検出された場合の判定処理であった。これに対して、実施の形態2では、近接する2以上のターゲットが混在して検出された場合の判定処理である。つまり、実施の形態2では、想定ターゲット数Nが指定されることによって、閾値基礎データの算出処理の際に、振幅値積分データに基づくレーダ信号の積分値から、2以上のターゲットに相当する振幅値が除去される。
【0037】
Nデータ振幅値比較部202、Nデータ振幅値記憶部203及び閾値基礎データ算出部204は、想定ターゲット数指定信号に応じて、振幅値取得数を設定する。この振幅値取得数とは、レーダ信号から取得する振幅値の個数である。Nデータ振幅値比較部202は、レーダ信号の平均化セル領域内の振幅値を測定し、振幅値の大きさをレンジに対する分解能毎に順次比較する。
【0038】
そして、Nデータ振幅値比較部202は、振幅値の大きさを比較することによって、レーダ信号の平均化セル領域内の振幅値のうち、最大振幅値を含む振幅値取得数分の振幅値を、大きい順に取得する。そして、Nデータ振幅値比較部202は、取得した複数の振幅値を、Nデータ振幅値記憶部203に除去データとして記憶させる。
【0039】
閾値基礎データ算出部204は、セル積分回路部101から振幅値積分データを受けるとともに、Nデータ振幅値記憶部203に記憶されている除去データを読み込む。また、閾値基礎データ算出部204は、振幅値積分データに基づくレーダ信号の積分値から、除去データに基づくN個の振幅値を差し引く(除去する)。これによって、閾値基礎データ算出部204は、レーダ信号の積分値からN個の振幅値を除去後の振幅積分データである修正積分データを算出する。他の構成及び動作は実施の形態1と同様である。
【0040】
上記のようなレーダ信号処理装置では、想定ターゲットの数が2つの場合のみならず、3つ以上の場合に、それらのターゲットによる検出精度への影響を抑えることができ、実施の形態1のレーダ信号処理装置に比べて、ロバスト性をより向上させることができる。
【0041】
なお、実施の形態1,2では、操作盤11がターゲット表示部13を有していた。しかしながら、この例に限るものではなく、レーダ信号処理装置100自身がターゲット表示部を有していてもよい。
【0042】
また、実施の形態1,2では、注目セル指定信号の注目セルと、想定ターゲット数指定信号の想定ターゲット数とが、操作員によって決定される値であった。しかしながら、注目セル及び想定ターゲット数は、この例に限るものではなく、例えば、ビームの照射方向等のレーダ装置1の動作状況や、レーダ信号処理装置100と他の通信機器との通信状況等に応じて決定される値であってもよい。
【0043】
さらに、実施の形態1,2では、レーダ信号処理装置100が図1,5に示すような構成となっていたが、レーダ信号処理装置100の構成は、この例に限るものではなく、例えば、図4に示す動作を実現可能なハードウェア構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施の形態1によるレーダ信号処理装置を示すブロック図である。
【図2】一般的な信号処理方法でのターゲットの識別方式の一例を説明するための説明図である。
【図3】図1のレーダ信号処理装置によるターゲットの識別方式の一例を説明するための説明図である。
【図4】図1のレーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態2によるレーダ信号処理装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0045】
1 レーダ装置、100 レーダ信号処理装置、101 セル積分回路部(レーダ信号積分演算部)、102 最大振幅値比較部、103 最大振幅値記憶部、104,204 閾値基礎データ算出部、105 閾値算出部、106 ターゲット判定部、110,210 除去データ取得部、202 Nデータ振幅値比較部、203 Nデータ振幅値記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたレーダ信号からターゲットとクラッタとを識別するレーダ信号処理装置であって、
入力された注目セル指定信号に基づいて決定される平均化セル領域を前記レーダ信号に設定して、前記レーダ信号の前記平均化セル領域内の振幅値を積分し振幅値積分データを算出するレーダ信号積分演算部、
前記レーダ信号を監視し、前記レーダ信号の前記平均化セル領域内での最大振幅値を取得し、その最大振幅値を除去データとして記憶する除去データ取得部、
前記振幅値積分データに基づく前記レーダ信号の積分値から前記除去データに基づく最大振幅値を除去して修正積分データを算出し、その修正積分データを前記平均化セル領域のセル数である平均化セル数で平均化して前記ターゲットを識別するための閾値の算出用のデータである閾値基礎データを算出する閾値基礎データ算出部、
前記閾値基礎データと所定のクラッタ分布とに基づいて前記閾値を算出する閾値算出部、及び
算出された前記閾値に基づいて、前記レーダ信号に前記ターゲットが含まれているか否かを判定するターゲット判定部
を備えることを特徴とするレーダ信号処理装置。
【請求項2】
前記除去データ取得部は、入力された想定ターゲット数指定信号に基づいて、前記レーダ信号から取得する振幅値の個数である振幅値取得数を設定し、前記レーダ信号の平均化セル領域内での前記振幅値取得数分の振幅値を、前記最大振幅値を含めて大きい順に取得して、その取得した複数の振幅値を前記除去データとして記憶し、
前記閾値基礎データ算出部は、前記振幅値積分データに基づく前記レーダ信号の積分値から、前記除去データに基づく前記複数の振幅値を除去して前記修正積分データを算出する
ことを特徴とする請求項1記載のレーダ信号処理装置。
【請求項3】
入力されたレーダ信号からターゲットとクラッタとを識別するレーダ信号処理方法であって、
入力された注目セル指定信号に基づいて決定される平均化セル領域を前記レーダ信号に設定して、前記レーダ信号の前記平均化セル領域内の振幅値を積分し振幅値積分データを算出するステップ、
前記レーダ信号を監視し、前記レーダ信号の前記平均化セル領域内での最大振幅値を除去データとして取得するステップ、
前記振幅値積分データに基づく前記レーダ信号の積分値から前記除去データに基づく最大振幅値を除去して修正積分データを算出し、その修正積分データを前記平均化セル領域のセル数である平均化セル数で平均化して前記ターゲットを識別するための閾値の算出用のデータである閾値基礎データを算出するステップ、
前記閾値基礎データと所定のクラッタ分布とに基づいて前記閾値を算出するステップ、及び
算出された前記閾値に基づいて、前記レーダ信号に前記ターゲットが含まれているか否かを判定するステップ
を含むことを特徴とするレーダ信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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