説明

レーダ信号処理装置

【課題】 目標信号のパルス幅に対してサンプリング周波数を高くとった場合、デフルータ処理を行なう際に目標が複数のレンジビンにまたがるため、目標信号にもかかわらずブランキングレンジ処理を行なってしまい、目標のパルス幅を狭め、目標検出精度を低下させてしまうことがある。
【解決手段】 ブランキングレンジ判定において、ジャミング候補と判定されたレンジビンの前後Nレンジビン間に目標信号が存在するかを確認し、目標信号が存在した場合、そのレンジビンは目標として、ブランキングレンジ処理を行なわず、目標信号が存在しない場合、そのレンジビンはジャミングと判定し、ブランキングレンジ処理を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダ信号処理装置において、PRI(Pulse Repetitional Interval:パルス間隔)間の相関関係を見ることにより、リピータジャマーなどのジャミングと多次エコーを除去するデフルータ処理が知られている。
【0003】
図8は、レーダ信号処理装置におけるデフルータ処理の一例を示すブロック図である。デフルータ処理は、始めにパルスヒット毎のIch、Qchビデオデータから振幅検波処理2を行う。その結果を元にレンジビン毎に平均電力を計算し、閾値算出処理3を行う。閾値算出処理3の結果と振幅検波処理2後の振幅を比較し、2値化処理4を実施する。2値化処理4の結果を各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する検出結果加算処理5を行う。検出結果加算処理5の結果を元に、ブランキングレンジ判定処理6を行う。ブランキングレンジ判定処理6は、レンジビン番号をk、検出結果加算5をsum(k)とすると、数1の条件で判定が行われる。ブランキングレンジ判定処理6において、ブランキングレンジとみなされたレンジビンkのビデオデータを、各ヒット毎にレンジビン(k−1)のIch、Qchビデオデータに置き換える。ただし、レンジビン(k−1)はブランキングレンジでなくかつ目標でないものとする。これをブランキングレンジ処理7と呼ぶ。以上のデフルータ処理を行なうことで、ジャミング信号を通常のノイズと同程度の大きさに抑えることが可能である。
【0004】
【数1】

【0005】
最終的な目標検出判定はPDI(Post Detection Integration)処理後のデータにCFAR(Constant False Alarm Rate:一定誤警報確率)処理を適用することで行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−246772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のデフルータ処理では、目標信号のパルス幅に対してサンプリング周波数を高くとった場合、目標が複数のレンジビンにまたがるため、ブランキングレンジ判定処理6の際に、単純に2値化処理4後の検出結果加算5のみしか考慮していない。そのため目標信号にも関わらずブランキングレンジと判定してしまい、目標のパルス幅を狭めてしまう場合がある。その事例の波形図を図9に示す。
【0008】
2値化処理4を経て検出結果加算処理5を行なったレンジビン毎の結果が図9の通りだとする。受信パルスの全体のヒット数は4であるとする。数1において目標判定ヒット数Mが3、ブランキング未処置用ヒット数Pが1とすると、ここでは2値化処理4の結果がヒット数3以上になったレンジビンについて目標、ヒット数1から2となったレンジビンについてジャミング、ヒット数0のレンジビンはノイズとブランキングレンジ判定処理6にて判定する。
【0009】
また、目標信号は複数のレンジビンにまたがっているものとする。このため本来目標の一部であるレンジビンについて、振幅検波処理2の値が閾値付近になる場合がある。そのため2値化処理4、検出結果加算処理5の際に高い値が得られず、ジャミングと判定される。結果本来目標であるレンジビンについてブランキングレンジ処理7を行なってしまう。これにより目標のパルス幅が狭まることで、目標検出精度を下げる可能性がある。
【0010】
また、ジャミングと判定されるべき信号についてジャミング除去が上手く動作せず、目標と誤検出してしまう事例も存在する。そのため上記のデフルータ処理以外にもジャミングと目標を判定する指標が必要である。
【0011】
この発明は係る課題を解決するためになされたものであり、目標信号とジャミングが混在している場合に、デフルータ処理にて目標のパルス幅が狭まることを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明によるレーダ信号処理装置は、振幅検波されレンジビン毎に2値化されたレーダ受信信号を、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する加算処理と、上記加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミング候補と判定するブランキングレンジ判定処理と、上記ブランキングレンジ判定処理で得られたジャミング候補について、隣接する所定範囲のレンジビンに、ブランキングレンジ判定処理にて目標と判定された信号が存在しない場合、ブランキングレンジと判定するレンジビン相関処理と、上記レンジビン相関処理によりブランキングレンジと判定されたジャミング候補の信号を、周辺のレンジビンの信号によって置き換える処理を行うブランキング処理と、を備えたものである。
【0013】
また、振幅検波されレンジビン毎に2値化されたレーダ受信信号を、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する加算処理と、上記加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミング候補と判定するブランキングレンジ判定処理と、上記レーダ受信信号について、CFAR(Constant False Alarm Rate)スレッショルドとの比較により目標を判定するCFAR処理と、上記ブランキングレンジ判定処理及びCFAR処理により目標と判定されたレンジビンを目標として検出する相関処理と、を備えたものであっても良い。
【0014】
また、振幅検波されレンジビン毎に2値化されたレーダ受信信号を、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する加算処理と、上記加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミング候補と判定するブランキングレンジ判定処理と、上記レンジビン判定処理により得られたジャミング候補の信号を、周辺のレンジビンの信号によって置き換える処理を行うブランキング処理と、上記ブランキング処理の施された信号について、CFAR(Constant False Alarm Rate)スレッショルドとの比較により目標を判定するCFAR処理と、上記ブランキングレンジ判定処理及びCFAR処理により目標と判定されたレンジビンを目標として検出する相関処理と、を備えたものであっても良い。
【0015】
また、振幅検波された信号を、高閾値に基づいてレンジビン毎に2値化したレーダ受信信号について、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する第1の加算処理と、上記振幅検波された信号を、上記高閾値よりも値の小さい低閾値の2つの閾値に基づいて、レンジビン毎に2値化したレーダ受信信号について、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する第2の加算処理と、上記第1の加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミングと判定する第1のブランキングレンジ判定処理と、上記第2の加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミング候補と判定する第2のブランキングレンジ判定処理と、上記第1のブランキングレンジ判定処理でジャミングと判定され、かつ第2のブランキングレンジ判定処理でジャミング候補と判定されたレンジビンについて、周辺のレンジビンの信号によって置き換える処理を行うブランキング処理と、を備えたものであっても良い。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、目標信号とジャミングが混在している場合に、デフルータ処理時にパルス幅を狭めてしまうレンジビンを目標として判断することが可能となり、目標のパルス幅の縮小を防ぎ目標検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1のレーダ信号処理装置による処理フローを示す図である。
【図2】実施の形態2のレーダ信号処理装置による処理フローを示す図である。
【図3】実施の形態3のレーダ信号処理装置による処理フローを示す図である。
【図4】実施の形態4のレーダ信号処理装置による処理フローを示す図である。
【図5】実施の形態1による信号処理の説明図である。
【図6】実施の形態2による信号処理の説明図である。
【図7】CFAR処理の説明図である。
【図8】実施の形態4による信号処理の説明図である。
【図9】従来のレーダ信号処理装置におけるデフルータ処理の説明図である。
【図10】従来のデフルータ処理における問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係るレーダ信号処理装置の実施の形態について、図1〜図8を用いて説明する。
【0019】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1によるレーダ信号処理装置の処理フローを示すブロック図である。図1において、レーダ信号処理装置は、振幅検波処理2と、閾値検出処理3と、検出結果加算処理5と、ブランキングレンジ判定処理6と、ブランキングレンジ処理7とを行う、デフルータ処理部1を備える。本実施の形態1のデフルータ処理部1は、ブランキングレンジ判定処理6の際に、目標信号の連続性に着目してレンジビン相関処理10を行うことを特徴としている。始めに振幅検波処理2を行った後、閾値算出処理3、2値化処理4、及び検出結果加算処理5の各処理を順に行う点については、図9で説明した従来のデフルータ処理と同様である。
【0020】
レーダ信号処理装置はアンテナ装置(図示せず)に接続される。アンテナ装置はパルスを送信し、目標からの反射波を受信する。アンテナ装置で受けた受信信号は、増幅、復調処理等が行われてから、レーダ信号処理装置に入力され、デフルータ処理部1にて振幅検波処理2等の各種処理が行われる。
【0021】
振幅検波処理2は、パルスヒット毎のIch、Qchビデオデータからレンジビン毎に振幅を検波する。閾値算出処理3は、振幅検波処理2の処理結果を元にレンジビン毎に平均電力を計算し、閾値を算出する。2値化処理4は、閾値算出処理3の結果により得られた閾値と振幅検波処理2後の振幅を比較する。検出結果加算処理5は、2値化処理4の結果を各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する。
【0022】
ブランキングレンジ判定処理6は、検出結果加算処理5の結果を元に、ブランキングレンジ判定を行う。ブランキングレンジ判定処理6では、レンジビン番号をk、検出結果加算5をsum(k)とすると、数2の条件で判定を行う。このとき、ブランキングレンジ判定処理6の数2に示す場合分けにおいて、P<=sum(k)<Mの条件を満たすレンジビンkは、ジャミング候補と定義する。
【0023】
【数2】

【0024】
レンジビン相関処理10では、ブランキングレンジ判定処理6においてジャミング候補と判定されたレンジビンについて、前後Nレンジビンのブランキングレンジ判定処理6の結果を参照し、数3の条件で判定を行う。
【0025】
ここで、前後Nレンジビン間に目標と判定されたレンジビンが存在した場合、該当レンジビンのジャミング候補は目標と判定され、特にブランキングレンジ処理7は行わない。
また、前後Nレンジビン間に目標と判定されたレンジビンが存在しない場合、該当レンジビンのジャミング候補はジャミングと判定し、以降のブランキングレンジ処理7を行う。
【0026】
【数3】

【0027】
レンジビン相関処理10において、目標のレンジビン数は、ある程度一定の範囲に定まるため、適切な範囲Nを設定すれば、元の目標信号に影響を与えず、ジャミングのみを除去することができる。
【0028】
ブランキングレンジ処理7は、レンジビン相関処理10にてブランキングレンジとみなされたレンジビンkのビデオデータを、ヒット毎にレンジビン(k−1)のIch、Qchビデオデータに置き換える。ここで、レンジビン(k−1)はブランキングレンジでなくかつ目標でないものとする。
【0029】
以上のデフルータ処理を行なうことで、ジャミング信号を通常の多次エコーによるノイズと同程度の大きさに抑えることができる。
【0030】
次に、上記レンジビン相関処理10の動作について更に詳細な説明を行う。図5はレンジビン相関処理の動作例を説明するための波形図である。図5において、全パルスヒット数が4であるとする。2値化処理4を経て検出結果加算処理5を行なった結果が図5の通りだとすると、ブランキングレンジ判定処理6において2値化処理4の結果がヒット数2となったデータを、ジャミング候補とする。ここではジャミング候補に該当するレンジビンを候補1、候補2、候補3とする。
【0031】
このブランキングレンジ判定処理6後に、レンジビン相関処理10が行われる。レンジビン相関処理10では、ジャミング候補±Nの区間に目標と判定されたレンジビンが存在するか確認を行なう。
レンジビン相関処理10の結果、この例においては候補1のみがジャミング候補±Nの区間に目標が含まれないことがわかる。すなわち、レンジビン相関処理10後、候補1はジャミングとなり、候補2、候補3は目標と判定される。
【0032】
このように、レンジビン相関処理10を元にブランキングレンジ処理7を行なうことで、本来のジャミングのみを除去することができる。従来のブランキングレンジ判定処理6では候補2、候補3もジャミングと判定されてしまい、目標のパルス幅を狭めてしまっていた。これに対し実施の形態1のデフルータ処理では、レンジビン相関処理10を行なうことで、従来ジャミングと判定されてしまった閾値付近の目標レンジビンも目標と判定することが可能になる。
【0033】
以上説明した通り、実施の形態1によるレーダ信号処理装置は、振幅検波されレンジビン毎に2値化されたレーダ受信信号を、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する検出結果加算処理と、上記検出結果加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミング候補と判定するブランキングレンジ判定処理と、上記ブランキングレンジ判定処理で得られたジャミング候補について、隣接する所定範囲のレンジビンに、ブランキングレンジ判定処理にて目標と判定された信号が存在しない場合、ブランキングレンジと判定するレンジビン相関処理と、上記レンジビン相関処理によりブランキングレンジと判定されたジャミング候補の信号を、レーダ受信信号における周辺のレンジビンの信号によって置き換える処理を行うブランキング処理と、を備えたことを特徴とする。
【0034】
これによって、目標信号とジャミングが混在している場合に、デフルータ処理時に目標信号であるにも関らずデフルータ処理を行い、パルス幅を狭めていたレンジビンを、目標として判断することが可能となるので、目標のパルス幅の縮小を防ぎ目標検出精度が向上する。
【0035】
実施の形態2.
図2は、本発明に係る実施の形態2によるレーダ信号処理装置の処理フローを示すブロック図である。図において、実施の形態2のレーダ信号処理装置は、デフルータ処理部1とCFAR処理部9の処理結果から相関処理部11にて相関処理を行なう。実施の形態2のデフルータ処理部1では、ブランキングレンジ判定処理6までを行い、ビデオデータをそのまま保持してCFAR処理部9に出力する。なお、デフルータ処理部1における振幅検波処理2から検出結果加算処理5までの処理動作は、図1と同様であるので図示を省略している。
【0036】
CFAR処理部9では、PDI(Post Detection Integration)処理後のデータにCFAR(Constant False Alarm Rate:一定誤警報確率)処理を行うことで、最終的な目標検出判定を行う。相関処理部11では、ブランキングレンジ判定処理6の結果とCFAR処理部9の処理結果を比較し、結果が共に目標となった際に検出を行なう相関処理を実施する。
【0037】
図8はCFAR処理部9におけるCFAR処理の概要を示す図である。図において、注目セルとなるレンジビン毎に、数4の式に基づいてCFARスレショルドを算出する。このとき、参照セルが注目セルの両側に揃わない場合はGO−CFARスレショルド、揃う場合はCA−CFARスレショルドを適用する。注目セルの振幅データが固定スレショルドを超え、かつ、CFARスレショルドを超えた場合には目標として検出を行なう。
【0038】
【数4】

【0039】
次に、図6を用いて、相関処理部11の動作について更に詳細な説明を行う。図6(a)において、数値はレンジビン番号である。まず、デフルータ処理1でビデオデータを入力前の状態で保持し、ブランキングレンジ判定処理6の結果を保持したまま、CFAR処理を行なう。CFAR処理9では、各レンジビン毎に、上記の通り図7、数4に基づいてCFARスレショルドを算出する。
【0040】
相関処理部11では、CFAR処理部9の処理結果とデフルータ処理部1のブランキングレンジ判定処理6の判定結果を比較し、相関処理を行なう。CFAR処理部9の処理結果において目標と検出されたデータの中で、ブランキングレンジ判定処理6の結果がジャミングであったものはジャミングと判定し、CFAR処理9結果から除外する。この場合レンジビン番号2、3、7については、デフルータ処理部1の処理結果によりジャミングと判定されているので、相関処理部11にて目標から除外される処理が行われる。また、ブランキングレンジ判定処理6の結果が目標であったものは目標と判定し、CFAR処理部9の処理結果に残す。例えばレンジビン番号5についてはデフルータ処理部1の処理結果でも目標となっているので、相関処理部11の相関処理により目標と判定する。これにより、目標信号のみを選択することができる。
【0041】
以上説明した通り、実施の形態2によるレーダ信号処理装置は、振幅検波されレンジビン毎に2値化されたレーダ受信信号を、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する検出結果加算処理と、上記検出結果加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミング候補と判定するブランキングレンジ判定処理と、上記レーダ受信信号について、CFAR(Constant False Alarm Rate)スレッショルドとの比較により目標を判定するCFAR処理と、上記ブランキングレンジ判定処理及びCFAR処理により目標と判定されたレンジビンを目標として検出する相関処理と、を備えたことを特徴とする。
【0042】
このように、実施の形態2によるレーダ信号処理装置は、デフルータ処理部1にて振幅検波処理2からブランキングレンジ判定処理6までを実施した後、ビデオデータに手を加えずに、その結果をCFAR処理の際に参照することで、目標とジャミングの判定をより正確に行うことが可能になる。
【0043】
実施の形態3.
図3は、本発明に係る実施の形態3によるレーダ信号処理装置の処理フローを示すブロック図である。実施の形態3では、デフルータ処理部1でブランキングレンジ処理7まで実施し、ビデオデータについてジャミングと判定されたレンジビンは、ブランキングレンジ処理7により置き換えを行なう。その後、実施の形態2と同様にして、相関処理部11にてCFAR処理部9によるCFAR処理結果とブランキングレンジ判定処理6の処理結果を比較し、相関処理によって目標検出を行なう。
なお、デフルータ処理部1における振幅検波処理2から検出結果加算処理5までの処理動作は、図1と同様であるので図示を省略している。また、この実施の形態3では、レンジビン相関処理10については実施しなくても良く、図示を省略している。
【0044】
以上説明した通り、実施の形態3によるレーダ信号処理装置は、振幅検波されレンジビン毎に2値化されたレーダ受信信号を、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する検出結果加算処理と、上記検出結果加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミング候補と判定するブランキングレンジ判定処理と、上記レンジビン判定処理により得られたジャミング候補の信号を、レーダ受信信号における周辺のレンジビンの信号によって置き換える処理を行うブランキング処理と、上記ブランキング処理の施された信号について、CFAR(Constant False Alarm Rate)スレッショルドとの比較により目標を判定するCFAR処理と、上記ブランキングレンジ判定処理及びCFAR処理により目標と判定されたレンジビンを目標として検出する相関処理と、を備えたことを特徴とする。これによって、目標とジャミングの判定を、実施の形態2よりも正確に行うことが可能になる。
【0045】
実施の形態4.
図4は、本発明に係る実施の形態4によるレーダ信号処理装置の処理フローを示すブロック図である。また、図8は信号処理の動作例を説明するための波形図である。図において、J/N比(ジャミング信号対ノイズ比)の高いリピータジャマーなどのジャミングについて対処する。リピータジャマーは、パルスヒット毎に、目標信号のレンジビンに対するレンジビンの相対的な位置が変動することを前提とする。なお、図4において、図1、9と同一符号のものについては、同一相当のものであるので、説明を省略する。
【0046】
実施の形態4のデフルータ処理部1では、振幅検波処理2を実施した後、得られたパルスヒット毎のIch、Qchビデオデータを、閾値H算出処理31に送るとともに、閾値L算出処理32に送る。閾値H算出処理31および閾値L算出処理32では、振幅検波処理2の処理結果を元にレンジビン毎に平均電力を計算し、それぞれ閾値Hおよび閾値Lを算出する。2値化処理4は、閾値H算出処理31および閾値L算出処理32のそれぞれの処理結果により得られた閾値Hおよび閾値Lと、振幅検波処理2後の振幅をそれぞれ比較する。検出結果加算処理5は、2値化処理4の結果を各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する。ブランキングレンジ判定処理6は、検出結果加算処理5の結果を元に、ブランキングレンジ判定を行う。ブランキングレンジ処理7は、ブランキングレンジ判定にてブランキングレンジとみなされたレンジビンkのビデオデータを、ヒット毎にレンジビン(k−1)のIch、Qchビデオデータに置き換える。
【0047】
閾値H算出処理31は、閾値Lよりも高い閾値Hを設定する。本来1ヒットあたりのS/N(信号/ノイズ)比は高くないため、アンテナ装置(図示せず)は目標検出に必要な複数のパルスを送信する。目標からの反射信号は、ヒット毎に定期的に同じレンジビンに集中するので、何ヒットか積分し、加算することで目標検出を行うことが可能になる。
【0048】
図8の例において、閾値H算出処理31により得られる閾値Hの場合、第1系統の2値化処理4の結果で目標は検出されなくなり、目標信号のビデオデータはそのまま保持される。
一方、J/N比の高いジャミングについては、閾値Hを利用した第1系統の2値化処理4によって、非同期で検出される。その後、第1系統の検出結果加算処理5と、第1系統のブランキング判定処理6を順に行うことで、ブランキングレンジとみなされるジャミングが判定される。図8では、ヒット数が1のレンジビンがジャミングと判定される。
第1系統のブランキング判定処理6の結果は、第1系統のブランキングレンジ処理7および第2系統のブランキングレンジ処理7に出力される。
【0049】
第1系統のブランキングレンジ処理7では、ジャミングと判定されたレンジビンkのビデオデータを、各ヒット毎にレンジビン(k−1)のIch、Qchビデオデータに置き換えることで、ジャミングが除去される。
【0050】
また、閾値L算出処理32により得られる閾値Lの場合、第2系統の2値化処理4の結果で目標とジャミングが検出される。多次エコーについては、閾値Lによる2値化処理4により、図1、図9と同様に除去される。
その後、第2系統の検出結果加算処理5と、第2系統のブランキング判定処理6を行うことで、目標が判定される。図8では、ヒット数が3のレンジが目標と判定される。J/N比の高いジャミングは、ブランキングレンジにより検出される。図8では、ヒット数が1のレンジがジャミング候補と判定される。
【0051】
さらに、第2系統のブランキングレンジ処理7では、ブランキングレンジとみなされたレンジビンkのビデオデータを、各ヒット毎にレンジビン(k−1)のIch、Qchビデオデータに置き換えることで、ジャミングが除去される。
このとき、第2系統のブランキング判定処理6によってブランキングレンジとみなされたジャミング候補のうち、第1系統のブランキング判定処理6でジャミングと判定されたレンジビンについてのみ、ブランキング処理が行われる。
【0052】
このようにデフルータ処理を行なうことで、リピータジャマーによるジャミングと多次エコーのみを除去して目標を検出することが可能となる。
【0053】
以上説明した通り、実施の形態4によるレーダ信号処理装置は、振幅検波された信号を、高閾値に基づいてレンジビン毎に2値化したレーダ受信信号について、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する第1の加算処理と、上記振幅検波された信号を、上記高閾値よりも値の小さい低閾値の2つの閾値に基づいて、レンジビン毎に2値化したレーダ受信信号について、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する第2の加算処理と、上記第1の加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミングと判定する第1のブランキングレンジ判定処理と、上記第2の加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミング候補と判定する第2のブランキングレンジ判定処理と、上記第1のブランキングレンジ判定処理でジャミングと判定され、かつ第2のブランキングレンジ判定処理でジャミング候補と判定されたレンジビンについて、レーダ受信信号における周辺のレンジビンの信号によって置き換える処理を行うブランキング処理と、を備えたことを特徴とする。
【0054】
これによって、J/N(ジャミング/ノイズ)比レベルが高いリピータジャマーなどのジャミングを対象に、閾値を高く取りデフルータ処理1を実施することができる。これにより不要なJ/N比レベルの高いジャミングのみを目標信号に影響なく除去することが可能となる。
【0055】
なお、実施の形態1乃至4で説明したレーダ信号処理装置は、目標検出精度を向上させる、より高度なレーダ信号処理装置に適用することができる。例えば、航空機用のレーダ信号処理装置に適用することで、目標の探知、追尾、識別を同時に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1 デフルータ処理部、2 振幅検波処理、3 閾値算出処理、4 2値化処理、5 検出結果加算処理、6 ブランキングレンジ判定処理、7 ブランキングレンジ処理、9 CFAR処理部、10 レンジビン相関処理、11 相関処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振幅検波されレンジビン毎に2値化されたレーダ受信信号を、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する加算処理と、
上記加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミング候補と判定するブランキングレンジ判定処理と、
上記ブランキングレンジ判定処理で得られたジャミング候補について、隣接する所定範囲のレンジビンに、ブランキングレンジ判定処理にて目標と判定された信号が存在しない場合、ブランキングレンジと判定するレンジビン相関処理と、
上記レンジビン相関処理によりブランキングレンジと判定されたジャミング候補の信号を、周辺のレンジビンの信号によって置き換える処理を行うブランキング処理と、
を備えたレーダ信号処理装置。
【請求項2】
振幅検波されレンジビン毎に2値化されたレーダ受信信号を、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する加算処理と、
上記加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミング候補と判定するブランキングレンジ判定処理と、
上記レーダ受信信号について、CFAR(Constant False Alarm Rate)スレッショルドとの比較により目標を判定するCFAR処理と、
上記ブランキングレンジ判定処理及びCFAR処理により目標と判定されたレンジビンを目標として検出する相関処理と、
を備えたレーダ信号処理装置。
【請求項3】
振幅検波されレンジビン毎に2値化されたレーダ受信信号を、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する加算処理と、
上記加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミング候補と判定するブランキングレンジ判定処理と、
上記レンジビン判定処理により得られたジャミング候補の信号を、周辺のレンジビンの信号によって置き換える処理を行うブランキング処理と、
上記ブランキング処理の施された信号について、CFAR(Constant False Alarm Rate)スレッショルドとの比較により目標を判定するCFAR処理と、
上記ブランキングレンジ判定処理及びCFAR処理により目標と判定されたレンジビンを目標として検出する相関処理と、
を備えたレーダ信号処理装置。
【請求項4】
振幅検波された信号を、高閾値に基づいてレンジビン毎に2値化したレーダ受信信号について、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する第1の加算処理と、
上記振幅検波された信号を、上記高閾値よりも値の小さい低閾値の2つの閾値に基づいて、レンジビン毎に2値化したレーダ受信信号について、各レンジビンのパルスヒット数毎に加算する第2の加算処理と、
上記第1の加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミングと判定する第1のブランキングレンジ判定処理と、
上記第2の加算処理の結果、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも大きいレンジビンの信号を目標と判定し、パルスヒット数が目標判定ヒット数よりも小さくかつブランキング未処置用ヒット数よりも大きいレンジビンの信号をジャミング候補と判定する第2のブランキングレンジ判定処理と、
上記第1のブランキングレンジ判定処理でジャミングと判定され、かつ第2のブランキングレンジ判定処理でジャミング候補と判定されたレンジビンについて、周辺のレンジビンの信号によって置き換える処理を行うブランキング処理と、
を備えたレーダ信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−193961(P2012−193961A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56050(P2011−56050)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】