説明

レーダ型探査装置

【課題】 ハンドヘルドタイプの探査装置に応用した場合において、操作者に対して地中埋設物の探知状況をリアルタイムに告知することができるレーダ型探査装置を提供すること。
【解決手段】 送信アンテナと受信アンテナを含むレーダユニットの複数が、地表面に沿って走査することができる筐体部52に装着されている。操作者Wはアーム部53の長手方向に直交するようにして取り付けられた一対のハンドル57を把持し、アーム部53を左右に振る動作を実行することで、アーム部の先端部に取り付けられた前記筐体部52を地表面gに沿って走査させることができる。これにより複数のレーダユニットによりターゲットを捕捉する動作が実行される。前記各レーダユニットにより得られる地中埋設物の探査結果をそれぞれ二値化して、その論理積を得る演算手段と、前記演算手段により得られる論理積に基づいて、操作者に対する告知手段を駆動する駆動手段とが具備される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば地雷等のような地中埋設物を探査する地中レーダに好適に応用することができ、地中埋設物の探査状況を操作者に対してリアルタイムに告知することができるようにしたレーダ型探査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、対人地雷に代表される地雷が世界中の紛争地域で使用され、紛争終結後においても多数が地中に埋設されたままとなっており、これらの探査および除去は困難をきわめている。地中に埋設された地雷の探索方法としては、金属探知器を利用する方法が主流であるが、前記した対人地雷の多くは金属以外の素材、例えばプラスチックが利用されており、対人地雷を金属探知器のみで探知することは困難な場合が多い。
【0003】
そこで、送信アンテナからのマイクロ波を地中に伝播させて、その反射波を受信アンテナで検出し、検出された反射波を画像処理することで、対象物の有無およびその埋設位置(距離)を検証しようとする地中レーダの提案が多数なされており、例えば次に示す特許文献1〜3等に開示されている。
【特許文献1】特開平5−142343号公報
【特許文献2】特開2002−228760号公報
【特許文献3】特開2002−228599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のレーダ型探査装置においては、ターゲットとしての前記した地雷の主要な素材が金属であるかプラスチックであるかによって、その比誘電率が大きく異なるために、送信マイクロ波の周波数を対象物に応じて選択しなければならないという問題が発生する。
【0005】
換言すれば、金属を対象とした専用の地中レーダ、および前記したプラスチックを対象とした専用の地中レーダを用意し、これらを使い分けなければならない。したがって、きわめて非能率的な探査作業を余儀なくされるだけでなく、それぞれ専用の探査装置を用意することによる経済的な負担も抱えることになる。
【0006】
そこで、本件出願人はターゲットの性質にかかわらず、広範囲のターゲットに対して利用することができる汎用性を持たせたレーダ型探査装置を提案している。この発明は前記した構成の探査装置に対して好適に採用することができ、特にハンドヘルドタイプの探査装置に応用した場合において、操作者に対して地中埋設物の探知状況をリアルタイムに告知することができるレーダ型探査装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかるレーダ型探査装置は、地中に対してマイクロ波信号を送信する送信アンテナと、送信された前記マイクロ波信号の反射波を受信する受信アンテナとを含むレーダユニットが少なくとも2組具備され、前記各レーダユニットにより得られる地中埋設物の探査結果をそれぞれ二値化して、その論理演算を実行する演算手段と、前記演算手段により得られる演算結果に基づいて、操作者に対する告知手段を駆動する駆動手段とを具備した点に特徴を有する。
【0008】
この場合、好ましい実施の形態においては、前記各レーダユニットを構成する少なくとも送信アンテナと受信アンテナの各組が、筐体部にそれぞれに装着され、前記筐体部が棒状のアーム部材における先端部に取り付けられると共に、前記アーム部材に対して操作者が把持するハンドル部が取り付けられた構成とされる。
【0009】
加えて、前記演算手段には前記各レーダユニットにおいて得られる探査結果の二値化情報がそれぞれ書き込まれるメモリ手段と、前記各メモリ手段に書き込まれた二値化情報の論理積を得る論理積回路とが具備されていることが望ましく、前記論理積回路の出力に基づいて、前記告知手段を駆動させるように構成される。
【0010】
また、前記演算手段には前記各メモリ手段に書き込まれた二値化情報の論理和を得る論理和回路がさらに具備される場合もあり、この場合においては、前記論理和回路の出力に基づいて、前記告知手段を前記論理積回路の出力に基づく場合とは異なった動作態様により駆動するように構成される。
【0011】
そして、前記告知手段としては、操作者に対して視覚もしくは聴覚により情報を告知するものが採用され、これらはそのいずれか1つもしくは併用する形で採用され得る。
【0012】
一方、この発明において使用される前記レーダユニットは、キャリア信号をランプ信号により位相変調し、位相変調された前記キャリア信号の立上がりもしくは立下がりのタイミングにおいて前記送信アンテナよりマイクロ波信号を送信すると共に、前記送信アンテナより送信されるマイクロ波信号の位相変調成分と前記受信アンテナにより受信される反射波の位相変調成分との間の位相の変化分を取得することができる位相変化分取得手段が具備された構成にされていることが望ましい。
【0013】
この場合、好ましくは前記ランプ信号により位相変調された前記キャリア信号の立上がりもしくは立下がりを、より急峻な形態に波形整形する波形整形手段を含み、前記波形整形手段によって得られる高次高調波を含むマイクロ波信号を、前記送信アンテナより送信するように構成される。
【0014】
そして、好ましい実施の形態においては前記位相変化分取得手段には、前記送信アンテナより送信されるマイクロ波信号の位相変調成分を抽出する第1のローパスフィルタと、前記受信アンテナにより受信される反射波の位相変調成分を抽出する第2のローパスフィルタと、前記第1および第2のローパスフィルタによりそれぞれ得られる位相変調成分における位相の変化分を取得することができる差分抽出手段とが具備される。
【0015】
そして、前記した差分抽出手段としては、アナログ信号の反転入力端子および非反転入力端子を備えたオペレーショナルアンプを好適に採用することができる。
【0016】
さらに、この発明にかかるレーダ型探査装置においては、前記したキャリア信号発生部におけるキャリア信号およびスキャン信号発生部におけるランプ信号は、基準信号発生部からの基準信号をそれぞれ分周した分周出力に基づいてそれぞれ生成されるように構成される。
【発明の効果】
【0017】
前記した構成のレーダ型探査装置によると、それぞれに独立した送信アンテナと受信アンテナを含むレーダユニットが少なくとも2組具備され、各レーダユニットにおいて同一のターゲットを探査するようになされる。そして、各レーダユニットにおける探査結果が二値化されて演算され、その演算結果により操作者に対する告知手段が駆動されるように構成されるので、レーダユニットによる探査の信頼性をより向上させることができる。
【0018】
この場合、前記した二値化信号の論理積もしくはこれに加えて論理和も利用して、前記告知手段の駆動動作の態様を変化させることで、操作者に対してリアルタイムにターゲットの存否に関する適切な情報を伝達させることができる。したがって、操作者は前記情報に応じて注意力を集中させることができ、ターゲットの見過ごしを効果的に防止させることに寄与できる。
【0019】
一方、前記した構成において用いられるレーダユニットは、ランプ信号によって位相変調されたキャリア信号の立下がりもしくは立上がりのタイミングにおいて送信アンテナよりマイクロ波信号が送信されるようになされる。したがって、受信アンテナにより受信される反射波のキャリア信号はランプ信号により位相変調されたものであり、それ故、高周波のキャリア信号を検証することなく両者の位相変調成分を検証することで、送信時に対する受信時の位相変化分を捕らえることができる。
【0020】
したがって、この発明において好適に利用される前記レーダユニットによると、両者の位相変調成分における位相の変化分を捕らえるように構成されるので、その回路構成を大幅に簡素化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明にかかるレーダ型探査装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。この発明は特にハンドヘルドタイプのレーダ型探査装置に適用した場合において、特に効果が得られるように配慮したものであり、送受信アンテナを含むレーダユニットを少なくとも2組具備された構成になされる。なお、以下の説明においては、まずレーダユニットの単体の構成を説明し、その後に複数のレーダユニットを備えたハンドヘルドタイプの探査装置の具体的な構成を説明することにする。
【0022】
図1は、レーダユニット単体の全体構成をブロック図によって示したものである。この図1に示すレーダユニットの主要部は、好ましくはASIC(Application Specific Integlated Circuit)により構成され、○印で示す端子は図示せぬCPU(Central Processing Unit)、もしくは外付けの回路との間の入出力端子を示している。
【0023】
このレーダユニットにおいては、例えばクリスタルを用いた基準信号発生部1が具備されており、この基準信号発生部1からの基準信号は前記CPUにおける基準クロック信号として利用されるとともに、第1の分周器2により分周されて、キャリア信号発生部3に供給される。このキャリア信号発生部3においては、第1の分周器2からの分周出力により、例えば2MHz〜5MHzの矩形波信号が生成されるが、この実施の形態においてはキャリア信号発生部3からは2MHzの矩形波信号が生成されることを前提として説明する。
【0024】
一方、前記した第1の分周器2による出力は第2の分周器4に供給され、この第2の分周器4による出力は、スキャン信号発生部5および同期信号生成部6に供給される。ここで、図2(a)は前記したキャリア信号発生部3より出力される矩形状のキャリア信号を示しており、図2(b)は前記したスキャン信号発生部5より出力されるスキャン信号を示している。このスキャン信号は前記した第2の分周器4より出力される矩形波信号を利用して階段状の鋸歯状波(ランプ信号)を生成するものであり、したがってこのスキャン信号発生部5は、ランプ(Rump)信号生成手段と呼ぶこともできる。
【0025】
前記スキャン信号発生部5より出力される図2(b)に示すスキャン信号(階段状の鋸歯状波)は、図1に示すローパスフィルタ7を介することにより、図2(b)に細い実線で示したように、そのレベルがリニアに変化するランプ信号に変換される。このランプ信号の周波数は、例えば40Hz〜80Hz程度に設定されることが望ましいが、この実施の形態においては、40Hzのランプ信号が生成されることを前提として説明する。
【0026】
一方、前記した同期信号生成部6においては、前記した第2の分周器4より出力される矩形波信号を利用して同期信号を生成するものであり、これは好ましくは前記したランプ信号の周波数に同期した40Hzの矩形波信号が出力されるように構成されている。この同期信号は、後述するデータ出力端子32から出力されるアナログデータ信号とともに外付けの処理回路において利用される。
【0027】
そして、前記した第1と第2の分周器2,4における各分周率、前記したスキャン信号発生部5および同期信号生成部6によって生成されるランプ信号および同期信号のそれぞれの周波数等は、前記したCPUからの指令により適宜変更することができるように構成されている。
【0028】
なお、図2(a)に示したキャリア信号と図2(b)に示したランプ信号の周波数は、前記したとおり大きな差があり、したがって、図2(a)および(b)に示す各信号波形における周期の時間軸は同一ではない。この実施の形態においては、前記したキャリア信号およびスキャン信号の二つの信号を用いて、後述するように送信タイミング、受信タイミング、およびSTC回路の動作等のすべてを制御することになる。
【0029】
図1に示すように、ローパスフィルタ7を介して出力されるランプ信号は、前記したキャリア信号発生部3より出力されるキャリア信号をランプ信号によりレベルシフトするように動作する。これにより、キャリア信号はランプ信号により位相変調を受ける。すなわち、ローパスフィルタ7の出力端と、キャリア信号発生部3の出力端の交点Aが、実質的にランプ信号によるキャリア信号の位相変調手段を構成している。図2(c)には、前記ランプ信号により位相変調を受けたキャリア信号の状態を模式的に示しており、2MHzのキャリア信号は、40Hzのランプ信号のレベルに応じて、その位相遅れの度合いが変化する位相変調を受ける。
【0030】
なお、図2(c)においては実線で示した矢印の間隔がキャリア信号の半周期を示しており、破線で示した矢印の間隔が例えば最大の位相変調を受けた時のキャリア信号の半周期の時間的な位置を例示している。なお、図2(c)に示したキャリア信号は紙面に描く便宜上、図2(a)に示したキャリア信号に対して遥かに大きな周期に描かれているが、両者の周期(周波数)は、同一である。
【0031】
図1に戻り、ランプ信号により位相変調を受けた前記キャリア信号は、波形整形手段としての波形整形回路8に供給されるように構成されている。この波形整形回路8の具体的な構成および作用については後で詳細に説明するが、この実施の形態においては波形整形回路8は、位相変調されたキャリア信号の立上がりを鈍らせ、立下がりを加速(急峻に)させる波形整形処理を実行する。これにより、位相変調されたキャリア信号の立下がりのタイミングにおいてキャリア信号の奇数次を含む高次高調波が発生する。
【0032】
そして、波形整形回路8によって生成される高調波出力は、200MHz以上のマイクロ波を増幅する送信アンプ9によって電流増幅され、送信用キャビティアンテナ10に給電される。したがって送信用キャビティアンテナ10からは、位相変調されたキャリア信号の立下がりのタイミングにおいて発生する高調波が送信信号として送信され、これが前記キャビティアンテナ10が対峙する地中に向かって伝播される。
【0033】
図3は主に前記した波形整形回路8の構成例を示したものであり、図4は図3に示す波形整形回路の作用を説明するタイミング図である。図3に示す波形整形回路8においては、ノンポーラ型のコンデンサC1に対して放電用抵抗R1が並列接続されており、この並列接続体の一端(一次側)に前記したランプ信号により位相変調を受けたキャリア信号が供給されるように構成されている。また前記並列接続体の他端(二次側)は、npn型バイポーラトランジスタQ1のベース電極に接続されている。
【0034】
前記トランジスタQ1は、前記した送信アンプ9として機能するものであり、そのコレクタ端子に負荷抵抗R2を備え、負荷抵抗R2を介して動作電源Vccに接続されている。そして、前記コレクタ端子は前記した送信用キャビティアンテナ10に接続されている。またトランジスタQ1のエミッタ端子は回路の基準電位点であるグランドに接続されている。
【0035】
図4(a)は前記したランプ信号により位相変調を受けたキャリア信号(この波形整形回路8の説明中においては、これを単に矩形波パルスと言うこともある。)の形態を示している。また、図4(b)は波形整形後の信号、すなわちトランジスタQ1に印加されるベース電位を示し、さらに図4(c)は図4(b)に示す波形整形後の信号の一つを模式的に拡大して示したものである。なお、図4(a)に示した矩形波パルスは、図4(b)および(c)に示した波形整形後の信号との差異を明確にさせるため、その立上がりおよび立下がりに若干スロープが存在するように誇張して示している。
【0036】
ここで、図3に示す波形整形回路8には、図4(a)に示した矩形波パルスが供給される。そのパルス信号が図3に示すように、例えば0Vから5Vに立上がった場合においては、抵抗R1は矩形波パルスの波高値を減衰させた状態でトランジスタQ1のベース電極に伝達させる。一方コンデンサC1には、図3に示した極性をもって電荷が充電される。したがってコンデンサC1への充電作用により、トランジスタQ1のベース電位は入力パルスの波高値に向かって徐々に上昇する。それ故、図4(a)に示した矩形波パルスの立上がりのタイミングにおいては、図4(b)に示すようにベース電位は緩慢に上昇するように動作する。この状態を図4(c)において符号hで示している。
【0037】
時間の経過とともに前記コンデンサC1への充電作用は終了し、その両端電位は等しくなる。これにより前記ベース電位は、矩形波パルスの波高値である5Vに到達する。この状態を図4(c)において符号iで示している。
【0038】
次に、前記矩形波パルスが立下がり、5Vから0Vに変化した場合には、前記コンデンサC1を介してベース電極側に0Vの電位を瞬時に伝達させるように作用する。同時に前記コンデンサC1の両端間に接続された抵抗R1は、コンデンサC1の放電抵抗として作用し、この放電抵抗R1を介してコンデンサC1のベース電極側の端子を0V側に引き落とす動作が実行される。したがって、コンデンサC1のベース電極側の電位変化は矩形波パルスの立下がり動作よりも遥かに加速され、その立下がり波形はより急峻となるように波形整形される。このような動作が実行される前記コンデンサは、スピードアップコンデンサとも言われている。
【0039】
したがって、矩形波パルスの立下がりのタイミングにおいて、キャリア信号である2MHzを基本波とした奇数次の高調波が多量に重畳された高次高調波信号が発生する。この状態を図4(c)において符号jで示している。要するに、前記した波形整形回路8を構成する前記コンデンサC1と抵抗R1は、2MHzの周波数に対応する周期内において、前記したチャージ(充電)およびディスチャージ(放電)の繰り返し動作がなされるように時定数が設定されている。
【0040】
前記した図4(c)に示す信号波形は、送信アンプ9として機能するトランジスタQ1のベース電極に加えられる。したがって、図4(c)に示す信号波形において、符号hで示されたように緩慢に電位が上昇する期間においては、トランジスタQ1のスレッショルド電圧に達した時にトランジスタQ1はオン動作する。そして、図4(c)における符号iで示す状態から符号jに示す状態に至った時に、瞬時にして高調波信号がベース電極に印加され、そのコレクタ電極より前記高調波信号が電流変換されて送信用キャビティアンテナ10に給電される。
【0041】
なお、前記した高調波信号の出力は、すでに述べたとおり2MHzのキャリア信号を40Hzで位相変調した場合の変調されたキャリア信号の立下がりのタイミングで発生する。したがって、1秒間に200万回の高調波信号(マイクロ波)がアンテナ11より送信されることになる。しかも2MHzのキャリア信号は40Hzのランプ信号により位相変調されているために、40Hzの周期の初めの段階における高調波信号の出力間隔に比較して、40Hzの周期の終わりの段階における高調波信号の出力間隔が大きくなる。
【0042】
すなわち、前記高調波信号の出力タイミングは40Hzのスキャン周期に対応する期間内において、ランプ信号による変調度にしたがって密から粗になるように徐々に変化する動作を繰り返す。この動作については、後で説明するゲートパルス信号の生成動作の説明において詳しく述べることにする。
【0043】
前記キャビティアンテナ10においては、所定の誘電率を持った板の上に銅板が貼られた構成になされ、給電点を所定のポイントにおいて、高周波電流が前記アンプ9より流される。前記高周波信号はきわめて大きな歪みを含んだものであるが、リニア系の前記アンプ9を介してキャビティアンテナ10に給電することで、前記キャビティアンテナ10はいわゆる共鳴函として作用し、2MHzを基本波とした奇数次のサインウェーブを含んだマイクロ波がアンテナ10より送信されることになる。この場合、前記アンテナ10から送信される例えば200MHz〜2GHzの範囲のすべての周波数は、それぞれ前記した40Hzの変調が加わったものとなる。
【0044】
一方、ランプ信号によって位相変調を受けた前記キャリア信号は図1に示す時間軸可変回路15に供給されて時間軸可変がなされ、さらに移相器16において位相遅延がなされる。前記時間軸可変回路15および移相器16は、例えばゲートICによる半導体ディレイ回路により構成されており、これは後述するゲートパルスにおける受信タイミング(Tx)の調整を図る目的で採用される。
【0045】
図2(d)は前記した時間軸可変回路15および移相器16によりキャリア信号の時間軸の変更および位相遅延を受けた様子を示している。なお、前記時間軸可変回路15における時間軸の可変、および移相器16における移相量は、前記したCPUからの指令により適宜変更することができるように構成されている。
【0046】
そして、前記した時間軸可変回路15および移相器16により、時間軸の変更および位相遅延を受けたキャリア信号はCPUに取り込まれ、このCPU内において信号処理されて図2(e)に示すゲートパルス信号が生成される。図2(e)に示されたゲートパルス信号は、図2(f)に示したように2MHzのキャリア信号の立下がりと、ランプ信号とのクロス点において出力されるように同期がとられ、このゲートパルス信号の出力タイミングTxにおいて、後述する受信ゲート回路におけるゲートを閉じ、それ以外の時間Rxにおいてはゲートを開けて受信状態となるように制御される。
【0047】
なお、前記した2MHzのキャリア信号は、前記したランプ信号のレベルに応じて位相変調されているので、結果として前記ゲートパルス信号の発生タイミングは、40Hzのスキャン周期に対応する期間内において、変調度にしたがって密から粗になるように徐々に変化する。すなわち、図2(e)に示されたゲートパルス信号Txの発生インターバルは、図2(f)に示すように、t1<t2<t3……となる。これはすでに説明したキャビティアンテナ10における高調波(マイクロ波)の出力間隔と同様になる。なお、図2(f)における矩形波は図2(a)に示すキャリア信号であり、また前記矩形波に斜めにクロスする信号は図2(b)に示すランプ信号である。
【0048】
前記CPU内による信号処理により得られる図2(e)に示すゲートパルス信号は、図1に示された受信ゲート回路18に供給される。これにより、キャビティアンテナ10において出力される高調波(マイクロ波)の出力タイミングTxにおいては受信ゲート回路18を閉じ、送信出力タイミング以外(受信状態)Rxにおいて受信ゲート回路18を開き、後述するターゲットTaによるエコー信号を受け取るように作用する。
【0049】
ここで、図5に模式的に描いたように送信用キャビティアンテナ10より送信された高次高調波を含むマイクロ波は、ターゲットTaすなわちこの説明の例においては地中に埋設された地雷に投射され、その反射波が受信用キャビティアンテナ11によって受信される。この場合、ターゲットTaの比誘電率に対応した前記高調波に含まれるいずれかの特定な周波数がターゲットTaに反応し、その特定な周波数が図5に模式的に描いたように位相が反転した状態で戻り、これが受信アンテナ11によって受信される。
【0050】
前記受信アンテナ11によって受信される前記特定な周波数信号は、反転位相のキャリア信号であり、これは前記したランプ信号により位相変調されたものである。ここでレーダの機能としては、送信波と受信反射波との間における遅延度合い、すなわち位相変化分を抽出することになる。
【0051】
そこで、前記した反転位相のキャリア信号を捕らえて、その周波数の変化分から位相変化分を抽出することは、一般的にはフーリエ変換等の手法を採用しなければならない。したがって、これを採用するには回路構成がきわめて複雑となり、また比較的強度が高い受信電波を必要とする。このように強度が高い受信電波を得るためには、必然的に送信時の出力電力を高めなければならないという問題に帰着する。
【0052】
そこで、送信時に対する受信時の位相変化分を捕らえようとした場合、前記した40Hzの中のサンプル点で位相が動いているか否かを検証すればよい。すなわち変調波形はキャリア信号と同期しているので、きわめて高い周波数であるキャリア信号を検証しなくても、40Hzの変調波形を検証することで、位相変化分を捕らえることができる。
【0053】
これには送信信号と受信信号とをそれぞれローパスフィルタを介してキャリア成分を除去し、それぞれの変調波を抽出して両者の位相の変化分を見るように構成すればよい。すなわち、送信時の変調波の位相に対する受信時の変調波(これは逆相になる)との位相のずれ分を抽出することになる。
【0054】
前記したローパスフィルタとしては、例えば50KHz程度のカットオフ周波になされたものを使用することで、前記キャリア信号を効果的に除去することができる。また、前記した位相のずれ分を抽出する手段としては、アナログ的に動作するオペアンプ(オペレーショナルアンプ)を位相変化分取得手段として利用すればよい。
【0055】
以下に説明する図1の符号18〜23で示す各構成は、前記した技術的な観点にしたがって構成されたものであり、送信波と受信反射波との間における遅延度合い、すなわち位相変化分を検証する演算手段を構成するものである。まず、前記受信ゲート回路18にはゲートG1およびG2が具備されており、このゲートG1およびG2は前記した図2(e)に示すゲートパルス信号により制御される。なお、図1に示すゲートG1およびG2の状態はゲートオープンである受信状態Rxを示しており、前記したゲートパルス信号(Tx)の到来時にはゲートG1およびG2は共にグランドに落とされてゲートクロズの状態になされる。
【0056】
前記ゲートG1には送信用キャビティアンテナ10および受信用キャビティアンテナ11の共通グランド点より、グランド点に回り込んだ送信信号、すなわちランプ信号により位相変調された高調波信号に対応する信号電圧が供給される。これは電圧増幅器19を介して第1のローパスフィルタ21に供給される。また、ゲートG2には受信用キャビティアンテナ11による受信信号に対応する信号電圧が供給される。これも電圧増幅器20を介して第2のローパスフィルタ22に供給される。
【0057】
前記各ローパスフィルタ21,22は、すでに説明したとおり例えば50KHz程度のカットオフ周波数に設定されており、したがって前記ゲートG1を介して得られる送信信号におけるキャリア信号成分は除去され、変調成分すなわち前記40Hzのスキャン信号に対応する信号波(ベースバンド信号とも言える。)を得ることができる。この信号波は前記したランプ信号により変調された信号波に対応するものである。このベースバンド信号の例が図6(a)にゼロクロス信号の態様で示されている。
【0058】
一方、受信アンテナ11で受信された受信信号は、前記したとおりゲートG2および電圧増幅器20を介してローパスフィルタ22に供給される。このローパスフィルタ22は、前記したカットオフ周波数に設定されている関係から、アンテナ11で受信されたキャリア信号成分は除去され、結果として変調成分すなわち前記スキャン信号に対応する信号波を得ることができる。この信号波はランプ信号により変調された信号波の逆相成分となる。この逆相成分の信号波の例を図6(b)に破線で示されたゼロクロス信号の態様で示している。
【0059】
ただし、図6(b)に破線で示された逆相成分の信号波は、図6(a)におけるベースバンド信号に対して遅延が生じていない状態を示したものであり、送信アンテナ10から送信されたマイクロ波がターゲットTaに投射されて反射し、受信アンテナ11に戻るまでの時間に対応した遅延が必ず生ずる。図6(b)における実線は前記したローパスフィルタ22において得られる前記ベースバンド信号に対して遅延した状態の信号波形の例を示している。
【0060】
ここで、図1に示すオペアンプによる差動増幅器23の非反転入力端には、前記図6(a)に示したベースバンド信号が供給され、また非反転入力端には図6(b)に実線で示された遅延受信信号のベースバンド成分が供給される。したがって、前記差動増幅器23は差分抽出手段として機能し、その出力端にはその差分が出力される。この差分信号は、一例として図6(c)のように示すことができ、前記したランプ信号の1スキャン周期に同期して、ピーク値pが発生する。
【0061】
したがって、前記ベースバンド信号の1周期の開始タイミングから、ピーク値pのセンタに至るまでの時間Tを計測することで、送信アンテナ10からターゲートTaに至り、さらにそのエコーが受信アンテナ11に到着する時間、すなわちターゲットの位置を知ることができる。また図6に示すピークpの振幅分Lは、ターゲットTaの比誘電率に対応し、高調波に含まれるいずれの周波数に反応したかの情報として捕らえることができる。すなわち、この振幅分Lを知ることにより、ターゲットTaが何であるかについて推測することができる。
【0062】
ここで、前記した送受信アンテナ10,11に対するターゲットTaの位置が遠い場合は探査の感度を高くし、近い場合には探査の感度を低くすることは、この種のレーダ型探査装置においてなされる基本動作である。前記した動作を実現させるために、この実施の形態においては、STC(Sencitive Timing Control)回路26と共にゲイン調整手段として機能する電圧制御抵抗素子29が使用されている。
【0063】
すなわち、図1に示すスキャン信号発生部からのスキャン信号、すなわちランプ信号は電圧増幅器25を介してSTC回路26に供給されるように構成されている。この場合、前記電圧増幅器25には必要に応じて積分回路が内蔵され、したがってSTC回路26には、図2(b)に細い実線で示した例と同様なレベルがリニアに変化するランプ信号が供給される。このランプ信号はA/D変換回路27によってデジタルデータに変換されてCPUに取り込まれる。なお、前記STC回路26は、CPUからの指令を受けてSTC回路26に供給されるランプ信号のレベルを適宜調整することができるように構成されている。
【0064】
一方、CPUに取り込まれた前記デジタルデータは、図1に示すD/A変換器28によりアナログ信号に変換され、電圧制御抵抗素子29に供給される。この電圧制御抵抗素子29は、固定の抵抗素子R0と共に直列接続され、前記したオペアンプによる差動増幅器23の出力端と基準電位点との間に接続されている。そして電圧制御抵抗素子29と固定抵抗素子R0との接続中点には電圧増幅器31が接続され、その電圧増幅出力がアナログデータとして出力端32に出力されるように構成されている。すなわち、前記した電圧制御抵抗素子29と固定の抵抗素子R0とにより電子アッテネータを構成している。
【0065】
前記したSTC回路26および電圧制御抵抗素子29を含む回路によると、ランプ信号のレベルに応じて電圧制御抵抗素子29の抵抗値が可変され、差動増幅器27における出力を抵抗素子R0との間で分圧して電圧増幅器31に供給するように作用する。この場合、図2(b)に示すランプ信号のレベルが低い場合において、前記した電圧制御抵抗素子29の抵抗値を高くし、ランプ信号のレベルが高くなるにしたがって、電圧制御抵抗素子29の抵抗値が低くなるように制御することで、好ましいゲイン調整を実現させることができる。
【0066】
すなわち、図5に模式的に示したようにターゲットTaがアンテナの近くに存在する場合においてはエコー(反射波)が早く戻り、この場合の反射波の実質的なレベルは大きい。またアンテナに対するターゲットTaの位置が遠くなるほどエコーの戻りが遅くなり、この場合の反射波の実質的なレベルは減衰により小さくなる。したがって、前記したようにSTC回路にランプ信号を利用することで、アンテナに対するターゲットTaの位置に応じてレーダの受信感度を効果的に調整することが可能となる。これにより、前記した出力端32より出力されるアナログデータのレベルが一定の範囲となるように調整することができる。
【0067】
なお、図1に示す構成においては、同期信号生成部6より40Hzの同期信号が出力されるように構成されている。したがって、図1には示されていない外付けの回路において、前記出力端32から出力される図6(c)に相当するアナログデータ信号をA/Dコンバータによりデジタル変換し、同期信号生成部6からの同期信号を利用することで、ターゲットTaの位置および比誘電率に基づくターゲットの性質(換言すれば、地雷であるか否か)を判定することができる。
【0068】
以上説明した実施の形態においては、送信信号を生成する前記した波形整形回路8は、キャリア信号の立上がりを鈍らせ、立下がりを加速(より急峻に)させる波形整形処理を実行するようにしているが、これとは逆にキャリア信号の立上がりを加速(より急峻に)させて、立下がりを鈍らせるように波形整形してもよい。その場合の信号波形の例を図7に示している。なお、図7に示す(a)〜(c)は、すでに説明した図4の(a)〜(c)にそれぞれ対応するものである。
【0069】
この場合においては、前記した時間軸可変回路15および移相器16を含むゲートパルスの生成回路においては、2MHzのキャリア信号の立上がりに同期してゲートパルス信号を出力するように構成する必要がある。
【0070】
以上のように前記した実施の形態によると、キャリア信号をランプ信号によって位相変調しているので、送信アンテナにより送信されるマイクロ波は勿論のこと、受信アンテナにより受信される反射波のいずれもが、ランプ信号による変調波になされている。したがって、前記したようにローパスフィルタを用いることで、両者の位相変調分を捕らえることができ、両者の位相変調成分における位相の変化分によりターゲットの位置を捕捉することができる。したがってこの発明において好適に用いられる前記したレーダユニットによると、その回路構成を大幅に簡素化させることに寄与できる。
【0071】
なお、前記した実施の形態においては、時間軸可変回路15および移相器16を備えて位相変調を受けたキャリア信号の遅延量を制御し、図2(e)に示す送信および受信ゲートパルスを生成するようにしている。しかしながら、キャリア信号の周波数、またランプ信号の周波数および変調レベルのパラメータ等により、前記送信および受信のタイミングを予め予測することができる。したがって、CPU内においてカウンタによる時間計測により、図2(e)に示すような送信および受信ゲートパルスを生成することができる。それ故、前記したカウンタ等を利用する場合においては、前記した時間軸可変回路15および移相器16は不要になる。
【0072】
次に図8および図9は、図1〜図7に基づいて説明したレーダユニットを用い、これをハンドヘルドタイプの探査装置として構成した実施の形態を示したものである。この探査装置51においては、すでに説明した送信アンテナと受信アンテナを含むレーダユニットの複数組が、地表面に沿って走査することができる筐体部52に装着されている。前記筐体部52は、図8に示すように棒状に形成されたアーム部53の先端部に取り付けられており、このアーム部53の後端部には電圧源として機能するバッテリ54が装着されている。
【0073】
前記アーム部53における中央部よりも若干後方寄りには、フック部材55が取り付けられ、このフック部材55を介して吊り下げベルト56が取り付けられている。そして、前記吊り下げベルト56を操作者Wの肩に掛けることにより、探査装置51の全体の重量を支持できるように構成されている。すなわち、前記吊り下げベルト56の取り付け位置は、探査装置全体のほぼ重心位置となるように設定されている。
【0074】
前記アーム部53におけるフック部材55の取り付け位置よりも若干前方寄りには、アーム部53の長手方向に直交し、その左右方向に向かって一対のハンドル57が取りけられている。したがって、操作者Wは前記一対のハンドル57をそれぞれ把持して、アーム部53を例えば左右に振る動作を実行することで、前記筐体部52を地表面gに沿って走査させることができる。なお、前記一対のハンドル57には、図示していないが必要に応じて操作用のレバーやスイッチ等が配置されている。
【0075】
また、前記アーム部53におけるハンドル57の取り付け位置よりもさらに前方寄りには、モニタ装置58が操作者Wの目に向かうようにして取り付けられており、操作者Wは前記モニタ装置58等を視認しつつ、探査の作業を行うことができるように構成されている。
【0076】
図9は、前記した筐体部52に装着されたレーダユニットにおける送信アンテナと受信アンテナの配置構成の例を示したものであり、図9は筐体部52を下面方向から、すなわち、筐体部52を図8における地表面g側から視た状態で示している。この筐体部52には、例として4組のレーダユニット、すなわち4組の送受信アンテナが四辺に沿って配置されている。
【0077】
図9においては説明の便宜上、第1組の送受信アンテナをTX1,RX1、第2組の送受信アンテナをTX2,RX2、第3組の送受信アンテナをTX3,RX3、第4組の送受信アンテナをTX4,RX4と標記している。これらは第1組の送受信アンテナに代表して符号を付けて示したとおり、図1に示した送信用キャビティアンテナ10、受信用キャビティアンテナ11に対応するものである。
【0078】
図9に示した4組の送受信アンテナを備えた筐体部52は、図8に基づいて説明したようにアーム部53を例えば左右に振る動作を実行することで、図9に示す矢印RおよびL方向に相対移動し、4組の送受信アンテナをそれぞれ地表面gに沿って走査させるように動作する。したがって、4組の送受信アンテナの走査によるターゲットの探査結果をそれぞれ独立して得ることができる。
【0079】
図10は、説明を簡略化するために、そのうちの2組の送受信アンテナを含むレーダユニットによる探査結果に基づく信号処理の一例を説明するものである。ここではTX1,RX1による第1のレーダユニット、およびTX2,RX2による第2のレーダユニットによるそれぞれの探査結果の例と信号処理の例を示している。
【0080】
図10(a)は第1のレーダユニットによる探査結果を模式的に示しており、これはすでに説明した図6(c)に示した例と同様の探査結果を示している。すなわち、図6に基づいて説明したとおり、その横軸は前記したランプ信号による1スキャン期間を示しており、1スキャンの開始からピーク値paまでの時間が、送受信アンテナとターゲットとの距離に相当するものとなる。
【0081】
この図10においては1スキャン期間を複数の期間に分割し、分割された各期間ごとにおける探査結果の出力レベルを二値化して、メモリ手段に書き込む操作を実行するようにしている。すなわち、図10(a)に示す例においては1スキャン期間がA0〜Axの期間に分割されており、ピーク値paが生ずるA4に対応するメモリ手段に“1”を書き込む動作が実行される。
【0082】
また、図10(b)は第2のレーダユニットによる探査結果を示したものであり、この第2のレーダユニットにおいてもピーク値pbが生成され、同一のターゲットを捕捉した状態を示している。これにおいても同様に1スキャン期間がB0〜Bxの期間に分割されており、ピーク値pbが生ずるB4に対応するメモリ手段に“1”を書き込む動作が実行される。
【0083】
前記したように1スキャンの期間を複数に分割し、それぞれの期間ごとに書き込まれた二値データの論理積(AND条件)をとり、図10に示すようにこの論理積が成立(A4とB4のAND条件が成立)する場合においては、同一のターゲットを間違いなく捕捉したと判定することができる。したがって、この場合においては、図8に示すモニタ装置58の例えばパネルサイドに配置した「赤色」のLEDを直ちに点灯させる制御を行うことで、操作者にその旨を告知することができる。
【0084】
次に図11は複数のレーダユニットによる探査結果に基づく他の信号処理の例を説明するものであり、図11はすでに説明した図10と同様の表現になされている。この図11に示す例においては、第1のレーダユニットによる探査結果においては、A4に対応するメモリ手段に“1”が書き込まれ、第2のレーダユニットによる探査結果においては、B2に対応するメモリ手段に“1”が書き込まれた状態を示している。
【0085】
この場合においては、第1と第2のレーダユニットが共に同一のターゲットを捕捉したとする確証がなく、それぞれに別のターゲットを捕捉している可能性がある。したがってこの場合においては、図10に基づいて説明したように、それぞれの期間ごとに書き込まれた二値データの論理積をとっても成立することはない。それ故、それぞれの期間ごとに書き込まれた二値データの論理和(OR条件)をとり、そのうちの1つ以上の論理和が成立する場合においては、目標にしているターゲットが存在する可能性があると判定することができる。
【0086】
したがって、図11に示すような結果が得られる場合においては、図8に示すモニタ装置58のパネルサイドに配置した例えば「黄色」のLEDを直ちに点灯させる制御を行うことで、操作者にその旨を告知することができ、操作者に対して注意深く同一箇所を再び探査させる操作を促すことができる。したがって、操作者は前記情報に基づいて注意力を集中させることができ、ターゲットの見過ごしを効果的に防止させることに寄与できる。
【0087】
なお以上においては、第1と第2の2つのレーダユニットによるターゲットの捕捉データに基づく処理手段について説明したが、これは図9に示すように4組の送受信アンテナを含むレーダユニットによる捕捉データをそれぞれ利用することで、より精度の高い判定結果を得ることができる。
【0088】
また、前記した実施の形態においては、図10および図11に基づいて説明したように論理積もしくは論理和が成立した時に「赤色」もしくは「黄色」のLED等を点灯させるようにしているが、これに代えて聴覚(音の大小または音程を変えるなど)による情報の伝達手段を採用してもよい。
【0089】
また、前記した実施の形態においては、位相変調を受けたキャリア信号の立下がりまたは立上がりをより急峻な形態に波形整形することで高次高調波を発生させるようにしているが、この発明においては、図1に示した波形整形回路8を利用しないモノパルス型の探査装置にも利用することができる。この場合においてはキャリア信号発生部3からは、例えば400MHz程度のキャリア信号を発生させるように制御される。
【0090】
また前記した実施の形態においては、地中に埋設された例えば地雷を探査する地中レーダを例にして説明したが、これは地雷のみならず、例えば水道管や、水漏れ部分の探査用レーダなどに採用しても同様の作用効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】この発明にかかるレーダユニットの回路構成を示したブロック図である。
【図2】図1の各部において生成される信号形態を示す波形図である。
【図3】図1における波形整形回路の例を示した回路構成図である。
【図4】図3に示す波形整形回路の作用を説明するタイミングチャートである。
【図5】送受信アンテナとターゲットの関係を示した模式図である。
【図6】ターゲットの位置等を演算する例を説明する波形図である。
【図7】図3に示す波形整形回路の他の動作例を説明するタイミングチャートである。
【図8】図1に示したレーダユニットを利用してハンドヘルドタイプの探査装置を構成した例を示す模式図である。
【図9】図8に示す探査装置における複数組の送受信アンテナの配列状態を示した筐体部の底面図である。
【図10】図8および図9に示す探査装置による動作例を説明するタイミング図である。
【図11】同じく他の動作例を説明するタイミング図である。
【符号の説明】
【0092】
1 基準信号発生部
3 キャリア信号発生部
5 スキャン信号発生部
6 同期信号発生部
8 波形整形回路
9 送信アンプ
10 送信用アンテナ
11 受信用アンテナ
18 受信ゲート回路
21 ローパスフィルタ(第1ローパスフィルタ)
22 ローパスフィルタ(第2ローパスフィルタ)
23 差動増幅器(オペアンプ)
26 STC回路
29 電圧制御抵抗素子
32 アナログデータ出力端
51 探査装置
52 筐体部
53 アーム部
54 バッテリ(電圧源)
55 フック部材
56 吊り下げベルト
57 ハンドル
58 モニタ装置
Ta ターゲット
W 操作者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に対してマイクロ波信号を送信する送信アンテナと、送信された前記マイクロ波信号の反射波を受信する受信アンテナとを含むレーダユニットが少なくとも2組具備され、 前記各レーダユニットにより得られる地中埋設物の探査結果をそれぞれ二値化して、その論理演算を実行する演算手段と、
前記演算手段により得られる演算結果に基づいて、操作者に対する告知手段を駆動する駆動手段と、
を具備したことを特徴とするレーダ型探査装置。
【請求項2】
前記各レーダユニットを構成する少なくとも送信アンテナと受信アンテナの各組が、筐体部にそれぞれに装着され、前記筐体部が棒状のアーム部材における先端部に取り付けられると共に、前記アーム部材に対して操作者が把持するハンドル部が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載されたレーダ型探査装置。
【請求項3】
前記演算手段には、前記各レーダユニットにおいて得られる探査結果の二値化情報がそれぞれ書き込まれるメモリ手段と、前記各メモリ手段に書き込まれた二値化情報の論理積を得る論理積回路とが具備され、前記論理積回路の出力に基づいて、前記告知手段を駆動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたレーダ型探査装置。
【請求項4】
前記演算手段には、前記各メモリ手段に書き込まれた二値化情報の論理和を得る論理和回路がさらに具備され、前記論理和回路の出力に基づいて、前記告知手段を前記論理積回路の出力に基づく場合とは異なった動作態様により駆動することを特徴とする請求項3に記載されたレーダ型探査装置。
【請求項5】
前記告知手段は、操作者に対して視覚もしくは聴覚より情報を告知するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載されたレーダ型探査装置。
【請求項6】
前記レーダユニットは、キャリア信号をランプ信号により位相変調し、位相変調された前記キャリア信号の立上がりもしくは立下がりのタイミングにおいて前記送信アンテナよりマイクロ波信号を送信すると共に、前記送信アンテナより送信されるマイクロ波信号の位相変調成分と前記受信アンテナにより受信される反射波の位相変調成分との間の位相の変化分を取得することができる位相変化分取得手段が具備されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載されたレーダ型探査装置。
【請求項7】
前記ランプ信号により位相変調された前記キャリア信号の立上がりもしくは立下がりを、より急峻な形態に波形整形する波形整形手段を含み、前記波形整形手段によって得られる高次高調波を含むマイクロ波信号を、前記送信アンテナより送信するように構成したことを特徴とする請求項6に記載されたレーダ型探査装置。
【請求項8】
前記位相変化分取得手段には、前記送信アンテナより送信されるマイクロ波信号の位相変調成分を抽出する第1のローパスフィルタと、前記受信アンテナにより受信される反射波の位相変調成分を抽出する第2のローパスフィルタと、前記第1および第2のローパスフィルタによりそれぞれ得られる位相変調成分における位相の変化分を取得することができる差分抽出手段とが具備されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載されたレーダ型探査装置。
【請求項9】
前記差分抽出手段がアナログ信号の反転入力端子および非反転入力端子を備えたオペレーショナルアンプにより構成されていることを特徴とする請求項8に記載されたレーダ型探査装置。
【請求項10】
前記キャリア信号発生部におけるキャリア信号およびスキャン信号発生部におけるランプ信号は、基準信号発生部からの基準信号をそれぞれ分周した分周出力に基づいて生成されるように構成されていることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載されたレーダ型探査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−250755(P2006−250755A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68409(P2005−68409)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】