説明

レーダ装置

【課題】物標がアンテナのメインローブ方向に在るのか、あるいはサイドローブ方向に在るのかを比較的簡易な構成で判別できるようにしたレーダ装置を提供すること。
【解決手段】信号処理部100は、サイドローブの指向特性が異なる2つの受信アンテナRA1,TA2を選択的に切り替えて物標との距離を算出し、算出した距離が同一距離であって、その距離の算出の基礎とした各受信アンテナの受信レベルの差を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置によって物標との間の距離を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの移動体内あるいは固定の公共設備等に搭載され、例えばミリ波帯の電磁波を用いて物標(障害物あるいは目標物)との間の距離を算出(測定)するレーダ装置が知られている。レーダ装置は、送信アンテナおよび受信アンテナ、あるいは送受共用の単一アンテナを備え、所定の送信波を空間へ放射し、物標からの反射波を受信波として受信する。このとき、レーダ装置は、アンテナの指向特性上メインローブの向く方向(メインローブ方向;最大の放射エネルギーを発する方向)における物標からの反射エネルギー(つまり、受信波の受信レベル)が所定の閾値以上である場合に、物標として検出する。
【0003】
ここで、アンテナの指向特性上サイドローブはメインローブと比較して放射強度が低いため、サイドローブによって物標を検出することは多くないと考えられるが、物標の位置等によってはサイドローブから大きな反射エネルギーが得られる場合がある。この場合には、レーダ装置は、サイドローブの向く方向(サイドローブ方向)から得られた受信波に基づいて検出された物標が、メインローブ方向に在るのか、あるいはサイドローブ方向に在るのかを判別できないため、物標を誤検出することがあった。すなわち、物標の所望の検出方向(例えば監視方向)をアンテナのメインローブ方向と一致させてシステムを運用した場合に、実際には監視方向に物体が存在しないのにも関わらず、サイドローブ方向での検出結果によって、監視方向に物体が存在すると認識されることがあった。
【0004】
上述した観点に関し、被検出物体(物標)がメインローブ方向に在るのか、あるいはサイドローブ方向に在るのかを判別するようにしたレーダ装置が知られている。この公知のレーダ装置によれば、アンテナをメインローブの中心線に対して直角に所定の速度で変位させる。そして、被検出物体をサイドローブで検出していると発生するドップラ速度によるレベル変動が受信信号に表れるか否かに基づいて、被検出物体がメインローブ方向に在るのか、あるいはサイドローブ方向に在るのかを判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−174821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した公知のレーダ装置は、アンテナをメインローブの中心線に対して直角に所定の速度で繰返し変位させるための駆動機構が必要となり、構成上複雑になることから装置の信頼性およびコストの点から好ましくない。
【0007】
よって、発明の1つの側面では、物標がアンテナのメインローブ方向に在るのか、あるいはサイドローブ方向に在るのかを比較的簡易な構成で判別できるようにしたレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の観点は、
送信波を空間へ放射するための送信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための第1受信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための受信アンテナであって、前記第1受信アンテナと比較して、メインローブの方向を基にした基準平面内のヌル点の方位角が異なる指向特性を有する第2受信アンテナと、
送信波および受信波に基づいて物標までの距離を算出する距離算出部と、
第1および第2受信アンテナを選択的に切り替え、第1および第2受信アンテナを選択したときに距離算出部によって算出された距離がともに等しく、かつ、当該距離の算出の基礎となる各受信アンテナの受信レベルをそれぞれ第1および第2受信レベルとしたときに、第1受信レベルと第2受信レベルの差分に基づいて、前記算出された距離が受信アンテナのメインローブまたはサイドローブのいずれの受信によるものか判断する制御部と、
を備えた、レーダ装置である。
【0009】
第2の観点は、
送信波を空間へ放射するための送信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための第1受信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための受信アンテナであって、前記第1受信アンテナと比較して、メインローブの方向を基にした基準平面内のヌル点の方位角が、前記基準平面内の第1回転方向においてのみ異なる指向特性を有する第2受信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための受信アンテナであって、前記第1受信アンテナと比較して、メインローブの方向を基にした前記基準平面内のヌル点の方位角が、前記基準平面内における前記第1回転方向とは逆の第2回転方向においてのみ異なる指向特性を有する第3受信アンテナと、
送信波および受信波に基づいて物標までの距離を算出する距離算出部と、
第1、第2受信および第3受信アンテナを選択的に切り替え、第1、第2および第3受信アンテナを選択したときに距離算出部によって算出された距離がすべて等しく、かつ、当該距離の算出の基礎となる各受信アンテナの受信レベルをそれぞれ第1、第2および第3受信レベルとしたときに、第1受信レベルと第2受信レベルの差分、および第1受信レベルと第3受信レベルの差分に基づいて、前記算出された距離が受信アンテナのメインローブ、前記第1回転方向のサイドローブ、または前記第2回転方向のサイドローブのいずれの受信によるものか判断する制御部と、
を備えた、レーダ装置である。
【発明の効果】
【0010】
開示のレーダ装置によれば、物標がアンテナのメインローブ方向に在るのか、あるいはサイドローブ方向に在るのかを比較的簡易な構成で判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態のレーダ装置の用途例を示す図であって、レーダ装置を用いて踏切を監視するシステムの運用状態を概念的に示す図。
【図2】第1の実施形態のレーダ装置の概略構成を示す図。
【図3】(a)送信アンテナおよび第1の受信アンテナの指向特性、および(b)第1の受信アンテナが選択されたときの受信レベルの一例を示す図。
【図4】(a)送信アンテナおよび第2の受信アンテナの指向特性、および(b)第2の受信アンテナが選択されたときの受信レベルの一例を示す図。
【図5】第1の受信アンテナが選択された場合の受信レベルと、第2の受信アンテナが選択された場合の受信レベルとを対比して示す図。
【図6】第1の受信アンテナを選択した場合と第2の受信アンテナを選択した場合とで、算出される距離とその受信レベルの関係を示す図。
【図7】第1の実施形態のFM−CWレーダ装置の構成を示すブロック図。
【図8】第1の実施形態のFM−CWレーダ装置のデジタル回路部の詳細構成を示すブロック図。
【図9】第1の実施形態において制御されるスイッチの動作の一例を示す図。
【図10】第1の実施形態のFM−CWレーダ装置の物標検出動作を示すフローチャート。
【図11】第2の実施形態のレーダ装置を用いて横断歩道を監視するシステムの運用状態を概念的に示す図。
【図12】第2の実施形態のFM−CWレーダ装置の構成を示すブロック図。
【図13】第2の実施形態において制御されるスイッチの動作の一例を示す図。
【図14】第2の実施形態において、(a)第2の受信アンテナの指向特性の一例、および(b)第3の受信アンテナの指向特性の一例を示す図。
【図15】第2の実施形態において、(a)第2の受信アンテナが選択されたときの受信レベル、(b)第3の受信アンテナが選択されたときの受信レベルを示す図。
【図16】第2の実施形態において、(a)第1および第2の受信アンテナが選択された場合の受信レベルの差と、(b)第1および第3の受信アンテナが選択された場合の受信レベルの差とを対比して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)第1の実施形態
以下、第1の実施形態のレーダ装置について説明する。なお、以下の各実施形態に関連付けて示す方位角、アンテナ利得または受信レベルを示す図におけるスケールは、すべての図で同一であるものとする。
【0013】
(1−1)実施形態のレーダ装置の用途例
先ず、本実施形態のレーダ装置の用途について、図1に例示して示す。図1は、本実施形態のレーダ装置を用いて踏切を監視するシステムの運用状態を概念的に示す図である。図1において、レーダ装置は、踏切遮断桿の近傍に設けられており、踏切監視領域内において特に踏切遮断桿と線路の間の領域を監視している。つまり、レーダ装置のアンテナは、そのメインローブ方向が踏切遮断桿の長手方向と概ね平行となるように配置されており、メインローブの領域が踏切遮断桿と線路の間の領域を極力カバーするようになっている。レーダ装置のアンテナのサイドローブ方向は、メインローブ方向を基にしてアンテナの指向特性に応じた所定の角度だけ斜めの方向に向いている。このとき、レーダ装置がサイドローブ方向の物標を検出することがある。例えば、図1に示したシステムでは、レーダ装置がサイドローブ方向に停車する車両を物標として検出しうる。
【0014】
図1に例示したシステムでは、仮にレーダ装置がサイドローブによって物標を検出したことを認識できないならば、メインローブ方向の同一距離に在る他の物標との判別ができず、システム上物標を誤検出することになる。すなわち、車両は踏切監視領域外に在るにも関わらず踏切監視領域内に在るとしてシステム上認識されることになり、踏切を通過しつつある電車等に警報を発する等の誤作動がなされうる。
これに対して、本実施形態のレーダ装置は、後述するように、物標がアンテナのメインローブ方向に在るのか、あるいはサイドローブ方向に在るのかを認識することができるため、システム上適切な動作を行うことができる。
【0015】
(1−2)実施形態のレーダ装置の概略構成と物標検出方法
以下、実施形態のレーダ装置の概略構成と物標検出方法について、図2〜6を参照して説明する。
【0016】
図2は、本実施形態のレーダ装置の概略構成を示す図である。図2に示すように、本実施形態のレーダ装置は、送信アンテナTAと、2つの受信アンテナRA1,RA2と、受信アンテナを切り替えるためのスイッチSWと、信号処理部100とを備える。送信アンテナTAは、送信波を空間に放射する。受信アンテナRA1,RA2は、送信波の物標による反射波を受信波として受信するが、当該受信は、信号処理部100の制御に基づくスイッチSWの切り替えに応じて選択的に行われる。送信アンテナおよび受信アンテナの構成は特に限定するものではないが、例えばパッチアレイアンテナ等を用いてよい。
なお、受信アンテナRA1,RA2はそれぞれ、第1,第2受信アンテナの一例である。
【0017】
図2において、信号処理部100は、アナログ回路およびデジタル回路から構成され、送信波の生成、送信波および受信波に基づく物標までの距離算出処理、スイッチSWの切り替え制御(つまり、受信アンテナの切り替え制御)、上位システム(図示せず)とのインタフェース処理などを備える。信号処理部100における距離算出処理における算出原理(つまり、レーダ方式)は如何なるものでもよい。例えば、ミリ波レーダ方式としては、パルス方式、FM−CW(Frequency Modulated-Continuous Wave)方式、2周波CW(Continuous Wave)方式、スペクトラム拡散方式が知られているが、これらの方式のいずれかを適用してよい。
【0018】
送信アンテナTAは、2つの受信アンテナRA1,RA2のいずれかと共用してよいが、ここでは別個に記載してある。なお、以下の説明では、送信アンテナTAと受信アンテナRA1の指向特性が等しい(例えば、送信アンテナTAと受信アンテナRA1が共用化された単一のアンテナで構成されている)ものとする。また、2つの受信アンテナRA1,RA2は、メインローブの方向を基にした基準平面内のヌル点(零点)の方位角が互いに異なる指向特性を備えている。図1に示した例では、基準平面は監視領域の平面に等しい。
【0019】
図3は、(a)送信アンテナTAおよび受信アンテナRA1の指向特性の一例、および(b)受信アンテナRA1が選択されたときの受信レベル(例えば受信電力)の一例を示す。図4は、(a)受信アンテナRA2(実線)の指向特性の一例(参考に、受信アンテナRA1の指向特性を点線で示す。)、および(b)受信アンテナRA2が選択されたときの受信レベル(例えば受信電力)の一例を示す。なお、図3および図4の縦軸は対数表示(dB表示)であることが想定され、横軸は、メインローブ方向を基(“0”)にした方位角(+/-)である。
【0020】
ここで、レーダ方程式として公知の以下の式(1)に基づき、各受信アンテナが選択されたときの受信レベル(受信電力)は、対数上では、送信アンテナTAのアンテナ利得と受信アンテナのアンテナ利得を加算した値に比例したものとなることが分かる。
【0021】
S=Pλσ/(4π) …式(1)
なお、
S: 受信電力
:送信電力
:送信アンテナのアンテナ利得
:受信アンテナのアンテナ利得
λ: 送信波の波長
σ: 物標の有効反射面積
R: 物標までの距離
である。
【0022】
そのため、受信アンテナRA1が選択された場合には、送信アンテナTAと受信アンテナRA1のアンテナ利得がともに等しいため、図3(b)に示すように、受信レベルは、各アンテナ利得を倍にしたものと同一の特性となる。
また、上述したように、受信アンテナRA2は、メインローブの方向を基にした基準平面内のヌル点の方位角が受信アンテナRA1の指向特性(つまり、送信アンテナTAの指向特性)とは異なる指向特性を備えている。それにより、受信アンテナRA2が選択された場合には、図4(b)に示すように、受信レベルは、図3(b)の場合よりもサイドローブにおける受信レベルが低下することになる。
図5は、図3(b)と図4(b)を対比しやすいように1つの図にしたものであり、実線は受信アンテナRA1が選択された場合の受信レベル(図3(b))、点線は受信アンテナRA2が選択された場合の受信レベル(図4(b))を示す。図5から、メインローブ方向では両者で受信レベルの変化が無いが、サイドローブ方向では、受信レベルに両者で差が生ずることが分かる。
【0023】
信号処理部100は、送信波および受信波に基づく物標までの距離算出処理を行うが、その距離算出処理においては、受信アンテナRA1と第2受信アンテナRA2を順に選択して行う。つまり、信号処理部100は、例えば最初に受信アンテナRA1を選択し、送信波と受信アンテナRA1による受信波とに基づいて物標までの距離を算出する。信号処理部100は次に、受信アンテナRA2を選択し、送信波と受信アンテナRA2による受信波とに基づいて物標までの距離を算出する。
そして信号処理部100は、受信アンテナRA1,RA2を選択したときに算出された距離がともに等しく、かつ、当該距離の算出の基礎となる各受信アンテナの受信レベル(例えば受信電力)をそれぞれP1,P2としたときに、P1とP2の差分に基づいて、算出された距離が受信アンテナのメインローブまたはサイドローブのいずれの受信によるものか判断する。
【0024】
この判断について、図6を参照してさらに説明する。図6は、受信アンテナRA1を選択した場合(実線)と受信アンテナRA2を選択した場合(点線)とで、算出される距離とその受信レベルの関係を示す図である。
上記式(1)のレーダ方程式が示すように、同一の送信電力および同一距離の物標を前提としたならば、サイドローブの指向特性が互いに異なる受信アンテナRA1,RA2が選択された場合、サイドローブの受信によって得られる同一距離において、受信レベルに差が生ずる。一方、受信アンテナRA1,RA2はメインローブの指向特性は等しいため、メインローブの受信によって得られる同一距離において、受信レベルに差は生じない。そこで、この受信レベルの差が所定の閾値以上である場合に、その同一距離の物標の検出がサイドローブの受信によって得られたものであると判断することができる。
【0025】
図6では、送信波と受信アンテナRA1,RA2の受信波に基づいて、距離d1,d2が算出された場合が想定されている。このとき、距離d1は、受信アンテナRA1が選択された場合と受信アンテナRA2が選択された場合とで受信レベルに差が生じており(例えば、|P1−P2|>閾値)、距離d1は受信アンテナのサイドローブによる受信波で得られたものであると判断することができる。一方、距離d2は、受信アンテナRA1が選択された場合と受信アンテナRA2が選択された場合とで受信レベルに差が生じておらず(例えば、|P1−P2|≦閾値)、距離d2は受信アンテナのメインローブによる受信波で得られたものであると判断することができる。
【0026】
(1−3)FM−CW方式の場合のレーダ装置の構成と動作
図2はレーダ方式を限定しない場合のレーダ装置の概略構成を示したが、以下では、レーダ方式をFM−CW方式とした場合のレーダ装置(以下、FM−CWレーダ装置)の構成と物標検出方法について、図7〜10を参照して説明する。
FM−CWレーダ装置は、周波数上昇区間(以下、UP区間)と周波数下降区間(以下、DOWN区間)を含むように周波数変調(FM変調)された送信波を空間へ放射し、物標から反射された波を受信波として受信する。周波数変調における変調信号は、代表的には三角波であるが、鋸波、台形波等の三角波以外の信号でもよい。FM−CWレーダ装置は、送信波と、物標からの反射により得られる受信波とのビート信号を取得するとともに、このビート信号を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を施して周波数分析を行う。周波数分析されたビート信号は強度が大きくなるピークが生じるが、このピークに対応するピーク周波数は、物標の距離に関する情報を有する。
【0027】
図7は、本実施形態のレーダ装置(FM−CWレーダ装置1)の構成を示すブロック図である。図7は、図2に示したレーダ装置の構成を、FM−CW方式に特化した構成とした図である。図8は、本実施形態のFM−CWレーダ装置1のデジタル回路部の詳細構成を示すブロック図である。
【0028】
図7を参照すると、FM−CWレーダ装置1は、電圧制御発振器(VCO:voltage controlled oscillator)11、方向性結合器12、増幅器13、スイッチ14(図2のスイッチSWに相当)、増幅器15、ミキサ16、フィルタ(BPF)17、デジタル回路部18、送信アンテナTA、および受信アンテナRA1,RA2を備える。
【0029】
電圧制御発振器11は、デジタル回路部18から与えられる制御電圧VCONTに基づいて送信波の周波数を変化させる。FM−CWレーダ装置1の送信波は、国内では例えば60GHz,76GHz等の周波数帯が使用されるが、電圧制御発振器11は、システム上規定される周波数帯の周波数変調された送信波を生成する。電圧制御発振器(VCO)11は、例えばMESFETおよびバラクタダイオードによって構成され、図7ではその出力周波数(周波数変調された出力信号)をfOUTとしている。
【0030】
電圧制御発振器11の送信波は、方向性結合器12を介してミキサ16へ与えられるとともに増幅器13へ送出される。
送信アンテナTAは、増幅器13によって所定のレベルまで増幅された送信波を空間へ放射する。受信アンテナRA1,RA2は選択的に、物標からの反射波を受信波として受信する。この受信波は増幅器15において所定のレベルまで増幅される。
【0031】
ミキサ16は、方向性結合器12から得られる送信波と、増幅器15から得られる受信波とを混合して、送信波と受信波の周波数差に等しい周波数のビート信号を生成する。フィルタ17は、ミキサ16により生成されたビート信号について、ビート信号として予定されている周波数範囲の成分のみを通過させ、それ以外の成分に含まれるノイズを除去するバンドパスフィルタ(BPF)である。フィルタ17を通過したビート信号は、デジタル回路部18へ送出される。また、増幅器15から得られる受信波は、受信レベルの検出のためにデジタル回路部18へ送出される。
【0032】
図8に示すように、デジタル回路部18は、信号発生器181、D/A(Digital/Analogue)変換器182、A/D(Analogue/Digital)変換器183、FFT(Fast Fourier Transform)処理部184、距離算出部185、インタフェース(I/F)部186、A/D変換器187、および切替制御部188を備える。デジタル回路部18は、マイクロコントローラを主体として構成されるが、特定の機能および処理を実現するためのチップセットやDSP(Digital Signal Processor)を備えうる。なお、距離算出部185および切替制御部188を含むデジタル回路部18の一部は制御部の一例である。
【0033】
信号発生器181は、電圧制御発振器11に与える制御電圧VCONT(例えば三角波)に相当するデジタル信号を生成する。
インタフェース部186は、例えば上位システムとの通信のためのインタフェース回路を含み、算出した物標との距離の上位システムへの報告、および上位システムからの特定のコマンドの受信等を行う。
【0034】
FFT処理部184は、デジタル化されたビート信号に対してFFT処理を施し、ビート信号の周波数成分(スペクトル分布)の分析結果(FFTデータ)を算出する。
距離算出部185は、FFT処理部184から取得するビート信号の周波数成分(FFTデータ)に基づいて、UP区間で得られるビート信号のピーク周波数と、DOWN区間で得られるビート信号のピーク周波数とのペアリングを行い、物標に対応するターゲット成分を特定する。さらに距離算出部185は、ペアリング結果に基づいて、物標との間の距離を算出する。具体的には、距離算出部185は、特定されたターゲット成分のペアのうち、UP区間のピーク周波数をFupとし、DOWN区間のピーク周波数をFdownとすると、物標までの距離を、α×(Fup+Fdown)/2(α:定数)の式によって算出する。なお、αは、送信波の電波伝搬速度(光速)、中心周波数、変調周波数幅等によって定まる値である。
【0035】
切替制御部188は、例えば受信波が受信アンテナRA1と受信アンテナRA2とが交互に選択されて受信するように、スイッチ14を制御する。図9に、切替制御部188によって制御されるスイッチ14の動作の一例を示す。図9に示す例では、レーダ装置1の起動後(時刻t0の後)、受信アンテナRA1が選択される期間T1と受信アンテナRA2が選択された期間T2とが交互に生ずるように、スイッチ14が制御される。しかしながら、この動作例は一例に過ぎず、受信アンテナRA1と受信アンテナRA2は少なくともそれぞれ1回選択されればよい。
【0036】
距離算出部185は、受信アンテナRA1が選択される期間T1において、距離を算出するとともに、受信アンテナRA1による受信波の受信レベルを検出する。距離算出部185はまた、受信アンテナRA2が選択される期間T2において、距離を算出するとともに、受信アンテナRA2による受信波の受信レベルを検出する。そして、距離算出部185は、受信アンテナRA1,RA2を選択したときに算出された距離がともに等しく、かつ、当該距離の算出の基礎となる各受信アンテナの受信レベルをそれぞれP1,P2としたときに、P1とP2の差分に基づいて、算出された距離が受信アンテナのメインローブまたはサイドローブのいずれの受信によるものか判断する。
なお、距離算出部185と切替制御部188は同期して動作するようにしてもよい。すなわち、切替制御部188が受信アンテナRA1を選択した後、距離算出部185は、受信アンテナRA1による受信波に対する処理が完了すると、切替制御部188に対して制御信号を送出する。そして、切替制御部188は、この制御信号に同期して、受信アンテナRA1から受信アンテナRA2への切り替えを行う。
【0037】
次に、図7および図8に示したFM−CWレーダ装置1による動作(物標検出動作)について、図10を参照して説明する。図10は、本実施形態のFM−CWレーダ装置の物標検出動作を示すフローチャートであり、主としてデジタル回路部18内で実行される。なお、スイッチ14の動作は、図9に示したタイミングチャートの例に従うものとする。
【0038】
先ず期間T1において切替制御部188は、受信アンテナRA1を選択するようにスイッチ14を制御する。これにより、受信アンテナRA1によって得られた受信波の受信レベル(増幅器15の出力レベル)が距離算出部185で検出される(ステップS100)。距離算出部185は、送信波と受信アンテナRA1の受信波によって得られたビート信号(フィルタ17の出力)に基づいて、物標とのすべての距離D1を算出する(ステップS110)。
【0039】
次に、切替制御部188は、期間T2に移行してスイッチ14の状態を切り替え、受信アンテナRA2を選択するようにスイッチ14を制御する。これにより、受信アンテナRA2によって得られた受信波の受信レベル(増幅器15の出力レベル)が距離算出部185で検出される(ステップS120)。距離算出部185は、送信波と受信アンテナRA2の受信波によって得られたビート信号(フィルタ17の出力)に基づいて、物標とのすべての距離D2を算出する(ステップS130)。
【0040】
ステップS100〜S130の処理は少なくとも1回行えばよいが、複数回行って得られる複数のサンプルの受信レベルと距離について統計処理を行うことによって、受信レベルと距離の精度を高めるようにしてもよい。
次に、距離算出部185は、期間T1で得られた物標とのすべての距離D1と、期間T2で得られた物標とのすべての距離D2とを比較して、D1=D2となる距離があるか否か判定する(ステップS140)。1つもD1=D2となる距離が無ければ、適切な結果が得られていないことになるため、ステップS100へ戻る。
【0041】
ステップS140でD1=D2となる距離が存在する場合には、その距離の算出の基礎となる受信アンテナRA1,RA2の受信レベルP1,P2について、|P1−P2|とPTH(PTH:所定の閾値)の大小を判定する(ステップS150)。その結果、|P1−P2|>PTHである場合には、図6に関連付けて説明したように、当該距離の物標が受信アンテナのサイドローブによって算出されたものである(つまり、物標がサイドローブ方向に存在する)と判断する(ステップS160)。逆に、|P1−P2|≦PTHである場合には、当該距離の物標が受信アンテナのメインローブによって算出されたものである(つまり、物標がメインローブ方向に存在する)と判断する(ステップS170)。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のレーダ装置によれば、サイドローブの指向特性が異なる2つの受信アンテナを選択的に切り替え、算出した同一距離における各受信アンテナの受信レベルの差を判定する。これによって、算出された物標までの距離がメインローブの受信によって得られたものか、あるいはサイドローブの受信によって得られたものかを判別することができる。つまり、本実施形態のレーダ装置によれば、物標がアンテナのメインローブ方向に在るのか、あるいはサイドローブ方向に在るのかを判別することができる。そして、本実施形態のレーダ装置によれば、上記判別機能を実現するためのハードウエアとしては実質的に受信アンテナを1個追加するのみで足り、比較的簡易な構成で上記判別機能を実現することができる。
【0043】
(2)第2の実施形態
以下、第2の実施形態のレーダ装置について説明する。
【0044】
(2−1)実施形態のレーダ装置の用途例
先ず、本実施形態のレーダ装置の用途について、図11に例示する。図11は、本実施形態のレーダ装置を用いて横断歩道を監視するシステムの運用状態を概念的に示す図である。図11において、レーダ装置は、横断歩道の端部に設けられており、主として横断歩道内の領域を監視している。つまり、レーダ装置のアンテナは、そのメインローブ方向が横断歩道の進行方向と概ね平行となるように配置されており、メインローブの領域が横断歩道の領域を極力カバーするようになっている。また、レーダ装置のアンテナのサイドローブ方向は、メインローブ方向を基にしてアンテナの指向特性に応じた所定の角度だけ斜めの方向に向いており、車両および歩行者を監視している。
【0045】
図11に例示したレーダ装置の用途例は、アンテナのメインローブ方向に加えてサイドローブ方向の物標の検出を積極的に行う例である。このシステムでは、サイドローブ方向の物標の検出を行うため、メインローブ方向のみを検出する場合と比較して検出範囲が拡大するが、メインローブ、およびその両側の2つのサイドローブの各々による検出を切り分けるようにすることが好ましい。例えば図11のレーダ装置の配置例では、メインローブでは、横断歩道内に進入する歩行者等が検出されうる。また、メインローブ方向を基準として右側のサイドローブでは、停止する車両などが検出されうる一方、メインローブ方向を基準として左側のサイドローブでは、横断歩道の歩行者などが検出されうる。そのため、メインローブ、およびその両側の2つのサイドローブの各々による検出を切り分けることができれば、検出対象(車両、歩行者)に応じた適切な警報あるいは制御を行うことができると考えられる。
かかる観点から、本実施形態のレーダ装置は、メインローブ、およびその両側の2つのサイドローブの各々による物標の検出を切り分けることができるレーダ装置について、以下開示する。
【0046】
(2−2)FM−CW方式の場合のレーダ装置の構成と動作
以下、レーダ方式をFM−CW方式とした場合の本実施形態のレーダ装置の構成と物標検出方法について、図12〜16を参照して説明する。
【0047】
図12は、本実施形態のレーダ装置(FM−CWレーダ装置2)の構成を示すブロック図である。本ブロック図は、図7に示したものと類似した構成であるため、相違点についてのみ説明し、重複説明を省略する。なお、後述するデジタル回路部18aは、距離算出部および制御部の一例である。
図12に示すように、レーダ装置2は、3つの受信アンテナRA1〜RA3を備える。なお、受信アンテナRA1〜RA3はそれぞれ、第1〜第3受信アンテナの一例である。
受信アンテナRA1は、例えば送信アンテナTA1と同一の指向特性を備える。受信アンテナRA2は、受信アンテナRA1と比較して、メインローブの方向を基にした基準平面内のヌル点の方位角が、基準平面内の第1回転方向においてのみ異なる指向特性を有している。受信アンテナRA3は、受信アンテナRA1と比較して、メインローブの方向を基にした基準平面内のヌル点の方位角が、基準平面内における第1回転方向とは逆の第2回転方向においてのみ異なる指向特性を有している。
ここで、図11に示した例では、基準平面は監視領域(横断歩道)の平面に等しい。また、第1回転方向は、基準平面においてメインローブから一方のサイドローブに向かって回転する方向であり、第2回転方向は、基準平面においてメインローブから他方のサイドローブに向かって回転する方向である。
【0048】
デジタル回路部18aは、例えば受信波が,受信アンテナRA1〜RA3が順に選択されて受信するように、スイッチ14aを制御する。
デジタル回路部18aは、前述したデジタル回路部18と同様の構成を備えるが、以下の点で異なる。つまり、デジタル回路部18aは、受信アンテナRA1〜RA3を選択したときに算出された距離がすべて等しく、かつ、当該距離の算出の基礎となる各受信アンテナの受信レベルをそれぞれP1〜P3としたときに、P1とP2の差分、およびP1とP3の差分を算出する。そして、デジタル回路部18aは、各差分に基づいて、算出された距離が受信アンテナのメインローブ、第1回転方向のサイドローブ、または第2回転方向のサイドローブのいずれの受信によるものか判断する
【0049】
図13に、デジタル回路部18aによって制御されるスイッチ14aの動作の一例を示す。図13に示す例では、レーダ装置2の起動後(時刻t0の後)、受信アンテナRA1が選択される期間T1と、受信アンテナRA2が選択される期間T2と、受信アンテナRA3が選択される期間T3と、が交互に生ずるように、スイッチ14aが制御される。しかしながら、この動作例は一例に過ぎず、受信アンテナRA1〜RA3は少なくともそれぞれ1回選択されればよい。
【0050】
本実施形態の物標検出方法について、図14〜16を参照して以下説明する。なお、以下の説明において、受信アンテナRA1および送信アンテナTAの指向特性は、図3(a)に示したものと同一とする。
図14は、(a)受信アンテナRA2(実線)の指向特性の一例(なお、点線で受信アンテナRA3の指向特性を示す。)、および(b)受信アンテナRA3(実線)の指向特性の一例(なお、点線で受信アンテナRA2の指向特性を示す。)を示す。図14(a)において、受信アンテナRA2の指向特性は、−の方位角(第2回転方向の角度)において受信アンテナRA1の指向特性と一致し、+の方位角(第1回転方向の角度)において基準平面内のヌル点の方位角が、受信アンテナRA1とは異なる指向特性を有している。また、図14(b)において、受信アンテナRA3の指向特性は、+の方位角(第1回転方向の角度)において受信アンテナRA1の指向特性と一致し、−の方位角(第2回転方向の角度)において基準平面内のヌル点の方位角が、受信アンテナRA1とは異なる指向特性を有している。
【0051】
第1の実施形態と同様、受信アンテナRA1が選択された場合には、送信アンテナTAと受信アンテナRA1のアンテナ利得がともに等しいため、図3(b)に示したように、受信レベルは、そのアンテナ利得を倍にした特性となる。
【0052】
図15は、(a)受信アンテナRA2が選択されたときの受信レベル、(b)受信アンテナRA3が選択されたときの受信レベルを示す。
図15(a)に示すように、受信アンテナRA2が選択された場合、受信アンテナRA2の指向特性は、−の方位角(第2回転方向の角度)においては、受信アンテナRA1の指向特性と一致しているため、受信アンテナRA1が選択された場合と同一の受信レベル(図3(b)と同じレベル)となる。一方、受信アンテナRA2の指向特性は、+の方位角(第1回転方向の角度)においては、基準平面内のヌル点の方位角が受信アンテナRA1とは異なる指向特性を有しているため、受信アンテナRA1が選択された場合よりもサイドローブにおける受信レベルが低下することになる。
【0053】
図15(b)に示すように、受信アンテナRA3が選択された場合には、受信アンテナRA3の指向特性は、+の方位角(第1回転方向の角度)においては、受信アンテナRA1の指向特性と一致しているため、受信アンテナRA1が選択された場合と同一の受信レベル(図3(b)と同じレベル)となる。一方、受信アンテナRA3の指向特性は、−の方位角(第2回転方向の角度)においては、基準平面内のヌル点の方位角が受信アンテナRA1とは異なる指向特性を有しているため、受信アンテナRA1が選択された場合よりもサイドローブにおける受信レベルが低下することになる。
【0054】
図16は、図3(b)と図15を対比しやすいようにした図である。図16(a)では、実線は受信アンテナRA2が選択された場合の受信レベル(図15(a)と同じ)、点線は受信アンテナRA1が選択された場合の受信レベル(図3(b)と同じ)を示す。図16(b)では、実線は受信アンテナRA3が選択された場合の受信レベル(図15(b)と同じ)、点線は受信アンテナRA1が選択された場合の受信レベル(図3(b)と同じ)を示す。
【0055】
ここで、受信アンテナRA1〜RA3によって算出された同一距離の物標について、その距離の算出の基礎となる受信アンテナRA1,RA2の受信レベルP1,P2の差分は、図16(a)から、+の方位角(第1回転方向の角度)においてのみ生じていることが分かる。同様に、受信アンテナRA1〜RA3によって算出された同一距離の物標について、その距離の算出の基礎となる受信アンテナRA1,RA3の受信レベルP1,P3の差分は、図16(b)から、−の方位角(第2回転方向の角度)においてのみ生じていることが分かる。よって、受信アンテナRA1〜RA3によって得られた受信レベルを比較することによって、いずれの回転方向のサイドローブで物標が検出されたか判別することができることになる。
【0056】
デジタル回路部18a(図12参照)は、送信波および受信波に基づく物標までの距離算出処理を行うが、その距離算出処理においては、受信アンテナRA1〜RA3を順に選択して行う。そしてデジタル回路部18aは、受信アンテナRA1〜RA3を選択したときに算出された距離がすべて等しい場合に、その距離の算出の基礎となる各受信アンテナの受信レベル(例えば受信電力)をそれぞれP1〜P3としたときに、以下の処理を行う。
すなわち、P1とP2を比較し、|P1−P2|>PTH(PTH:所定の閾値)である場合には、受信アンテナの+の方位角(第1回転方向の角度)のサイドローブによって算出されたものである(つまり、物標が+の方位角のサイドローブ方向に存在する)と判断する。P1とP3を比較し、|P1−P3|>PTH(PTH:所定の閾値)である場合には、受信アンテナの−の方位角(第2回転方向の角度)のサイドローブによって算出されたものである(つまり、物標が−の方位角のサイドローブ方向に存在する)と判断する。距離の算出の基礎となる受信レベルがP1〜P3で差がない場合には、メインローブによって算出されたものである(つまり、物標がメインローブ方向に存在する)と判断する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態のレーダ装置によれば、第1の実施形態で述べた効果に加えて、アンテナのメインローブ、およびその両側の2つのサイドローブの各々による物標の検出を切り分けることができる。
【0058】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0059】
(付記1)
送信波を空間へ放射するための送信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための第1受信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための受信アンテナであって、前記第1受信アンテナと比較して、メインローブの方向を基にした基準平面内のヌル点の方位角が異なる指向特性を有する第2受信アンテナと、
送信波および受信波に基づいて物標までの距離を算出する距離算出部と、
第1および第2受信アンテナを選択的に切り替え、第1および第2受信アンテナを選択したときに距離算出部によって算出された距離がともに等しく、かつ、当該距離の算出の基礎となる各受信アンテナの受信レベルをそれぞれ第1および第2受信レベルとしたときに、第1受信レベルと第2受信レベルの差分に基づいて、前記算出された距離が受信アンテナのメインローブまたはサイドローブのいずれの受信によるものか判断する制御部と、
を備えた、レーダ装置。
【0060】
(付記2)
送信波を空間へ放射するための送信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための第1受信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための受信アンテナであって、前記第1受信アンテナと比較して、メインローブの方向を基にした基準平面内のヌル点の方位角が、前記基準平面内の第1回転方向においてのみ異なる指向特性を有する第2受信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための受信アンテナであって、前記第1受信アンテナと比較して、メインローブの方向を基にした前記基準平面内のヌル点の方位角が、前記基準平面内における前記第1回転方向とは逆の第2回転方向においてのみ異なる指向特性を有する第3受信アンテナと、
送信波および受信波に基づいて物標までの距離を算出する距離算出部と、
第1、第2受信および第3受信アンテナを選択的に切り替え、第1、第2および第3受信アンテナを選択したときに距離算出部によって算出された距離がすべて等しく、かつ、当該距離の算出の基礎となる各受信アンテナの受信レベルをそれぞれ第1、第2および第3受信レベルとしたときに、第1受信レベルと第2受信レベルの差分、および第1受信レベルと第3受信レベルの差分に基づいて、前記算出された距離が受信アンテナのメインローブ、前記第1回転方向のサイドローブ、または前記第2回転方向のサイドローブのいずれの受信によるものか判断する制御部と、
を備えた、レーダ装置。
【0061】
(付記3)
送信波を空間へ放射するための送信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための第1受信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための受信アンテナであって、前記第1受信アンテナと比較して、メインローブの方向を基にした基準平面内のヌル点の方位角が、少なくとも前記基準平面内の一回転方向において異なる指向特性を有する第2受信アンテナと、を備えたレーダ装置における物標検出方法であって、
第1受信アンテナを選択し、送信波および第1受信アンテナによる受信波に基づいて物標までの距離を算出し、
第2受信アンテナを選択し、送信波および第2受信アンテナによる受信波に基づいて物標までの距離を算出し、
第1および第2受信アンテナを選択したときに算出された距離がともに等しく、かつ、当該距離の算出の基礎となる各受信アンテナの受信レベルをそれぞれ第1および第2受信レベルとしたときに、第1受信レベルと第2受信レベルの差分に基づいて、前記算出された距離が受信アンテナのメインローブまたはサイドローブのいずれの受信によるものか判断する、
ことを含む、物標検出方法。
【符号の説明】
【0062】
1,2…レーダ装置
11…電圧制御発振器
12…方向性結合器
13…増幅器
14,14a…スイッチ
15…増幅器
16…ミキサ
17…フィルタ
18,18a…デジタル回路部
181…信号発生器
182…D/A変換器
183…A/D変換器
184…FFT処理部
185…距離算出部
186…インタフェース部
187…A/D変換器
188…切替制御部
100…信号処理部
TA…送信アンテナ
RA1,RA2,RA3…受信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を空間へ放射するための送信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための第1受信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための受信アンテナであって、前記第1受信アンテナと比較して、メインローブの方向を基にした基準平面内のヌル点の方位角が異なる指向特性を有する第2受信アンテナと、
送信波および受信波に基づいて物標までの距離を算出する距離算出部と、
第1および第2受信アンテナを選択的に切り替え、第1および第2受信アンテナを選択したときに距離算出部によって算出された距離がともに等しく、かつ、当該距離の算出の基礎となる各受信アンテナの受信レベルをそれぞれ第1および第2受信レベルとしたときに、第1受信レベルと第2受信レベルの差分に基づいて、前記算出された距離が受信アンテナのメインローブまたはサイドローブのいずれの受信によるものか判断する制御部と、
を備えた、レーダ装置。
【請求項2】
送信波を空間へ放射するための送信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための第1受信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための受信アンテナであって、前記第1受信アンテナと比較して、メインローブの方向を基にした基準平面内のヌル点の方位角が、前記基準平面内の第1回転方向においてのみ異なる指向特性を有する第2受信アンテナと、
前記送信波の物標による反射波を受信波として受信するための受信アンテナであって、前記第1受信アンテナと比較して、メインローブの方向を基にした前記基準平面内のヌル点の方位角が、前記基準平面内における前記第1回転方向とは逆の第2回転方向においてのみ異なる指向特性を有する第3受信アンテナと、
送信波および受信波に基づいて物標までの距離を算出する距離算出部と、
第1、第2受信および第3受信アンテナを選択的に切り替え、第1、第2および第3受信アンテナを選択したときに距離算出部によって算出された距離がすべて等しく、かつ、当該距離の算出の基礎となる各受信アンテナの受信レベルをそれぞれ第1、第2および第3受信レベルとしたときに、第1受信レベルと第2受信レベルの差分、および第1受信レベルと第3受信レベルの差分に基づいて、前記算出された距離が受信アンテナのメインローブ、前記第1回転方向のサイドローブ、または前記第2回転方向のサイドローブのいずれの受信によるものか判断する制御部と、
を備えた、レーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−159327(P2012−159327A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17473(P2011−17473)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】