説明

レールポンチ打設用補助器

【課題】ロングレール化に伴うレールポンチの打替作業を容易、迅速且つ安全に行うことを可能にし、ポンチ打設位置を均一化でき、また、ふく進測定を容易且つ誤差なく精確に行うことを可能にして、ふく進測定の信頼性を確保することができるレールポンチ打設用補助器を提供することを課題とする。
【解決手段】レール31上に配置されてレールの頭頂面に当接する上面板2とレールの頭側面に当接する側面板3とを有する本体ケース1を設け、上面板2にレールへの固定手段8を配設すると共に、上面板2及び/又は側面板3に検測用直尺4、5を定着し、側面板3の上半部に確認用窓17を形成し、確認用窓17部分にレールポンチ打設用直尺6を脱着可能に装填して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレールポンチ打設用補助器、より詳細には、ロングレール区間におけるレール交換、レールの設定替え等に伴うレールポンチの打設作業、並びに、定期的に行われるふく進(伸縮量)測定作業の各用途に用いることができる、レールポンチ打設用補助器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
適時行われるレールの交換作業やレールの設定替え等の作業に伴い、ふく進測定に用いるレールポンチの打替作業が必要となる。即ち、レールのふく進の測定は、左右のレールを挟んだ両側に設けられた基準杭に水糸を張り、この水糸を基準線としてレールの頭側部に打設されたレールポンチ(ポンチマーク)が、その後のふく進測定時において、水糸からどれだけずれているかを定規で測ることによって行われるものである。従って、レール交換作業や設定替え作業に際しては、作業後に新たに上記水糸に合わせてレールポンチの打設を行う必要があるのである。
【0003】
一般にレールポンチの打設は、手ハンマーによる打撃によって行われているが、ハンマーによる打撃に際し、打ち損じたり、打ち損じに伴って怪我をしたりするおそれがあり、その作業にはある程度の熟練を要していた。
【0004】
また、ふく進測定は、初めに直角定規にて水糸の位置(杭位置)を基準にレール頭部にマーキングをし、そこから直角定規にて既存のポンチ位置までの距離、つまりふく進量を測定することによって行われるが、その場合、水糸の位置からポンチ位置までの測定の際に数ミリの誤差が生ずるおそれがある。このように数ミリの誤差といえど、ふく進量としては無視し得ないものであるので、かかる誤差の発生は極力回避する必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開2005−77096号公報
【特許文献2】実用新案登録第3134797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、レール交換や設定替え等に伴ってレールポンチの打替作業が必要となるが、この作業にはある程度の熟練を要し、特に非熟練者によった場合には怪我をするおそれがあり、また、従来のふく進測定方法によった場合には誤差が出やすく、その誤差がふく進量の評価に与える影響は少なくないところから、ふく進測定の信頼性が損なわれるおそれもある。
【0007】
本発明は、従来方法におけるこれらの問題を解決するためになされたもので、レール交換、設定替え等に伴うレールポンチの打設作業を容易、迅速且つ安全に行うことを可能にし、また、ふく進測定を容易且つ誤差なく精確に行うことを可能にして、ふく進測定の信頼性を確保することができるレールポンチ打設用補助器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、レール上に配置されてレールの頭頂面に当接する上面板とレールの頭側面に当接する側面板とを有する本体ケースを設け、前記上面板にレールへの固定手段を配設すると共に、前記上面板及び/又は側面板に検測用直尺を定着し、前記側面板の上半部に確認用窓を形成し、前記確認用窓部分にレールポンチ打設用直尺を脱着可能に装填して成るレールポンチ打設用補助器である。
【0009】
前記レールへの固定手段は、前記本体ケースの上面板上に設置される切替スイッチ付き磁石とし、また、前記本体ケースの上面板上に更に、曲尺固定用磁石ホルダーを配設することが好ましく、また、前記側面板の検測用直尺は、前記確認用窓の下側に配置されることが好ましい。
【0010】
前記打設用直尺は、その0点部分にポンチ用穴が穿設されたものとされ、前記打設用直尺と前記上面板の検測用直尺と前記側面板の検測用直尺には、それぞれ0点を中心に左右対称に目盛が付され、且つ、それらの0点位置が一致するように配置される。
【0011】
好ましい実施形態においては、前記打設用直尺は、前記確認用窓の両側部分を支持部として前記打設用直尺の厚み相当分前方に出すことによってその内側に直尺挿入スペースを形成し、前記打設用直尺を前記支持部内側の挿入スペースに挿入することによって装填される。
【0012】
更に好ましい実施形態においては、前記支持部に、前記打設用直尺を固定する締付ボルトをネジ込むためのナットが固定される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るレールポンチ打設用補助器は上記構成であって、単なる測定専用機器ではなく、レールポンチの打設作業とふく進測定作業の両用途に使用することができ、レール交換、設定替え等に伴うレールポンチの打替作業を容易、迅速且つ安全に行い、また、ふく進測定を容易且つ誤差なく精確に行うことを可能にして、ふく進測定の信頼性を確保し得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態につき、添付図面に依拠して説明する。本発明に係るレールポンチ打設用補助器は、上面板2と側面板3とを有していてレール31上に配置される本体ケース1を設け、上面板2にレール31への固定手段を配設すると共に、上面板2及び/又は側面板3に検測用直尺4、5を定着し、また、側面板3にレールポンチ打設用の直尺6を脱着可能に装填して成るものである。なお、検測用直尺4、5は、上面板2と側面板3のいずれかに取り付ければ足りるが、検測の迅速性及び精確性の観点からして、図示した実施形態のようにその双方に配設することが好ましい。
【0015】
打設用直尺6と上面板2の検測用直尺4と側面板3の検測用直尺5には、それぞれ0点を中心に左右対称に目盛が付され、且つ、配置時においてそれらの0点位置が一致するようにされる。
【0016】
本体ケース1は、上記のとおりレール31の頭頂面に当接する上面板2と、上面板2の前面側端縁から垂直に下方に延びて、レール31の頭側面に当接する側面板3とを有するが、図示した例では更に、上面板2の後面側端縁にも側面板7が垂設されている。この側面板7は罫書きに用いるもので、レール31の頭頂面からポンチ位置までの距離に対応するように形成される。
【0017】
上面板2上には、作業中、本体ケース1をレール31へ確固と固定するための手段と、後述するように、検測に際して曲尺(直角定規)10の縦尺を水糸20に当てる際に、曲尺10を確固と支持するための手段とが設置される。
【0018】
通例、レール31への固定手段としては、切替スイッチ付き磁石8が用いられる。この切替スイッチ付き磁石8は、そのスイッチ9を切り替えることによって磁力を変化させるもので、スイッチオン時には、上面板2を介してレール31の頭頂面に強い磁力が作用することで強固に磁着し、スイッチオフ時には磁力の作用がなくなって、本補助器のレール31からの取り外しが可能となる。
【0019】
また、曲尺10の支持手段としては、通例、一対の磁石ホルダー11、12が用いられる。磁石ホルダー11、12は、各磁着面が検測用直尺4に平行になるように並置され、レールポンチ打設作業時に、その磁着面において曲尺10の横尺部分を磁着支持する。その際、曲尺10の直角端部を検測用直尺4、5の0点位置に合わせることを容易且つ確実にするために、上面板2上にストッパー13が配備される。図示した例では、切替スイッチ付き磁石8を上面板2上に据え付けるための固定部材が、このストッパー13の役目を果たしている。ストッパー13は、その端面が、検測用直尺4、5の0点位置と一致するように配置される。
【0020】
更に上面板2上には、後述する検測時において曲尺10を滑動させる際、その動きを容易にする滑動溝14を検測用直尺4との間に形成するための溝形成板15が、検測用直尺4に平行に定着される。
【0021】
側面板3の上半部には確認用窓17が形成され、この確認用窓17の下側に検測用直尺5が固定される。また、確認用窓17を閉塞するようにして、0点部分にポンチ用穴19を穿設した打設用直尺6が、脱着可能に装填される。ポンチ位置は、レール31の頭頂面から予め定められた寸法分下がった位置とされるので、ポンチ用穴19は、本補助器をレールに装着した場合において、丁度レール31の頭頂面から上記定寸法の位置にくるように穿設される。かくして、本補助器をレールに装着した後、何らの測定も行うことなく、単にポンチ用穴19を通してポンチの打設を行うことで、常に所定の位置に正確にポンチ打設を行うことが可能となる。
【0022】
好ましい実施形態においては、打設用直尺6を脱着可能にするために、確認用窓17の両側部分に支持部20が形成される。支持部20は、確認用窓17の両側の側面板3を打設用直尺6の厚み相当分前方に出すことによって、その内側に挿入スペース21を形成したもので、打設用直尺6は、その挿入スペース21に挿入されることによってそこに保持される。そして、打設用直尺6を支持部20において固定するために、支持部20にナット22を溶接固定し、これに締付ボルト23をネジ込んで打設用直尺6を強圧することとする。
【0023】
上記構成のレールポンチ打設用補助器をレールポンチの打設作業に用いる場合は、予め本体ケース1に打設用直尺6を支持部20に取り付けると共に、曲尺10の横尺を、その直角側端部がストッパー13に当たる位置において、磁石ホルダー11、12に磁着させておく。
【0024】
そして、基準杭間に水糸34を張り渡した後、切替スイッチ付き磁石8のスイッチを切った状態で本体ケース1を、レールポンチ打設部付近のレール31上のおおよその位置に載置し、曲尺10の縦尺が水糸34に当たるまで本体ケース1をずらし動かしていき、縦尺が水糸34に当たったところで切替スイッチ付き磁石8のスイッチを入れる。かくして本補助器を、作業者が手で押さえることなく、レール31上の所定位置に確固と固定することができ、その後作業者は、両手を自由に使用しての作業が可能となる。
【0025】
その位置において、ポンチ用穴19内に露出するレール頭側部がレールポンチ打設点となる。その位置は、上記のとおり、予め定められたレールポンチ打設点に対応している。そこで作業者は、両手を用いて市販の打撃ポンチ32を操作し、そのポンチをポンチ用穴19に当てて、ポンチマークの打設操作をする。かくしてポンチマークを、何ら測定を要さずに常に所定位置に刻設することができる。
【0026】
また、上記構成のレールポンチ打設用補助器を使用してふく進の検測を行うには、先ず、所定の基準杭間に水糸34を張り渡した後、打設用直尺6を外して切替スイッチ付き磁石8のスイッチを切った状態の本体ケース1を、レールポンチ打設部付近のレール31上のおおよその位置に載置し、確認用窓17から覗き込んでポンチマーク33を注視する。そして、ポンチマーク33が検測用直尺4、5の0点位置に合致するところまで本体ケース1をずらし動かした後、切替スイッチ付き磁石8のスイッチを入れることで、上記打設作業の場合と同様に本補助器を確固と固定する。
【0027】
このようにして本補助器を固定した際、水糸34が軌間外側にいる作業者から見てポンチマーク33より右側にあるとき(図5参照)は、曲尺10を、その横尺が図5において左方に向くように滑動溝14内に立てて、その縦尺が水糸34に当たるまで滑動溝14内を滑動させる。そして、その縦尺が水糸34に当たった時点で、曲尺10の直角部(横尺の0点)の指し示す、検測用直尺4、5の目盛りを読む。言うまでもなく、この値がふく進量ということになる。また、水糸34がポンチマーク33より左側にあるときは、曲尺10を逆向きにして滑動溝14内に立て、上記同様にしてふく進量を読み取る。
【0028】
以上述べたように、本発明に係る補助器は、レールポンチの打設作業とふく進量の測定作業の両用途に利用することができるという大きな特徴を有するものであり、これらの作業を極めて簡易化し、熟練者でなくても、これらの作業を迅速且つ正確に、しかも安全に行うことを可能にする、非常に有益なものである。
【0029】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態の正面図である。
【図3】本発明の一実施形態の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態の使用状態を示す縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の使用状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態の使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 本体ケース
2 上面板
3 側面板
4、5 検測用直尺
6 打設用直尺
7 側面板
8 切替スイッチ付き磁石
9 スイッチ
10 曲尺
11、12 磁石ホルダー
13 ストッパー
14 滑動溝
15 溝形成板
17 確認用窓
19 ポンチ用穴
20 支持部
21 挿入スペース
22 ナット
23 締付ボルト
31 レール
32 打撃ポンチ
33 ポンチマーク
34 水糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上に配置されてレールの頭頂面に当接する上面板とレールの頭側面に当接する側面板とを有する本体ケースを設け、前記上面板にレールへの固定手段を配設すると共に、前記上面板及び/又は側面板に検測用直尺を定着し、前記側面板の上半部に確認用窓を形成し、前記確認用窓部分にレールポンチ打設用直尺を脱着可能に装填して成るレールポンチ打設用補助器。
【請求項2】
前記レールへの固定手段は、前記本体ケースの上面板上に設置される切替スイッチ付き磁石である、請求項1に記載のレールポンチ打設用補助器。
【請求項3】
前記本体ケースの上面板上に、曲尺固定用磁石ホルダーを配設した、請求項1又は2に記載のレールポンチ打設用補助器。
【請求項4】
前記側面板の検測用直尺は、前記確認用窓の下側に配置される、請求項1乃至3のいずれかに記載のレールポンチ打設用補助器。
【請求項5】
前記打設用直尺は、その0点部分にポンチ用穴が穿設されたものである、請求項1に記載のレールポンチ打設用補助器。
【請求項6】
前記打設用直尺と前記上面板の検測用直尺と前記側面板の検測用直尺には、それぞれ0点を中心に左右対称に目盛が付され、且つ、それらの0点位置が一致するように配置される、請求項1に記載のレールポンチ打設用補助器。
【請求項7】
前記打設用直尺は、前記確認用窓の両側部分を支持部として前記打設用直尺の厚み相当分前方に出すことによってその内側に直尺挿入スペースを形成し、前記打設用直尺を前記支持部内側の挿入スペースに挿入することによって装填される、請求項1に記載のレールポンチ打設用補助器。
【請求項8】
前記支持部に、前記打設用直尺を固定するための締付ボルトをネジ込むナットを固定した、請求項7に記載のレールポンチ打設用補助器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−47974(P2010−47974A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213096(P2008−213096)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(591153145)ユニオン建設株式会社 (6)
【出願人】(594183831)伊岳商事株式会社 (15)
【Fターム(参考)】