説明

レール吊上装置

【課題】レールの吊り上げ操作を安全かつ容易に行うことにより、作業性を改善する。
【解決手段】レール吊上装置は、吊り上げるべきレールRの両側に立てられている一対の伸縮脚12と、両伸縮脚12の上端に渡されている装置ボディ11と、装置ボディ11から両伸縮脚12の間に吊り下げられているレールキャッチ18と、装置ボディ11に装備されている手動油圧ポンプ14と、油圧ポンプ14によって作動させられる油圧シリンダ16とよりなる。各伸縮脚12は、同レールRの対応する側で静止されている支持脚22と、支持脚22に昇降自在に支持されかつ上端を装置ボディ11に固着している脚本体21とよりなる。油圧シリンダ16のピストンロッド42が支持脚22に固定されている。油圧シリンダ16のシリンダチューブ41が脚本体21に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、鉄道軌道工事において、軌道に敷設するためのレールあるいは軌道に敷設されていたレールを吊り上げるためのレール吊上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のレール吊上装置としては、吊り上げるべきレールの幅方向に間隔をおいてその両側に一対の支持脚が立てられており、両支持脚の上端部同士が天板によって連結されており、天板の上に巻上機本体が固定されており、巻上機本体から、下端にレールキャッチを取り付けたロードチェーンが垂下させられるとともに、巻上機本体に、ロードチェーンを巻き上げるための回転ハンドルが取付られているものが知られている。
【0003】
この吊上装置では、ロードチェーンの巻き上げに際し、回転ハンドルを手回し操作して、巻上軸が回転させられる。この場合、巻上機は天板の上に設置されているため、回転ハンドルの位置が作業者にとって高くなり、また、ハンドル回転操作には相応の力を必要とするので、回転ハンドルの回転操作をし辛く、作業効率は良くなかった。また、回転ハンドルの回転操作をし辛いため、レール吊り上げ速度も一定しにくく、さらに、巻上機は天板の上に設置されているため、ロードチェーンの長さも長くなってしまい、吊り上げられたレールが不安定な状態となりやすい、というような安全上の問題点もあった。さらに、巻上機には歯車のストッパが通常内蔵されているが、レール吊り上げ時や吊り上げた状態でそのストッパがレールの重量等のため破損すると、レールが一気に落下してしまうという危険性もあった。
【0004】
なお、軌道上で物を吊り上げる装置として、目的は異なるが、例えば、特開2006−104849号公報には、軌道スラブ敷設位置調整装置が開示されており、前及び後各クレーン(21)(22)の横フレーム(33)(43)の上にそれぞれ左右一対の巻上機(34)(44)が備えられることが開示されている(請求項5)。巻上機(34)は、手回し式のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−104849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、レールの吊り上げ操作を安全かつ容易に行うことができ、作業性を改善することのできるレール吊上装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によるレール吊上装置は、吊り上げるべきレールの両側に立てられている一対の伸縮脚と、両伸縮脚の上端に渡されている装置ボディと、装置ボディから両伸縮脚の間に吊り下られているレールキャッチと、装置ボディに装備されている手動油圧ポンプと、油圧ポンプによって作動させられる油圧シリンダとよりなり、各伸縮脚は、同レールの対応する側で静止されている支持脚と、支持脚に昇降自在に支持されかつ上端を装置ボディに固着している脚本体とよりなり、油圧シリンダのピストンロッドが支持脚に固定されており、油圧シリンダのシリンダチューブが脚本体に固定されているものである。
【0008】
この発明によるレール吊上装置では、油圧ポンプによって、油圧シリンダに圧油を供給すると、シリンダチューブからピストンロッドが突出させられる方向に油圧シリンダが作用し、支持脚によってピストンロッドは固定状態に支持されているため、シリンダチューブが脚本体および装置ボデイとともに持ち上げられ、その結果、レールキャッチが持ち上げられる。したがって、レールの吊り上げ操作を安全かつ容易に行うことができ、作業性を改善することができる。
【0009】
さらに、支持脚は、上端開放垂直筒状をなしており、脚本体は、支持脚にその長さ方向に移動自在にはめ被せられている下端開放垂直筒状をなしており、ピストンロッドの下端部は、支持脚の底部に連結されており、シリンダチューブは、脚本体に収容されていると、油圧シリンダを伸縮脚内にコンパクトに収容することができる。
【0010】
また、油圧ポンプは、手動操作用レバー状ハンドルを有しており、ハンドルは、平面より見て、両伸縮脚の並べられた方向と平行にのびていると、レールの吊り上げに際し、吊り上げるべきレールの両側に両伸縮脚を立てた状態で、ハンドル操作を、吊り上げられるレールが邪魔をすることなく、レールの側方から安全に行うことができる。
【0011】
また、油圧ポンプは、吐出圧を開放するレリーズ機能を有しており、油圧ポンプの吐出口にホースの一端が接続されており、油圧シリンダは、単動式のものであり、シリンダチューブ内のロッド突出側チャンバにホースの他端が接続されていると、レールを吊り上げた状態で、レリーズ機能によって吐出圧を開放すると、シリンダチューブ内から圧油が流出させられ、その結果、レール、装置ボデイ等の重量によって、脚本体、装置ボデイとともにレールキャッチが緩やかに下降させられて、安全にレールを降ろすことができる。
【0012】
また、装置ボディの底面およびこれに隣接する両伸縮脚の対向面に垂直板状補強板が張り渡されており、補強板の下縁部に逆V字状切欠が形成されており、切欠の頂部縁に、下端にレールキャッチを取付けたチェーンの上端が取付られていると、補強板によって、装置ボディおよび伸縮脚を補強できることは勿論、補強板が邪魔をすることなく、切欠を介して補強板からレールキャッチを吊り下げることができる。また、補強板によって、チェーンの長さを短くでき、吊り上げられたレールが不安定な状態にはならない。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、レールの吊り上げ操作を安全かつ容易に行うことができ、作業性を改善することのできるレール吊上装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明によるレール吊上装置の正面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う垂直断面図である。
【図3】図1のIII −III 線に沿う垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明において、図1に矢印Aで示す側を前、これと反対側を後と言い、左右とは、前方から見て、その左右の側を左右というものとする。
【0016】
図1〜3を参照すると、レール吊上装置は、前後方向にのびたレールRの上方を左右方向にのびている左右方向に長い箱形状装置ボディ11と、レールRの左右両側に立てられかつ装置ボディ11の左右両端部をそれぞれ支持している同一構造の左右一対の伸縮脚12と、装置ボディ11の前側面にブラケット13を介して取付られている手動油圧ポンプ14と、装置ボディ11内に収容されている油タンク15と、両伸縮脚12内にそれぞれ収容されている左右一対の垂直下向き油圧シリンダ16と、装置ボディ11の左右方向中央部からチェーン17によってレールRの真上に吊り下げられているレールキャッチ18とを備えている。
【0017】
各伸縮脚12は、上端を装置ボディ11の左右対応する側の端部に固着している下端開放垂直筒状脚本体21と、地上に静止状態に置かれかつ脚本体21がその長さ方向に相対的移動自在にはめ被せられている上端開放垂直筒状支持脚22とよりなる。
【0018】
装置ボディ11の底面およびこれに隣接する両伸縮脚12の脚本体21対向面には垂直板状補強板23が張り渡されている。補強板23の下縁部には逆V字状切欠24が形成されている。
【0019】
油圧ポンプ14は、平面より見て、左右方向にのびた手動操作用レバー状ハンドル31およびレリーズバルブ操作用摘み32を備えている。
【0020】
各油圧シリンダ16は、単動式のもので、シリンダチューブ41およびシリンダチューブ41から下向きに突出させられているピストンロッド42よりなる。シリンダチューブ41は、脚本体21内に固定状に収容されている。ピストンロッド42の下端部は、支持脚22の底壁に連結されている。
【0021】
チェーン17の上端は、切欠24の頂部縁に取付られている。チェーン17の下端にレールキャッチ18が取付られている。
【0022】
油圧ポンプ14の吐出口には油圧ホース51の一端が接続されている。油圧ホース51の他端は、継手52および2つの分岐ホース53,54 を介して、各油圧シリンダ16のシリンダチューブ41のロッド突出側チャンバに接続されている。
【0023】
レールRをレールキャッチ18によってキャッチして、ハンドル31を上下に揺動させると、油圧ポンプ14によって油タンク15から圧油が両油圧シリンダ16のシリンダチューブ41のロッド突出側チャンバに送られる。そうすると、シリンダチューブ41からピストンロッド42が突出させられる方向に両油圧シリンダ16が作用する。この場合、ピストンロッド42は静止状態に支持されているため、その反作用によってシリンダチューブ41が上昇させられる。上昇させられるシリンダチューブ41によって脚本体21とともに装置ボデイ11が持上げられ、その結果、レールキャッチ18とともにレールRが吊り上げられる。
【0024】
この状態から、摘み32の操作によって、レリーズバルブを開放すると、レールR等の重量によって、シリンダチューブ41内から圧油が排出されて油タンク15に戻される。そうすると、油圧を失ったシリンダチューブ41が下降させられて、シリンダチューブ41とともに、脚本体21とともに装置ボディ11も緩やかに下降させられる。その結果、レールRが安全に吊り降ろしされる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明によるレール吊上装置は、鉄道軌道工事において、軌道に敷設するためのレールあるいは軌道に敷設されていたレールを吊り上げるためのレールを吊り上げることを達成するのに適している。
【0026】
1本のレールを吊り上げるために、レール長さ方向に間隔をおいて2基のレール吊上装置を用いてもよいし、また、1基のレール吊上装置を用いてもよい。1基のレール吊上装置を用いた場合には、レールを吊り上げた付近において、そのレール下の保線作業(バラストの調整作業など)を行うことができる。
【符号の説明】
【0027】
11 装置ボディ
12 伸縮脚
14 油圧ポンプ
16 油圧シリンダ
18 レールキャッチ
21 脚本体
22 支持脚
41 シリンダチューブ
42 ピストンロッド
R レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り上げるべきレールの両側に立てられている一対の伸縮脚と、両伸縮脚の上端に渡されている装置ボディと、装置ボディから両伸縮脚の間に吊り下られているレールキャッチと、装置ボディに装備されている手動油圧ポンプと、油圧ポンプによって作動させられる油圧シリンダとよりなり、各伸縮脚は、同レールの対応する側で静止されている支持脚と、支持脚に昇降自在に支持されかつ上端を装置ボディに固着している脚本体とよりなり、油圧シリンダのピストンロッドが支持脚に固定されており、油圧シリンダのシリンダチューブが脚本体に固定されているレール吊上装置。
【請求項2】
支持脚は、上端開放垂直筒状をなしており、脚本体は、支持脚にその長さ方向に移動自在にはめ被せられている下端開放垂直筒状をなしており、ピストンロッドの下端部は、支持脚の底部に連結されており、シリンダチューブは、脚本体に収容されている請求項1に記載のレール吊上装置。
【請求項3】
油圧ポンプは、手動操作用レバー状ハンドルを有しており、ハンドルは、平面より見て、両伸縮脚の並べられた方向と平行にのびている請求項1または2に記載のレール吊上装置。
【請求項4】
油圧ポンプは、吐出圧を開放するレリーズ機能を有しており、油圧ポンプの吐出口にホースの一端が接続されており、油圧シリンダは、単動式のものであり、シリンダチューブ内のロッド突出側チャンバにホースの他端が接続されている請求項1〜3のいずれか1つに記載のレール吊上装置。
【請求項5】
装置ボディの底面およびこれに隣接する両伸縮脚の脚本体対向面に垂直板状補強板が張り渡されており、補強板の下縁部に逆V字状切欠が形成されており、切欠の頂部縁に、下端にレールキャッチを取付けたチェーンの上端が取付られている請求項1〜4のいずれか1つに記載のレール吊上装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−43771(P2013−43771A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184544(P2011−184544)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(509126807)
【Fターム(参考)】