説明

ロアバックパネル構造

【課題】車両の後部開口の下縁に沿って配置され、左右端部付近にそれぞれリアサイドメンバが連結されるロアバックパネルにおいて、自動車のボディねじり剛性と共にリアサイドメンバ後端部の剛性を確保し、且つ、コストを低減する。
【解決手段】ロアバックパネル1は、車両の幅方向に沿って長尺な形状に形成されたロアバックインナパネル3と、前記ロアバックインナパネルを外側から覆うように取り付けられるロアバックアウタパネル2とを備え、前記ロアバックインナパネルとロアバックアウタパネルとにより閉断面領域Sが形成され、少なくとも前記ロアバックインナパネルとロアバックアウタパネルのいずれかにおいて、前記リアサイドメンバとの連結部4近傍に形成され、車両の幅方向に対し直交する方向に沿って面形成された縦壁部2aと、前記縦壁部の側方において車両の幅方向に沿って面形成された平坦部2bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部開口の下縁に沿って形成されるロアバックパネルの構造に関し、特にボディねじり剛性とリアサイドメンバ後端部の剛性を共に確保することのできるロアバックパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の操縦安定性は、自動車ボディのねじり剛性に依存する。近年、このねじり剛性の向上に伴い、車両後部開口下縁に沿って形成され、リアサイドメンバによって連結されるロアバックパネルの剛性確保が重要な課題となっている。
図4の斜視図に、従来のロアバックパネル(車外から向かって右側のみ示す)の一例を示す。また、図5(a)は、図4のC−C矢視断面図、図5(b)は、図4のD−D矢視断面図である。
車両ボディに対するねじり方向の負荷が与えられると、図4の矢印に示すように、ロアバックパネル200においては、車幅方向に沿ったモーメント荷重N1、或いは車両前後方向に沿ったモーメント荷重N2が生じる。
【0003】
従来、そのようなモーメント荷重N1,N2に耐えるため、ロアバックアウタパネル201とロアバックインナパネル202との間の閉断面領域Sを大きく形成し、さらに、左右端部にまで、前記閉断面領域Sを確保していた。
また、前記閉断面領域Sの空間に、断面変形を抑制するためにバルクと呼ばれる補強部材を封入する、或いは、前記ロアバックアウタパネル201とロアバックインナパネル202との間(即ち閉断面領域Sの空間中)に板部材を設けるといった工夫がなされていた。
尚、剛性向上を目的とした車両の後部開口下側結合構造については、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−62565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のように閉断面領域Sの空間にバルク部材や板部材等の別部材を設けると、コストが嵩張る上、車重量が増加するという課題があった。
【0006】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、車両の後部開口の下縁に沿って配置され、左右端部付近にそれぞれリアサイドメンバが連結されるロアバックパネルにおいて、自動車のボディねじり剛性と共にリアサイドメンバ後端部の剛性を確保することができ、且つ、コストを低減することのできるロアバックパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するために、本発明に係るロアバックパネル構造は、車両の後部開口の下縁に沿って配置され、左右端部付近にそれぞれリアサイドメンバが連結されるロアバックパネルの構造であって、前記ロアバックパネルは、車両の幅方向に沿って長尺な形状に形成されたロアバックインナパネルと、前記ロアバックインナパネルを外側から覆うように取り付けられるロアバックアウタパネルとを備え、前記ロアバックインナパネルとロアバックアウタパネルとにより閉断面領域が形成され、少なくとも前記ロアバックインナパネルとロアバックアウタパネルのいずれかにおいて、前記リアサイドメンバとの連結部近傍に形成され、車両の幅方向に対し直交する方向に沿って面形成された縦壁部と、前記縦壁部の側方において車両の幅方向に沿って面形成された平坦部とを有することに特徴を有する。
尚、前記縦壁部は、前記リアサイドメンバの連結部の直上位置に設けられていることが好ましく、さらに、前記リアサイドメンバの連結方向に沿って面形成されていることが望ましい。
また、前記平坦部は、前記縦壁部よりも車両側部側に設けられていることが望ましい。
【0008】
このように構成されたロアバックパネルに対しリアサイドメンバからの荷重が、その連結部を介して伝達されると、その上下方向の荷重は前記縦壁部によって吸収され、ロアバックパネルの断面崩れを抑制することができる。
また、ねじり荷重に対しては、車両幅方向に働くモーメント荷重は、前記平坦部の面内力により吸収され、車両前後方向に働くモーメント荷重は、ロアバックアウタパネルとロアバックインナパネルとの間に形成された閉断面領域の面内力により吸収される。
したがって、ロアバックインナパネルとロアバックアウタパネルとからなるロアバックパネルの形状のみにより、ボディねじり剛性とリアサイドメンバ端部の剛性を共に確保することができる。
また、バルク等の別部材を追加する必要がないため、従来よりもコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両の後部開口の下縁に沿って配置され、左右端部付近にそれぞれリアサイドメンバが連結されるロアバックパネルにおいて、自動車のボディねじり剛性と共にリアサイドメンバ後端部の剛性を確保することができ、且つ、コストを低減することのできるロアバックパネル構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明に係るロアバックパネルの斜視図である。
【図2】図2は、図1のロアバックパネルを車外から見た正面図である。
【図3】図3は、図2のA−A矢視断面図及びB−B矢視断面図である。
【図4】図4は、従来のロアバックパネルの斜視図である。
【図5】図5は、図4のC−C矢視断面図及びD−D矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るロアバックパネル構造の実施の形態について図面に基づき説明する。図1は本発明に係るロアバックパネルの斜視図(車外後方から見て右側のみ示す)であり、図2は、図1のロアバックパネルを車外から見た正面図である。また、図3(a)は、図2のA−A矢視断面図であり、図3(b)は、図2のB−B矢視断面図である。
【0012】
図1に示すロアバックパネル1は、車両の後部開口の下縁に沿って配置される。このロアバックパネル1は、ロアバックインナパネル2に対し、スポット溶接により、ロアバックアウタパネル3が合わさってなる。ロアバックアウタパネル3は、ロアバックインナパネル2を外側から覆うように取り付けられている。
また、ロアバック1の左右端部付近(クロスハッチングで示す連結部4)には、リアサイドメンバ(図示せず)が連結される構成となされている。
【0013】
図1、図2、図3(b)に示すように、ロアバックアウタパネル2において、前記連結部4の近傍かつ直上部には、車両の幅方向に対し直交する方向に沿って面形成された縦壁部2aが形成されている。この縦壁部2aが形成されていることにより、連結部4を通して伝えられるリアサイドメンバの上下荷重(応力)が吸収される。尚、この縦壁部2aは、車両の幅方向に対し完全に直交方向、即ちリアサイドメンバの連結方向に沿って面形成されていることが好ましい。
【0014】
また、ロアバックアウタパネル2において、図1,図2、図3(a)に示すように、前記縦壁部2aの側方であって、それよりも車両側部側には、車両の幅方向に沿って面形成された平坦部2bが形成されている。この平坦部2bが設けられていることにより、図1に矢印で示すモーメント荷重N1に対しては面内力が発生し、この面内力により荷重N1が吸収される。
さらに、図3(b)に示すように、ロアバックアウタパネル2とロアバックインナパネル3とによる閉断面領域Sが、車両の左右両端まで形成されている。この閉断面領域Sの面内力により、図1に矢印で示す車両前後方向に発生するモーメント荷重N2が吸収される。
【0015】
このように構成されたロアバックパネル1に対しリアサイドメンバ(図示せず)からの荷重が連結部4を介して伝達されると、その上下方向の荷重は前記縦壁部2aによって吸収され、ロアバックパネル1の断面崩れが抑制される。
また、ねじり荷重に対しては、車両幅方向に働くモーメント荷重N1は、平坦部2bの面内力により吸収され、車両前後方向に働くモーメント荷重N2は、ロアバックアウタパネル2とロアバックインナパネル3との間に形成された閉断面領域Sの面内力により吸収される。
【0016】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、ロアバックインナパネルとロアバックアウタパネルとからなるロアバックパネルの形状のみにより、ボディねじり剛性とリアサイドメンバ端部の剛性を共に確保することができる。
また、バルク等の別部材を追加する必要がないため、従来よりもコストを低減することができる。
尚、前記実施の形態においては、縦壁部2aと平坦部2bとをロアバックアウタパネル2に形成するものとして説明したが、それに限定されず、それらをロアバックインナパネル3のみに形成してもよい。若しくは、ロアバックアウタパネル2とロアバックインナパネル3の両方に形成することで、より剛性を向上することができ、より好ましい。
【符号の説明】
【0017】
1 ロアバックパネル
2 ロアバックアウタパネル
2a 縦壁部
2b 平坦部
3 ロアバックインナパネル
4 連結部
S 閉断面領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部開口の下縁に沿って配置され、左右端部付近にそれぞれリアサイドメンバが連結されるロアバックパネルの構造であって、
前記ロアバックパネルは、車両の幅方向に沿って長尺な形状に形成されたロアバックインナパネルと、前記ロアバックインナパネルを外側から覆うように取り付けられるロアバックアウタパネルとを備え、
前記ロアバックインナパネルとロアバックアウタパネルとにより閉断面領域が形成され、
少なくとも前記ロアバックインナパネルとロアバックアウタパネルのいずれかにおいて、前記リアサイドメンバとの連結部近傍に形成され、車両の幅方向に対し直交する方向に沿って面形成された縦壁部と、前記縦壁部の側方において車両の幅方向に沿って面形成された平坦部とを有することを特徴とするロアバックパネル構造。
【請求項2】
前記縦壁部は、前記リアサイドメンバの連結部の直上位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載されたロアバックパネル構造。
【請求項3】
前記縦壁部は、前記リアサイドメンバの連結方向に沿って面形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたロアバックパネル構造。
【請求項4】
前記平坦部は、前記縦壁部よりも車両側部側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたロアバックパネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−162913(P2010−162913A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4191(P2009−4191)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】