ログ解析装置
【課題】 分散制御システムに対し、制御装置が出力するログを解析することにより、不具合の原因箇所の特定を効率的に行うことができるログ解析装置を得る。
【解決手段】 解析対象となる対象制御装置が制御対象とする制御対象装置の種類および数と一致するか否かにより類似度を算出し、類似度が最大となる制御装置を比較制御装置として特定するログ比較装置特定部34と、ログ保存部24から対象制御装置および比較制御装置が出力した時刻情報が一致するログをそれぞれ対象ログおよび比較ログとして抽出するログ抽出部35と、対象ログおよび比較ログのデータを比較して対象ログの重要度を演算するログ重要度演算部42と、ログ重要度演算部42が演算した重要度を対象ログに挿入するログ重要度挿入部37とを備える。
【解決手段】 解析対象となる対象制御装置が制御対象とする制御対象装置の種類および数と一致するか否かにより類似度を算出し、類似度が最大となる制御装置を比較制御装置として特定するログ比較装置特定部34と、ログ保存部24から対象制御装置および比較制御装置が出力した時刻情報が一致するログをそれぞれ対象ログおよび比較ログとして抽出するログ抽出部35と、対象ログおよび比較ログのデータを比較して対象ログの重要度を演算するログ重要度演算部42と、ログ重要度演算部42が演算した重要度を対象ログに挿入するログ重要度挿入部37とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分散制御システムの不具合解析、システム試験を行うために、分散制御システムの監視制御処理の状況を記録したログを解析するログ解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分散制御システムの不具合解析、システム試験、プログラムのデバッグ等を行う場合に、システムにおける処理の状況を記録したログの解析手法として、正常動作時のログと異常動作時のログとを比較して相違部分を調査することにより、不具合の解析、エラー原因の分析、プログラムにおけるバグの原因を分析する手法が用いられている。
しかしながら、分散制御システムは、多数の制御装置がネットワークで接続され、各装置が連携して動作するため、システム全体のパラメータが多く、システム全体として同一条件の状態を再現することが困難である。
そのため、上に述べた手法のように、正常動作時のログと異常動作時のログとのデータの違いを単純に比較する手法では、両方の間の相違点が膨大となり、不具合解析、システム試験、デバッグ等を効率的に実施できない問題がある。
【0003】
従来のログ解析方法では、同一のプログラムを複数回繰返して実行することにより、複数のログを生成し、それらのログを比較し、発生するイベントの順序、データの違いによって、それぞれのログの特徴となるイベントに関する情報を出力する手法が用いられていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−203001号公報(第5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のログ解析装置を用いた解析では、同一プログラムを複数回実行し、特徴となるログを抽出していた。しかし、分散制御システムでは、プログラム実行中にシステム全体の条件が時々刻々と変化するため、複数回実行したプログラムのログが同一の条件で実行されるという保証がない。そのため、複数回実行した同一プログラムのログを解析しても、不具合の原因となる箇所の特定が困難であるという問題がある。
【0006】
この発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、分散制御システムにおける複数の制御装置で出力されたログを収集し、解析対象となる制御装置が制御対象とする制御対象装置の構成と、分散制御システム内で制御対象装置の構成の類似度が高い制御装置を比較対象の制御装置として抽出し、同一の時刻または同一の期間について収集されたログを解析対象となる制御装置の出力したログと、比較対象となる制御装置の出力したログとで比較し、比較した結果に基づいてその差異の重要度を演算し、解析対象となる制御装置が出力したログに重要度に応じて注釈を挿入するものである。これにより、上記2種類のログの間の差異となる箇所の特定を容易にし、不具合の原因解析を容易にするログ解析装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るログ解析装置は、監視制御処理状況を示すログを出力する制御装置がネットワークに複数台接続された分散制御システムの前記ログを解析するログ解析装置において、前記ログを収集し時刻情報を付して収集するログ収集部と、前記ログ収集部が収集したログを保存するログ保存部と、前記分散制御システムにおける監視制御データを定義した監視制御データ一覧表と、入力手段を介して解析対象となる制御装置を対象制御装置として指定し、前記監視制御データ一覧表から解析対象となる監視制御データを指定するログ解析対象指定部と、前記分散制御システムにおける制御装置の各々が制御対象とする制御対象装置の構成を格納する装置構成格納部と、前記装置構成格納部に格納される、前記対象制御装置以外の制御装置それぞれの制御対象装置の種類および数が、前記対象制御装置が制御対象とする制御対象装置の種類および数と一致するか否かにより類似度を算出し、前記類似度が最大となる制御装置を比較制御装置として特定するログ比較装置特定部と、前記ログ保存部から前記対象制御装置および前記比較制御装置が出力した前記時刻情報が一致するログをそれぞれ対象ログおよび比較ログとして抽出するログ抽出部と、前記対象ログおよび前記比較ログのデータを比較して前記対象ログの重要度を演算するログ重要度演算部と、前記ログ重要度演算部が演算した重要度を前記対象ログに挿入するログ重要度挿入部とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、複数台の制御装置のそれぞれが監視制御対象とする制御対象装置の構成を格納する装置構成格納部と、前記装置構成格納部に格納される制御装置のそれぞれについて、前記対象制御装置と、監視制御対象とする制御対象装置の構成の類似度を算出して類似度の高い制御装置を比較制御装置として特定するログ比較装置特定部と、前記ログ保存部から前記対象制御装置および前記比較制御装置の出力した前記時刻情報が一致するログをそれぞれ対象ログおよび比較ログとして抽出するログ抽出部と、前記対象ログおよび前記比較ログのデータを比較して重要度を演算するログ重要度演算部と、前記ログ重要度演算部が演算した重要度に応じた注釈を生成して、前記対象ログに挿入する注釈挿入部とを備えたので、同一条件で実行された異常動作した場合のログと、正常動作した場合のログとを比較し、ログの重要度を与えることにより、上記2つの場合のログの間の差異となる箇所の特定を容易にし、不具合の原因解析を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1におけるログ解析装置を分散制御システムに適用した場合のシステム全体の構成例を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるログ解析装置を分散制御システムに適用した場合のシステム全体の別の構成例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるログ解析装置のブロック構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1における監視制御データ一覧表の構成例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1における装置構成データベースの例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1における装置構成データベースの例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1におけるログ重要度挿入部の構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態1におけるログの例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1におけるログの例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態1におけるログ解析装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態1における部分ログの例を示す図である
【図12】この発明の実施の形態1における重要度が挿入されたログの例である。
【図13】この発明の実施の形態2におけるログ解析装置の構成を示すブロック図である。
【図14】この発明の実施の形態2における試験項目一覧表の例である。
【図15】この発明の実施の形態2におけるログ解析装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】この発明の実施の形態3におけるログ解析装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
この発明を実施するための実施の形態1におけるログ解析装置を分散制御システムに対して実施した場合のシステム全体の構成例を図1に示す。図において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、これは、明細書の全文において共通することである。
【0011】
図1において、ログ収集の対象となる分散制御システム1は、複数の制御装置12a、12b、・・・が制御ネットワーク11で接続されたものであり、制御ネットワーク11を介して相互に通信する。制御装置12aは入出力ネットワーク18aを介して制御対象装置14a、14b、・・・との間で監視制御データパケットを通信することにより監視制御を行う。同様に、制御装置12bは入出力ネットワーク18bを介して制御装置15a、15b、・・・との間で監視制御データパケットを通信することにより、監視制御を行う。監視制御データパケットは制御装置12a、12b、・・・の間で制御ネットワーク11を介して通信される。これにより、監視制御データが制御装置12a、12b、・・・で共有される。
【0012】
制御ネットワーク11における監視制御データパケットは所定の周期で制御装置12a、12b、・・・の間で相互に通信される。この所定の周期は例えば、100ミリ秒、1秒、など分散制御システム1の構成に応じて予め決定される。この所定の周期の1単位を以下においてTと表記する。
監視制御データパケットは1つまたは複数の監視制御データで構成される。
ログ解析装置20は、ログ収集用ネットワーク21a、21b、21c、・・・およびネットワーク中継装置22を介して、制御ネットワーク11、入出力ネットワーク18a、18bに接続され、監視制御データパケットを収集する。
【0013】
以下、説明の都合上、図1に示す構成を対象として説明する。すなわち、制御装置12a、12bが制御ネットワーク11で接続され、制御装置12aおよび12bはそれぞれ、入出力ネットワーク18aおよび18bを介して制御対象装置14a、14bおよび15a、15bの監視制御を行う。また、ログ収集用ネットワーク21a、21b、21c、21dにより監視制御データパケットがログ解析装置20に収集される。以下の説明は図示しない制御装置12c等、制御装置12c等が制御対象とする制御対象装置、また、ログ収集用ネットワーク21e等が分散制御システム1に含まれて構成された場合にも同様に当てはまる。
【0014】
図1において、ログ解析装置20は制御ネットワーク11において制御周期毎に発生する監視制御データパケットを収集し、収集時の時刻情報を付加する。監視制御データパケットに時刻情報を付加したものを以下「ログ」と呼ぶことにする。
ここで、ログ収集用ネットワーク21a、21b、21c、21dは例えばイーサネット(登録商標)、シリアル通信等の汎用的なネットワークを用いて構成される。
【0015】
図1とは別の構成例として、この発明を実施するための実施の形態1におけるログ解析装置20を分散制御システムに適用した場合のシステム全体の構成例を図2に示す。
同図において、制御装置12a、12bにはそれぞれ、ログ出力部19a、19bが備えられる。また、図2の構成例ではログ収集用ネットワーク21a、21bがそれぞれ、ログ出力部19a、19bに接続され、中継装置22、ログ収集用ネットワーク21cを介して監視制御データパケットが収集される。その他の構成については図1と同様であるので、図1と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施の形態におけるログ解析装置20のブロック構成を図3に示す。図3に示す構成は図1、図2のいずれの分散制御システムでも適用可能である。また、このことは特に明示しない限り、図3に限らず本明細書の以下の部分で示す構成において同様である。
【0016】
ログ解析装置20には、監視制御データパケットに収集時の時刻情報を付してログとして収集するログ収集部23、ログ収集部23が収集したログを記憶装置25に保存するログ保存部24、記憶装置25からログを取得してログの解析を行うログ解析部28、監視制御データを定義した監視制御データ一覧表31が含まれる。また、ログ解析装置20には、ログ解析部28による結果を出力するログ表示部29が備えられる。ログ解析装置20には分散制御システム1の不具合分析、システム試験等を行うユーザが解析対象となるログを指定し、また、解析対象となる制御装置番号または制御装置識別子を入力するための入出力部60が備えられる。指定されたログの情報、制御装置番号または識別子は入出力部60を通じてログ解析部28に伝達される。
【0017】
ここに、制御装置番号は分散制御システム1全体において個別となる番号が与えられるものとする。あるいは制御装置の識別子である場合も同様に、分散制御システム1全体において個別となるものとする。すなわち、制御装置番号あるいは識別子を指定すれば分散制御システム1において、制御装置がただ1つに特定されるものとする。
【0018】
監視制御データ一覧表31には、監視制御データの名称、データサイズ、監視制御データ位置、制御対象装置名、監視制御データの特性を定義したテーブルである。これは、分散制御システム1の設計時に定義される。
監視制御データの名称は文字列で記述される。
監視制御データ位置としては、例えば監視制御データパケットにおける先頭データからのバイトオフセットが記述される。なお、監視制御データ位置を示す方法はこれに限るものではない。バイトオフセットの代わりに、複数のバイト数を単位として、例えば2バイト、4バイト、8バイト等を単位として示すものでもよい。あるいは、監視制御データパケット内の個々のデータに一意な番号(インデックス番号)を付し、このインデックス番号を示すものであってもよい。
【0019】
制御対象装置名は、監視制御データと関連する制御対象装置の名称が文字列によって記述される。また、監視制御データによっては特定の制御対象装置と必ずしも対応していないログも含まれる。これは例えば、パケット全体の有効無効を示す情報などであり、この場合は制御対象装置名に「なし」と記述するものとする。
【0020】
監視制御データの特性は、監視制御データが取り得る特性の分類を示すものであり、例えば、「ON/OFF」、「繰返し」、「単調増加」、「数値」等の特性の分類が用いられる。「ON/OFF」は、監視制御データがON(1)とOFF(0)のいずれかの値を取る1ビットのデータであるときに指定する。「繰返し」は、監視制御データが時系列でみて特定のパターンが繰り返されるデータである。「単調増加」は、時間の経過と共に値が増加していくデータである。「数値」は上記いずれの分類にも属さない、いわゆる通常の数値データを示し、例えば温度、圧力などを示すアナログ値のデータである。
【0021】
監視制御データの特性についての以上の分類は例示であって、これら以外の分類によるものを用いてもよい。例えば、上記「単調増加」に対し、時刻ごとに値が減少する「単調減少」、所定の時間一定値を示す「一定値」などを用いることもできる。
図4に監視制御データ一覧表31の構成例を示す。同図においては、監視制御データ名称として5種類の監視制御データが定義されている。
【0022】
図3に示すように、ログ解析部28はその内部の構成として、ログ解析対象指定部32、装置構成格納部33、ログ比較装置特定部34、ログ抽出部35、部分ログ抽出部36、ログ重要度挿入部37、部分ログ記憶部40を有する。部分ログ記憶部40は記憶装置25に設けても、記憶装置25とは別の記憶装置に設けてもよい。
【0023】
ログ解析対象指定部32は、入出力部60を通じて、解析対象となるログとして監視制御データの指定、また、解析対象となる制御装置として、分散制御システム1における制御装置番号(または制御装置識別子)の指定の入力を受ける。解析対象となる監視制御データは、ログ解析装置20のユーザから入出力部60を通じて、監視制御データ一覧表31から監視制御データ名称を指定することにより行われる。このとき、複数の監視制御データを指定することができる。
【0024】
装置構成格納部33は、制御装置12a、12bのそれぞれが制御対象とする制御対象装置の名称と個数を管理する装置構成データベースを有する。
装置構成格納部33における装置構成データベースの構成例を図5に示す。同図に示すように、制御装置12a、12b、12c、12d(ここでは例示のため、制御装置12c、12dも含めて説明する)が列挙され、各制御装置について、制御対象となる制御対象装置の個数が示される。
【0025】
また、制御装置がいくつかの種類に予め分類されている場合は、その制御装置の分類に関する情報をデータベースに含めてもよい。分散制御システムの一形態として、例えば列車の搭載機器の制御を行う列車制御システムの場合には、モータ車、客車など、車種によって制御対象機器の構成が類似していることが多い。図6にグループ情報の例として車種を含んだ、装置構成格納部33のデータベースの構成を示す。同図に示すようにグループ情報の欄が追加され、制御装置12a、12dがモータ車、制御装置12b、12cが客車とされる。このように構成することにより、解析対象の制御装置と同じグループに属する制御装置の特定が容易となる。
【0026】
図3において、ログ比較装置特定部34は、ログ解析対象指定部32において指定された制御装置と、装置構成格納部33に格納された制御装置との間の類似度を算出して、類似度の最も高い制御装置の特定を行う。ここで、制御装置の間の類似度は、各制御装置が監視制御対象とする、制御対象装置の種別ごとの有無とそれぞれの個数により決定する。
類似度の算出方法の例について図5を用いて説明する。制御装置12aを対象として選択した場合に、制御装置12b〜12dについて類似度を算出するものとする。
【0027】
類似度は、例えば、制御対象装置の有無が解析対象となる制御装置と一致する場合は1ポイント、個数も一致する場合はさらに2ポイント加算するものとし、全ての制御対象装置の合計により算出する。この例では、制御装置12b、12cはいずれも7ポイント、制御装置12dは12ポイントである。ここに挙げた類似度の算出方法は例示であって、これ以外の算出方法を採用することもできる。例えば、制御対象装置の仕様として異なるもの(例えば、ブレーキに仕様A、仕様Bの2種類ある場合)を用いている場合は仕様の一致についても類似度の算出に採用することも可能である。
以下、ログ解析対象指定部32において指定された制御装置を対象装置、ログ比較装置特定部34で特定された制御装置を比較装置とよぶことにする。
【0028】
なお、上記の例では、比較装置は対象装置と類似度が最も高いものを選択するようにしたがこれに限るものではない。例えば、類似度が高い方から複数の制御装置を比較装置として選定しておき、以下に示す手順を用いて、それぞれの比較装置について、対象装置とログの比較を行うようにしてもよい。
複数の比較装置を選定して比較し、それらの結果を合わせて用いることで、ログ解析の精度を上げることができる。
【0029】
ログ抽出部35は、収集されたログから、対象装置のログと比較装置のログを抽出する。抽出するログは、時刻情報を検索することにより並列実行された同時刻または同期間の制御装置のログが抽出されるものとする。ここで、ログ抽出部35によって抽出された対象装置のログを対象ログ、比較装置のログを比較ログとよぶことにする。
部分ログ抽出部36は、対象ログおよび比較ログそれぞれの中から、ログ解析対象指定部32で監視制御データ一覧表31から指定された監視制御データのログを抽出し、部分ログとする。また、部分ログ抽出部36は抽出した部分ログを部分ログ記憶部40に記録する。ここで、対象ログから抽出された部分ログを対象部分ログ、比較ログから抽出された部分ログを比較部分ログとよぶ。
【0030】
ログ重要度挿入部37は、部分ログ抽出部36で抽出された部分ログに含まれる、対象部分ログについて、イベント発生の有無、データの立ち上がりから立ち下がりまでの時間間隔の差分、データの立ち上がり時間のタイミングのずれ等を重要度に変換し、対象部分ログ内に注釈として挿入する。
ログ表示部29は、ログ重要度挿入部37で挿入した注釈の中から、重要度の高い順に注釈を抽出し表示する。あるいは、ログ表示部29は時系列順に部分ログを注釈と共に表示するものであってもよく、ユーザからの入力に応じて表示形式の変更ができる。
また、ログ表示部29は単に部分ログを抽出して示すものではなく、注釈または重要度が挿入されたログの全体を表示するものであってもよい。
【0031】
本実施の形態におけるログ解析装置20の中で、ログ重要度挿入部37の詳細構成をブロック図として図7に示す。同図に示すように、ログ重要度挿入部37は、重要度演算手段決定部41、ログ重要度演算部42、注釈生成部43、注釈挿入部44を有する。
ログ重要度演算部42は、部分ログ抽出部36によって抽出された部分ログ(対象部分ログおよび比較部分ログ)を解析して、重要度を演算する。ログ重要度演算部42には重要度演算のための複数の重要度演算手段が格納される。重要度演算手段とは例えば、図7に示すように時間軸比較演算手段51、数値比較演算手段52、単調増加判定演算手段53、繰返し判定演算手段54などが含まれる。図7に示されるものは例示であってこれに限るものではない。対象となる分散制御システム1における監視制御データの種類、特性等によって追加、削除が可能である。例えば、図7に示される重要度演算手段以外に、単調減少判定演算手段、などを含むものでもよい。
【0032】
重要度演算手段決定部41は、ログ重要度演算部42に含まれるこれらの重要度演算手段から、ログ重要度演算部42で使用する重要度演算手段を選択して特定する。この際には重要度演算手段決定部41が監視制御データ一覧表31に記述された監視制御データの特性の情報を用いて決定する。また、重要度演算手段決定部41において、監視制御データのデータ特性と、ログ重要度演算部42で保有する重要度演算手段との対応表を備えて置き、この対応表を用いて重要度演算手段を選択する構成とすることもできる。
【0033】
以下、図7に示すログ重要度演算部42を例として説明する。
時間軸比較演算手段51は、対象部分ログと比較部分ログとを時間軸上で比較し、データが変化する時間、継続時間等の情報を用いて重要度を演算する。これは主として、監視制御データがON/OFFのいずれかを取る場合に使用される。対象部分ログを比較部分ログと比較し、データの立ち上がり時刻、立ち下がり時刻、ON(1)状態またはOFF(0)状態の継続時間を算出する。データの立ち上がりまたは立ち下がりのイベントが比較する一方の部分ログにしか存在しない場合、重要度を「5(最大値)」とする。
ここで、重要度の値は例示であってこれに限るものではない。これは以下の重要度についても同様である。
【0034】
データの立ち上がり時刻が、対象部分ログが比較部分ログと比較して、5周期以上ずれている場合に重要度を「4」とする。あるいは、ON時間が比較ログと比べて50%未満の場合は重要度を「4」とする。データの立ち上がりが2周期以上5周期未満ずれている場合、またはON時間が比較ログと比べて50%以上80%未満の場合は重要度を「3」とする。
この時刻の周期のずれと重要度の値についても例示であってこれに限るものではない。例えば、変化が緩やかな監視制御データについては、重要度として高いとするための周期を大きな値(例えば、20周期、50周期等)としておくことも可能である。
このように、これらの周期と重要度の値およびその関係を示す指標は解析の対象となる分散制御システム1の特性、監視制御データのデータの特性等に応じて設定可能である。また、このことは以下の重要度演算手段が使用する比較の指標、重要度の設定値についても同様に当てはまる。
【0035】
数値比較演算手段52では、各時刻における対象部分ログの数値を比較部分ログの数値と比較し、その差分から重要度を演算する。例えば、対象部分ログ、比較部分ログの一方のみが0であり、他方がゼロ以外の数値である場合は重要度を「5」とする。
対象部分ログ、比較部分ログにおけるデータの数値が両方とも0でない場合は、大きい方の数値を小さい方の数値で除算した商を計算し、200%以上であれば重要度を「4」とする。150%以上200%未満であれば重要度を「3」などとする。以下、商が120%以上150%未満の場合重要度「2」、120%未満の場合重要度「1」とする。あるいは100%より大きく150%より小さい場合重要度「2」、100%の場合重要度「1」というものであってもよい。これら重要度として設定する値は、監視制御データの種類と特性に応じて選択される。
【0036】
単調増加判定演算手段53は、監視制御データ一覧表31における監視制御データの特性が「単調増加」とされている場合にその監視データから得られた部分ログに対して適用される。これは、所定の期間(すなわち単位周期Tの整数倍、例えば10T、100Tなどが選択される)における対象部分ログまたは比較部分ログにおける、データの増加量が一定であるか否かを判定して両者の比較を行い、重要度を算出するものである。単調増加していないと判定した場合は重要度を「5」とする。また、対象部分ログと比較部分ログとで、対象となる監視制御データの値が単調増加している期間(例えば期間10Tで単調増加していれば10となる)の平均値が、50%以上異なる場合は重要度を「4」とする。また、標準偏差等の統計学的手法を用いて周期ごとの増加分のばらつきを計算し、ばらつき度合いが大きい時に重要度を大きくするなどの手法とすることもできる。
【0037】
繰返し判定演算手段54は、上述の監視周期データの特性が「繰返し」である場合に適用される。監視制御データの値の変化の繰返し周期が一定であるか否かを判定して、重要度を演算する。データの値の変化が繰返しのパターンになっていない場合は重要度を「5」とし、繰返しの期間の平均値が対象部分ログと比較部分ログとで50%以上異なる場合は重要度を「4」とする。
【0038】
以上述べたように、図7に示したログ重要度挿入部37の構成においては、重要度演算手段決定部41が、監視制御データ一覧表31に定義された監視データの特性に基づき、ログ重要度演算部42で使用する重要度演算手段を決定するものである。
ログ重要度挿入部37の構成はこれに限るものではなく、例えば温度の値を示す温度データなど、データの種類を監視制御データ一覧表31に定義しておき、データの種類に応じて重要度演算手段を選択するように構成することも可能である。例えば、この「温度データ」という特性を監視制御データ一覧表31で定義する場合、温度による重要度算出手段をログ重要度演算部42に備えておき、温度データについては所定の計算方法を用いて、例えば−20℃以下を重要度「5」とするなどの構成とすることもできる。
【0039】
図7において、注釈生成部43は、ログ重要度演算部42が演算した重要度に基づいて注釈を生成する。ここで、生成する注釈は、分散制御システム1の設計時に監視制御データの種類毎に、重要度に応じて予め設定しておき、注釈生成部43に保有させておく。注釈挿入部44は注釈生成部43で生成された注釈を対象部分ログに挿入するものである。
なお、図7においては注釈生成部43、注釈挿入部44とが分離した構成を示したが、注釈挿入部44が注釈の生成と対象部分ログへの挿入の両方を行うものであってもよい。
【0040】
次に図4、図5および図8〜図12を用いて、本実施の形態におけるログ解析装置20の動作を説明する。
図5で示した、装置構成格納部33が有する装置構成データベースで示される制御装置12a、12dから取得されるログの一例をそれぞれ、図8、図9に示す。また、本実施の形態におけるログ解析装置20によって実行されるログ解析処理の手順を示したフローチャートを図10に示す。図11は後に示す手順で図8、図9のログから抽出された部分ログ(対象部分ログおよび比較部分ログ)の一例を示すものである。また、図12は抽出された対象部分ログに注釈挿入部44によって注釈を挿入された一例を示す。
【0041】
図8、図9の例は、1周期あたり10バイトの監視制御データをこの周期を単位として示す時刻T1〜T10までの間で収集したものを表形式で示したものである。ログ内のデータはバイト単位で16進数表記している。同図の縦方向(表の各行)は監視制御データ内のデータ位置を示すバイトオフセットであり、横方向(表の各列)には時刻T1〜T10を示す。
図8のログデータについて、図4と対比して説明する。例えば、図4におけるデータDはデータ特性として「繰返し」であり、これは既に述べたように特定のパターンが繰り返されるデータであり、図8においてはバイトオフセット8のデータ列となる。図8では、「55」と「FF」を交互に繰返している。また、図4におけるデータEはデータ特性が「単調増加」であるが、これは8におけるバイトオフセット9のデータが該当する。図8の例ではT1における11(16進数)からT10における1A(16進数)まで増加している。
【0042】
次に、動作について説明する。
以下、図10に示すフローチャートを用いて、本実施の形態におけるログ解析装置20によって実行されるログ解析処理の手順を説明する。
図10のステップS1において、ユーザは入出力部60を用いて、監視制御データ一覧表31から解析対象となる監視制御データを選択して指定する。また、解析対象となる制御装置番号(または制御装置識別子)を指定する。ここでは、例として、図4に示す監視制御データ一覧表からデータBを、制御装置番号または識別子を用いて制御装置12aを指定したものとする。この時、1つの制御装置に対して複数のデータを選択することが可能である。
【0043】
ステップS2では、ログ比較装置特定部34が装置構成格納部33における装置構成データベースを用いて解析対象の装置と装置構成が類似する装置を特定する。この例では、ステップS1で選択されたデータBは図4において制御対象装置名として、ブレーキと紐付けがされている。ここで、図5において、制御装置12b〜12dは全てブレーキの個数が1であるため、ブレーキ以外の制御対象装置の個数により類似度を算出する(なお、ブレーキを含めても以下に述べる結果は同様である)。類似度の算出方法は図5の説明で用いた方法、すなわち、制御対象装置の有無が対象装置と一致する場合は1ポイント、個数も一致する場合はさらに2ポイント加算するものとする。類似度を算出した結果、この例では制御装置12dが最も類似度の高い制御装置となり、この場合制御装置12dが選択される。
【0044】
ステップS3において、ログ抽出部35によって、解析対象となる対象装置から対象ログ、対象装置と類似度が高いものとして選定された比較装置から比較ログの抽出を行う。この例では、対象装置である制御装置12aのログとして図8に示すログが対象ログとして抽出される。また、比較装置である制御装置12dのログとして図9に示すログが比較ログとして抽出される。
ステップS4において、部分ログ抽出部36により、対象ログから解析対象となる監視制御データの対象部分ログ、比較ログから同様に比較部分ログが抽出される。図8に示す対象ログおよび図9に示す比較ログから、図11に示すように対象部分ログ、比較部分ログが抽出される。図11においては部分ログデータのうち、上側(制御装置12a)が対象部分ログ、下側(制御装置12d)が比較部分ログを表す。
【0045】
次に、ステップS5において、ログ重要度挿入部37により、対象部分ログで重要度の高い部分に注釈を挿入する。この例では、データ特性が「ON/OFF」であるデータBを対象としているため、図7における重要度演算手段決定部41はこのデータ特性「ON/OFF」に対する重要度演算手段として時間比較演算手段51を選択する。
時間軸比較演算手段51は対象部分ログと比較部分ログを時間軸で比較する。図11における対象部分ログを、比較部分ログと比較することにより、立ち上がり時刻が制御装置12aはT5、制御装置12dはT2になっており、3周期分ずれていることがわかるため、上述の算出方法を用いて、重要度を「3」とする。また、ONである期間が制御装置12aは2周期、制御装置12dは8周期であり、制御装置12aは制御装置12dの25%の期間しかONになっていないことがわかる。これにより重要度は「4」となる。
【0046】
この例において、対象部分ログに注釈挿入部44によって注釈が挿入された結果を図12に示す。注釈挿入部44により、T5の前に重要度3の注釈が、T7の前に重要度4の注釈が、それぞれ挿入される。
ここで、ステップS1において、複数の監視制御データが選択された場合には、以上のステップS2〜S5の処理を繰り返すことにより、それぞれの監視制御データについて重要度の注釈が挿入される。
【0047】
次に、ステップS6において、ログ表示部29が重要度の高い順に注釈が挿入されたログの部分を抽出し、表示する。この例では、重要度をキーワードにログを検索し、重要度3と重要度4の2つのログを抽出し、ユーザには重要度の高い順に表示することができる。
また、ステップS1において複数の監視制御データが選択された場合には、以上のステップS2〜S6の処理我がそれぞれの監視制御データに対して繰返して実施される。これにより、複数の監視制御データに対して重要度を挿入され、ユーザに対して表示を行うことができる。
【0048】
以上述べたように、解析対象となる制御装置である対象装置と装置構成の類似度が高い制御装置を比較装置として特定し、対象装置および比較装置が出力したログから、同時刻または同期間に収集された対象部分ログおよび比較部分ログを抽出する。さらに、ログ重要度挿入部37により、監視制御データの特性に基づいて、対象部分ログを比較部分ログと比較し、重要度を部分ログに挿入する。
【0049】
以上の説明においては、ステップS4において部分ログ抽出部36が対象ログ、比較ログからそれぞれ対象部分ログ、比較部分ログを抽出する構成について示したが、これに限るものではない。すなわち、図3において、ログ抽出部35で抽出した結果に対して部分ログ抽出部36によって、対象部分ログ、比較部分ログを抽出する構成を説明したが、この部分ログ抽出部36を用いないで、ログ抽出部35が抽出した対象ログ、比較ログを用いてもよい。この場合は図10においてステップS4の工程を省略し、ステップS5において対象部分ログ、比較部分ログの代わりに、それぞれ対象ログ、比較ログについて重要度の高い部分に注釈を挿入するようにすればよい。また、これは本実施の形態に限らず、以降の実施の形態にも同様に当てはまる。
【0050】
本実施の形態によれば、分散制御システムのログを同時刻に収集された、装置構成の類似度の高い装置間で比較することにより、分散制御システムの中で動作条件が一致するか又は類似度が高いものについて、ログの差分を解析することが容易になる。差分については重要度を注釈として挿入することにより、ログの中で重要度の高い箇所を分散システムの解析を行うユーザが容易に識別することができるため、不具合の解析を効率的に行うことができる。
【0051】
実施の形態2.
この発明を実施するための実施の形態2におけるログ解析装置20の構成を図13に示す。
同図に示すように、本実施の形態では、実施の形態1における図3に示すログ解析装置20に構成に加えて、分散制御システム1のシステム試験における試験項目一覧表91および試験結果データベース92が追加される。その他の構成については図3と同様であるので、図3と同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
システム試験一覧表91の構成例を図14に示す。試験項目一覧表91は、システム試験における試験項目毎の試験項目番号、試験項目名、その試験項目で対象とする監視制御データ名称、試験対象となる監視制御データを発行する制御装置番号を含むテーブルである。
試験項目名としては、例えばシステム試験における試験対象となる機能の名称が用いられる。また、制御装置番号の代わりに制御装置識別子を用いてもよい。
【0053】
また、図14における制御装置番号としては、各制御装置に割り当てられた番号以外に「全」と指定することができる。この場合、全ての制御装置を対象とすることを意味する。例えば図14において、試験項目番号が1の場合で、データ名称がデータCであるものについて、この「全」の指定がされている。これは、分散制御システム1におけるすべての制御装置がこの監視制御データを発行する可能性があることを示す。例えば、ある制御装置が分散制御システム1におけるシステムの構成を問合せるために、各制御装置に問い合わせるデータなどがこの「全」と指定された監視制御データの例である。
ここで、試験項目一覧表91は、分散制御システム1の設計時、あるいはシステム試験設計時に予め定義されているものとする。
【0054】
試験結果データベース92は、システム試験項目毎の結果が格納されたデータベースであり、試験項目毎に、実施した結果(正常またはエラーなど)が含まれる。
【0055】
次に動作について説明する。
以下、図15に示すフローチャートを用いて、本実施の形態におけるログ解析装置20によって実行されるログ解析処理の手順を説明する。試験項目一覧表91としては図14に示すものを用いるものとする。
図15のステップS101において、ユーザは図14に示される試験項目一覧表91から、入出力部60を通じて、解析対象となる試験項目の試験項目番号を入力する。ここでは、例として、システム試験項目番号「1」が入力されたものとする。
【0056】
次に、ステップS102において、ログ解析対象指定部32により、指定されたシステム試験項目番号を試験結果データベース92について検索して試験結果がエラーとなったものを抽出する。複数の試験結果が抽出された場合には以下の手順を、抽出された試験結果それぞれについて実施する。
この例では、図14において制御装置番号1のデータAが、試験結果データベース92の検索の結果抽出されたものとする。
【0057】
ログ解析対象指定部32は、システム試験毎の監視制御データのうち、選択されたデータ名に対応する制御装置番号1と同じ装置番号を有する監視制御データを選択する。同じ装置番号を有する監視制御データとしては、試験項目番号が選択された「1」の中で、上述の装置番号が「全」である監視制御データも含まれる。
例えば、図14において、制御装置番号1のデータAが選択される場合には、データAとデータCが解析対象として選択される。以下、データAとデータCについて同様の手順で解析が行われる。
図15のステップS103〜S107は実施の形態1におけるステップS2〜S6と同様である。ステップS103では、実施の形態1と同様に、ログ比較装置特定部34により、解析対象の制御装置番号1と制御対象装置の構成の類似度が高い制御装置が特定される。
【0058】
ステップS104では、ログ抽出部35によって、解析対象となる対象装置から対象ログ、対象装置と類似度が高いものとして選定された比較装置から比較ログの抽出が行われる。
ステップS105では、部分ログ抽出部36により、対象ログから解析対象となる監視制御データの対象部分ログ、比較ログから同様に比較部分ログが抽出される。
次に、ステップS106では、ログ重要度挿入部37により、対象部分ログで重要度の高い部分に注釈が挿入される。
なお、実施の形態1で述べたように、上記のステップS105を省略し、ステップS104の結果得られた対象ログ、比較ログに対してステップS106を実施するように構成することもできる。
【0059】
次に、ステップS107において、ログ表示部29が重要度の高い順に注釈を抽出し、表示することにより、データAについての解析が行われる。
データCについても同様にステップS103〜S107に沿って解析が行われる。この場合データCは図14に示されるように、装置番号が「全」となっている。そのため、装置構成格納部33にあるすべての制御装置について順に、ステップS103において装置構成の類似度の高い装置が決定され、以下ステップS104〜S107において決定された装置に対して順にログの解析が行われる。
【0060】
以上述べたように、システム試験項目一覧表から解析対象となる試験項目および装置番号の指定を受け、対象となる装置番号と装置構成の類似度が高い制御装置のログとを比較して、ログに重要度を挿入する。
【0061】
本実施の形態によれば、分散制御システムのシステム試験の結果エラーとなった試験項目から解析対象となる制御装置、監視制御データを抽出することができる。これにより、システム試験においてエラーとなった監視制御データを発行した制御装置のログを、分散制御システムにおいて制御対象装置の構成が類似する制御装置のログと比較解析することができる。そのため、同一の条件で実行されたエラー発生時のログと正常動作時のログとを比較して、解析対象となるエラー発生時のログに重要度、重要度に基づく注釈を挿入することができる。これにより、システム試験の結果を利用して分散システムのログの解析を効率的に行うことができるため、システム試験、プログラムのデバッグを効率的に行うことができる。
【0062】
実施の形態3.
この発明を実施するための実施の形態3におけるログ重要度挿入部37の構成を図16に示す。
本実施の形態では、実施の形態1における図7に示すログ重要度挿入部37の構成に加えて、重要度加算手段111と重要装置一覧表112が含まれる。その他の構成については図7と同様であるので、図7と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
重要度加算手段111は、監視制御データ一覧表31における制御対象装置名を参照し、制御対象装置名が重要装置一覧表112に登録されていた場合、ログ重要度演算部42における各重要度演算手段51〜54で計算したログ重要度を加算するものである。重要装置として扱うものには、例えば安全に関わる装置が挙げられる。列車の制御装置の例では、ATS(自動列車停止装置)などの保安装置、あるいはブレーキ、モータといった運転制御装置が重要装置となり得る。また、分散制御システム1において安全に限らず、システムの動作上重要となるものを重要装置としておくものでもよい。
重要装置一覧表112は、制御対象装置のうち、重要度の高いとされる制御装置が登録されているテーブルであり、これは分散制御システム1について予め定義されているものとする。
【0064】
重要度の高い制御装置が発行したログについては、上述したように重要度を加算する。これにより、解析対象となる監視制御データの数が多い場合であっても、重要機器に関するログについては各重要度演算手段で与えた重要度を加算することから、優先的に解析を実行することになる。
【0065】
本実施の形態によれば、分散制御システムのログの解析に当たり、対象となるログに重要度を挿入し、しかも、重要機器として登録した制御装置については、重要度を加算することにより、重要機器とされたもの以外の制御装置よりも相対的に高い重要度を与えるようにすることができる。
本実施の形態におけるログ解析装置を用いることにより、監視制御データ量が膨大になった場合でも重要機器について優先的に解析を行うことができる。そのため、分散制御システムのログの解析を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
1 分散制御システム、11 制御ネットワーク、12a、12b、12c、12d、15a、15b 制御装置、14a、14b 制御対象装置、20 ログ解析装置、23 ログ収集部、24 ログ保存部、28 ログ解析部、31 監視制御データ一覧表、32 ログ解析対象指定部、33 装置構成格納部、34 ログ比較装置特定部、35 ログ抽出部、37 ログ重要度挿入部、41 重要度演算手段決定部、42 ログ重要度演算部、43 注釈生成部、44 注釈挿入部、51 時間軸比較演算手段、52 数値比較演算手段、53 単調増加判定演算手段、54 繰返し判定演算手段、60 入出力部、91 試験項目一覧表、92 試験結果データベース、111 重要度加算手段、112 重要装置一覧表。
【技術分野】
【0001】
この発明は、分散制御システムの不具合解析、システム試験を行うために、分散制御システムの監視制御処理の状況を記録したログを解析するログ解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分散制御システムの不具合解析、システム試験、プログラムのデバッグ等を行う場合に、システムにおける処理の状況を記録したログの解析手法として、正常動作時のログと異常動作時のログとを比較して相違部分を調査することにより、不具合の解析、エラー原因の分析、プログラムにおけるバグの原因を分析する手法が用いられている。
しかしながら、分散制御システムは、多数の制御装置がネットワークで接続され、各装置が連携して動作するため、システム全体のパラメータが多く、システム全体として同一条件の状態を再現することが困難である。
そのため、上に述べた手法のように、正常動作時のログと異常動作時のログとのデータの違いを単純に比較する手法では、両方の間の相違点が膨大となり、不具合解析、システム試験、デバッグ等を効率的に実施できない問題がある。
【0003】
従来のログ解析方法では、同一のプログラムを複数回繰返して実行することにより、複数のログを生成し、それらのログを比較し、発生するイベントの順序、データの違いによって、それぞれのログの特徴となるイベントに関する情報を出力する手法が用いられていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−203001号公報(第5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のログ解析装置を用いた解析では、同一プログラムを複数回実行し、特徴となるログを抽出していた。しかし、分散制御システムでは、プログラム実行中にシステム全体の条件が時々刻々と変化するため、複数回実行したプログラムのログが同一の条件で実行されるという保証がない。そのため、複数回実行した同一プログラムのログを解析しても、不具合の原因となる箇所の特定が困難であるという問題がある。
【0006】
この発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、分散制御システムにおける複数の制御装置で出力されたログを収集し、解析対象となる制御装置が制御対象とする制御対象装置の構成と、分散制御システム内で制御対象装置の構成の類似度が高い制御装置を比較対象の制御装置として抽出し、同一の時刻または同一の期間について収集されたログを解析対象となる制御装置の出力したログと、比較対象となる制御装置の出力したログとで比較し、比較した結果に基づいてその差異の重要度を演算し、解析対象となる制御装置が出力したログに重要度に応じて注釈を挿入するものである。これにより、上記2種類のログの間の差異となる箇所の特定を容易にし、不具合の原因解析を容易にするログ解析装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るログ解析装置は、監視制御処理状況を示すログを出力する制御装置がネットワークに複数台接続された分散制御システムの前記ログを解析するログ解析装置において、前記ログを収集し時刻情報を付して収集するログ収集部と、前記ログ収集部が収集したログを保存するログ保存部と、前記分散制御システムにおける監視制御データを定義した監視制御データ一覧表と、入力手段を介して解析対象となる制御装置を対象制御装置として指定し、前記監視制御データ一覧表から解析対象となる監視制御データを指定するログ解析対象指定部と、前記分散制御システムにおける制御装置の各々が制御対象とする制御対象装置の構成を格納する装置構成格納部と、前記装置構成格納部に格納される、前記対象制御装置以外の制御装置それぞれの制御対象装置の種類および数が、前記対象制御装置が制御対象とする制御対象装置の種類および数と一致するか否かにより類似度を算出し、前記類似度が最大となる制御装置を比較制御装置として特定するログ比較装置特定部と、前記ログ保存部から前記対象制御装置および前記比較制御装置が出力した前記時刻情報が一致するログをそれぞれ対象ログおよび比較ログとして抽出するログ抽出部と、前記対象ログおよび前記比較ログのデータを比較して前記対象ログの重要度を演算するログ重要度演算部と、前記ログ重要度演算部が演算した重要度を前記対象ログに挿入するログ重要度挿入部とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、複数台の制御装置のそれぞれが監視制御対象とする制御対象装置の構成を格納する装置構成格納部と、前記装置構成格納部に格納される制御装置のそれぞれについて、前記対象制御装置と、監視制御対象とする制御対象装置の構成の類似度を算出して類似度の高い制御装置を比較制御装置として特定するログ比較装置特定部と、前記ログ保存部から前記対象制御装置および前記比較制御装置の出力した前記時刻情報が一致するログをそれぞれ対象ログおよび比較ログとして抽出するログ抽出部と、前記対象ログおよび前記比較ログのデータを比較して重要度を演算するログ重要度演算部と、前記ログ重要度演算部が演算した重要度に応じた注釈を生成して、前記対象ログに挿入する注釈挿入部とを備えたので、同一条件で実行された異常動作した場合のログと、正常動作した場合のログとを比較し、ログの重要度を与えることにより、上記2つの場合のログの間の差異となる箇所の特定を容易にし、不具合の原因解析を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1におけるログ解析装置を分散制御システムに適用した場合のシステム全体の構成例を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるログ解析装置を分散制御システムに適用した場合のシステム全体の別の構成例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるログ解析装置のブロック構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1における監視制御データ一覧表の構成例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1における装置構成データベースの例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1における装置構成データベースの例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1におけるログ重要度挿入部の構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態1におけるログの例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1におけるログの例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態1におけるログ解析装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態1における部分ログの例を示す図である
【図12】この発明の実施の形態1における重要度が挿入されたログの例である。
【図13】この発明の実施の形態2におけるログ解析装置の構成を示すブロック図である。
【図14】この発明の実施の形態2における試験項目一覧表の例である。
【図15】この発明の実施の形態2におけるログ解析装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】この発明の実施の形態3におけるログ解析装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
この発明を実施するための実施の形態1におけるログ解析装置を分散制御システムに対して実施した場合のシステム全体の構成例を図1に示す。図において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、これは、明細書の全文において共通することである。
【0011】
図1において、ログ収集の対象となる分散制御システム1は、複数の制御装置12a、12b、・・・が制御ネットワーク11で接続されたものであり、制御ネットワーク11を介して相互に通信する。制御装置12aは入出力ネットワーク18aを介して制御対象装置14a、14b、・・・との間で監視制御データパケットを通信することにより監視制御を行う。同様に、制御装置12bは入出力ネットワーク18bを介して制御装置15a、15b、・・・との間で監視制御データパケットを通信することにより、監視制御を行う。監視制御データパケットは制御装置12a、12b、・・・の間で制御ネットワーク11を介して通信される。これにより、監視制御データが制御装置12a、12b、・・・で共有される。
【0012】
制御ネットワーク11における監視制御データパケットは所定の周期で制御装置12a、12b、・・・の間で相互に通信される。この所定の周期は例えば、100ミリ秒、1秒、など分散制御システム1の構成に応じて予め決定される。この所定の周期の1単位を以下においてTと表記する。
監視制御データパケットは1つまたは複数の監視制御データで構成される。
ログ解析装置20は、ログ収集用ネットワーク21a、21b、21c、・・・およびネットワーク中継装置22を介して、制御ネットワーク11、入出力ネットワーク18a、18bに接続され、監視制御データパケットを収集する。
【0013】
以下、説明の都合上、図1に示す構成を対象として説明する。すなわち、制御装置12a、12bが制御ネットワーク11で接続され、制御装置12aおよび12bはそれぞれ、入出力ネットワーク18aおよび18bを介して制御対象装置14a、14bおよび15a、15bの監視制御を行う。また、ログ収集用ネットワーク21a、21b、21c、21dにより監視制御データパケットがログ解析装置20に収集される。以下の説明は図示しない制御装置12c等、制御装置12c等が制御対象とする制御対象装置、また、ログ収集用ネットワーク21e等が分散制御システム1に含まれて構成された場合にも同様に当てはまる。
【0014】
図1において、ログ解析装置20は制御ネットワーク11において制御周期毎に発生する監視制御データパケットを収集し、収集時の時刻情報を付加する。監視制御データパケットに時刻情報を付加したものを以下「ログ」と呼ぶことにする。
ここで、ログ収集用ネットワーク21a、21b、21c、21dは例えばイーサネット(登録商標)、シリアル通信等の汎用的なネットワークを用いて構成される。
【0015】
図1とは別の構成例として、この発明を実施するための実施の形態1におけるログ解析装置20を分散制御システムに適用した場合のシステム全体の構成例を図2に示す。
同図において、制御装置12a、12bにはそれぞれ、ログ出力部19a、19bが備えられる。また、図2の構成例ではログ収集用ネットワーク21a、21bがそれぞれ、ログ出力部19a、19bに接続され、中継装置22、ログ収集用ネットワーク21cを介して監視制御データパケットが収集される。その他の構成については図1と同様であるので、図1と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施の形態におけるログ解析装置20のブロック構成を図3に示す。図3に示す構成は図1、図2のいずれの分散制御システムでも適用可能である。また、このことは特に明示しない限り、図3に限らず本明細書の以下の部分で示す構成において同様である。
【0016】
ログ解析装置20には、監視制御データパケットに収集時の時刻情報を付してログとして収集するログ収集部23、ログ収集部23が収集したログを記憶装置25に保存するログ保存部24、記憶装置25からログを取得してログの解析を行うログ解析部28、監視制御データを定義した監視制御データ一覧表31が含まれる。また、ログ解析装置20には、ログ解析部28による結果を出力するログ表示部29が備えられる。ログ解析装置20には分散制御システム1の不具合分析、システム試験等を行うユーザが解析対象となるログを指定し、また、解析対象となる制御装置番号または制御装置識別子を入力するための入出力部60が備えられる。指定されたログの情報、制御装置番号または識別子は入出力部60を通じてログ解析部28に伝達される。
【0017】
ここに、制御装置番号は分散制御システム1全体において個別となる番号が与えられるものとする。あるいは制御装置の識別子である場合も同様に、分散制御システム1全体において個別となるものとする。すなわち、制御装置番号あるいは識別子を指定すれば分散制御システム1において、制御装置がただ1つに特定されるものとする。
【0018】
監視制御データ一覧表31には、監視制御データの名称、データサイズ、監視制御データ位置、制御対象装置名、監視制御データの特性を定義したテーブルである。これは、分散制御システム1の設計時に定義される。
監視制御データの名称は文字列で記述される。
監視制御データ位置としては、例えば監視制御データパケットにおける先頭データからのバイトオフセットが記述される。なお、監視制御データ位置を示す方法はこれに限るものではない。バイトオフセットの代わりに、複数のバイト数を単位として、例えば2バイト、4バイト、8バイト等を単位として示すものでもよい。あるいは、監視制御データパケット内の個々のデータに一意な番号(インデックス番号)を付し、このインデックス番号を示すものであってもよい。
【0019】
制御対象装置名は、監視制御データと関連する制御対象装置の名称が文字列によって記述される。また、監視制御データによっては特定の制御対象装置と必ずしも対応していないログも含まれる。これは例えば、パケット全体の有効無効を示す情報などであり、この場合は制御対象装置名に「なし」と記述するものとする。
【0020】
監視制御データの特性は、監視制御データが取り得る特性の分類を示すものであり、例えば、「ON/OFF」、「繰返し」、「単調増加」、「数値」等の特性の分類が用いられる。「ON/OFF」は、監視制御データがON(1)とOFF(0)のいずれかの値を取る1ビットのデータであるときに指定する。「繰返し」は、監視制御データが時系列でみて特定のパターンが繰り返されるデータである。「単調増加」は、時間の経過と共に値が増加していくデータである。「数値」は上記いずれの分類にも属さない、いわゆる通常の数値データを示し、例えば温度、圧力などを示すアナログ値のデータである。
【0021】
監視制御データの特性についての以上の分類は例示であって、これら以外の分類によるものを用いてもよい。例えば、上記「単調増加」に対し、時刻ごとに値が減少する「単調減少」、所定の時間一定値を示す「一定値」などを用いることもできる。
図4に監視制御データ一覧表31の構成例を示す。同図においては、監視制御データ名称として5種類の監視制御データが定義されている。
【0022】
図3に示すように、ログ解析部28はその内部の構成として、ログ解析対象指定部32、装置構成格納部33、ログ比較装置特定部34、ログ抽出部35、部分ログ抽出部36、ログ重要度挿入部37、部分ログ記憶部40を有する。部分ログ記憶部40は記憶装置25に設けても、記憶装置25とは別の記憶装置に設けてもよい。
【0023】
ログ解析対象指定部32は、入出力部60を通じて、解析対象となるログとして監視制御データの指定、また、解析対象となる制御装置として、分散制御システム1における制御装置番号(または制御装置識別子)の指定の入力を受ける。解析対象となる監視制御データは、ログ解析装置20のユーザから入出力部60を通じて、監視制御データ一覧表31から監視制御データ名称を指定することにより行われる。このとき、複数の監視制御データを指定することができる。
【0024】
装置構成格納部33は、制御装置12a、12bのそれぞれが制御対象とする制御対象装置の名称と個数を管理する装置構成データベースを有する。
装置構成格納部33における装置構成データベースの構成例を図5に示す。同図に示すように、制御装置12a、12b、12c、12d(ここでは例示のため、制御装置12c、12dも含めて説明する)が列挙され、各制御装置について、制御対象となる制御対象装置の個数が示される。
【0025】
また、制御装置がいくつかの種類に予め分類されている場合は、その制御装置の分類に関する情報をデータベースに含めてもよい。分散制御システムの一形態として、例えば列車の搭載機器の制御を行う列車制御システムの場合には、モータ車、客車など、車種によって制御対象機器の構成が類似していることが多い。図6にグループ情報の例として車種を含んだ、装置構成格納部33のデータベースの構成を示す。同図に示すようにグループ情報の欄が追加され、制御装置12a、12dがモータ車、制御装置12b、12cが客車とされる。このように構成することにより、解析対象の制御装置と同じグループに属する制御装置の特定が容易となる。
【0026】
図3において、ログ比較装置特定部34は、ログ解析対象指定部32において指定された制御装置と、装置構成格納部33に格納された制御装置との間の類似度を算出して、類似度の最も高い制御装置の特定を行う。ここで、制御装置の間の類似度は、各制御装置が監視制御対象とする、制御対象装置の種別ごとの有無とそれぞれの個数により決定する。
類似度の算出方法の例について図5を用いて説明する。制御装置12aを対象として選択した場合に、制御装置12b〜12dについて類似度を算出するものとする。
【0027】
類似度は、例えば、制御対象装置の有無が解析対象となる制御装置と一致する場合は1ポイント、個数も一致する場合はさらに2ポイント加算するものとし、全ての制御対象装置の合計により算出する。この例では、制御装置12b、12cはいずれも7ポイント、制御装置12dは12ポイントである。ここに挙げた類似度の算出方法は例示であって、これ以外の算出方法を採用することもできる。例えば、制御対象装置の仕様として異なるもの(例えば、ブレーキに仕様A、仕様Bの2種類ある場合)を用いている場合は仕様の一致についても類似度の算出に採用することも可能である。
以下、ログ解析対象指定部32において指定された制御装置を対象装置、ログ比較装置特定部34で特定された制御装置を比較装置とよぶことにする。
【0028】
なお、上記の例では、比較装置は対象装置と類似度が最も高いものを選択するようにしたがこれに限るものではない。例えば、類似度が高い方から複数の制御装置を比較装置として選定しておき、以下に示す手順を用いて、それぞれの比較装置について、対象装置とログの比較を行うようにしてもよい。
複数の比較装置を選定して比較し、それらの結果を合わせて用いることで、ログ解析の精度を上げることができる。
【0029】
ログ抽出部35は、収集されたログから、対象装置のログと比較装置のログを抽出する。抽出するログは、時刻情報を検索することにより並列実行された同時刻または同期間の制御装置のログが抽出されるものとする。ここで、ログ抽出部35によって抽出された対象装置のログを対象ログ、比較装置のログを比較ログとよぶことにする。
部分ログ抽出部36は、対象ログおよび比較ログそれぞれの中から、ログ解析対象指定部32で監視制御データ一覧表31から指定された監視制御データのログを抽出し、部分ログとする。また、部分ログ抽出部36は抽出した部分ログを部分ログ記憶部40に記録する。ここで、対象ログから抽出された部分ログを対象部分ログ、比較ログから抽出された部分ログを比較部分ログとよぶ。
【0030】
ログ重要度挿入部37は、部分ログ抽出部36で抽出された部分ログに含まれる、対象部分ログについて、イベント発生の有無、データの立ち上がりから立ち下がりまでの時間間隔の差分、データの立ち上がり時間のタイミングのずれ等を重要度に変換し、対象部分ログ内に注釈として挿入する。
ログ表示部29は、ログ重要度挿入部37で挿入した注釈の中から、重要度の高い順に注釈を抽出し表示する。あるいは、ログ表示部29は時系列順に部分ログを注釈と共に表示するものであってもよく、ユーザからの入力に応じて表示形式の変更ができる。
また、ログ表示部29は単に部分ログを抽出して示すものではなく、注釈または重要度が挿入されたログの全体を表示するものであってもよい。
【0031】
本実施の形態におけるログ解析装置20の中で、ログ重要度挿入部37の詳細構成をブロック図として図7に示す。同図に示すように、ログ重要度挿入部37は、重要度演算手段決定部41、ログ重要度演算部42、注釈生成部43、注釈挿入部44を有する。
ログ重要度演算部42は、部分ログ抽出部36によって抽出された部分ログ(対象部分ログおよび比較部分ログ)を解析して、重要度を演算する。ログ重要度演算部42には重要度演算のための複数の重要度演算手段が格納される。重要度演算手段とは例えば、図7に示すように時間軸比較演算手段51、数値比較演算手段52、単調増加判定演算手段53、繰返し判定演算手段54などが含まれる。図7に示されるものは例示であってこれに限るものではない。対象となる分散制御システム1における監視制御データの種類、特性等によって追加、削除が可能である。例えば、図7に示される重要度演算手段以外に、単調減少判定演算手段、などを含むものでもよい。
【0032】
重要度演算手段決定部41は、ログ重要度演算部42に含まれるこれらの重要度演算手段から、ログ重要度演算部42で使用する重要度演算手段を選択して特定する。この際には重要度演算手段決定部41が監視制御データ一覧表31に記述された監視制御データの特性の情報を用いて決定する。また、重要度演算手段決定部41において、監視制御データのデータ特性と、ログ重要度演算部42で保有する重要度演算手段との対応表を備えて置き、この対応表を用いて重要度演算手段を選択する構成とすることもできる。
【0033】
以下、図7に示すログ重要度演算部42を例として説明する。
時間軸比較演算手段51は、対象部分ログと比較部分ログとを時間軸上で比較し、データが変化する時間、継続時間等の情報を用いて重要度を演算する。これは主として、監視制御データがON/OFFのいずれかを取る場合に使用される。対象部分ログを比較部分ログと比較し、データの立ち上がり時刻、立ち下がり時刻、ON(1)状態またはOFF(0)状態の継続時間を算出する。データの立ち上がりまたは立ち下がりのイベントが比較する一方の部分ログにしか存在しない場合、重要度を「5(最大値)」とする。
ここで、重要度の値は例示であってこれに限るものではない。これは以下の重要度についても同様である。
【0034】
データの立ち上がり時刻が、対象部分ログが比較部分ログと比較して、5周期以上ずれている場合に重要度を「4」とする。あるいは、ON時間が比較ログと比べて50%未満の場合は重要度を「4」とする。データの立ち上がりが2周期以上5周期未満ずれている場合、またはON時間が比較ログと比べて50%以上80%未満の場合は重要度を「3」とする。
この時刻の周期のずれと重要度の値についても例示であってこれに限るものではない。例えば、変化が緩やかな監視制御データについては、重要度として高いとするための周期を大きな値(例えば、20周期、50周期等)としておくことも可能である。
このように、これらの周期と重要度の値およびその関係を示す指標は解析の対象となる分散制御システム1の特性、監視制御データのデータの特性等に応じて設定可能である。また、このことは以下の重要度演算手段が使用する比較の指標、重要度の設定値についても同様に当てはまる。
【0035】
数値比較演算手段52では、各時刻における対象部分ログの数値を比較部分ログの数値と比較し、その差分から重要度を演算する。例えば、対象部分ログ、比較部分ログの一方のみが0であり、他方がゼロ以外の数値である場合は重要度を「5」とする。
対象部分ログ、比較部分ログにおけるデータの数値が両方とも0でない場合は、大きい方の数値を小さい方の数値で除算した商を計算し、200%以上であれば重要度を「4」とする。150%以上200%未満であれば重要度を「3」などとする。以下、商が120%以上150%未満の場合重要度「2」、120%未満の場合重要度「1」とする。あるいは100%より大きく150%より小さい場合重要度「2」、100%の場合重要度「1」というものであってもよい。これら重要度として設定する値は、監視制御データの種類と特性に応じて選択される。
【0036】
単調増加判定演算手段53は、監視制御データ一覧表31における監視制御データの特性が「単調増加」とされている場合にその監視データから得られた部分ログに対して適用される。これは、所定の期間(すなわち単位周期Tの整数倍、例えば10T、100Tなどが選択される)における対象部分ログまたは比較部分ログにおける、データの増加量が一定であるか否かを判定して両者の比較を行い、重要度を算出するものである。単調増加していないと判定した場合は重要度を「5」とする。また、対象部分ログと比較部分ログとで、対象となる監視制御データの値が単調増加している期間(例えば期間10Tで単調増加していれば10となる)の平均値が、50%以上異なる場合は重要度を「4」とする。また、標準偏差等の統計学的手法を用いて周期ごとの増加分のばらつきを計算し、ばらつき度合いが大きい時に重要度を大きくするなどの手法とすることもできる。
【0037】
繰返し判定演算手段54は、上述の監視周期データの特性が「繰返し」である場合に適用される。監視制御データの値の変化の繰返し周期が一定であるか否かを判定して、重要度を演算する。データの値の変化が繰返しのパターンになっていない場合は重要度を「5」とし、繰返しの期間の平均値が対象部分ログと比較部分ログとで50%以上異なる場合は重要度を「4」とする。
【0038】
以上述べたように、図7に示したログ重要度挿入部37の構成においては、重要度演算手段決定部41が、監視制御データ一覧表31に定義された監視データの特性に基づき、ログ重要度演算部42で使用する重要度演算手段を決定するものである。
ログ重要度挿入部37の構成はこれに限るものではなく、例えば温度の値を示す温度データなど、データの種類を監視制御データ一覧表31に定義しておき、データの種類に応じて重要度演算手段を選択するように構成することも可能である。例えば、この「温度データ」という特性を監視制御データ一覧表31で定義する場合、温度による重要度算出手段をログ重要度演算部42に備えておき、温度データについては所定の計算方法を用いて、例えば−20℃以下を重要度「5」とするなどの構成とすることもできる。
【0039】
図7において、注釈生成部43は、ログ重要度演算部42が演算した重要度に基づいて注釈を生成する。ここで、生成する注釈は、分散制御システム1の設計時に監視制御データの種類毎に、重要度に応じて予め設定しておき、注釈生成部43に保有させておく。注釈挿入部44は注釈生成部43で生成された注釈を対象部分ログに挿入するものである。
なお、図7においては注釈生成部43、注釈挿入部44とが分離した構成を示したが、注釈挿入部44が注釈の生成と対象部分ログへの挿入の両方を行うものであってもよい。
【0040】
次に図4、図5および図8〜図12を用いて、本実施の形態におけるログ解析装置20の動作を説明する。
図5で示した、装置構成格納部33が有する装置構成データベースで示される制御装置12a、12dから取得されるログの一例をそれぞれ、図8、図9に示す。また、本実施の形態におけるログ解析装置20によって実行されるログ解析処理の手順を示したフローチャートを図10に示す。図11は後に示す手順で図8、図9のログから抽出された部分ログ(対象部分ログおよび比較部分ログ)の一例を示すものである。また、図12は抽出された対象部分ログに注釈挿入部44によって注釈を挿入された一例を示す。
【0041】
図8、図9の例は、1周期あたり10バイトの監視制御データをこの周期を単位として示す時刻T1〜T10までの間で収集したものを表形式で示したものである。ログ内のデータはバイト単位で16進数表記している。同図の縦方向(表の各行)は監視制御データ内のデータ位置を示すバイトオフセットであり、横方向(表の各列)には時刻T1〜T10を示す。
図8のログデータについて、図4と対比して説明する。例えば、図4におけるデータDはデータ特性として「繰返し」であり、これは既に述べたように特定のパターンが繰り返されるデータであり、図8においてはバイトオフセット8のデータ列となる。図8では、「55」と「FF」を交互に繰返している。また、図4におけるデータEはデータ特性が「単調増加」であるが、これは8におけるバイトオフセット9のデータが該当する。図8の例ではT1における11(16進数)からT10における1A(16進数)まで増加している。
【0042】
次に、動作について説明する。
以下、図10に示すフローチャートを用いて、本実施の形態におけるログ解析装置20によって実行されるログ解析処理の手順を説明する。
図10のステップS1において、ユーザは入出力部60を用いて、監視制御データ一覧表31から解析対象となる監視制御データを選択して指定する。また、解析対象となる制御装置番号(または制御装置識別子)を指定する。ここでは、例として、図4に示す監視制御データ一覧表からデータBを、制御装置番号または識別子を用いて制御装置12aを指定したものとする。この時、1つの制御装置に対して複数のデータを選択することが可能である。
【0043】
ステップS2では、ログ比較装置特定部34が装置構成格納部33における装置構成データベースを用いて解析対象の装置と装置構成が類似する装置を特定する。この例では、ステップS1で選択されたデータBは図4において制御対象装置名として、ブレーキと紐付けがされている。ここで、図5において、制御装置12b〜12dは全てブレーキの個数が1であるため、ブレーキ以外の制御対象装置の個数により類似度を算出する(なお、ブレーキを含めても以下に述べる結果は同様である)。類似度の算出方法は図5の説明で用いた方法、すなわち、制御対象装置の有無が対象装置と一致する場合は1ポイント、個数も一致する場合はさらに2ポイント加算するものとする。類似度を算出した結果、この例では制御装置12dが最も類似度の高い制御装置となり、この場合制御装置12dが選択される。
【0044】
ステップS3において、ログ抽出部35によって、解析対象となる対象装置から対象ログ、対象装置と類似度が高いものとして選定された比較装置から比較ログの抽出を行う。この例では、対象装置である制御装置12aのログとして図8に示すログが対象ログとして抽出される。また、比較装置である制御装置12dのログとして図9に示すログが比較ログとして抽出される。
ステップS4において、部分ログ抽出部36により、対象ログから解析対象となる監視制御データの対象部分ログ、比較ログから同様に比較部分ログが抽出される。図8に示す対象ログおよび図9に示す比較ログから、図11に示すように対象部分ログ、比較部分ログが抽出される。図11においては部分ログデータのうち、上側(制御装置12a)が対象部分ログ、下側(制御装置12d)が比較部分ログを表す。
【0045】
次に、ステップS5において、ログ重要度挿入部37により、対象部分ログで重要度の高い部分に注釈を挿入する。この例では、データ特性が「ON/OFF」であるデータBを対象としているため、図7における重要度演算手段決定部41はこのデータ特性「ON/OFF」に対する重要度演算手段として時間比較演算手段51を選択する。
時間軸比較演算手段51は対象部分ログと比較部分ログを時間軸で比較する。図11における対象部分ログを、比較部分ログと比較することにより、立ち上がり時刻が制御装置12aはT5、制御装置12dはT2になっており、3周期分ずれていることがわかるため、上述の算出方法を用いて、重要度を「3」とする。また、ONである期間が制御装置12aは2周期、制御装置12dは8周期であり、制御装置12aは制御装置12dの25%の期間しかONになっていないことがわかる。これにより重要度は「4」となる。
【0046】
この例において、対象部分ログに注釈挿入部44によって注釈が挿入された結果を図12に示す。注釈挿入部44により、T5の前に重要度3の注釈が、T7の前に重要度4の注釈が、それぞれ挿入される。
ここで、ステップS1において、複数の監視制御データが選択された場合には、以上のステップS2〜S5の処理を繰り返すことにより、それぞれの監視制御データについて重要度の注釈が挿入される。
【0047】
次に、ステップS6において、ログ表示部29が重要度の高い順に注釈が挿入されたログの部分を抽出し、表示する。この例では、重要度をキーワードにログを検索し、重要度3と重要度4の2つのログを抽出し、ユーザには重要度の高い順に表示することができる。
また、ステップS1において複数の監視制御データが選択された場合には、以上のステップS2〜S6の処理我がそれぞれの監視制御データに対して繰返して実施される。これにより、複数の監視制御データに対して重要度を挿入され、ユーザに対して表示を行うことができる。
【0048】
以上述べたように、解析対象となる制御装置である対象装置と装置構成の類似度が高い制御装置を比較装置として特定し、対象装置および比較装置が出力したログから、同時刻または同期間に収集された対象部分ログおよび比較部分ログを抽出する。さらに、ログ重要度挿入部37により、監視制御データの特性に基づいて、対象部分ログを比較部分ログと比較し、重要度を部分ログに挿入する。
【0049】
以上の説明においては、ステップS4において部分ログ抽出部36が対象ログ、比較ログからそれぞれ対象部分ログ、比較部分ログを抽出する構成について示したが、これに限るものではない。すなわち、図3において、ログ抽出部35で抽出した結果に対して部分ログ抽出部36によって、対象部分ログ、比較部分ログを抽出する構成を説明したが、この部分ログ抽出部36を用いないで、ログ抽出部35が抽出した対象ログ、比較ログを用いてもよい。この場合は図10においてステップS4の工程を省略し、ステップS5において対象部分ログ、比較部分ログの代わりに、それぞれ対象ログ、比較ログについて重要度の高い部分に注釈を挿入するようにすればよい。また、これは本実施の形態に限らず、以降の実施の形態にも同様に当てはまる。
【0050】
本実施の形態によれば、分散制御システムのログを同時刻に収集された、装置構成の類似度の高い装置間で比較することにより、分散制御システムの中で動作条件が一致するか又は類似度が高いものについて、ログの差分を解析することが容易になる。差分については重要度を注釈として挿入することにより、ログの中で重要度の高い箇所を分散システムの解析を行うユーザが容易に識別することができるため、不具合の解析を効率的に行うことができる。
【0051】
実施の形態2.
この発明を実施するための実施の形態2におけるログ解析装置20の構成を図13に示す。
同図に示すように、本実施の形態では、実施の形態1における図3に示すログ解析装置20に構成に加えて、分散制御システム1のシステム試験における試験項目一覧表91および試験結果データベース92が追加される。その他の構成については図3と同様であるので、図3と同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
システム試験一覧表91の構成例を図14に示す。試験項目一覧表91は、システム試験における試験項目毎の試験項目番号、試験項目名、その試験項目で対象とする監視制御データ名称、試験対象となる監視制御データを発行する制御装置番号を含むテーブルである。
試験項目名としては、例えばシステム試験における試験対象となる機能の名称が用いられる。また、制御装置番号の代わりに制御装置識別子を用いてもよい。
【0053】
また、図14における制御装置番号としては、各制御装置に割り当てられた番号以外に「全」と指定することができる。この場合、全ての制御装置を対象とすることを意味する。例えば図14において、試験項目番号が1の場合で、データ名称がデータCであるものについて、この「全」の指定がされている。これは、分散制御システム1におけるすべての制御装置がこの監視制御データを発行する可能性があることを示す。例えば、ある制御装置が分散制御システム1におけるシステムの構成を問合せるために、各制御装置に問い合わせるデータなどがこの「全」と指定された監視制御データの例である。
ここで、試験項目一覧表91は、分散制御システム1の設計時、あるいはシステム試験設計時に予め定義されているものとする。
【0054】
試験結果データベース92は、システム試験項目毎の結果が格納されたデータベースであり、試験項目毎に、実施した結果(正常またはエラーなど)が含まれる。
【0055】
次に動作について説明する。
以下、図15に示すフローチャートを用いて、本実施の形態におけるログ解析装置20によって実行されるログ解析処理の手順を説明する。試験項目一覧表91としては図14に示すものを用いるものとする。
図15のステップS101において、ユーザは図14に示される試験項目一覧表91から、入出力部60を通じて、解析対象となる試験項目の試験項目番号を入力する。ここでは、例として、システム試験項目番号「1」が入力されたものとする。
【0056】
次に、ステップS102において、ログ解析対象指定部32により、指定されたシステム試験項目番号を試験結果データベース92について検索して試験結果がエラーとなったものを抽出する。複数の試験結果が抽出された場合には以下の手順を、抽出された試験結果それぞれについて実施する。
この例では、図14において制御装置番号1のデータAが、試験結果データベース92の検索の結果抽出されたものとする。
【0057】
ログ解析対象指定部32は、システム試験毎の監視制御データのうち、選択されたデータ名に対応する制御装置番号1と同じ装置番号を有する監視制御データを選択する。同じ装置番号を有する監視制御データとしては、試験項目番号が選択された「1」の中で、上述の装置番号が「全」である監視制御データも含まれる。
例えば、図14において、制御装置番号1のデータAが選択される場合には、データAとデータCが解析対象として選択される。以下、データAとデータCについて同様の手順で解析が行われる。
図15のステップS103〜S107は実施の形態1におけるステップS2〜S6と同様である。ステップS103では、実施の形態1と同様に、ログ比較装置特定部34により、解析対象の制御装置番号1と制御対象装置の構成の類似度が高い制御装置が特定される。
【0058】
ステップS104では、ログ抽出部35によって、解析対象となる対象装置から対象ログ、対象装置と類似度が高いものとして選定された比較装置から比較ログの抽出が行われる。
ステップS105では、部分ログ抽出部36により、対象ログから解析対象となる監視制御データの対象部分ログ、比較ログから同様に比較部分ログが抽出される。
次に、ステップS106では、ログ重要度挿入部37により、対象部分ログで重要度の高い部分に注釈が挿入される。
なお、実施の形態1で述べたように、上記のステップS105を省略し、ステップS104の結果得られた対象ログ、比較ログに対してステップS106を実施するように構成することもできる。
【0059】
次に、ステップS107において、ログ表示部29が重要度の高い順に注釈を抽出し、表示することにより、データAについての解析が行われる。
データCについても同様にステップS103〜S107に沿って解析が行われる。この場合データCは図14に示されるように、装置番号が「全」となっている。そのため、装置構成格納部33にあるすべての制御装置について順に、ステップS103において装置構成の類似度の高い装置が決定され、以下ステップS104〜S107において決定された装置に対して順にログの解析が行われる。
【0060】
以上述べたように、システム試験項目一覧表から解析対象となる試験項目および装置番号の指定を受け、対象となる装置番号と装置構成の類似度が高い制御装置のログとを比較して、ログに重要度を挿入する。
【0061】
本実施の形態によれば、分散制御システムのシステム試験の結果エラーとなった試験項目から解析対象となる制御装置、監視制御データを抽出することができる。これにより、システム試験においてエラーとなった監視制御データを発行した制御装置のログを、分散制御システムにおいて制御対象装置の構成が類似する制御装置のログと比較解析することができる。そのため、同一の条件で実行されたエラー発生時のログと正常動作時のログとを比較して、解析対象となるエラー発生時のログに重要度、重要度に基づく注釈を挿入することができる。これにより、システム試験の結果を利用して分散システムのログの解析を効率的に行うことができるため、システム試験、プログラムのデバッグを効率的に行うことができる。
【0062】
実施の形態3.
この発明を実施するための実施の形態3におけるログ重要度挿入部37の構成を図16に示す。
本実施の形態では、実施の形態1における図7に示すログ重要度挿入部37の構成に加えて、重要度加算手段111と重要装置一覧表112が含まれる。その他の構成については図7と同様であるので、図7と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
重要度加算手段111は、監視制御データ一覧表31における制御対象装置名を参照し、制御対象装置名が重要装置一覧表112に登録されていた場合、ログ重要度演算部42における各重要度演算手段51〜54で計算したログ重要度を加算するものである。重要装置として扱うものには、例えば安全に関わる装置が挙げられる。列車の制御装置の例では、ATS(自動列車停止装置)などの保安装置、あるいはブレーキ、モータといった運転制御装置が重要装置となり得る。また、分散制御システム1において安全に限らず、システムの動作上重要となるものを重要装置としておくものでもよい。
重要装置一覧表112は、制御対象装置のうち、重要度の高いとされる制御装置が登録されているテーブルであり、これは分散制御システム1について予め定義されているものとする。
【0064】
重要度の高い制御装置が発行したログについては、上述したように重要度を加算する。これにより、解析対象となる監視制御データの数が多い場合であっても、重要機器に関するログについては各重要度演算手段で与えた重要度を加算することから、優先的に解析を実行することになる。
【0065】
本実施の形態によれば、分散制御システムのログの解析に当たり、対象となるログに重要度を挿入し、しかも、重要機器として登録した制御装置については、重要度を加算することにより、重要機器とされたもの以外の制御装置よりも相対的に高い重要度を与えるようにすることができる。
本実施の形態におけるログ解析装置を用いることにより、監視制御データ量が膨大になった場合でも重要機器について優先的に解析を行うことができる。そのため、分散制御システムのログの解析を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
1 分散制御システム、11 制御ネットワーク、12a、12b、12c、12d、15a、15b 制御装置、14a、14b 制御対象装置、20 ログ解析装置、23 ログ収集部、24 ログ保存部、28 ログ解析部、31 監視制御データ一覧表、32 ログ解析対象指定部、33 装置構成格納部、34 ログ比較装置特定部、35 ログ抽出部、37 ログ重要度挿入部、41 重要度演算手段決定部、42 ログ重要度演算部、43 注釈生成部、44 注釈挿入部、51 時間軸比較演算手段、52 数値比較演算手段、53 単調増加判定演算手段、54 繰返し判定演算手段、60 入出力部、91 試験項目一覧表、92 試験結果データベース、111 重要度加算手段、112 重要装置一覧表。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視制御処理状況を示すログを出力する制御装置がネットワークに複数台接続された分散制御システムの前記ログを解析するログ解析装置において、
前記ログを収集し時刻情報を付して収集するログ収集部と、
前記ログ収集部が収集したログを保存するログ保存部と、
前記分散制御システムにおける監視制御データを定義した監視制御データ一覧表と、
入力手段を介して解析対象となる制御装置を対象制御装置として指定し、前記監視制御データ一覧表から解析対象となる監視制御データを指定するログ解析対象指定部と、
前記分散制御システムにおける制御装置の各々が制御対象とする制御対象装置の構成を格納する装置構成格納部と、
前記装置構成格納部に格納される、前記対象制御装置以外の制御装置それぞれの制御対象装置の種類および数が、前記対象制御装置が制御対象とする制御対象装置の種類および数と一致するか否かにより類似度を算出し、前記類似度が最大となる制御装置を比較制御装置として特定するログ比較装置特定部と、
前記ログ保存部から前記対象制御装置および前記比較制御装置が出力した前記時刻情報が一致するログをそれぞれ対象ログおよび比較ログとして抽出するログ抽出部と、
前記対象ログおよび前記比較ログのデータを比較して前記対象ログの重要度を演算するログ重要度演算部と、
前記ログ重要度演算部が演算した重要度を前記対象ログに挿入するログ重要度挿入部とを備えたことを特徴とするログ解析装置。
【請求項2】
監視制御データ一覧表は、監視制御データの特性を示す特性情報を含み、
ログ重要度演算部は、複数種類のログ重要度演算手段と、
前記特性情報を基に、前記複数種類のログ重要度演算手段の中から前記監視制御データの重要度を算出するのに使用するログ重要度演算手段を決定する重要度演算手段決定部とを備えたことを特徴とする請求項1記載のログ解析装置。
【請求項3】
ログ重要度演算部は、対象ログおよび比較ログの変化について時刻情報を基に時間軸上での比較を行って重要度を演算する時間軸比較演算手段と、
前記時刻情報を基に各時刻における前記対象ログおよび前記比較ログの数値を比較して前記重要度を演算する数値比較演算手段と、
前記時刻情報を基に時間の推移に伴う前記対象ログのデータの増分および前記比較ログのデータの増分が等しいか否かにより、又は前記対象ログおよび前記比較ログのデータが増加している期間の長さの比を算出することにより前記重要度を演算する単調増加判定演算手段と、
前記対象ログおよび前記比較ログのデータが所定の周期でそれぞれ同じ変化パターンを繰り返すものであるか否かにより前記重要度を演算する繰返し判定演算手段と、
を備えたことを特徴とする請求項2記載のログ解析装置。
【請求項4】
ログ比較装置特定部は、類似度が最大となる制御装置の代わりに、類似度が高いものから複数台の制御装置を比較制御装置として特定することを特徴とする請求項1記載のログ解析装置。
【請求項5】
ログ重要度挿入部は、ログ重要度演算部が演算した重要度に基づいて、監視制御データ毎に注釈を生成して、対象ログに挿入する注釈挿入部を備えたことを特徴とする請求項1記載のログ解析装置。
【請求項6】
分散制御システムのシステム試験における試験項目、前記試験項目に対応する監視制御データおよび制御装置の番号を含む試験項目一覧表と、
前記システム試験の結果を格納した試験結果データベースとを備え、
ログ解析対象指定部は、入力手段を通じて前記試験項目一覧表から指定された試験項目の入力を受け、前記試験項目について前記試験結果データベースから結果がエラーとなった監視制御データおよび制御装置をそれぞれ解析対象となる監視制御データおよび対象制御装置として指定することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のログ解析装置。
【請求項7】
分散制御システムにおける重要な制御装置として分類された前記制御装置を定義する重要装置一覧表を備え、
ログ重要度演算部は、対象制御装置が前記重要装置一覧表に含まれる場合には、複数のログ重要度演算手段で演算した重要度を加算して対象ログの重要度とする重要度加算手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のログ解析装置。
【請求項8】
対象ログをログ重要度挿入部が挿入した重要度の順に入出力部を介して出力することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載のログ解析装置。
【請求項1】
監視制御処理状況を示すログを出力する制御装置がネットワークに複数台接続された分散制御システムの前記ログを解析するログ解析装置において、
前記ログを収集し時刻情報を付して収集するログ収集部と、
前記ログ収集部が収集したログを保存するログ保存部と、
前記分散制御システムにおける監視制御データを定義した監視制御データ一覧表と、
入力手段を介して解析対象となる制御装置を対象制御装置として指定し、前記監視制御データ一覧表から解析対象となる監視制御データを指定するログ解析対象指定部と、
前記分散制御システムにおける制御装置の各々が制御対象とする制御対象装置の構成を格納する装置構成格納部と、
前記装置構成格納部に格納される、前記対象制御装置以外の制御装置それぞれの制御対象装置の種類および数が、前記対象制御装置が制御対象とする制御対象装置の種類および数と一致するか否かにより類似度を算出し、前記類似度が最大となる制御装置を比較制御装置として特定するログ比較装置特定部と、
前記ログ保存部から前記対象制御装置および前記比較制御装置が出力した前記時刻情報が一致するログをそれぞれ対象ログおよび比較ログとして抽出するログ抽出部と、
前記対象ログおよび前記比較ログのデータを比較して前記対象ログの重要度を演算するログ重要度演算部と、
前記ログ重要度演算部が演算した重要度を前記対象ログに挿入するログ重要度挿入部とを備えたことを特徴とするログ解析装置。
【請求項2】
監視制御データ一覧表は、監視制御データの特性を示す特性情報を含み、
ログ重要度演算部は、複数種類のログ重要度演算手段と、
前記特性情報を基に、前記複数種類のログ重要度演算手段の中から前記監視制御データの重要度を算出するのに使用するログ重要度演算手段を決定する重要度演算手段決定部とを備えたことを特徴とする請求項1記載のログ解析装置。
【請求項3】
ログ重要度演算部は、対象ログおよび比較ログの変化について時刻情報を基に時間軸上での比較を行って重要度を演算する時間軸比較演算手段と、
前記時刻情報を基に各時刻における前記対象ログおよび前記比較ログの数値を比較して前記重要度を演算する数値比較演算手段と、
前記時刻情報を基に時間の推移に伴う前記対象ログのデータの増分および前記比較ログのデータの増分が等しいか否かにより、又は前記対象ログおよび前記比較ログのデータが増加している期間の長さの比を算出することにより前記重要度を演算する単調増加判定演算手段と、
前記対象ログおよび前記比較ログのデータが所定の周期でそれぞれ同じ変化パターンを繰り返すものであるか否かにより前記重要度を演算する繰返し判定演算手段と、
を備えたことを特徴とする請求項2記載のログ解析装置。
【請求項4】
ログ比較装置特定部は、類似度が最大となる制御装置の代わりに、類似度が高いものから複数台の制御装置を比較制御装置として特定することを特徴とする請求項1記載のログ解析装置。
【請求項5】
ログ重要度挿入部は、ログ重要度演算部が演算した重要度に基づいて、監視制御データ毎に注釈を生成して、対象ログに挿入する注釈挿入部を備えたことを特徴とする請求項1記載のログ解析装置。
【請求項6】
分散制御システムのシステム試験における試験項目、前記試験項目に対応する監視制御データおよび制御装置の番号を含む試験項目一覧表と、
前記システム試験の結果を格納した試験結果データベースとを備え、
ログ解析対象指定部は、入力手段を通じて前記試験項目一覧表から指定された試験項目の入力を受け、前記試験項目について前記試験結果データベースから結果がエラーとなった監視制御データおよび制御装置をそれぞれ解析対象となる監視制御データおよび対象制御装置として指定することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のログ解析装置。
【請求項7】
分散制御システムにおける重要な制御装置として分類された前記制御装置を定義する重要装置一覧表を備え、
ログ重要度演算部は、対象制御装置が前記重要装置一覧表に含まれる場合には、複数のログ重要度演算手段で演算した重要度を加算して対象ログの重要度とする重要度加算手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のログ解析装置。
【請求項8】
対象ログをログ重要度挿入部が挿入した重要度の順に入出力部を介して出力することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載のログ解析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図11】
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【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−203431(P2012−203431A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64440(P2011−64440)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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