説明

ロジック回路及び携帯端末装置

【課題】DVDD系ロジック回路とRVDD系ロジック回路との間のアイソレートを実施しながら、小型化及び低コスト化を実現する。
【解決手段】第一のデジタル回路と第二のデジタル回路とを含むロジック回路であって、第一のデジタル回路の動作電圧である第一の電圧値を検出する第一の検出手段と、第二のデジタル回路の動作電圧である第二の電圧値を検出する第二の検出手段と、第一の電圧値と第二の電圧値とを比較する比較手段と、比較手段により得られた比較結果に応じて、第一のデジタル回路と第二のデジタル回路との間の分離結合を行う分離結合手段と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロジック回路及び携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計時情報を管理するリアルタイムクロック(RTC:Real Time Clock)用のロジック回路においては、発振回路が原振クロック信号を生成し、原振クロック信号を分周して得られる分周クロック信号に基づいてロジック回路が動作する。ここで、一般的に、発振回路はロジック回路に供給される電源電圧よりも低い電源電圧で動作することが可能であり、安定化された電源電圧を発振回路に供給するため、定電圧回路が用いられることが多い。
【0003】
さらに、携帯端末装置等、バッテリで動作する機器においては、バッテリを取り外してもRTC用IC(Integrated Circuit)が時計情報を管理することができるように、定電圧回路やロジック回路等に電源電圧を供給するためのコイン型2次電池等のバックアップ用電源が設けられている。しかしながら、バックアップ電源が供給可能な電力には限りがあるので、バックアップ動作モードにおけるRTC用ICの消費電力を低減することが要求されている。
【0004】
このように、携帯端末装置では、時計情報を保持するために、電源のバックアップ機能を有しているが、近年では、携帯端末装置の更なる小型化、及び低コスト化を目的として、従来、電源のバックアップ用として用いられてきたコイン型2次電池から、大容量の蓄電素子(コンデンサ)への置き換えが主流になりつつある。
【0005】
特許文献1には、主電源とバックアップ電源とを切り換える切換回路を内蔵しないRTC用のロジック回路において、バックアップ動作モードにおける消費電力を低減するために、主電源からの電源電圧が供給されているか否かを表す信号に従い、主電源から電源電圧が供給されていないときに、定電圧回路から出力される電源電圧の値又は定電圧回路の動作期間を減少させる技術が開示されている。
【0006】
また、図3には、従来のロジック回路の回路構成を示すブロック図が示されている。図3において、ロジック回路3は、システム電源(VSYS)に基づいて、2次電池36の充電用の電源(LDO3(3.0V))を生成するための2次電池充電用電源LDO3 33と、2次電池36によって動作するバックアップデジタル回路(RVDD系ロジック回路)34と、システム電源(VSYS)に基づいて、VINT(DVDD系)ロジック回路32にLDODIG(1.8V)電源を供給するLODIG電源31と、システム電源(VSYS)に基づいて基準電圧を発生させるVREF 37と、から構成されている。
【0007】
そして、DVDD系ロジック回路32及びRVDD系ロジック回路34は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタで構成されているため、DVDD系ロジック回路32に電源(1.8V)が供給されており、RVDD系ロジック回路34に電源(3.0V)が供給されていないとき、DVDD系ロジック回路32のMOSロジックの入力がオープン状態となり、ゲート電圧が不定となるため、RVDD系ロジック回路34からDVDD系ロジック回路32に対して不定電圧の信号が伝達することにより、予期しない異常な電流がDVDD系ロジック回路32に流れる恐れ、及び誤動作の恐れがある。
【0008】
この状態を防止する目的として、RVDD系ロジック回路34の電圧が所定の電圧(3V程度)に到達した時点で、信号がRVDD系ロジック回路34からDVDD系ロジック回路32に対して伝達するように、DVDD系ロジック回路32とRVDDロジック回路34との間の電圧分離・結合を行うためのアイソレータ30が設けられている。
【0009】
このDVDD系ロジック回路32とRVDD系ロジック回路34との間の電圧分離・結合(以下、「アイソレートの検出・解除」ともいう。)を、センス抵抗38及び39で分圧された電圧と、基準電圧(VREF)37とを、簡易検出回路(簡易DET)35において比較することにより、アイソレートの検出・解除を実施していた。
【0010】
すなわち、DVDD系ロジック回路32の電圧値≧RVDD系ロジック回路34の電圧値のときには、アイソレートの検出(信号の伝達をオフ)を行い、DVDD系ロジック回路32の電圧値<RVDD系ロジック回路34の電圧値のときには、アイソレートの解除(信号の伝達をオン)を行うことにより、アイソレータ30によるDVDD系ロジック回路32とRVDDロジック回路34との間の電圧分離・結合を実施していた。
【0011】
このように、DVDD系ロジック回路とRVDD系ロジック回路とをアイソレート(分離)するために、簡易検出回路(簡易DET)35及びセンス抵抗38、39を設けることが従来行われていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載された半導体集積回路は、バックアップ動作モードにおける消費電力を低減することを目的としているが、主電源からの電源電圧が供給されているか否かを表す間欠信号に基づいた制御を行っているため、ロジック回路が複雑になるという問題がある。
【0013】
また、図3に示した従来のロジック回路においては、DVDD系ロジック回路32とRVDD系ロジック回路34とをアイソレートするために設けられていたセンス抵抗38、39には、分圧に伴う消費電流を極力少なくするために、数十MΩ程度の抵抗成分を持たせていた。
【0014】
その一方、携帯端末装置においては、ユーザが充電池パックを取り外した状態においても、時計機能を1分程度保持させることが必要な仕様となっており、従前は、バックアップ用の電源としてコイン型2次電池を採用していた。しかし、携帯端末装置自体の小型化、及び低コスト化の観点から、47μF程度の静電容量を有する蓄電素子(コンデンサ)への置き換えがなされていた。
【0015】
他方、上記したセンス抵抗に数十MΩ程度の抵抗成分を設けていたので、多少なりとも無駄な電流が消費されることによってバックアップ性能への影響が出てしまうと共に、バックアップ性能を維持するためには、この無駄に消費される電流も考慮して蓄電素子(コンデンサ)の静電容量を定める必要がある。静電容量が大きくなると、それに伴い蓄電素子(コンデンサ)のサイズも大きくなる傾向にあり、携帯端末装置の小型化、及び低コスト化の趨勢に反してしまうという課題がある。
【0016】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、DVDD系ロジック回路とRVDD系ロジック回路との間のアイソレートを実施しながら、蓄電素子(コンデンサ)の静電容量及びサイズを大きくすることなく、小型化及び低コスト化を実現することができるロジック回路及び携帯端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明におけるロジック回路は、第一のデジタル回路と第二のデジタル回路とを含むロジック回路であって、前記第一のデジタル回路の動作電圧である第一の電圧値を検出する第一の検出手段と、前記第二のデジタル回路の動作電圧である第二の電圧値を検出する第二の検出手段と、前記第一の電圧値と前記第二の電圧値とを比較する比較手段と、前記比較手段により得られた比較結果に応じて、前記第一のデジタル回路と前記第二のデジタル回路との間の分離結合を行う分離結合手段と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、DVDD系ロジック回路とRVDD系ロジック回路との間のアイソレートの検出・解除を行いつつ、蓄電素子(コンデンサ)の静電容量及びサイズを大きくすることなく、小型化及び低コスト化を図ることができるロジック回路及び携帯端末装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るロジック回路の回路構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るロジック回路の電圧値とアイソレートの検出・解除及び動作状態との関係を説明する図である。
【図3】従来のロジック回路の回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化乃至省略する。本発明は、アイソレートの検出・解除を行いながら、蓄電素子(コンデンサ)の静電容量及びサイズを大きくすることなく、ロジック回路及びこれを用いた携帯端末装置の小型化並びに低コスト化を図るものである。
【0021】
すなわち、簡易検出回路(簡易DET)を設けるに際し、従来用いていたセンス抵抗を廃止し、直接的にロジック回路同士の電圧値を比較することにより、バックアップ動作モード時の消費電流を増やすことなく、アイソレートの検出・解除を行いながら、蓄電素子(コンデンサ)の静電容量及びサイズを大きくすることなく、ロジック回路及びこれを用いた携帯端末装置の小型化並びに低コスト化を実現することが特徴になっている。
【0022】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明の実施形態に係るロジック回路の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るロジック回路の回路構成を示すブロック図である。
【0023】
図1において、ロジック回路1は、システム電源(VSYS)に基づいて、蓄電素子(コンデンサ)16充電用の電源(LDO3(3.0V))を生成するための蓄電素子(コンデンサ)充電用電源LDO3 13と、蓄電素子(コンデンサ)16によって動作するバックアップデジタル回路(RVDD系ロジック回路)14と、システム電源(VSYS)に基づいて、VINT(DVDD系)ロジック回路12にLDODIG(1.8V)電源を供給するLODIG電源11と、から構成されている。
【0024】
そして、DVDD系ロジック回路12及びRVDD系ロジック回路14は、MOSトランジスタで構成されているため、DVDD系ロジック回路12に電源(1.8V)が供給されており、RVDD系ロジック回路14に電源(3.0V)が供給されていないとき、DVDD系ロジック回路12のMOSロジックの入力がオープン状態となり、ゲート電圧が不定となるため、RVDD系ロジック回路14からDVDD系ロジック回路12に対して不定電圧の信号が伝達することにより、予期しない異常な電流がDVDD系ロジック回路12に流れる恐れがある(以下、このような状態を「不定状態」という。)。
【0025】
この状態を防止する目的として、RVDD系ロジック回路14の電圧が所定の電圧(3V程度)に到達した時点で、信号がRVDD系ロジック回路14からDVDD系ロジック回路12に対して伝達するように、DVDD系ロジック回路12とRVDDロジック回路14との間の電圧分離・結合を行うためのアイソレータ10が設けられている。
【0026】
このDVDD系ロジック回路12とRVDD系ロジック回路14との間の電圧分離・結合(以下、「アイソレートの検出・解除」ともいう。)を、DVDD系ロジック回路12の動作電圧値とRVDD系ロジック回路14の動作電圧値とを簡易検出回路(簡易DET)15において直接的に比較することにより、アイソレートの検出・解除を実施することとしている。
【0027】
ここで、各ロジック回路の電圧値と、アイソレートの検出・解除及びロジック回路の動作状態との関係について図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施形態に係るロジック回路の電圧値とアイソレートの検出・解除及び動作状態との関係を説明する図である。
【0028】
図2において、DVDD系ロジック回路12とRVDD系ロジック回路14の動作電圧が共に0Vであるとき、この状態は、2つのロジック回路に全く電源が供給されていない状態である。
【0029】
次に、DVDD系ロジック回路12の動作電圧が0Vで、RVDD系ロジック回路14の動作電圧が3.0Vであるとき、この状態は、バックアップデジタル回路であるRVDD系ロジック回路14にのみ蓄電素子(コンデンサ)16から電源が供給されている場合であるから、バックアップ動作モード時におけるリアルタイムクロック(RTC)のみが動作している状態である。
【0030】
そして、DVDD系ロジック回路12の動作電圧が1.8Vで、RVDD系ロジック回路の動作電圧が0Vであるとき、この状態は、上記した所謂不定状態となるため、簡易検出回路(簡易DET)15によってアイソレータ10を制御することにより、DVDD系ロジック回路12とRVDD系ロジック回路14との間の電圧分離(アイソレートの検出)を行う。
【0031】
最後に、DVDD系ロジック回路12の動作電圧が1.8Vで、RVDD系ロジック回路の動作電圧が3.0Vであるとき、この状態は、2つのロジック回路に電源が正常に供給されている通常動作状態である。よって、このときは、簡易検出回路(簡易DET)15によってアイソレータ10を制御することにより、DVDD系ロジック回路12とRVDD系ロジック回路14との間の電圧結合(アイソレートの解除)を行う。
【0032】
すなわち、DVDD系ロジック回路12の電圧値≧RVDD系ロジック回路14の電圧値のときには、アイソレートの検出(信号の伝達をオフ)を行い、DVDD系ロジック回路12の電圧値<RVDD系ロジック回路14の電圧値のときには、アイソレートの解除(信号の伝達をオン)を行うことにより、アイソレータ10によるDVDD系ロジック回路12とRVDDロジック回路14との間の電圧分離・結合を実施している。
【0033】
このように、本発明は、DVDD系ロジック回路12の電圧値とRVDD系ロジック回路14の電圧値とを直接的に簡易検出回路(簡易DET)15において比較し、この比較結果に応じて、DVDD系ロジック回路12とRVDDロジック回路14との間の電圧分離・結合(アイソレートの検出・解除)を実施している。
【0034】
そして、従来、簡易検出回路(簡易DET)において電圧値を比較するのに使用していたセンス抵抗を廃止することにより、無駄に消費される電流を考慮する必要がなくなったため、バックアップモード動作用の蓄電素子(コンデンサ)の静電容量及びサイズを大きくする必要がなくなり、全体としてロジック回路の小型化及び低コスト化を実現するのである。
【0035】
また、バックアップ動作モード時は勿論のこと、通常動作状態においても従来使用していたセンス抵抗で消費される無駄な電流が生じないので、ロジック回路全体の消費電流の低減にも繋がるのである。さらに、ロジック回路の小型化及び低コスト化を実現することによって、このロジック回路が搭載される携帯端末装置全体の小型化及び低コスト化にも資することになるのである。
【0036】
このように、本発明によれば、従来用いていたセンス抵抗を廃止し、直接的にロジック回路同士の電圧値を比較することにより、バックアップ動作モード時の消費電流を増やすことなく、DVDD系ロジック回路とRVDD系ロジック回路との間のアイソレートの検出・解除を行いながら、蓄電素子(コンデンサ)の静電容量及びサイズを大きくすることなく、ロジック回路及びこれを用いた携帯端末装置の小型化並びに低コスト化を実現することができる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範囲な趣旨及び範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 ロジック回路
10 アイソレータ
11 LODIG電源
12 DVDD系ロジック回路(VINT)
13 バックアップ電源充電用電源(LDO3)
14 RVDD系ロジック回路
15 簡易検出回路(簡易DET)
16 蓄電素子(コンデンサ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】特開2010−113654号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のデジタル回路と第二のデジタル回路とを含むロジック回路であって、
前記第一のデジタル回路の動作電圧である第一の電圧値を検出する第一の検出手段と、
前記第二のデジタル回路の動作電圧である第二の電圧値を検出する第二の検出手段と、
前記第一の電圧値と前記第二の電圧値とを比較する比較手段と、
前記比較手段により得られた比較結果に応じて、前記第一のデジタル回路と前記第二のデジタル回路との間の分離結合を行う分離結合手段と、
を含むことを特徴とするロジック回路。
【請求項2】
前記分離結合手段は、前記比較手段により、前記第一の電圧値が前記第二の電圧値以上であるとの比較結果が得られたときは、前記第一のデジタル回路と前記第二のデジタル回路との間を分離することを特徴とする請求項1に記載のロジック回路。
【請求項3】
前記分離結合手段は、前記比較手段により、前記第二の電圧値が前記第一の電圧値より大であるとの比較結果が得られたときは、前記第一のデジタル回路と前記第二のデジタル回路との間を結合することを特徴とする請求項1に記載のロジック回路。
【請求項4】
前記第二のデジタル回路のバックアップ用電源として機能する蓄電素子をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のロジック回路。
【請求項5】
前記蓄電素子は、前記第二の電圧値で充電されることを特徴とする請求項4に記載のロジック回路。
【請求項6】
前記バックアップ用電源は、リアルタイムクロックを駆動する電源であることを特徴とする請求項4又は5に記載のロジック回路。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のロジック回路を含むことを特徴とする携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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