説明

ロジン変性フェノール樹脂、印刷インキ用樹脂ワニス、顔料コーティング剤および印刷インキ

【課題】顔料分散性、流動性が良好でかつ乳化性等のインキ諸特性が良好な印刷インキおよびこれらの諸性能を達成することができる印刷インキ用樹脂ワニス、顔料コーティング剤、さらにはロジン変性フェノール樹脂を提供する。
【解決手段】ロジン類(a)、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物(b)、ポリオール類(c)および必要に応じて多塩基酸(d)を反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂であって、ゲルパーメーションクロマトグラフィー法による重量平均分子量が400以下の成分の含有量が、8〜16重量%であり、かつ重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の含有量が、25〜60重量%であるロジン変性フェノール樹脂を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロジン変性フェノール樹脂、当該ロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキ用樹脂ワニス、顔料コーティング剤および当該印刷インキ用樹脂ワニスを含有する印刷インキに関する。
【背景技術】
【0002】
ロジン変性フェノール樹脂は、ロジン類、フェノール樹脂、ポリオール類を反応させて得られる樹脂であり、高分子量、高軟化点、高粘度、インキ用溶剤に対する溶解性が高いなどの諸性能を有し、印刷インキ用樹脂、特にオフセット印刷用樹脂として広く用いられている。また、ロジン変性フェノール樹脂は顔料の表面処理剤としても使用されており、例えば、ロジン変性フェノール樹脂を顔料とともに乾式粉砕してなる被覆顔料としても使用できる(特許文献1参照)。
【0003】
通常オフセット印刷インキは、顔料を印刷インキ用溶剤およびロジン変性フェノール樹脂等を使用したワニス混合物に混合、分散することにより製造される。ワニス混合物中に顔料が十分に分散されていなければ、印刷インキの流動性不良、印刷物に光沢がでないなどの悪影響が生じる。顔料を十分に分散させる事は、インキの製造時に機械的な分散工程を長時間行う事で達成できるが、この方法では生産性が悪くなるという問題がある。
【0004】
顔料の分散性を向上させる方法の一つとして、例えばアルキッド樹脂を添加剤として使用する事が行われている。使用するアルキッド樹脂として、ロジンで変性したアルキッド樹脂(例えば、特許文献2参照)、キシレン樹脂で変性したアルキッド樹脂(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0005】
ところで、オフセット印刷は湿し水とインキの反発を利用し、画線部と非画線部を形成して印刷される方式であり、湿し水とインキの乳化状態が印刷物の品質に大きな影響を与える。そのため、インキに適度な乳化特性が求められ、インキの乳化率は高すぎても低すぎても乳化に関するトラブルが起きる。例えば乳化率が高すぎる(湿し水を多く含む)場合には版の非画線部にもインキが付着し、印刷物に汚れが生じるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特許第3159049号公報
【特許文献2】特開2007−63497号公報
【特許文献3】特開2007−233035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、顔料分散性、流動性が良好でかつ乳化性等のインキ諸特性が良好な印刷インキおよびこれらの諸性能を達成することができる印刷インキ用樹脂ワニス、顔料コーティング剤、さらにはロジン変性フェノール樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討したところ、ロジン変性フェノール樹脂中に含まれる低分子量成分を制御することにより前記課題を解決しうることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、ロジン類(a)、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物(b)、ポリオール類(c)および必要に応じて多塩基酸(d)を反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂であって、ゲルパーメーションクロマトグラフィー法による重量平均分子量が400以下の成分の含有量が、8〜16重量%であり、かつ重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の含有量が、25〜60重量%であるロジン変性フェノール樹脂;樹脂成分として少なくとも前記ロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキ用樹脂ワニス;前記ロジン変性フェノール樹脂を含有する顔料コーティング剤;樹脂ワニス成分として少なくとも前記印刷インキ用樹脂ワニスを含有する印刷インキに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロジン変性フェノール樹脂を用いることにより、顔料分散性、流動性が良好で、かつ乳化性等の印刷適性が良好なオフセット印刷インキ用樹脂ワニスを得ることができる。また、本発明のロジン変性フェノール樹脂を用いた印刷インキは、特にオフセット枚葉インキ(枚葉インキ)、オフセット輪転インキ(オフ輪インキ)、水なしオフセットインキ等のオフセット印刷インキとして賞用されるほか、新聞インキ、凸版印刷インキ、グラビア印刷インキにも好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のロジン変性フェノール樹脂とは、ロジン類(a)(以下、成分(a)という)、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物(b)(以下、成分(b)という)、ポリオール類(c)(以下、成分(c)という)および必要に応じて多塩基酸(d)(以下、成分(d)という)を反応させて得られるものである。
【0012】
当該樹脂中に含まれるゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量400以下の成分の含有量が、8〜16重量%であり、かつ重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の含有量が、25〜60重量%であることを特徴とする。なお、重量平均分子量400以下の成分の含有量は、GPCによるピーク面積の比から求めることができる。具体的には、全ピーク面積100%に対する、GPCによるポリスチレン換算値から求めた重量平均分子量400以下の成分のピーク面積比(%)により求めることができる。また、ロジン変性フェノール樹脂中に含まれるGPCによる重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の含有量を、25〜60重量%程度とすることによって、印刷インキの乳化性を向上させることができる。なお、重量平均分子量が200〜400の成分の含有量は、重量平均分子量が400以下の成分の場合と同様に、400以下の成分のピーク面積100%に対する、GPCによるポリスチレン換算値から求めた分子量200〜400の成分のピーク面積比(%)より求めることができる。
【0013】
成分(a)としては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン;該天然ロジンから誘導される重合ロジン;天然ロジンや重合ロジンを不均化または水素添加して得られる安定化ロジン;天然ロジンや重合ロジン(天然ロジンおよび重合ロジンを原料ロジンという場合がある)に不飽和カルボン酸類を付加して得られる不飽和酸変性ロジンなどがあげられる。なお、不飽和酸変性ロジンとは、例えばマレイン酸変性ロジン、無水マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、イタコン酸変性ロジン、クロトン酸変性ロジン、ケイ皮酸変性ロジン、アクリル酸変性ロジン、メタクリル酸変性ロジンなど、またはこれらに対応する酸変性重合ロジンがあげられる。当該不飽和酸変性ロジンは原料ロジン100重量部に対し、不飽和カルボン酸を通常1〜30重量部程度用いて変性したものである。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
成分(b)としては、ホルムアルデヒド(F)とフェノール類(P)とをF/P比(モル比)が通常1〜3程度となる範囲内で水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ触媒の存在下において付加・縮合反応させた縮合物(レゾール型フェノール樹脂)であれば、各種公知のものを特に制限なく使用することができる。また、必要により該縮合物を中和・水洗したものを成分(b)とすることもできる。フェノール類としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、石炭酸、クレゾール、アミルフェノール、ビスフェノールA、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、ホルムアルデヒドとしては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド等を使用すればよい。
【0015】
成分(c)としては、1分子中に2つ以上の水酸基を含有するものであって、成分(b)以外のものであれば特に限定されず公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、2官能のアルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなど、3官能のアルコール類としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなど、4官能以上のアルコール類としては、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタンなどをあげることができる。これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。成分(c)としては、1分子中に少なくとも3つの水酸基を有する化合物を用いることにより、ロジン変性フェノール樹脂が網目構造を有し、高分子量化することができるため好ましい。
【0016】
成分(d)としては、成分(a)以外の1分子中に2以上のカルボキシル基を有する化合物であれば特に限定されず公知のものを使用することができる。成分(d)は、通常、ロジン変性フェノール樹脂の高分子量化が必要な場合に用いればよい。成分(d)としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の芳香族系多塩基酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族系多塩基酸などをあげることができる。これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他の成分として、必要に応じてエポキシ化合物や多官能アクリレートを使用することもできる。
【0017】
本発明のロジン変性フェノール樹脂の成分(a)、成分(b)および成分(c)の使用量は特に限定されず、用途に応じてそれぞれ適宜決定すればよいが、通常、成分(a)の使用量は、成分(a)〜成分(c)の合計量に対し、41〜88重量%程度、好ましくは46〜74重量%程度であり、成分(b)の使用量は、成分(a)〜成分(c)の合計量に対し9〜50重量%程度、好ましくは22〜46重量%程度であり、成分(c)の使用量は、成分(a)〜成分(c)の合計量に対し3〜9重量%程度、好ましくは4〜8重量%程度である。
【0018】
さらに、ロジン変性フェノール樹脂を所望の分子量とし、印刷インキに適正な乳化特性を与えるため、反応に使用する成分(c)の水酸基当量数(OH)と成分(a)のカルボキシル基当量数(COOH)の割合を、通常、OH/COOH=0.5〜1.5程度となるように調整するのが好ましい。
【0019】
成分(d)を使用する場合の使用量は特に限定されないが、前記成分(a)〜(c)の合計使用量を100重量部とした場合、0.5〜20重量部程度とすることが好ましい。
【0020】
本発明のロジン変性フェノール樹脂の製造方法としては、従来公知の方法を採用することができる。たとえば、成分(a)、成分(b)、成分(c)および必要に応じて成分(d)を所定量ずつ反応装置に仕込み、必要に応じて各種公知の酸性または塩基性触媒の存在下、100〜300℃程度の温度範囲にて1〜20時間程度反応させればよい。前記触媒としては、塩酸、硫酸などの鉱酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの金属の水酸化物、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛などの酢酸塩があげられる。
【0021】
また、本発明のロジン変性フェノール樹脂は、成分(a)と成分(b)とを反応させた後に、成分(c)を加えて反応させる方法、成分(a)と成分(c)とを反応させた後に、成分(b)を加えて反応させる方法によっても得られる。なお、成分(d)を用いる場合には、その添加時期は特に限定されず、例えば、成分(a)と成分(b)を反応させる際に添加してもよく、成分(a)と成分(c)を反応させる際に添加してもよい。
【0022】
重量平均分子量が400以下の低分子成分は、通常、原料として使用する成分(a)が100〜300℃程度で加熱され異性化したもの、成分(a)が脱炭酸しカルボキシル基を失ったもの、成分(a)に含まれていた不純物、各種反応の際に生じた分解物、反応系に残存した触媒類や未反応物と考えられる。これら低分子量成分の含有量は、反応に使用した成分(a)、成分(b)および成分(c)の使用量等により変わるが、特に反応温度を上記温度範囲で高くすること、使用する触媒量を多くすること、成分(c)の使用量を少なくすることにより低分子量成分を多くすることができる。これらの低分子成分がロジン変性フェノール樹脂中に前述した特定の割合で含有する場合は顔料の分散性が良好となり、得られる印刷インキ組成物は流動性が良好となる。また一方で、この低分子量成分が多過ぎる場合はインキの粘度が低くなり、印刷インキとしての諸特性を達成することができない。
【0023】
前記反応方法によって得られる本発明のロジン変性フェノール樹脂の軟化点は、通常、120〜200℃程度が好ましく、更に好ましくは140〜200℃である。これは軟化点を120℃以上とすることによって印刷物の乾燥性、セット性を良好に保つことができるためであり、またインキ用溶剤への溶解性を考慮すると200℃以下が適当であるからである。また本発明のロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量(GPCによるポリスチレン換算値)は、5,000〜400,000程度が好ましく、更に好ましくは10,000〜200,000の範囲である。5,000より小さい場合では所望の粘度が得られにくく、40,000より大きい場合ではインキ用溶媒への不溶物が発生しやすくなる。また本発明のロジン変性フェノール樹脂の酸価はインキに適度な乳化特性を付与する点から10〜30mgKOH/g程度とすることが好ましい。また、ロジン変性フェノール樹脂樹脂ワニスを調製する際に、添加剤としてゲル化剤を使用する場合には、ゲル化剤との適度な反応点を持たせる為に、酸価を5mgKOH/g以上とすることが好ましい。
【0024】
本発明のロジン変性フェノール樹脂は、芳香族炭化水素系溶剤(5号ソルベント、新日本石油(株)製)に対するトレランスが10g/g程度以上および脂肪族炭化水素系溶剤(0号ソルベント、新日本石油(株)製)に対するトレランスが30g/g程度以下である。なお、溶剤に対するトレランスは、樹脂と溶剤を1対1の重量比で加熱混合したものに25℃でさらに溶剤を加えて、白濁するまでに要した総溶剤重量に対する樹脂重量から算出した値である。
【0025】
本発明のロジン変性フェノール樹脂に、必要に応じて、植物油類、インキ用溶剤などを加えて混合し、印刷インキ用樹脂ワニスを製造することができる。
【0026】
印刷インキ用樹脂ワニスに用いられる植物油類としては、各種公知のものを限定なく使用できる。具体的には、例えば、アマニ油、桐油、サフラワー油、脱水ヒマシ油、大豆油等の植物油の他、アマニ油脂肪酸メチル、大豆油脂肪酸メチル、アマニ油脂肪酸エチル、大豆油脂肪酸エチル、アマニ油脂肪酸プロピル、大豆油脂肪酸プロピル、アマニ油脂肪酸ブチル、大豆油脂肪酸ブチルなどといった前記植物油のモノエステルなどがあげられる。これらは単独で用いても2種以上を適宜に併用しても良い。これらの中では、印刷物の乾燥性の点から分子中に不飽和結合を有する植物油が好ましく、環境に対する負荷が小さい点から大豆油が特に好ましい。
【0027】
印刷インキ用樹脂ワニスに用いられるインキ用溶剤としては、従来公知のインキ用溶剤を特に限定なく使用することができる。具体的には、例えば、新日本石油(株)製の石油系溶剤である0号ソルベント、4号ソルベント、5号ソルベント、6号ソルベント、7号ソルベント、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号などがあげられる。これらは単独で用いても2種以上を適宜に併用しても良い。特に環境対策面から沸点が200℃程度以上で芳香族炭化水素の含有率が1重量%程度以下であるAFソルベントを使用することが好ましい。なお、環境負荷を低減した印刷インキが必要な場合には、インキ用溶剤を用いず植物油類のみを用いればよい。
【0028】
印刷インキ用樹脂ワニスは、上記各成分を混合、攪拌して製造することができるが、混合攪拌の際には、これらを、通常、100〜240℃程度に加熱して各成分を溶解させて混合し、必要に応じて添加剤を使用して得られる。添加剤としては、弾性を付与するためのゲル化剤の他、酸化防止剤などがあげられる。
【0029】
前記ゲル化剤としては、例えば、オクチル酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムジプロポキシドモノアセチルアセテート、アルミニウムジブトキシドモノアセチルアセテート、アルミニウムトリアセチルアセテート、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、テトラブトキシジルコニウム、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなど各種公知のものを特に限定無く使用できる。これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
本発明の印刷インキは、前記印刷インキ用樹脂ワニス、顔料(黄色、紅色、藍色または黒色など)を含有し、必要に応じて各種公知の印刷インキ用添加剤を使用して、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミルといった公知のインキ製造装置を用いて適切なインキ恒数となるよう、練肉・調製することにより得られる。印刷インキ用添加剤としては、インキ流動性やインキ表面被膜を改善するための界面活性剤、ワックスなどがあげられる。
【実施例】
【0031】
以下、製造例、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。なお、以下「部」とは重量部を示し、「%」は重量%を示す。
【0032】
製造例1 (フェノール−ホルムアルデヒド縮合物の製造)
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、オクチルフェノール1,000部、パラホルムアルデヒド364部、および水1,000部を仕込み、攪拌下に50℃まで昇温した。次いで同反応容器に水酸化ナトリウム100部を仕込み、冷却しながら反応系を90℃まで徐々に昇温した後、2.5時間保温し、更に硫酸を滴下してpHを6付近に調整した。その後、キシレン150部を加え、水層部を除去し、更に内容物を冷却して、レゾール型オクチルフェノールの70%キシレン溶液を得た。
【0033】
実施例1
攪拌器、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器にガムロジン1,000部を仕込み、攪拌下に220℃まで昇温して溶融させた。ついで、レゾール型オクチルフェノールの70%キシレン溶液571部(固形分400部)を、4時間かけて系内に滴下した。滴下終了後、グリセリン84部及びパラトルエンスルホン酸2.0部を仕込み、220〜260℃の温度範囲内で酸価が25以下となるまで反応させた。その後、0.02MPaで10分間減圧した後、内容物を取り出した。こうして得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は22.3mgKOH/g、33%アマニ油粘度は4.0Pa・s、0号ソルベントトレランスは6.5g/gであった。重量平均分子量は21,000、GPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が400以下の成分の含有量は12.2%、重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の割合は42%であった。
重量平均分子量は、GPCによりTHF溶媒下で測定したポリスチレン換算値をいい、GPC装置としてはHLC−8020(東ソー(株)製)を、カラムとしてはTSK−GELカラム(東ソー(株)製)を用いた。
33%アマニ油粘度とは、樹脂とアマニ油を1:2の重量比で加熱混合したものを日本レオロジー機器(株)製コーン・アンド・プレート型粘度計を用いて25℃で測定した粘度をいう。
【0034】
実施例2
攪拌器、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器にガムロジン1,000部を仕込み、攪拌下に220℃まで昇温して溶融させた。ついで、レゾール型オクチルフェノールの70%キシレン溶液571部(固形分400部)を、4時間かけて系内に滴下した。滴下終了後、グリセリン84部及びパラトルエンスルホン酸1.0部を仕込み、220〜260℃の温度範囲内で酸価が25以下となるまで反応させた。その後、0.02MPaで10分間減圧した後、内容物を取り出した。こうして得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は23.5mgKOH/g、33%アマニ油粘度は4.0Pa・s、0号ソルベントトレランスは5.5g/gであった。重量平均分子量は21,000、GPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が400以下の成分の含有量は8.5%、重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の割合は57%であった。
【0035】
実施例3
攪拌器、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器にガムロジン1,000部を仕込み、攪拌下に220℃まで昇温して溶融させた。ついで、レゾール型オクチルフェノールの70%キシレン溶液571部(固形分400部)を、4時間かけて系内に滴下した。滴下終了後、グリセリン84部及びパラトルエンスルホン酸3.0部を仕込み、220〜260℃の温度範囲内で酸価が25以下となるまで反応させた。その後、0.02MPaで10分間減圧した後、内容物を取り出した。こうして得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は20.5mgKOH/g、33%アマニ油粘度は3.4Pa・s、0号ソルベントトレランスは7.8g/gであった。重量平均分子量は18,000、GPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が400以下の成分の含有量は15.4%、重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の割合は34%であった。
【0036】
実施例4
攪拌器、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器にガムロジン1,000部を仕込み、攪拌下に220℃まで昇温して溶融させた。ついで、レゾール型オクチルフェノールの70%キシレン溶液571部(固形分400部)を、4時間かけて系内に滴下した。滴下終了後、グリセリン84部及びパラトルエンスルホン酸2.0部を仕込み、220〜260℃の温度範囲内で酸価が30以下となるまで反応させた。その後、0.02MPaで10分間減圧した後、内容物を取り出した。こうして得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は28.5mgKOH/g、33%アマニ油粘度は4.3Pa・s、0号ソルベントトレランスは4.6g/gであった。重量平均分子量は20,000、GPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が400以下の成分の含有量は10.8%、重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の割合は58%であった。
【0037】
実施例5
攪拌器、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器にガムロジン1,000部を仕込み、攪拌下に220℃まで昇温して溶融させた。ついで、レゾール型オクチルフェノールの70%キシレン溶液571部(固形分400部)を、4時間かけて系内に滴下した。滴下終了後、グリセリン84部及びパラトルエンスルホン酸2.0部を仕込み、220〜260℃の温度範囲内で酸価が15以下となるまで反応させた。その後、0.02MPaで10分間減圧した後、内容物を取り出した。こうして得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は12.2mgKOH/g、33%アマニ油粘度は3.2Pa・s、0号ソルベントトレランスは11.8g/gであった。重量平均分子量は17,000、GPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が400以下の成分の含有量は14.8%、重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の割合は29%であった。
【0038】
比較例1
攪拌器、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器にガムロジン1,000部を仕込み、攪拌下に220℃まで昇温して溶融させた。ついで、レゾール型オクチルフェノールの70%キシレン溶液571部(固形分400部)を、4時間かけて系内に滴下した。滴下終了後、グリセリン84部及びパラトルエンスルホン酸0.8部を仕込み、220〜260℃の温度範囲内で酸価が25以下となるまで反応させた。その後、0.02MPaで10分間減圧した後、内容物を取り出した。こうして得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は23.8mgKOH/g、33%アマニ油粘度は4.0Pa・s、0号ソルベントトレランスは5.1g/gであった。重量平均分子量は21,000、GPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が400以下の成分の含有量は7.8%、重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の割合は62%であった。
【0039】
比較例2
攪拌器、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器にガムロジン1,000部を仕込み、攪拌下に220℃まで昇温して溶融させた。ついで、レゾール型オクチルフェノールの70%キシレン溶液571部(固形分400部)を、4時間かけて系内に滴下した。滴下終了後、グリセリン84部及びパラトルエンスルホン酸3.5部を仕込み、220〜260℃の温度範囲内で酸価が25以下となるまで反応させた。その後、0.02MPaで10分間減圧した後、内容物を取り出した。こうして得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は19.8mgKOH/g、33%アマニ油粘度は3.0Pa・sであり、実施例1〜5と比べて十分な粘度を得る事ができなかった。0号ソルベントトレランスは8.0g/gであった。重量平均分子量は17,000、GPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が400以下の成分の含有量は16.8%、重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の割合は33%であった。
【0040】
比較例3
攪拌器、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器にガムロジン1,000部を仕込み、攪拌下に220℃まで昇温して溶融させた。ついで、レゾール型オクチルフェノールの70%キシレン溶液571部(固形分400部)を、4時間かけて系内に滴下した。滴下終了後、グリセリン84部及びパラトルエンスルホン酸2.0部を仕込み、220〜260℃の温度範囲内で酸価が35以下となるまで反応させた。その後、0.02MPaで10分間減圧した後、内容物を取り出した。こうして得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は31.2mgKOH/g、33%アマニ油粘度は4.5Pa・s、0号ソルベントトレランスは4.5g/gであった。重量平均分子量は19,000、GPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が400以下の成分の含有量は10.2%、重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の割合は65%であった。
【0041】
比較例4
攪拌器、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器にガムロジン1,000部を仕込み、攪拌下に220℃まで昇温して溶融させた。ついで、レゾール型オクチルフェノールの70%キシレン溶液571部(固形分400部)を、4時間かけて系内に滴下した。滴下終了後、グリセリン84部及びパラトルエンスルホン酸2.0部を仕込み、220〜260℃の温度範囲内で酸価が10以下となるまで反応させた。その後、0.02MPaで10分間減圧した後、内容物を取り出した。こうして得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は8.3mgKOH/g、33%アマニ油粘度は2.6Pa・sであり、実施例1〜5と比べて十分な粘度を得る事ができなかった。0号ソルベントトレランスは14.8g/gであった。重量平均分子量は14,000、GPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が400以下の成分の含有量は15.5%、重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の割合は24%であった。
【0042】
以上、実施例および比較例で得られた樹脂物性を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
(印刷インキ用樹脂ワニスの調製)
各実施例および比較例で得られた樹脂を49部、大豆油10部、及びAFソルベント7号(新日本石油(株)製、非芳香族石油系溶剤)39部を180℃で30分間混合溶解した。次にこれを80℃まで冷却した後、アルミキレート(商品名ALCH、川研ファインケミカル(株)製)2部を加え190℃まで加熱して1時間ゲル化反応させ、印刷インキ用樹脂ワニスを得た。
【0045】
(印刷インキの調製)
実施例および比較例で得られた樹脂を用いた印刷インキ用樹脂ゲルワニスを用い、次の配合割合で3本ロールミルにより練肉して印刷インキを調製した。
カーミン6B 18重量部
前記ゲルワニス 67〜75重量部
日石AFソルベント7号 7〜15重量部
上記配合に基づいて30℃、400rpmにおけるインコメーターのタック値が10.0±0.5、25℃におけるスプレッドメーターのフロー値が22.0±1.0となるよう適宜調整した。
【0046】
(インキの性能試験)
ガラス板流動性(インキ流動性):25℃に空調された室内においてインキ1.3mlを地平面と60°の角度をなすガラス板の上端に置き、15分間に流動した距離を測定した。数値が大きいほど流動性が良好であることを示す。
【0047】
乳化率:インキ25gをリソトロニック乳化試験機(NOVOCONTROL社製)を用いて飽和状態まで乳化した。その後、銅版上で乳化インキ中の余剰水をヘラで切り、カールフィッシャー水分計(京都電子工業(株)製)で乳化率を測定した。結果を表2に示した。インキの乳化率が高い場合は印刷物の汚れが生じやすくなる。
【0048】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン類(a)、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物(b)、ポリオール類(c)および必要に応じて多塩基酸(d)を反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂であって、ゲルパーメーションクロマトグラフィー法による重量平均分子量が400以下の成分の含有量が、8〜16重量%であり、かつ重量平均分子量が400以下の成分中、重量平均分子量が200〜400の成分の含有量が、25〜60重量%であるロジン変性フェノール樹脂。
【請求項2】
重量平均分子量が5,000〜400,000である請求項1に記載のロジン変性フェノール樹脂。
【請求項3】
酸価が10〜30mgKOH/gである請求項1または2に記載のロジン変性フェノール樹脂。
【請求項4】
芳香族炭化水素系溶剤(5号ソルベント、新日本石油(株)製)に対するトレランスが10g/g以上および脂肪族炭化水素系溶剤(0号ソルベント、新日本石油(株)製)に対するトレランスが30g/g以下である請求項1〜3のいずれかに記載のロジン変性フェノール樹脂。
【請求項5】
反応に使用するポリオール類(c)の水酸基当量数(OH)とロジン類(a)のカルボキシル基当量数(COOH)の割合OH/COOH比=0.5〜1.5である請求項1〜4に記載のロジン変性フェノール樹脂。
【請求項6】
樹脂成分として少なくとも請求項1〜5のいずれかに記載のロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキ用樹脂ワニス。
【請求項7】
少なくとも請求項1〜6のいずれかに記載のロジン変性フェノール樹脂を含有する顔料コーティング剤。
【請求項8】
樹脂ワニス成分として少なくとも請求項6に記載の印刷インキ用樹脂ワニスを含有する印刷インキ。


【公開番号】特開2009−227785(P2009−227785A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73728(P2008−73728)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】