説明

ロックウール吹付け工法及び吹付け装置

【課題】 浮遊粉塵をさらに低減し、被覆層のかさ比重を調整することが可能なロックウール吹付け工法とそれに用いる吹付け装置を提供する。
【解決手段】 ロックウール60〜90重量%、セメント10〜40重量%及びセメントに対し8〜25重量%の水分を含有する湿潤混合物を吹付ノズルから吐出させ、セメントスラリーを別の噴出口から噴出させ、両者をノズル部分又はノズル外で合流混合させ、ロックウール40〜70重量%、セメント30〜60重量%を含有する被覆層を形成する。湿潤混合物は、セメントと水を混合して含水セメントとし、これとロックウールを混合したものがよい。また、予備混合機、半乾式吹付け機械及び半乾式吹付ノズルよりなるロックウール吹付け装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ロックウールとセメントを含有する湿潤混合物と、セメントスラリーとを吹付けるロックウール吹付け工法、及びそれに用いる吹付け装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】建築物の柱、梁、天井、壁などに、ロックウールとセメント等の水硬性材料の混合物を水と共に吹付けて、耐火被覆を形成したり、断熱性を付与したり、吸音性を改善したりするロックウール吹付け工法が広く行われている。
【0003】ロックウール吹付け工法には、乾式工法、湿式工法、半乾式工法がある。乾式工法は、あらかじめロックウールとセメントを混合した乾燥混合物をノズルから吐出し、これと同時にノズルの周縁に配置した複数個の噴水口より圧力水を噴射して両者を混合吹付ける工法である(特公昭49−13389号公報)。この乾式工法は、かさ比重が0.2〜0.3と軽量の被覆層を形成できるが、施工時にセメントやロックウールによる発塵が著しく、環境上の問題があった。
【0004】湿式工法は、乾式工法の欠陥を改善するためになされたもので、主材のロックウールとセメントに界面活性剤と増粘剤を配合してなる吹付け施工用被覆材を用い、これに水を加えたペーストを圧縮空気によりノズルから吹付ける方法である(特公昭50−24973号公報)。この湿式工法は、浮遊粉塵の発生はなくったが、形成される被覆層のかさ比重が0.4〜0.6と重く、乾式工法に比べてコストが高いという問題があった。
【0005】半乾式工法は、あらかじめロックウールとセメントを混合しない工法である。図3に示す半乾式工法において、ロックウールRは解繊機2で解繊・破砕され、ロータリーバルブ3により定量的に送り出され、エアブローワー4によりホース5内を圧送され、吹付けノズル6に供給される。セメントCはスラリー槽7で水Wと混合されてセメントスラリーSとなり、スラリーポンプ8により搬送パイプ9を通って吹付けノズル6に供給される。セメントスラリーSをノズル6の周縁から噴射するか、あるいはノズル6の中心から噴射し、ロックウールと合流混合して耐火被覆層を形成する。半乾式工法によれば、浮遊粉塵がかなり減少でき、乾式工法に近いかさ比重の被覆層が形成できることから、ロックウール吹付け工法の主流となっている。
【0006】しかしながら、半乾式工法でも空気搬送されるロックウールから浮遊粉塵が発生するので、特開昭62−286573号公報には、セメントスラリーと混合する前のロックウールに0.1〜10重量%の水を添加し、更に粉塵を減らした吹付け工法が提案されている。しかし、形成される被覆層のかさ比重を湿式工法のように重くするには、ロックウールとセメントスラリーの比率を変えなければならないことから、吐出量の制御ができない通常の吹付け機では困難である。
【0007】また、半乾式と湿式の折衷工法も提案されており、例えば特公昭59−19746号公報には、ロックウールに水と界面活性剤を混合し、これを起泡して気泡入りロックウールスラリーとし、これを湿式搬送すると共に、別に調製したセメントスラリーとノズル部分で合流吹付けする方法が記載されている。この工法では、かさ比重が低くしかも繊維同志が絡んでいるロックウールを水に分散することが極めて困難であり、実用性が低い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の目的は、浮遊粉塵をさらに低減すると共に被覆層のかさ比重を調整することが可能なロックウール吹付け工法、及びそれに用いる吹付け装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、ロックウール60〜90重量%、セメント10〜40重量%及びセメントに対し8〜25重量%の水分を含有する湿潤混合物を吹付ノズルから吐出させるとともに、セメントスラリーを別の噴出口から噴出させ、両者をノズル部分又はノズル外で合流混合させ、ロックウール40〜70重量%、セメント30〜60重量%を含有する被覆層を形成することを特徴とするロックウール吹付け工法である。前記湿潤混合物は、セメントと水を混合して含水セメントとし、次いで含水セメントとロックウールを混合したものが好ましい。また、ロックウールとセメントと水を同時に混合し、湿潤混合物としてもよい。
【0010】また、本発明は、予備混合機、半乾式吹付け機械及び半乾式吹付ノズルよりなることを特徴とするロックウール吹付け装置である。前記予備混合機は、内部に一つ又は複数の水噴射口を備えたドラム型ミキサーが好ましい。
【0011】本発明の吹付け工法は、半乾式工法のロックウールに代えて、ロックウールとセメントを含有する湿潤混合物(以下「湿潤混合物」という)を用いる工法である。
【0012】本発明の吹付け工法に用いられる原料ロックウールは、CaO、SiO2、Al2O3を主成分とし、他にMgO、Fe2O3などを含有する繊維径が数μm程度の細径無機繊維である。通常、このロックウールは、高炉スラグ、電気炉スラグ等の各種冶金スラグや、玄武岩、輝緑岩等の天然岩石や、あるいはこれらの混合物に、必要に応じて成分調整材を添加して配合原料を調製し、これを電気炉やキュポラなどで溶融し、溶融物を遠心力及び/又は加圧気体で製綿し、空気搬送されたロックウールをネットコンベアなどに集綿して製造される。ロックウールの形態には、粒状に丸めた粒状綿、マット状の層状綿などがあるが、吹付けロックウールには粒状綿を用いることがよい。ロックウール粒状綿は、上記製造工程で集綿されたマット状のロックウールを粒化機に送り、これを10〜30mm程度以下に整粒したものである。
【0013】もう一つの原料であるセメントとしては、ポルトランドセメント、高炉セメント、白色ポルトランドセメントなどが用いられる。また必要に応じて、セメントに例えば高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、活性シリカ粉末、ベントナイト等の混合材を適量混合して用いてもよい。
【0014】
【発明の実施形態】図1は、本発明の吹付け工法の一例(予備混合法)を示す図面である。セメントC1は、予備混合機1で水W1と混合され含水セメントGとされる。ロックウールRと含水セメントGは、解繊機2で解繊・混合され、湿潤混合物Mが調製される。湿潤混合物Mは、ロータリーバルブ3により定量的に送り出され、エアブローワー4によりホース5内を圧送され、吹付けノズル6に供給される。セメントC2はスラリー槽7で水W2と混合され、セメントスラリーSとなり、スラリーポンプ8により搬送パイプ9を通って吹付けノズル6に供給される。
【0015】図2は、本発明の吹付け工法の別例(同時混合法)を示す図面である。ロックウールRとセメントC1と水W1は、同時に解繊機2に供給され、解繊・混合され、湿潤混合物Mが調製される。湿潤混合物MとセメントスラリーSは、図1の予備混合法と同様の吹付け機械と吹付けノズルを用い、同様の操作で吹付けされる。
【0016】湿潤混合物Mは、図2に示すように、ロックウールRとセメントC1と少量の水W1を同時に混合する方法(同時混合法)によって調製してもよいが、好ましくは、図1に示すように、セメントC1に少量の水W1を攪拌混合して含水セメントGとし、次いで含水セメントGとロックウールRを混合する方法(予備混合法)によって調製することがよい。同時混合法では、ロックウールに混合するセメントが少ない場合は問題ないが、セメントが多くなると乾燥セメントが残り、吹付け時に粉塵が発生しやすくなる。予備混合法は、セメントと少量の水を効率よく混合でき、セメント量が多くなっても完全に濡れており、粉塵発生をほぼ完全に防止できる。
【0017】予備混合機1としては、粉体と液体を効率よく攪拌混合できるミキサーであれば特に限定されないが、好ましいものとして、内部に一つ又は複数の水噴射口を備えたドラム型ミキサーが挙げられる。
【0018】湿潤混合物Mは、ロックウール60〜90重量%とセメント10〜40重量%を含有し、水分含有量がセメントに対し8〜25重量%である。セメントが10重量%より少ないと、高かさ比重の耐火被覆層を形成することが困難になり、セメントが40重量%を超えると、吹付け物が落下しやすくなり、所定の被覆厚さに吹付けできない。また、湿潤混合物の水分含有率は、セメントの8重量%より少ないと、セメントを十分に湿らせることができず、粉塵が発生しやすくなり、25重量%を超えると湿潤混合物を空気圧送することが困難になる。好ましくは、ロックウール65〜75重量%とセメント25〜35重量%を含有し、水分含有量がセメントに対し10〜20重量%である。
【0019】必要に応じて、本発明に用いる湿潤混合物には、本発明の目的を損なわない範囲で、パーライト、バーミキュライト、マイカ、珪石粉等の耐火性無機骨材を主材のロックウールやセメントに混合してもよいし、セメントやロックウールの水濡れ性を高めるために、カチオン系、アニオン系又はノニオン系界面活性剤などを添加してもよい。
【0020】湿潤混合物を調製するのに用いる攪拌混合機は、ロックウールを解繊しセメントと効率よく混合できる攪拌混合機であれば特に限定されないが、好ましくは半乾式工法で用いる解繊機である。直接混合法の場合、ロックウールRとセメントC1と水W1を解繊機2に同時に供給し、予備混合法の場合、含水セメントGとロックウールRを解繊機2に供給する。
【0021】セメントスラリーSは、通常の半乾式工法と同様に、スラリー槽7にセメントC2を投入し水W2と攪拌混合して調製すればよく、そのスラリー濃度は、20〜50重量%程度、好ましくは30〜40重量%程度、より好ましくは半乾式工法の標準セメント濃度である33重量%である。
【0022】本発明のロックウール吹付け工法は、通常の半乾式工法と同様に施工できる。すなわち、湿潤混合物Mをエアーブロワー4により空気圧送し、セメントスラリーSをスラリーポンプ8で搬送し、吹付けノズル6の先端で両者を混合しながら吹付けることでよい。また、別々に搬送した両者をノズル部分で合流させて吹付けることもできる。吹付けノズル6は、湿潤混合物Mをノズル中央から吐出するタイプでも、ノズル中央にセメントスラリーSの噴出口を設けたタイプのいずれでもよい。湿潤混合物MとセメントスラリーSの吐出割合は、湿潤混合物60〜75:セメント25〜40程度、好ましくは2:1程度がよい。
【0023】本発明によって吹付け形成された耐火被覆層は、主材として、ロックウール40〜70重量%とセメント30〜60重量%を含有する。セメントが30重量%より少ないと、半乾式工法と同等程度のかさ比重しか出せず、逆に60重量%を超えると吹付け施工時に被覆層を形成することが困難である。この含有割合は、半乾式工法に比べてセメント量が多いが、湿潤混合物に含有されるセメントC1によるものである。
【0024】このように、半乾式工法のロックウールに代えて、ロックウールとセメントを含有する湿潤混合物を用いて吹付け施工することにより、湿潤混合物中の水分でロックウールに起因する浮遊性粉塵の発生を低減させることができる。そして、湿潤混合物中のセメントは、ロックウール繊維によく分散混合されており、より均質な耐火被覆層を形成する。これに対し、通常の半乾式工法では、ロックウールとセメントスラリーは、吹付けノズルの外で混合されるため、ロックウール繊維の所々にセメントの小塊が付着した不均質なものしかできない。
【0025】したがって、本発明のロックウール吹付け工法によれば、湿潤混合物中のセメント量を調整することにより、耐火被覆層のロックウールとセメントの割合を広範囲に変更することが可能となった。また、全体のセメント量を増やすことによって、半乾式工法では困難とされる絶乾比重0.35以上の耐火被覆層を容易に形成できるのみならず、湿式工法でなければ実現できなかった絶乾比重0.4〜0.65の耐火被覆層を半乾式工法用の施工装置を使用して形成できる。従来工法に較べて、より軽量で強度のある被覆層を形成したり、より重く耐久性の優れた被覆層を形成することができる。また、被覆層形成の目的に応じて耐火性、断熱性、吸音性などが改善された被覆を形成することができる。
【0026】
【実施例】実施例1ロックウールとして市販のロックウール粒状綿と、セメントとして市販の普通ポルトランドセメントを用い、図1R>1に示す方法で吹付け試験を実施した。予備混合機1として内部に複数の水噴射口を備えたドラム型ミキサーを用い、予備混合機1にセメントC1を投入し、水噴射口から所定量の水W1を噴射し、40r.p.mで1分間攪拌混合し、セメントに対し12.5重量%の水分を含有する含水セメントGを得た。次に、半乾式工法用のロックウール解繊機2に、ロックウール100重量部に対しセメント40重量部になるように、ロックウールRと含水セメントGを投入し、湿潤混合物Mを調製した。この湿潤混合物Mは、ロックウール71重量%、セメント29重量%であり、水分含有率が固形分に対し9重量%であった。一方、セメントC2100重量部と水W2200重量部を半乾式工法用のスラリー槽7で混合し、セメント濃度が33.3重量%のセメントスラリーSを調製した。湿潤混合物Mをエアーブローワー4、セメントスラリーSをスラリーポンプ8により圧送し、中央部にセメントスラリー噴出口、その周囲にロックウール吐出口を有する半乾式工法用吹付けノズル6を用いて吹付け試験を行った。吹付け厚さを50mmとしたとき、被覆層はロックウール49重量%とセメント51重量%を含有し、その絶乾かさ比重は0.60であり、吹付け時の浮遊粉塵はほとんど肉視できなかった。この被覆層をはがして14日間室内養生した後、40℃の乾燥機で24時間乾燥し、これから一辺50mmの立方体を切り出し試験片とした。この試験片を圧縮引っ張り試験機(ロードセル:1ton、圧縮速度:1mm/min)により圧潰強度を測定したらところ、1.9kg/cm2であった。
【0027】比較例1湿潤混合物の代わりに、ロックウール100重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、通常の半乾式工法による吹付け試験を行ったところ、被覆層のかさ比重は0.34であり、吹付け時に浮遊粉塵がかなり認められた。また、被覆層の圧潰強度は0.34kg/cm2であり、実施例1の1/6程度しかなかった。
【0028】
【発明の効果】本発明のロックウール吹付け工法によれば、吹付け施工時の浮遊粉塵を肉視できないほど低減できるとともに、被覆層のかさ比重を調整することができ、特に絶乾かさ比重が0.35〜0.65程度の湿式吹付けに匹敵する高密度の耐火被覆層を形成できる。この耐火被覆層は、圧潰強度が通常の半乾式工法の数倍もあり、耐久性、耐火性に優れている。さらに、通常の半乾式工法用装置と吹付けノズルをそのまま使用するか、あるいは含水セメント調製用手段として予備混合機を追加するだけでよく、設備費用も低廉でよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の吹付け工法の一例(予備混合法)を示す図面である。
【図2】本発明の吹付け工法の別例(同時混合法)を示す図面である。
【図3】半乾式工法を示す図面である。
【符号の説明】
1 : 予備混合機
2 : 解繊機
4 : エアブローワー
6 : 吹付けノズル
7 : スラリー槽
8 : スラリーポンプ
R : ロックウール
C : セメント
W : 水
G : 含水セメント
M : 湿潤混合物
S : セメントスラリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロックウール60〜90重量%、セメント10〜40重量%及びセメントに対し8〜25重量%の水分を含有する湿潤混合物を吹付ノズルから吐出させるとともに、セメントスラリーを別の噴出口から噴出させ、両者をノズル部分又はノズル外で合流混合させ、ロックウール40〜70重量%、セメント30〜60重量%を含有する被覆層を形成することを特徴とするロックウール吹付け工法。
【請求項2】 前記湿潤混合物は、セメントと水を混合して含水セメントとした後、含水セメントとロックウールを混合したものである請求項1記載のロックウール吹付け工法。
【請求項3】 前記湿潤混合物は、ロックウールとセメントと水を同時に混合したものである請求項1記載のロックウール吹付け工法。
【請求項4】 予備混合機、半乾式吹付け機械及び半乾式吹付ノズルよりなることを特徴とするロックウール吹付け装置。
【請求項5】 前記予備混合機は、内部に一つ又は複数の水噴射口を備えたドラム型ミキサーである請求項4記載のロックウール吹付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2002−348978(P2002−348978A)
【公開日】平成14年12月4日(2002.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−158913(P2001−158913)
【出願日】平成13年5月28日(2001.5.28)
【出願人】(501211268)株式会社和久産業 (1)
【Fターム(参考)】