説明

ロックウール吹付け工法及び装置

【課題】施工現場の配合場において原料を前処理するときに発生する粉塵を、コストが嵩むことなく簡易の設備で集塵して施工現場の環境を改善することのできるロックウール吹付け工法を提供する。
【解決手段】ロックウール吹付け工法は、エアブロア3により原料(R)を吹付ノズル7へ圧送し、原料(R)を液体(C,W)と共に吹付ノズル7から噴射して施工面に吹付ける際に、エアブロア3への吸気を用いて配合場で発生する粉塵を集塵することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックウール吹付け工法及び装置に関し、特に、吹付け作業を行う施工現場の配合場において原料を前処理する際に発生する粉塵を集塵するための集塵工法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物の柱、梁、天井、壁等の耐火、断熱、防音等の目的のために、ロックウール(岩綿)を無機バインダ(セメント、石膏等)と共に吹付けするロックウール吹付け工法が広く行われている。ロックウール吹付け工法としては、乾式工法、湿式工法、半乾式工法等(例えば、特許文献1参照。)があり、これらを簡単に説明すると、乾式工法は、予めロックウールと無機バインダとを混合した乾燥混合物をノズルから吐出し、これと同時にノズルの周縁に配置した複数の噴水口より圧力水を噴射して両者を混合して吹付ける工法である。湿式工法は、主材のロックウール及び無機バインダに界面活性剤及び増粘剤を配合してなる吹付け施工用被覆材を用い、これに水を加えたペーストを圧縮空気によりノズルから吹付ける工法である。そして、半乾式工法は、予めロックウールと無機バインダとを混合する代わりに、無機バインダ及び水を混合させてスラリーを作製しておき、乾燥したロックウールをノズルから吐出すと同時にノズルの周縁あるいはノズルの中心からスラリーを噴射し、ロックウールとスラリーとを合流混合させて吹付ける工法である。
【0003】
吹付け作業を行う施工現場の配合場においては、ロックウールや無機バインダ等の原料をミキサーに投入して攪拌・混合する際に原料の粉塵が発生するため、この粉塵を送排風機により施工現場の外部に排出するなどして簡易的に処理していた。
【0004】
【特許文献1】特許第3256536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粉塵を送排風機により施工現場の外部に排出すると、施工現場の外部の環境が悪化することが予想され好ましくなく、また、配合場自体を隔離壁で囲んで粉塵を集塵することも考えられるが、隔離壁の設置に時間及び労力を要し、コストが嵩んでしまうという問題点があった。
【0006】
従って、本発明は、上述した従来の技術の問題を解決するためになされたもので、施工現場の配合場において原料を前処理する際に発生する粉塵を、コストが嵩むことなく簡易の設備で集塵して施工現場の環境を改善することのできるロックウール吹付け工法及び装置を提供することを主な目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明の主たる局面によれば、エアブロアにより原料を吹付ノズルへ圧送し、該原料を液体と共に該吹付ノズルから噴射して施工面に吹付けるロックウール吹付け工法において、前記エアブロアへの吸気を用いて配合場で発生する粉塵を集塵することを特徴としている。
【0008】
前記エアブロアに吸い込まれた粉塵含有空気を、液槽を通過させることが好ましい。また、該工法を半乾式工法として、前記エアブロアから前記吹付ノズルへ圧送される前記原料を繊維原料にし前記液体を無機バインダ及び水を予め混合したスラリーにすることもできるし、あるいは、該工法を乾式工法として、前記エアブロアから前記吹付ノズルへ圧送される前記原料を繊維原料及び無機バインダの混合物にし、前記液体を水にすることもできる。
【0009】
本発明の別の局面によれば、原料を圧送するエアブロアと、該エアブロアにより圧送された前記原料を液体と共に噴射するように構成された吹付ノズルと、前記エアブロアの吸気側に配設された集塵装置とを備えるロックウール吹付け装置を提供することを特徴としている。
【0010】
前記集塵装置内には、前記エアブロアへの吸気が通過する液槽を配設するのが好ましい。また、前記集塵装置に、前記液槽内の流体と連通した集塵用フードを取り付けることもできる。
【発明の効果】
【0011】
原料を吹付ノズルへ圧送する既存のエアブロアの吸気を利用して、配合場で原料から発生する粉塵を吸込んで集塵することができ、新たに動力を使用することなく、簡単な設備で施工現場の環境を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の好適な実施の形態を、添付図面を参照しながら説明するが、図中、同一符号は、同一又は対応部分を示すものとする。また、無機バインダとしてセメントを用いた場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
図1及び図2を参照しながら本発明の第1の実施の形態を説明する。図1は本発明に係るロックウール吹付け工法を半乾式工法に適用した場合の概略を示す図であり、図2は、図1に使用する集塵装置の構成を示す図である。図1から良く分かるように、半乾式工法においては、エアブロア3により圧送される原料としては、ロックウールRが使用され、吹付ノズル7から噴射される液体としては、セメントC及び水Wを混合したセメントスラリーSが使用される。
【0014】
圧縮された状態のロックウールRは、解綿機1で解繊され、エアブロア3により搬送ホース内を圧送されて吹付ノズル7に供給される。解綿機1と吹付ノズル7との間には、ロータリバルブ5が設置されており、吹付ノズル7へ圧送されるロックウールRの量を、必要に応じて変更できるようになっている。一方、セメントCは、水Wと共にミキサー9に投入され、ミキサー9内で攪拌混合されてセメントスラリーSが形成される。セメントスラリーSは、スラリーポンプ11により搬送パイプを通って吹付ノズル7へ供給される。そして、ロックウールRとセメントスラリーSとは、吹付ノズル7で混合されながら施工面に向けて噴射され、所望の被覆層が施工面に形成される。
【0015】
エアブロア3の吸気側には、集塵装置20が配設されている。集塵装置20は、図2から分かるように、吸込側パイプ22と吐出側パイプ23とを有する枠体21を備えており、枠体21の内部には、吸込側パイプ22と吐出側パイプ23とを流体連通させる吸気流路24が画成されている。また、枠体21の内部には、吸気流路24の一部を遮断するように、液体、本実施形態においては、水25を満たした液槽26が配設されている。ここで、集塵装置20に画成された吸気流路24の内、液槽26に満たされた水25よりも吸込側パイプ22に位置する部分を吸込側吸気流路24aと称し、液槽26に満たされた水25よりも吐出側パイプ23に位置する部分を吐出側吸気流路24bと称する。
【0016】
吸込側パイプ22には、下向きに拡径された拡径出口部27が連設されており、液槽26に満たされた水25の中に水没するように位置している。拡径出口部27の下方には、水中に向けて下向きに開口する開口部27aが画成されている。このように水中へ開口する出口を拡径したのは、吸込側吸気流路24aから液槽26内の水中に排出される粉塵含有空気が水と接触する面積を大きくして、粉塵が水中に溶け込み易くするためである。また、水中を通過する粉塵含有空気の泡を細かくして空気が水に接する割合を大きくし、水中に粉塵を溶かし易くするために、拡径出口部27の側壁に小孔27bを複数個配設してある。吸込側パイプ22の反対側(枠体21の外側)は、可撓性ホース28を介して集塵用フード30に接続されている。すなわち、集塵用フード30は、液槽26内に吸込側吸気流路24aを介して流体連通している。一方、吐出側パイプ23は、可撓性ホース29を介してエアブロア3に接続されている。
【0017】
集塵用フード30は、下方が開口されたドーム状をしており、ミキサー9の上方、好ましくは、ミキサー9の真上に配設されている。このようなフードを用いると、ミキサー9にセメントCを投入する際や攪拌・混合する際に発生する粉塵を効率よく集塵することができる。なお、集塵用フード30をミキサー9の真上に配設する場合には、ミキサー9へのセメントCの投入を妨げないように、この集塵用フード30に材料投入用の切欠を設けることが好ましい。
【0018】
次に、以上のように構成された集塵装置20の作用を説明する。上述したように、ロックウールRは、エアブロア3により搬送ホース内を圧送されて吹付ノズル7に供給されるが、同時に、集塵装置20内部の吐出側吸気流路24bが減圧される。この減圧分を補うために、集塵用フード30の開口から空気が吸込側吸気流路24aに吸込まれ、吸込まれた空気は、液槽26の水25を通過して、吐出側吸気流路24bへと供給される。一方、図2に示すように、ミキサー9の上方には、セメントCをミキサー9に投入する際や攪拌する際に発生するセメント粉等の粉塵が舞い上がっているが、これらの粉塵は、エアブロア3の稼働により集塵用フード30から吸込側吸気流路24aを介して集塵装置20内へ引き込まれ集塵されるため、配合場のミキサー9周りの環境を改善することができる。
【0019】
集塵装置20へ吸込まれた粉塵含有空気は、吸込側吸気流路24aから拡径出口部27の下向きの開口部27aを介して液槽26内の水25を通過するため、この水により空気内の粉塵が除去することができるので、エアブロア3には、清浄な空気が供給される。また、従来の半乾式工法においては、ロックウールRは、乾燥した状態のまま吹付ノズル7へ圧送されていたため、搬送ホース内に静電気が溜まってしまい搬送ホース内壁にロックウールRが付着したりして搬送効率が下がると共に、吹付ノズル7から噴射した際に粉塵を巻き起こし施工時における環境上の問題が生じていた。しかしながら、集塵装置20内の液槽26を通過した空気は、湿気を帯びるため、搬送ホース内を通過する際にも静電気を発生させ難く、さらには、吹付ノズル7からロックウールRを吹付ける際の粉塵の発生も抑制することができる。なお、液槽26の水25内に溜まった粉塵は、水を適宜交換するか、沈殿等したものを濾過して再利用するなどして、容易に集塵装置20から排除することができ、エアブロア3への吸気が汚れないようにすることができる。
【実施例2】
【0020】
次に、図3を参照しながら本発明の第2の実施の形態を説明する。図3は、本発明に係るロックウール吹付け工法を乾式工法に適用した場合の概略を示す図である。この図から分かるように、乾式工法においては、エアブロア3により圧送される原料としては、ロックウールRとセメントCとの乾燥混合物が使用され、吹付ノズル7から噴射される液体としては、水Wが使用される。
【0021】
圧縮された状態のロックウールR及びセメントCの混合物は、解綿機1で解繊・破砕され、ロータリバルブ5により供給量を調整されながら、エアブロア3により搬送ホース内を圧送されて吹付ノズル7に供給される。一方、貯水槽13に蓄えられた水Wは、ポンプ15により搬送パイプを通って吹付ノズル7へ供給される。そして、ロックウールR及びセメントCの混合物と水Wとが吹付ノズル7で適宜混合されながら施工面に向けて噴射され、所望の被覆層が施工面に形成される。
【0022】
エアブロア3の吸気側には、第1の実施の形態と同様の構造(図2参照)を有する集塵装置20が配設されており、その吸込側は、集塵用フード30に接続され、吐出側は、エアブロア3に接続されている。従って、エアブロア3を稼働させると、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることが出来る。すなわち、集塵用フード30を介して配合場で発生した粉塵を集塵し、集塵装置20内部の液槽26を通過する際に粉塵を除去し、液槽通過により湿気を帯びた空気は、搬送ホース内を通過する際に静電気を発生させ難く、さらには、吹付ノズル7からロックウールR及びセメントCを吹付ける際の粉塵の発生も抑制することができる。
【0023】
第2の実施形態においては、集塵用フード30は、例えばロックウールR及びセメントCの乾燥混合物を解繊する解綿機1の周辺に位置させることで、効率良く集塵を行うことができる。このように、集塵用フード30は、ミキサーの上方に位置させることに限られるものではなく、配合場のどこに位置させてもよく、粉塵の発生が予想される場所に適宜配置すれば、効率よく集塵を行うことができ、配合場の環境を改善することができる。
【0024】
以上の実施の形態において、繊維原料としてのロックウールRや無機バインダとしてのセメントCは、上述した特許文献1に記載されているように既知のものであるので、本願では説明を省略する。また、エアブロアにより圧送される原料とポンプで供給される液体とを吹付ノズル7から吹き出す工法は、既存の如何なるものも使用することができ、例えば、吹付ノズル7の先端で両者を混合しながら吹付けることもできるし、両者をノズル部分で合流させてから吹付けることもできる。
【0025】
以上のように、本願発明に係るロックウール吹付け工法は、エアブロア3の吸気を用いて配合場で発生する粉塵を集塵するように構成されているため、エアブロアを使用する半乾式工法及び乾式工法において、特に適しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これ以外の工法においても、エアブロアを使用するものには、本発明を同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を半乾式工法に適用したロックウール吹付け工法の概略を示す図である。
【図2】図1に使用する集塵装置の構成を示す図である。
【図3】本発明を乾式工法に適用したロックウール吹付け工法の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 解綿機
3 エアブロア
5 ロータリバルブ
7 吹付ノズル
9 ミキサー
11 スラリーポンプ
13 貯水槽
15 ポンプ
20 集塵装置
21 枠体
22 吸込側パイプ
23 吐出側パイプ
24 吸気流路
24a 吸込側吸気流路
24b 吐出側吸気流路
25 水
26 液槽
27 拡径出口部
28,29 可撓性ホース
30 集塵用フード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアブロアにより原料を吹付ノズルへ圧送し、該原料を液体と共に該吹付ノズルから噴射して施工面に吹付けるロックウール吹付け工法において、
前記エアブロアへの吸気を用いて配合場で発生する粉塵を集塵することを特徴とするロックウール吹付け工法。
【請求項2】
前記エアブロアに吸い込まれた粉塵含有空気を、液槽を通過させることを特徴とする請求項1記載のロックウール吹付け工法。
【請求項3】
該工法は、半乾式工法であり、
前記エアブロアから前記吹付ノズルへ圧送される前記原料は、繊維原料であり、
前記液体は、無機バインダ及び水を予め混合したスラリーであることを特徴とする請求項1または2記載のロックウール吹付け工法。
【請求項4】
該工法は、乾式工法であり、
前記エアブロアから前記吹付ノズルへ圧送される前記原料は、繊維原料及び無機バインダの混合物であり、
前記液体は、水であることを特徴とする請求項1または2記載のロックウール吹付け工法。
【請求項5】
原料を圧送するエアブロアと、
該エアブロアにより圧送された前記原料を、液体と共に噴射するように構成された吹付ノズルと、
前記エアブロアの吸気側に配設された集塵装置とを備えることを特徴とするロックウール吹付け装置。
【請求項6】
前記集塵装置内には、前記エアブロアへの吸気が通過する液槽が配設されている請求項5記載のロックウール吹付け装置。
【請求項7】
前記集塵装置は、前記液槽内の流体と連通した集塵用フードを備える請求項6記載のロックウール吹付け装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−70546(P2006−70546A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254620(P2004−254620)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000126609)株式会社エーアンドエーマテリアル (99)
【Fターム(参考)】