説明

ロック装置

【課題】ジャック又は電気機械技術に基づくアクチュエータに組み込むことがより簡単なキャッチを有するロック装置を提案する。
【解決手段】本発明は、軸線方向に互いに対して移動可能な第1及び第2要素を互いにロックするロック装置を提供する。ロック装置は、第1要素に固定されて、弾性変形可能なキャッチを有するブッシング10と、第2要素に固定されて、キャッチの端部を受け入れる環状セットバック23を有するアンカー部分20と、解放位置とブロック位置との間でキャッチに対して移動可能に装着されるロックスリーブ30とを備える。ロックスリーブが解放位置にある時に間隙がキャッチに一致して、アンカー部分の移動の作用を受けてキャッチは自由に撓む。ロックスリーブがブロック位置にある時に間隙がキャッチからずれてキャッチがロックスリーブの障害物に一致し、環状セットバック内にキャッチの端部が係合してキャッチの撓みが妨げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線方向に沿って互いに対して移動可能な2つの構成要素、例えばシリンダ内に入れ子式にスライドして装着されるロッドを所定の位置にロックするロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのジャック又は他の入れ子式のアクチュエータは、所定の位置、特に収縮位置又は伸展位置にロッドをロックする装置に取り付けられる。ロック装置は、軸線方向に張り出すとともにそれぞれのフックで終端をなす弾性変形可能な複数のキャッチを有するブッシングを第一に備え、かつ、フックを受け入れる環状セットバックを有するアンカー部分を第二に備えることが知られており、ブッシング及びアンカー部分は、互いに対して移動可能なアクチュエータの2つの部分に装着される。
【0003】
例えば、ブッシングは、アクチュエータのシリンダの端部に配置される一方で、アンカー部分はアクチュエータのスライドロッドに固定される。アンカー部分はステップを有しており、アンカー部分がキャッチの中に係合する時にステップはキャッチを撓ませる。アンカー部分は、フックがステップを通過した時点でキャッチをその休止位置に復帰させることが可能な環状セットバックをさらに有しており、フックはそこで環状セットバックに係合する。ロックスリーブは、キャッチを覆うように軸線方向に移動させられて、こうしてキャッチの半径方向の変形を妨げ、その結果、フックが環状セットバック内で自由に移動できないように保持される。ロッドはそこで所定の位置にロックされる。
【0004】
ロッドのロックを解除するためには、再びキャッチを撓ませることを可能にするためにスリーブを逆方向に移動させて、その後にブッシングからアンカー部分を離脱させれば足りる。
【0005】
そういったタイプのロックは油圧アクチュエータに特に有効である。ロックスリーブ自体は、そのために個々の制御を提供することを必要とせずにロッドの移動に合わせて圧力下で流体によって動かされる。電気機械技術を用いると、状況はさらに困難である。キャッチを使用するロックの例は特許文献1で示される。特許文献1では、ロック装置は、主ロッド内で補助ロッドが移動することを妨げるために使用される。ロックスリーブは、特にロックスリーブを動かすために設けられる回転電動モータの回転運動が螺旋接続を介してロックスリーブの軸線方向の移動に変換されることによって軸線方向に移動させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2895482号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ジャック、又は電気機械技術に基づくアクチュエータに組み込むことがより簡単なキャッチを有するロック装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軸線方向に互いに対して移動可能な第1要素及び第2要素を互いにロックするロック装置を提供し、当該ロック装置は、第1要素に固定されるブッシングであって、軸線方向に張り出す弾性変形可能なキャッチを有するブッシングを第一に備え、かつ、第2要素に固定されるアンカー部分であって、キャッチのフック形状の端部を受け入れる環状セットバックを有するアンカー部分を第二に備え、当該ロック装置は、キャッチが自由に撓む解放位置とキャッチの撓みが妨げられるブロック位置との間でキャッチに対して移動するように装着されるロックスリーブをさらに有する。
【0009】
本発明によれば、ロックスリーブは、キャッチに対して回転可能であり、周方向に一連の間隙と障害物とを有し、
解放位置に対応する第1角度位置にロックスリーブがある時に間隙はキャッチに一致し、その結果、アンカー部分の移動の作用を受けてキャッチは自由に撓み、
ブロック位置に対応する第2角度位置にロックスリーブがある時に間隙はキャッチに対してずれてキャッチがロックスリーブの障害物に一致し、それによってアンカー部分の環状セットバック内にキャッチの端部が係合する時にキャッチの撓みが妨げられる。
【0010】
このようにして、ロックスリーブが第1角度位置にある時にキャッチは間隙に一致し、その結果、アンカー部分が、キャッチのフック形状の端部の中に係合する時にキャッチは自由に撓むことが可能である。その後、キャッチの端部が環状セットバックに係合した時点で、キャッチがロックスリーブの各障害物に一致し、その結果、キャッチの撓みを妨げる第2角度位置にロックスリーブが移動し、その結果、フックは、アンカー部分の環状セットバックから離脱することができない。装置はそこでロックされる。
【0011】
本発明は、添付の図面の形態の以下の説明を考慮してより良く理解されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の特定の第1実施形態のロック装置の側面図であり、アンカー部分の環状セットバックにキャッチの端部を係合させる前であってロックスリーブが解放位置にあることを示す。
【図2】図1のII−II線に沿った切断図であり、撓んだ位置にあるキャッチを示す。
【図3】図2の拡大図である。
【図4】ロック装置の側面図であり、キャッチの端部がアンカー部分の環状セットバックにはめ込まれた後であってロックスリーブがブロック位置にあることを示す。
【図5】図4のV−V線に沿った切断図である。
【図6】図5の拡大図である。
【図7】本発明の特定の第2実施形態の装置を示す図2に類似した図である。
【図8】本発明の特定の第2実施形態の装置を示す図1に類似した図である。
【図9】本発明の特定の第2実施形態の装置を示す図5に類似した図である。
【図10】本発明の特定の第2実施形態の装置を示す図4に類似した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すると、本発明のロック装置はアクチュエータへの用途で示されており、アクチュエータは、さらなる明確化のため、ここには示されていないシリンダの内側で縦軸線Xに沿って軸線方向にスライドして装着される端部ピストン2を有するロッド1を備える。
【0014】
本発明のロック装置は、シリンダの端部に固定されるブッシング10を第一に備える。ブッシング10は、フック形状の端部12で終端をなす複数のキャッチ11を有する。キャッチ11は、ブッシング10の中実部分から張り出すように突き出る多数のキャッチ11を規定するためにブッシング10に縦方向のノッチを機械加工することによって好都合に得られる。キャッチ11は弾性変形可能である。
【0015】
本発明の装置はアンカー部分20をさらに有しており、アンカー部分20はここではロッド1のピストン2に固定される。アンカー部分20は、概ね回転体の形状に形成されており、ステップ22で終端をなすとともに環状セットバック23が後ろに続く係合斜面21を連続的に示す。
【0016】
最後に、本発明の装置は、ブッシング10を取り囲むロックスリーブ30を有しており、本発明によれば、ロックスリーブ30は、アクチュエータのシリンダ内でブッシング10の周りで回転するように装着される。ロックスリーブ30は、図2及び図3からより明確にわかるように、一定の間隔で配置されるノッチ31を有する。これらのノッチ31は、ブッシング10に対してロックスリーブ30の2つの角度位置を規定することに役立つ。図1〜図3に示されるように、「解放位置」として言及される第1角度位置ではノッチ31はキャッチ11に一致する。図4〜図6に示されるように、第2角度位置ではノッチ31は、キャッチ11がロックスリーブ30の中実部分32に一致するようにキャッチ11からずれる。
【0017】
本発明のロック装置の操作は以下の通りである。ロックスリーブ30が最初に解放位置に配置された状態で、アンカー部分20がブッシング10内に係合する。端部12は、係合斜面21を圧迫するようになると、図1に示されるように、それによって端部12がステップ22を圧迫するようになるまでキャッチ11を撓ませる。キャッチ11がロックスリーブ30のノッチ31と一致するため、キャッチ11は撓むことができる。この位置では、図2から分かるように、ノッチ31は、キャッチ11の各々の背面から突き出るシュー13を、対向するノッチ31内に進入させることによって待避させることを可能にする間隙を形成する。このロックスリーブ30の位置は解放位置である。
【0018】
その後、アンカー部分20がさらに前進した時点で、キャッチ11の端部12は環状セットバック23内に入り込み、図4に示されるように、それによってキャッチ11をその休止位置に復帰させることを許容する。本発明では、ノッチ31がキャッチ11からずれるように、かつ、キャッチ11上のシュー13がロックスリーブ30の中実部分32に一致するように、ロックスリーブ30が図2の位置から図5の位置まで回転させられる。このことは、中実部分32が障害物を形成するのでキャッチ11の撓みを妨げ、その結果、キャッチ11の端部12が環状セットバック23内で自由に移動できないように保持されて、それによってロッド1を所定の位置にロックする。このロックスリーブ30の位置はブロック位置である。
【0019】
ロッドを解放するためには、図2の解放位置に復帰させるためにロックスリーブ30を回転させれば足りる。このようにして、キャッチ11は再び撓むことができ、その結果、フック形状の端部12が環状セットバック23から離脱することが可能である。
【0020】
図7〜図10に示される第2実施形態では、上述の実施形態の構成要素と同一の構成要素の参照符号には上述の実施形態の構成要素に100が加算される。ロックスリーブ130は、キャッチ111のシュー113に一致して延びるとともにローラ132を受け入れる受け入れ体を形成するために一定の間隔で空洞にされる環状部分135を備える。ローラ132は、解放位置とブロック位置との間でロックスリーブ130が回転する時に環状トラック136上を進む。このようにして、2つの連続したローラ132同士の間の空間131によって間隙が形成される一方で、ローラ132は、ロックスリーブ130がブロック位置にある場合にキャッチ111の撓みを妨げるためにキャッチ111のシュー113と協働して障害物を形成する。図7及び図8ではロックスリーブ130が解放位置にある。キャッチ111は、アンカー部分120のステップ122を通過するときに撓み、連続する1対のローラ132の間に広がる間隙131内に移動する。図9及び図10では、アンカー部分120が前方に移動してキャッチ111のフックがアンカー部分120の環状セットバック123内に進入する。ロックスリーブ130は、ローラ132がキャッチ111の撓みを妨げる位置まで回転させられるように図示される。
【0021】
このようにして、回転スリーブによってキャッチは簡単にロック及び解放され、回転スリーブは回転電気機械装置によって非常に簡単に動かされ、それによって、特許文献1に示されるような回転移動及び縦方向移動の間のいかなる変換も防止する。例えば、ロックスリーブには、ロックスリーブ自体が電動ステッピングモータの回転子を構成するように永久磁石が取り付けられてよい。加えて、間隙の周方向の一定の間隔での配列及び障害物の周方向の一定の間隔での配列が、一連の解放角度位置及びブロック角度位置を交互に規定するので、ロックスリーブは常に同一の方向に回転させられる。
【0022】
本発明は上の説明に限定されないものの、一方で、特許請求の範囲で規定される範囲内から生じるいかなる変形もカバーする。特に、本発明は、周方向の一連の間隙及び障害物を備えるスリーブであって、障害物が第1実施形態では中実部分によって、又は第2実施形態ではローラによって、又は例えばボールなどの他の手段によって構成されるスリーブを有するいかなるロック装置もカバーする。
【0023】
加えて、図示される例ではアンカー部分が、キャッチのフック形状の端部が内側に面するようにブッシングの内側に係合するものの、本発明は、アンカー部分が環状であってキャッチのフック形状の端部が外側に向いてキャッチの外側にアンカー部分が係合するロック装置にも同様に適用される。そうした状況の下では、ロックスリーブは、キャッチの周りに広がらないでキャッチの内側に広がる。
【0024】
最後に、図示される例では、キャッチを有するブッシングとスリーブとは共通の要素(特にアクチュエータのシリンダ)に固定されるものの、スリーブは何らかの別の要素に固定されることも可能であろう。同様に、上の説明では、ブッシングが第1要素上に固定されたままである一方でスリーブが第1要素に対して回転するものの、キャッチの端部がアンカー部分の環状セットバック内に進入した時点で解放位置からブロック位置まで到達するために、キャッチを有するブッシングがスリーブに対して回転する能力が重要であることを読み手は容易に理解するであろう。
【符号の説明】
【0025】
10、110 ブッシング
11、111 キャッチ
12、112 端部
20、120 アンカー部分
23、123 環状セットバック
30、130 ロックスリーブ
31、131 間隙
32、132 障害物、中実部分、ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に互いに対して移動可能な第1要素及び第2要素を互いにロックするロック装置であって、当該ロック装置は、第1要素に固定されるブッシング(10)であって、軸線方向に張り出す弾性変形可能なキャッチを有するブッシング(10)を第一に備え、かつ、第2要素に固定されるアンカー部分(20)であって、キャッチのフック形状の端部を受け入れる環状セットバック(23)を有するアンカー部分(20)を第二に備え、当該装置は、キャッチが自由に撓む解放位置とキャッチの撓みが妨げられるブロック位置との間でキャッチに対して移動するように装着されるロックスリーブ(30)をさらに有するロック装置であって、当該装置は、ロックスリーブが、キャッチに対して回転可能であり、周方向に一連の間隙(31)と障害物(32、132)とを有し、
解放位置に対応する第1角度位置にロックスリーブがある時に間隙がキャッチに一致し、その結果、アンカー部分の移動の作用を受けてキャッチは自由に撓み、
ブロック位置に対応する第2角度位置にロックスリーブがある時に間隙はキャッチに対してずれてキャッチがロックスリーブの障害物に一致し、その結果、アンカー部分の環状セットバック内にキャッチの端部が係合する時にキャッチの撓みが妨げられることを特徴とするロック装置。
【請求項2】
前記ロックスリーブ(30)の障害物は前記ロックスリーブ(30)の中実部分(32)である請求項1に記載のロック装置。
【請求項3】
前記ロックスリーブ(130)の障害物は、前記ロックスリーブのハウジング内に受け入れられるローラ(132)である請求項1に記載のロック装置。
【請求項4】
前記ロックスリーブは、前記第1要素上に回転移動可能に装着される一方で、前記ブッシング(10)は前記第1要素に対して固定される請求項1に記載のロック装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−106674(P2011−106674A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254128(P2010−254128)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(591131361)メシエ−ブガッティ (64)
【氏名又は名称原語表記】MESSIER BUGATTI
【Fターム(参考)】